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▽レス始

「.hack//G.S. レベル2(.hack+GS)」

脳味噌コネコネ (2006-09-03 15:38/2006-09-04 22:27)
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The worldが歴代最高を誇る大ヒットを記録したのは、ただ単にゲーム内容が面白いというだけではない。
もちろん面白さこそが一番の理由なのだが、発売時期が絶妙であったのも大きな理由である。
近年、人々は娯楽を求める傾向が強まってきていた。
変わらない日常に退屈する者、日々のストレスから心を癒そうとする者が、年を追うごとに増えていったのだ。
そしてその娯楽を求める意思が、ある世界を揺るがす大事件により爆発した。
アシュタロス戦役……まったく関係なさそうに見えるそれが、火種を生む原因だった。
世界中に恐ろしい数の悪霊、妖怪、悪魔が現れ、死亡者こそ少なかったものの、文明の被害は大きい。
多くの人がゼロからのやり直しを強制され、ストレスに苦しんだ。特に被害の大きかった日本では尚更だ。
だけどそれでも、第二次世界大戦でそうだったように、日本は奇跡的な復活を遂げた。
しかしその頃には、人々の疲労もストレスもピークを迎え、一時日本は混乱に陥ることになったのだ。
多くのものが救いを求めた。娯楽を求めた。そして現れたのが、ゲームThe worldだったのだ。
そのあまりの面白さに多くの人が飛びつき、瞬く間に長いブームの幕が開いた。
もともとは小規模の会社でしかなかったCC社は一気に大企業へと成長し、商売の手を海外に広まるまでに至った。
結果、世界中でThe worldは大ヒットを記録し、一千万人以上という恐ろしいプレイヤーを獲得したのだ。
また、発売から一年が過ぎた現在でも売り上げを順調に伸ばしており、もう直ぐゲーム出荷数は2000万本を越える予定である。
The world旋風は、まだ始まったばかりなのかもしれない……。


ダンジョン1F


「ダンジョンの中ってこんな感じだったんやなぁ……」

エリア内のダンジョンに入った横島は、好奇心の高鳴りと共に周りを見回した。
まるで都会に出てきな田舎者のようだが、それほど珍しいことでもない。
ゲーム場面を画面越しに見るのと、HMDから見るのとではそれだけ差があるのだ。

「ん? 何してるんだ?」
「装備を変更していまちゅ」

パピリオにはメニューの装備変更画面が見えているのだが、他のプレイヤーには装備が消えたり現れたりしているようにしか見えない。
柄の派手な装備に身を纏っていたパピーの姿は見る見るうちに変わっていき、最終的には武器を除いて何の変哲もないものになった。
横島と遊ぶこの時のために彼女が用意していた、ゲーム開始時のプレイヤーが所持している装備だ。

「これでも結局ダメージ1だと思いまちゅけど、マイナス武器のおかげで火力だけは初心者並でちゅ!」

マイナス武器とは、高レベルプレーヤーでも初心者とパーティーを組めるよう作られたものである。

「いちいち弱くなる必要あるのか?」
「こうちないと経験地が入りまちぇん」

MMORPGの経験がない横島にはわからなかっただろうが、レベル差があるもの同士がパーティーを組むと、取得経験地が減少する。
これは初心者プレイヤーが一気にレベルを上げるのを防ぐための重要なシステムだ。
そしてそれを無効化するのがマイナス武器。攻撃力を逆に下げてしまう装備である。

「それに、こうちないと面白くないと思いまちゅから」

これはパピリオの、子供なりの精一杯の気遣いだった。
ネットゲーム初心者が高レベルプレイヤーと組むのは、精神的にあまり良くない。
あまりの火力差に劣等感を感じたり、やる気がなくなってしまったりするからだ。

「準備もできまちたから、攻略開始でちゅ!」

初心者向けのダンジョンを探すだけでなく、楽しく遊ぶための工夫を怠らなかったパピリオの姿勢に、少しだけ横島は感動していた。


ダンジョン1F   通路


横島とパピリオが最初の通路を進んだときの出来事だ。
通路先の分かれ道を何かから逃げるように進む白い髪の少女と、それを追う赤い杖を持ったモンスター。
双方とも空中を浮遊しながら移動している。初めてThe worldをプレイした横島にも、その異常さが理解できたであろう。
何故なら、逃げる側にも追う側にも、ゲーム内に存在するはずのないもの、霊力を感じ取ったからである。

「白い……少女……噂は本当だったのでちゅか……」

今見た光景と、掲示板で噂されていた話とを結びつけたパピリオが呟く。

「白い少女って……あの追われてた子か?」
「そうでちゅ。何かのイベントかもしれまちぇんが、これといって何も起きないから逆に噂になってるんでちゅ」

数日前辺りから突然現れた白い少女。多数とはいえないが、それでも確実に目撃情報が出ている。
しかし何かに追われているという情報はなかった。イベントが進行している可能性もあるが、おそらくそれはないだろう。
霊力が感知された時点で、この事件は既にイレギュラーなのだ。

「お試しプレイで、問題と遭遇しちまったのか……」
「流石ヨコチマでちゅ!」

横島というとおり、今回はゲームに慣れるためのお試しプレイである。
だというのに、いきなり問題絡みとしか思えない少女との遭遇。
それが偶然なのかそうでないのか、二人にはいまいち判断が付かなかった。
監視している美神側はそれ以上に困惑の中にあったが、二人にそれを知る由はない。

「何か……危険?」
「かもしれまちぇんね」

引くか、立ち向かうか、その選択をするのは横島ではない。

『横島君、聞こえる?』
「聞こえてますよ、美神さん」

監視側から直接ゲーム内に発せられた声の主は、GS美神その人である。

『ついさっきこっちの画面に突然ノイズが走ったんだけど、あんた達、何か見なかった?』
「見ましたよ! 白い髪の女の子が杖持った奴から逃げてました!」

横島が声を張り上げて言う。別にそんなことをする必要はない。

「あ……それと、少しだけ霊力を感じたんです」
『霊力!? 横島君、それホントなの?」
「間違いありません」

明らかに異常事態。CC社の社員の者であろう声が飛び交った。

『横島君! すぐに追いなさい! 絶……逃がし……」
「どうしたんすか美神さん?」

急に途切れた美神の声に驚き横島が問うが、返事は返ってこない。

「サーバトラブル……じゃあ、ないよな」

何かの、おそらく今回発生した問題の元凶の仕業だと思われる回線の遮断。
楽しいThe worldが、一分の時も流れることなく異常地帯に変貌した。

「なぁパピリオ、また今度に……」

横島がHMDを外してパピリオに視点を向けると、そこにあったのは寂しそうな少女の顔。
やめられるはずが、なかった。
横島のPC、パピリオの今は亡き姉、ルシオラをモデルにしたその少年が、ダンジョンの奥へと歩き出す。
それに気付いた少女は困惑したが、直ぐに満面の笑みでそれを追いかけた。


ダンジョン3F   神像の間にて


「結局何も起きんかったな……」
「楽しくなかったでちゅか?」

一階での出来事以降白い少女を見かけることのなかった横島の言葉に、パピリオが問う。

「いんや。面白かった。こりゃハマったな」
「それなら問題なしでちゅよ!」

パピリオにとっては事件のことよりも、横島がゲームを楽しめたかが重要である。
The worldの面白さを横島に理解してもらい、パピリオはとても嬉しかった。

「んじゃ、帰るか。確か精霊のオカリナっていうの使ったら帰れるんだったよな?」

精霊のオカリナはダンジョンから脱出するアイテムだ。
他にもマップを解析してくれる妖精のオーブというものも存在する。

「そうでちゅよ。でも今日は持ってきてまちぇん」
「へ?」

困惑する横島に、パピリオのPC、パピーは不適な笑みを向けて言った。

「歩いて帰るでちゅ!」

パピリオは後、この選択を心の底から後悔することになる。
その先にある幸に、彼女が救われるか否かは、まだ誰も知らない。


神像の間を出て、通路を歩き出した二人を、突然白い世界が覆った。
もう逃れられない。直ぐに、立ち向かう選択以外を消し去られる。
これはゲームだ。しかし、これは呪われたゲームだ。
横島忠夫こと蛍の、真実を追い求めるゲームだ。


 あとがき

予想以上に嬉しい言葉の数々をもらえたので、様子見をやめて、連載を開始したいと思います。
もう気付かれたと思いますがこの話は、.hackの主人公カイト役を横島にやらせてみようというものです。
時間軸に関して疑問が浮かぶかもしれませんが、GS自体が時間軸の破綻した話であるため、今回の無理のありすぎる設定がギリギリで生きてます。
わかりやすく言うと、GSの中の時系列をそのまま.hackの時系列にまで持ってきたということです。
実際GS美神では、ドラえもんやクレヨンしんちゃん等と同様に、一年を繰り返すような形で話が進んでいて、その時起こったことがいつ起こったことなのかも、ほぼまったく記されていません。
よくGSの二次創作で時代設定に力を入れているものがありますが、あれは原作のものではなく、独自に考え出されたものなので、原作とはほとんど関係ないです。
つまり、GSに関しては時間軸をいくらいじってもそれほど問題がないということです。もちろん、僕個人の意見なので同意は求めませんが。

この後の展開についてですが、決してパピリオがオルカ役になるのではありません。ただカイト役が摩り替わっただけです。
カイトはかなり好きなキャラクターなのですが、彼が黄昏の腕輪を手にすると、ストーリー上での必須アイテムである以上、三人までしか組めないパーティーが一人分埋まってしまって、ただでさえGSメンバーの加入で人数が増えるというのに、これでは一人一人のキャラの出番が激減してしまいます。
ですので、.hack好き(自分含む)の方には申し訳ないのですが、カイトをストーリー上から抹消させていただくことになりました。
黄昏の腕輪を持たない彼で良いのでしたら問題ないので、出して欲しいという方は言ってください。


返レスです

戌亥 晶さん
はじめまして。レスどうもありがとうございます。
世界観の管理、構築はおそらく、自分の最も得意とする分野だと思っているので、褒めていただいて嬉しいです。
実は家にGSの単行本がなく、キャラの性格が壊れてしまわないか心配でしたが、違和感がないと言われてホッとしました。
晶さんの言われたとおり、パピリオのやりこみは凄まじいです。特にプチグソの育成に関しては、ハロ○ド以上かもしれません。

わんこさん
レスをいただいてありがとうございます。
.hackもGSも大好きな作者なので、やっぱり書いてて楽しいですね。
横島のキャラデザインがルシオラを模したものであるのは、物語の中で大きな意味を持ちます。おそらく第四話あたりからです。
残念ながら絵は苦手なので、文章のみでしかお伝えできませんが、横島かルシオラの姿を連想して呼んでもさほど問題はありません。

シヴァやんさん
レス真にありがとうございます。
時間軸に関しては読めばお分かりだと思います。間違えようがありませんね(笑)
GS側にとってはクロスであり、アフターである話です。
.hack側からいえば、クロスであり、再構成見たいな感じですね。
この後ブラックローズとの出会いやらミアとの会話やらありますので、お楽しみに。

夜偽さん
レスありがとうございます。かなり嬉しいです。
GSと.hackを会わせようと思ったのはとにかく好きな作品だったからというのが大きいですね。考えてみればそれほど難しい話でもなさそうでしたし。
タイトルに関しては、初め『ドットスイーパーズ』とか考えてましたが、なんとなくカッコいいのでG.U.ぽくなりました。
G.U.も大好きなのですが、まだ完結していない以上、終盤までストーリーをねられないですので、前作とのクロスです。
キャラクターや作品全体の雰囲気において前作の方が好きであるというのも大きな理由です。

宇宙人Kさん
期待のクロスだなんて言われたら頑張らないわけには行きませんね。
面白い作品を読んでいただけるよう、努力いたします。
アシュタロス陣営は僕も大好きです。特にルシオラとパピリオはかなりのお気に入りです。
この後、オルカみたいな目にはあわないことが決まっているため、パピリオの出番はかなり多くなると思います。
ルシオラに関しては、まだ秘密です。不自然のないよう心がけながらも、しっかり出すつもりです。

カタリナさん
指摘レスどうもありがとうございました。
時間軸に関しては第二話の最初や、あとがきで述べた通りですので、不満点があるとは思いますが、気にせずに素直に楽しむ感覚で呼んでいただけると幸いです。
名作と呼ばれている作品でも、矛盾点なんて考えればキリがないですから、深く考えないのが一番です。
これでも他のクロス作品よりは無理のないように作ったつもりです。
.hackを使ったクロスがほとんどないのは、ただ単にどうしてもゲーム内が舞台となってしまうからだと思っています。
ですので、ゲーム内を舞台にしたクロスでも面白いことを証明して、.hackを使用したクロス作品を増やそうというのが目標の一つだったりもします。

はるかさん
SIGNのキャラクターは出し難そうな方が多いですが、出来る限り登場させられるよう努力いたします。
ですが、司や昴は出すだけでも話が捻じ曲がる可能性大なので、出せるかどうかは解りません。
まぁ司に関しては、もう既に薄っすらと存在を残してるんですけどね……。第四話あたりを読んでから第一話を読むと、謎が解けます。


この後もまだまだ続きますが、長らくお付き合いください。

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