「あそこよ」
カナリアに案内され、6人は森の中に建てられた屋敷に来た。その入り口の前でスーツを着た男性達が立っており、揃って頭を下げた。
「先程は大変、失礼を致しました」
屋敷の中に入れられ、お茶を出されると執事のゴトーにカナリアの一件を謝られ、手当てされた。
ソファではゴン、クラピカ、レオリオがゴトーと向き合うように座り、アスカとレイ、そしてカヲルは横の椅子に座っている。
「奥様から連絡があり、あなた方を正式な客人として迎えるよう申し付けられました。ごゆっくりお寛ぎ下さい」
「此処が屋敷じゃないのか?」
「ええ、執事用の住まいよ」
執事用とはいえ、十分、富豪クラスの作りの屋敷にゴン達は驚く。
「心遣いは嬉しいが、俺達はキルアに会う為に此処に来た。出来ればすぐにでも本邸に案内して貰いたいんだが……」
「その必要はございません」
レオリオの言葉をゴトーは遮って言った。
「キルア様がこちらに向かっておいでですから」
「! 本当!?」
「ええ、もうしばらくお待ち下さい」
その言葉にゴン達はパァッと表情を綻ばせる。が、カヲルとレイは何やら意味あり気な視線をゴトーに送ると、フッと笑ってお茶を飲む。
「さて……ただ待つのは退屈で長く感じるもの。ゲームでもして時間を潰しませんか?」
そう眼鏡を押し上げてゴトーが言うと、ゴン達は「ゲーム?」とキョトンとなる。ゴトーは笑みを浮かべ、一枚のコインを取り出し、高く上げると両手を交差させてキャッチする。
「コインはどちらの手に?」
「「「「左手」」」」
ゴン、レオリオ、クラピカ、カヲルは余裕の笑みを浮かべ、答えるとゴトーは左手を広げる、その中にコインがあった。
「御名答。では次はもっと速く行きますよ」
そしてコインをトスし、落ちて来た所を先程よりも速くキャッチする。
「さぁ、どちら?」
「また左手」
ゴンが答えると、他の3人も頷く。
「素晴らしい」
それも正解だったので執事達は拍手した。
「じゃ、次は少し本気を出します」
そう言ってコインをトスすると、ゴトーは凄まじいスピードで手を動かしてキャッチする。
「さぁ、どっち?」
「ん〜……自信薄だが……多分、右」
「私はキルア様が生まれた時から知っている」
レオリオが答えると、ゴトーが突然、声を低くして話し出した。
「僭越ながら親にも似た感情を抱いている。正直なところ………キルア様を奪おうとしているお前らが憎い」
青筋を浮かべている彼の表情を見て、4人は目を細める。何やら雲行きが怪しくなって来た。その時、ドサッと何かが倒れる音がして4人はハッとなると、レイとカヲルが机に突っ伏してしまった。
「レイ! カヲル!」
アスカは隣に座っているレイの体を起こすと、彼女は静かに寝息を立てている。アスカは、キッとゴトーを睨み付ける。
「アンタ……お茶に何入れたの?」
「茶を用意して待っていろ、と言ったのはお前だろう?」
ギリッとアスカは唇を噛み締める。
「さぁ、どっちだ? 答えろ」
コインのある手を答えるよう言うゴトーに、クラピカが「左手」と答え、彼は左手を開けた。すると、掌にはグシャッと折れ曲がったコインがあった。
「奥様は消え入りそうな声だった。断腸の思いで送り出すのだろう……許せねぇ」
そう言い、ゴトーは新しいコインを出す。
「キルア様が来るまでに結論を出す。俺が俺のやり方でお前らを判断する。文句は言わせねぇ」
「判断? ナメてんじゃないわよ! アタシが本気出せばアンタらなんて……」
立ち上がろうとするアスカだったが、その時、寝ているレイとカヲル、そしてカナリアに他の執事達が刃を刀を突きつけた。
「いいか? 一度間違えば、そいつらはアウトだ。キルア様が来るまでに4人ともアウトになったら……キルア様には“6人は先に行った”と伝える。2度と会えない所にな」
「…………キルアは」
「黙れ」
何か言いかけたゴンをゴトーは無理やり遮る。
「テメーらはギリギリのとこで生かされてるんだ。俺の問いかけにバカみてぇに答えてろ」
そして再び凄まじいスピードでコインをトスしてキャッチする。
「どっちだ?」
「(分からない……)」
「右手」
分からず戸惑うゴン達に対し、アスカは即答する。
「俺は左手だ」
「俺は右手」
「私もだ」
レオリオだけが左手を答え、ゴン、クラピカはアスカと同じ右手を答える。
「まず、一人アウトだ」
コインは右手にあった。更にゴトーはコインをトスし、キャッチする。
「どっちだ?」
「左手」
「私は右手だ」
「じゃあ、俺は左手」
アスカが即答し、クラピカとゴンは自信なさ気に答える。
「当たりは左手。残りは2人……」
そう言ってゴトーはゴンとアスカを見据える。
「行くぜ」
「ちょっと待って!」
ゴトーがコインをトスした瞬間、ゴンが待ったをかけた。
「何だ? 時間稼ぎのつもりなら一人ぶっ殺すぞ」
「レオリオ、ナイフ貸して」
いきなりナイフ貸してと言われ、レオリオは戸惑うがゴンは笑みを浮かべる。
「安心してよ。暴れたりしないから」
そう言って左目のガーゼを剥がし、レオリオから借りたナイフで晴れ上がった目蓋を切った。
「(なるほど。血を抜いて腫れを引かせた訳か)」
パチッと両目を開けて、ゴトーを見るゴン。
「よし、OK。良く見える。ドンと来い!」
「フン」
ゴトーは鼻で笑うと、コインをトスしてキャッチする。
「どっちだ?」
「「左手!」」
ゴンとアスカは笑みを浮かべたまま答える。2人の言うように、コインは左手にあった。
「やるな……じゃ、こいつはどうだ」
そう言い、ゴトーは席を立つと、執事が2人、彼の両サイドに寄って来る。そして、コインをトスすると、3人一斉に凄まじい勢いで手を伸ばした。
「さぁ、誰が持ってる?」
その質問に、ゴンとアスカは互いを見ると、ニィッと笑った。
「「後ろのこの人」」
2人は、ゴン達の座っているソファの後ろの執事を指すと、その執事は驚いた様子で手を開いた。そこにはコインがある。それにゴトーはフッと笑みを浮かべた。
「素晴らしい!!」
そして、急に拍手した。その時、「ゴーン!!」と呼ぶ声が聞こえた。
「キルア!!」
「いや〜、少し悪ふざけが過ぎました。大変、失礼致しました。しかし、時間を忘れて楽しんでいただけましたでしょう?」
「あ、もうこんな時間経ってのか!」
腕時計を見て、かなり時間が経っていた事に驚くレオリオ。
「いや〜、あんた迫真の演技だったぜ」
「って事は……」
アスカは額に青筋を浮かべ、何故か小刻みに震えているレイとカヲルを見下ろす。
「アンタ達のも演技だったわね!!」
「あははは……バレた?」
ムクッと起き上がってカヲルは微笑を浮かべる。レイも小さく笑っていた。
「アンタ達ね〜……」
「ゴン!!」
怒鳴ろうとしたアスカだったが、その時、キルアが部屋に入って来た。
「後え〜と……クラピカ、リオレオ、アスカ、レイ、カヲリ!」
「私達は、ついでか?」
「レオリオ!」
「う〜ん……カヲリってのも良いね」
キルアは、ゴンの怪我だらけの顔を見るなり笑った。
「久し振り! 良く来たな、どうした? ひでー顔だぜ!」
「キルアこそ」
「早速だけど出発しよーぜ。とにかく何処でもいいから、此処にいるとお袋がうるせーからさ」
そう言うと、キルアはゴトーに向き直った。
「じゃーな!! あ、そーだゴトー! いいか? お袋に何を言われても付いてくんなよ」
「承知しました。いってらっしゃいませ」
