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▽レス始

「これが私の生きる道!新外伝2 夏のキャンプ編(後編) (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-09-02 23:09)
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 「「「「「つまんないぞーーー!」」」」」

 「「「「「責任者を出せーーー!」」」」」

本物の幽霊に遭遇してしまった俺もどうにか落ち
着き、時間もまだ夜の十時だったので、予想外に
つまらなかった肝試しに、全員が不満の声をあげ
て考案者のカガリを追求していた。

 「私が悪いって言うのか!」

 「何か、面白い事はないのかよーーー!」

 「海水浴、釣り、狩り、冒険、ビーチバレー。
  みんな楽しんでいたじゃないか!」

 「もっと、他の何かを!」

 「俺達を燃えさせる何かを!」

 「だってさ、カガリちゃん」

 「そんな事を言ってもな・・・」

 「カガリ様、あれがあるじゃないか。(蛸壷)
  のお宝探しの話しが」

 「あれか?眉唾くさい話だぞ」

 「それを判断するのは連中だ。それに、奴の財
  宝はいまだに見つかっていない」

 「何それ?お宝ですか!」

 「聞かせてくれ!」

 「俺も!」

ガイの話を聞いた男性陣が、一斉にカガリの言葉
に耳を傾け出した。

 「良くある話さ。海賊を捕らえて処刑したのは
  良いが、その宝が行方不明って奴だ。近代の
  海賊なので、強奪した船と物資をブラックマ
  ーケットに売却して得た利益で、推定で三千
  万アースダラーほどと言われている」

 「三千万アースダラーか・・・」

 「凄いな・・・」

カガリの説明に、男性陣の全員が生唾を飲み込み
始める。

 「他の島は捜索済みだが、ここは貴重な自然が
  多く残っているので、本格的な調査を行えな
  かったようだ。本当に、環境保護団体という
  のは、細かい事に気が付く連中だよな」

 「それで、万が一にもお宝が見つかったら?」

イザークが声を上ずらせながら、宝が見つかった
時の分け前を聞き始める。

 「基本的には無税だ。つまり、見つけた奴の物
  って事だな。海賊の被害者達の賠償請求も百
  年も経てば、無効だからな」

 「という事は・・・」

 「お金持ちになれるぞ!」

 「何でも買えるんだ!」

 「男の夢を!」

 「ロマンを!」

 「行くぞ!野郎共!」

 「「「「「おーーー!」」」」」

カガリの見つけた奴の総取りという言葉に、全男
性陣が一斉に反応して、いくつかのグループに分
かれてテントに戻ってしまう。

 「うーん。男は全員やる気満々で、女はどうで
  も良いって感じなのね。ユリカさんとエミさ
  んは、こういうの好きそうだけど」

 「私達は、大会社の大株主で次期経営者ですか
  ら、業績が良ければそのくらいは」

 「そうよね。それに、百年も見つからなかった
  物が、急に見つかるものですか」

 「フレイはどう思う?」

 「別に無理に探さなくても、イザークが見つけ
  てくれれば、何か買って貰えるし」

 「そうよね。彼氏及び旦那さんがいる人は、問
  題ないしね」

女性陣は、自分の相棒が見つけてくれればそれは
自分の物という、現実的な意見を持っていた。

 「私はどうなるのよ!」

 「レナ中佐は、フラガ中佐が見つければ、口止
  め料を貰えば良いじゃないですか。絶対にマ
  リューさんには、秘密にしてヘソクリが欲し
  いでしょうから」

 「秘密にできるんですか?」

 「この島の中なら大丈夫だ。絶対に見つからな
  いとは思うが、万が一にもそんな事があった
  ら、アスハ家が見つけた事にしてやる事にし
  た。税金等は払ってやるし、残りはどこかの
  慈善団体に寄付をした事にしてやる」

 「随分と優しいのね。カガリは」

 「そんなわけがあるか!人の企画につまらない
  とか散々文句を言いやがって、せっかくの休
  みに汗まみれ、土まみれ、虫まみれで這いず
  り回っていればいいんだ!」

