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「魔除けの鐘を鳴らす者達 第13話 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-07-22 09:52)
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「ドレイク様。ゲア・ガリングとクの国のオ−ラバトラ−隊との編成作業が完了しました」

両頬に傷を持つ男ショット=ウェポンが数刻前に合流を果たした同盟国との部隊編成が書かれた書類を持ち、執務室に入ってきた。

「そうか、ごくろうだったな」

書類を受け取るとドレイクは部下の男に労いの言葉をかけ、ペラペラと分厚い束の書類に目を通していく。

「ふむ、是ならば直にでも戦いを開始できるな。解っておるなショット。あの艦はグラン・ガランと行動を供にしておる。だが、ゴラオンと合流する前ならば我等の方が優位なのだ」

先日、地上界から召喚したロンド・ベル隊のア−ガマは、アの国のオ−ラバトラ−追跡部隊を全滅させて逃亡に成功した。
決して侮っていた訳ではない。二個中隊もの戦力を向わせたのだ。
統合戦闘能力で見れば連邦軍のジェガン300機にも匹敵する。
それが、ものの見事に返り討ちにあった。

「はい。ですが先の戦闘で判明した通り、我が軍のオ−ラバトラ−隊が弱かった訳では在りません。まさか、あのアムロ=レイに匹敵するパイロットと、遂順する力量をもった者達があれ程存在するとは、予想もしていませんでした。が、彼等以外はオ−ラバトラ−になんら有効な手を出せませんでした」


ウィル・ウィプスから脱出に成功したブライト達を捕獲する為に送り込んだ、最初のオ−ラバトラ−隊は一機のMSに蹴散らされた。
エ−スにのみ許されたエンブレムをマ−キングした『白き流星』アムロ=レイが駆るスペリオルガンダムがブライト達の救援信号を受けるなりア−ガマを飛び出したのだ。

並のMSの光学兵器などオ−ラバリアの前では何等役に立たない物なのだが、スペリオルガンダムの大型ビ−ムカノンは苦もなく貫いた。
是はMS性能も然ることながら搭乗しているパイロットの技量も大きい。
学習型人口知能ALCEIのバックアップを受けているアムロの反応速度と正確無比な射撃能力は、ドレイク兵達の能力を大幅に凌駕した。

いくら強力なバリアでも駆逐艦の主砲に匹敵するエネルギ−を正面から受ければ破られる。
通常なら、それほどの大出力兵器に捕捉される事などありえない。
オ−ラバトラ−のなによりの特長は小型な機体と高速機動戦闘用モビルア−マ−を越える機動力にあるのだ。
艦砲射撃など意識さえしてれば命中される等ありえない。

だが、攻撃を百発百中に当ててくるスペリオルガンダム。それも機体とほぼ同じだけの大きさを持つ大型ビ−ムカノンから当ててくる。
バスケットボ−ルで自分達のゴ−ル下から相手のゴ−ルに狙い違わずスリ−ポイントシュ−トを入れているようなものだ。
反則と思える程の命中率と攻撃力を誇るスペリオルガンダムの前に先発オ−ラバトラ−隊は次々と落とされていった。

連邦軍の最精鋭部隊と知っていたが、まさか一機のMSに手玉にとらわれるとはショットは思いもよらなかったが、スペリオルガンダムにマ−カされているエンブレムに気付くと納得もした。
本人が望まずとも、戦場であれほどの姿を見せれば英雄と呼ばれる訳だ。
噂に違わぬ。いや噂以上のニュ−タイプの力にショットは戦慄した。

戦力の逐次投入は戦線を拡大させるだけで愚者の戦法だ。
戦闘を最も早期解決させるにはコストを度外視しても、投入できる戦力を一機に戦場に送り出す手が有効だ。

相手はMSパイロットなら知らぬ者はいない伝説のガンダム乗り。
だが、どんなに優れたパイロットでも克服できぬ欠点はある。
機体のエネルギ−と弾丸は無限にある訳ではない。ようは補給できなければ最強のニュ−タイプといえど何時かは倒せる。
それにあれ程の高出力光学兵器の弾数には限りがある。

それらを見越したショットは可能な限り現時点で投入できる戦力を出した。
二個大隊ものオ−ラバトラ−隊をだ。
しかし、アムロが稼いだ時間でア−ガマに戻ったクワトロ=バジ−ナ達は直に自分達の搭乗機に乗り込むと次々と発進した。
金色の外装で目立つ百式改やSRXチ−ム。それにジャイアント・ロボとグルンガスト弐式がアムロを援護した。

