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「これが私の生きる道!新外伝2 夏のキャンプ編(前編) (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-09-02 23:03/2006-09-02 23:06)
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(コズミック・イラ74、八月中旬、某無人島)

 「いやーーー!夏は海に限りますね」

 「本当だな」

 「早く泳ぎましょうよ。シン」

「よーし、競争だ!」

「調理の方は任せて下さい」

 「さて、食べ盛りの少年・少女が沢山いるから
  頑張らないとね」 

ここは、オーブ首長国連合の首都であるオロファ
トから、ヘリで二十分ほどの距離にある、アスハ
家が所有している無人島で、ほとんど手付かずの
砂浜と自然が自慢の、まるで旅行会社のパンフレ
ットの写真に載っているような、南国の楽園であ
った。

 「カガリちゃん、サンキューね」

 「日頃は、全く使っていないからな。私も去年
  に、お父様から始めてこの島の事を聞いたん
  だよ」

 「でも、お金持ちって凄いね。自分で把握して
  いない資産があるんだから」

 「確かに綺麗な島だけど、資産価値は無いに等
  しいんだぞ」

 「誰にも邪魔されずに、海水浴ができるじゃな
  いの」

 「それは、そうなんだけどな」

俺達の新国連軍臨時ヨーロッパ駐留軍の任務は、
まだ終了していなかったが、「夏のバカンスは必
ず行う!」という目標のもと、仕事を前倒しで進
め、留守の間に、仕事を押し付ける人間の選出に
成功したので、アスハ家の所有している無人島で
、二泊三日の海水浴とキャンプを行う事になって
いた。

 「うんうん。若い連中は元気だよね」

シン、ルナマリア、メイリン、レイ、ステラ、ヨ
ウラン、ヴィーノ、シホ、イザーク、コーウェル
、リーカさん、ハイネ達が楽しそうに海で泳いだ
り、岩場で魚を突いたり、ビーチバレーをして楽
しんでいた。

 「まだ二十二歳の癖に、年寄りのような事を言
  うな」

 「いやーーー。苦労し過ぎてるから」

 「それは認めるが、お前もまだ若いんだから」

皆が楽しんでいる様子を眺めながら、冷たいウー
ロン茶を飲んでいる俺を、カガリが呆れた表情で
見つめている。

 「それはそうと。こんなに沢山の軍人に、一度
  に休暇を取らせて大丈夫なのか?」

一応、オーブ軍中将であるカガリが、軍人の視点
で俺に疑問を投げかけてくる。

 「大丈夫だよ。代わりの人員は、用意している
  し」

 「特に、(ミネルバ)がやばそうなんだけどな
  。モビルスーツ隊のパイロットが、一人もい
  ないじゃないか」

 「それも手配済みだから。何かがあったら(ギ
  ラ・ドーガ)隊の連中が、(ディスティニー
  )や(スーパーフリーダム)で出撃するんだ
  よ。まあ、出撃なんて事態は、千分の一もな
  いけどね。それに、俺達はヨーロッパ大陸に
  上陸してから、ほとんど休みなしでやってい
  るから、これでいいんだよ」

 「お前がそこまで言うなら、大丈夫なんだろう
  けど、あの人が参加しているは、まずくない
  か?」

カガリが指差した方向には、みんなの飲み物や食
事の準備を、積極的にやってくれているザンギエ
フから、焼きそばを貰って美味しそうに頬ばって
いるクルーゼ司令の姿が見えた。
彼は、白いトランクス形の水着に仮面という、一
般人のいる海水浴場では、確実に出入り禁止にな
りそうな格好をしていて、その隣では、同じく焼
きそばを食べている親父とデュランダル外交委員
長の姿も見えた。
その他にも、レイナ、カナ、フレイ、ミリィー、
アサギ、母さんも手伝って、この大人数の喉の渇
きと食欲を満たす、食事と飲料の準備をしている
最中であった。 

 「総司令官と副総司令官が、両方いないのはま
  ずいだろう」

 「今更、クルーゼ司令が、いてもいなくても同
  じだから」

 「そういう事を、言ってるんじゃないんだけど
  ・・・」

 「大丈夫さ。代わりの人材達に、抜かりはない
  から」

 「代わりの人材達ねえ」

カガリは、ザフト軍の将来が不安になるのだが、
周りを見渡すと、アスラン、キラ、ハワード三佐
、ホー三佐、石原二佐、相羽三佐、早乙女二尉、
フラガ中佐、レナ中佐、エドワード中佐、ジェー
ン少佐が、人数分のテントを一生懸命に設置して
いたので、気にしない事にする。

 「どこの国の連中も同類か・・・」

 「もう、モビルスーツなんて、そんなにいらな
  いんだよ。治安維持は戦車と歩兵と航空機で
  十分だし、後方支援要員の方が、現状では役
  に立つんだから」

 「それは、そうなんだけどな」

 「それよりも、もう臨月に近いカガリちゃんの
  方が心配なんだけど・・・。もう、九ヵ月な
  んだよね?」

 「大丈夫だ。まだ予定日まで、一ヶ月以上もあ
  るから。それに、アスハ家専任の医者も、万
  が一に備えて待機してくれているし、シホは
  医者だから頼りになるしな」

 「なるほどね」

さすがに、泳ぐわけにもいかないカガリは、マタ
ニティードレスに身を包んで麦藁帽子をかぶり、
臨時で設置された、運動会の役員席のようなテン
トの下で、みんなの様子を眺めながら、焼きそば
を食べていた。

 「ヨシさーーーん。浄水装置の設置を完了しま
  したよーーー!」

 「ご苦労さん」

別口で、水の浄化装置を設置しに行っていた、サ
イ、トール、カズイ、ニコルが設置の完了を俺に
報告してくる。

 「この大人数だから、川の水でも使わないと大
  変だからね」

 「そのまま飲めると思うけど」

 「万が一のための処置だよ」

 「意外と、慎重派なんだな」

 「だから、生き残ってるんだよ」

 「お前が言うと、説得力があるな」

 「まあね」

 「ところで話しは変わるけど、これだけ沢山の
  参加者がいても、欠席の人間がいるんだよな
  」

 「そうだね。ラクスとサクラとヨシヒサは参加
  できないし、ディアッカ、ユリカ、エミ、義
  成兄さん、義則、マリューさん、ミゲル、ジ
  ローも本国にいるから来れないだろうな。奥
  さん達は、子供が小さすぎて駄目だしね」

宇宙船のGを緩和する技術は、過去とは比べ物に
ならないほどに進化していたが、三歳以下の子供
の移動は、暗黙の了解でタブーとされていたので
、子供達の参加は数年後になるであろう。

 「それで、押し付けたって、誰に押し付けたん
  だ?」

 「それは、ここにいない人達でしょう」

俺は意地悪そうな笑顔で、カガリの質問に答える
のであった。


(同時刻、ウラル要塞跡の近辺) 

 「はっくしゅん!誰か、私の事を噂しているの
  かな?」

 「さあ?でも、カザマ司令も酷いですよね。バ
  カンスに俺達を誘ってくれないなんて」

ウラル要塞跡に鎮座する「ミネルバ」では、要塞
通路の発掘作業がほとんど終わっていたうえに、
山地に逃げ込んだ脱走兵の捕獲も一段落していた
ので、あまりする事もなく、みんなが暇を持て余
していた。

 「エイブス班長もそう思いませんか?」

索敵担当のバート・ハイムは、付き合いが長いの
で絶対に誘われると思っていたのだが、実際にブ
リッジ要員で誘われたのはメイリンだけで、全員
がつまらなそうな顔をしながら、日常の業務をこ
なしていた。