 「結構、根に持っているのね。カガリは」

 「ステラ、寝る。明日も沢山遊びたいから」

 「そうね。みんなもう寝ましょう」

 「「「「「「おやすみなさい」」」」」」

こうして、この世界で誰よりも現実的で強い女性
達が、明日のために眠りに就いたのだが、残りの
男性達は、数人ずつのグループにわかれて作戦会
議を行っていた。

 「三人だから、一人一千万アースダラーか」

 「カザマ常務はそのお金で何をしますか?」

 「そうだな。まずは車のオプションを、全部最
  高級品の物に交換して、毎日の晩酌を○ビス
  のビールに変えようかな。それと、サクラと
  ヨシヒサに頻繁に会いに行く資金という事で
  」

 「意外とささやかですね。ラウはどうなんだ?
  」

 「そうだな。ミサオは八割をよこせと言ってく
  るだろうが、上手く交渉して、七割五分から
  七割に持っていきたいことろだな」

 「・・・・・・。ラウ。悪いが、そんな考えを
  している男に、宝は見つけられないと思う・
  ・・」

 「そういうギルバートはどうなんだ?」

 「今度、サザビーズのオークションに(ナポレ
  オンのチェス)が出品される事になったのだ
  。私としては、是非欲しいところだ。それに
  、男には甲斐性が必要なんだ。そのお金を持
  っている事によって、若い女性に食事を奢っ
  たりして・・・。別に、不倫とかそういう事
  ではないぞ!何と言うか、政治家として若い
  世代の意見を参考にするという・・・」

 「デュランダル外交委員長、いいわけがましく
  ないか?とにかく!我々には、過去につちか
  った多くの経験がある!若者達になど負けて
  いられるか!ガキに大金なんて不要だ!」

 「ですな。妻帯者は色々と大変なんだ!」

 「カザマ君は除いてだがな」

 「奴は息子ながら、許せない男だ!」

 「そうですな。宝さえ見つかれば、カザマ君に
  たかる生活も終了を告げるのだ!さあ、張り
  切って行くぞ!」

 「「「おーーー!」」」

デュランダル外交委員長は、部下にたかっている
自分の親友は、軍人としても、人としてもどうな
のかと思ったが、気を持ち直して一致団結する事
を誓うのであった。   


 「ハイネ隊六名で、一人頭五百万アースダラー
  か。悪くない話だよな」

 「そうだな。他の連中は甘く見ているかもしれ
  ないが、相手は、百年も見つかっていない未
  知のお宝だからな。六人でやった方が確立も
  上がるってもんだ」

 「ジャック!良い事言うじゃないか」

 「俺は一応赤服なんだぞ!」

 「そう言えば、そうだったな」

 「失礼な隊長だな」

 「「「「(あくまでも、一応だよな)」」」」

だが、同じ事を他の四人も考えていた。

 「それで、宝が見つかったら何をする?」

 「ハイネはどうするんだ?」

 「欲しいものも一杯買えるし、デートにも行き
  放題だな。ジャックはどうなんだ?」

 「ナイフコレクションの充実だな」

 「コンガは?」

 「ささやかな教会を立てたいと思います」

 「ジーナス達は?」

 「自分専用のトレーニングルームを作る!」

 「専属のヘアスタイリストを雇う!」

 「ザンギエフ、お前はどうなんだ?」

 「古くなった包丁と鍋を買おうかと・・・」

 「お前ね・・・」

ザンギエフの返事に、全員の気力が抜ける。

 「高級な包丁と鍋セットを買え!明日は気合を
入れて探すぞ!」

 「「「「「「おーーー!」」」」」」

ここでも、男達が参戦の名乗りをあげたのであっ
た。


 「キラ、お宝だそうだ。どうする?」

 「僕は当然参加するよ。欲しい物もあるし。ニ
  コルはどうする?」

 「そりゃあ、僕も参加しますよ。欲しい物もあ
  りますから」

オーブ在住のコーディネーター三人組も、テント
内で相談を続けていた。

 「アスランは参加しないの?」

 「俺とて人の子だ。人並みに欲もある。新型の
  大型トリーと高速機動型ハロの試作品を作り
  たいからな」

 「アスラン、お金を持っているじゃないか」

 「そうですよ。トリィーとハロの特許があるじ
  ゃないですか」

 「せっかく儲けたお金を、無駄な試作品に費や
  すなとカガリに釘を刺されていてな。お金持
  ちというのは、お金にシビアだからな」

 「僕も、自室にスーパーコンピューターを置き
  たいんだけど、レイナに強硬に反対されてい
  てね」

 「オフィスじゃないんだから、そんな物を普通
  置くか?」

 「僕には必要な物なんだよ」

 「僕は練習用の設備を完備している家を建てた
  いですね。わざわざ、他所に練習に行くのも
  大変で」

音楽家であるニコルの一番の問題は、居候をして
いる関係で、練習場所が不足している事であった

 「でも、イザーク達はこちらに参加しないんで
  すね」

 「分け前の問題とか、アスランへのライバル心
  とか色々あるんじゃないの?」

 「何にせよ、三人なら分け前も上がるという事
  だな」

 「じゃあ、早く寝て明日に備えましょう」

こうして、ニコルの冷静な一言で、三人は早めに
就寝するのであった。


 「ラスティー、アスランには負けられないぞ!
  」

 「そうだな。アカデミーの成績とはわけが違う
  からな。ところで、コーウェルさんは、シン
  達やヨシさん達に合流しないのですか?」

ラスティーは、自分達のリーダーを勤めてくれて
いるコーウェルに一番の疑問を投げかける。

 「俺はこのメンバーで十分に勝算があると思っ
  ているし、金銭に余裕があるカザマと組むの
  はシャクだからな。それに、シン達では経験
  不足もいいところだ」

 「なるほど。しかし、ディアッカの不参加も痛
  いですね」

 「まあ、事情が事情ゆえに今回は仕方があるま
  い。お宝を見つけたら、豪華な結婚祝いを渡
  せば良いさ。さて、話を続けるぞ。いいか、
  この地図を見るんだ・・・」

コーウェルはどこから手に入れたのか?
この島の地図をテントの床に広げる。

 「候補地にはチェックが入れてある。話を聞く
  と、例の洞窟周辺が第一候補だが、先ほどの
  カザマが幽霊を見た話も加味すると、あの祠
  周辺も怪しい事になるな」

 「さすがは、赤服」

 「仕事も素早い」

コーウェルの説明に、ラスティーとイザークが感
心したような顔をする。

 「(公務員は薄給なんだ。ここで、宝を手に入
  れられれば・・・)」

こちらの三人は、夜遅くまで綿密に作戦会議を行
うのであった。


 「シン、どうするんだ?」

 「えっ、明日に普通に探せば良いじゃないか」

 「細かい作戦とかはないのか?」

 「レイが考えてくれよ。休みに細かい事を考え
  たくない」

 「お前はいつも、細かい事を考えていないだろ
  うが!」

 「悪かったな。じゃあ、ジュール隊長達と同じ
  事をしよう」

 「究極の手抜きだな・・・」

 「人数が一人多いから、出し抜ける可能性が高
  い」

 「ほう。意外と狡猾な手を考えたものだな」

 「まあね」

シンの一番労力を使わない作戦案に、レイが珍し
く感心している。

 「俺達、このグループで大丈夫かな?」

 「さあ?」

だが、ヨウランとヴィーノは、シン達のグループ
に加わった事を少し後悔し始めていた。


 「俺達は、過去に戦矛を交えた事もあったが、
  これからは同志だ。お宝を見つけてリッチな
  生活を送ろうぜ!」

ここに、過去のしがらみや恨みを忘れて一つの同
盟が完成しようとしていた。
フラガ中佐、エドワード中佐、ハワード三佐、ホ
ー三佐、石原二佐、相羽三佐による中間管理職同
盟である。

 「そうだな。俺は広大な土地を購入する資金に 
  する。大農園の経営者に一歩近づいたな」

 「俺は、道場の建設資金にあてる。軍を退役後
  は、老道場主になるのさ」

エドワード中佐とホー三佐には、みんなが納得す
る夢があったのだが、他の連中はバカばかりであ
った。

 「俺は、マリューが知らないヘソクリが出来れ
  ば良い」

 「他の見つけられなかった連中から漏れそうだ
  な」

 「(海賊のお宝を旦那さんが見つけました)な
  んて、突飛もない話を誰が信じるものか。上
  手く誤魔化していくさ」

過去に、多数の過酷な実戦を潜り抜けたフラガ中
佐ではあったが、自分の嫁さんについての認識は
、少し甘いようであった。

 「石原二佐は、お金なんて沢山あるんだろう?
  」

 「バカ言えよ。政治家の家なんて、それほど金
  持ちじゃないんだぞ。しかも、俺は貧乏公務
  員ときているからな」

 「なるほどね」

 「マユラに内緒の資産を持つか。長い夫婦生活
  で、多少は優位に立てる可能性があるな」

 「夫婦生活って戦いなのか?」

 「エドワード中佐、君も結婚すればわかるさ」

 「本当かよ」

 「それで、相羽三佐とハワード三佐は、宝が手
  に入ったらどうする?」

 「「そりゃあ、毎日パブ(キャバクラ)に通う
  さ!」」

 「(せっかくのお宝をそんな事に使うのか・・
  ・)」

石原二佐の心の声をよそに、二人は自分達の大好
きなお店の事を語り始めるのであった。


   
 「さて、俺達も作戦会議を始めるとするか」

 「本当に僕達だけで大丈夫なのかな?」

 「キラ達と合流した方が良くないか?サイ」

 「それでは分け前が減るし、
  俺にもプライドというものがある!」

サイ、カズイ、トールの三人は、サイが中心にな
って独自の行動を取る事を決意していた。

 「でもさ。向こうは、優秀な人達が多いじゃな
  いか。本当に僕達だけで・・・」

 「カズイ!俺達だって、飛び級を重ねてカレッ
  ジを早く卒業したじゃないか。自信を持つん
  だ!」

 「そうかな?」

 「そうだ!それに、この切り札があれば!」

サイは二人に携帯端末を見せる。

 「これは?」

 「この島の衛星写真だ。精度も中々のものだろ
  う?やはり、一番怪しいのは島の中心にある
  洞窟なので、そこを中心に捜索を行う。次に
  、過去の世界中の様々な財宝が見つかった事
  件の経緯と、この(蛸壷)なる海賊のデータ
  を参考に、財宝の隠し方の傾向を探って・・
  ・」

 「サイ、気合が入っているな」

 「本当にリーダーみたい」

 「アーガイル海運三代目社長(予定)の実力を
  見せ付けてやるんだ!みんな、気合入れて行
  くぞ!」

 「「おーーー!」」

こうして、目立たない少年達も戦いの狼煙をあげ
るのであった。


 「親父、上司、友人達、部下達・・・。俺に誘
  いが来ないとはどういう事なんだ?俺は実は
  嫌われていたとか?」

 「お前に財宝を渡すのが嫌なんだろうな」

 「なぜに?義成兄さん!」

 「義弘は、恵まれ過ぎだから」

 「マスオさん状態だけど、生活に必要なものは
  、全て嫁さんが出してくれて、好きに趣味に
  没頭したり、遊んだりしているからだな」

 「俺達は一人暮らしになって、金が掛かるよう
  になったうえに、彼女とのデート代も結構痛
  いからな」

 「そうだったのか・・・」

俺は、従兄弟達から告げられた衝撃の事実に、シ
ョックを隠しきれないでいた。

 「では、何で二人は俺とやる事に決めたんだ?
  」

 「それでも、お前は同志だからだ」

 「そうだ。世間で肩身の狭い同じオタク同志彼
  女や嫁さんに呆れられつつも、漢の道を行く
  我らを助けてくれるのは、仲間しかないんだ
  !俺は、レトロゲームコレクションを完成さ
  せて、必ずゲーム博物館を作ってやる!老後
  は、初代館長としてゲーム三昧の日々を送っ
  てやるぞ!」

 「俺は、自分でガレキの新製品を作るんだ!そ
  れに、今まで買えなかったアレやコレや」

 「俺は、コレクションを完成させるのみ!今ま
  で、高額で手が出なかったアレやコレが買え
  るぞ。ラクスが無駄使いするなってたまに釘
  を刺すから・・・」

 「そうか。お前も意外と苦労しているんだな」

 「完璧な嫁さんに見えるんだけどな」

 「そこで、我らが勝利を収めるためにゲストを
  呼んだ。彼の手腕に期待しようではないか!
  」

 「「おーーー!」」

 「それで、俺が呼ばれたわけなのか・・・」

テント内の端っこで、俺達三人の会話をつまらな
そうに聞いていた、自称最高の傭兵の「ムラクモ
・ガイ」が、やっと重い口を開き始める。

 「ほら、任務であの洞窟を捜索していたガイに
  参考意見を賜ろうかと。それに、加わってく
  れれば四等分にするけど」

 「そんな、本当に見付かるかどうかもわからな
  い物のために貴重な休暇を潰せるか。俺は明
  日は休む!」

 「風花ちゃんの水着目当てだな」

 「そうだな。あの娘は健気で可愛いからな」

 「萌えているんだろうな。最高の傭兵も」

 「勝手な妄想を巡らすな!このオタク共が!」

 「と言われても、オタクなのは事実だしね」

 「そうだよね」

 「仕方がないよね」

 「とにかく、俺は普通の女性が好きなんだ!風
  花はまだ子供・・・」

 「ガイ、明日の水着なんだけど・・・」

ガイが俺達の発言を否定して、風花ちゃんを子共
だと言った瞬間に、最悪のタイミングで本人がテ
ントの中に入ってきた。
そうやら、ガイに水着を選んで欲しかったようだ

 「あのな。あれは・・・」

 「どうせ、私は子供ですよ!ガイのバカーーー
  !」

風花ちゃんは、泣きながら外に走り出してしまっ
た。

 「あっ!風花、待て!」

 「あーあ。可哀想に。女の子っていくつでも女
  なのに、子供扱いしちゃって」

 「あれはマズイよな。明日は、事情を聞いた女
  性陣から総スカンだな。飯も貰えなくなるぞ
  」

 「やれやれ、最高の傭兵も女心はわからずか」

ボー然とするガイを見ながら、俺達は好き勝手な
事を言い始めるが、ガイはすぐに復活して反論し
てくる。

 「お前達のせいだろうが!」

 「責任転嫁は良くないよ。ガイが子供扱いした
  のは事実じゃないか。それに、風花ちゃんが
  いないと何もできない癖に」

 「義弘の言う通りですよ。噂によると、あなた
  は傭兵の仕事以外の私生活は、駄目駄目とい
  う話じゃないですか」

 「今のうちに直しておかないと、楠木重工に入
  ってから辛いですよ」

 「とにかく、俺は失礼する!それに、あの会社
  には入らないからな!」

 「ガイ、ちょっと」

ガイは急いで風花ちゃんを追いかけようとするの
だが、それを俺が呼び止めた。

 「何の用だ?カザマ」

 「情報の提供だけは忘れないでね」

 「この!鬼畜一族がーーー!」

 「忘れないでねーーー!」

俺は、風花ちゃんを探すために、駆け足で遠ざか
っていくガイに声を掛け続けるのであった。

 「情報の提供を忘れないでねーーー!」

尚、その後のガイは、岩場の隅で泣いていた風花
ちゃんに必死に謝って、次の日に丸一日付き合う
という条件で、どうにか許して貰ったらしい。


 「さあて、お宝が俺を呼んでいるぜ!」

 「ハイネ隊、行くぞ!」

 「ふふふ。大型トリィーの試作」

 「スパコンを僕の部屋に」

 「毎日、キャバクラに行くぞ!」

 「コレクション命!」

翌日の早朝、焦るように朝食を取った俺達は、宝
探しのために島の各地に散っていった。

 「男って本当にバカよね。一日で簡単に見つか
  るくらいなら、未知の財宝のわけないのに」

 「レナ中佐の言う通りね。私達は普通の休暇を
  満喫しましょう」

 「男はロマンが大好きな生き物だからね」

 「おお!母さん、至言だな」


 「ガイ、情報は提供したのですか?」

 「まあな。あれが役に立つとは思わないが」

 「それを判断するのはカザマさんですから」

 「それもそうだな」

 「何か見つかったら、情報提供料を貰いましょ
  う」

 「そうだな。あくまでも、万が一の事だろうけ
  ど」

ガイと風花は、のんびりと朝食を食べながら、何
かしらのお宝が見つかってくれる事を祈っていた


 「シン。何か、全然見つからないな」

 「文句を言わずに探せよ。ヨウラン」

 「レイ、何か見つかったか?」

 「いいや。まだだ」

俺達は、各グループに分かれて島の捜索を開始し
たが、例の洞窟と祠以外に過去に人がいた痕跡が
残っている場所は皆無であり、全員がその近辺を
懸命に探っていた。

 「フラガ中佐どうですか?」

 「うーん。見つからないな」

 「相羽。どうだ?」

 「昔のゴミしかないぞ」


 「キラ。何をしているんだ?」

 「今、データを打ち込んで予想を立てている」

 「さすがですね。キラは」

 「でも、プログラムが即席だからな」


 「ハイネ。喉が渇いたぞ」

 「水くらい自分で何とかしろ」

 「ハイネ。リーダーが悪いから見つからないぞ
  」

 「ハイネ。疲れた」

 「ハイネ。神に見放されていますね」

 「うるさいんだよ!お前達は!真面目に探しや
  がれ!」


 「サイ。どうだ?」

 「うーん。ポイントを変えるしかないのかな?
  」

 「でも、そのあとに見つかったら、悔しくない
  ?」

 「新しいポイントで見つかる可能性もあるだろ
  うが」

 「トール。そんな事を言い始めたら、何もでき
  ないぞ」


 「ラウ、無駄に汗ばかりかいて、何も見つから
  ないぞ」

 「ギルバート。外交と一緒だ。日々の弛まぬ努
  力から・・・」

 「今日一日しかないぞ」

 「カザマ常務はどう思われます?」

 「ここは、待ちの姿勢で行こうかな?」


 


