インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「.hack//G.S. レベル1(.hack+GS)」

脳味噌コネコネ (2006-09-01 23:35/2006-09-04 22:26)
>NEXT

横島忠夫は驚きと興奮を感じていた。
彼の目の前に広がるのは、アニメチックな3Dで彩られた世界。
そして、そんな世界を、ファンタジックな人々が行きかう姿である。
技術の革新。トップクラスのGSとしてゲームなど長い間やっていなかったのだ。驚かないはずも無いだろう。

「これほんとにゲームの中なのか?」

そう声に出せば、その世界の中でそれは響いていく。ゲームの中で彼は喋っているのだ。

「そうでちゅよ!これがThe worldなんでちゅ!」

現実とそっくりな姿の少女が楽しそうに言う。
アニメチックな色合いの似合う姿であったからか、ゲームに出てきそうだ。
いや……ゲームなのだ。
全世界で一千万人以上のプレイヤーが存在するオンラインRPG『The world』
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)により、あたかもその場にいるかのような感覚を覚える圧倒的なグラフィック。
自分の声をそっくりそのまま響かせる新型の音声認識システム。
自分のキャラを自由に作り、そしてその姿で旅に出るプレイヤー。
そんな数え切れないほどの魅力により、世界中のプレイヤーを魅了しているのだ。
前々から話に聞いていたし、気になってもいた。
何せ多くのGSもまたこれに魅了され、今や多大な社会現象を引き起こしている。
周りで話されるのは、ほとんどがこのゲームの事なのだ。
目の前にいるパピリオだけでなく、知り合いのGSやクラスメートもThe worldにハマりきっている。
学校のパソコンで、先生達と一緒に愛子が遊んでいたところを見たのは記憶に新しい。
多くの人々が、学校も仕事すらも放棄するまでにいたっている現状は、呆れる以前に圧倒されるものがある。
……仕事のために来たのではあるが、この際思う存分遊んでみたい。それが、横島忠夫の心情であった。

「まずはレベル上げでちゅ!行動範囲を広げるのでちゅ!」

此処へは仕事でやってきた。CC社からの依頼だ。
最近The worldでは、原因不明の奇怪な事件が多発している。
意識不明者さえ出てきているのだから、出来る限り即急に手を打たなければならないのは明白だ。
CC社が問題について調べたところ、その問題に霊的な『何か』が関係していることを突き止めた。
そこで、最も優秀なGS事務所の一つとされる美神除霊事務所に、依頼が舞い込んだのである。
ゲームの苦手な美神は外側から、そして横島が内側から調査することになった。
その際彼らの身内の中で、最もThe worldをやりこんでいたパピリオに協力を頼んだところ、
横島のPC『蛍』のメンバーアドレスを条件に引き受けてくれたのだ。

「なあパピリオ、やっぱりレベルの高いエリアに行って、直ぐにレベル上げるのか?」

話を聞いていた限りの情報を持つ横島が問う。このゲームを楽しみたいと思う感情からの言葉だろう。

「そんなことしたらせこいでちゅ。初心者向けのエリアでスパルタでちゅ。
 それとゲームの中でリアルの名前を言うのは厳禁でちゅよ」
「スパルタって……お前なぁ」

スパルタなのはどうかと思うが、マナーに関しては当然のことだろう。
如何せん横島はネットゲームなどしたことがない。パソコンをつつくことさえほとんど経験が無いのだ。
リアルの名前を言うというのはわりとあることであり、仕方が無いといえばそうである。道を行くPCにナンパしないだけマシだと思えばいいだろう。

「そこに行くお嬢さん!僕と素敵なゲームライフを送りませんか?」

訂正……こいつのマナーをスパルタで教育すべきである。

「あら、私と遊んでいただけますの?」

普通なら嬉しい言葉だろう。しかしその声は明らかに、男性のもの。
どうやらネカマだったようだ。気色悪い声に全速力で後退する馬鹿には、良いお仕置きとなっただろう。

「蛍……その姿でナンパするのはやめてくだちゃい」
「あ……あぁ。というかネカマって本当にいるんやなぁ……」
「ネカマもそうでちゅけど、女PCを使っている男の人はたくさんいまちゅ。
 それにそんなことしてまちたら、PCを削除されちゃいまちゅよ」

まったくもってその通りだ。
ネットゲームでナンパ行為に出る者はいるにはいるが、それが迷惑であった場合は削除されることすらある。
ましてや今は仕事の身。横島は常時CC社に監視されているのだ。
別の場所から彼を見守る亜麻色の髪の女性の額に青筋が入ったのは、間違いない。
幸い横島は、妙神山からアクセスしていた。もしこれが美神の前でならば、ちょっとした暴力事件になっていただろう。
さきほどパピリオが『その姿で』といったが、それは横島のPC『蛍』のデザインがルシオラをモデルとしたものであるからだ。
ルシオラの姿を少年風に改造したのが、蛍なのである。
見た目の年齢は十五前後、しかもその姿はルシオラそっくりだ。
その姿でナンパをされるのは、パピリオにしてもあまりいい気分ではないだろう。別な理由が存在しなくも無いのだが・・・。
ちなみに蛍とパピリオのPC『パピー』の設定はというと