 「俺は本国に戻ってから、長期休暇を取るから
  。もう、申請は通っているから、家族とキャ
  ンプにでも行こうかと思っている」

モビルスーツの整備状況を報告に来たエイブス班
長が、バートの質問に、特に不満もなさそうに答
える。

 「アーサー艦長はどうなんです?」

 「私もプラントに戻ったら休暇を取るよ。彼女
  と旅行に行くんだよ」

アーサー艦長は、日頃は忙しくてなかなか会えな
い恋人と、旅行に出かけるつもりである事を伝え
る。

 「はあ、一人身は辛いな。せめて、カザマ司令
  が誘ってくれればな」 

留守番を仰せつかった連中の中で、ただ一人大き
な不満を抱くバートであったはずだが・・・。

 「俺も付き合いは長いんだよ!」

 「俺もだ!」

火器管制のチェン・ジェン・イーと、操艦担当の
マリク・ヤードバースも、思いは同じであるよう
であった。


(同時刻、ジブラルタル基地の臨時司令部内)

 「クルーゼがバカンスに出かけられて、僕が留
  守番なんて、この世の中、絶対に間違ってい
  ると思う!」

 「私もその意見に賛成です!」

ジブラルタル基地の司令部で、バルトフェルト総
司令代理とダコスタ副総司令代理の意見が一致し
て、二人は大きな声で不満を述べていた。
更に、運の悪い事に、二人の留守の間に代行業務
を行うのはこの二人であり、遊びに行けないわ、
忙しくなる可能性があるわで、踏んだり蹴ったり
の様子であった。

 「バルトフェルト総司令代理、溜まっている書
  類の決裁をお願いします」

 「僕は溜めていないぞ!」

 「ほとんどが、クルーゼ総司令のものです。本
  当でしたら、カザマ副総司令がやってくれる
  のですが、彼もお休みですので・・・」

バルトフェルト総司令代理の目付け役として、ジ
ブラルタルに派遣されたカツコフ参謀長が、大量
の書類を両手に抱えて、決済を迫ってくる。

 「覚えてろよ!クルーゼ!」

 「カザマ副総司令、恨みますよ・・・」

二人は対照的な大きさの声で、それぞれの相手に
向かって文句を言うのであった。

 「私は、ラクス様が参加していないから関係な
  いな」

 「俺は参加したかったぜ!」

 「俺もだ・・・」

ヒルダには、特に不満はなかったようだが、ヘル
ベルトとマーズは、誘われなかった事に大きなシ
ョックを受けて、大分凹んでいた。


(同時刻、モスクワ郊外の基地内)

 「はあ。フラガ中佐達が羨ましい・・・」

 「本当ですね」

モスクワ郊外の基地に駐屯している、「アークエ
ンジェル」の艦内で、バジルール大佐とノイマン
少佐は、モビルスーツ隊の訓練を眺めながら、羨
ましそうな声をあげていた。

 「半数ずつ休みを取って良いという事になって
  いるが、モビルスーツ隊の指揮官クラスが全
  員出払っているのは、問題のような気がして
  きた」

 「ですが、バジルール司令。(アークエンジェ
  ル)と(ミカエル)のモビルスーツ隊の指揮
  は、レントン中尉で十分間に合っていますよ
  。それに、もう敵なんていませんからね」

ウラル要塞での決戦終了直後には、エミリアに殉
ずる者や、どさくさに紛れて悪事を働く者などが
、少数ながらも暗躍していたのだが、一ヶ月も経
つと、ネタ切れになってしまっていて、モビルス
ーツ隊の一番の仕事は、その存在感で抑止を行う
事と、技量を落とさないように定期的に訓練を行
う事くらいであった。

 「よし、決めたぞ!この任務がひと段落したら
  、絶対に休暇を取る!」

 「ノイマン少佐の言う通りだな」

ノイマン少佐の宣言に、バジルール大佐が賛同の
声をあげると、彼はバジルール大佐の耳元でこう
呟いた。 

 「旅行にでも行こうぜ。場所はどこがいいかな
  ?」

 「私はアジアが良い」

 「日本の京都にでも行こうか?」

 「それは良いな」

バジルール大佐も、小声で会話を続けていたのだ
が、その内容は周囲に筒抜けであった。

 「休んでなくても、幸せそうな二人はいいよな
  」

 「この世で一番不幸なのは俺達なんだろうな」

パル中尉とチャンドラ中尉は、二人で独り身であ
る事を嘆くのであった。


 「みんなーーー!お昼ご飯だぞーーー!」

 「あー、腹減った」

 「昼飯は何だろうな?」

 「楽しみよねー」

俺が大声でみんなを呼ぶと、キャンプと食事の準
備が終わってから、それぞれに遊んでいたメンバ
ーが集合してくる。

 「バーベキューと、その他に色々あるそうだか
  ら、遠慮しないで食べてくれだってさ」

 「俺は遠慮した事なんてありませんよ」

 「俺はシン以外の人に言っているんだ」

 「酷いな。ヨシヒロさんは」

 「嘘だよ。足りなくなっても、アスハ家がスポ
  ンサーだから、いくらでもヘリで持ってくる
  そうだ。だから、安心して食べてくれ。そう
  だよね?カガリちゃん」

 「ああ。遠慮しないで食べてくれ。お酒も沢山
  用意しているからな」

 「「「やったぁーーー!」」」

 「「「いただきまぁーーーす!」」」

カガリの一言で、全員が喜びの声をあげて食事を
開始したのだが、その直後に、上空からヘリの音
が聞こえてくる。

 「シン、もう食べ尽くしたのか?」

 「レイ!人の事が言えるのか?」

 「ああ。ラスティーがやってきたんだよ。少し
  、遅れるって言ってたから」

暫くして、ヘリコプターから高級スーツに身を包
んだラスティーが降りてきたのだが、そのうしろ
に四人の男女が見える。

 「義成兄さん!義則!それに、駄目姉妹か・・
  ・」

 「こら!駄目姉妹とは何よ!」

 「しかも、従兄弟同士で姉妹ではありませんわ
  !」

 「わが社の大事なお得意様である、楠木重工プ
  ラント支社のみなさんをご案内だ。そして、
  俺も!」

ラスティーが、高級ブランド製のスーツを無造作
に脱ぎ捨てると、既に下に水着を着ている状態で
、続いて四人もスーツを脱ぎ捨てて、水着姿を披
露していた。

 「うーん。三人の野郎はどうでも良いし、ユリ
  カは一部の特殊な趣味の人達しか喜ばないだ
  ろうけど、エミのスタイルの良さは一見の価
  値があるな。でも、性格はあれだからな・・
  ・」

 「一年ぶりに会って、一言目がそれですか?」

 「我が従兄弟ながら、捻りのない一言だったな
  。残念だ」

 「我が従兄弟ながら、想像し易い発言だったな
  。迂闊だぞ!義弘」

 「幼児体型で悪かったわね!」

 「性格が悪いですって!」

俺の評論に、五人がそれぞれに反論するのだが、
エミはすぐに怒るのを止めて、俺の前に一枚のデ
ィスクを差し出した。

 「それ何?」

 「ラクス様から、近況を撮影したこのディスク
  を預かったのですが、あそこまで悪口を言わ
  れてしまいますと・・・」

 「すいませぇーーーん!エミ様は、美人でスタ
  イルの良い最高の女性です」

 「プライドゼロだな・・・。カザマ」

 「うるさい!大切な事なんだ!」

俺の態度の急変に、近くにいたハイネが呆れた表
情で感想を述べ、俺がそれに反論する。

 「まあ、そこまで言うのなら、渡さない事もあ
  りませんわ」

 「ありがとうございますだーーー」

エミが俺にディスクを渡そうとすると、後から盛
大な砂煙があがり、一人の中年のオッサンが突撃
してくる。

 「サクラぁーーー!ヨシヒサぁーーー!俺にデ
  ィスクを見せろぉーーー!」 

何の事はなく、中年のオッサンの正体は俺の親父
であり、彼は自分の欲望に逆らう事なく、正直に
行動しているに過ぎなかった。

 「カザマ君、パス!」

 「えっ?」

エミは性格はアレだが、バカではないので、親父
の突撃時の被害を瞬時に予測して、俺に速攻でデ
ィスクを投げ渡した。

 「サクラとヨシヒサの映像ぉーーー!」

 「我が親父ながら恐るべし!」

俺は、迫り来る親父の進路を瞬時に予測して、最
小限の動きでかわしたあと、親父の前方に足をそ
っと出す。
すると、親父はそれに足を引っ掛けて転び、砂浜
に顔を突っ込んだ。

 「ぷはっ!何をするんだ!このバカ息子が!」

 「バカは親父だ!いきなり突撃してくるな!」

親父はすぐに顔を砂地から抜いて、俺に文句を言
ってくるが、どうやら、砂のおかげでノーダメー
ジであったようだ。

 「お前なんて、どうでもいいんだ!サクラとヨ
  シヒサの映像が入っているディスクを寄こせ
  !」

 「父親である俺が先だ!」

 「何っ!正論だが、何という冷たい言葉なんだ
  。俺は、まだ二人に直接会った事がないのに
  ・・・」

既に、五十歳に手が届きそうな親父が、周囲の目
を気にせずにがっくりと肩を落として、目に涙を
浮かべ始める。
すると、不思議なもので、俺がとても悪い事をし
ているよな感覚になってくる。

 「ヨシヒロ、先に見せてあげなさいよ。私が先
  週まで二人と一緒にいたから、羨ましくてた
  まらないのよ。お父さんは」

結局、母さんは五ヶ月以上もクライン邸に滞在し
ていて、先週になって、やっとオーブの自宅に戻
って来ていた。 

 「そんなに落ち込むなよ。ほら、先に見ても良
  いからさ」

俺は母さんの忠告に従って、親父にディスクを手
渡した。

 「やったーーー!」

だが、落ち込んだり泣いたりしていたのは親父の
演技であったようで、俺からディスクをひったく
ると、テントに置かれているノートパソコンに向
かって走り出した。

 「何か、ムカツク」

 「おおっ!ますます可愛くなって。早く、休み
  を取って会いに行かないとな。キラにアレと
  アレとアレを押し付けて・・・」

 「僕のこれからのスケジュールが、大変な事に
  なっている・・・」

 「キラ、今に始まった事じゃないじゃないか」

 「アスラン、それ、慰めになってないよ」

テントで、二人の孫の映像を食い入るように見つ
め続ける親父は、頭の中でキラにハードスケジュ
ールを組み始め、キラはこれから訪れる、恐怖の
ハードワークに不安を抱き始めていた。 

 「これで、全員揃ったのかしら?」

 「もう、追加はいないと思うよ」

 「食材は足りそうね。さあ、後から来たみんな
  も、遠慮なく食べてね」

今回のキャンプで、食事関係の総責任者である母
さんが、ラスティー達にも食事を勧める。

 「ありがとうございます。始めまして、ラステ
  ィー・マッケンジーです。ヨシさんには、い
  つもお世話になっています」

 「ヨシヒロの母です。でも、ヨシヒロの生徒達
  は、みんな若くて格好良いわね」

 「ありがとうございます」

初対面である、母さんとラスティーの挨拶が終了
すると、各々がグループを作って、好きな物を飲
んだり食べ始めたりし始めたのだが、親父は食い
入るように、サクラとヨシヒサの画像を見続けて
いた。

 「あーーー。サクラとヨシヒサは、可愛いなー
  ーー」

 「次は、俺に見せやがれ!」

俺は呆けた表情で、ノートパソコンのディスプレ
イを見つめ続ける親父に蹴りを入れる。

 「痛いじゃないか!」

 「俺にも見せろ!」

 「仕方がないな。ホラ!」

俺が親父に場所を代わって貰ってから、画面を覗
き込むと、そこには、ラクスにミルクを飲ませて
貰っているサクラや、子守唄を歌って貰っている
ヨシヒサが映っていた。

 「サクラぁーーー!ヨシヒサぁーーー!お父さ
  ん、すぐに戻るからねーーー!」

 「その時は、お祖父ちゃんも一緒だぞーーー!
  」

 「親父は、うるさいから来るな!サクラとヨシ
  ヒサが泣くだろうが!」

 「お前こそ、うるさいじゃないか!」

 「親父の方がうるさいです!」

 「お前の方がうるさい!」

 「「やるか!」」

俺と親父は、瞬時に戦闘モードに突入して、睨み
合いを開始する。

 「似た者親子ね・・・」

 「妹として、恥ずかしい・・・」

 「本当ね・・・」

親子二人の不毛な争いに、残りの家族はただ嘆く
ばかりであった。 


 「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」

昼食が終了し、後片づけが終わってから、全員が
再び好きな事をして遊び始める。

 「キラ、少し奥にある沼で大きなナマズが釣れ
  るそうだ。大物競争をしよう」

 「いいね。アスラン」

 「俺も参加するぜ」

 「俺もだ。ジェーンはどうする?」

 「夕食に何かを作るから、その準備をするわ」

 「俺も参加するぜ!」

 「相羽二佐、沼には若い女性はいませんよ」

 「言うようになったな。アスラン!実は俺は釣
  りが大好きなんだ!(魚○さぁーーーん!)
  ってな感じでな」

 「よくわかりません・・・」

 「やはり、カザマにしかわからないか・・・」

キラ、アスラン、フラガ中佐、エドワード中佐、
相羽三佐は、島の奥地の沼に大ナマズ釣りにでか
け。

 「ハイネ、銛を六本作ったぞ!」

 「泥臭いナマズなんて食っても美味しくないか
  らな。海で大物をゲットして、温泉の時のよ
  うな船盛りを作ろうぜ!」

 「ジャパニーズサシミか。食ってみたいな」

 「俺も俺も」

 「生きるために、他の生き物を殺す。これは人
  に生まれた者の宿命です。さあ、食べられる
  命のために祈りましょう」

 「ようするに、コンガも参加するんだな」

 「当たり前です。私も、お刺身を食べたいです
  から」

自称宗教家のコンガも参加を表明する。
どうやら、彼の宗派にはあまりタブーが存在しな
いらしい。

 「ザンギエフ、お前が食える魚かどうか見極め
  ろよ。それと、おろすのもな」

 「任せて下さい」

ハイネ隊の面々は、木の棒にジャックが持参した
ナイフを括り付けた手製の銛で、岩場に魚を突き
に行き。

 「スイカ割に参加する人は?」

 「夏と言えば、スイカ割り!俺は参加するぜ!
  」

 「石原二佐、こんなところで一人で遊んでいて
  、マユラは怒っていない?ジュリちゃんが生
  まれて、まだ二ヶ月なのに・・・」

六月の下旬に、マユラは女の子を出産していたの
だが、石原二佐はまだ一回しか、顔を見ていなか
った。
俺が生まれたばかりの頃に、高速輸送機を使って
、日本に緊急輸送をした一日だけだったからだ。

 「浮気じゃないから容認してくれた。それに、
  みんなの様子を聞きたいから参加して来いだ
  ってさ」

 「えらく、物分りが良くなったわね。マユラは
  」

 「母親の余裕ってやつかな?」

 「みたいね」

 「俺も参加するぞ!」

 「鍛えられし、格闘家の超感覚に驚け!」

 「はい、スイカよ。大きくて割り甲斐があるわ
  よ」

 「私も参加します」

 「私も!」

 「カガリ、無茶しちゃ駄目よ」

 「妊婦だからって、何でも禁止にするな!」

ラスティー、石原二佐、アサギ、ハワード三佐、
ホー三佐、レナ中佐、シホ、カガリ、フレイはス
イカ割りに勤しんでいた。

 「じゃあ、私のチームが、シンちゃんとヴィー
  ノちゃんとルナちゃんね」

 「それで、私のチームが、レイちゃんとヨウラ
  ンちゃんとメイリンちゃんね」

 「なぜに、ちゃん付けなんですか?」

 「まだ、子供ちゃんだから」

 「自分の方が子供に見えるくせに・・・」

 「何か言った?ヨウランちゃん!」

 「何でもありません!」

 「私達が、ビーチバレーの奥義を見せてあげる
  わ!学生時代に大会荒らしとして有名だった
  、私達の驚愕の腕前をね!」

 「本当に荒らしていたんだろうな。色々な意味 
  で・・・」

 「何か言いましたか?ヴィーノちゃん?」

 「何でもありません!」

ユリカとエミは、シン達を勝手にチーム分けして
ビーチバレーを始め。

 「はいよ。王手だ」

 「チェスと違って、難しいですな・・・」

 「駒が再利用できるからな」

 「取った敵の駒を味方として使う。政治家の私
  にとっては、興味深いゲームですね。まって
  下さい」

 「初心者だから、仕方がないな」

親父とデュランダル外交委員長は、木陰で将棋を
指し。

 「お母さん、夕食はどうするの?」

 「キャンプと言えば?」

 「カレー」

 「そう。ステラの言う通りよ。ステラはバレー
  をしなくてもいいの?」

 「ヨシヒロが言ってた。あの姉妹に近づくな。
  あの悪癖が、ステラに感染したら大変だって
  。それに、お料理を作りたいから」

 「ふーん」

 「お兄さんも、酷い事を言うわね」

すでに、安定期に突入したレイナは、ゆったりと
した服を着てステラと野菜を刻んでいた。
結局、戦争が長引いた影響で、結婚式は子連れに
なる事が決まっていたので、誰もレイナのお腹の
大きさに焦っている人はいなかったのだ。

 「痛い!また切ってしまった」

 「ジェーンさん、大丈夫?」

 「どうしよう。私結婚するのに、料理が何もで
  きないなんて・・・」

 「今日明日で、基本を教えてあげるわよ」

 「ありがとうございますぅーーー」

ジェーン少佐は、母さん達に料理の基本を教わり

 「沙紀さんは、料理が上手なのね」

 「ええ、まあ。普通にやっていますから。それ
  に、料理ができるからって、誰でも結婚でき
  るわけじゃありませんし」

 「確かに、そうなんですけどね」

レイナが、早乙女二尉が器用に野菜の皮を剥いて
刻んでいるのを横目に、砂浜の方を見ると、レナ
中佐が気合を入れて、スイカを真っ二つにしてい
た。

 「この調子で良い男をゲットよ!」

 「スタイルも良いし、美人なのに・・・」

 「年長者の経験として言わせて貰えば、気合が
  入り過ぎているのよね」

 「「「「なるほどね」」」」

母さんの言葉に、四人が納得したような表情で頷
き。

 「サイ、海運会社のオーナーの息子が泳げない
  というのは、どうかと思うんだけど・・・」

 「僕もそう思います」

 「私は初耳だったわ。サイって何でもできると
  思っていたから」

 「僕もだ。でも、ここで特訓すればいいじゃな
  い」

 「そうだな。俺も教えてやるよ。サイは運動神
  経が良いんだから、すぐに泳げるようになる
  さ」

 「みんな、すまないな」

トール、ニコル、カナ、カズイは、サイが泳げな
いと言うので、海水浴がてらに泳ぎの特訓を始め

 「ふむ。特に顔には念入りに、日焼け止めを塗
  っておかないとな。(パンダ仮面)などと言
  われてしまったら大変だ。さて、大物をゲッ
  トするぞ!」

クルーゼ司令は、顔に日焼け止めを念入りに塗っ
てから、近くの岩場で釣りを開始していた。

 「何でみんな疲れる事をするんだろうね。休み
  なんだから、素直に休めばいいんだよ」

 「確かにそうね。はい、トロピカルドリンクを
  作ったわよ」

 「カザマも、日頃はそんな事を言っている癖に
  、いざ現地に着けばあれだからな」

 「日本人って、あんなものなのかしら?」

 「さあな?」

コーウェルとリーカさんは、木陰の下で寝転びな
がらトロピカルジュースを飲み。

 「冒険が俺を呼んでいるぜ!」

 「未知なる自然の恵みが!」

 「謎の未確認生物が!」

そして最後に、俺は数人のメンバーを連れて、こ
の島の探検を行っていた。

 「周囲が五キロもない小さな島だが、自然に満
  ち溢れているな」

 「義弘、このクワガタ大きいな。持って帰って
  飼おうかな」

 「(アトラスオオカブト)はいないのかな?」

 「義則、(アトラスオオカブト)が欲しいのな
  らエドワード中佐に頼めよ」

 「しかし、鬱蒼とした密林ですね」

 「イザークは何で俺達に付き合っているんだ?
  フレイは、スイカ割りをしていたような・・
  ・」

 「俺は、この島に人がいた事があると確信して
  いるんです。そして、その遺跡や発掘物には
  価値の高い物があるはずです」

 「なるほどね」

 「古代の神秘というやつか」

 「だが、俺達の興味は別にあるんだ!」

 「そう!冒険が俺達を呼んでいるぜ!」

 「気分は・・・」

 「「「ネオ川○浩探検隊だ!」」」

 「例え、カメラが先に洞窟に進入していようと
  も!」

 「現地人の服のポケットから、メールの着信音
  が聞こえてこようとも!」

 「何も見つからずに、引き続き調査を続行する
  とか、軽い嘘をつかれようとも!」

 「月の宇宙人や、火星人や、アルプスの雪男や
  、ネス湖のネッシーや、海底に生息する首長
  竜がCGっぽくても!」  

 「「「冒険が俺達を呼んでいるぜ!」」」

 「・・・・・・・・・」

イザークは、ハイテンションな三人に呆れつつも
、もう一つの疑問を口にした。

 「その猟銃を何に使うんです?」

 「南国の無人島での一コマと言えば?」

 「豪快な豚の丸焼きを食べる事だ!」

 「そうそう。野生の豚を撃って、あとで丸焼き
  を作るんだよ」

 「材料なら、カガリに頼めばいいじゃないです
  か」

 「イザークは、情緒というものを理解していな
  いな。だから、工芸品や美術品の審美眼がな
  いんだよ」

 「そうそう」

 「自分達で撃った獲物だからこそ、最高の味な
  んだよ」

 「はあ・・・。そうなんですか・・・」

イザークは理解不能という顔をしていたが、こう
して、俺達は島の奥地の探検に出かけるのであっ
た。


 「うーん。人がいたような気配はないな」

 「デカイ(クワガタ)は一杯取れたけどな。正
  確な名前はわからないけど」

 「義成兄さん、それ飼うの?」

 「繁殖させて、プラントの子供に売ろうかな」

 「検疫に通るかな?」

 「それを考えてなかったな」

一時間ほど密林を歩き、多少の収穫はあったのだ
が、肝心の冒険の成果の方はさっぱりであった。
勿論、イザークが求めている人の住んでいた形跡
も見つかっていなかった。

 「でも、本当に野豚がいるとは思わなかったな
  」

 「イザークが仕留めたけどね」

 「俺が撃とうと思ったのに・・・」

 「義則は、銃を撃った事あるの?」

 「ゲーセンのクレー射撃は得意だった」

 「実戦では危ういな。やっぱり、イザークに任
  せて正解だったな」

三十分程前に、いきなり野豚が俺達に向かって突
っ込んできたので、イザークが義則から銃をひっ
たくって一撃で仕留めていたのだ。
そんな訳で、俺と義則は、即席で作った木の棒に
野豚を括り付けて肩に担いでいた。

 「それと、野生のバナナとヤシの実ですか」

 「何かさ、らしくて良いよね」

 「気分出てるよな」

 「そうそう」

イザークは目的の物が見つかっていないので、あ
まり嬉しくはないようだが、俺達は多少は満足で
あった。


 「島の中心部の洞窟か・・・」

 「冒険の匂いがするな」

 「お宝とかあったりして」

 「やったーーー!遺跡が見つかる可能性が高い
  ぞ!」

更に三十分後、島の中心部に到着した俺達は、い
かにもそれらしい洞窟を発見して、新たな冒険の
可能性に心を躍らせ、イザークは目的の物が見つ
かるかも知れない喜びに身を奮わせていた。

 「イザーク、何を見つけたいんだ?」

 「昔の人が使っていた日用品や芸術品があれば
  言う事なしですね」

 「なるほどね」

 「さあ、行きましょう!」

イザークが先頭に立って、懐中電灯の明かりを頼
りに洞窟に進入すると、洞窟内には人が暮らして
いた形跡が確認できた。
年数はかなり経っているようで、残されていた生
活用品の劣化は激しかったが、確かに人が住んで
いたようだ。

 「無人島だって、カガリちゃんは言っていたよ
  ね?」

 「今は、無人島なんだろう」

 「なるほどね。イザーク、年代はわかるか?」

 「五十年〜百年くらい前かと・・・」

 「元気ないな。イザーク」

 「せめて、五百年ほど前なら・・・」

イザークは、自分が求めていたものとは違ってい
たので、ガックリと肩を落としていた。

 「確かに、俺達にとったら古い物だけど、考古
  学的な価値はゼロだな」

散乱している食器や調理器具や食品の包装袋やペ
ットボトルを見ると、デザインは古かったが、歴
史の古い大メーカー製の物が多く、特に価値のあ
るものでもないようだ。

 「おっ、昔のプレミアラベルのペットボトルを
  発見!」

 「義成兄さん、何をしているの?」

 「程度の良い物を集めているんだよ。確かに、
  高くは売れないが、コレクターにまとめて幾
  らで売れば、小遣い程度にはなる」

 「ガレキが二〜三個買えるくらいの金額にはな
  るはずだ」

義成兄さんと義則は、散乱しているゴミの中から
、状態の綺麗な食品の袋やカップ麺の容器やペッ
トボトルの容器を拾っていた。

 「しっかりしてるね」

 「俺達は、親方日の丸じゃないからな」

 「俺も将来は民間人なんだけど・・・」

 「だったら、もっとしっかりするんだな」

 「へいへい。ごもっともで」


 「さて、奥に進むとするか」

二人のお宝集めが終了したので、更に奥に進んだ
のだが、曲がりくねった洞窟を五十メートルほど
進んだところで、行き止まりになっていたばかり
でなく、意外な人物との再会を果たした。

 「何だ?カザマか?」

 「ガイか!何をしているんだ?」

 「俺は先週にお前との契約が切れたんだ。何を
  していようと俺の勝手だし、守秘義務という
  ものもあるからな」

 「ふーん。それで、何をしているの?風花ちゃ
  ん」

 「はい。依頼人のご先祖様が海賊をしていたそ
  うなので、その本拠地であった島の特定と、
  簡単な供養を頼まれました」

 「風花!」

 「依頼人の名前を言わなければ、良いと思うの
  ですが・・・(ガイ、彼は将来の上司なので
  すから、逆らってはいけませんよ)」

 「最高の傭兵にしては、地味な任務だね」

 「悪かったな!最近は忙しかったし、この任務
  は地味なわりに、報酬が良かったんだよ」

 「それに、モビルスーツで華麗に敵を倒すとい
  う仕事が急激に減少していますから」

エミリアが世界中の不穏分子に援助を与えて、活
動を活発にさせた結果、その反発で、最近は内戦
や騒乱が急激に減少していて、傭兵の中には仕事
にあぶれている者も多いらしい。
さすがに、ガイくらいの有名人になると、それな
りに依頼は来るようだが、彼は仕事をセーブして
、体を休めているようであった。

 「ガイも歳だからね。もう、四十歳だっけ?」

 「アホ!まだ、三十歳にもなっていないわ!と
  ころで、後の連中は誰だ?ジュール隊長は、
  顔見知りだから知っているが」

 「始めまして。楠木重工プラント支社営業課長
  のヨシナリ・カザマです」

 「同じく、品質管理課長のヨシノリ・カザマで
  す。(ピンクの死神)の噂は良く聞いていま
  すよ。実は私、プラモデルが趣味でして、あ
  なたのガレキも持っているんです。それに、
  あなたの使っている(グフ)の装甲もわが社
  の製品でして、私が念入りにチェックをした
  んですよ」

 「はあ。そうですか・・・(嫁と本人で大変な
  のに、従兄弟まで登場か!俺とこの一族の腐
  れ縁はいつまで続くんだ?奴は、俺の天敵な
  のに・・・)」

さすがに、初対面の人物に(ピンクの死神と呼ぶ
な!)と強くは言えないので、ガイは普通に返事
をしている。 

 「しかし、海賊ね〜」

 「初耳だな」

 「あっ、そうだ。もう夕方になったし、詳しい
  話は夕食でも食べながらどうだい?」

ガイに詳しい話を聞きたかったし、洞窟内に大し
た物も発見できなかったので、俺はガイ達を夕食
に誘いつつ、みんなの元に戻る事にした。

 「いいですね。これから、支度しようと思って
  いたので」

 「じゃあ、それで決まりね」

 「俺の意思はどうなっているんだ?」

 「別に、無理に来てくれなくても良いよ。お前
  は一人で何かを食っていればいいさ。俺は、
  風花ちゃんを招待したんだ」

 「行かないとは言ってない!」

 「船には、レーションとインスタント食品しか
  ありませんからね」

 「風花ちゃんは作らないの?」

 「ガイがそれで十分だって・・・」

 「ちゃんと矯正した方が良いよ。そうでなくて
  も、心が歪んでいるんだから。食事の歪みは
  、心の歪みの第一歩だぜ」

 「作戦中は、いつもそうなんです」

 「大変だねえ。風花ちゃんも」

 「イライジャやお母さんに、いつも言われてい
  ます」

 「だろうね」

 「こら!その話し振りからすると、俺が仕事以
  外は駄目人間みたいじゃないか!」

 「実際、駄目人間だろう?衣食住から金の管理
  まで、全部風花ちゃんにやって貰っているん
  だろう?ラクスがそう言ってたぞ」

 「うううっ。否定できない・・・。(あのクソ
  嫁め!)」

元々、大西洋連邦の研究所が開発した、戦闘用コ
ーディネーターであったガイは、戦闘能力は一流
であったが、生活能力が皆無で、風花ちゃんがい
なければ、ただの生活破綻者にしか見えなかった
であろう。

 「じゃあ、帰るとしますか」

 「仕方がない。付き合ってやる」

俺達は、ガイと風花ちゃんを連れて、みんなの元
に帰るのであった。


 「夕食は・・・。この匂いはカレーかな?」

 「正解よ」

俺達がキャンプ地に戻ると、調理場で母さん達が
巨大な鍋をかき回していて、周囲に美味しそうな
カレーの匂いが漂っていた。

 「他におかずはないの?」

 「ハイネさん達が、魚をさばいているわよ」

 「あいつ等、何かを捕まえられたのかな?」

俺がハイネ達の元に行くと、彼らは何かの完成を
大声で祝っていた。

 「ハイネ隊の大成果だ。こんなに食える魚が突
  けるとはな」

 「本当ですね」

 「ザンギエフがいなければ、さばけなかったが
  な」

 「ジャック、それは言いっこなしだぜ!」

ハイネ隊の面々は、大皿に盛られた大量の刺身を
嬉しそうに眺めていた。

 「ハイネ、それ食えるのか?」

 「失礼な奴だな!おい、ザンギエフ!説明して
  やれ」

 「はい。タコとイカは食用に適するもので、タ
  コは湯引きもしてあります。タイとスズキは
  、日本のものとは種類が違いますが、これも
  食せます。ウニは、日本にも輸入されている
  種類のものです。それと、大海老も念のため
  に茹でてあります」

 「どうだ!聞いたか?」

 「凄いな。ザンギエフって、完璧超人じゃない
  か。お前の部下には勿体無いよ」

 「駄目だぞ!こいつがいなくなると、ハイネ隊
  の食生活が貧しくなるから」

 「おーい!義弘。この野豚どうしようか?」

先ほど、イザークが仕留めた野豚であったが、義
成兄さんと義則が、調理も出来ずに持て余してい
る状態であった。

 「私が皮を剥いで内臓を抜いて丸焼きにします
  」

 「ザンギエフ、できるの?」

 「はい」

 「凄いね。どうして?」

 「私にはかなり年上の姉が三人いまして、昔か
  ら全ての家事をやらされていたんです。(お
  前は子供で、暇だろうからやれ)って感じで
  」

ザンギエフの両親は、ロシア共和国出身で石油と
天然ガスで大儲けをした新興成金の子孫で、働か
ずに食える身分であったそうだが、かなりの変わ
り者で、四人の子供を全員コーディネーターにし
たうえに、残りのの財産を持ってプラントに上が
ってしまったらしい。
そして、彼を除く全員が働いていたために、彼が
家族の家事労働一切を行っていたそうだ。

