インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「狩人の世界に現れし福音者達  第35話(エヴァ+HUNTER×HUNTER)」

ルイス (2006-08-31 15:31/2006-09-05 12:10)
BACK< >NEXT

「お〜、懐かしい」

 即日配達、ということでジョイステーションはすぐに届き、キルアは目を輝かせる。

「これって、もう3世代前の型なんだけどなぁ……未だに売れてるってスゲーよな。隠れだけげーが一杯あるかららしいけど」

 隠れだけゲーなどと専門用語を使われてもゴンやレイには理解出来なかった。キルアは、ディスクカバーを開いて説明する。

「本来は此処にソフトを入れるんだけど、此処を空のままにしてROMカードを差込み、パワーを入れるとROMカードの内容が分かるんだ。どんなゲームが入ってるのかも分かる」

「なるほど」

 ROMカードを差し込んでパワーを入れると、画面にカードに記録されてるゲームのアイコンが出て来た。

「入ってるゲームは一つだけだな」

 その一つで30ブロック――ROMカード一つ分を使っている容量に、キルアは驚きながらもゲームデータを別のROMカードに保存する事にした。その際、『グリードアイランドをコピーしますか?』と画面に表示される。

「グリードアイランド……か。知ってる?」

「いんや」

「知らないわ」

 初めて聞く名前のゲームだが、名前が分かったので早速、“トイ・ランド”で取り寄せる事にした。

『該当件数は0件です』

 が、グリードアイランドを扱っている店の情報は無かった。

「あれ?」

「条件に会う店が無いって事だな。即日配達希望にしたからかな? とりあえず売ってる店全部リストアップするか」

『該当件数は0件です』

 条件無しで入力したのに、それでも該当件数は無かった。

「どうなってんのかな?」

「う〜ん……“トイ・ランド”に登録してる店には一つの在庫が無い。つまり売り切れか……このゲーム自体、市場に出回ってない可能性がある」

 企業が作ったゲームではなく、個人が作り、一般市場に出ていない可能性があるとキルアは説明した。

「とにかく調べてみっか。“ゲーム年鑑”なら、今まで出た市販ゲームが全部載ってるからな」

 そうして、グリードアイランド、と“ゲーム年鑑”に入力する。

「あった! ちゃんと正規のルートで販売されたゲームソフトだ」

『グリードアイランド  
・ハンター専用ハンティングゲーム
・製作発売元 株式会社マリリン
・発売年度 1987年
・価格 5800000000ジェニー
・販売個数 限定100本』

「「ごっ、58億!?」」

 ゲームソフトにしては法外過ぎる価格に、3人は驚愕した。

「何ちゅーデタラメな値段だ!?」

「販売個数100個ってのは少ないの?」

「すっげー、少ねーよ! ゼッテーなめてる! でも、分かった。こりゃ完全な売り切れだ。当然だけどな」

「製作元に在庫は無いのかな?」

「問い合わせてみるか」

 が、案の定、グリードアイランドは絶版になっており、再生産の予定も無いようだ。開発した会社も既に無くなっているという話だった。

「駄目だな、中古市場にも出回ってねーや」

「持ってる人を探し出して譲って貰うしかないわけだね」

「正当な手段でいくと電脳ネットのオークションサイトに告知して、売ってくれる奴が名乗り出るのを待つってのがセオリーだけどな」

「でも、お金はどうするの?」

「う〜ん……」

 一番の問題である金額を指摘され、キルアは携帯で2人の貯金残高を調べる。

「闘技場の金、2人合わせて8億くらいか」

 まだまだ果てしなく遠い。そこで、2人はボーっと外を見ていたレイに視線を向ける。レイも、視線に気付き2人の方を見ると、自分の携帯を出して貯金残高を調べる。

「大体28億」

「何でそんなに持ってんの!?」

 天空闘技場で稼いだのなら、自分達とトントンである筈だとゴンとキルアは驚愕する。

「ウイングさんに頼んで賭けてたもの」

「しまったぁ! 俺らも賭けときゃ良かった!!」

 そうすれば、もっと稼げたのに、と項垂れるキルア。

「じゃあさ、アスカやカヲルにも協力して貰ったら早く集まるんじゃない?」

「それで良いの?」

「え?」

 嬉々とするゴンに、レイがそう尋ねてきた。

「アスカやカヲルもお金を持ってるわ。私達3人なら、58億は溜まるでしょうね…………でも、本当にそれで納得出来るの?」

 自分は何もしないで、ただ他人にゲームを買って貰い、父親の手がかりを手に入れたとしても、それは自分の力ではない。テープに吹き込んであった『ハンターなら』という父親の言葉通り、自分自身の力でゲームを手に入れなければならない。そうレイに言われ、ゴンは顔を俯かせる。

「キルア! レイの協力無し! 良いよね!?」

「お、おう……」

 ぶっちゃけキルアとしてはレイ達に協力してもらった方が大助かりなのだが、ゴンの剣幕に気圧されてしまい、頷いた。

「と、なると後50億か」

「そうとも限らないぜ」

「え?」

 個人の取り引きとなると、売り手の言い値次第なので、市販価格を上回る可能性が高い、とキルアが言う。

「う〜ん……ま、ダメ元で告知だけはしておこうよ。まぁアクセスなんて来ねーと思うけど」

 一応、グリードアイランドを値段応相談と、電脳オークションに告知した。すると、突然、ドッとアクセスが増大していった。

「な、何で!? あっという間に1万件近くアクセスが……!」

「そうか、こいつら金目当てで偽物売りつけようとしてるんだ。額が額だからな……考えてみりゃ当たり前だ。お手上げだな。コレ一つ一つと交渉してられねーぞ。第一、本物か偽物かも俺たちじゃ判断つかねーし……もっとディープなとこに入り込めば情報も豊富になるけど、俺もあんま詳しくねーし」

「ゲームと電脳ネットに詳しい人っていないかな?」

 ゴンの言葉に、キルアは、ふとある人物が思い浮かんだ。

「いた、両方詳しい奴。つ〜か、あいつだったらグリードアイランド持ってるかも」

「本当!?」

「でも、ヤダな〜……こいつに頼むの」

 かなり気乗りしない様子でキルアは、何処かに電話をかけた。

「あ、ゴトー? 俺、キルア。うん、元気元気。ブタ君、呼び出して。は? 嘘つけよ、あいつが外出するわけねーじゃん。10秒以内に電話に出ねーと、テメーのフィギュアぶっ壊すって伝えてよ」

 すると、しばらくして電話の相手が代わり、かなり不機嫌な声がした。

<何だよ、忙しいのにも〜……>

 キルアの兄で、ゾルディック家次男のミルキだった。

<言っとくけど、俺の人形に指一本触れたら殺すぞ>

「冗談だよ、兄貴。怒んないでよ、怖いなぁ」

 兄貴、と言われ、ゴンとレイはついハンター試験にいたイルミの方を思い浮かべてしまう。そこでふと、レイはパソコンが目に付いて、キーボードに手を伸ばした。

「実はさ〜」

 キルアはグリードアイランドの事をミルキに話す。

<グリードアイランド? ああ、知ってる。お前の口から、そんなレアゲーの名前が出るとは思わなかったな>

「兄貴、持ってる?」

<いや、持ってない。欲しかったけどさ。発売当時、俺5歳だぜ。金なかったし……100本限定の商品に申し込みが2万件以上あったらしいぜ。58億ジェニーの“現金一括販売のみ”にも関わらずだぜ? 俺も後から方々手を打って捜したんだけど、持ち主さえ特定出来ない。色んな意味で伝説のゲームだよ。で、何? お前もしかしてグリード探してんのか? 無理無理、やめとけよ。俺でさえ、諦めたんだから>

