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「狩人の世界に現れし福音者達  第21話(エヴァ+HUNTER×HUNTER)」

ルイス (2006-08-07 13:48)
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 飛行船で3日、電車で1日かけてゴン、レオリオ、クラピカ、アスカ、レイ、カヲルの6人はパドキア共和国デントラ地区へとやって来た。

「見えて来たぜ」

 電車の窓から6人は、遠くに見える高い山を見る。

「暗殺一家のアジトか……実際見ると嫌な雰囲気だな」

「うむ。周囲の聞き込みから始めるか」

「まず宿を確保して作戦立てようぜ」

「大丈夫だよ。友達に会いに来ただけなんだから」

 慎重なクラピカ、レオリオに対し、脳天気なゴンに2人は呆れる。

「あがり」

「げ……」

 一方、アスカ、レイ、カヲルの3人はババ抜きをしており、真っ先にあがったカヲルにアスカは表情を苦くする。

「ったく……お前らも良くこんな時にトランプなんかで遊んでられんな」

「電車の中でアレコレ言ったってしょうがないでしょうが。それに相手は世界最高の暗殺一家。アタシ達が小細工したって、どうにかなる訳ないでしょ」

 ヤレヤレを首を横に振りながらレイのカードを取ろうとするアスカ。その際、レイはソッとババを高くして、アスカはついソレを引いてしまう。そして、カードを見ると、表情を引き攣らせた。その隙に、レイはアスカのカードを取った。

「あ……!」

「あがり」

「ちょっとレイ! アタシ、まだカードシャッフルしてないわよ!!」

「シャッフルする前に取ってはいけないなんてルールは無いわ」

「アンタね〜……」

「まぁまぁ。じゃあ次はポーカーで」

 レイを睨むアスカ、そのアスカを無視してソッポを向くレイ、そして2人を宥めてカードをシャッフルするカヲル。

「お前ら、相変わらず仲良いのか悪いのか微妙だよな」

「うっさい!! ほら、カヲル! とっととカード配りなさいよ!」

「ハイハイ」

 とても、これから暗殺一家の家に行くような雰囲気ではない事に、緊張していたクラピカもフッと表情を崩した。


 街でゾルディック家の事を尋ねると、意外にも有名な観光名所だと教えてくれた。そして定期バスが日に一本、ガイド付きで出ていると教えられ、6人は、そのガイドバスに乗った。

<皆様、本日は号泣観光バスを御利用頂きまして、誠にありがとうございます。早速ですが、デントラ地区が生んだ暗殺一族の紹介をしていきましょう>

 ガイドの挨拶を聞きながら、レオリオが「見ろよ」と後部座席を見る。

「普通の観光客に混じって、明らかにカタギじゃねーような奴らが乗ってるぜ」

 後部座席には、見るかに得物を布で包んだ眼光の鋭い男達が座っていた。

<え、皆様。左手をご覧下さいませ>

「…………」

「って、自分の左手見てどうすんのよ!?」

 ガイドの言葉通り、ジッと無言で自分の左手を見るレイにアスカがツッコミを入れると、彼女はコクッと首を傾げる。

「左側の窓を見なさいって事よ」

「そう……ガイドバスなんて初めてだから、こんな時、どうすれば良いのか分からない……」

「とりあえず窓の外を見れば良いと思うよ」

 自販機で買った紅茶を飲みながら、カヲルが言うと、レイは窓の外を見る。

<あちらが悪名高いゾルディック家の棲むククルーマウンテンです。樹海に囲まれた標高3772mの死火山の何処かに彼らの屋敷があると云われていますが、誰も見た者はいません。ゾルディック家は10人家族。曽祖父・祖父・祖母・父・母の下に5人の兄弟がいて、全員殺し屋です。では、これからもう少しだけ山に近付いてみる事にしましょう>

 バスは山道を進み、やがて15mはあるであろう巨大な門と森を包み込むような塀の前で停まった。バスを降りて、ゴン達はその門を見て、「おお」と声を上げる。

「こりゃすげーな」

「え、此処が正門です。別名、黄泉への扉と呼ばれております。入ったら最後、生きて戻れないとの理由からです。中に入るには、守衛室横にある小さな扉を使いますが……」

 ガイドが指すと、そこには小さな部屋と扉があった。

「此処から先はゾルディック家の私有地となっておりますので見学出来ません」

「何ーーーー!? 山は、まだ遥か向こうだぜ!? まさか、あそこまで……」

「はい。此処から先の樹海は勿論、ククルーマウンテンもす全てゾルディック家の敷地という事です」

 その余りに広大な私有地に、皆は呆然となる。目の前に広がる樹海が全てゾルディック家の庭、という事になる。

「ねぇガイドさん」

「はい?」

「中に入るにはどうしたらいいの?」

 ふとゴンがそう尋ねてきて、ガイドは笑顔で詰め寄る。

「坊や、私の説明聞いてまして?」

「うん、でも」

「中に入れば2度と生きて出られません。殺し屋の隠れ家なのよ」

 笑顔で額に青筋を浮かべ、ゴンに迫るガイド。それに少し怯むゴンだったが、突然、先程のバスの後部座席に座っていた2人組が割って入って来た。

「ハッタリだろ? 誰も見たことの無い幻の暗殺一家。奴らの顔写真にさえ、1億近い懸賞金がかかってるって話だ」

「マジか?」

 それならキルアの写真を撮って置くんだったと少し悔しがるレオリオ。

「噂だけが一人歩きして伝説となり、実際は全く大した事がねぇってのがオチよ」

 そう言って、2人組は守衛室に行くと、思いっ切り扉を壊し、守衛と思われる老人の男性を掴み上げる。

「わわわ……」

「門を開けな」

「こ、困りますよ。あたしが旦那様に叱られるんですから」

「心配すんな。どうせ、アンタのご主人は俺達に始末される」

 2人組は老人から鍵を奪い取ると、老人を放り捨てる。

「痛っ!」

 そして彼らは扉を開けて中に入って言った。

「いてて……」

「大丈夫?」

 ゴンが声をかけると、老人は尻を摩りながら頭を掻く。

「ああ、大丈夫だよ。あ〜あ、またミケが餌以外の肉食べちゃうよ」

「え?」

 その時、扉が開くと中から2つの白骨と巨大な獣らしき腕が出て来た。白骨の方は服装からして、先程、入って行った2人組のようだった。

 それを見て、悲鳴を上げる観光客達はバスの中へ逃げるように入って行く。

「時間外の食事は旦那様に堅く止められてるのにな〜……ミケーーッ! 太っても知らないよーーーっ!」

 まるで当たり前のように対応する老人。

「何だ……今のは?」

「さしずめ番犬ってとこかしらね」

「っていうか、番犬だね〜」

「え、皆様、御覧頂けましたでしょうか? 一歩、中に入ればあの通り無惨な姿を晒す事になり……」

「いいからそんなこと!!」

「早くバスを出してくれーーーっ!」

 観光客たちは白骨を見て、完全にパニックになっている。

「アンタら、何してんだ、早く乗って!」

 観光客の一人が、ゴン達6人にも乗るよう叫ぶが、ゴンが答えた。

「あ、えーと……行って良いですよ。俺達、此処に残ります」

 その言葉に、老人、ガイド、そして他の観光客は唖然となった。


 守衛室に迎えられたゴン達は、事の事情を老人――ゼブロに話した。

「なるほどねー。キルア坊ちゃんのお友達ですかい。嬉しいねぇ、わざわざ訪ねてくれるなんて」

 ゼブロは20年、この家に勤めているが、友人として来てくれたのは、ゴン達が初めてだと嬉しそうに語った。

「雇われの身でこんなこと言うと罰が当たりそうだけど、本当に寂しい家だよ。だーれも訪ねて来やしない」

 あんな連中は、引っ切り無しに来るとゼブロはゴミ箱に入っている先程の白骨を指差す。

「まぁ稀代の殺し屋一族だから、仕方ないけど……因果な商売だよねぇ。いや、本当に嬉しいよ、ありがとう!」

 ペコッと頭を下げるゼブロに、いやいやと6人は謙遜する。

「しかし、君らを邸内に入れるわけにはいかんです」

 が、次の言葉に6人は眉を顰めた。

「さっき君らも見たでしょ? でかい生き物の腕を……アレはミケといってゾルディック家の番犬なんです」

 家族以外の命令を聞かず、懐かない。10年前に主人から出された“侵入者は全員噛み殺せ”という命令を忠実に守っている、とゼブロは説明する。

「あ、忠実やないやな。食い殺してるから。とにかくミケがいるから、アンタ達を中には入れられないね」

 キルアの大事な友人をガイコツにする訳にはいかない、と笑いながらゼブロは言う。すると、ある疑問を持ったクラピカが質問した。

「守衛さん、貴方は何故無事なんですか?」

「ん?」

「貴方は中に入るんでしょう? 中に入る必要が無いのなら、鍵を持つ必要も無いですからね」

「…………いいとこつくねぇ。半分当たりで半分ハズレですね」

「?」

「中には入るが、鍵は使いません。これは“侵入者用”の鍵なんですよ」

「ああ……なるほど」

 パチン、とカヲルは指を鳴らして納得したように言った。

「あの門を見れば、誰だって小さな扉から入ろうする。そう考える人間への罠ですね、その鍵は」

「ええ、そうです。侵入者は無抵抗のあたしから鍵を奪い、ミケに食い殺されるって寸法です」

「つまり貴方は守衛ではなく……ミケの後片付けをする掃除夫、ですか」

「はい」

「と、なると本当の門には鍵はかかっていない?」

 クラピカが尋ねると、ゼブロは「その通り」と頷いた。

「何!?」

 すると、レオリオが真っ先に飛び出し、門を開けようとする。

「むん! んぎ………ぎがが……」

 かなり力を入れるが、門はピクリとも動かない。

「ハッ! ハッ! 押しても引いても左右にも開かねーじゃねーかよ!」

「単純に力が足りないんですよ」

「アホかーーーっ! 全力でやってるってんだよ!!」

「まぁ御覧なさい」

 そう言うと、ゼブロは上着を脱いで門に近づく。

「この門の正式名称は“試しの門”。この門さえ開けられないような輩は、ゾルディック家に入る資格なしってことです」

 ゼブロの二の腕が太くなり、全身に活力が漲ったような気がした。

「はっ!!」

 そして気合を入れて門を押すと、レオリオが押してもピクリとも動かなかった門は、ゆっくりと左右に開いた。

「ふぅ〜」

 気を抜いて手を離すと、門はすぐに閉まった。

「ご覧の通り扉は自動的に閉まるから、開いたらすぐ中に入る事だね。年々、これがしんどくなってきてねぇ……でも開けられなくなったらクビだから必死ですよ。“試しの門を開けて入ってきた者は攻撃するな”。ミケは、そう命令されてもいるんです」

 そう言って上着を着ると、ゼブロは1の扉は片方2tあると説明する。

「2ト……そんなもん動かせねーぞ、普通」

 驚愕するレオリオだったが、ふと1の扉、という単語に引っかかった。

「1の扉は……だと?」

「ええ。御覧なさい。7まで扉があるでしょう?」

「ああ」

 言われて見上げると、確かに扉は七段構えになっている。

「一つ数が増えるごとに重さが倍になっているですよ」

「倍!!?」

「力を入れればその力に応じて大きい扉が開く仕組です。ちなみにキルア坊ちゃんが戻って来た時は3の扉まで開きましたよ」

「3……って事は12t!」

「16tよ! 16t!」

 計算間違ってるゴンに、アスカが訂正を加える。

 しかし、16tの扉を軽々と開ける力がキルアの強さに繋がると思うと、ハンター試験での彼の実力にも納得がいってしまう。

「お分かりかね? 敷地内に入るだけでこの調子なんだ。住む世界が全く違うんですよ」

「う〜ん……気に入らないな。おじさん、鍵貸して」

「え?」

 ゴン達に諦めるよう促すゼブロだったが、その彼の言葉にゼブロは思わず聞き返す。

「友達に会いに来ただけなのに試されるなんて真っ平だから、俺は侵入者で良いよ。鍵を貸して。俺は侵入者用の門から入るよ」

 もし鍵を貸してくれなければ、塀をよじ登ってでも行くと言うゴンをレオリオが止める。

「ムチャ言うなよ。ゴン、さっきの化け物見ただろ。片腕だけでお前以上の大きさはあったぞ!!」

「だって納得いかないんだもん。友達試すなんて変だよ。絶対、そんな門からは入らない」

「確かに君の言うとおりだとは思いますよ。しかしねぇ、強行突破は無理ですよ。絶対、ミケに殺される」

「私も同感だ。時間はある。1の門から入る事にしよう」

 と、ゼブロとクラピカもゴンを宥めるが、彼は無言で鍵を渡すよう掌を出す。

「はぁ……アホか、アンタは!」

 ゴツンッ!!

「〜〜〜〜〜〜って〜!」

 そこへ、アスカが思いっ切り怒鳴ってゴンの脳天に踵落としをかました。驚くレオリオ、クラピカ、ゼブロに対し、カヲルとレイはフゥと息を吐いた。

「何すんだよ!?」

「あんたバカァ? いい? 此処はゾルディック家よ! アンタが、どれだけキルアの友達を名乗っても、入れないのがこの家のルールならアタシ達が文句言う資格は無いの!」

「正に郷に入っては郷に従え、だね」

「そもそも、アンタに鍵渡して殺されでもしたら、どれだけ人に迷惑かかると思うの?」

「それは……」

「まずキルアが一番悲しむ。それにゼブロさんも責任を感じる、でしょうが」

 言われてゴンは表情を顰めるが、グッと何かを言い返そうと口を開いた。

「でも……」

「あの番犬とコミュニケーションでも取るつもり?」

「!?」

 アスカに自分の考えを指摘され、驚愕するゴン。ヤレヤレ、と肩を竦めるアスカは、ビシッとゴンを指差す。

「ハッキリ言うわよ、無理。あの腕見ただけで分かったもの…………アレはコミュニケーション取れるような野生の動物とは違う」

「(っていうか、野生の獣と比べてオーラが洗練されてたからね)」

「じゃあ、どうやってキルアを助け出すのさ!?」

「助けるってアンタ……」

 呆れてアスカは頭を押さえる。

「キルアが自分の意志であろうとなかろうと此処から連れ出せば、キルアを家族から引き離すって事よ?」

 キルアに対し、どれだけ歪んだ愛情を持っていようが、彼の事を考え、彼の兄に家へ連れ戻させたのだろう。そのキルアを引き離す自分達は家族からしてみれば悪人と捉えられても仕方が無い。

「だから、アタシ達が此処に来ても、キルアの意志が全てなのよ。キルアが出て行きたくないのに無理やり連れ出せばアタシ達が悪い。でも、キルアが出て行きたいのに家に縛り付けるなら家族に文句言ってやれば良いの」

 そう言われ、ゴンは何も言い返せなくなる。

「すげ〜……あの意地っ張りのゴンを理屈で説き伏せやがった」

「でもアスカ君がこのまま終わるかどうか……」

 カヲルの不安が的中するかのようにアスカはニヤッと笑い「でも……」と続けた。

「このまま此処で黙ってても何の動きも無いから、ちょっくらアプローチかけてやるか……ゼブロさん」

「はい?」

「あの守衛室の電話って、屋敷に通じるの?」

 窓から見える守衛室の電話を指して尋ねるアスカ。

「いえ、屋敷への連絡は全て執事を通して……」

「それで良いわ。かけてくれる?」

「良いですが……無理だと思いますよ」

 そう言い、ゼブロは守衛室に戻り、電話をかけると受話器をアスカに渡す。

<はい、ゾルディック家、執事室>

「あ、アタシ、キルア君の友達のアスカって……」

<キルア様に友達などおられません>

 そう言い、電話の向こうの相手は一方的に電話を切る。ゴンが青筋を浮かべているが、アスカはフッと笑うと、再び電話をかけ直す。

<はい、ゾルディック家執事―――>

「これから、そっち行って直談判してやるから茶ぁ用意して待ってなさい!!!!」

 ガチャン!!

 思いっきり怒鳴って電話を叩き付けるアスカ。ゴン達は驚いて呆然となっている。アスカは守衛室から出ると、トントンと門を足で軽く蹴っている。

「ちょっとちょっと無茶ですよ! あんたみたいな細腕じゃ、その門を開ける事なんて……」

「17,18,19,20……」

 そこで門を蹴り終わって、ピタッと止まるアスカ。その彼女を見て、ゴンは何か奇妙な威圧感を感じた。

「はぁ!!」

 そして、門を思いっ切り蹴りつけると1の門がバァンと勢い良く開いた。更に扉は内側にへばり付き、すぐに戻る事が出来なかった。若干、ヒビが入ってるようだ。

「さぁ、行くわよ」

 フン、と胸を張って中に踏み込むアスカ。

「あ、あのお嬢さんは一体……」

「馬鹿力もあそこまでいくとスゲ〜な」

「ああ……」

 何だかんだでアスカもキレちゃってるのでカヲルは苦笑し、レイはヤレヤレと肩を竦めた。一歩、ゾルディック家の敷地内に踏み込むと、アスカはピクッと何かに反応して立ち止まった。

 すると、森の中から体長5m以上はある巨大な獣がゆっくりと歩み寄って来た。それを見て、ゴンは身を竦ませ、大量の冷や汗を掻く。これがミケであると誰もが瞬時に分かった。ミケは腰を下ろすと、ジッとアスカ達を見つめる。

「ゴン君、分かったかな? あれが完璧に訓練された狩猟犬ってやつですよ」

 ゼブロがそう説明すると、ゴンは自分の考えが浅はかだった事を理解した。森で育ち、沢山の動物に囲まれていたから、侵入者の扉から入ってもコミュニケーションを取れると思った。が、それは不可能だった。相手は動物ではない。機械と同じだ。与えられた指令を忠実に遂行するだけだった。そこに感情や心など無かった。

「さて……とっとと屋敷に乗り込んで、家族と面会でもしましょうかね〜」

 ブンブンと腕を回して意気込むアスカだったが、不意にレイが彼女の肩を掴んで引き止めた。

「待ちなさい……」

「あによ?」

「ゴンが納得してないわ」

 そう言われ、アスカはゴンを見ると彼は厳しい表情で拳を握り締めていた。

「ごめん、アスカ。アスカの言う通りだと思う。俺、キルアの事ばっかり考えてて、他の事にまで頭が回らなかった……でも、このまま屋敷まで行っても、俺、キルアに何も言える資格ないよ」

 アスカに諭され、彼女に扉を開けて貰い、屋敷に行ってゴンは堂々と『キルアの友達』と名乗れない。なら、自分で此処の扉を開けれるぐらいにならないとゴンもレオリオもクラピカも納得出来なかった。

「観光ビザで来たから一ヶ月は滞在出来る。ゼブロさん、その間、此処で特訓しても構いませんか?」

 そうカヲルがゼブロに尋ねると彼は笑って頷いた。

「ええ、構いません。君達ほどの若さがあれば、1ヶ月もあれば1の門は開けられるかもしれません。その間は、私ら使用人が寝泊りする家を使えばよろしいでしょう。こちらです」

 そう言い、ゼブロに案内されると大きな山小屋に連れて行かれた。

「交代の時間だよ〜」

「おっと、客人とは珍しい」

 ゼブロと交代で外に出てきた髭面の男性――シークアントは、6人を見て言った。

「ゼブロに気に入られるとは大した連中だな。まぁ、ゆっくりとしていきな。この家じゃ、そうもいかねぇだろうがな」

 そう言ってシークアントは外に出て行った。

「ちょっと開けてみてください。押して入るドアですよ」

 言われてゴンが扉を開けようとしたが、ちっとも開かなかった。

「これって……」

「片方200kgあります」

 常に鍛えないといけないので、と説明し、レオリオが力一杯押して中に入った。次にレイが扉に手をかけると、彼女は片手で開けてしまった。

「すご……」

「レイも意外と力持ちなんだ」

 そして、中に入るとゼブロは片方20kgのスリッパを履く様に言う。アスカ、レイ、カヲルはすぐに履いて、平然と歩き出した。

「(そうか……彼女達は)」

 ゼブロは、アスカ、レイ、カヲルの力の秘密に気付きかけた。

 その後、60kgの椅子を引いたり、20kgの湯飲みに入れられたお茶を飲みながら、ゼブロは、あるベストを出した。

「ゴン君、クラピカ君、レオリオ君は寝る時以外はコレを来てください。まずは上下で50kgから始めましょう。慣れたら徐々に重くします」

 レオリオは体格が良いから、一人で門を開けるかもしれない、とゼブロは笑いながら言った。こうして、ゴン、クラピカ、レオリオの特訓が始まった。


 夜の森の中、アスカは木の枝の上で月を眺めていた。その木の下でレイとカヲルも座禅を組んで目を閉じている。

「まだ寝ないんですか?」

 と、そこへゼブロがやって来て、3人は彼に目を向ける。

「あなた達、念の使い手でしょう?」

「そういう貴方こそ……」

「いやいや。私は、ただオーラでちょっとだけ肉体を強くするだけで、他は何にも出来ません」

 そう言って笑うゼブロに、カヲルは「それだけでも立派です」と返した。

「ゴン君を宥めて、特訓へと持っていかれたお手並みは見事でした」

「そうでもないわよ。あのままゴンがアタシに頼って何も言わなかったら、本気で屋敷に乗り込んで行くつもりだったもん」

「その時は、私が止めますよ。あなた達の実力なら執事達はともかく、屋敷の人間には絶対に敵いませんから」

 そう言われ、アスカは笑みを浮かべる。確かに、ハンター試験で見たキルアの兄の実力は自分達より上だった。その家族のいる屋敷に乗り込んで無事に済むとは彼女達も到底思っていなかった。

「それでも乗り込んで行ってましたか?」

「「「勿論」」」

 間髪入れずに答える3人に、ゼブロはキョトンとなる。

「伝説の暗殺一家の屋敷の子供に会いに行くのに、生半可な覚悟じゃ意味ないですからね」

「それで死んだら?」

「そん時は、そん時よ。ま、アタシらにも目的があるから、石に噛り付いてでも生き残るけど」

 そう答えられると、ゼブロは自分の3分の1も生きていない子供達に対し、素直に感服してしまうのだった。


 眠らない街、ヨークシン。娯楽と危険が同居する夜のその街の通りを、一人の少年が歩いていた。目立つ赤いコートを翻しながら歩く少年は、ピタッと立ち止まり、目を閉じた。

「随分、早い到着だね。マルクトとアクアからの連絡はいったのかい?」

【別に。ただ、礼の3人がゾルディック家に入ったみたいだから報告しに来ただけ】

 すると、少年の頭の中に声がした。

「ゾルディック……なるほど。世界最強の暗殺一家か。3人とも波乱万丈な生活送ってるみたいだね」

【マスター、何を考えてる? あの3人を導いておきながら、逃げている貴方の考えが理解出来ない】

「さぁね」

 何処か楽しそうな笑みを浮かべながら、少年は鼻唄を歌って歩き出す。

「あ、そうそう。マルクトとアクアだけじゃ大変だろうから、君も他の連中探すの手伝ってくれない? イスに連絡したら『1人10億でやってあげる』とか言われてさ」

【アンタ、本当に私らのリーダー?】

「クロロにも同じようなこと言われちゃった……お願い、マインド」

【やだ。ダルい】

「お〜い。さっき、僕に同情してくれたのは何なの〜?」

【それはそれ、これはこれ】

 酷い、と涙を流す少年。その際、会話の方に集中していた所為か、ドン、と誰かの肩にぶつかった。

「っと、失礼」

「ってぇーなボケ! ぶっ殺すぞ!」

 一応、謝る少年だったが相手は、怒鳴って胸倉を掴んで来た。酒のニオイがするので、どうやら酔っ払ってるようだ。

【マスター……】

「良いよ。離れてな」

 すると今まで頭に響いていた声が消えた。少年は体を持ち上げられ、相手の目の前に引き寄せられても笑みを崩さず、瞳から温かさが消え、小さく口を開いた。

「おいで……“テレサ”」

 そして少年が腕を振るうと、男性から離れ去って行く。次の瞬間、男性はまるで糸の切れた人形の様に倒れた。後日、この男性は“原因不明の死亡”という事で新聞の片隅に載る事になった。


 〜レス返し〜
 希望様
 はい、今回シンジ君の活躍ありました。これからも早い更新目指してがんばります。


 夢識様
 はじめまして、感想ありがとうございます。
 シンジ、髭、と割と絡みが複雑になってきました。話に深みを持たせられるようこれからも頑張ります。


 ショッカーの手下様
 私的には髭が念使うより、ハンター試験に参加している姿の方が不気味です。後で気付いて、想像するのやめました。念だったら、やっぱ特質でしょうかね。でも、具現化系でもいけそう。
 はい、アスカが門をぶっ壊しそうな勢いで開けました。ちなみに“破壊する脚【クラッシャー】”は、無機物に対しても有効です。


 虚空様
 樹海様も言ってるように、アスカは天性の素質が強化系なので、カストロのように間違った選択はしてません。それに言い方がまずかったのか、攻撃に関しては“破壊する脚【クラッシャー】”で十分なので、切り札、というよりそれを補佐する能力です。


 樹海様
 虚空様へのフォローありがとうございます。
 シンジの場合、調べるのは結構だけど金をくれ、です。ゲンドウは、一応、エヴァ世界では権力も金もあるので、極秘指定人物になってても違和感ないと思います。


 久我様
 上記でも述べましたが、エヴァ社会じゃそれ相応の力持ってますしね。
 ゾルディック家観光ツアー、始まりました。が、実を言うと此処でのゴン、余り好きじゃありませんでした。真っ直ぐで純粋なのは彼の美徳なんですが、我侭で周囲の人に迷惑をかける点はマイナスです。G・Iでもゲンスルー挑発して、ピンチになりかけましたしね。


 髑髏の甲冑様
 レイも昔は人形みたいでしたからね。キルアと昔の自分が重なったみたいです。
 クラピカ同様、アスカ達もアクアから情報を手に入れたので、ポックルに頼る必要も無いですし、無闇に自分達の事情を話したくなかったから頼みませんでした。シンジは金にガメつい性格になっちゃいました。まぁ理由があるんですけど。
 さて、これから髭を絡ませると大変です。まぁ大まかな構想は出来てます。
 あ、すいません。黙示録のシンジを除いた14人は既にどんな人物か出来上がってます。アクア、マルクト、そして今回登場――声だけ――したマインド以外の11人の登場をお楽しみに。


 拓也様
 ゲンドウの念……『問題ない』で相手を捻じ伏せる。制約は、あのポーズじゃないと出来ない。いや、冗談ですよ?
 ゲンドウが果たしてどのような人物かは、これからの展開をお楽しみに。


 にるべんと様
 今まで抑圧してた思いが弾けて、はっちゃけた性格になっちゃいました。今回、少しですがシンジの能力の片鱗が出来ました。
 にるべんと様の考えた能力ですが、既にマルクトが生物を具現化する能力を持っているので、インパクトが無いので、すいません。あ、でもアルサミエルのキャラの能力のイメージに合うかもしれません。


 meo様
 最初は十老頭にゼーレを持って来ようと考えました。でも、僅か数コマしか登場せず、ロクに台詞も無くて、登場した時点じゃ既にイルミに殺されたキャラに、まがりなりにもエヴァ世界の黒幕を当てはめるのは如何なものかと思い、没にしました。


 エセマスク様
 今回、アスカが蹴り破りましたが、殆どぶっ壊したに近いです。あ、門はちゃんとゼブロが戻して閉じておきました。本気出せば、砕けるかもしれません。
 まさか、髭でここまで驚かれるとは私も予想外でした。
 あ〜、そうでしたね。でも、漫画じゃ女っぽい描写ないですし、誰が見ても男なので、男にしておきました。ちなみに7話を見て貰えば分かりますが、トードーに関して“男性”や“彼・彼女”といった表記はしてません。
 では、烏賊島で乙女さんと左フックの修行をしつつ次回頑張ります!


 なまけもの様
 サンダルフォンって、ロクな戦闘しませんでしたから、こうなりゃ姿を能力にしてやるって決めたら、ブラックキャットのシキみたいな能力になってしまいました。
 まずシンジの情報に関してですが、シンジ自身、そういう風にハンターリストに細工しています。方法は後々。極秘指定人物のように個人の意志で、情報の公開を限定出来ると思い、200億ってのにしたんですが、違和感ありましたかね。
 果たしてゲンドウが赤い海からの生還者か、シンジ達の情報操作によるものかは後々、明らかになります。

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