ゴトーはペコッと頭を下げると、キルアとクラピカとレオリオは先に出て行った。その際、ふとゴンは振り返ってゴトーに言う。
「ゴトーさん、キルアがいなくなったら寂しくなるね」
「いいえ、私共、執事は雇用主に対し、特別な感情は持ち合わせておりませんので」
「うそつき!」
ベッと舌を出して言うゴンに、ゴトーは「ゴン君」と彼を呼びとめ、コインをトスした。今度は、先程よりも格段に遅く、キャッチする。
「さぁ、どっちです?」
「左手でしょ?」
ゴトーはニッと笑って両手を広げると、コインは右手にあった。それに驚くゴン。
「うそ……」
「そう、トリックです。世の中、正しい事ばかりではありません。お気をつけて」
そうしてゴトーはキルア様をよろしくお願い致しますとゴンに頭を下げた。3人を追いかけるゴンを見て、アスカ達も付いて行く。
「悪趣味な芝居に付き合せて申し訳ありません」
「いえ……貴方がキルア君に対し、本当に親に似た感情を持っているのは気づきましたから」
キルアが、こちらに向かっている、と言った時のゴトーの瞳が一瞬、揺らいだのをカヲルとレイは見逃さなかった。そして、ゲームをする、と言った時、何かあると瞬時に察知し、互いに目配せして寝たフリをした。
「私達の演技に気付かないでムキになるアスカ……無様だったわ」
「フ、フン! 悪い!?」
「いえ……嬉しかった」
そう言われると、アスカは怒る気も失せた。
「ほら……とっととゴン達、追いかけるわよ」
「ええ」
アスカとレイは駆け出し、カヲルもそれに続いてゴン達を追いかけて行った。
「あぁ、俺もそれ騙されたよ」
街に戻ると、ゴンはキルアにゴトーの事を話し、キルアも自分が同じ事をやられたと言った。
「種明かしされると腹立つくらい簡単だぜ」
「恐らく、こういう事だろう。ゴン」
言って、クラピカはゴトーと同じようにコインをトスしてキャッチする。
「どっちだ?」
「左手でしょ?」
が、クラピカが手を広げるとコインは右手にあった。
「何で!? ねーどうして!?」
二度も引っかかって、ゴンはどうしてもタネが知りたいようだ。
「要するに、ゴトーはコインを2枚、持ってたのさ」
一枚を右手に隠し持ち、もう一枚のコインを上げ、相手に分かるように左手で取る。その際、『どっちだ?』と尋ねる時に拳を相手の目より少し高めに上げ、左手のコインをさり気なく袖の中に落とす。すると残ったのは右手のコインだけである。
説明を聞いて、ゴンは「あぁ〜!」と納得したように手をたたいた。
「う〜、腹立つ〜」
キルアの言った事が良く分かったゴン。
「まぁ、そのトリックを使ったのは最後だけだと思うよ。たとえゲームでも、ズルは嫌いだからな、ゴトーは………それにしても」
キルアはズイッとゴンに顔を近づけると呆れた口調で言った。
「お前、本当に頑固だな〜」
「え? 何さ、いきなり?」
「ハンター試験合格したんだろ!? ならハンター証を使えば、観光ビザなんてなくてもずっと外国滞在できるんだぜ!」
「アタシ達もそう言ったんだけどね〜」
「う〜……だって決めたんだもん。やる事全部やってから使うって」
ゴンがそう言うと、やる事って何、とキルアが尋ねる。
「えーとね、まずはお世話になった人達に挨拶に行って……何とかカイトと連絡とって落し物を渡したいし、そして一番肝心なのは……」
4次試験の時の事を話し、ヒソカの顔面を殴ってプレートを叩き返す、と44番のプレートを出して言うゴン。
「そうしない内は絶対、ハンター証は使わないって決めたんだ!!」
「ふ〜ん……で、ヒソカの居場所は?」
「まさか分からないのに返すつもりなのかい?」
そう言われ、ゴンは「え〜と」と言葉を詰まらせる。他の5人は揃って呆れ果てた。
「私が知ってるよ、ゴン」
が、クラピカがそう言うと、皆、驚いた様子で彼を見る。
「本当?」
「何でだ?」
「本人に直接聞いたからだ」
「…………あの時か?」
レオリオは、最終試験でヒソカがクラピカに耳打ちした事を思い出す。
「講習が終わった後だ」
「だが関係あるんだろ?」
「まぁな」
「前から聞きたかった事だが、あの時、ヒソカに何を言われた?」
そう聞かれると、クラピカの雰囲気が一変し、暗いものになる。
「“クモについて……いい事を教えよう”」
クモ、という単語に5人は幻影旅団を思い浮かべる。
「奴に旅団のことを話した覚えはないから一次試験の時にレオリオとの話を聞かれたか、他の誰かが話したか……とにかく“クモ”は旅団のシンボルだ。故に旅団に近しい者は奴らをそう呼ぶ。それを知っていたヒソカの情報に興味があってな」
「なるほどな」
プライドの高いクラピカが甘んじてヒソカの降参を受け入れたのは、そういう理由だったかと納得するレオリオ。
クラピカは講習後、ヒソカに問いただし、彼は言った。
『9月1日、ヨークシンシティで待ってる』
「! クラピカ! 本当にヒソカ、そう言ったの!?」
突然、アスカが驚愕した様子で問い返した来たので、クラピカは少しビックリしながらも「あ、ああ」と頷いた。
「どうした?」
「…………9月1日、ヨークシンシティに黙示録が来るそうよ」
黙示録、と聞いてレオリオ、クラピカ、キルアが驚愕する。
「黙示録って……どういう事だよ、アスカ!?」
「ハンター試験にアクアって奴、いたでしょ? アイツ、黙示録のメンバーで、アタシ達にヨークシンに来なさいって言ったのよ」
「ねぇ、黙示録って何?」
ゴンが相変わらず世間知らずな質問をして来て、レオリオはガクッと肩を落として説明した。
「あのな……良いか、ゴン? 黙示録ってのは、テロリストだ。世界中で奴らに破壊された都市が沢山ある。政府の要人暗殺もやってる幻影旅団に並ぶA級首だ」
ハッキリ言って一流のハンターも手を出さない、そんな連中だった。ゴンは「へ〜」と感心したように呟き、レオリオ達はまさかハンター試験に黙示録の一人がいるとは思わなかった。その時、ふとゴンはある疑問が浮かんで尋ねた。
「ねぇ、アスカ達、黙示録と何か関係あんの?」
「え? それは……」
チラッとアスカはカヲルとレイを見る。
「良いんじゃないか? 彼らとの付き合いも長いし」
「どうせヨークシンで巻き込む可能性もあるし」
そう言われ、アスカはゴン達に話した。
「あ〜……アタシらがハンターになったのは、黙示録の頭を捕まえる為よ」
「「「「!?」」」」
それに4人は驚いて、アスカ達の話を聞いた。
黙示録の頭が昔の自分達の知り合いで、何でテロリストなんてやってるのか問いただすのと、自分達から逃げているので、こっちから捕まえてやろうとしているのを。
「国際テロ組織のトップと知り合いって……マジかよ」
「マジよ。ちなみに、こんな奴」
そう言ってアスカは、一枚の写真を見せる。それは、アスカが真ん中で腰に手を当てて不敵に笑っており、その左隣でレイが無表情直立不動で立っており、右隣で黒髪の少年が苦笑いを浮かべている。そして、その少年とレイの肩を掴み、後ろで3人よりも、随分年上な黒髪の女性がウインクしていた。
「おぉ! 誰だ、アスカ、レイ!? この美女は!?」
「昔の上司よ」
「(昔って今とそんなに年変わらないんじゃ……)」
写真に写っているアスカとレイを見て、キルアはそんな風に思った。
「で、この軟弱な奴が黙示録のリーダー」
「「「「え?」」」」
ピッと黒髪の少年を指差すアスカに、4人は目を点にする。世界にその名を轟かせる黙示録のリーダーが、こんな地味な少年だと誰が想像しようか?
「イカリくんは……軟弱じゃない」
「軟弱よ」
「違う」
「違わない」
バチバチと火花を散らすアスカとレイ。その様子を見て、レオリオがカヲルに小声で尋ねた。
「おい、まさかあの2人が前々から言い争ってた男って……」
「アスカ君は認めたがりませんけど、彼ですよ」
「ひぇ〜……あんな地味っぽいガキが美少女2人に慕われるたぁ……羨ましい」
ギュッと拳を握って本当に悔しがるレオリオ。
「けど、黙示録も9月1日のヨークシンに来るって、その日って何があるの?」
「世界最大のオークションよ」
ゴンの質問に対し、レイが答える。
ヨークシンシティでは9月1日から10日までの間、世界中から集められた珍品・希少品・国宝級の貴重品などが集まる。無論、その何十倍も偽物も集まる。
それらを目指し、海千山千の亡者達が欲望を満たす為にやって来る、世界で最も金の集まる場所である。
「そこに黙示録……そして旅団も来るのか?」
「かもな。少なくとも関わりの深い連中はゴマンと来るだろう」
「黙示録に幻影旅団……最悪の組み合わせね」
「一つ言える……半年後、ヨークシンは崩壊する」
カヲルの言葉に皆は表情を固くする。が、突然、アスカがパンと拳を掌に叩き付けた。
「無論、そんな事させないわよ。あの馬鹿に会って、絶対に止めてやる!」
「…………そうね。これ以上、彼に罪を重ねて欲しくない」
「僕も親友だしね」
そう言って3人が笑い合うと、クラピカは自分と違い憎しみで動いていない彼女らが少し眩しく見えた。フッと笑みを浮かべると、5人に言った。
「じゃ、私は此処で失礼する」
「え?」
「キルアとも再会できたし、私は区切りが付いた。オークションに参加する為には金が必要だしな……これからは本格的にハンターとして依頼主を探す」
「そうか……クラピカ、ヨークシンで会おうね」
「さて、じゃあ俺も故郷(くに)へ戻るぜ」
「レオリオも!?」
クラピカに次いでレオリオも別れる事を言って、ゴンは驚く。
「やっぱり医者の夢は捨て切れねぇ。国立医大に受かれば、これでバカ高い授業料は免除されるからな」
そう言って、レオリオはハンター証を見せる。
「これから帰って猛勉強しねーとな」
「うん、頑張ってね」
「また会おうぜ」
「じゃ、次は……9月1日ヨークシンで!」
6人は笑顔で頷き合い、ヨークシンで再会する事を約束した。
空港でレオリオとクラピカと別れると、アスカが不意に言った。
「さて……アタシらはこれから天空闘技場行くけど、アンタ達はどうする?」
「天空闘技場? マジで!?」
アスカが自分達の目的地を明かすと、キルアが驚いた様子で見る。
「実はもうあんまりお金ないし、アクアの奴に完敗したから小遣い稼ぎと訓練重ねる所と言ったら、あそこぐらいで」
「丁度いいや! ゴン、俺達も一緒に行こうぜ!」
「え? 遊ばないの?」
ゴンの素っ頓狂な発言に、キルアはガクゥッと肩を落とす。
「お前な〜……今のまんまじゃヒソカに一発だって入れられると思ってんのか? 半年どころか10年経っても無理だっつ〜の!」
遊ぶ前に特訓、と言うキルアにゴンは恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべた。
「まぁ並大抵の努力じゃ無理ね。あそこなら今のゴンのレベルアップには丁度良いかな……」
「じゃ、特訓と小遣い稼ぎかねて行くぞ、ゴン」
「う、うん」
何だかキルアに引っ張られるような形でゴンは天空闘技場へ行く飛行船の手続きをした。
飛行船のチケットを買い、5人の所持金はゼロになった。天空闘技場は、地上251階、高さ991mの高さを誇る世界第4位の建物だ。
飛行船を降りると、かなりの大行列が出来ており、皆、逞しい男性ばかりだ。
「凄い行列……」
「コレ全部参加者なのよね〜」
呆れた口調で並ぶ5人。
「ハンター試験と違って小難しい条件は一切無し! 相手をぶっ飛ばせば良いだけだからな」
「腕が鳴るわね〜」
フッフッフと楽しそうに指を鳴らすアスカ。やがて、受付にたどり着く。
「天空闘技場へようこそ。こちらに必要事項をお書き下さい」
ゴンとキルアは、なるべく早く上の階に行く為、格闘歴10年と書いた。アスカ達も8年ぐらいと書いている。
中に入ると、幾つもの試合場があり、そこで色々な人が戦っている。また観客の歓声も凄く、ゴンは「わ〜」と声を上げる。
「懐かしいな〜。ちっとも変わってねぇや」
「え? キルア、来た事あるの?」
「ああ、6歳の頃かな。無一文で親父に放り出された。『200階まで行って帰って来い』ってね」
その時は2年ぐらいかかった、というキルア。ゴンは、6歳とはいえ、キルアが2年かけないといけなかった事に驚きを隠せない。
「ヒソカクラスの奴と戦うなら、それ以上の階の相手と戦わなくちゃ駄目だ。急ぐぜ」
「うん」
<2367番・2053番の方、Cのリングへどうぞ>
「あ、私だ」
その時、放送が鳴ってレイが立ち上がる。
「レイ! 頑張ってね!」
「ええ……」
声援を受け、レイはCのリングへと向かう。
「フフ……これはまた美しい人が対戦相手ですね」
相手はパッと見美景のチャイナ服を着た青年だった。気障ったらしく薔薇の花を差し出す。
「どうだい? この後、一緒にお茶でも」
そう言い、薔薇の花をレイに向かって投げ渡す。あちこちで女性の黄色い歓声が響くが、薔薇を受け取ったレイは明らかに不服そうだ。
「君の美しい肌はなるべく傷つけ……」
そう言って構える相手だったが、レイは一瞬で間合いを詰めた。
「へ?」
そして次の瞬間、レイの肘鉄が相手の額にめり込んでいた。相手は派手に場外まで吹っ飛んで行った。
「(念は使ってないのに……かなりパワー付いたわね)」
試しの門の訓練の成果は、ちゃんと出ているようだった。
「2053番」
「はい?」
「君は50階へ」
そう審判に言われてレイは頷くとふと観客席に視線を向ける。
「……………」
そこには、ニコニコと笑顔を浮かべ、客席に座っているオレンジの髪の青年がレイを見据えていた。
〜レス返し〜
エセマスク様
カヲルが話が進む度に変態度がアップしていきます。ゴン達の場合、止めたくてもアスカとレイが怖くて何も出来ませんでした。
今回、エセマスク様に言われて、そういやまだ目的とか話してない、って事でヨークシン繋がりで話しました。写真も見せました。
アスカ達も当然、天空闘技場へGOです。
久我様
カヲルに関してはゴンのまっすぐブリに好意を持ちつつ、かつ呆れているので、ああいう表情になってます。
あ〜……アスカも割りと言いたいこと言いますからね〜。
髑髏の甲冑様
アスカとレイは人間的に成長してます。が、カヲルの場合は成長する方向性がちょっとズレちゃいました。まぁカヲルの場合、ヤラれ役もシリアス役も完璧こなせる美味しい奴なんですけどね。
果たしてくじら島には誰が行くのやら。先のお楽しみです。
夢識様
インチキに関してエヴァキャラは何も言いませんでした。3人とも、何だかんだで頭はキレますから、タネは見破ってます。
カヲルは面白い人間に成長(?)してくれました。