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▽レス始

「ジャンクライフ−第二部−4−(ローゼンメイデン+オリジナル)」」

スキル (2006-08-06 15:49)
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ただ出会えた。
それが嬉しい。


ジャンクライフ−ローゼンメイデン


「戦っても別にいいんじゃないかな」
「えっ?」

答えが返ってくるとは思っていなかった。
ここ数日悩み続けていた問いに、何の気負いもなく答えた柏葉 巴を前に、桜田 ジュンはきょとんとしてしまった。
場所はいつもの図書館。

「戦うのは駄目だ」
「……桜田君の考え方、樫崎君に似てきたね」
「なっ! どこがだよっ! 俺とアイツは全然!!」
「ご、ごめんなさい。でも、その」

巴はぎゅっと目を瞑る。
剣道をやめて、学業に専念したかったときも、クラス委員がやりたくないのに、やらされる事になったときも、巴は何も言えなかった。
怖かったからだ。誰かの期待を裏切るのが、自分の心に蓋をして、誰かの心の蓋を取る。

――言わねば、誰にも分かるまい

それは誰の言葉だったのか。いや、誰の言葉だったのかなど関係ない。

「桜田君の、その……」
「なんだよ」

ずっと、それこそ小さい頃から巴はジュンのことが好きだった。なんでも言う事が出来た。なんでも聞いてくれた。
思春期に入り、疎遠にはなってしまっていたけれど、聞いてくれた、話す事ができたという思い出は今もこの胸の中にある。
ジュンが、服のデザインなどが得意な事も知っていた。その事がクラスの子達にばれたときに、自分は何も言えなかった。
怖かったから。誰かの目が怖かったから。
でも、それでは大好きな人がどこかにいってしまう。違う誰かのもとにいってしまう。
ちらつくのは金の髪の少女。

「一か、零かっていう、そういう考え方は、樫崎君みたい」
「っ!!」

戦うか、戦わないか。樫崎 優が提示した道はその二つである。
しかし、道は本当にその二つしかないのか。そんなわけがあるものか。
道は探せば、いくらでもあるはず。そもそも、問題なのは戦いの有無ではなく、ドール達をローゼンの呪縛から解き放つという事。
あれほど優の言葉に反抗していたにもかかわらず、根本的なところでは優の言葉に従っていたという事実にジュンは言葉を失った。

「戦ってもいいと思うの。問題なのは、その後。樫崎君みたいに殺すのか、それとも別の方法で、その、ごめんなさい」

勢いよく喋っていたが、ジュンの驚いた瞳に巴はいたたまれなくて黙り込んだ。

「……あ、ありがとう。柏葉」
「えっ」

照れたように顔を逸らして、それでも瞳だけは巴を捉えた状態でジュンは巴に感謝の言葉を述べた。

「お前の言うとおりだ。僕はいつの間にか、一か零かっていう、考え方をしてた。いや、それ以前に見当違いな事を考えてた」
「……うん」
「戦うか、戦わないか、じゃなくて、どうやったらあいつらを救えるかが問題だったんだ。本当に、サンキューな」

これで、あいつらの泣き顔を見なくてすむかもしれない。
言葉の最後にジュンがそう呟いたのを聞いて、巴はそれはないんじゃないかと思った。
今は、今このときは、私の事を見て欲しいのに。ジュンはすぐに他の誰かに目を向ける。

「お、お礼っ!」
「えっ?」
「お礼が、欲しい」
「あ、ああ。なん、欲しいものでもあるのかよ?」

違う。ああ、どうしてこうこちらの気持ちを察してくれないだろう。物とかじゃないのに。
顔が真っ赤に染まる。耳鳴りがする。唇が震えていて、喉の部分にまで言葉が着ているのに底から先に進もうとしてくれない。

