「こちらへどうぞ」
エレベーターガールに案内され、5人はエレベーターで50階に上がる。レイに続き、ゴン、アスカ、カヲル、キルアも一気に50階へいくよう指示された。
「このビルでは200階までは10階単位でクラス分けされています」
つまり、50階クラスの選手が一勝すれば60階に上がり、逆に敗者は40階にランクダウンするシステムである。また100階をクリアすると専用の個室まで貰える。
その時、ふと5人はゴン達と同じか少し年下ぐらいの胴着を着た丸刈りの少年と目が合った。彼も50階へ行くよう言われた人物だ。
やがて、50階に着くと、その少年が挨拶して来た。
「押忍! 自分、ズシと言います。あなた方は?」
「俺、キルア」
「俺はゴン」
「アスカよ」
「…………レイ」
「カヲルだよ、よろしく」
年が近いからか、すぐに少年――ズシと打ち解け、一緒に歩く。
「さっきの試合拝見しました。いや〜、凄いっすね!」
「何言ってんだよ。お前だって一気にこの階まで来たんだろ?」
「そうそう。一緒じゃん」
「いやいや、自分なんかまだまだっす。ちなみに皆さんの流派は何すか? 自分は心源流拳法っす!」
そう尋ねて来ると、5人は互いの顔を見合わせる。
「別に……無いよな」
「殆ど我流ね」
「ええ!? 誰の指導も無くあの強さなんすか……ちょっぴり自分、ショックっす。やっぱり自分まだまだっす」
いちいちビシッと両腕を広げるズシに、5人は少し変わった奴だと思うと、ふと拍手の音がした。
「ズシ! 良くやった」
「師範代!」
やって来たのはカッターシャツを着て、メガネをかけた穏やかな雰囲気の青年だった。
「ちゃんと教えを守ってたね」
「押忍! 光栄す。師範代、またシャツが……」
「あ、ゴメンゴメン!」
シャツの裾が出ているのを指摘され、青年は裾をズボンに入れると5人に気付いた。
「そちらは?」
「あ、キルアさん、ゴンさん、アスカさん、レイさん、カヲルさんす」
「初めましてウイングです」
「「オス!」」
青年――ウイングが名乗ると、ゴンとキルアは揃ってズシと同じような挨拶をする。
「まさかズシ以外に子供が来てるなんて思わなかったよ。君達は何で此処に?」
「ん〜……ゴンは特訓っていうのもあるけど、アタシ達は小遣い稼ぎかな」
「そうか……此処まで来るくらいだから、それなりの腕なんだろうけど、くれぐれも相手と自分、相互の体を気遣うように」
「「オス!」」
ゴンとキルアは力強く頷くと、1階でのファイトマネーを受け取りに行った。
「いらっしゃいません、キルア様、ゴン様、アスカ様、レイ様、カヲル様、ズシ様ですね。チケットをお願いします」
渡されたチケットと交換し、ファイトマネーを受け取ると中身は152ジェニーだった。
「1階とはいえシケてるわね……」
一応、1階でも大怪我を負いながらも戦っている者達だっているのだが、とアスカはボヤきながら早速、自販機でジュースを買う。
「1階は勝っても負けてもジュース1本分のギャラ。だけど次の階からは負けたらゼロ! 50階なら勝てば5万は貰えるかな」
「5万か……」
「結構、貰えるのね」
「100階なら100万くらいかな」
何気なくキルアが呟くと、5人は驚く。
「150階を越えるとギャラも1000万を楽に越す」
「いっ……キルア、前に200階まで行ったんだろ? そのお金は!?」
「200階すか!?」
ゴンがそう尋ねると、ズシは200階という回数に驚く。
「4年前だぜ。残ってる訳ないじゃん。全部、お菓子代に消えたよ」
「200階だと一体、勝ったらいくらになるの?」
「ん〜とね……正確に言うと、俺、200階に行った時点でやめちゃったから分かんないけど、190階クラスで勝った時は2億くらいだったかな」
それを聞いて、5人は金額というより、それほどの額を4年でお菓子代に消えたという事実に唖然となってしまう。
「おい、早く行こーぜ。俺達、前の試合でダメージなかったから、きっと今日、もう1試合組まされてるぜ」
控え室に入ると、そこには何人もの屈強な男性がいて、女子供の5人を物珍しそうに見て来た。
「まぁ、この階程度の相手なら、まだ楽勝だよ。気楽に行こうぜ」
「そお?」
大声で相手を見下すような発言をするキルアにズシは周りが睨んで来ているので萎縮する。と、その時、放送が鳴った。
<キルア様>
「お、お呼びだな」
<ズシ様、57階A闘技場へお越しください>