「へ〜え、兄貴が手も足も出ないで降参してんのか」

 挑発するようなキルアの口調に、ミルキは案の定、乗ってきた。

<ふん、昔の話だよ。今は心当たりくらいあるさ>

 が、労力と金額を考えると、そこまで欲しいゲームでもない、とミルキが言うと、キルアは「ふ〜ん」と笑みを浮かべた。

「その心当たりっての教えてよ」

<はっ! タダじゃやだね>

「グリードアイランドのメモリーデータと交換ってのどう?」

<! どーゆー事だ?>

「ちょっとしたコネでさ。ROMカードだけ手に入れたんだよ。兄貴なら、このデータを解析して、ソフト自体、再生する事も出来るんじゃないの?」

<…………その話、本当だろうな?>

 ふと声に重圧感が増した。それに対し、キルアも先程までの無邪気な表情ではなく、真剣な表情で答えた。

「“取り引き”で嘘つくほど俗ボケしてねーよ」

<分かった。心当たりは2つある>

「ちょっと待った。携帯じゃヤバいだろ?」

<安心しろよ。盗聴したって、そいつがどーこー出来るレベルじゃない。一つはハンター専用のサイト。情報量の多さと信頼度はネットでも最高峰だ。此処でなら通常のサイトじゃ考えられない貴重なお宝が行き交ってるらしい。一番、可能性が高い所だ>

 自分なら、そのサイトに無断侵入するくらいは訳ないが、ネット警察やハッカーハンターを敵に回すと厄介だと言って、アドレスはROMカードが届き次第、教えてやると言われた。

<もう一つは、ヨークシンのオークションって知ってるか?>

「! ああ」

 ヨークシン、と言われキルアは眉を顰める。

<今年のオークションに、そのゲームが数本、あるいは数十本流れるって噂。どうやら、ある人物が大量に抱え込んでるって話でさ。まぁ、こっちはガセネタの可能性も大きいぜ>

「OK、分かった。ROMカードはいつもの方法で送る」

 そう言い、キルアは携帯を切った。

「悪い。話の流れで、カードのコピーと交換って事にしちゃった」

「うん、構わないよ」

 どうせ、オリジナルはある、とゴンは特に気にしてない様子だった。

「まず、一つハンター専用のサイトがあるって」

「あ、そうか! ライセンスを使う……レイ?」

 既にパソコンで何かをしているレイに、ゴンとキルアが気付いた。レイは、キーを叩きながら言った。

「やめときなさい。自宅でライセンス使ったら住所がバレるわ。ライセンス狙いの悪党が島に来たら大変でしょ」

「あ、そっか」

「気付けよ、馬鹿。で、レイは何やってんだ?」

「グリードアイランドについて調べてる」

 そう言い、レイは2人にモニターを見せた。

『1987年発売のハンター専用ハンティングゲーム。58億ジェニーという市場最高価格での販売にも関らず、限定100本の商品に対し、200倍の注文が殺到した。
 その後、グリードアイランドは全く市場に姿を現さず、電脳ネット上でさまざまな情報だけが飛び交う幻のゲームとなる。
 1988年、ゲーム自体に170億ジェニー、クリアデータ入りのROMカードに500億ジェニーという高額懸賞が富豪バッテラ氏から懸けられたが、名乗り出る者は一人も現れず、幻のゲーム伝説が浮動のものとなる。この懸賞は現在も有効である』