「な、名前」

それでも、いつものようにここで立ち止まっていたらいけないと思ったから。
巴は、ジュンの瞳を見つめ、そして自分の願いをはっきりと告げる。

「名前で呼んで。そしたら、私も名前で、貴方を」

ジュンとてそこまで鈍感ではない。
ここまであからさまに態度で示されればわかるというものだ。
ジュンの顔が真っ赤に染まる。
視線がせわしなく動いて、何か言いたいのに、何を言えばいいのか分からない。

「お、おま、なにを」
「お、お礼。なんでもって、言った」

懇願するように、潤んだ瞳で見つめられては、男としては首を横に振ることなど出来なかった。

「と、巴」
「……ふふっ」
「な、なんだよ。名前で呼べって言ったのはお前だろ。笑うなよ」
「違うの。さく、……じ、ジュン、くんに名前を読んでもらったのが嬉しくて」

音で言うならば、ぼふんっ、そしてその後の音はぶしゅ〜。
二人は顔を真っ赤にして、その後はお互いに何も言えなくなってしまったのだった。
そして、そんなジュンの視界の隅に、自分を見つめる人形の顔が目に入った。
眼帯をつけたソレは、見間違えるはずが無い、真紅が自分のもとから出て行ったその日に出会った。
第七のドール。

「薔薇水晶!」
「さ、ジ、ジュン君!?」

突然の大声に、周りで本を読んでいた人々が何事だと二人に視線を向ける。
巴はその視線に気づき、すぐに頭を下げたが、ジュンはそれに気がついていないのか、勉強道具を置いて走り出す。
薔薇水晶は走ってくるジュンを笑みを浮かべて、眺めていた。
全てがそろい、全てが始まる。
波紋を浮かべる窓ガラスに走りぬけるようにしてジュンは飛び込んだ。偶然それを見ていた少女が驚きに固まる。
その少女の名は、樫崎 香織といった。


Nのフィールドに入ったジュンの目に飛び込んできたのは、小さな劇場だった。
観客席があり、舞台には幕が下りている。自分以外には誰もいないのかと視線を巡らせれば、

「ジュン!」
「チビ人間!」
「ジュンなのぉ〜」

という自分の三体のドールと、金糸雀というつい先日であったばかりのドール。
そして

「貴様も来たのか」
「ジュン君」

敵がいた。樫崎 優とそのドール、蒼星石。前回あったときの水銀燈コスではなく、ごく普通のTシャツとジーパンという姿だ。
一見すれば、どこにでもいそうな少年だが、ジュンはソレが普通ではないという事を嫌というほど知っている。
女性のような中世的な顔つきに、ギラつく眼光が光っていた。曰く、なぜここにきたのかと。
ジュンはそれに飲み込まれないように拳を握り締めると

「僕は考える」
「なに?」
「戦う以外に、こいつらを救う必要はあるはずだ。だから、僕はソレを考える」
「それで?」
「だけど、お前や、こいつら以外のドールが向かってくるって言うなら僕は戦う。でも、倒しはしない」

考えが整理されていく。つい先ほど、巴の手によって思考の海より救い出された心が道を作り出す。
自分でも知らなかった自分の心の声が聞こえてくる。

「僕は、こいつら全員を救ってみせる」
「……ジュン」
「チビ人間……」
「ヒナも一緒に考えるの〜」

金糸雀は、ジュンや真紅達から少し離れた位置で、事の成り行きを見守っていた。
変わろうとしている、いや変わり始めている。
他人に余り認めてもらったことは無いが、それでも金糸雀自身の脳内回転は速い。ただそれが、空回りがちだが。
しかし、今回はその聡明な脳は、正しく、そして理想的な答えを導き出そうとする。