 「それで、みんな結構我侭を言うんですよね。
  今度は北京ダックが食べたいとか、プラント
  で言うんですよ。お金はあるから、私が個人
  的に輸入して調理して出していたので、大体
  の料理は作れます」

 「なるほどね」

ザンギエフは素早い手つきで、野豚の皮を剥ぐと
、内臓を抜いて下ごしらえを行ってから、フルー
ツを詰め込み、荷物のリストには入っていたが、
誰も使わないと思っていた大型レンジに放り込ん
だ。

 「これで、夕食には間に合うと思います。本当
  は火を使った方が本格的なんでしょうけど、
  時間が掛かりますし、火力の調整が難しいで
  すからね」

 「ザンギエフって凄いな。(お嫁さんにしたい
  男ナンバーワン)だよね」

 「あの・・・。それって褒めてます?」

 「褒めてるさ」

次に、釣りに出かけていたキラ達の元に行くと、
彼らは、今日の釣果についての話をしていた。

 「よう。沢山釣れたか?」

 「数はキラが一番でしたけど、大物はフラガ中
  佐とエドワード中佐に持っていかれてしまい
  ました」

 「へえ。どれどれ」

俺がデジカメのメモリーを見ると、一メートルを
超える大物ナマズを抱えた、フラガ中佐とエドワ
ード中佐が写っていた。
その他にも、八十センチ近いナマズを抱えたキラ
やアスランの写真も確認できる。

 「こんなに大きな魚が釣れるんだ」

 「ここの固定種じゃないみたいだな。タイとか
  そこらへんのものを誰かが放流したらしい」

 「一○じいさんや魚○さんが、環境破壊と生態
  系の異常を嘆くぞ!」

 「何を怒っているんだ?相羽三佐は?」

 「彼だけが坊主でしたので・・・」

 「俺に、三○君が宿らなかったんだよ!」

 「意味のわからない事を言うし・・・」

キラ達は意味不明という表情をしていたが、俺に
は相羽三佐の言っている事の意味が良くわかって
いた。

 「だが、安心したまえ!あの沼には三メートル
  を超えるヌシがいるはずなんだ!明日、俺が
  奴を釣りあげれば、逆転は十分に可能なはず
  だ!」

 「えっ!そんな大物の姿を確認しましたっけ?
  」

 「キラ!ストーリー上、絶対に存在するはずな
  んだ!さあ、ヌシ対策の仕掛けを製作するぞ
  !」

相羽三佐は、独り意気込んで仕掛けの製作を開始
する。

 「うーん。竿は無用だな。針と錘は大きめにし
  て、エサは・・・・・・」

 「(相羽三佐、知っていたんだな(釣りキチ三
  ○)を・・・)」

次に他の連中の様子を見に行くと、サイは一日で
かなり泳げるようになったらしく、トール達と楽
しそうに話していたし、シン達は、予想を超えた
伯仲した勝負になったようで、飲み物を飲みなが
ら、楽しそうにその事を話していた。
そして、唯一海釣りをしていたクルーゼ司令は・
・・。

 「ふむ。そろそろ焼けたかな?」

 「つまみになれば何でも良いさ」

 「ラウ、早く持ってきてくれないか」

 「了解した」

クルーゼ司令は、親父が持参した七輪で今日に釣
り上げた魚を焼いて、酒のつまみにしていたのだ
が、その魚達の見た目は、どう考えても食用には
見えない物ばかりであった。

 「クルーゼ司令、そんなものを食べて大丈夫で
  すか?」

 「味は美味しいから心配あるまい」

 「ヨシヒロ!横から口を出すんじゃない!」

 「カザマ君、見た目がグロテクスな魚ほど、美
  味しいと言うではないか」

 「デュランダル外交委員長、あなた何人ですか
  ?」

親父、デュランダル外交委員長、クルーゼ司令の
三人は、緑色をした変な魚の塩焼きをつまみに、
ビールを飲んでいる。

 「食えるかどうか、ザンギエフにでも聞いたら
  どうです?」

 「一応、彼に聞いてみたのだが、わからないと
  言われてしまったのだ」

 「大丈夫だよ。新種の食用の魚だから」

 「生でも食える鮮度の物を焼いて食べているの
  だ。大丈夫」

 「本当に知りませんからね」

俺の脳裏に、「モルゲンレーテ社常務とザフト軍
司令とプラントの外交委員長が食中毒で入院!」
という新聞の記事が思い浮かんだのだが、本人達
が全く聞く耳を持っていなかったので、放置する
しかなかった。 


 「今夜のメインはカレーライスです。お代わり
  は沢山ありますからね」

二時間後、母さんの一言で夕食の時間が始まリ、
全員にカレーの皿と飲み物が渡される。
更に、中央のテーブルにはザンギエフが調理して
くれた野豚の丸焼きと刺身の大皿が置かれていて
、全員に好評だったが、クルーゼ司令が釣って焼
いた魚に手を出す者は、本人達三人を除いて皆無
であった。

 「よりにもよって、あんなおかしな魚ばかり・
  ・・」

 「釣ったのがクルーゼ司令だからな。変人同士
  魅かれ合ったのと違うか?」

俺の横で、アスランとイザークがかなり失礼な会
話をしていたが、早速、ガイに海賊の話をして貰
う事にする。

 「カガリ様は知っているだろう?昔の有名な海
  賊である(蛸壺)の事を。それで、奴の臨時
  の隠れ家がここだって事が、今日の調査でわ
  かったんだよ」

 「本当かね。何か疑わしいよな」

 「カガリちゃん、(蛸壺)って海賊の渾名?」

 「そうだよ。百年ほど前に、暗躍していた海賊
  で、オーブ海軍に捕まって処刑されたそうだ
  」

 「何だ、海賊って、俺達がたまに退治する方の
  海賊の事か。夢がないよね」

カガリちゃんの話によると、「蛸壺」とは本名が
不明の海賊で、獲物の船が近づくまで、何日も辛
抱強く隠れ家に待機していたところから命名され
ていた。
軍が調査に入っても、何ヶ所か持っている隠れ家
に身を潜めて、容易に姿を現さなかったところか
らも来ているようだ。 

 「名前は明かせないが、彼の子孫を名乗る人物
  から隠れ家の捜索と、簡単な供養を頼まれた
  んだ。勿論、この島の所有者であるウズミ様
  から許可は得ているぞ。まさか、お前達がい
  るとは思わなかったが」

 「それで、任務は終了したのか?」

 「ああ。この島で終了だ」

 「なら、遊んでいけば?」

 「そうだな。そうするかな。風花はどうだ?」

 「私に異論はありませんよ」

 「じゃあ、二人は参加っと!」

俺はガイと風花の名前を書いた紙をたたんで、二
つの箱に一つずつ入れる。

 「何をしているんだ?」

 「肝試しをやるから、その組み合わせ抽選箱だ
  よ。ただし、男女比に差があるから、運が悪
  いと男同士になる可能性があるけど」

 「いつまでも子供のような事をするんだな」

 「ひょっとして、怖いとか?」

 「俺はプロの傭兵だぞ!ありえるか!」

 「だったら、一年に一度くらい良いじゃないの
  」

こうして、夕食を終えた俺達は、肝試し大会を行
う事にした。


 「ルールは簡単だ。この整備された道を二百メ
  ートルも進むと、アスハ家で設置したハウメ
  アの神を祀る祠がある。そこに、白い布が置
  いてあるから、それをちゃんと持ち帰る事。
  以上だ」

妊婦のために参加できない、カガリの説明のあと
に、俺が男性陣の名前が書かれた紙を入れた箱と
、女性陣の名前が書かれた紙を入れた箱から一枚
ずつ引く。

 「えーと・・・。一番は、アスランとカナだな
  」

 「まさか、一番とは・・・」

 「アスラン、怖いの?」

 「そんなわけがあるか!」

 「だったら、早く行こうよ」

アスランは、カナに誘導されるように暗闇に消え
ていく。

 「アスランって、女性に振り回されるのが宿命
  なんだね」

 「言えてる」

キラの核心を突く一言に、全員が一斉に頷いた。


 「特に怖い事もないな」

 「そうね」

二人は早足で祠に到着して、布の回収に成功して
いたが、アスランは元々無口な男だし、日頃は良
く遊びに行ったり食事をする仲なので、特に今日
に話す事もなかったのだが、急にアスランがポツ
リとこう漏らした。

 「何かの間違いで、俺とカナが付き合う可能性
  もあったんだよな?」

 「それはないと思うよ」

 「どうしてだ?」

 「アスラン、芸術的素養がゼロじゃない。だか
  ら、キラとアスランは私はパスだね。ディア
  ッカは、日舞をやるみたいだから、可能性が
  なくもなかったけど」

 「芸術的素養がゼロって・・・」

 「アスランの書いた絵とか酷かったじゃない。
  それに、楽器の演奏も歌も駄目だし」

 「そこまで言われるとは・・・」

 「ごめんね。私は芸術的なセンスがある男性が
  好きなの」

 「万が一の可能性を語っただけなのに、少し傷
  つくな・・・」

その後、無事に戻ってきたアスランは少し元気が
なかった。


 「次は、キラとフレイか・・・」

 「早く行こうよ」

 「そうね」

 「物怖じしない二人だな」


この二人も、特にトラブルもなく布の回収に成功
していた。 

 「フレイ、知ってた?僕がレイナと知り合う前
  に、君の事が少し気になっていた事を」 

 「えっ、そうなの?初めて聞いた」

 「うん。でも、そのすぐ後に、レイナと知り合
  ってしまったから」

 「私はあの娘には勝てないから。キラがコーデ
  ィネーターでも、気にしていなかったし」

 「お兄さんの影響だと思うよ。それに、フレイ
  も気にしていないじゃないか」

 「私が気にならなくなったのは、最近の事だか
  ら。だから、あの娘の事を大切にしてあげる
  のよ」

 「それは勿論なんだけど、最近レイナに良く怒
  られるから困っているんだ」

 「理由は何なの?」

 「部屋に二十三台目のパソコンを置いたら、(
  いい加減にしなさい!)って怒られた」

 「それは、誰でも言うわよ・・・」

だが、後日にフレイがプラントのジュール邸に引
っ越すと、イザークの部屋も意味不明な骨董品で
埋まっていて、同じような悲鳴をあげる事になる
のであった。


 「次は、イザークとレイナか」

 「レイナ、大丈夫なの?」

 「安定期に入っているし、カガリほど切迫して
  いないから大丈夫」

 「俺が付いているからな」

 「だから、余計に心配なんだけど・・・」

運良く、キラの言葉はイザークには聞こえなかっ
たようで、二人はゆっくりと暗闇に消えていった


 「大丈夫か?手を貸そうか?」

イザークはレイナが妊婦であるので、とても親切
であった。

 「優しいわね。イザークは」

 「お前は、ヨシさんの大切な妹だからな」

 「そうなんだ」

 「あの人には、本当に世話になっているからな
  。あの人がいなかったら、俺は自信過剰で傲
  慢な軍人になっていて、既に戦死していた可
  能性もあったから・・・」