「あら」
どーん、とキルアが対戦相手でビシッと固まるズシ。
「押忍……! 胸、お借りします!」
「おう。まぁクジ運、クジ運。次、頑張れよ。60階ロビーで待ってるからな〜」
そう言ってズシと一緒に去って行くキルア。
「どう見る?」
その時、ズシの背中を見ていたアスカがレイとカヲルに尋ねる。
「案外、いい勝負するんじゃないかい」
「…………基礎体力や戦闘能力だけなら単純にキルアが上……けど」
面白い試合になりそう、レイのその言葉にアスカとカヲルは頷き、ゴンはコクッと首を傾げた。
<さぁ、皆様お待たせ致しました〜! 次の異色の組み合わせ! 何と少年同士の戦いです!!>
ワァァと歓声が沸く。子供とはいえ、まぐれで50階まで来れるものではない。話題性は十分なようだ。
<しかし、侮ってはいけません! 2人とも1階で凄い戦いをして、一気に50階クラスへやってきた強者です!! それでは2人の戦いっぷりをVTRで御覧いただきましょう!>
キルアは手刀で一瞬で相手をマットに沈め、ズシは拳法を駆使して的確に打撃を重ね、200kg以上ある相手をKOしたものだった。
<さぁ、皆さん! ギャンブルスイッチの準備は、よろしいですか〜!? それでは、スイッチオーン!!>
電光掲示板には、キルアが2.075倍で、ズシが1.500倍だった。
<ん〜? 投票の結果、倍率ではズシが優勢! 拳法の使い手というデータが有利に働いたのでしょうか〜?>
その結果がキルアのプライドを刺激し、ムカッとなり不機嫌そうな顔になる。
<それでは3分3ラウンド、P&KO制……>
「始め!!」
審判が開始の合図をかけると同時に、ズシは腰を落として拳を上げて構える。キルアは、それを見て隙の少ないいい構えだと判断したが、まだ自分の敵ではないとポケットに手を突っ込んだまま、ズシに向かって歩いていく。
<おおっと、キルア選手、大胆に間合いを詰めてくぞ!>
そして、キルアがズシの拳の間合いまで入ると、ズシは表情を苦くしながらも「はぁ!」とパンチを放った。が、キルアの姿が消え次の瞬間、彼は背後に立っていた。そして、首筋に手刀を放つ。
「ワリーな。150階くらいまでこれ一本で行くつもりなんだ」
ドサッとリングに倒れるズシ。
「クリーンヒットォーーー!!!」
天空闘技場ではP(ポイント)&KO制が取られている。クリーンヒット、クリティカルヒット、ダウンを取り、優れた攻撃にはクリーンヒットで1点、大変優れた攻撃にはクリティカルヒットで2点、ダウンを奪えば1点が与えられ、合計10P取れば、TKOで勝ちになる。無論、試合続行が不可能と判断した場合、KO勝ちである。
「(この一撃で終いだよバーカ)」
審判がズシにまだ試合を続けられるか尋ねているが、キルアは腕を組んでもう決まったと思った。
「はい、大丈夫す」
が、その考えに反してズシは立ち上がった。
「ファイ!!」
「(ちょっと手加減し過ぎたのかな)」
甘かったと思い、キルアは再び堂々と間合いを詰め、ズシの攻撃を避けながら背後に回って手刀を放つ。
<またまた喰らったーーー!! ズシ選手ダウーーーーンウ!!>
派手に転ぶスジだったが、すぐに体勢を立て直した。ダウンしても審判のチェック前に起き上がればPは取られない。
「ちっ!(やるな……同じ攻撃は二度、まともに喰わないか)」
一回で見切るまではいかないが、大したものだとキルアは思ったが、それ以上にズシの頑丈さに驚いていた。今の攻撃は掠っただけでも悶絶してもおかしくない一撃だった筈だった。
「(凄いす!! 速さもパワーも桁違い! このままじゃ全く勝負にならないっす!)」
一方、ズシはキルアの強さに冷や汗を浮かべる。そして、拳を下ろし、腰を低くして構えを変えた。
「(あれを……やるしか……!)」
当初は構えを変えたズシに眉を顰めるキルアだったが、不意に相手から異様なプレッシャーを感じ、目を見開くと後ろに跳んだ。
<おお!? どうしたことかーー!? キルア選手、後ろに退いてしまったぞ……>
「ズシ!!!」
その時、会場全体に響く怒声が轟いた。ズシは「ひっ!」と声を上げて構えを解く。声のした方を見ると、そこにはウイングがいて、彼は無言で席に座る。彼の周りの観客は驚いて、彼から離れている。
<え〜……観客の、と、とてつもなく馬鹿でかい声援で一時、試合が中断してしまいましたが、さぁ、気を取り直して再開して頂きましょう>