 「ラスティー。そっちはどうだ?」

 「何もないですよ」

 「イザークは?」

 「百年ほど前の食器とか、そんなものばかりで
  す。しかも、割れてて使えないですし」

 「うーん。どうしたものかな」


 「みんな、洞窟とその周辺で捜索をしているよ
  うだな」

俺達三人は、みんなとは違って、例の祠周辺を探
っていた。
昨日見てしまった幽霊達が、気になってしょうが
なかったからだ。

 「でも、この祠はアスハ家が作ったんだろう?
  」

 「そうなんだけど、ならなぜここに幽霊が出た
  かだ」

 「海賊のだって保障はあるのか?」

 「あのな。海賊ったって(ピーターパン)に出
  てくるような奴じゃないぞ!漁師とかに扮し
  て、船に近づく輩だ。俺が昨日見た幽霊はそ
  んな格好をしていた」 

 「本当かね?」

祠は、高さ一メートルほどの岩をくり貫いて、中
に御神体と祭壇を置いたものであり、キャンプ初
日に、カガリちゃんが供えたと思われる、花と食
べ物が置かれていた。

 「特に何もないよね」

 「やっぱ、ガセ情報なのかな?」

 「豪遊していて、財産なんて残っていないんじ
  ゃないの?その海賊」

 「まさか、相羽三佐やハワード三佐じゃあるま
  いし」 

そして、祠の周りを見渡すと、道の端に小さなお
地蔵さんのような物が設置されていた。

 「オーブでお地蔵さん?」

 「怪しいかな?」

 「でも、何もないぞ」

更に周りを見渡すと、奥の草むらの中に何かが置
かれているのを確認した。

 「茶碗かな?」

 「うわっ!汚え茶碗!」

 「そうか?お茶を飲むのに、丁度良さそうだぞ
  」

 「同じ歳なのに、ジジくさい事を言うなよ」

 「じゃあ、俺が貰うよ。義成兄さんはどう?」

 「好きにしろよ」

 「気に入ったのなら貰えば良いさ」

 「じゃあ、貰い。へえ、味があって良い茶碗だ
  な」

 「お前くらいだ。そんな事を思うのは」

 「洗って泥を落とせば、丁度よくなるのさ」

 「俺は付き合いきれん。もっと奥に何かないの
  かな?」

そんな事を言いながら、義則が俺達の前に出た瞬
間、いきなり地面に穴が開いて、義則が中に落ち
てしまう。

 「のわぁーーー!」

 「義則!大丈夫か?」

 「おい!返事をしろ!」

俺と義成兄さんが、穴を覗き込んで義則に声をか
け続けると、中から義則の声が聞こえてくる。

 「大丈夫だ。意外と浅い穴だ。それりも、お宝
  への道じゃないのか?これは?」

 「そうだよな」

 「確かに」

 「「「やったぁーーー!」」」

この時、俺達が大声で喜びの声を上げてしまった
のは、大きな間違いであった。
その声を、たまたま祠周辺に捜索範囲を変えた全
員に聞かれてしまったからであった。


 「さて、奥の様子はどうなっているのかな?」

 「俺達が見つけたんだけど・・・」

 「でも、お宝は見つかっていない。だから、ま
  だ全員にチャンスがあるという事だ」

クルーゼ司令に正論を吐かれつつ、俺達が下に降
りると中は一本通路の洞窟であった。

 「通路は一本か。しかも、真っ直ぐだな」

 「ますます。怪しいですね」

 「ニコル、いつの間に横にいたんだ?」

 「最良の位置に就くためです」

更に、俺が通路の奥を照らすと、懐中電灯の光に
照らされて、何かが反射して綺麗に光っている。

 「もしかして・・・」

 「金とか宝石では・・・」

 「「「「「俺の物だぁーーー!」」」」」

その瞬間、全員の理性が崩壊し、全力で奥に向か
って走り出したのであった。


 「親父、邪魔するんじゃねえよ!」

 「お前こそ!恵まれている男は引っ込んでいろ
  !」

 「ラウ、どういうつもりだ?」

 「たまたま肘が当たっただけさ。ギルバート、
  君こそなぜ足を出してくる?」

 「それも、たまたまだ」

 「アスラン!俺の野望のために死ね!」

 「イザークこそどけ!俺の試作品の夢が!」

 「そんなポンコツより、俺のコレクションの方
  が!」

 「審美眼も無いくせに、お金の無駄だ!」

 「何だとぉーーー!」

 「ラスティー!どけ!先輩に譲れ!」

 「あなたの実家は資産家でしょうが!」

 「お前こそ、財閥の跡取りだろうが!」

奥に何かが光っていて、金か宝石の可能性が高い

この一言で全員の理性が崩壊し、最初の取り決め
の事など記憶からすっ飛んで、奥に向かって走り
ながら醜い争いを開始していた。

 「ヨシヒロ、聞いたぞ!お前、ヒモのような生
  活を送っているらしいな!俺に譲って、自家
  用車に最高級のオーディオを付けさせやがれ
  !」

 「俺はコレクションを完成させるんだーーー!
  」


 「キラ!お前、お金持ちだろうが!」

 「お小遣い制なんだよ!だから、スパコンが買
  えないんだ!」

 「職場に何台もあるだろうが!」

 「自分の部屋に欲しいんだよ。サイこそお金持
  ちの癖に!」

 「俺は、給料だけでやりくりしているんだ!合 
  コンにもっと参加して、彼女を絶対に作るん
  だ!カズイやトールにも彼女がいるのに、世
  の中不公平だ!」

 「にもとは何だよ!俺達は努力しているんだぞ
  !」

 「そうだ!サイみたいに恵まれていないんだぞ
  !」


 「ラウ、私に譲れ!レイに借りた金が、もはや
  返済不能の水準に達しつつあるんだ。これは
  、父親としてピンチなんだ!それに、あの(
  ナポレオン)が使っていたチェスセット・・
  ・。あの美しい駒達とシックな升目がたまら
  ない」