――――もしかしたら、本当にもしかしたら――――

「せいぜい考えるといい」

いつものように淡々とした声が響く。
ジュンの意思表明に、蒼星石までも心を動かされているというのに、その声に感情の色は無い。

「俺は、俺の道を行く。どれほどの屍を築こうとも、大切なものは二度は失わん」

その言葉が意味するもの、蒼星石は場違いだと分かっていながらも胸に温かいものを感じた。
そんな中、ゴウンッと機械が動き始める音が響いた。
その音に、それぞれが同時に、音の発生場所へと視線を向ける。
幕が上がり始めていた。ゆっくりと、幕が上がっていく。そして、それぞれのドールを模した糸でつられた操り人形が姿を現す。
それらは、戦い始めた。
真紅を模した人形が雛苺模した人形を殺す。
蒼星石を模した人形が翠星石模した人形を殺す。
金糸雀を模した人形が、彼女を模して作られた人形によって殺される。

「……アリスゲーム」

誰かが呟く。いや、それは舞台袖から現れた眼帯のドール、薔薇水晶の声。

「あるべきものはあるべき姿に。全てはお父様を望むように」
「待て」

薔薇水晶の言葉を断ち切るようにして、優は声を発した。その顔には、どこか鬼気迫るモノが宿っている。

「なぜ、水銀燈がそこに存在している」
「なぜ、水銀燈がそこに存在している?」

挑発するように、薔薇水晶は優の言葉を疑問形にして問い返す。

「水銀燈は、今はいない。それは貴様も知っているはず。いや、知らないのか?」
「水銀燈は、今はいない。それは貴様も知っているはず。いや、知らないのか?」

優の言葉をなぞり、そして薔薇水晶はその顔に笑みを浮かべる。

「知らないのは貴方。彼女は、今もいる。貴方が、出会っていないだけ」
「なん、だと!!」
「水銀燈が生きているというの!」

真紅の言葉に、ソレは我慢しきれなくなったように、黒い漆黒の羽を降らした。
優の瞳が驚きによって開かれる。

「勝手に殺さないでくれるぅ馬鹿真紅ぅ」

その声が、耳を打つ。その姿が、視界を埋める。その存在が、心を奮わせる。

「水、銀燈」
「……優さん」

蒼星石は呆然とする優を見つめる。

「招待されたと思ってきてみれば、随分と賑やかな事になってるじゃなぁい」

そう言って、水銀燈はクスクスと笑うと、驚いた顔で固まっている面々を見渡し、そして優で視線が動かなくなった。
胸を締め付けるような感覚が水銀燈を襲う。知らない人間。傍に蒼星石がいることから、蒼星石のミーディアムだろう。
でも、なせだろうか。その事がとても、許せない。

「あらぁ、蒼星石。貴方、色気が無いのに、ミーディアムを捕まえる事が出来たようねぇ」
「水銀燈。君は、優さんが誰かわかっていないの?」

困惑した感情に、少しの期待を含ませたその問いに、水銀燈はぴくりと眉を動かした。

「知ってるわけ無いじゃなぁい。貴方のミーディアムのことなんて」
「……俺は」

優が口を開いた。声が震えている。
歓喜のためか、それとも別の何かのためなのか、優は一度瞳を閉じて、自分を落ち着かせると

「蒼星石のミーディアムの前は、お前の夫だった男だ」
「なんですって?」
「覚えて、ないのか?」

搾り出すように紡がれた言葉は、水銀燈にしてみれば訳の分からない事実だった。
蒼星石のミーディアムの男が、元は自分の夫?

「あは、あははははははっ。ねぇ、蒼星石ぃ。貴方のミーディアム頭、おかしいんじゃないのぉ?」

その言葉に、優は水銀燈が自分の事を何一つ覚えていない事を理解した。
心配そうに自分を見つめている蒼星石の頭を撫でる。

「覚えていないようだな。だかしかし、そんなことはどうでもいい」

それは、本当に何の含みも無い、ただ、そうである感情をそのまま表したモノ。

「もう一度、お前に会えて俺は嬉しい」

澄み切った笑顔。ただ嬉しいがゆえに浮かべられた、嬉しいという思いを相手に伝えるための笑顔。
その笑顔に、蒼星石は胸が締め付けられる。嫉妬の感情が無いといえば嘘になる。でも、それでも、自分の大好きな人が、悲しんでいるという事が辛い。
そして、笑顔を向けられた水銀燈はというと、胸を締め付ける想いに戸惑っていた。

「アリスゲーム」

そんな三人の間に割り込むようにして、薔薇水晶は告げる。
まるで、そうせよと書かれた台本を読むように、何の感情も含ませず、告げる。

「アリスゲームをはじめましょう」


あとがき
――――ムズイ。なんというか、ジュンを成長させるのが難しい。
とりあえず今回は、ジュンのメインヒロインである巴嬢にご足労いただいて何とかという感じ。
何回も手直ししたが、なぜだろう。違和感が拭えない。
そして、優と水銀燈。ついに二人は再会しました。
過去の郷愁に苛まれる水銀燈と正妻が帰ってきたことで気を引き締める蒼星石。
次回の見所は、やはりソコになるでしょうね

>ジェミナスさん

蒼星石の不幸属性が今こそ輝くとき!
……とか言ってたら、蒼星石ファンに刺されそうです。

>沙耶さん

>『俺の』水銀燈がやっと帰ってきてくれた〜♪

すいません、カメラもう少し近づけてもいいですか〜?

>『俺の』水銀燈

Σ(゜д゜;)おとーさん、この人、皆の銀様を私物化してるー    
(*´ω`)人ペキポキ 世の中の厳しさを教えてやら無ければならんようだな

>こるべんとさん

モチツケ! いや、落ち着け!
僕らの銀様が黙って引っ込んでいるわけないじゃないか。
というかそんなことになったら、す●―る・で□ずのような、鮮血展開が待ってるよ

>KOS-MOSさん

シュ・ラーバ時空の形成はもう少し先になりそうです。
とりあえず、三角関係のサイトとしては結構有名なところで、ただいま勉強中。
なんとか、皆さんに萌えるシュ・ラーバをお届けできるよう頑張ります

>西環さん

>ハイル!!!銀様!!!!

ノンノン。ハイル! 銀様!! もっと愛を込めて

>深山さん

知ってるかい。シュ・ラーバって言うのはね、始まりそうと思ったときには始まっているものなんだよ(ニヤリ

>中国原産さん

どうもはじめまして。ってか、シュ・ラーバの回避ですか。
……ぶっちゃけ無理です。何股もかけといてシュ・ラーバなしとか、ありえないでしょう。
とりあえず、優が刺されないように祈っていてください

>樹影さん

女性キャラの的確な紹介ありがとうございます。
それと、仮面ライダーですが、今やっているのがカブト何でしょうか。
全然見ていないので分かりません。あ、でも、「そうそうそれそれ」が口癖な人は知ってます。

>シヴァやんさん

優←真紅フラグですか。
それが立つかどうかはジュンの頑張り次第でしょう

>ミーハーさん

( ´ω`)まぁ、少し落ち着きなさい

>カシス・ユウ・シンクレア

優がう、うわなにをすrpw、gp!!

>R-44

>ところで自分が目覚めさせた彼女が自分の恋を叶えるキューピッドじゃなく、天上天下無双究極絶後完全無欠最強無敵にステキな恋敵様だと知ったとき、めぐはどんなリアクションを見せてくれるのやら

とりあえず、モノは飛んでくるでしょうねぇ

>GINさん

某赤い人です。すいません。赤い人が好きなもんで、ちょくちょく引っ張ってきてます

>慎哉さん

非生産的な愛はお父さん認めませんよ

>なまけものさん

>そしてさらりとスルーされた金糸雀が哀れ

メイン以外の扱いは結構酷い。それがジャンクライフクォリティヽ(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)人(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)ノ

>うにゅさん

こう、動きました。いかがだっでしょうか?

>灰ネコ

>夢の中を写真取れる機械があったら人に見せれるもんじゃネェェェ!!!

確かそういう機械、ドラ○もんにあったよね

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