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「幻想砕きの剣 10-3(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-08-09 23:03/2006-08-16 22:19)
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14日目 夕方 リリィ


 走る。
 奔る。
 疾る。

 海の上を、船とは段違いの速度で走る。
 先程、2隻の船を2組ほど追い越した。
 あれにはリコとダリアが乗っていた筈だ。
 敵襲を受けた様子も無いし、順調なのだろう。

 海列車の中では、避難民達が騒ぎに騒いでいる。
 転覆の恐れがあるからあまり暴れないように、と言われてはいるが…この分だと、脳の片隅に残っているかも怪しい。
 まぁ、無理も無いだろう。
 散々魔物達から追い立てられ、ようやく安全な場所に逃げ込んだのだ。
 多少ハメを外した所で、誰が責められよう?
 転覆の恐れがあると言うのも、どっちかと言うと建前である。

 レールは特殊な造り方をされているので、常に海面に向かう方向は決まっている。
 つまり、津波が来ようとレールが捻れる事は無い。
 まぁ、想定外の力が加えられれば別だが…海だと可能性は0とは言えない。
 魔物に壊される心配も、あまりない。
 海の魔物が嫌う音波を出しているからだ。


 リリィは乗客達には混じらず、先頭近くの屋根の上に据え付けられた特別席…銃座に居座っていた。
 魔物が現れた時のための備え…と言うよりは、停止の為である。
 これだけのスピードで走っていれば、魔物に襲われる心配は殆ど無い…が、やっぱりブレーキに不安が残る。
 その為、港でもやったように、魔力で造ったネットを使って減速を手伝うのである。

 海には海王類みたいなバカでかい魔物も居るらしいが、そういう魔物達の巣は避けてある。
 と言うか、そう言った伝説になりそうな突然変異は、こんな陸の近くには出てこない。


 ぶっちゃけ、リリィの出番は殆どない。
 のだが、彼女は結構退屈していなかった。


「いやぁ、凄いわこのスピード…。
 それに水平線も夕日も綺麗だし…この際だし、幻影石に保存しとこっと」


 余程気に入ったのか、ネコミミネコシッポが楽しそうにゆらゆらと揺れている。
 周囲に誰も居ない事もあって、遠慮がゼロだ。
 海列車の揺れに合わせて、シッポとミミがピコピコ動く。
 …シッポが揺れる度に、スカートが持ち上げられてパンテェが見えそうで見えない…。


 ちなみにこの幻影石、車内で売っていた。
 誰が売ってたって、避難してきた商人とかが。
 殆どの商人は疲れきっていたようだが、安全かつ商売のチャンスと見るや、速攻で復活してお菓子やら幻影石やらを売りさばき始めた。
 こんな乗り物に乗ったのは初めてなアヴァター人達は、喜び勇んで幻影石を買い求めた。
 軍の機密とかどうでもいいのかなー、と思ったリリィだが、誰も何も言わない所からして問題ないのだろう。
 避難民達は、海列車の中やら海やら水平線やらを激写しまくっていた。
 神経が太いようで結構だ。

 あと30分もすれば、目的の港に到着する。
 リリィの役目は、海列車を確実に止めるためのブレーキ役だ。
 自分の出番が無くて多少つまらないと思う気持ちはあるが、この役割は他に出来る人物は居ない。
 ダリアでは技術はリリィ以上でも、魔力が足りない。
 一度や二度の停車は出来ても、後が続かないのだ。


「ま、どうせ避難が終わったら、私も戦闘に参加するんだし…」


 それまで精々ゆっくりさせてもらうとしよう。
 常に戦い続けなければならないのでもないし、避難が終わる頃には兵力の大部分が疲弊してもおかしくない。
 その穴を埋めるのが、自分達…リリィ、リコ、未亜、ひょっとしたらダリア…だ。
 精々大暴れして、自分の力をアピールするとしよう。
 自己顕示欲が強い訳ではないが、救世主となるにはアヴァター全土の人間に認められねばならない。


「…冷静になって考えると、無茶な条件だけど」


 それくらいしないと救世主にはなれないのかな、と思うリリィ。
 彼女は、まだ救世主になるのを諦めた訳ではない。
 かつて住んでいた村の皆の敵討ち、義母に認められたいと言う思い、“破滅”への憎しみ、世界を救いたいという願い。
 まだ彼女の中では、どれも衰えていない。

 だが、ふと顔に影が刺す。


 思い返すと、大河は救世主という存在に疑念を持ち続けていた。
 まぁ、胡散臭いと思うのは解からないでもない。
 リリィも初めて聞いた時には、幼いながらも単なる御伽噺ではないのかと思った。
 しかし、大河はどうも確固とした理由…と言うか、裏付けを持っているらしい。

 ひょっとしたら救世主とは、自分が思っているような存在ではないのでは?
 現に、フローリア学園の地下ではそれを仄めかすような出来事があった。
 幽霊達や、そして大河が言った推論。
 “破滅”が、この世界のバランスを取る為の必要な措置と言う推論。
 認めてはいないが…何処かが引っ掛かっている。

 リリィは頭を振った。
 これから戦いに行くのに、無駄な事を考えても仕方ない。
 どの道、やるべき事は決まっているのだから。


「……ん?
 あれ…何かしら?」


 横合いの山の上を、何かがフラフラと飛んでいた。
 ムササビのような飛び方だが…ムササビはあんな高い場所を飛ばない。


「……?」


 その物体は、暫く宙を彷徨っていたかと思うと、山の上に着地…と言うか落下した。
 リリィは首を傾げたが、多分ゴミ袋か何かが飛んでいたんだろうと思って忘れる事にした。


「…お? 不審物第2弾…」


 今度は海の向こうだ。
 目を凝らすと、水平線の一点にこんもりとした小山が見える。
 単なる小山ではない。
 何だか蠢いていた。
 その一点だけでモゾモゾしていて、動く気配は無いが…。

 どうやら、その物体は小島の上に乗っているらしい。


「何かしら…」


 目を細めて、海に反射された日光が目に飛び込むのを防ぐ。
 じっと観察を続けると、どうやら巨大な生物であるらしいとの結論を得た。

 すわ敵襲かと警戒するリリィ。
 だが、やはりその生物は動く気配は無い。
 ビーム砲でもぶっ放してくるのかと思ったが、距離を目算するに半端ではない程離れている。
 どうにも、敵対の意思は感じられない。
 しかし、無視している訳にもいかず…。

 あれだけ巨大な魔物など、そうそうお目にかかれない。
 さては海王類かと思ったが…。

 その時、響き渡る咆哮!
 だが、リリィはその咆哮を聞いた途端に脱力した。
 敵じゃない。
 多分。

 その咆哮曰く。


「ワシの酒が呑めんのくわああぁぁぁぁぁ!!!!」


 …どっかのお花見怪獣だったよーだ。
 花は無いが、既に出来上がっていらっしゃる。
 まぁ珍獣には違いないし、とリリィは幻影石に記録した。


14日目 夕方 リコ


 現在、リコの乗る船は襲撃を受けている真っ最中である。


「ネクロノミコン!」


 リコの叫びに応えて、宙を飛ぶ本が何処からともなく爆弾を幾つも取り出した。
 そのまま狙いもつけず、適当に放り投げる。
 投げ出された爆弾は、チャプンと海に沈む。
 そして暫くすると、連鎖的に爆発を起こした。
 どういう理屈か、水に漬かっても火薬は湿らず導火線の火も消えてない。

 周囲の爆発の余波で、船がフラフラと揺さぶられる。
 リコは海上を浮遊しているので平気だが、乗船者達には溜まった物ではないだろう。
 だが我慢してもらうしかない。

 海中には、リコが召喚した水生生物(命名オクトくん)が泳ぎ回っている。
 一見すると単なるタコだったりするが。
 そのオクトくんの視界は、リコの視界とリンクしている。
 色彩がどうだ目玉の位置がどうだとかは気にしてはいけない。
 一見するとタコなだけで、タコではないから。


 とにかく、オクトくんは爆発の余波を避けるため、少々深くまで潜行した。
 同じように、数匹の魔物が深くまで潜っている。
 何匹かは魔物を爆発に巻き込む事ができたらしい。


(厄介ですね…。
 攻撃力は然程強くない魔物ですが、移動速度が…。
 むぅ、まるでサメみたいな魔物です…。
 …………フカヒレ…)


 多少食欲に思考が流れつつある所からして、腹が減ってきているのかもしれない。
 まぁそれはそれとして、何とか動きを止めねばならない。
 瞬間的な攻撃力は高くないので、船を沈められる心配は無いが…穴でも開けられたらコトである。
 すぐに修理すればある程度の補強は効くが、避難民に知られると厄介だ。
 逃げ場の無い海上で船に穴を開けられたと聞けば、パニックを起こす。


(ま、手が無い訳ではありませんが…。
 ハルダマーでも叩き込んで、動きを止めますか)


 ハルダマーは、周囲にある物全てを引き寄せるのではない。
 重力だけを操るのではない。
 やろうと思えば、重力以外にも…例えば磁力のような、特定のモノだけを引きつけるりきばを使う事が出来る。
 その力を極限にまで強めれば、重力でないにも関わらずマイクロブラックホールが出来る…と、リコは聞いた事があった。
 そこまでの力は持ってないし、あっても危なくて使えないのだが…。