PC名:蛍
職業:双剣士
ステータス振り分け:スピード重視
魔法耐性:闇・木
考察:素早さを活かした攻撃や補助がメインとなるタイプ。
守備が若干脆いが、実力があればスピードで十分にカバーできる。
プレイヤーの実力に左右される点が多い。


PC名:パピー
職業:呪紋使い
ステータス振り分け:火力重視
魔法耐性:雷・闇
考察:高い魔法攻撃力による魔法攻撃がメインとなるタイプ。
防御面はかなり脆いが、雑魚・ボス共に高い攻撃力を発揮する。
使用する呪紋の選択は知識と経験が必要。


守備に難ありなパーティーであるが、パピーのレベルが50であるためまったく問題ない。
50とは現在のThe worldの上限レベルであるが、その中でもパピーは別格の域に達していた。
『蒼海のオルカ』や『蒼天のバルムンク』といった呼び名で呼ばれる二人と同等のレベルである。
『神霊のパピー』といった呼び名さえあるのだ。
The worldはレベルを上げるのに時間のかかるゲームであるが、50に達するのはそう難しくない。
それ以上に『技術』や『育て方』『キャラメイク』『装備』等が重要であり、その点でパピーは、現在のThe worldで最強クラスのPCである。
また『性格』や『人脈』等も重要な要素であり、それによっては低いレベルでも呼び名を持つPCもいる。
『伝説のハッカー』や『伝説のPK』といった呼び名もあるが、そう呼ばれるPCは会うことすら難しい。正に『伝説』なのだ。
パピーは実力もそうなのだが、それ以上に『アイドル』としての人気が高い。『妖精』や『可憐舞蝶』といった呼ばれ方をすることもある。
「でちゅ」等の明らかにあれな喋り方をするのもあり、男性だけでなく女性にも親しまれていた。
The worldのプレイヤーで彼女を知らない者は初心者かモグリだろう。

「なぁ……この飛んでくる視線は何だ?」

そんなPCとパーティーを組んでいる蛍に対して、嫉妬の含まれた視線も飛んでいた。
パピーが有名なPCであることは知っていたが、これだけ美麗なグラフィックで見れば、驚かずに入られない。
/jealousyと入力することによって、彼らは嫉妬の視線を向けていた。

「気にする必要ないでちゅ。あの人たちはいつもああでちゅから」
「……いつもああなんだな……」

有名なのもあまり良い立場じゃない……と、そう思う横島であった。


Δ萌え立つ 過超しの 荒野にて


横島は再度驚愕していた。その視界の中で、自分と同じくらいの大きさのゴブリンが歩いているのだ。
リアルな視点で見るゴブリンは、本や映画の中から飛び出して来たように思える。
本当に生きているかのように動く姿は、妙にのどかであった。

「ん……何してんだ?パピー」

見ればパピーは、変な形の笛を取り出している。思考を巡らした横島は、それがプチグソの笛であることに気付いた。

「なんだか思ってたより変だな……それ」

パピーが笛を使用すると、どこからともなく妙に熱い生き物が走ってきた。

「ロッカー、元気にしてたでちゅか?」
「当たり前さベイベー。俺のハートはいつでもバーニングなのさ」

濃い……。横島のロッカーグソに対しての第一印象はこれだ。他のプチグソも濃いのばかりなのだが・・・。
プチグソとはThe worldの世界に住む動物である。プレイヤーが小さなヒナから育て上げ、ロッカーグソのような成獣へと成長させるのだ。
プチグソのエサとなるアイテムを集めて食べさせていくことにより、プチグソは成長していく。
どんな成獣となるかは、エサの選択とプレイヤーの愛情に左右され、大抵の場合はクソキゾクという最下級のプチグソとなる。
クソロッカーは最上級のプチグソであるが、もともとのパピリオの性格がこの結果を生んだのであろう。
そして成獣となったプチグソは、各エリアにて移動用に使われる。つまり馬のような存在なのだ。

「ロッカー。早速ダンジョンにレッツラゴーでちゅ!」
「任せておくんだぜベイベー」

走り出したロッカーのスピードは恐ろしく速く、そして無駄がない。
横島は知らないが、このロッカー、出場したプチグソレースには全勝、連勝記録においても現在トップである。
現実でこのレベルのスピードに慣れている横島にも、アニメ調のグラフィックの中では新鮮だと思えた。。
そう、彼にとってはこの世界の全てが新鮮だ。
そんな彼が、たった一人を除いて誰も感じたことのなかったこの世界の中の現実に、触れることになる。
オカルトの領域に触れてしまったゲームが危険なのは当然で、注意を怠ってはいけない。
しかし、この時の彼には、自分を直ぐに魅了してしまったゲームへの好奇心ばかりがあったのだ。
だからせめて、その意思が導いた結果が、彼にとって幸であることを願いたい。


 あとがき
未だ誰も書いてなさそうなクロスオーバーにチャレンジ!
ちなみにクロス物を書くのははじめてだったりします。
連載したいと思っておりますが、読者にウケるかどうかわからないネタなので、様子見とさせていただきます。
.hackキャラだけでなく、GSメンバーも続々参加してきます。
ギャグでもシリアスでもない、ほんわかしたムードのお話を目指しておりますので、応援よろしくお願いいたします。

>NEXT

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze