「側面は窓一つないただの壁ね」
第三次試験、制限時間72時間以内に塔を降りるという課題に、受験生達は皆、どうやってこの塔を降りようか試行錯誤していた。ゴン、レオリオ、クラピカ、キルア、アスカ、レイ、カヲルの7人は、屋上の端から塔の真下を見下ろしていた。
「此処から降りるなんざ、自殺行為だぜ」
「普通の人間ならな」
その時、彼らの後ろから声をかける人物がいた。受験番号86番の筋肉質の男性だった。男性は余裕の笑みを浮かべ、塔の壁に足をかけて降り始めた。
「このくらいの取っ掛かりがあれば、一流のロッククライマーなら難なくクリア出来るぜ」
そう言い、男性はどんどん調子良く降りて行く。
「うわ、すげ〜。もうあんなに降りてるよ」
「あ……あれ」
皆、感心していたが、その時、ゴンが何かに気付いた。
「ふふん。どうやら三次試験の合格第一号は俺様のようだな」
この調子だと今日中に降りる事が出来る。そう思い、笑みを浮かべていた男性だったが、突然、羽音が聞こえて来た。何かと思い振り返ると、そこには、数体の怪鳥が飛んで来ていた。
「うわあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
恐怖で悲鳴を上げる男性だったが、怪鳥に掴まり、何処かへと連れて行かれた。
「外壁を伝うのは無理みてーだな」
「きっと何処かに下に通じる扉がある筈だ」
クラピカの言うように、他の受験生達も下へ続く扉を探している。彼らは、アスカとレイ、ゴンとキルア、クラピカとレオリオ、カヲルは単独で入り口を探し始めた。
しばらく探していると、クラピカがある事に気付いた。
「ん?」
「どうした?」
「人数が減っている」
「!」
言われてレオリオは今、屋上にいる人数を数え始めた。
「21,22……23人!?」
「半数近くが既に此処から脱出した事になるな」
「くそっ! いつの間に……」
「この人数の中、消えた全員がこっそりと同じルートを使って降りたとは考え辛い」
きっと幾つも隠し扉があるとクラピカが推測すると、ゴンとキルアがやって来た。
「レオリオ、クラピカ!」
「ゴン?」
「そこで隠し扉を見つけたよ」
「!?」
「でも今、迷ってるんだ」
扉を見つけたのなら、さっさと入れば良いのに、迷っていると言うゴンの言葉に、「は?」と声を上げた。
「何を迷う事なんてあるんだ?」
「どれにしようかと思って」
そうゴンが言うと、少し離れた所に移動し、それぞれゴンとキルアが発見した扉の上に立つ。
「五つの隠し扉……こんな近くに密集してるのが如何にも胡散臭いぜ」
「レイとアスカが見つけたんだよ。最初は七つあったんだけど、二人とも先に行っちまったぜ」
「で、一つの扉に入れるのは一人だけ」
まずアスカが入り、レイが同じ扉に入ろうとしたが、ロックされて開かなくなってしまったそうだ。結果、皆、バラバラの道を行かなければならないという事だ。
「確かに、この幅じゃ一回につき一人が潜るので精一杯だな」
レオリオが軽く押してみると、幅50cmぐらいの床板が外れる。二人同時に降りるのは無理そうだった。
「ゴンと俺はこの中の一つを選ぶ事に決めた」
「罠にかかっても恨みっこなし。レオリオとクラピカはどうする?」
問われ、二人は笑みを浮かべて答えた。
「いいだろ! 運も実力の内ってな」
「最初に誰が選ぶ?」
ゴン達は不公平が無いよう、ジャンケンで扉を選ぶ事にした。結果、四人が別々の扉の上に立つ。
「1,2の3で全員、行こうぜ。此処で一旦お別れだ……地上でまた会おうぜ」
「ああ」
レオリオの言葉に三人は頷きあい、1,2の3の合図でジャンプし、それぞれ扉を潜った。
「はい、チェック」
「…………」
「これでアタシの3勝ね」
ずどんっ!!×4
「ん?」
チェスをしていたアスカとレイは、ふと天井が開いて何かが落ちて来たので振り向くと、そこにはゴン、キルア、クラピカ、そして倒れているレオリオの姿があった。
「はい、これで6人、と」
ゴン達4人は、顔を見合わせると苦笑いを浮かべる。
「くそ〜〜! 5つの扉の何処を選んでも同じ部屋に下りるようになってやがるのかよ!」
「そういう事よ」
「アスカ……ずっと此処にいたのか? 何で出発しないんだ?」
既に一時間近く経過しているのに、進んでいないアスカとレイにクラピカが質問すると、彼女はクイッと壁の方を指差した。ゴン達は、そちらを見ると、そこには台座の上に5つの腕時計と壁にモニターがあった。
『此処は多数決の道。君達7人は、此処からゴールまでの道程を多数決で乗り越えなければならない』
「7人……?」
指示を見て、クラピカが自分達とアスカ、レイを見る。」
「そこのタイマー付けて」
アスカの言うように台座には残り時間を表示している“○”と“×”のスイッチのあるタイマーが置いてある。ゴン達は、それを手首につけていく。
「もしかしてあと一人……誰かがこの部屋に降りて来るまで我々は此処から動けないんじゃないか?」
<その通り>
クラピカの言葉に答えるように、スピーカーが響いた。
<このタワーには幾通りにもルートが用意されており、それぞれクリア条件が異なるのだ。そこは多数決の道。たった一人の我が侭は決して通らない! 互いの協力が絶対必要となる難コースである。それでは諸君の健闘を祈る>
「だってさ」
「くそぉ、待つしかねーか」
ドサッと座り込んでレオリオは愚痴たれた。
「クラピカ〜、あんたチェスの相手してくんない? レイじゃつまんないのよ」
アスカが携帯用のチェス盤を見せてクラピカを誘う。彼も7人目が来るまで特にする事もないので相手をする事にした。
「ところでずっと気になってたのだが、何でお前たちもカヲルも顔が傷だらけなんだ?」
「…………聞かないで」
フッと辛そうな笑みを浮かべるアスカに、クラピカは首を傾げるのだった。
「ふむ」
その頃、カヲルは別のルートを通っていた。
『此処は眠らずの道。数多の罠が君を襲う。君には休む暇など与えられない』
「中々、デンジャラスなコースのようだね〜」
ツゥと冷や汗を垂らすと、ゴゴゴゴゴ、と音がして来た。嫌な予感がして、振り返ると大きな棘付きの鉄球が転がって来た。カヲルは笑顔を浮かべながら、全速力で走り出す。
「お約束だね〜。こんな罠、退屈してしまうよ。ベタって事さ」
一人、意味不明な事をほざきながらカヲルは先へ進む。が、転がっている分、鉄球の方が速い。カヲルは振り返ると、鉄球に向かって手を広げた。
すると通路を塞ぐように光の壁が出現する。鉄球は見事、その壁に止められ、停止する。
「さて、これでゆっくりと………」
そう言い振り返り、しばらく歩いているとベキベキ、と何かが壊れる音がして再び鉄球が転がりだした。
「…………本当、休ませてくれないようだね」
フッと笑みを浮かべ、カヲルは再び走り出したのであった。
「う゛〜……あれから二時間か」
体をウズウズさせながらレオリオはタイマーを見て呟く。
「もしかして、もう全員、別のルートで行っちまったんじゃねぇの? 今頃、上に残ってるのは、よっぽどのマヌケだぜ」
余り気が長い方ではないレオリオは、待っている事にイライラして来ているようだ。その時、コツンと天井で音がしたので、皆、顔を上げる。そして、コツコツと音がして、カコンと石板が外れ、天井の一部が開くと誰かが落ちて来た。
「あん? 何だ此処は?」
「「「「「「トンパ……」」」」」」
落ちて来たのは受験番号16番のトンパだった。
〜レス返し〜
佳代様
ハンターの能力は念能力です。ちなみに系統だけ言うなら、アスカは強化系、レイは操作系、カヲルは変化系です。性格的にアスカは放出系にしようか迷いました。レイはマイペースですし、カヲルは気まぐれで嘘吐きっぽい、というかモロそうだと思います。