「「ご、500億!?」」

 市場価格の10倍近い懸賞金にゴンとキルアは驚愕する。

「何考えてんだ、このバッテラって奴!?」

「それぐらい価値のあるゲーム……という事ね。それで?」

「え?」

「ハンターサイト以外に何かあるんでしょ?」

「あ、ああ」

 言われて、キルアはもう一つの方を言った。

「もう一つはヨークシンのオークション」

「「!」」

「兄貴はガセかもって言ってたけど、ある人物がゲームを何十本も今年のオークションに流すって情報があるらしい」

「もしかして……その人物がジンかも?」

「ああ。そう考えるとあながちガセじゃないかもな」

 ただし、どっちも手に入れるためには莫大な金が必要になる。ゴンは、ROMカードをジッと見つめた。

「(58億の伝説のゲーム……一体、どんなゲームなんだろ)」


 翌朝、日の出が出ると共にゴン、キルア、レイの3人はミトに別れの挨拶をする。

「じゃあ、ミトさん、おばあちゃん、行ってくるね」

「折角、帰って来たと思ったのに、あっという間だったね〜」

「キルア君、レイちゃん、またいらっしゃいね」

「う、うん」

「また……いつか」

 照れた様子で頷くキルアと、微笑んで頷くレイ。3人は、「行ってきます」と声を揃え、再び旅立って行った。


 船でくじら島を出て、そこから飛行船で3人はヨークシンに到着した。キルアはミルキからハンターサイトのアドレスを預かって来た鷲から、メモを受け取り、そのままネットカフェへと向かった。

 アドレスを入力すると、ライセンスナンバーを打ち込み、ライセンスをスライドに通すと酒場の画面が出て来た。

「そのバーテンダーにカーソル合わせてみな」

《どんな情報がお望みだ?》

 バーテンダーをクリックすると、大量の項目が出て来た。そこのゲームの項目をクリックし、グリードアイランドを見つける。

「あった、グリードアイランド」

「いいネタ頼むぜ」

 ゴンは、グリードアイランドをクリックする。

《グリードアイランドか。2000万頂くぜ》

「え?」

 情報提供料として2000万ジェニー必要と言われ、ゴン達は一瞬、唖然となる。

「流石にタダじゃ教えてくれねーな。でも、この額なら仕方ねーか」

「何か金銭感覚麻痺してくるな〜」

 苦笑いを浮かべ、スライドにキャッシュカードを通すゴン。

《OK、それじゃ、よく聞きな。グリードアイランドは、念能力者が作ったゲームだ》

「「「!」」」

《製作者の真の目的は不明。特質系の能力者で、どうも複数らしい。そいつ等は100本のゲームソフト全てに念を込めた。ゲームがスタートすると念が発動し、プレイヤーをゲームの中に引きずり込む。プレイヤーがゲームの中で生きている限り、ゲーム機はたとえコンセントを抜いても動き続ける。つまり、死ねば止まる。セーブポイントさえ見つかれば戻れるらしいが、何処にあるのかは分からない。匿名を条件に、所有者の一人が証言してくれた》

《私は50名のハンターを雇い、ゲームのクリアを試みた。その内の3人はライセンスを持つプロだった。が、還ってきた者はいない。誰一人》

「…………本当かな?」

 実際のゲームの中に入り、死ぬ可能性があると言われもピンと来ないゴンは冷や汗を浮かべてキルアに尋ねる。

「ハンターサイトの情報だぜ。まず間違いない」

 そして、クリックして次の情報に移る。

『ヨークシンシティで開催されるオークションには、8月14日現在までに7本のグリードアイランドが競売申請登録されている模様。最低落札価格 89億ジェニー』

「はちじゅう……」

「きゅうおく……」

「じぇにー」

「やっぱ、上がってんよ、30億も〜!!!」

 現在の自分達の金額の約11倍も金額が必要になり、キルアは頭を抱えて絶叫する。

「う〜ん、ねぇ、これって俺達も参加出来るのかな?」

「あ!? 見ただろ! 最低でも89億! 俺らの入り込む余地ねーよ!!」

「いや、買う方じゃなくて売る方でだよ」

 そう言われ、キルアはハッとなる。自分達もお宝を探して、それを元手にすれば、大儲けできるかもしれない、と考えた。

「よし、8億を元手に増やせるだけ、増やしてみるか」

「うん!」

 力強く頷き、ゴンはパソコンの画面を変えようとしたが、まだ情報があったので手を止めた。

『総合入手難易度―――G(優しい)
幻のゲームと呼ばれているが、あくまで一般人レベルの話。100本というソフト数は貴重品というには多過ぎる。現在のプロハンターの約6人に一人が所持できる計算で、公の競売にも姿を見せ始めた事から“探す”という意味では何度は最も優しいH、金額面を考慮に入れて総合はGとなる』

 それを見てゴンは、これぐらいの品を入手できないようでは、自分を探す事は到底、出来ないというジンからの隠れたメッセージに思えた。

「ふん、面白いじゃん、絶対手に入れてやろうぜ!」

「おう!」

 キルアはゴンの隣に座り、お宝探しを始めた。

「頑張ってね」

 レイは一応、励ましする事も無くなったので、本屋にでも行こうと出て行った。


「……………」

 気に入った文庫本を買い、噴水広場へ行くと何故かゴンとキルアが落ち込んでいた。

「どうしたの?」

「騙されたの」

 顔を俯かせて答えるゴン。

「ちきしょ〜!! あのジジィ!!」

「最初の壷は2倍で売れたのにね」

「今、考えりゃそれが罠だったんだよ」

 小金を儲けさせて信用させてから大金をせしめるという詐欺の常套手段だ。

「だから信用できる公共サイトだけにしようって言っただろ!!」

「んなもん、8時間やって儲けがたった985ジェニーだぞ!? 80億稼ぐのに何百年かかるんだよ!?」

「減るより良いじゃん!」

「おめーだって壷売れた時、乗り乗りだったじゃねーか!!」

「やりか!?」

「おお!!」

「(十分な予備知識も無しに画面越しの高価な売買は危険ね)」

 大衆の目の前で大喧嘩する2人から離れ、本を読み始めるレイ。ゴンとキルアは額を突き付けあって睨み合う。

「よーし、勝負だ!!」

「お〜、やったら」

「オークションまでの残り2週間で、どちらが一杯お金を稼げるか。542万ずつ持って8月31日夜9時の時点で多い方の勝ち!!」

「面白ぇ、もし負けたら!?」

「勝った方の言う事を一つ、何でもする!」

「乗ったぜ! 完膚泣きにまで負かしたら!」

 そして、2人は一斉に反対方向へと駆け出した。

「子供ね」

 フゥと呆れた溜息を零し、レイはどんな結果になるか、とりあえず楽しみだった。


 面接試験のあった屋敷では、クラピカ、カヲル、バショウ、センリツ、ヴェーゼ、ウチルがそれぞれ条件に見合ったモノを持って来て集まって来ていた。

「名女優セーラの毛髪DNA鑑定書付」

「エジプーシャ、石墓埋葬品のミイラ右腕」

「龍皮病患者の皮膚」

「一角族の頭蓋骨」

「暗殺された独裁者、シャーマン将軍の脳細胞だよ」

「俺ッチ達ハ、ぜりー症児ノ頭部ダゼ!」

 それぞれ持ってきた品物を出し、映像でしか分からなかった眼の下に模様のある男性に見せる。そして、鑑定し、それが全て本物だと判断する。

「OK、6人とも正式に採用だ。俺が護衛団リーダーのダルツォルネ。よろしく」

 男性――ダルツォルネは立ち上がると、指示を出す。

「さて!! 諸君らには早速、任務に就いて貰う! それは、ヨークシンまでのボスのガード! 無事にボスをホテルの部屋まで送る事!!」

 詳細を説明する為、ダルツォルネは6人を別室に促す。別室には地図があり、教鞭で説明する。

「ヨークシン郊外のリンゴーン空港まで専用飛行船で行く。移動時間約35時間。そこからホテルまでは専用車を使う。移動時間約90分。新入り6人は陣形の一番外を囲む。何か質問は?」