 「お兄さんも結構、自分勝手だけどね」

 「そうか?でも、あのアニメオタクぶりだけは
  、いまだに理解できないけど」

 「イザーク、気が付いてる?あなたも相当なも
  のなんだけど・・・」

 「違うぞ!俺の趣味はもっとこう、高尚で文化
  的なもので・・・」

 「残念ながら、そんなに変わらないわよ。はっ
  きり言って、集めてる本人が死んだらゴミで
  しかないから」

 「ゴミぃ!これで、母上とフレイに続き、三人
  に言われてしまった!」

子供ができて、たくましくなったレイナに厳しい
指摘を受けて、イザークは大声で絶叫するのであ
った。


 「イザーク、どうしたの?」

 「お前の嫁は恐ろしい女だ・・・」

 「レイナが?」

レイナとイザークが帰ってきたので、次の抽選を
開始する事にする。 

 「四組目は、ニコルとルナマリアか」

 「よろしくお願いします」

 「こちらこそ」

 「意外な組み合わせだよな」


 「ニコルさんも、昔はヨシヒロさんの部下だっ
  たんですよね?」

 「同じ歳だから、ニコル良いですよ」

 「私もルナでいいです」

 「そうですよ。あの時は一生懸命にやりました
  けど、僕は軍人に向いていなかったので、今
  ではこうして音楽家をしています」

 「でも、アカデミーで有名でしたよ。(意外と
  腹黒いニコル・アマルフィー)って・・・。
  何気に、ヨシヒロさんの妹さんと付き合って
  いますしね」

 「そんな、腹黒いって・・・」

 「有名な事はいい事ですよ」

 「ルナは(赤い大虎)ですからね」

 「えっ!誰から聞きました?」

 「レイが言ってましたよ。これから、世界中の
  モビルスーツ関係者にそう呼ばれる事になる
  って」

 「ふふふ(レイの奴!覚えてなさい!)」

 「何か、悪い事を言ってしまったかな?」

ルナマリアの不気味な笑い声が、無人島の暗闇に
響き渡るのであった。


 「ヨシさん、僕って腹黒いですか?」

 「100%否定できない」

 「(赤い大虎)って決定なんですか?」

 「クルーゼ司令が、自分の意見を引っ込めると
  は思わない」

 「そんな・・・」

 「さて、次はヴィーノとレナ中佐?」

 「また変な組み合わせだな」


 「ねえ。ヴィーノ君には恋人がいるの?」

 「ええ。いますよ」

 「あんたは私の敵よーーー!」

 「何でーーー!」

ヴィーノの絶叫が無人島に木霊した。


 「夜叉が出ました」

 「はあ?」

俺は、憔悴しきったヴィーノの発言に首を傾げな
がら、次の抽選を行った。

 「次は、フラガ中佐とメイリンか」


 「君はお姉さんに比べると、少しぽっちゃり系
  かな?」

 「大きなお世話です!」

今度は、夜の暗闇にビンタの音が鳴り響いた。


 「別に、けなしていないのに・・・。ガリガリ
  の女性は魅力がないと、言おうとしただけな
  のに・・・」

 「迂闊でしたね。フラガ中佐」 

両頬に真っ赤なモミジを付けたフラガ中佐を放置
して、次の抽選を行う。

 「レイとユリカね・・・」

 「またしても、変な組み合わせだな」


 「レイちゃん、そんなにお姉さんを見つめない
  で。私は確かに魅力的だけど、私にはもう婚
  約者がいるから」

 「誰もそんな事は考えていませんよ・・・」


 「美しいって罪よね」

 「暑さで頭をやられたかな?さて、次は・・・
  。サイとシホか」


 「私達って常識人だから、あのメンバーの中で
  は没個性になり易いですよね?」

 「確かにそうですね」


 「特に何もありませんでした」

 「お前達はな・・・。さて、次はガイとエミか
  よ」


 「ガイ君。はい、これ」

 「これは何だ?」

 「楠木重工の会社案内ですわ。うちは実力主義
  で、福利厚生もしっかりしているからガイ君
  向けですよ。風花ちゃんにも、同じものを渡
  してありますので」

エミは有名な傭兵であるガイですら、君付けで呼
びながら、会社案内のパンフレットを手渡してい
た。

 「俺は、サラリーマンになんてならないぞ!」

 「あれ?ラクス様から、渡すように言われてい
  たのですが」

 「(あのクソ女め!)」

 「それと、これが会社のメールアドレスで、連
  絡先がこれですわ。連絡を取って、面接の予
  約を取ってから、履歴書と職務経歴書を持参
  してください」

 「俺は就職なんてしないぞ!」

 「あら、プータローは良くないですわよ」

 「俺は傭兵なんだよ!」

 「気長に待つので、早めに連絡下さいね」

 「駄目だこりゃ」

エミはガイの言う事など、一言も聞いていなかっ
た。


 「カザマ、あの女達と付き合っていると疲れな
  いか?」

 「何を今更。さて、次は親父とアサギだ」


 「カザマ常務、自家用車のカーステレオを最新
  の物に変えたいと、奥さんに頼んで断られた
  って本当ですか?」

 「悲しい事だが事実だ・・・」

 「その時に、本気で泣いたって本当ですか?」

 「誰にそれを聞いたんだ?」

 「キラ君がそう言ってました」

 「(これで、心おきなく仕事を押し付けられる
  な)」

キラは、自分で自分の首を絞める行動をしていて
、その事がバラされてしまっていた。


 「暗いだけで、怖くないぞ」

 「だってさ。カガリちゃん」

 「かと言って、今更何かを仕掛けるのもな」

 「次は、クルーゼ司令と母さんか・・・」

 「話す事なんてあるのかな?」


 「クルーゼさん、一つ聞きたい事があるんです
  けど・・・」

 「何ですかな?」

 「何で仮面をしているのですか?」

母さんは、クルーゼ司令とそれほどの知り合いで
もないし、聞いてはいけない空気とかを察してい
なかったので、素直に疑問を口にする。

 「・・・・・・・・・」

事情が複雑で、事実を語るわけにもいかないので
、クルーゼ司令は、頭の中で一番納得しそうな理
由を考え出して、それを口にした。

 「趣味です」

 「なるほど」

 「私も聞きたい事があるのですが・・・」

 「何をですか?」

 「実は、ミユキが生まれてから、また小遣いを
  減らされてしまったんです。今は、息子さん
  にたかって生きていますが、これからどうし
  たものか・・・」

クルーゼ司令は、上司としても人間としてもかな
り問題のある発言をしていたが、母さんは、そん
な事を気にするような人ではなかった。

 「うちの人は、三人が小さい時は小遣いがゼロ
  でした。あるだけマシなのでは?」

 「そうなのですか!(私はまだマシなのだろう
  か?)」

母さんの返事を聞いた、クルーゼ司令の悩みも種
は尽きる事がなかった。


 「完全に企画倒れだね。全然、怖くないみたい
  だし」

 「考えてみれば、お化けや幽霊を怖がるような
  連中は、ここにはいなかったんだよな」

 「次は、俺と・・・・・・」

 「待て、カザマは最後に行け」

 「わかったよ。じゃあ、次は・・・」

その後は、俺とその相棒をすっ飛ばして、他のペ
アを先行させる。


 「次は、コーウェルと早乙女二尉か・・・」


 「今晩は(何を話せばいいのだろう?)」

 「今晩は(何を話せばいいのかしら?)」

 「プラントの税制について・・・」

 「・・・・・・・・・」


 「相羽三佐とリーカさん」


 「眼鏡っ娘って萌えますね」

 「(日本人って、みんなこうなのかしら?)」 


 「ハイネとステラ」

 「やったーーー!」

 「何かしたら、鮫の餌な」

 「わかってますよ。お義兄さん」


 「ステラ、うちの隊に来ないか?」

 「やだ」

 「はやっ!即答かよ!」


 「ハワード三佐とジェーン少佐」


 「始めまして、私はオーブ軍トップエースのハ
  ワード三佐です」

 「初めて聞きました」

 「知る人ぞ知るというエースですからね」

 「各軍のエースクラスの人は、情報を集めてい
  るのですが、知りません」

 「うっ!では、私の事を良く知るために、後日
  にお食事でも」

 「私、婚約者がいますから。というか、あなた
  も婚約者がいるのでは?」

 「なぜ、それを!」

 「今日の昼に聞きました。浮気が過ぎると、ア
  サギさんに捨てられますよ」

 「すいません」


 「えーと、デュランダル外交委員長とミリィー
  」


 「私の考案した、ディスティニープランは・・
  ・」

 「(せっかく、長髪で格好良いのに、発言が危
  ないわね・・・)」


 「これで、女性は終わりかな?」

 「男同士で肝試しか・・・」

 「ルールはルールだ。行って貰おう。えーと、
  石原二佐とホー三佐」


 「我が拳の威力があれば、幽霊など恐れるに足
  らん!」

 「幽霊は殴れないだろう」

 「気合で何とかするんだよ!」

 「○ラゴン○ボールみたいだな・・・」


 「シンとジャック」


 「シン、これはスエズで拾ったククリでな。実
  際に、何人かの血を吸っているんだよ。そし
  て、これは・・・・・・」

 「はあ・・・(早く終わってくれないかな?)
  」


 「ヨウランとコンガ」


 「その時、私の前に神が光臨してこう言ったの
  です。(コンガ、私の教えを皆に伝えなさい
  )と。それからの私は・・・」

 「(プラントに置いてきてる彼女は元気かな?
  )」


 「何か、みんなダレちゃってるね」

 「みんな、退屈そうだな。もう、お前で最後に
  しよう」

 「そうだね。風花ちゃん、よろしくね」

 「はい。よろしくお願いします」

人数が多かったので、暇な連中が勝手に花火を始
めたり、酒を飲んでいたので、俺が最後に、風花
ちゃんと残った布の回収を兼ねて出発する。

 「俺はどうでもいいや。髪型が崩れるし」

 「筋トレにもならん」

 「明日の朝食の準備がありますからね」

 「完全に女性不足だよね」

 「怖がって、しがみ付くような人はいなさそう
  だし」

まだ、出番が回ってきていなかった、ジーナス兄
弟とザンギエフとカズイとトールは、完全に忘れ
去られていた。


 「風花ちゃん、大丈夫?」

 「本当に暗いだけで怖くないですね」

この、自然がほとんど手付かずの島の中で、唯一
、ハウメアという名前の神を祀る祠と、それに続
く道は綺麗に整備されていた。
だからなのだろうが、はっきり言って全然怖くな
かったのだ。

 「もう少し、密林や獣道を突っ切らせるとかす
  れば良いのに」

 「そうですね」

 「あれ?誰かがいるな」

 「本当だ」

その後、二人が祠に到着すると、目の前にTシャ
ツを着た青白い青年が数人立っていた。

 「カザマさん!あれ、幽霊じゃあ・・・」

 「ははん。カガリちゃんも単純な手を使うよな
  。それで、俺が最後なのか」

 「どういう事です?」

 「俺を脅かせようという魂胆なんだろうね。(
  準備していない!)なんて言いながら、密か
  に幽霊役を雇っていたんだよ」

 「本当ですか・・・?」

風花ちゃんは、俺にしがみついて怖がっているよ
うだが、俺にそんな単純な手が通用するわけがな
いのだ。

 「君達、その祠にある布を取ってくれないか?
  」

 「カザマさん」

 「大丈夫だって、夏休みのアルバイト青年達な
  んだから。日当は幾ら貰っているんだい?」

全部で四人いる青年達の中の一人が、俺に残った
布を渡してくれるが、彼らは無言のままで、質問
には答えてくれなかった。

 「カザマさん、彼らは?」

 「カガリちゃんが言っていた、海賊達の成れの
  果てという設定なんじゃないの?」

 「本当にそうでしょうか?それにしては、リア
  ル過ぎるような気が・・・」

 「無駄にお金をかけているんじゃないの?アス
  ハ家はお金持ちだから」

 「本当にそうなのでしょうか・・・?」

俺達は青年達に背を向けて、もと来た道を戻り始
ると、カガリが出迎えてくれた。

 「ご苦労さん」

 「ちゃんと準備してるじゃないの。結構、リア
  ルだったよ」

 「何がだ?」

 「いやさ。青白い兄ちゃん達が、祠にいたじゃ
  ないの。出るタイミングを誤ったから、俺達
  しか見ていないみたいだけど」

 「何を言ってるんだ?私は、そんな者達を用意
  していないぞ」

 「またまた。脅かそうとしても無駄だからね。
  ねえ、風花ちゃん」

 「カザマさん、もしかして・・・」

 「本当にそんな者達は用意していないぞ!」

 「本当に?」

 「そんな嘘をついても、しょうがないじゃない
  か!」

 「えっ?」

 「カザマさん、幽霊に布を取って貰ったんです
  」

 「あれ、本物?」

 「さすがは、(黒い死神)だな。幽霊にものを
  頼むとはな」

 「ははは。まあね・・・」

内心では、俺は腰が抜けそうであった。


          あとがき

意外と長くなってしまったので、前・後編に分け
ます。

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