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「狩人の世界に現れし福音者達  第11話(エヴァ+HUNTER×HUNTER)」

ルイス (2006-07-25 23:03)
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「ちょっと髪、焦げたわ……」

 少し焦げた髪の先端を摩りながら、レイが戻って来る。

「レイ、アンタさ〜……少しは加減しなさいよ」

 彼女の異様な炎の攻撃に戦慄しているゴン達を他所に、アスカとレイは普通どおりに会話する。

「ま、何にしてもお疲れ」

 そう言い、アスカが手を上げると、レイはパァンと彼女の手をハイタッチした。


「次は僕の番だ。手錠を外してくれ」

 試練官の一人が手錠を外すよう言うと、手錠が外れ、フードを脱ぐと痩せこけた青年の姿が露になる。

「さて、次は誰が行く?」

「俺が行くよ!」

 有無を言わさずゴンが名乗り出た。

「ホントに大丈夫か?」

「うん」

「さっきの俺の話聞いたらビビると思うけどな〜。レイの相手だって火炎放射器持ってたし」

「でも次の人、そんなに強そうじゃないよ」

「まーな」

 それでも犯罪者なのだが、ちっとも危機感を感じていないゴンに、クラピカは笑顔を引き攣らせる。キルアは、ジッと対戦相手を見て言った。

「うん、安心しろ。肉体派じゃねーや、あいつは」

 すると闘技場までの橋が伸び、ゴンは駆け足で向かう。闘技場では青年――連続爆弾まで懲役149年の――セドカンとゴンが対峙する。

「さて、ご覧のように僕は体力に余り自信が無い。単純な殴り合いや跳んだり走ったりは苦手なんだけどな」

 セドカンの言葉に、ゴンが「え〜」と声を上げる。

「俺は、そっちの方が良いな。あんまり考えたりすんの、得意じゃないし」

「やっぱり? そんな2人の為に単純なゲームを考えてみたよ」

 そう言うと、セドカンは二本の蝋燭を取り出した。

「同時に蝋燭に火をともし、先に火の消えた方の負け。どう?」

「うん! 分かり易い! その勝負で良いよ!」

「OK……それじゃ」

 セドカンは蝋燭を握っている手を離し、蝋燭全体を見せた。すると、二本の蝋燭は長さが違っていた。その蝋燭に他の六人は眉を顰める。

「どっちの蝋燭が良いか、決めてくれ。長い蝋燭なら○を、短い方なら×を押すこと。多数決で決めて貰おう」

 六人は、これが罠だと確信する。普通だったら長い方を取るだろう……普通ならだ。

「長い方は、きっと仕掛けがしてあるに違いねーぜ!!」

「確かにそう考えるのが普通だ。だが、その裏をかいて短い方に仕掛けてあるのかも」

「しかし、そんなこと言ってたら……」

「そう、キリが無い。不自由な二択というやつだ」

 明らかに条件の異なる選択を迫られた時、人は警戒心が働き、即断出来なくなってしまう。更に、その選択が失敗した時の心理的ダメージは通常の二択の時より、数段、大きいものとなる。裏の裏をかいて、更に裏をかいて……そうやって思考の迷宮に入ってしまうのだ。