 リコは少し考えると、再びネクロノミコンに頼んで爆弾を出してもらった。
 しかし、今度の爆弾の導火線には火がついてない。
 それに、普段の爆弾の二倍は大きい。


「これに細工して…と」


 爆弾に、ハルダマーの力を篭める。
 この力を発動させれば、魔物達は爆弾に向かって吸い寄せられる。
 問題は、その力の強さと広さである。
 魔物だけ吸い寄せる、などという器用な真似は難しい。
 地上ならまだしも、海中だと普段意識しない要素が多すぎるからだ。
 力が強すぎると、船内部の人間まで吸い寄せようとしかねない…。

 リコは力の調整を済ませると、声を張り上げた。
 少し前までの彼女を知る人間なら、リコが大声を張り上げる姿など想像もできないだろう。
 が、はっきり言って今更か。


「船の皆さん!
 大技を使うので、少し揺れますので!」


『『おおーーーー!!』』

「任しておけい!」

「クソどもをぶっ飛ばせぇ!」 


 海の男達からの、威勢のいい返事。
 リコは頼もしいな、と思う。
 しかし、殆どの船員は…空中を駆けるリコを下から見上げて、イイモノ見えないかなと鼻の下を伸ばしていた。
 だが、それでもやはり一流の船員。
 余計な事を考えつつも、その手がこなしている仕事は文句の付けようが無い。

 リコはオクトくんの視界に集中すると、魔物達の位置を確認した。
 丁度、二つの船の真ん中を中心として旋回し続けている。
 どうやらこちらの攻撃を警戒して、おいそれと手を出せない所に逃げ込んだつもりらしい。
 確かに、普通の魔法では船の真下は攻撃できない。
 爆弾を使おうにも、普通は火が消えて爆発しない。
 逃げ込むには絶好の場所と言えるだろう。

 だが、今回は相手が悪かった。
 よりにもよってリコと、そして条件次第では津波さえも凌ぎきってしまう船が2隻。
 安全地帯と思って逃げ込んだ場所は、もっとも狙いが付けやすい場所でもあったのだ。
 そして、導火線は特別製。
 表面が燃えずとも、内側で燃焼が伝わっていくのだ。


「では、行きます!」


 リコは魔物達が有効範囲に集まったのを確認し、爆弾を放り投げる。
 そして、ハルダマー発動。
 狙い通り、魔物達は全て爆弾付近に集められた。
 それと同時に、オクトくんを素早く召喚術で回収。


「前進!
 あと30秒後に、海中で爆発が起きます!
 上手く乗り切ってください!」


「野郎ども、気張れえぇぇああぁぁ!」


 船長の激に答えて、気合を充填する船員達。
 船に着地したリコには、すぐに命綱が巻きつけられた。
 巻きつけた船員は、「なんか幼女を縛ってるみたいだ」とちょっとハァハァし、無表情ながらも「ありがとうございます」と言われてかなーり罪悪感に沈んでしまった。

 そのまま前進すること25秒。
 船員達は、そろそろかと身を固定する。


…DODOOOOOOOODOCOOOOOONNNNMMM!!!!

 そして予告通りに吹き上がる水柱。
 どんだけ魔力を篭めたのか、凄まじい勢いだ。
 リコもちょっと予想外である。
 水中では爆発の衝撃が強くなると聞いたが、その為だろうか?

 揺れる船。
 リコは命綱に掴まって耐えた。
 船員達は、この程度ならどうと言う事はないとばかりに涼しい顔だ。
 しかし、やっぱり揺れる揺れる。
 これでは船の内部の避難民達は、エライコトになっているだろう。
 押し潰されて圧死する人が居なければいいが。

 さらに押し寄せる波で、揺れる揺れる。
 リコは揺れながらも召喚魔法で再びオクトくんを呼び出す。
 召喚位置は、爆弾が爆発した辺りである。

 オクトくんに周囲を偵察させたが、魔物の気配は無い。
 どうやら爆発に巻き込まれ、全て息絶えたらしい。


「…ふぅ…」


 リコは汗を拭った。


 その頃のダリア先生…。


「ガハハハハ、そぅりゃ一本釣りじゃあ〜〜!」


「キャ〜ッ、お爺さんすっごいわ〜♪
 惜しみない拍手とか送っちゃう!」


 避難の途中だってのに、暢気に釣りなんぞやっている老人が一人。
 その隣では、ダリアが手を叩いてハシャいでいる。
 規格外品のバストがボヨンボヨン揺れているが、老人は豪快に笑っているだけで劣情を抱いた様子は無い。

 老人と言っても、めっちゃ筋肉ムキムキだ。
 例えていうなら、炎の○校生の伊吹○番がそのまんま老人になった姿だろうか。
 …あのオッサン、好きだったなぁ……。
 歯の食い縛りと血の滲みとか…。
 彼こそは文字通り、生涯現役だ。


 それはそれとして、一見すると暢気そのものだが…実を言うと、そうではない。
 カジキマグロ用の釣竿は、その性能を限界まで引き出され…海中から、その針に引っ掛けられた獲物を引っ張り上げる。
 ヒッカケは邪道かもしれないが、何せ相手が相手だ。
 丁度いい餌も持っていないし、仕方ないだろう。

 で、肝心の釣果はと言うと…少なくとも、船の上には乗ってない。
 一匹も釣れていないのではない。
 老人は、しっかりと獲物を釣り上げている。
 では、一体獲物は何処に行ったのかと言うと…。


「ほうれ、もう一匹ィ!」


「キャー♪キャー♪
 こんなに楽な戦いも滅多にないわ〜!」


 また一匹、老人が釣り上げた。
 そして、釣り上げたモノとは…。
 人型!
 手足にヒレ付!
 ギザギザの歯!
 漂う海の匂い!(当たり前だ)
 でもって死んだ魚のよーに濁ってボケッとしてる目。
 ある人々はこのナマモノをこう呼ぶ。
 深き者、と。
 …魚と同列扱いされたからか、引っ掛けられた針が痛いのか、涙目になっているよーな気がしないでもない。

 ぶっちゃけた話、魔物である。
 老人は、魔物の一本釣りをやっているのだ。
 魔物は普通の魚と同じ餌には食いつかないからヒッカケで、魚とは段違いの膂力は己の技術と肉体で無効化する。
 とんでもねー荒業である。

 で、釣りあがった魔物を。


「ふぁいやーぼーる♪」


 ニコニコと笑うダリアが狙撃。
 火の玉が直撃し、深き者はこんがり焼き上がった。
 あんまり美味そうじゃない。

 爆発に跳ね飛ばされた深き者は、焼き魚のよーな(でも不味そう)匂いを漂わせて遠くの海に墜落。
 放っておけば、お魚さんか他の深き者が食べるなりなんなりして処理してくれるだろう。
 …魚が腹を壊さないか、ちょっと心配だ。


「ふははは、そーれ次に行くぞー!」

「あははははは♪」


 絶好調な2人を、船員や見物に出てきた避難民達が生暖かく見守っていた。
 ちなみに、既に20匹以上の釣果を上げている事をここに記す。


14日目 夕方 ユカ・汁婆


 魔物に埋もれ、ユカは汁婆の姿が見えなかった。
 しかし、別に心配はしていない。
 少し向こうの方で、パカカカカカと独特の打撃音が聞こえるからだ。
 もとより、この程度の魔物達に遅れを取る汁婆ではない。

 ユカは敵を倒す事よりも、その陣深くに切り込む事を重視する。
 一体一体を確実に仕留めようとするのではなく、敵を倒すなら障害物となる魔物のみ、後は適当にパンチをくれて摺り抜ける。
 彼女の攻撃力だとそれでも充分脅威なのだが、流石のユカも疲れが出たのか破壊力が落ちている。
 だが、それで充分。
 自分達の内側に入って来た人間を、魔物達は圧殺しようとする。
 そこが狙い目だ。
 内側に注意が向いた瞬間を逃さず、今度は敵陣正面からドムが切り込んだ。
 直属の親衛隊がドムに続き、突破口をジワジワと広げていく。
 注意が逸れていた魔物達には、逃げる暇など与えられない。


 ユカ達は、最後の大勝負とばかりに持てる力を全解放して戦っていた。
 避難民達は全て送り出し、後は自分達のみ。
 アザリンも、最後の避難民と共に港町に進んだ。
 バルサロームはその護衛役だ。
 ドム達が直ぐに続かないのは、魔物の大群の足止めである。
 少数精鋭で大軍を止めるのは難しいが、このメンバーならやって出来ない事はない。


「ドム将軍、そろそろいいんじゃないの!?」


「いや、もう少し粘れ!
 万全を期すのだ!」


 魔物に埋もれながらも、ユカとドムは叫ぶ。
 実際、ユカも汁婆も兵士達も、大分疲れが出てきている。
 ドムは平気そうだが、これは指揮官故に表に出してないだけだ。

 そろそろ引き際だが、それにしたって相手に強烈な一打を叩き込んでから撤退する必要がある。
 逃げ腰になっている所に、追撃だとばかりに勢いづいた魔物達が突っ込んできたら、まず防ぎようが無い。

 だが、幾らなんでもそうそう都合のいい攻撃力がある筈がない。
 汁婆かユカ、又はドムがもう一人居れば…。
 いっそ魔法使いに命じて、分身の術でも開発させてみようかと考えるドム。
 しかし、やらせたとしてもこの状況じゃ無理だろう。


 その時だ。
 ユカとドムは何かが宙を裂く音を聞き取った。
 それと同時に、汁婆は火薬と鉄の匂いを嗅ぎ取った。

 咄嗟の判断で、周囲の敵を切り払いながら身を低くする。


ドゴオゴゴォォォ!

 そして響く爆発音。
 爆風が吹き荒れた。
 ユカや汁婆からは離れた位置に着弾し、盛大な爆炎を吹き上げた。


「こ、これは!?」

『…援軍…らしいな』


 目を丸くするユカと汁婆。
 ドムは素早く視線を動かし、風切音がどちらから聞こえてきたのか割り出した。


「…そっちか!」


 突然の爆発に慌てる部下を叱咤し、同じく浮き足立つ魔物を切り捨てる。
 目をやると、見た事もない鎧に身を包んだ人間が一人接近してきている。
 奇妙な事に、その人間は普通に走らず、平行移動して近付いてきた。
 面妖な、と思うドム。

 それと同時に、その人間は懐から何か取り出した。
 さては何かの兵器か、と身構えるドムだが、取り出したのは何故か旗だった。
 それを一度だけ翻す。
 翻った旗は、見覚えがあるマークを付けていた。


「あれは…謝華グループの!?」


 華々しいバラのマークに、なんかよく分からない幾何学的な紋章をあしらっている。
 アヴァター最大の企業、謝華グループの紋章だった。

 ドムは詳しい話を聞いていないが、一時期は王宮に従わずに“破滅”を目前としても商売をやっていた謝華グループが、なんか急に掌を返した事は知っている。
 企業と言えども一枚岩ではないのは分かりきっているし、別段不思議ではなかったが…。
 しかし、何故いきなり此処に?

 とにかく、“破滅”側の存在では無さそうだ。
 ドムは一旦戦線を離脱すると、援軍(仮)に近付いた。
 無論、何時でも剣を振れるように用心するのは忘れてない。

 援軍(仮)は、ドムを一瞥して、暫し待ってくれと掌を押し出してジェスチャー。
 すぐに魔物達に向き直り、両腕を突き出した。


「お、おおっ!?」


 次の瞬間、ドムは思わず驚愕の声を上げる。
 変形したのだ。
 腕に付けられている装甲から、なんかよく分からないメカメカしいブツが現れる。
 銃と言うヤツか、と見当をつけた。
 しかし、あまり実用性は無い筈だが…。

 ドムの疑問は、次の瞬間に粉砕された。
 バババババババ、と鼓膜を劈く音。
 腕の銃から、肩から突き出たなんかよく分からないのとかから、物凄い勢いで銃弾やらミサイルやらが飛び出したのである。
 その勢いは、正に弾幕と言うのに相応しい。

 なるほど、とドムは納得する。
 これなら命中させる訓練は、それほど必要ない。
 恐らく、短期戦用の装備なのだろう。

 五秒ほど続けて撃ち続ける。
 誤って味方に当てない程度の練度はあるらしく、銃弾は全て魔物達に食いこんだ。
 最前列に居た魔物達が、バタバタと倒れる。

 その隙を逃さず、兵士達は追撃する。
 援軍(仮)は、銃身が焼きついてないのを確認して、ドムに敬礼する。
 応じるドム。


「ホワイトカーパス軍将軍、ル・バラバ・ドムだ。
 援軍感謝する。
 貴殿の所属を」


「ええっと、俺…自分は、謝華グループの機構武装兵団所属、相馬透です。
 申し訳ないのですが、援軍…と言うには多少無理が…」


「機構武装兵団?」


 要するに、カラクリで武装した兵士の事だ。
 今まで、アヴァターではこう言う兵士は重要視されてなかった。
 何故かと言うと、単純に信頼性が低いからである。
 激しくぶつかり合う戦場で、ややこしい機構の兵器なんぞ使えるものか。
 何時壊れるか分かったものではない。

 それはともかく、透は状況を口早に説明する。


「最後の避難民達は、あと5分もあれば港町に到着します。
 ここに来るまでに救世主候補殿にも伝令してあります。
 早めに港町に戻り、篭城戦に備えてほしい、との事です」


「了解した。
 それで、援軍の数は?」


 ドムが聞くと、透は突然顔を歪ませた。
 まるでカンニングがバレた学生のようだな、と思う。
 しかし、次の瞬間にはドムの目が点になった。


「……自分一人です」

「…何?」

「自分一人なのです。
 元々、援軍と言うのも口実のような物で…自分を一時的に、王都から離れさせるのが目的なのです。
 正規の兵士の人達は、港で篭城の準備を進めています。
 その辺りの事は後で話すとして、撤退の事ですが」


「あ、ああそうだな。
 先程の銃撃、もう一度出来るか?」


「はい。
 しかし、銃弾のほぼ全てを使い尽くすので、この後は殆ど戦力にならないと…。
 一応近接戦用の武装もありますが、何せこの鎧自体が実験機ですので…」


 なんだそりゃ。
 ドムがそう思うのも仕方ないだろう。
 まぁ、一度きりとは言えあの攻撃力は有難い。


「よし、7割の威力でいい。
 撤退を開始したら、奴らの鼻先に叩き込んでくれ。
 …当真大河はどうしている?」


「ドム将軍の部隊が撤退するのに合わせて、港町に向かうそうです。
 敵の数に少々押され気味でしたが、あの勢いなら万が一を考える必要も無さそうです」


「そうか。
 では、撤退するぞ!」


 ドムが号令係に合図を送る。
 それを受けて、高らかにラッパが吹き鳴らされた。
 やっと下がれるとばかりに、だが一糸乱れず後退する兵士達。
 ユカと汁婆も、魔物の群から抜け出して撤退を開始した。


「今だ、撃て!」


「フルオープン!」


 七割でいいと言うのに、とドムは心中で呟く。
 まぁ、ノリ的には分からなくもない。
 手と肩だけではなく、腰やら足やらからも何か出てきた。
 そして先程にも増して激しい爆撃音。

 追いかけようと足を踏み出した魔物達に、正面から弾丸が迫った。
 その半分は魔物達に命中し、残りの半分は盾や甲羅で防がれ、その残りは地面に着弾して派手に火柱を上げる。
 命中率はあまり良くなかったが、牽制としては充分である。


「全軍、転進して港町へ向かえ!」


 それぞれ馬に乗り、馬が無い者は騎兵に乗せてもらい、揃って港町へ向かう。
 透だけは、足に仕込まれたローラーダッシュか何かを使って走っていく。
 時折振り返り、牽制に残り少ない銃弾を発射していた。


「ドム将軍!」

「タケウチ殿? どうかなされたか?」

「ボクは先に行って、大河君の援護をしてます!
 許可願えますか?」


「許可します。
 大河を頼みましたぞ。
 汁婆、お前もな」

「はい!」

『任しとけ』


 汁婆はスピードを上げた。
 砂煙を立てない程度に走っていく。
 一方、透はと言うと、お約束にも汁婆の様子を見て眼を丸くしていた。
 それでも銃撃を止めないのは、立派と言ってもいいだろう。


 場面転換が頻繁で申し訳ないが、14日目 日暮れ リリィ


 リリィの呪文と共に迸った雷に貫かれるミサイル。
 海の上で爆発が起きる。
 それと同時に、鉄の破片が飛び散った。


「このこのこのっ!
 海列車には攻撃させないわよ!」


 響く砲撃音。
 リリィは身を低くして、列車の上を走っていた。
 一歩間違えれば、猛スピードで列車から振り落とされて海に叩きつけられるだろう。
 しかしそこはリリィ、運動神経が野生のネコになっている。
 殆ど四つん這いになりながらも、全くバランスを崩さないのは見上げたものだ。
 カエデでも難しいかもしれない。

 海列車は、既にホワイトカーパスの港町と、避難先の港町を6往復していた。
 リコとダリアの船は、ようやく避難先の港に到着した頃である。
 単純計算なら、船があと2往復もする間に、全ての避難民を移送できる筈。
 …人口とか定員とか気にしてはならない。

 で、現在の海列車はと言うと…何故か陸から攻撃を受けていた。
 海列車に最も近い陸は、高い崖になっている。
 そこに迫撃砲だか何だか、リリィには見分けのつかない鉄の砲台が据え付けられ、海列車の進行に応じてバカスカぶっ放されてくるのである。
 何分距離があるので早々当たりはしないが、それでも5つに1つくらいは飛んでくる。
 問題は、それが当たりそうな位置だ。
 先頭車両付近の事もあれば、逆に後部車両の事もある。
 リリィはそれを打ち落とすため、屋根の上を走り回っているのである。

 リリィとしては、焦れったくてしょうがない。
 敵が姿を見せないので、攻撃の仕様がないのだ。
 大砲だけでも壊してしまいたいが、リーチが足りない。
 飛んでくる砲弾を撃墜するだけでも、結構大変なのだ。
 ガタゴト揺れる海列車の上で、必要最低限の移動だけして、魔法の射程範囲ギリギリから砲弾を打ち落としているのである。
 強風の影響もあり、この精度を出すのは人間業ではないと言える。


「ふっ、ブラックキャットを嘗めんじゃないわよ!」


 ネコりりぃ→黒猫→伝説の暗殺者。
 ルビナスが意図して付けた機能か単なる気のせいは不明だが、お蔭でリリィの射撃能力はメチャクチャに高まっていた。
 襲い来る強風をものともせず、全ての砲弾を撃墜していた。
 とは言え、正直言って手の打ちようがない。
 逆転の一手を探っているが、進展は全く無い。


「ったく、さっきまではこんな物無かったのに…」


 多分、何度目かの往復時に線路の軌道を見られ、それに合わせて砲台が設置されたのだろう。
 今回まで砲撃が無かったのは、効果があると判断できるだけの数が揃わなかったからだ。
 乗っている避難民達は、窓から見える光景に一喜一憂している。
 覚悟を決めているのか諦観しているのか、景色を眺めている者。
 砲弾が飛んでくる毎に悲鳴を上げる者。
 リリィがそれを撃墜する度に、喝采を上げる者。

 今はまだいい。
 リリィの神業的射撃に感心しているから。
 だが、このまま進展が無ければ不安になってくるだろう。


「くそっ…何かいい手は…」


 リコやダリアに連絡し、ホワイトカーパス港行きの船で援護してもらう?
 駄目だ、時間がかかりすぎる。
 同じくリコとダリアに連絡し、そこから更に憲兵に連絡、地上から攻める?
 もっと時間がかかる。
 となると、この場でどうにかするしか無いのだが…。
 そもそも、あの砲台は何処まで続いているのだろうか?
 一度目の往復から既に数時間ほど経っているが、それだけの時間でどれだけ大砲を設置できる?
 一人なら、あまり沢山の数を設置できるとは思えない。
 陸からここまで届く大砲である。
 その威力の分だけ図体も大きく、設置にかかる手間も大きくなるだろう。
 仮に一往復目から続けて準備しているなら…。
 人数によって大分違うが、もう少し進めば砲撃は途切れる筈。

 この陸地の先は大きな川があって、そこを超えるには1キロ以上泳ぐか、5キロは先にある橋を渡らねばならない。
 1キロ程度なら泳げない事も無いが、鉄の塊を担いだままなど人魚でも無理だ、サメの魚人でも無理だ。
 仮に二人以上で仕掛けたならば、この先の河を越えても砲撃は続くだろう。


「…しかし、相手が何人か分かっても、反撃の仕様がないのよねぇ…」


 ボヤきながらも、もう一発大砲の弾を叩き落す。

 リリィは結構焦っている。
 何がヤバイって、これが明らかに人間の仕業だと言う事だ。
 大砲のような武器を使うのは、人間あるいは亜人間のみ。
 そして、人間には海列車の線路が出す音波は効かない。
 つまり、線路のレールを直接狙う事が出来るのだ。
 そうなったら、海列車は転覆してしまうかもしれない。


「ま、その位までは織り込み済みなんだけどね」


 その為に、海列車のレールは陸地から大きく離れた場所に漂っているのだ。
 何気に潮流も激しいので、普通の人間では近づけない。
 しかしそれなら船を使えばいい。


「…お? 砲撃が止んだ…」


 砲撃は、陸地にある川を越えた時点でピタリと停まる。
 どうやら、襲撃者は一人だけだったらしい。


「何とか切り抜けたみたいね…」


 ふぅ、と息をついて四つん這い…ネコ的歩き方で、タシタシと足音を立てて指定席に戻るリリィ。
 下からは、避難民達の安堵した気配が伝わってくる。
 多分、リリィの神業的狙い撃ちの事でも話しているのだろう。
 或いは、何故反撃しなかったのか、とかも。

 それでも、リリィはいい気分だった。
 襲撃から、避難民達を守りぬいたからである。
 かつて故郷で出来なかった事を、今なら出来る。
 そう感じられた。

 機嫌がよくなったリリィのお尻から垂れたシッポが、楽しげに揺れていた。


「とは言え…次までに反撃を考えておかないとね…」


 だが、リリィの努力は無駄に終わる。
 何故か攻撃があったのはこの一回だけで、後は全く砲撃が加えられなかったのだ。
 首を傾げるリリィだが…まぁ、無事で何よりと割り切るのだった。


 一方、海列車を砲撃していた大砲付近では…一人のヤサ男が転がっていた。
 何故か上半身が裸で、口元には血の跡らしき痕跡。
 そして傍らには、内側が赤く染まった仮面。
 シェザルである。


「ひーほ…ひーほ…ひーほ…ひーほ…」


 暑さのためか、舌を出して汗だくである。
 ピクピク痙攣しているが、どうやら意識はあるらしい。
 あ、腹の虫が鳴いた。


「く…くそ…し、仕留め…そこねた……もう、弾は…無い…腹も…へった…」


 彼の周りには、何故かでっかいマントが一つ転がっていて、更に崖沿いに火器が並んでいる。
 どうやら、手持ちのバズーカやらショットガンやらを置いて固定砲台代わりにしていたらしい。
 フツーのバズーカとかはここまでの飛距離は無いのだが…ロケット砲だったのだろうか?

 何故汁婆に蹴っ飛ばされて星屑と消えたシェザルがこんな所に居るのかと言うと、宙を舞っている間にナルシストモードから我に返り、流石にこのままでは死ぬと思って、持っていたマント(風呂敷包みと言ってはいけない)を広げてムササビのように滑空していたのである。
 そこまでは良しとしよう。
 だが、汁婆の蹴りは思いの他強力で(と言っても、シェザルは蹴られた事を覚えてなかったが)、かなりの高さまで飛び上がってしまったのだ。
 上空では、基本的に風が強い。
 そのまま風に流され、他にどうしようもないので風任せ。
 シェザルの旅が始まった。
 雲に突っ込みエアポケットに突っ込み、強い風に体温を奪われて風邪を引きかけ、そのまま丸一日ほど上空を彷徨っていたのである。

 そして徐々に落下して行き、ある山にぶつかって着地する寸前に見たのが、避難民達を乗せて走る海列車。
 これは仕留めねばなるまいと勇んで下山したのだが…色々と予想外だった。
 まず、この辺には人が居ない。
 動物も居ない。
 果実はあるが、見るからに毒々しい。
 早い話、食料が無いのである。
 2日間絶食していた身としては、これは痛い。

 気を取り直して、とにもかくにも海列車を攻撃しようとしたシェザル。
 ここで誤算その2。
 崖と海列車の距離は意外と広かった。
 それでも何とか届く武器はあったのだが…これがまた重くてでかい。
 空腹を堪えてヒーコラ言いながら、何とか崖の側に火器を並べた。
 …こんな事でまともな命中率が見込める筈も無いのだが、空腹で錯乱しかけていたのだろう。
 結局、海列車に届いた火器はほんの1割程度だった。
 これだけの量を、何処から取り出したのかと聞いてはいけない。
 原作スタッフにだって、彼の武器が何処から出てるのかなんて解からない筈だ。

 そして、最後に…仕掛け終わってから気付いたのだが、これらの武器は全て手動なのだ。
 オートなんぞという洒落た機能は持ってない。
 どうしようと悩んでいると、海列車がやって来た。
 ここまで上手く行かない上に空腹だと、人は逆に腹が立ってくるものらしい。
 シェザルもその例に漏れず、一人で勝手に逆上してしまった。


『コンチクショウがあああぁぁ!』


 と叫び声を上げ、走り出す。
 早い早い、世界を狙える足だ。
 錯乱した人間は、時々妙なスキルを発揮する。
 今回のシェザルもそれだ。
 走りながら、全くスピードを落さず、崖に並べた火器達の引き金を片っ端から引いていったのである。
 発射される弾丸。
 その行方など、シェザルの知った事ではない。
 全て届かず海に落ちているか、リリィに撃墜されている。
 このまま続けても、ハッキリ言って無駄である。
 だが、シェザルは執念で走り続けた。
 驚くべき事に、海列車の速度に付いて行ったのである。
 海列車が蛇行しているからと言って、出来る事ではない。
 褒めてやってもいいだろう。
 でも骨折り損の草臥れ儲けである事は何の変わりもない。

 そのまま最後の火器まで走り続け…そして力尽きて倒れ、その拍子に風呂敷包み…もといマントが零れて今に至る。


「くぅ…と、とにかく本拠地に帰らねば…。
 ここに居ても、食べ物すらない…」


 這いずって進むシェザル。
 途中で水溜りに顔を映してしまい、ナルシスモードが発動しそうになったが…今発動させたら、餓死するまでそのままっぽいので何とか阻止。

 で…。
 分かった事が一つ…いや二つある。


「こ、ここは…四方が崖に囲まれているのか…!?」


 これが一つ目。
 高い山こそあるものの、この高台は然程広くない。
 横に広い…つまり海列車の進行方向に長いだけで、奥行き的にはとても短い。
 何処か楽な道は無いかと一通り回ってみたが、四方は全て崖だった。

 この位、普段のシェザルなら軽く降りられる。
 だが。


「か、体が竦む…ちびりそう…」


 崖から顔を出しただけで、シェザルの全身から血の気が引く。
 どうやら、彼は高所恐怖症になってしまったらしい。
 まぁ、2日も空高くを放浪してりゃ無理も無い気がする。


「………帰れない…」


 途方に暮れるシェザルだった。
 その後、彼が無事に帰れたかどうかは…またその内に。


「うっ…は、腹がゴロゴロ…さっき果実を食ったのがイカンかったか…!?」


 そして草むらに向かう。


14日目 夜 港町


 既に最後の避難民と共に、アザリンは街に入っている。
 そのアザリンも、次の列車で避難先の港町に送られる事だろう。
 まだ避難民は多く居るのだが、満場一致でアザリンを優先するとの意見が上がった。
 アザリンは拒んだのだが、結局涙ながらに受け入れる。
 まぁ、どの道明日の昼までには全避難民を送り出す事ができるだろう。
 もう夜中だが、海列車には大して関係ない。
 こう言う所も、船とは違う利点だろう。

 彼らを送り出したら、後は兵士達だけである。
 魔物は基本的に夜には活動的にならないから、数人の歩哨を残して兵士達は泥のように眠っている。
 無理も無いだろう。
 神水で体力を回復させていたとは言え、約3日ぶりの睡眠だ。

 大河は汁婆に、ユカも大河によりかかって眠っている。
 2人と1匹の眠りは浅い。
 何時でも戦えるように、深い眠りには落ちない。

 そして、その隣で眠れずに居る男が一人。
 援軍…と言っても一人だけ…の、相馬透である。

 寝返りを打つと、大河が片目を開けた。


「…」

「…眠れないのか?」

「あ? あ、悪い…起こしちまったか」

「別にいいよ。
 寝てるよりもユカの寝顔を見て柔らかさを感じてる方が、疲労は吹き飛ぶからさ…。
 まぁ、色々と溜まるけど」

「正直なヤツだな…まるで洋介みたいだ」


 苦笑する透。
 大河はユカの頭を撫でながら、透に目を向けた。
 透の隣には、彼が付けていた鎧…シュミクラムと呼んでいた…が置いてある。


「昼間も見たけど…珍しいモノ持ってるな。
 アヴァターじゃ初なんじゃないのか?」


「いや、発想自体は前からあったらしい。
 でも、どこも資金と人材が足りなくて…開発を断念したんだと。
 …そのまま断念してりゃいいものを…」


「…あまりいい思いは持ってないみたいだな。
 まぁ、いいさ…使える物を使うのは当たり前、くらいは理解してるみたいだし…」


「ま、俺がガキだってもそれくらいはな…。
 それに、何だかんだ言っても強力な道具だ。。
 ……正直、複雑だけどな」


「…何だ、聞いてほしそうだな?」


「そう聞こえるか?」


 沈鬱な表情の透。
 聞いてほしい、と言うよりは壁という聞き役がほしいのだろう。
 自分の中の感情を整理するためにも。
 いや、それを加味しても、普段の透ならこうも簡単に内心を漏らさない。
 何故話そうとしているのかは、透にも理解できなかった。

 大河は聞きだそうとは思わなかったが、聞いて何か気が晴れるのなら吝かではない。
 軽率に踏み込むのは大河的にもタブーだが、何故か透が相手だと、意識せずに踏み込んでしまう。
 大河も内心で戸惑っていた。


「まぁ、愚痴くらいなら好きに言えよ。
 安物の酒でもありゃいいんだが」


「…それじゃ、独り言でも言わせてもらうか…。
 多分、今後もお前さんとは付き合いが長くなりそうだしな。

 …まず最初に聞いておきたいんだが…」


「ん?」


「獣人を探してるんだ。
 …虎の獣人で…そう、爪が異様に発達していた。
 近付いて、敵を爪やキバで引き裂くような戦い方をする…」


「…いや、心当たりは無い。
 虎の獣人なら、散々殺したけど…多分、全員武器を持ってた」


「…そうか…」


 少し肩を落とした透だが、最初から期待はしてなかったのだろう。
 すぐに立ち直った。


 彼は独白する。

 かつて、彼らは義賊団を結成していた。
 義賊と言っても名ばかりで、単なる愉快犯と言ってもいい。
 ただ、何かをぶち壊したりするような粗雑なやり方ではなくて、知恵を凝らし、警備を出し抜き、そしてその奥に自分達のマークを書き入れる…そんな程度だ。
 まぁ、やられた側にとっては充分な損害である事は否定できないが。
 何故かテロリストと鉢合せする事が何度かあったが、互いに無用なちょっかいを出そうとはしない。
 精々、顔を知っている程度である。
 それでも充分危険と言えるのだが、当時の彼らはそこまで物事を深く考えてはいなかった。

 ある日、メンバーの一人が義賊団を解散すると言い出した。
 いつものテロリスト集団がドンパチやっている所に居合わせて、死人が大量に生産されるのを間近で見たのである。
 ようやく彼らは、自分達の立ち居地を実感した。
 死神は選り好みしないのだ。

 リーダー格だった彼の発言に揉めたものの、最後に一華咲かせて終わろう、という結論に落ち着いた。
 だが、それが間違いだった。
 忍び込んだ場所で、いきなり大規模戦闘に巻き込まれる。
 そして、その戦闘で彼の親友は透を庇って死んだ。
 結局彼らは捕縛され、刑務所行きだったのだが…どういう理由か、V・S・Sという会社が彼らを助けると申し出てきたのだ。


「V・S・S?
 確か、謝華グループの傘下…」


「よく知ってるな?
 そのV・S・Sだよ。
 本当は仇を討つために、まぁ…所謂アンダーグラウンドに沈もうと思ってたんだけどな…。
 幼馴染に、泣かれちまってな…」


「…」


 独白は続く。
 それから何度か仕事をし、殺人も犯した。
 だが、V・S・Sを止めようとはまだ思っていない。
 暮らしは楽しいと言えたし、他に行き場所も無かったから。
 それに…死んだ親友は、多分敵討ちよりも透と幼馴染の幸せを願う。
 真っ当な道を歩むなら、ここ以外に方法は無かった。
 そう思って、敵討ちの事は、心の奥底に沈めていた。
 仮に仇を発見しても、それは今後の人生全てを投げ打ってでも殺すべきではない…と自分に言い聞かせて。

 V・S・Sでの仕事は、シュミクラムのテストパイロットだった。
 透には才能があったらしく、瞬く間にその動作をマスターした。
 ツキナはまごついていたが、何時の間にか透と肩を並べる程に成長している。

 だが…出会ってしまったのだ。
 親友…ユウヤの仇と。
 透はその時、衝動を抑え切れなかった。
 幼馴染の制止を振り切り、仇を追う。
 結局仕留められず、透は処分を受けて…。
 そして、幼馴染が何をされているのか知ってしまう。


「洗脳…だよ」

「…洗脳? 社員教育じゃなさそうだな」

「ああ、思い出しただけで胸糞悪くなる…」


 透の目に、明らかな憎しみが宿る。
 幼馴染をそんな目に合わせたヤツ、気付かなかった自分、何も出来なかった自分、元凶となった仇の獣人。
 その憎悪を押し込め、透は続ける。
 その恨みが、自業自得で逆恨み、責任転嫁だと分かってはいたから。


「それで、俺も洗脳されそうになった時に…レイミ・謝華が、いきなり俺とツキナ…幼馴染を連れ出した。
 謝華グループはV・S・Sの親玉だからな…。
 逆らえなかったみたいだよ」

「それでここに送られてきたって事は…察するに、安全…とは言いかねるが、V・S・Sの手が届かない場所に送ったって事か」

「ああ、だから俺一人。
 ついでにシュミクラムの実戦データも取って来いってさ。
 ツキナは王宮だ」

「何でまたいきなり…」

「…ツキナは人と付き合える状態じゃない。
 完全に洗脳された訳じゃないが、後遺症は残る。
 レイミ・謝華が、王宮に保護するように要請したらしい。
 政治的な事は、俺には分からないけど…。
 俺も一旦王宮に送られて、そこで出張社員としてある部隊に所属する事になった。
 …ユウヤを殺したヤツが居るかもしれない、王宮の部隊に…」

「…仇は獣人じゃなかったのか?」

「獣人さ。
 だが、どうも人間社会で生きていた節がある。
 …鎧を付けてたんだよ、ソイツ。
 鎧だけならそこらの魔物も付けてるが、王宮の紋章を付けてた」


 なるほど、引っ掛かっていたのはそこか。
 今の彼とて、他に生きる道がないのは分かっている。
 ツキナとやらを保護してくれているのだから、逆らえる筈がない。
 だが、もしも仇を発見してしまったら…その時、ツキナの事を考えて踏みとどまれるか?
 それとも、また何もかもを捨ててまで復讐を果たすのか?


「…やめとけ。
 復讐の事じゃない。
 殺せるかどうかなんて、その時にならなきゃ分からない。
 考えるだけ無駄ってもんだ。
 やれると思っていても、いざとなったら足が竦む、情に絡め取られる、よくある事だ」

「…考えずにいられるかよ…」

「復讐を果たそうと思ってるなら、尚更考えない事だ。
 自縄自縛になるだけさ…騒ぐなよ、ユカが起きちまう。
 殺せるか、じゃなくて殺す。
 そう思えないなら、お前は復讐を望んでるんじゃないから」

「…」

「俺の知り合いにもな、復讐を望んだ人間は何人も居る。
 でも、少しでも殺意が揺らげば…復讐を成就させる事は不可能だ。
 必ず切っ先が鈍り、知らず知らずの内に足が止まる。
 世界の全てを引き換えに、標的を殺す。
 それをやる以上、何人死のうが、誰が死のうが迷わない。
 復讐ってのはそう言う事だ。
 …ツキナとやらの事、捨てたくないんだろ?」


「…当たり前だ…。
 口うるさくてじゃじゃ馬だが、幼馴染で…恩師の…義父の娘だ…」


「なら、せめて回復するまで待とうや…。
 何時までもツキナさんを保護してもらわないといけないんじゃない。
 頃合を見計らう事だな…。
 それまでは、余計な事を考えるな」


 透は、大河をおかしな生き物を見るような目で見た。
 大河は不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「何だよ?」

「いや…今までは、復讐なんか不毛だとしか言われなかったから…」


「幸か不幸か、そうしなけりゃ進めない奴らを何人も見てきた。
 バカな話だと思うが、憎悪が生きる糧になるならそれも否定しきれない。
 ところで、透…でいいか?」

「ああ。 その代わり、大河って呼ぶぜ」

「おう。 透が所属してる部隊って、どんな連中が居るんだ?」


「問題児の吹き溜まりさ。
 俺と同じで、元盗賊とかがゾロゾロ。
 ま、お前さんには居心地がいい所だろうぜ」


「俺にとっては救世主クラスほどじゃないさ」


「違いない…」


 笑う二人。
 お調子者の大河と、生真面目な透。
 どうやら2人は馬が合うようだ。


「王宮の方も、このシュミクラムっつーのはあるのか?」

「ああ、俺の部隊がその専門。
 ま、設立されたばかりだし…正直、手探りの段階だな」


 使ってみたいなー、と考えている大河。
 だが、シュミクラムの能力はその相性と才能に大きく左右される。
 大河が現段階以上の力を発揮するのは、不可能と言っていいだろう。
 ヘタに触らせて、バグを起こされて壊れても困る。
 シュミクラムは繊細で高価なのだ。
 触らせてくれ、と視線で強請る大河を、同じく視線で牽制する。
 すると、透はニヤリと笑った。


「ところで、お前ユカ・タケウチとどういう関係?
 世間に疎い俺でも、その人の事は知ってるぜ。
 救世主候補と、武神のスキャンダルが流れるんじゃないか?」


「おいおい、俺をからかおうってか?
 カノジョの一人も居ないのに」


「うっせー」


 笑う二人。
 ふと、透が真面目な顔になった。


「なぁ大河、向こうに行ったらツキナに会ってくれないか?
 ちょっと…意見を聞きたい」


「意見?」


「ツキナは人と付き合える状態じゃないって言ったろ?
 正直、誰とも会わせたくない…でもそれじゃ今のままだ。
 なんかな…お前の言葉は、響くっつーか…信頼できる気がするんだよ。
 こう、腹の中にスーっと入り込んでくると言うか」


「…ま、美人に会えるってんなら断る理由もないさ」


 冗談めかして答える大河。
 その顔が、いきなり引き攣った。


「どうした?」

「ユ、ユカが…」


 見れば、大河によりかかったままのユカの腕が、いつの間にか関節技を決めている。
 おお、さすが武神と感心する透。
 大河は解こうとしているが、ギッチリ決まって動かない。
 更に、気がつけば首本にユカの手が伸びていた。

 キュッ

「けふっ」

「…生きてるみたいだな」


 大河は眠りの世界に旅立った。
 透も目を閉じる。
 新しくできた親友に感謝と念仏を送り、透の意識は眠りの底へ落ちて行った。


 そして、透は夢を見る。
 見覚えのある少女が、ツキナの隣に立っている。
 少女はツキナに話しかけ続けていた。
 ほんの少しだが、ツキナが反応したような気がした。
 現実のツキナは、今は透にしか反応しない。
 ツキナの目を見るのが辛くて、透は夢の中で強く目を閉じた。


15日目 朝 ルビナス ナナシ


「…で、これがそのシュミクラムってヤツね。
 ……発想は悪くないけど…ツメが甘いわ」


 ルビナスは目の前の機構鎧をためつすがめつ眺めている。
 ナナシも興味深そうである。
 ルビナスは技術者としての視点で眺めているが、ナナシが興味を持っているのは変形機能とかだろう。

 隣で王宮に戻ってきたクレアが仕様書を眺めている。


「…これが謝華グループ傘下の、V・S・Sの新製品?」


「ああ、まだ実用段階には達していないがな。
 …しかし妙だな?
 このような代物を作っているような資金の流れは、V・S・Sにはなかったのだが」


 謝華グループから、援護という名目で送られてきたシュミクラム。
 王宮でも、似たような兵器を研究してはいた。
 だが、正直これ程の性能は実現されていない。
 その為、専門の部隊として集められた機構兵団は有名無実と化していたのだが…。
 このシュミクラムのお蔭で、一挙に実用化が図れそうである。


「…パイロットの意見が聞きたいわね。
 ツキナって子は?」


「ダメダメですの〜。
 透さん以外には、殆ど反応しないですの。
 あれが洗脳…ヒドイですの!
 未亜ちゃんだって、あんなに酷い事はしないですの!」


 珍しくナナシが本気で怒っている。
 ツキナの状態はそれだけ酷い。

 怒るナナシに、クレアは勤めて冷静に声をかけた。
 彼女としても、かなり頭に来ている。


「レイミ・謝華が我々にツキナと相馬を送ってきたと言う事は、つまりミランダ・謝華打倒の手掛かりになると言う事だろう。
 相馬は前線に行っているが…こちらでどうにかするぞ。
 ツキナから証言が取れればよいのだが…」


 これはちょっと誤算だった。
 せっかく送った社員を王宮に引っ込めていては、V・S・S及び謝華グループからいちゃもんを付けられる。
 一人で行動できないツキナを送るのは論外なので、相馬透を送ったのだが…。
 せめて、もう少し調べてからにした方がよかったかもしれない。


「機構兵団の隊長は…ヤギザワだったわね?
 そちらから何か聞いてない?」


「そんな暇も無かった。
 先日から延々と、無能や汚職を粛清していたろう?
 それに伴って、人事がゴタついてな。
 昇進ラッシュが相次いで、小隊長だったヤギザワが隊長に昇格。
 引継ぎで忙しく、尋問する時間を取れなかったそうだ。
 一通りの隊員と顔を合わせて、即座に最前線だ」


「クルード(粗雑)だ事…」


 ボヤくルビナス。
 ナナシが発言した。


「でも〜、レイミちゃんがツキナちゃんと透ちゃんを送ってきたって事は〜、ナナシ達のお手伝いをしてくれるって事ですの?」


「…まぁ、そうなるな。
 謝華グループ内で、レイミ・謝華は本気で暴れるつもりのようだぞ」


 ナナシの真面目な発言にちょっと驚いたが、クレアは素直に返答する。
 今のツキナの状態を見ただけでも、謝華グループに切り込む切欠にはなる。
 だが、弱い。
 徹底して蹂躙する覚悟で行かねば、手痛い反撃を受けるのは間違いなかった。


「一応聞いておくけど、レイミ・謝華からの罠の可能性は?」


「限りなく低い。 何故なら…」


 クレアは持っていた資料の中から、一枚の紙切れを出した。
 相馬透とツキナが王宮にやって来た時に、紹介状と共に渡された手紙だ。
 黙ってルビナスに渡す。
 イヤな予感を感じつつも、覗き込むと…。


『この人味方 by未亜』


 この人、の所から矢印が引かれていて、その先にはレイミ・謝華らしき似顔絵。
 そして一枚の写真。
 別段不思議な写真ではない。
 未亜しか写ってないし、よくある脅迫写真でもない。
 だが…。


「こ、この笑顔わぁっ…!」


 思わず呻くルビナス。
 メッチャイイ笑顔だった。
 コンテストに出せば、間違いなく入選しそうなくらいにイイ笑顔だった。
 だが。
 未亜の本性を知っているルビナス達としては、これ以上ない位に恐ろしい。
 この笑みは普通の笑みに見えるが、オーラがサドっている。

 レイミ・謝華に何が起きたか、何となく予想がついた2人だった。
 どういう経過でそうなったかは分からないが、レイミが未亜を裏切る可能性は限りなく低い。
 洗脳とまでは行かないが、レイミは未亜の恐ろしさを身をもって知った事だろう。
 …実際、完全に開花してしまったレイミ的には恐ろしさのみならず素晴らしさも知った気分なのだが。

 黙ってルビナスは写真を丸めて、ゴミ箱に放り込んだ。
 こんな恐ろしい物を、現世に残しておく事も無い。


「ところで、ツキナちゃんは、今何処ですの?」

「病室に隔離されておる。
 何が切欠で暴走するか分からんからな。
 中途半端な洗脳を受けた為か、反応が極めて予測し辛い」


「ナナシちゃん、遊びに行っちゃダメよ。
 今のツキナちゃんには、相馬さん意外の人は皆危険に見えるから」


「は〜い」


 残念そうだが、仕方ない。
 と、ふとナナシは顔を上げた。
 虚空を見る。


「ん? どうした、ナナシ」

「ん〜……ここ、何か居る気がするですの」

「!?」


 即座にルビナスはエルダーアークを呼び出し、クレアとナナシの前に立つ。
 エルダーアークの能力の一つに、知覚力の上昇というのがある。
 これは世界を流れる力の流れに干渉するための物で、大抵のモノなら逃れられない。

 だが…。


「…何も居ないわよ?
 敵が潜んでいる気配も無いし…」

「…う〜ん…でも、居る気がするですの」

「…危険を感じるか?」

「全然感じないですの」


 クレアとルビナスは少し顔を見合わせるが、溜息をついてエルダーアークを下ろした。
 危険でないなら過剰に反応する事は無い。


「幽霊でも居るのか…?」

「さぁね…そんな機能、つけた覚えは無いわよ。
 まぁ、見えない感じない危険も無いなら、放っておくしかないんじゃない」


 それだけ言って、二人は作業に戻った。
 ナナシだけは、試行錯誤してそこに居る“何か”に触れようとしていたが…結局、何も得られない。
 それでも諦めずに続けていた。
 そこに何か居るという確信を持っているらしい。


「で、結局V・S・Sの事はどうするの?」


「レイミ・謝華が上手く立ち回れば、謝華グループ共々片付けられるのだがな…。
 流石にそう上手くは行かんだろう。
 …ルビナス、私は少々調べ物をする。
 ここは任せたぞ」


「りょーかい」


 クレアは早足に走り去った。
 そのまま資料室へ向かう。
 V・S・Sにしろ謝華グループにせよ、敵は多い。
 中には徒党を組んで、テロリスト紛いのレジスタンス運動を続けている者達も居た。
 そう言った輩で危険そうなのは、先んじて始末した。
 “破滅”の真っ最中に、ここぞとばかりに動き出されては敵わない。

 だが、危険は危険でも状況判断くらいは出来る連中も存在する。
 そう言った連中は仕留め辛く、アジトすら掴めない。
 その中に、一際大きな武装集団が存在する。
 フェイタオ。
 飛刀と書く。
 彼らならば、V・S・Sについて何か知っているかもしれない。
 幸い、リーダーのクーウォンは頭が切れ、的確な判断を下す男だ。
 無闇に戦闘を仕掛けたりしなければ、交渉に応じる筈。
 元々、フェイタオのターゲットはV・S・Sであって王宮ではない。
 相応の対価と、敵対しないと約束すれば協力を見込める可能性は、充分にあった。
 上手くすれば、彼らの力も取り込めるかもしれない。
 “破滅”が本格的に動いている今、戦力は幾らあっても足りない。

 彼らのアジトは掴めないが、こちらから呼び出す事は出来る。
 広告媒体と言うものがあるのだ。
 テロリスト達は、時にこの広告で指令を伝える事がある。
 それを逆手に取るのだ。
 交渉材料を頭の中で纏めながら、クレアは資料室の扉を開いた。


 次の日、3流ゴシップ記事に奇妙な記事が載っていた。

『クラウン氏が、空を飛ぶ剣を探しています。
 見つけた方には報奨金が支払われ、もし剣の方から飛び込んでくれば報奨金は全て寄付金に。
 剣は獲物を探しており、クラウン氏は剣が探している獲物を持っているものの、手放したいと願っているようです。
 報奨金を狙うなら、剣が自らクラウン氏へ向かう前に探し出しましょう』

 この記事を真面目に取る人は居なかった。
 空を飛ぶ剣?
 何のジョークだそれは、である。
 報奨金の額も書いてないし、イカレた3流記者のでっち上げにしか思わなかった。
 そもそも連絡先が氏名しか書かれていない。
 だが、食いついた者も居る。
 一攫千金を夢見る無謀な若者や自称冒険家、そして…フェイタオが。


15日目 午前 リコ


 リコは今、港町に居る。
 これが最後の往復だ。
 アザリンを初めとする避難民達は全て乗り込み、後は篭城して魔物達を食いとめている兵士達だけ。
 彼女の心のご主人様こと大河は、最後まで残るつもりだろう。
 恐らく、現地妻(リコ視点)ことユカ・タケウチも。
 今すぐ駆け寄って感激の抱擁と溜まり溜まった性欲の解消と待ちに待った浮気のオシオキをしてやりたい所だが、流石にこの状況だ。
 オシオキは避難先の港に到着してからでいいだろう。
 性欲の解消に関しては、多分他の人達も一緒だろうからちょっと不満だが…2週間以上も貯められていた大河の性欲を、リコ一人で受け止めるというのはまず無理くさい。
 まぁ、あまり抜け駆けしても後が怖いからいいだろう。

 そろそろ出港だ。
 船は度重なる魔物の襲撃で大分ガタが来ているが、まだまだ行ける。
 この後、篭城している兵士達は次の船と海列車で撤退する。
 次に来るのは海列車だろうから、大河達の撤退は船になるだろう。
 感激の再会第位一号になれないのが残念だが…。


「ご主人様、お気をつけて…」


 リコの呟きを圧して、爆音が響き渡る。
 魔法かと思われたが…どうやら味方の攻撃らしい。
 リコは知らなかったが、相馬透のシュミクラムによる弾幕、ユカのラッシュ、そして大河のトレイターによる一撃の音である。
 扉を硬く閉め、魔物達の進軍を阻む塀。
 その外で、大河・ユカ・汁婆は大暴れしていた。
 透は屋根の上から、ミサイルメインで砲撃しまくっている。
 一般兵士達は、塀の外には出ていない。
 出ても即座に乱戦に持ち込まれ、そうなると援護射撃も出来なくなってしまうからだ。

 しかし流石に多勢に無勢。
 個々の戦闘能力を圧殺する程に敵が多い。
 流石に圧力に耐えかね、ジリジリと後退していた。
 そうなってしまえば、大河はかなり危険な状態になる。
 トレイターは大剣だ。
 それも、ちょっと当たっただけでも多大な破壊力を発揮する。
 塀の近くで迂闊に振るえば、それこそ塀に大穴を空けてしまう。
 仕方なく、大河はナックルに変えて戦っているのだが…やはり剣に比べると、どうしようもなく効率が悪い。

 正直な話、かなり危険だ。
 それに、撤退するには魔物達の足を止めねばならない。
 船に乗り込むのにも時間はかかるし、乗り込んでも陸から離れるのに時間が必要だ。
 死を覚悟…と言うより、確実な運命として兵を残すという手もあったが、ドムは良しとしない。

 だが、それも仕方ないと言える程に追い詰められていた。
 港町から、また一隻の船が出る。
 リコとアザリンが乗っている船だ。
 リコとしては港町に残って大河に手を貸したいが、船が狙われるのは確実だ。
 この後に来る、未亜を信じるしかない。


(マスター、急いでください…!)


 未亜が頑張っても、船足は早まらないが…。
 そして、リコの乗る船は陸から離れた。
 船に乗らずに残っていた兵士達から、複雑な溜息が漏れる。
 あれに乗っていれば助かったろうに。
 アザリン様を無事に送り出せた。
 避難民達には、指1本触れさせなかった。
 複雑な感情が渦巻いているのを、ドムは一喝する。


「次の船で、全軍撤退する!
 正真正銘、これが最後だ!
 総員、死力を尽くせ!」


 ドムの檄に答えて、破れかぶれながらも矢を射る兵士達。
 前線で直接魔物と戦っているのは、汁婆・ユカ・大河のみだ。
 それに比べれば、今の自分達は楽なものである。
 矢が尽きたら、後詰めと交代すればいいのだから。


 そのまま、2時間ほど経過しただろうか。
 大河達もボロボロになり、あちらこちらから血を流している。
 ユカは強制的に露出度が高められた服の事を強引に意識から締め出し、敵を叩き潰す事、生き残る事に全神経を集中させていた。
 もうすぐ矢も尽きる。
 透のシュミクラムも、全弾撃ち尽くした。
 港町の前には、魔物達の死体が丘のように盛り上げられていた。
 その上で、大河達は荒い息を吐いている。
 しかし、まだまだ魔物達は多い。
 何処から沸いてきているのか。
 ひょっとしたら、誰も居なくなったホワイトカーパスでまたも無限召喚陣を使っているのかもしれない。


「くっ、ドム将軍、そろそろ限界です!」

「大河達を港に収容しろ!
 全員、弓矢構え!
 門を開いている間、魔物達を近づけさせるな!」


 ドムが大河達に撤退の指令を出す。
 汁婆は、魔物達の上を飛び越えてユカの元に着地。
 そして脇に抱えて、門の前まで飛んだ。
 ユカも体力の限界らしく、汁婆に抱えられて動かない。

 大河は汁婆を追うように立ち、もう一度トレイターを変形させた。


「これがっ、最後の一振りだっ!」


 トレイターを、地面に触れさせるか触れさせないかの所で横薙ぎに振るった。
 衝撃波が大地を伝う。
 最後の力とばかりに放たれた衝撃波は、近付く魔物達を一気に押し返した。

 大河はフラついた所を汁婆に支えられ、ユカと同じように抱えられて門に入る。
 大河達が港町に入った事を確認し、扉は再び閉じられた。


『おい、生きてるか?』


「お、おれは…なんとか…。
 でも、止血…頼む……」


「ぼ、ボクも…」


 既に体力の限界を超えかけていたのだろう。
 汗だくで、当分動けそうにない。
 もう神水も、一滴たりとも残っていなかった。

 流石に絶望的な戦況である。
 扉の向こうでは、魔物達が勝鬨の声を上げている。
 一気に攻め落とそうとはしてないのか、まるで嬲るように咆哮が響き渡った。

 そして…もう一方からも。


「な、なんだと!?」


 疲労困憊だった大河が顔を上げる。
 咆哮が上がったのは、港町内部からだったのである。
 まさか、内部に敵が侵入したままだったのか?
 だとすれば…もう戦力はゼロに等しい。


 港で…。


「船が来たぞー!」


 救いの船だ。
 兵士達は、これに乗って避難先の港に向かう。
 全員乗り込んだのを確認したら、港町を燃やして魔物を足止めして出港だ。

 兵士達は、船を見て口々に喜びの声を上げる。
 だが、その中の一人が呟いた。


「おい…あれ、何だ…?」


 指差す先は、今しがたこちらへ向かっている船。
 救世主候補の、当真未亜が護衛についている筈だ。
 だが…船のマストに、何かが群がっている。
 大きな…そう、人間大の飛行物。
 あれは…魔物!?


「ま、魔物がどうして船に!?」

「知るか!
 それより俺達はどうなる!?
 船が魔物だらけじゃ、助からないんじゃないのか!?」


「ま、待て!
 なんかやってるぞ!」


 混乱する兵士達。
 無理もないだろう。
 助かると思った矢先に、その希望が裏切られているのだ。

 だが、絶望するには早かった。
 船に群がっている魔物達は、各々の手に何かを持って振っている。


「あれは…何だ? おい、双眼鏡!」

「今見てる!
 あれは………白いハンカチ、白い手袋、白いシャツ…なんじゃこりゃ」

「…まさか……白旗?」


 混乱を通り越して、反応に困る。
 何故に魔物が白旗を?
 そもそも、白旗は人間の間でしか使われないだろう。

 混乱している間に、船は益々近付いてくる。
 ドムに連絡するという気の効いた行動をする者も居ない。
 その時、双眼鏡を持っている兵士が驚愕の声を上げた。


「あ! あれ、救世主候補だ!
 魔物に………命令してるぅ!?」


「「「「   何ィ!?     」」」」


 双眼鏡の中では、未亜が数匹のガーゴイルに何か命令している。
 命令されたガーゴイルは、総がかりで床に置かれている何かを持ち上げた。
 巨大な白旗である。
 どのくらい大きいかってーと、某塾の応援旗くらいにでっかい。

 一体何事なのか。
 白旗を掲げている以上、軍人の性質としては攻撃を躊躇ってしまう。
 そうこうしている間に、船は港に着港した。

 飛んでいた魔物達は、全て船に着地する。

 とにかく警戒を強める兵士達。
 その時、タラップが降りてきて一人の女性が姿を見せた。
 大きな弓を持っている。
 一身に視線を集めるが、全く動揺しない。
 目が据わっている。


「救世主候補生、当真未亜です!
 急遽魔物使いスキルを身に付け、援軍に参上しました!

 クソ(ピー)にも劣る○◇×◎ども、全員そこに並べ!
 貴様らの虫のフンより軽い命で、(PI−)が爛れた腐れ(検閲削除)どもをぶち殺しに行くぞ!
 返事はどうしたぁ!」


「「「「「「「
   クキィケェェェェェェェェェェ!
               」」」」」」」」


 どうやら、未亜さんは更なる属性を身に付けてしまったようである。
 これが一時的なものなのかは、まだ分からない。




どうも、時守です。
4年になって就職も決まり、暇だからと言う理由で何故か学園祭の手伝いをやってます。
去年までは本部の方を、今年は学科の方を。
ちょうどいいので、前に作って放置していたゲームを出してみる事にしました。
さて、どうなる事やら…。


どうでもいいですが、今回やたらバルドのキャラが期待されているためか、ちょっとだけ『今週は双魔伝を投稿して、来週幻想砕きを投稿しようかな』とか思ってみたりみなかったり。
それではレス返しです!


1.パッサッジョ様
ええもう書いてるだけで死に掛けましたよ。
でも、『消し飛べー』とか言うノリも久々で…ようやくちょっと調子が戻ってきた気がします。

アシュ様の封筒は…材質自体は、ちょっと頑丈なだけの普通の紙です。
なにやらアシュ様が細工したようですが。

DVD…探してみようと思います。


2.カミヤ様
最初は普通の船だけの予定だったんです。
ただ大砲やら何やらを山ほど積んでるだけで…。
そんな時に○NE PIECEのアニメを見て、これは使える!と。
ロケットマンだけに、ブレーキ機能に問題アリ…。


3.アレス=アンバー様
海列車の停止には、リリィが付き添って止めているので問題ないです、一応。

後方組は、実際動かしようが無いんです。
魔物達の追撃は既に完了していますし…。
もう後退して避難民の合流を待つしか…。

あの魔物…そもそもどうして女装で来たのでしょーか?
単にメスだった?
それともそういう趣味が?
あるいは見破られた時の最後の足掻き…?


4.カシス・ユウ・シンクレア様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>
時間がある時に直しておこうと思います。

正直な話、大河を強くしすぎたなぁ…と感じる今日この頃です。
一度は敗北するのが決まっているとは言え…。

ところで…一番出番が無いのは、学園長ですぜ?
いや、マジで見せ場が用意できない…どうしよう。

海列車を護り通すも何も、アレに追いついて攻撃できる魔物なんて居るんでしょうか?
でっかいカエルでも止められなかったしなぁ…。


5.イスピン様
こういう時、根の世界という設定はとても便利ですw

『消し飛べ』のノリは、自分自身で待ち焦がれていましたよ。
シリアスばっかりで、ギャグのノリが取り戻せませんよ!
…しかしアレですね、想像だけでこの攻撃力…。
いつか書いた、『魔物の大軍勢が女装して押し寄せる』を本気で検討してみましょうか…。


6.YY44様
ルーラよりは、イメージ的にトベルーラですかね。

未亜が出たらミーのせいっすか!?
それはそれで光栄なw

ピンクの救世主…と言えば、何でも呑み込むあの悪魔がそんな称号を持っていたよーな…。


7.陣様
おおいに萌え笑っていただいてありがとうございます!
そう言ってくれると、このシリアスシーンを抜け出してまたギャグを!と気力が沸いてきます。

うーむ…書いてる方は、未亜はあんまり怖くないんですよねぇ…例外はありますがw


8.アルカンシェル様
はい、ホワイトカーパス編はそろそろお終いです。
まだまだシリアスバトルは続きそうですが…。

いやぁ、ユカも大河も汁婆も300体くらいとっくに殺ってますって。

海列車は…普通に考えれば、列車の重さで沈みますね。
変態のパワーは凄いですからねー。
代表的なのが…キース・○イヤル?

救世主候補と四天王は、今後もっと強化する予定です。
四天王は既にアイデアがあるのですが…救世主候補はなぁ…未亜は考え付いてるんだけど。
…一応言っておきますが、今回の魔物使いスキルの事ではありませんよ?

しかし…切ないたとえ話をされますねぇ…時守もよく似たような事やってましたがw


9.根無し草様
女装モンスターはダメっすか。
それじゃ、ここ数日本気で考えていた『女装モンスター軍団』はどーなるのでしょう?
いや待て、女装だからダメなのであって、メスのモンスターが女性用の着衣をするのは何の問題も!?

一番悲惨なのは、『出番が無いランキング』で名前さえ出てこないミュリエルでしょうな…。
何か埋め合わせをさせるべきか…。


10.ナイトメア様
空飛ぶナルシスト…改めて言われるとw

むぅ、どうでもいいですが…あの吸血鬼のダッシュはアレだと思います。
最近やってないのでうろ覚えですが、腕を組んで阿修羅閃空みたいに移動してた気が…冷静な目で見ると、あの吸血鬼は変態かつバイ?

量産型ちよちち…な、何故だッ!
戦闘能力は未知数のはず…確かにとてつもなく高い可能性もあるが、そこそこ程度の可能性もある。
が、どーして勝てるシーンが一瞬たりともイメージできない!?
と言うか、ちよちちが集団で瞬きもせずにこっちを凝視し、あまつさえあの細長い腕を触手のように伸ばしながらウニョウニョさせてるシーンが…ちょっと気分悪くなりました。

つーか大河!
洒落にならん入れ知恵してんじゃない!
と言うかルビナス。
君、なんか偏った物質から『しゅーまっは』を作り出してないか?
含むところでも?

しかしナナシがリーダーか…。
阿鼻叫喚だな。

…ちよちちには…『全て凌駕せし欲棒』を放つ気にはなれないだろうな…。


11.神〔SIN〕様
おおっ、今回はまた長いですね。
スペシャル版だ!

全蔵さん…アンタ、酒の勢いで全てを捨てたね(ホロリ)
ルビナス、博士と呼ばれるなら君は死神と改名すべきだ。

そう言えば、ネギま原作がクライマックスっぽいですね。
来週辺り、超と対決だとか。

ロベリア…君がヒステリアだとしても、何ら恥じる必要はない!
ルビナスと何年も付き合って、精神的に壊れなかっただけでも君は英雄だ!
誰が認めずとも、時守が断定しよう!
君なら本気で救世主になれた!

それにしても、珍しいモノを見れました。
ルビナスが反逆されてやられている…ある意味ロマンw?

あと茶々丸、君は確か食事は出来ない…ま、いいか。
つうかルビナス。
アンタ…真理の扉に行ってないよな?
まさかとは思うが、ルビナスがロベリアに負けたのは体の一部を持っていかれて、まともに戦えなかったからとか…。
だからこれ幸いと体を譲り渡して、自分はホムンクルスに…?

それより、ルビナス?
アンタ、ロボット対決で負けたら核を自爆させて道連れにする気だろ?

それにしても…このままクロスが続くと、何人か大河に走るかな?
それはそれで見て見たい…。

追記 スーパーロボと言う事は、巨大化できるんだよな?
   人並みの大きさしかないスーパーロボットって、何か哀しいぞ。
   鋼鉄ジーグだって、もうちょっと大きかった…。


12&13.舞ーエンジェル様
はい主人公の相馬透の登場です!
まだ一人しか出てませんが…。

バルドがOVA?
マジすか!?
18禁だと、ゲンハのシーンがキツそうだな…。

シェザルは当分リタイヤっぽいですね。
むぅ、本気で四天王の扱いがぞんざいに…。

バルドキャラは、原作で言えばそれぞれちょっとずつストーリーが進んだ辺りですね。
まだギリギリ共通ルートでしょうか…ツキナは初っ端から別ルートでしたが。

神魔族の最高指導者は…気さく…と言うより奇策と表現した方がいい気がしますな。
フレンドリーだけど、過激だ…。

エッチシーンは…どうすっかなぁ…。
本格的なのを書くのは疲れるし…しかしやらなきゃやらないで期待外れだし。
でも一人一人と関係させると、またストーリーが停滞するし…。
まぁ、キャラクターは8割くらい出そうと思ってます。


14.なな月様
体験談っすカ!?
うむむ、世の中には猛者がいる…と言いたい所ですが、我が妹殿が何度か徹夜でコスプレ衣装を作ってるのを見てると…泣けてきます、何故か。

祭典に行ったらお土産を是非とも!
ブツでも土産話でも何でもいいので、是非とも!
いや、死んでも生き返るでしょ、あそこなら。
GSが存在してもおかしくないってくらいに、念とか篭ってるし…。

セロテープじゃダメです、せめてガムテープに…。
海列車のレールなら、船が航行する際にちゃんと牽引してます。
そのものの描写はありませんが、ちゃんと書いてますぜ。
抜かりは…山ほどあるけどありませんw

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