 「いい加減、カザマ君にたかる日々を卒業する
  ためだ!君の事など知らん!」

 「私も、ラウが上司失格でも関係のない事だな
  !」


 「シン、譲れ!」

 「レイはお金持ちだろうが!ルナにアクセサリ
  ーと服と食事と・・・」

 「しっかりと、尻に敷かれているようだな!ヴ
  ィーノやヨウランと一緒だな」

 「そこまで言うか!」

 「それは、暴言だぞ!」

 「そうだ。そうだ」

 「「「しかも、彼女もいないくせに!」」」

 「ぐはっ!」


 「隊長に譲れよ!ステラをものにするために、
  資金が必要なんだよ」

 「どうせ、(ご馳走様)で終了だろうが!それ
  よりも、ちゃんと残るナイフコレクションに
  ・・・」

 「決めた!俺はスポーツクラブを経営するぞ!
  」

 「俺は美容院のオーナーになる!」

 「支部がいくつか作れますね。これは、神の思
  し召しなのです」

 「みんさん。落ち着いてください」


 「へへへ。マンションをいくつか持って・・・
  」

 「そんな不純な動機の奴はどけ!広大な農地と
  一気に機械化が可能だな。それに、最新の遺
  伝子改良作物の導入で、収穫量を上げて・・
  ・」

 「そんな、怪しい食品を作るな!」

 「安全性は保障されているんだ!(○味しんぼ
  )の○岡○郎のような事を抜かすな!」

 「我が流派を世界中に広げるチャンスだ!」

 「あんな怪しい武術を世界中に広げるな!」

 「何だと!あのトップレスバーでの出来事をア
  サギにチクるぞ!」

 「石原!どけ!俺の夢を!キャバクラのオーナ
  ーになって・・・」

 「公務員は兼業禁止だ!マイホームだ!子供部
  屋は三つ欲しいな。それに、プライベートバ
  ーとカラオケルームを」

 「芸能人のような事を抜かすな!」 


 「レトロゲーム博物館!」

 「これは、オリジナルブランドを・・・。いや
  、会社すら設立可能だ!」

 「義則、兄に譲れ!」

 「兄貴こそ譲れよ!」

 「同じオタクとしての、仲間意識はどうした?
  」

 「うるさい!オタクは種類が違うと、相容れな
  い可能性が高いんだよ!」

 「普通、本音を言うか!それに、お前もたまに
  ゲームをするだろうが!」

 「俺は新しいゲームにしか興味がない!」


それぞれがお互いの欲のために、相手をけん制し
ていたので、たかだか二百メートルほどの通路を
進むのに、三十分近くも掛かってしまったが、俺
達が奥に到着すると、広めの部屋に眩く光る女神
像や剣やコインが置かれていた。

 「本当にあったんだ・・・」

 「なるほどな。金なら価値は変わらないか」

 「凄い量だな」

 「確かに、三千万アースダラーほどの価値はあ
  るのかな」

全員が、お宝を遠巻きにして見つめていると、急
にニコルがこんな事を言い出した。

 「それで、誰の物なんですかね?」

 「「「「「俺のものだぁーーー!」」」」」

再び、けん制状態で不毛な言い争いが始める中、
その輪から外れる事に成功した俺が、同じく争い
の輪から外れているニコルにこう話しかけた。

 「ニコル。お前は、意外と腹黒いんじゃなくて
  、本当に腹黒いんだ」

 「そんな事はないと思うんですけどね。でも、
  お金って怖いですよね」

 「お前が言うなよ・・・・・・」

その後、この不毛な争いは、心配になって様子を
見にきたレナ中佐達に見つかるまで続き、疲労困
憊であった俺達は、早めに就寝してしまって、休
みの二日目は、そのまま終了したのであった。


(一週間後、ウラル要塞跡周辺「ミネルバ」艦内
 )


 「おーい!この前のお宝の分け前を持っていた
  ぞ!」

 「やったね」

 「大金。大金」

俺とコーウェルとクルーゼ司令とイザークとシン
達が、食堂内で寛いでいると、大きなお腹をした
カガリちゃんが、アスランと一緒に現れる。
結局、お宝は男性陣全員で山分けにする事が決ま
っていて、その換金をカガリちゃんに頼んでいた
のだ。

 「ほら、これだ」

カガリは、俺達に一枚ずつ封筒を手渡した。

 「さて、いくらの小切手かな?」

俺達がワクワクして中を開けると、そこには、十
アースダラー紙幣が、一枚が入っているだけであ
った。

 「どういう事?」

 「アスハ中将、事情を説明して貰おうか」

 「そうだ。納得のいく説明を!」

 「アスラン、説明してやれ」

 「ああ。実は、あれは全部真鍮製だったそうで
  す。どうやら、完全なダミーだったらしいで
  すね」 

 「本当に?」

 「ああ。あの後、お父様が個人的に捜索させた
  らしいが、同じような洞窟と同じようなダミ
  ーが五箇所ほど見つかったらしい。そのお金
  は、真鍮の重さの分の値段という事だな。美
  術的価値はゼロの品物らしいから」

カガリが話す衝撃の事実に、お宝探しに参加した
全員の気力が抜けてしまう。
多分、フラガ中佐達や石原二佐達も、ガックリと
来ているであろう。

 「たった十アースダラーか。一食分の価値しか
  ないな」

 「オーブと日本でなら、牛丼が三杯食える」

 「それじゃあ、お腹が膨れませんよ」

 「シンならそうだろうな」

 「ところで、その茶碗はどこで手に入れたのだ
  ?」

 「あの島で拾ったんですよ。お茶を飲むのに丁
  度いいと思って」

クルーゼ司令に指摘された茶碗は、あの後に洗っ
て、そのままお茶を飲むのに使用していた。

 「少し汚い色だな」

 「そうですか?味わいがあって良いと思うんで
  すけど・・・」

その後、あの島では、お宝は何も見つからなかっ
たそうだが、俺が拾ってお茶を飲むのに使用して
いた茶碗が、日本では国宝クラスのお宝で、その
価値が三千万アースダラーを超える事が発覚した
のは、ヨシヒサの孫の時代になってからであった


         あとがき

さて、次はどうしたものかなという感じです。 

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