「ボスを狙う人物に心当たりは?」

 クラピカが、そう質問するとダルツォルネの眉がピクッと上がる。

「くくく、答える価値のない愚問だな。ま、あり過ぎて答え切れないと言っておこう。ボスは黒社会の要人だ。恨んでる人間は売るほどいる」

「分かってないのなら言い直そう。恨んでいようがいまいが、ようは実際に行動を起こすかもしれない人物の心当たりだ。敵が絞れれば動機・性格・環境が分かり、対策が立つ。対策があれば、護衛の安全度が増すだろう」

「分かってねぇのはテメーだ」

 ダルツォルネは声を低くし、教鞭を手で押して引っ込める。

「俺たちは『誰が』『いつ』『何処から』『どんな方法で』襲い掛かってきてもボスを守る。それだけ頭に叩き込んでおけば良いんだ」

 そして、そのまま教鞭を押し潰し、ペチャンコにした。

「敵の姿を勝手に想像するな。近づく者全てが敵だ」

 そう言われ、クラピカは、それ以上何も言い返さなかった。

「来な、諸君。ボスを紹介しよう」

 ダルツォルネに付いて行き、広く長い廊下を歩いていると、ふとヴェーゼがあるものを見つけた。

「ちょっと、あれは?」

 そこには人間がコンクリートか何かで固められ、額に飾られている。

「ああ、本物の人間だ。かつての仕事仲間だが、俺の教えを守らず、敵の偽情報に踊らされ、勝手に敵を想像し結果はチームは愚かボスを危険に晒した。従って処分した。諸君ら6人は彼の替わりだよ」

 つまり自分達も勝手な事をすれば、ああなるとそう物語っていた。やがて、とある部屋の前で止まり、ダルツォルネはノックする。

「ボス、新入りを連れて来ました」

「どうぞ」

 扉がゆっくりと音を立てて開くと、その奥のベッドの上には、一人の少女がいた。


 オークション前日の8月31日、ヨークシンに続く道をアスカは、歩いていると後ろからクラクションを鳴らされて振り返ると、一台の黒い車が止まった。

「よ!」

「レオリオ!」

 車を運転していたのは半年振りになるレオリオだった。

「乗れよ、一緒に行こうぜ」

「Danke!」

 乗るよう促され、アスカは助手席に座る。レオリオの運転で、2人はヨークシンへと向かう。

「この半年、どうしてたんだ?」

「ま、色々あったわよ。ゴンとキルアが念を覚えたり」

「その口振りだと、や〜っぱ、お前ら最初から念使えたんだな?」

「まぁね。その後、皆と別れて北に行ってたわ」

「北? 何でまた?」

「ちょっと……ね」

 頬杖を突いて憂い顔を浮かべるアスカ。その表情に、レオリオは何かあったと悟り、あの勝ち気なアスカが、此処までなるのは相当な事なのだろうと深く追求しなかった。

「そういやアンタは勉強の方どうなの?」

「う……言うな」

 脂汗を浮かべて言葉を詰まらせるレオリオに、アスカは苦笑する。

「見えたぜ、ヨークシンだ」

 やがて前方に大きな街が見える。

「(あそこに……アイツが)」

 そして、アスカはギリッと唇を噛み締め、自分達が捜している人物があそこにいると考えるとつい、拳に力を入れた。

 その際、2人を乗せた車は、ある一団を追い抜いた。

「ふぅ……暑いですね」

 長いエメラルドグリーンの髪に、穏やかな印象を受けるオレンジ色の瞳をしたピンクのカーディガンと青いロングスカートを穿いた女性が言うと、その横で網タイツに赤いピチピチの革の服を着た大柄のオレンジ色の髪をポニーテールにした男性が呆れた口調で言った。