「ゆっくり決めて貰って良いよ」

 セドカンは床に座って笑みを浮かべながら言った。

「多数決とは言っても、此処では相談も自由だし、僕達の方はタップリ時間があるからね」

「くそ……どっちにする!?」

 時間が減って行くことに焦るレオリオに、クラピカはゴンに言った。

「ゴン!! お前が決めるんだ! お前の決定に私達が従う! 良い方を選べ」

 あれこれと詮索するより、ゴンの野生の勘を信じるとクラピカは結論した。

「俺が決めて良いの? 分かった。じゃ、長い方ね」

 特に考えず、ゴンはアッサリと長い方を選択した。その余りに異様な即断に、皆「まさか……」と思う。

「長い蝋燭で良いんだね?」

「だって長い方が長時間、火が消えないに決まってるじゃん」

「「「「「「(やっぱり……)」」」」」」

 特に考えず、すんなりと信じ切ったゴンに、六人は呆れた。が、ゴンに従うと言った以上、六人は○のボタンを押した。

「OK」

 セドカンは立ち上がり、長い蝋燭を投げ渡す。

「君が長い方、僕が短い方……それじゃ同時に火をつけよう」

 二人は、それぞれ闘技場の四隅にある燭台の前に移動し、火をつける。

「レイ、な〜んか引っ掛かんない?」

「ええ……」

 アスカとレイは、余裕の笑みを浮かべているセドカンを見てハッとなると顔を見合わせた。

「ゲームスタート!」

 同時に火がつけられ、ゲームが始まる。

「っとと」

 下から吹き上げる風に、火が揺れるのでゴンは風に当たらないよう気をつける。

「あの蝋燭、普通ならどれぐらいで燃え尽きるかな?」

「5,6時間ってところじゃないか」

「違う! 罠よ!」

「「「「!?」」」」

 アスカが叫ぶと、クラピカ達が彼女に注目する。その時、ゴンの蝋燭の火の勢いが一気に強くなり、溶け出した。

「見ろよ、ゴンの蝋燭! 明らかに奴よりも炎の勢いがデカいぜ!」

 恐らく軸の中に火薬か何かを仕込んであるとレオリオが推測する。このままでは、5,6時間どことか2,3分も持たないだろう。

「くそ!! やっぱり長い方に罠が仕掛けてあったのか!」

「違う! “両方”よ!」

「何?」

 アスカがそう叫ぶと、クラピカはハッとなる。

「そうか! 不自由な二択はカモフラージュか!」

「どういう事だよ!?」

「彼は蝋燭を4本、持っていたのよ」

 激昂するレオリオにレイが説明した。最初から蝋燭を4本用意し、ゴンがどちらを選んでも罠の仕掛けてある蝋燭を渡すつもりだった。彼らは不自由な二択により、他に蝋燭を持っている、という所まで頭が回らなかったのだ。

「ち! テメー、卑怯だぞ!!」

「僕は“二本しか持っていない”なんて一言も言っていないよ」

 野次を飛ばすレオリオに対し、セドカンは笑みを浮かべながら返す。が、ゴンはジッと炎を見ていると、ニカッと笑い、蝋燭を地面に置いた。

「火の勢いが強いって事は、ちょっとの風じゃ消えないって事だね」

「え?」

 セドカンがキョトン、となる瞬間にゴンは彼との間合いつめ、蝋燭にフッと息を吹きかけた。セドカンの蝋燭の火は、あっという間に消えてしまう。

「勝ち!!」

 余りの速さに対応出来なかったセドカン。ゴンはVサインして笑った。

「っしゃあ! これで2勝だぜ! 後は俺とクラピカが勝って前進だ!」

 ゴンの勝利にレオリオが叫ぶと、アスカとキルアが人知れず青筋を浮かべた。

「良し、次は私が行こう」

 次の勝負にクラピカが名乗り上げる一方で、相手側では戻って来たセドカンを試練官の一人が吐き捨てた。

「ちっ、バカが。道具に頼って小細工するからら。人を騙すには体張らなきゃ駄目だぜ。見てな」

 そう言い、手錠が外れ、フードを脱ぐと、傷だらけの顔に補聴器をつけ、更に頭皮が剥き出しになっている頭の、ベンドット以上に筋肉の塊の男の姿が露になった。そして左胸には、19のハートマークがある。

「げ……すげぇ、顔と体」

「……気持ち悪い」

 試練官の風貌を見て、驚くレオリオに対し、アスカは口を押さえて見ないように後ろの方へ移動した。

 クラピカと試練官は橋を渡り、中央で対峙する。すると、試練官がトントン、と左胸を小突いた。

「今までに19人殺してきたが、19って数はキリが悪くてイライラしてたんだ。嬉しいぜ」

「チィ……今度は連続殺人犯か」

 ククク、と低く笑う試練官に冷や汗を垂らしているレオリオに対し、ゴン、キルア、レイ、そして対峙しているクラピカは特に動揺していない。

「俺は命のやり取りじゃなけりゃ興奮出来ねぇ。半端な勝負は受けねぇぜ……血を!! 臓物を!! 苦痛を!!」

「良いだろう」

 アッサリと了承するクラピカに試練官は一瞬、「え?」となる。

「勝負の方法を決めてくれ。それに従おう」

「ほ、ほう。良い度胸だな(てっきり躊躇すると思ったが、予想外だな)」

 試練官はクラピカの態度に戸惑いながらも勝負方法を提案する。

「それならば相手が負けを認めるか、死ぬかするまで戦うデスマッチを俺も提案する。ただし……たとえ、お前が途中で負けを宣言しても、そこで俺が攻撃をやめるなんて望みは持たない事だな」

「分かった、それで良い。始めようか」

 上着を脱いで、アッサリと勝負を受け入れるクラピカに、試練官は冷や汗を垂らす。試練官は、この顔であそこまで迫られ、尚且つデスマッチをしてビビらないクラピカに愕然となるが、そこでハッとなる。

「待ちな。言い忘れた事がある。武器を持つ事は禁止する! 純粋な殴り合いで勝負だ! 何しろ、こっちは試練官と言っても、所詮は囚人だ。凶器の類は持つ事を禁止されている」

「先程の老婆は持っていたようだが?」

「奴は持ってたんではなく、体の中に仕込んでいたんだ。体に火炎放射器を溶接で無理やりくっつけ、腕の中にチューブを通してた……つまり武器を体内に仕込むのは……アリだ」

 そこで試練官はニヤァッと笑う。

「なるほど……分かった」

 クラピカは納得すると、アッサリと持っていた全ての武器を捨てる。

「これで良いか?」

「あ、うむ(やっぱり武器を隠し持っていたか。しかし、それに頼っている様子は無いし、まさか、相当腕に自信があるのか? いや、そんな風には見えん)」

 恐らくは引っ込みがつかなくなり、引けるに引けなくなったのだろうと試練官は、クラピカを恐怖を想像できないボンクラだと決め付ける。

「(ま、こういう奴の為に俺には、取っておきの切り札がある。右腕と背中にな)」

 それを見れば、ギブアップするに決まっている。そう試練官は思い、笑みを浮かべた。

「おいおい、大丈夫かよクラピカは。ありゃ、相当ヤバそーな奴だぜ」

「(何処がヤバそうなんだか。俺から見りゃ、あんなのバレバレなんだけどな)」

 相手は人を殺すどころか、殴る度胸すらないハッタリ野郎だとキルアは見抜いていた。

「ひゃお!(見せてやるぜ……俺の切り札!)」

 戦いが始まると同時に試練官はジャンプして、右拳を振り下ろす。クラピカは紙一重で避けるが、床石が粉々に砕け散った。

「(床を素手で砕きやがった!?)」

「アスカ……貴女の攻撃力とどっちが上……」

「あの顔、いや〜!」

「……………」

 未だに試練官を凝視しようとしないアスカに、レイは黙って向き直った。

 クラピカは飛び散る岩石から身を守りながら、あるものを見つけた。それは試練官の背中にある12本足の蜘蛛の刺青だった。

「12本の足を持つ蜘蛛の刺青!? あれはまさか……」

 それを見たレオリオも驚愕し、レイは眉を顰める。

「くくく……(ハンターを目指す者なら誰でも耳にした事はあるだろう。史上最凶と悪名高い盗賊団……幻影旅団メンバーの証!!)」

 幻影旅団……A級の賞金首であり、熟練ハンターすら手を出せない。そして、クラピカの同胞を皆殺しにした連中でもある。

「(体内に鋼鉄を仕込み、岩をも砕くこの腕の威力と、旅団の証!! この2つを同時に見せられて戦意を喪失しない者など皆無!)」

 もっとも腕の方は痛いので一日一発が限度である。

「くくく。どうした? 声も出ないか? 俺様は旅団四天王の一人、マジタニ。一発目は挨拶代わりだ」

 試練官――マジタニは低く笑いながら、クラピカに忠告する。

「負けを認めるなら今だぜ。今なら、まだ俺様もそんなに……!?」

 そこでマジタニは目を大きく見開く。

「うっ……」

「…………」

 目の前にいるクラピカの瞳が、レイやカヲルよりも赤く染まっていた。その異様な瞳の輝きにマジタニは退いてしまう。

「ひっ……な、何だお前!?」

 するとクラピカの姿が消え、次の瞬間、マジタニの頬を掴んでいた。ゴキゴキと頬骨が砕ける音がし、クラピカはギュッと右拳を握り締める。

「わっ、たっ、ま、待て! 分かった俺のま……」

 マジタニが言い切る前に、クラピカの拳が顔面に決まり、地面に叩き付けられた。力なく崩れ落ちていくマジタニに、クラピカは静かに語る。

「3つ……忠告しよう。1つ、本当の旅団の証にはクモの中に団員ナンバーが刻まれている。2つ、奴らは殺した人間の数なんかいちいち数えない。3つ、二度と旅団の名を語らぬ事だ。さもないと私がお前を殺す」

 既に聞こえていないマジタニに向かって、クラピカは赤い瞳で見下して言った。


「大丈夫か、クラピカ?」

 戻って来るクラピカに対し、レオリオが恐る恐る声をかける。

「ああ、私に怪我は無い」

「つ〜か、お前に近づいても大丈夫か?」

「分かっていたんだがな……一目見て大した使い手でないことくらい」

 瞳の色が元に戻って、クラピカが嘆息して言った。

「あの刺青も理性では偽物だと分かっていた。しかし、あのクモを見た途端、目の前が真っ赤になって……というか、実は普通のクモを見かけただけでも逆上して性格が変わってしまうんだ」

 クラピカの告白に、ゴンとレオリオは笑顔を引き攣らせた。クラピカは膝を抱えて座り込み、静かに笑う。

「フッ……しかしまぁ、それはまだ私の中で怒りが失われていないという意味では、寧ろ喜ぶべきなのかもしれんな」

 ゴンとレオリオは今後、クラピカにクモは見せないよう誓うのだった。

「全く、クソの役にも立たねーな」

 一方、試練官側ではマジタニを見て、残る試練官の一人が吐き捨てた。整形失敗の顔を利用し、詐欺と脅迫でコツコツと累積して懲役108年のマジタニには怒れるクラピカに敵う筈も無かった。

「お前ら分かってるんだろうな? もう後がねーんだぞ」

 相手は3勝。これで次に勝ては此処の通過が決まってしまう。ベンドットの言葉に、試練官の一人が答えた。

「任せといて。アタシに考えがあるわ」


「良し! 俺で決めるぜ!!」

 レオリオが強気な態度で名乗り上げ、ビシッとマジタニを指差した。

「さっさとそいつを片付けて次のヤローを出しな!!」

「うふふ、それは出来ないわね」

 が、それに対し試練官の一人――女っぽい――が意味ありげな笑いを浮かべて言って来た。

「まだ決着が付いてないわよ」

「何ぃ〜? 決着が付いていない!? どういう事だ!?」

 レオリオの言葉に、試練官は無言で闘技場に移動するとしゃがんでマジタニに触れる。

「気絶しているだけだ。勝負はデスマッチ!! 一方が負けを宣言するか死ぬかまで戦うと決めた筈。彼は、まだ生きているし、負けも宣言していない」

「ちっ! 屁理屈抜かしやがって! クラピカ! あの死に損ないに引導を渡して来いよ!!」

「断る」

 レオリオがそう叫んだが、クラピカが即答した。

「なっ……」

「勝負はもう付いていた。あの時、既に戦意を失っていた相手を私は殴ってしまった。これ以上、敗者に鞭打つようなマネはゴメンだ」

「ざけんなよ!! じゃ、一体どうする気だ!?」

「彼に任せる。彼が目覚めれば自ずと答えが出る筈。私から何かるす気は無い!」

 頑なにマジタニになにもする気は無いクラピカに対し、レオリオは更に怒るが、そこへキルアが話しかけた。

「ねぇ、アンタが嫌なら俺、殺ってやるよ。人殺したことないんでしょ? 怖いの?」

「…………殺しを怖い、怖くないで考えた事は無い。それにこれは一対一の勝負。手出しは無用だ」

「あ、なるほどね。とにかくさ、団体行動なんだからワガママは良くないぜ」

「お! たまには良いこと言うじゃねぇか! もっと言ったれ! 他人の迷惑考えろよな!」

「悪いが意見を変えるつもりは無い」

 頑固なクラピカに対し、レオリオの怒りは頂点に達する。

「よーっし!! そんなら多数決で勝負だ!! トドメを刺すなら○、刺さないなら×を押す事!!」

 と、叫ぶが掲示板は何の反応もしない。

「何でつかねーんだよ!?」

「俺達が勝手にやってるからじゃないの?」

「良し!! なら挙手で決めようぜ!! トドメを刺すに賛成の人!!」

 ハ〜イ、とレオリオだけが勢い良く手を上げるか、他の六人は上げなかった。

「この裏切り者が〜〜!!」

「だって無意味じゃん。意見、変えないって言ってるし」

「確かに相手の人も『俺の負け』って言いかけたしさ。起きるまで待とうよ」

「強制は良くねーぜ。人それぞれ事情や信念があるからな」

「クラピカ次第だし〜。アタシらがとやかく言う事じゃないわよ」

「無回答」

「くそっ! わ〜ったよ!! 勝手にやっとけ!!」

 他の五人の意見を聞いて、レオリオは不貞腐れ、廊下の隅でブツブツと愚痴たれる。その様子を見て、トンパは薄ら笑いを浮かべた。

「(バカが。完全に術中にはまってやがる。多数決のトリックにな)」

 多数決のトリック……多数決は、昨日今日出会った人間が何かを決める時、非常に便利と思えるがそうではない。決を取ると言う事は一見して個人の意志を尊重しているように見える。が、それは逆に少数派の意志を問答無用で抹殺する、という事である。

 もしも、この状況で連続して少数派に回り――この場合はレオリオ――、ちっとも自分の意志が通らない事で起こるのは疎外感や不満、怒りである。

「(俺達7人が何年来の友人というならまだしも――アスカとレイを除く――、元々試験を受けに来たライバル同士だ。半ば強制的に他人の意見に従わされ、その結果、窮地に追い込まれるなど最も馬鹿馬鹿しくて我慢ならないこと。それ故に出来る限り、行動は個々に任せるべき! しかし、レオリオは多数決の道という試験のムードに飲まれた! その結果、やらなくてもいい場面で多数決を自ら持ち出して来た!!)」

 多数決において、絶対にやってはならない事が二つある。

 “相談”と“挙手”である。

 7人が意見を出し合い、最終的な結論を導く相談という方法は、合理的かつ有効に思えるが、残り60時間という限られた時間の中、もし意見が真っ二つに分かれてしまったら? 乱闘までなり、選んだ道が間違っていたら? 相談とは、時間がたっぷりあって初めて有効な手段なのだ。

 そして挙手による多数決は最大の愚行である。匿名性が失われ、自分に反対する者が誰だか分かるのに、少数派には意見すら許されない最悪のシステムである。もしも、常に特定の人物と意見が対立し、常に片方だけが意志を抹殺されたら、それが続けば必ず集団は決裂する。

「(此処での決裂は即ち、7人全員の失格を意味する。決裂はまさに時間の問題だな)」

 トンパは笑みを浮かべ、個々に分かれた6人を見るのだった。


 その頃、ヒソカとアクアは暗い通路を歩いていた。

「ヒソカ〜、いい加減ダルくなって来たから、おんぶしてよ〜」

「くっくっく……僕で良ければ是非」

「…………やっぱ遠慮するわ」

「残念」

 気楽な会話を交わしながら、幾つもの部屋がある中、歩いていくと、暗闇の中で座り込んでいる人物がいた。

「待ってたぜ、ヒソカ」

 それは、両頬に大きな傷跡を持った男性だった。

「今年は試練官ではなく、ただの復讐者としてな」

「ヒソカ、あんたコイツに何かしたの?」

「ん〜……誰だっけ?」

 ヒソカの言葉に舌打ちし、試練官は立ち上がると曲刀を取り出した。

「去年の試験以来、貴様を殺す事だけを考えてきた。この傷の恨み……今日こそ晴らす!!」

 そして、試練官はその曲刀を回し出した。それを見て、ヒソカが思い出したように「あぁ」と指を鳴らした。

「余り進歩してないみたいだけど?」

「くくく……此処からだ!」

 試練官は笑い、もう一本、曲刀を出して回す。

「(二刀流……か)」

 が、試練官は二本の曲刀を上に投げると、更に二本の曲刀を取り出した。

「無限四刀流……喰らえ!!」

 試練官はヒソカに向かって二本の曲刀を投げて来る。ヒソカは軽やかに避けると、試練官が間合いを詰めてきて持っている曲刀で彼の肩を切り裂いた。一方、飛んでいる二本の曲刀をアクアはアッサリと避けている。

「くくく! 上下左右正面背後! あらゆる角度から無数の刃が貴様を切り刻む!! この無限攻撃をかわす事は不可能だ!! ははは、苦痛にもがいてのた打ち回れ!! そして死ね!!」

 再び二本の曲刀をヒソカに放つ試練官。が、ヒソカは飛んで来た曲刀をアッサリと受け止めてしまった。

「!?」

「確かに避けるのは難しそう。なら止めちゃえば良いんだ」

「(バカな……俺は、飛んで来る曲刀を受けれるようになるまで半年かかったんだぞ!)」

 驚愕する試練官に対し、ヒソカは更に曲刀を二本、試練官のように回す。

「何だ、思ったより簡単なんだ」

「ヒソカ、パ〜ス」

 ふとアクアが言って来たので、ヒソカは曲刀を一本、投げる。彼女もアッサリと曲刀を受け止め、回す。

「ふ〜ん。曲芸にしちゃつまんないわね」

 アクアにまでやられ、試練官は声を無くしてしまう。

「無駄な努力、ご苦労様」

「ぐっ……くそおおおおおおおお!!!」

「バイバ〜イ」

 試練官が叫ぶと、次の瞬間、ヒソカが曲刀で首を撥ね、アクアの投げた曲刀が額に突き刺さった。

 その部屋を出ると、幾つもの扉のある広い部屋に出た。

<44番ヒソカ、1番アクア! 3次試験通過1号2号! 所要時間6時間17分!!>

 ヒソカとアクアは、僅か6時間でクリアーしてしまった。


 〜レス返し〜
 累々様
 私も左の法則は、不自由な二択に繋がると思います。ハンター世界って、ちょっと冷酷な人が多いのでレイも例に漏れずです。尚、カヲルは未だに罠と戦っています。


 ショッカーの手下様
 やっぱ、ボス系だと特質系でしょうかね。カリスマ性とかありそうだし。


 髑髏の甲冑様
 早く念能力が明らかになってアスカ達の能力も明らかにしていきたいです。
 何か、凄い面白いアイディアですね! やってみようかと思います!
 シンジの系統は特質系……どんな能力にしようか現在思案中ですのでお楽しみに!


 もこもこ様
 今回、こじつけました。無理ありますかね? 私もまだまだ未熟でした。ご指摘ありがとうございます。

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