静まり返る会場だったが、再び試合が再開された。
60階ロビーでは、ゴン、アスカ、レイ、カヲルの4人が既に待っていた。そこへキルアがやって来たのに気付く。
「キルア、こっち! 見て! 6万も貰っちゃった!」
「少し時間かかったね」
カヲルが笑みを浮かべながら尋ねると、キルアは「ああ」と頷いた。
「ちょっと手こずっちまった」
「結構、強かったんだ?」
「いや、全然」
素質はあるし、強くなる。が、キルアから見れば隙だらけでパンチも遅く、殴りたい放題だったそうだ。
「なのに倒せなかった……それに」
キルアは、構えを変えたズシから放たれる“何か”を思い出す。
「アイツが構えを変えた途端、兄貴と同じ嫌な感じがしたんだ。何か分かんないけど、ヤバイ感じ。あれ、きっと何かの技なんだ! あいつの師匠が“レン”って言ってた」
ズシとの試合後、キルアはたまたまズシがウイングに謝っている現場を見た。その時、ウイングはズシに対し『“レン”はまだ使うな』と教えた筈だと言った。
そして、ズシの目標は目先の勝利ではなく最上階にあるのだろう、と諭し、此処にいる間、千回負ける事を覚悟するよう言った。
「“レン”と……最上階か」
「(まぁ技といえば技なんだろうけど……)」
キルアの話を聞いて、ジュースを飲みながらアスカが苦笑いを浮かべる。
「ゴン、俺ちょっと予定を変えるぜ。最上階を目指す!」
「うん!」
もっとも、ゴンは最初から最上階を目指すつもりだった。
「キ〜ルア♪」
その時、チョンチョン、とアスカが肩を叩いて来たので「ん?」とキルアが振り返る。すると、目の前で彼女が掌を広げた。
「!?」
「!!」
すると真正面のキルアは恐怖で顔を引き攣らせ、ゴンも何か感じてアスカから距離を取った。
「い、今の……」
「アンタがズシに感じたのってコレでしょ?」
スッと掌を下げると、彼女からは何も感じなくなった。
「アスカ……お前、“レン”使えるのか?」
「まぁね……一つ、言えるけどアンタ達は、まだ“レン”を覚えるには早過ぎる」
「どういう事?」
挑戦的な目で見て来るキルアに、アスカはフッと笑うと、ピッと彼の額に指を突きつける。
「物事には順序ってもんがあるの。“レン”は、まだ早い、それだけ」
そう言って、アスカはレイ、カヲルと共に去って行った。
「アスカ、何で教えてくれないんだろ?」
「いや……教えてくれたぜ」
「え?」
「“レン”はまだ早い……つまり、他にも何かあるって事だ」
そう言われ、ゴンは「あ……」と声を上げる。物事には順序がある。逆に言えば、順序を守れば“レン”に辿り着ける。ゴンとキルアは、そう思った。
それから3日が経ち、ゴンとキルアは100階をクリアし、個室を貰えた。手刀で相手を沈めるキルアと、押して相手を吹き飛ばすゴン。2人の少年は、天空闘技場で有名になっていた。
「ゴンとキルアも順調みたいね〜」
エレベーターに乗ってアスカが呟く。アスカ、レイ、カヲルの3人は、ゴン達よりも一足早く200階へ上がる事になった。
『何で俺達より先に進んでるんだよ!?』
と、キルアが文句言って来たのを思い出し、アスカは苦笑する。
「けど200階クラスからは皆、“念”を使うんだろう? あの2人のペースじゃ近い内に上がって来るよ」
「って言われてもアタシらじゃ、どうしようもないでしょ。無理やり精孔こじ開けるような器用なマネ出来ないし……」
「…………殴れば?」
「「………………」」
本を読みながらボソッととんでもない事を呟くレイに、アスカとカヲルは表情を引き攣らせる。
「それは最後の最後、もう無理って時の手段だね〜」
「あのウイングって人に教えて貰うしかないか」
ハァ、と溜息を零すアスカ。やがて200階に到着した。エレベーターの扉が開くと、3人はピクッと反応する。
「…………誰?」
キッと曲がり角を睨み付けると、スッと一人、出て来る者がいた。
オレンジの髪をオールバックにして束ね、赤い瞳をした黒い革ジャンを着た男だった。男はフッと笑うと、3人に頭を下げる。
「ようこそ200階クラスへ。私はシフ、と申します。同じ200階クラスの闘士として歓迎しますよ」
男性――シフは名乗ると、レイは、1階で自分達の試合を観戦していた人物を思い出す。
「どうやら念を使えるようで洗礼は受けずに済みそうですね、では」
ニコッと笑いかけ、シフは何処かへ去って行った。それと入れ違いに、3人の人物がやって来る。一人は能面みたいな顔で、左腕がない。一人は車椅子に乗っており、もう一人は両脚が無くて鉄柱と杖で体を支えていた。
「さて、受付け行きますか」
「ええ」
アスカ達は3人を無視し、受付へ行くと、200階クラスでの説明をされた。
200階クラスでは、まず下の階と違い、賞金は出ず名誉のみの戦いになり、また武器の使用も認められる。
また、『申告戦闘制』というものが採用され、一試合ごとに90日の戦闘準備期間が用意されている。期間内であればいつでも試合をすることが出来、一度試合をすると再び90日の期間が与えられるというものだ。期間内に申告しなければ失格になってしまう。
そしてクリア方法だが、200階クラスでは4敗すれば失格となり、10勝すればフロアマスターへの挑戦権が与えられる。フロアマスターとは、天空闘技場における最高位闘士達の称号のことで、230階から250階の各フロアをそれぞれ一人で所有しており、2年に一度、最上階で開かれるバトルオリンピアに参加出来るのだ。
「それでは、こちらの申し込み用紙にお書きください」
説明が終わり、受付け嬢から申し込み用紙を受け取る。そこに、希望する対戦日を書くようだ。すると、先程の3人組が後ろに並んで来た。
「何?」
「いや、俺達も申し込みをしたいから並んでるだけだよ」
どうやら新人であるアスカ達と戦って勝ち星を稼ぎたいようだ。アスカは舌打ちすると、期限ギリギリの日付を書き、レイとカヲルも同じく期限ギリギリに指定した。
「アンタ達みたいな確実に倒せるカモしか狙わない奴なんか相手してる暇ないの」
アッカンベ〜と3人に言い放ち、アスカ達はエレベーターで自分の部屋に降りて行った。
〜レス返し〜
ショッカーの手下様
アスカ達も本格的に念を使ってるので、ゴンやキルアと差が出始めたので、彼らより早く200階に着きました。ちなみにアスカ達じゃ、ゴンの精孔を開けません。ウイングほど経験積んでないので。
髑髏の甲冑様
騙され易いのは強化系ですから。
シンジはパッと見、ゴキブリ見ただけで怖がりそうですし……誰が見ても、彼をテロ組織の首領とは思わないでしょう。
名前はシフです。黙示録のメンバーかどうかは先のお楽しみです。
う〜む……ますますレイがお色気担当になってしまいそうなイベントです。いや、でもそのイベント前から考えてましたけど。他にも一緒に寝たりとか。
I様
誤字指摘ありがとうございます。訂正しておきました。
夢識様
ウイングさんの所にエヴァ組は付いて行きませんでした。まぁ念は使えますし。レイは天然、カヲルは壊れかけ……アスカの気苦労が絶えないと思いますね。
水様
ハンター試験に関しては結果を変えると、流石にどうなるか分からなかったので……ですが天空闘技場やヨークシンではオリジナルの展開を多く盛り込んでいきたいと思います。
1様
その辺は考え方の相違だと思います。私は使徒の能力や形態を見て、念能力で表そうとしました。サンダルフォンの様に、特殊能力が出ず、ただ孵化しただけの使徒は、その姿から能力をイメージしましたし。
それに性格に関しても原作キャラと似てるから、というよりエヴァキャラの性格を考えて能力を決めました。それにカヲルの場合、オーラで壁を物質化するより、オーラを壁の性質に変化させる方がイメージ的に合ったので。それで納得いくかいかないか、違和感を感じるか感じないかは読者の方の捉え方だと思います。
後、加持ですが正直、出すか出そうか迷ってます。これ以上、エヴァキャラを出すと、H×Hの世界にする意味あるのか、とか思う人が出て来るかもしれませんので。ただ加持だったら操作系か特質系かな、と思ってます。
怒羅衛門様
フォローありがとうございます。なるべくハンターの世界観を壊したくない為、今は原作に忠実に進行しています。ただ原作が未だ連載中な作品の為、下手に弄って後にどう影響するか分からないのが怖くて、大きく話を変えられないというのも事実です。
後に帳尻を合わせられつつ、大きく話を変える。これが私がこの話を書いている時に常に意識している事です。
tenten様
面白い、と言ってくれてありがとうございます。アスカですが、今の彼女なら逆に抜かれないよう努力しそうです。プライドの高い所為で起こった後悔の辛さは彼女が一番知ってる筈ですし。