「辛いなら帰っても良いわよ、可愛い生徒達が待ってるんでしょ? ユーテラス」

「折角のご厚意ですが、たまには仕事しないとクビになっちゃいそうなので」

 ユーテラスと呼ばれた女性は、そう言ってニコッと微笑む。

「それにしても、こうやって全員集まるのって初めてじゃね?」

 先頭を歩く黒いTシャツにジーンズを穿いた茶髪をオールバックにした男性が言うと、女口調の男性が頷いた。

「そうね。1年前のアーネストシティの時もアクアとミストは参加しなかったものね。ま、私は……」

 チラッとその男性は、自分の横を歩く肩口で切り揃えた紫がかった銀髪に青い瞳、そして黒いコートにシルバーアクセサリーを付けまくっている少年をチラッと見ると、後ろからガバっと抱き付いた。突然の事に少年は目を見開く。

「レインとマルクトさえいれば文句ないわ!!」

「離せ、この化け物」

「あら、失敬ね。私は女以上に美しい心の持ち主よ。そんな悪い子には……んちゅ〜〜〜!!!」

「っっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」

 レインと呼ばれた少年は、無理やり唇を奪われ、手を伸ばすが誰も助けてくれなかった。

「アクアさんとミストさんは来てるんでしょうか?」

「来てるだろ。俺、ミストは、ともかくアクアは苦手なんだよな……」

「あの人と上手くやれる人がいるなら見てみたいですわ」

 後ろで濃厚なキスシーンが繰り広げられているが、2人は見ないようにして先に進む。眼前にはヨークシンシティが広がっていた。


 〜レス返し〜
 ムツゴロウ様
 感想ありがとうございます。
 誤字のほうは修正しました。ご指摘感謝します。


 ショッカーの手下様
 アクアもヒソカ同様、男女両方ともいけますよ。
 マギは、何だかんだでシンジを慕ってますからね。書いてて可愛いキャラです。次回から、ようやくヨークシン編。黙示録も揃って、ようやく書きたい話が書けるって感じです。


 髑髏の甲冑様
 残りメンバーの4人、今回出ました。名前だけしか出てないキャラもいますけど。
 はい、ウチルもその気になれば沢山の人形を同時に操作出来ます。
 黙示録でも、そういうルールはあります。後日、出ますのでお楽しみに。
 はい、マギのオーラは旅団員を比べても遜色ないのでクロロも感心します。
 あ、ちなみにオカマキャラ出しました。


tougo様
 アクアの場合、アスカが脚だけ見えるようオーラを集中していたから、“凝”を使っていませんでした。それにアスカの能力知ってますし。ウボォーもクラピカ戦では、“凝”を使ってないので、オーラが見える場合は使ってない可能性が高いです。


 夢識様
 だからこそアクアは、ヒソカの友人としていけるのでは、と思います。
 意外とマギの行動は好評のようで嬉しいです。次回からはヨークシンメインです。お楽しみに。


alibertys様
 ご指摘ありがとうございます。今回は控えました。


 FACE様
 応用が利かないように思われがちなアスカの能力ですが、使い方次第では相手を騙す事も出来ます。
 黙示録一人一人にも、一応ドラマ的なものがあるのですが、それでも大半は『シンジのため』という意識が強いです。
 当日までに揃いつつあります。次回は、いよいよ黙示録と旅団の対面です。


 エセマスク様
 お久し振りです。
 誤字修正しておきました。
 ゲンドウはともかく、3人組の能力はヨークシンで出ます。
 今回出たメンバーは、男性32歳、ユーテリス29歳、オカマ36歳、レイン16歳です。
 それは、いずれ黙示録のメンバー紹介の時に掲載します。


 流刑体S3号様
 アクアは好きですね。危険なお姉さんタイプです。
 今のアスカ達の実力は、NGLのゴンとキルアぐらいです。
 そうですね。一応、今もってる人形も彼女の手作りです。
 マルクトもとうとうウチルだけは見つけられませんでした。黙示録一の苦労人、マルクトの裏話、やりたいですね〜。
 います。ちょっと顔とか良く分からないキャラ。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze