「このクジで決定するのは狩る者と狩られる者。この中には、32枚のナンバーカード。即ち、今残っている諸君らの受験番号が入っている。今から1枚ずつ引いて貰う。それではタワーを脱出した順にクジを引いて貰おう」
リッポーが言うと、ヒソカから始まり、アクア、ハンゾーと皆、三次試験をクリアした順番通りにクジを引いて行く。
「全員、引き終わったね」
皆が引き終わり、リッポーは説明を再開する。
「今、諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかは、全てこの機械に記憶されている。従って、もうそのカードは各自、自由に処分して貰って結構。それぞれのカードに示された番号の受験生が、それぞれの獲物(ターゲット)だ」
受験生を指差して言うリッポーの言葉に、皆の表情に緊張が走る。
「奪うのは獲物のナンバープレート……自分の獲物となる受験生のナンバープレートは3点。自分自身のナンバープレートも3点。それ以外のナンバープレートは1点。最終試験に進む為に必要な点数は6点。ゼビル島での滞在期間中に6点分のナンバープレートを集める事」
それが第4次試験の課題であった。自分と獲物のナンバープレートでも、それ以外のナンバープレートでも6点さえ集めれば良い、サバイバルである。
受験生達は船に乗ってゼビル島へと向かう。
「御乗船の皆様、第3次試験お疲れ様でした!」
船に乗ると、異様に明るいハンター委員会の案内役であるカラが受験生達に労いの言葉をかける。
「当船はこれより2時間ほどの予定でゼビル島へ向かいます。此処に残った32名の方々には来年の試験会場無条件招待権が与えられます。たとえ、今年受からなくても気を落とさずに来年また挑戦してくださいね♪」
場の雰囲気を和ませようと努めて明るく振舞うカラだったが、此処まで残った受験生にそんな余裕はなく、ド〜ン、と重い雰囲気だった。
「(うっ……辛気くせーわ!)」
まぁ受験生からしてみれば既に戦いは始まっている。皆、誰からともなく自分のナンバープレートを隠し、誰が自分を狙う者で、また自分が狙うべき者なのかを探り合っていた。
「それでは、これから2時間は自由時間になります。皆さん、船の旅をお楽しみにくださいね!」
カラは逃げるように去って行き、受験生達は散り散りになった。
「〜〜〜〜♪」
「やれやれ。呑気に鼻唄なんて歌っちゃって」
甲板では、鼻唄を歌っているカヲルに、アスカが嘆息する。ちなみに、アスカ、レイ、カヲル、そしてゴン、キルア、ヒソカ、301番のギタラクルはナンバープレートを外していない。自分を狙う相手にはモロバレであった。
「ところでアンタ達のターゲットって誰?」
「65番」
「346番」
「誰?」
「「知らない」」
レイとカヲルは声を揃えて答える。2人は視線をアスカへ向け、彼女の獲物を知りたがる。アスカは溜息を零すと、自分の獲物の番号の書かれたカードを見せた。
「1番……」
「おやおや……御愁傷様」
1番……アクアだった。ついこの前、3人がかりでかかって一発も当てられなかった相手である。
「アスカ……試験は来年もあるわ」
「ぶっ飛ばすわよ、マジで」
ポン、と肩を置いて言って来るレイに、アスカは青筋を浮かべる。
「プレートを奪うだけなら何とかなるわよ」
「そう?」
「ってゆーか…………あんのスカしたクソアマに今度こそカリを返してやる! フフ……フフフフフ………!」
ワキワキと手を動かして笑い続けるアスカ。レイは嘆息し、カヲルはフッと笑うと、それぞれ立ち上がる。
「ま、頑張ってくれたまえ。手を貸して貰うのは君の本意じゃないだろう?」
「勿論! 1人でぶっ倒す!」
「ついでに一発殴って黙示録の情報を聞き出してね」
そう言い、レイとカヲルは彼女から離れて行った。アスカは、大きく深呼吸すると握り拳を作り、グッと手首を掴んだ。彼女の頬には冷や汗が一筋、伝っているが何処か嬉しそうでもあった。
2時間経ち、船はゼビル島に到着した。
「それでは第3次試験の通過時間の早い人から順に下船していただきます! 一人が上陸してから2分後に次の人がスタートする方式を取ります! 滞在期間は丁度1週間! その間に6点分のプレートを集めて、またこの場所に戻ってきて下さい!」
カラの説明を聞いて、ヒソカから下船し、島の密林の中へ入って行く。早く入れるほど、身を隠し、自分の獲物の動向をチェック出来る、というものだ。
「14番の人、どうぞ!」
「じゃ、お先」
カヲルが船を降りると、アスカ、レイ、ゴン達が軽く手を上げて見送る。その後、受験生達が密林に入って行き、
「25番の人、どうぞ!」
「じゃね」
アスカは、駆け足で密林の中に入って行った。
「さて……と。アクアを探すとしますか」
ペロッと親指を舐め、アスカはアクアを探し始めた。
ゴンは、密林に入ると、まず湧き水で汚れた服を洗った。
「(どうやったら、あのヒソカからプレートを奪えるだろう……)」
ゴンの獲物は、よりにもよってヒソカだった。ゴンは、自分の獲物がヒソカだと知った時、彼の恐ろしさを思い出したが、同時にワクワクして来た。未知の生物とも言えるヒソカからプレートを奪うなど、ハッキリ言って限りなく可能性は低い。が、ゴンは最初から諦めるような事は無かった。必死に、彼からプレートを奪う方法を考えていた。
ガサッ!
「! 誰!?」
その時、後ろの茂みが揺れたのでゴンは釣竿を握って警戒する。
「僕だよ」
「カヲル!?」
茂みから出て来たのはカヲルだった。見知った相手なのでゴンも警戒を解く。すると、カヲルはニヤッと笑い、一瞬で彼との間合いを詰めて、プレートを奪い取った。
「あ……」
「駄目だよ、ゴン君。この試験では仲間同士でプレートを奪い合う事だってあるんだから」
ニコッと笑い、カヲルはプレートをゴンに渡す。
「生憎、僕のターゲットは君じゃないよ」
そう言い、カヲルはゴンに自分の獲物の番号の書かれたカードを見せる。
「気をつけなよ。此処で隙を見せると、すぐにプレートを奪われると覚悟しといた方が良い」
そう言い、チラッとカヲルは笑みを浮かべて背後を見る。ゴンは、恥ずかしそうにプレートを受け取って、胸につけた。
「ねぇ、カヲルは俺の獲物がカヲルだって思わないの?」
「僕が君の獲物なら、僕が出て来た時に気を緩めない筈だよ?」
「あ、そっか」
言われてゴンは苦笑いを浮かべると、自分の獲物のカードを見せた。
「ヒソカ……か」
「うん………どうしよう?」
困った様子で尋ねて来るゴンに、カヲルは考える。協力を申し出ても良いのだが、ゴンの性格上、絶対に断ると踏んだカヲル。かと言って自分がヒソカからプレートを奪い、それを渡しても拒否するだろう。
ふと考えていると、カヲルはハッとなってゴンの腕を掴む。
「え?」
「あの木の上に登ってごらん」
言われて、ゴンはカヲルと共に木の上を登る。そして、静かにするよう言われ、カヲルの指差した方向を見ると、そこには茂みの中に潜んでいる2人の受験生を見つけた。
「え? 何で分かったの?」
小声でカヲルに尋ねると、彼はフッと笑って答える。
「野生の勘さ」
「ほんと?」
「さぁ? それより見てご覧」
カヲルは、はぐらかしながらもゴンに受験生達を見るよう指す。一人は弓矢を持って、前の受験生を狙っている。もう一人は、剣を持って辺りを警戒しながら進んでいる。
すると、弓矢を持つ受験生は気付かれないよう矢を向ける。
「(撃つ!)」
そうゴンが思った瞬間、矢が放たれ、剣を持つ受験生に向かって飛んで行く。が、相手はそれを紙一重で避ける。
「くっ!」
腕を掠めて表情を苦くするが、笑みを浮かべた。
「しくじった!?」
「いや……」
カヲルは、笑みを浮かべたまま弓を持っている受験生に目を向ける。彼は笑みを浮かべ、立ち上がると、突然、剣を持った受験生が苦しそうな表情を浮かべ、倒れた。
「あの矢に毒でも塗ってあったようだね」
受験生は相手からプレートを奪うと、何処かへ去って行った。ゴクッとつばを飲むゴンにカヲルは尋ねる。
「どうだった?」
「凄い……」
完全に気配を絶って近づき、機を伺う。やられた方も撃つ瞬間の僅かな殺気を感じて避ける。が、撃った方はそれすら計算に入れ、矢に薬を塗って万全を期していた。
「これが……狩り(ハント)!」
「今のを見て、ヒソカからプレートを奪うヒントになったかい?」
「うん。気付かれないよう、隙を見て奪えば俺でもヒソカからプレートを奪える!」
表情を輝かせて言うゴンに、カヲルは笑って頷いた。
その頃、アスカは高い岩の上に立ってアクアを探していた。そこは島を一望出来る場所で、相手を探し易い。
「(隠れてコソコソするなんて性に合わないしね……)」
キョロキョロとアクアを探していると、その時、何かが飛んで来る音がした。ハッとなって飛び降りるアスカ。すると、今まで彼女が立っていた岩場が崩れた。
森の中に着地すると、前方を睨み付ける。すると、茂みの間から、彼女の探していた人物がやって来た。
「アクア……!」
「フフ……見〜っけ。私の獲物♪」
「え? アンタの獲物ってアタシ?」
「ええ」
頷いて、アクアは96と書かれたカードを見せる。アスカは、舌打ちすると自分のカードを見せる。それを見て、アクアは驚いた表情を一瞬、浮かべたがすぐに笑顔になった。
「あらあら、何とまぁ……面白いわ。今度は私に一撃与えれるから試して上げる」
「見せてやろうじゃない」
グッと腰を落として構えるアスカ。アクアはニヤァッと不気味に笑うと、両の掌を広げ、両手を下ろした構えを取った。
「私の期待……裏切らないでよ」
〜レス返し〜
エセ・デスマスク様
おお、地方妖怪マグロ。
レイは素直に自分の気持ちを表しますが、アスカはツンデレです。照れ隠しは強化系(フィンクスみたいな)ならではです。
カレーは是非とも海軍カレーで!
ちなみに3人の念能力のレベルは、“円”を使えるぐらいまでです。“堅”は持続力が無いので、余り使えません。使えても精々、5分ぐらいです。アスカは強化系なので例外で少し弱いですが“硬”も使えます。
希望様
まぁ、クロロと同レベルぐらいと思って貰って結構です。マチは私も好きですね〜。いや、シズクとパクノダもキャラ的に好きですけどね。
髑髏の甲冑様
レイは全裸だったけど、当時の彼女に恥ずかしい、なんて気持ちは無かったでしょうし、アスカは病院での事は知りませんしね〜。切り札があんのに自覚してないって事で。いずれシンジと再会して、彼が思わず当時の事を喋ってしまって……って言うのが書けたら良いです。
アスカは単独行動、カヲルはゴンと行動(珍しいコンビ)、レイはクラピカとレオリオと行動でしょうかね。
ショッカーの手下様
マチって団長が好きっぽい。と、言うか慕っている? ので、シンジは第一、年下っぽいですしね〜。
久我様
あ〜……レイの炎ですが私も書いてた当初は違和感感じました。裏話しますと、レイが操作系と決めた後、『戦闘向きで且つ応用が利いてるもの』と考えていると、たまたま煙草吸ってたらモラウの“紫煙拳【ディープ・パープル】”が浮かびました。念能力じゃ、かなり応用力のある能力で、そこでふと“ワンピース”のスモーカーとエースを思い出し、煙は出てるから炎にしよう、って事でレイの能力を決めました。
ちなみにカヲルの罠を防いでいたのは念です。
アスカとレイ。容姿も性格も正反対の2人です。ヒソカの性格診断的には遠いから相性悪いみたいですが、極端に正反対過ぎなので親友と呼んでも良いと思います。