結果、それ等の機体は大した被害を受けることなく戦闘は終結したが、エマ=シ−ンのガンダムMk−兇筌リスチ−ナ=マッケンジ−のNT−1アレックスなど、オ−ラバトラ−にまるで歯が立たず撃墜された。
他にもリック・ディアスのアポリ−&ロベルトコンビは大破。
リ・ガズィのケ−ラ=スゥは小破。
Gディフェンサ−のレコア=ロンドは中破とドレイク軍のオ−ラバトラ−にやられている。

いずれもアムロ達が補給の為に戦線を離れた穴埋めをしている間に落とされた。
彼等だって並の連邦軍兵士よりも優れているのだが、通常威力の光学兵器を尽く弾くオ−ラバリアと高速機動戦闘用MAを凌駕する機動性の前に敗北を味わされた。
幸いにも脱出装置が働き死者はでなかったが、オ−ラバトラ−の有効性を見せるには充分だった。


「そうだ。いくら強かろうと我が軍の物量で押しつぶせばよい」

ここにきて、ロンド・ベル隊の戦力を分割した事が裏目にでた。
妖魔帝国との戦いで圧倒的な物量差を埋めれたのは、力量差だけでなく補給時に抜ける時に開く戦線の穴を埋めるだけの戦力がロンド・ベル隊にもあったからだ。
それだけではない、オ−ラバトラ−は妖魔帝国のドロ−メより何十倍も強敵なのも挙げられる。


「おっしゃる通りです。オ−ラバトラ−はガンダムタイプのMSすら凌げると証明されました。あとは敵に回復の余裕を与えず、攻め続ければ自ずと勝利の女神は此方に微笑みます」

脅威なのはアムロ=レイのスペリオルガンダムとクワトロ=バジ−ナの百式改。
あと数機の特機のみ。
ガンダムMk−兇筌▲譽奪スを圧倒した事にショットは確固たる自信を持てた。
前回の戦いで、ア−ガマは戦線の穴埋めをする2軍パイロット達を倒された。
次の戦いで前回以上の戦力を送り続けられたら、戦線は崩壊する。
あとは武器弾薬とエネルギ−が尽きるまで攻め続ければよいだけだ。
それを可能とするだけの戦力を保持している。

「わかっておろうショット。取り込めなかった以上、あの戦力は我等にとって危険すぎる。奴等がシ−ラ達と本格的に手を組む前に終わらせるのだ」

それに地上に上がった時に、どれだけオ−ラバトラ−が通用するのかを試すには絶好の相手でもある。
なにせ地上でもトップレベルの戦闘部隊なのだ。

「はっ。その為の準備は整っております。あとは閣下の号令を待つのみです」

ドレイクがショットの言葉に深く肯く。此方の戦闘準備は整った。
戦いを優位に進めるには常に主導権を握り、相手に体制を立て直す余裕を与えないことにある。
ナの国の旗艦グラン・カランとロンド・ベル隊のア−ガマ。
まともにぶつかれば、かなりの損害をもたらす事は必至だが、バイストン・ウェルと地上界を手に入れるには避けては通れない道だ。
全軍に発進命令を出そうとした、ちょうどその時だった。
ウィル・ウィプスに衝撃が走ったのは。巨艦である船が大きく揺らいだ。
船底から、とんでもない勢いで純白の光が隔壁を突き破りながら飛び出した。

「あ、あれは!」

執務室はウィル・ウィプスの艦橋より高い場所に設けられており艦の全容を概観できる。
衝撃が収まるとショットは直に窓に張り付いて外を見た。
そこには甲板の上に降り立った、純白の輝きを魅せる闇が存在した。
ショットがウィル・ウィプスの外壁を壊し内側から出現した純白の光に目を奪われる。
光の正体が何か見当が付いたショットが声を荒げて叫んだ。

あの光が飛び出した下の船底には秘密の格納庫がある。
師である彼女が誕生させた全てのオ−ラバトラ−の原型が静かに眠っている墓所。
開発段階ではシン(原罪)と呼ばれた最凶のオ−ラバトラ−。
聖戦士と呼ばれる程の者を幾人も試しに乗せてみたが、まともに動かす所か、起動させる事すら不可能だった眠れる凶龍。

ショウ=ザマやトッド=ギネスに黒騎士は試した事はないが、三ヶ月前に召喚した地上人。
聖戦士能力を保持するジェリル=クチビとフェイ=チンカ。それにアレン=ベレディなど起動させようとコクピットに座っただけで根こそぎオ−ラ力を吸われ失神した。
最近になって、ようやくベットの上から起き上がれる様になるまで回復したが、衰弱死する寸前までオ−ラ力を奪われた。
オ−ラバトラ−を起動させるには、最初に起爆剤として搭乗者のオ−ラ力を機体に送り込むのだが、あの機体は限りなく貪欲なまでにオ−ラ力を求むのだ。
あの時の収穫は、並の聖戦士のオ−ラ力の総量では10秒も持たない事が判明した位だ。

「霧島博士のサ−バイン!!!何者だ!?あの化物を起動させれる者が居たのか!?」

待ち望んだ、規格外の力の持ち主が純白の装甲を持つオリジナルオ−ラバトラ−『サ−バイン』に搭乗しているのは間違いない。
ショット=ウェポンの師である霧島マイ博士が手掛けた最凶にして最悪の機動兵器。
開発段階で予想されたスペックだけでも、信じられない結果を叩き出した。
だが、あの機体は兵器としては欠陥機だ。
万人向けではない。訓練した者が扱えば一定の効果をもたらすのが、普及される兵器の第一条件。
けどアレは兵士が兵器を決めるのではなく。機体が乗り手を決めるのだ。
熟練された腕のいいテストパイロットを必要とする試作機のような物だ。
デ−タ取りを目的に開発された試作機としての役割は充分以上に果たした。

ショットが是ほどまで早くオ−ラバトラ−を量産化できたのはアレを参考にして、落とせるスペックを削ぎ落として安定性を重視したからだ。

「ショット!どう言う事だ?アレを操れる者は居なかったのではないか?」

開発費用を出したスポンサ−としてドレイクも当然あの機体。サ−バインの事は知っている。
強大な力を秘めているが、およそ人が扱える代物では無いことも。

「わかりません。一体どこの誰がアレを・・・・・・・」

予想外の出来事に混乱して、主君に口を濁しながら理解不能と言う。
無線でサ−バインに連絡を取れとも、配下の者に捕獲しろと命令する間もなく新たな動きがあった。

目が光に慣れてきて、はっきりとその純白の機体が姿を晒した。
カブトムシを思わせる頭部はダンバインと酷似している。
当然だ。開発された3機のダンバインはサ−バインをスペックダウンさせてショットが造り出したのだ。いわば兄弟機だ。
細部には所々に黄金の装飾が施されていた。
額と各部に紋様が刻まれおり、祭典で使われる宝剣のようでもあった。
神話に登場する横暴な主神に逆らう巨神族と見る人々に思わせる、幻想的なシルエットと雰囲気を発していた。

背部のオ−ラ−コンバ−タ−から、昆虫の羽根のような透明な翼が大きく広がる。
それに合わせるように全身から放たれる純白のオ−ラ光が輝きを増す。
サ−バインの両膝が飛び上がる為の力を蓄えるかのように僅かに下がる。
次の瞬間、圧縮したバネを解放するようにサ−バインは上空に向い飛び立った。
一路、天の海を越えた先にある水の国のウォ・ランドルに行く為に。


第13話 スピリチュアルワ−ルド


そこは物理法則が存在しない世界だった。白と黒のモノクロだけで構成されているような景色が延々と続いている。
その世界は通常の視覚では認知できない存在が数多く存在している。
だが、彼はこの世界では珍しく形を構成していた。
人。少年の姿をしている。

その彼の前に、深く透き通った紫の光が現れたのは突然の出来事であった。
彼は驚かない。
知っている色の光だった。

「おや、また君か。よほど君とボクは波長が合うんだろう」

街中で偶然再会した仲のよかった学生時代の友人に声をかけるように、彼は紫の光に話し掛けた。


朦朧とする意識が定まらない状態の少年。碇シンジのぼやけている聴覚器官にかつて聞いた事がある声が入ってきた。
身体に現実感がない。宇宙にて無重力状態で居る時よりも心がざわつく。
そうだろう。此処はアストラル体のみが来る事ができる次元の狭間。
シャッフル・ル−ン・ブランクを手に入れる為に訪れた、通常世界とは因果律が異なる世界だ。

「くっ!頭が・・・・・痛い。なぁ!こ、此処はスピリチュアルワ−ルドか!?」

意識が急速に回復するにつれシンジは、自分の精神が飛ばされた場所に驚愕した。
精霊界とも呼ばれる高位次元生命体が存在する異界だ。

「ああ、その通りだよ。シンジ君。また君に会えるとは思わなかったが今度は何をしたんだい。今更、白の太陽である此処に用はない筈だが?」

靄のようなアストラル体がシンジの身体に姿を変える。
ここは意思力がモロに反映する場所でもある。無気力の者や意思の弱い存在が此処に訪れれば有無を言わさずに消滅する。
ようは気合の世界だ。常に気力130以上を保っていなければならない。

「もしかしてバビル君かい?いや、スピリチュアルワ−ルドならバビル君が居て当然か・・・・・」

身体の姿を保つ事によって五感もクリアになる。
フィルタ−を通して聞いていた音声が、障害を外されたようにハッキリと聞こえる。
自分に話しかけた声の持ち主をシンジは見る。

年齢は十代後半の少年の姿をしているが、瞳に映る光は驚くほど深みがある。
百歳やそこら生きた程度では醸し出せない色を持っている。
まるで極寒の海の底に沈む碧玉と、澄み切った大空を表す青玉を綺麗に混じり合わせたような独特な蒼色だ。
何故か詰襟の学生服に白いマントを羽織っている。しかも文句の付けようがない位に似合っているの。

「ひさしぶりだね。シンジ君。此処は時間の概念があやふやで良く分からないが短くは無い程度に刻は経っていると思が、どうなんだい?」

「うん。僕が此処で光と闇の紋章を手に入れてからアッチでは一年と半年は過ぎたよ」

デビルガンダム事件の時にDG細胞に侵された赤毛の幼馴染を救う為に、このスピリチュアルワ−ルドで魂を賭けた試練の末に、歴史の狭間に消えていた六番目のシャッフルの紋章を獲得したのだ。
その時、色々と助言してくれたのが、このスピリチュアルワ−ルドに長年居ると本人は語るバビル君だ。
旧知の友に再会の喜びを伝えると、シンジは此処に来るまでの経緯を話した。

「良く分からないな。悪いが記憶を読ませてもらうよ。心を開いてくれないかい?」

確かに叔母である霧島マイが残した純白のオ−ラバトラ−に乗り込み、起動させるまでは意識を保っていたが、そこから先は覚えていない。
何故、高次元世界であるスピリチュアルワ−ルドに飛ばされたか分からないとシンジは黙考するバビルに説明した。
シンジの話だけでは要領を得ないから、記憶を見せてくれとバビルが提案した。
このスピリチュアルワ−ルドに長年存在する以上、彼が只者ではない事ぐらいシンジも分かっている。
人が異能と呼ぶ力。俗に言う超能力を彼は操れるのだ。
是からシンジにテレパシ−を行い、本人も自覚していない埋もれた記憶を呼び起こす。

「分かった。ちょっと待って・・・・・」

驚きはしない。前回訪れた時もこうして彼はシンジの記憶の海を見たのだ。
断りを入れたのは強力無比の力を誇る彼も、この意志力が全てを左右する世界で実体化できる程の実力を持っている者に無理やり精神感応を行うと最悪両者とも廃人と化す恐れがあるからだ。


『心力瞑想』


シンジが自分自身に暗示をかけるように独特のニュアンスで呟いた。
心力瞑想。兄弟子のドモン=カッシュが会得した明鏡止水に匹敵する不破の技だ。
右手に宿したシャッフル・ル−ン・ブランクが淡い紫水晶のような輝きを魅せる。
光と闇の紋章が輝いた時、シンジは己の前に立ち塞がる敵の弱点をなんとなく探れる。そのお蔭で第3使徒サキエルの弱点であるコアも見破った。
実際のところ紋章の力をバックアップにして極限まで精神集中することで未来視を読んでいるのだ。
簡単に言えば予知だ。数秒先の未来しか読めないが、コンマ何秒の世界で戦うシンジにとって是以上に便利な技はない。
欠点は精神消耗が激しいので連続では使えない。試したことは無いが数回以上連続使用すれば精神が焼き切れるだろう。

この技のもう一つの利点は意志力で己の思考を完全にガ−ドして、敵に自分の動きを読ませない事にある。
本気で精神防御すればトップレベルのニュ−タイプの先読みすら上回る。

意識的に精神防御の技を使えると言うことは、逆に精神防御を弛める事もできる。
防御低下は意味がないように思えるが、精神攻撃を喰らい精神ダメ−ジを負った時、外部から治療を受けるのに防御が硬いままだと効果が薄くなる。
その為にわざと柔らかくする方法を身につけた。

「いいよ」

無防備状態にまで精神防御を弛めたシンジがバビルに準備は済んだと告げた。
よほど相手を信用していないと、この状態を見せない。
いま下手に精神攻撃を受ければ成す術も無く廃人となる恐れがある。
味方。と呼んでいいか分からないが、目の前の彼は信用するに値する人物だ。

それに彼が、そんな小細工を労する必要性を感じられない。
今ここで彼と本気で戦ったとしてもシンジに勝機はない。
その実力差は武闘家としての本能で感じる。レベルが一回りや二回りでは埋め切れない程に離れている。
彼がシンジに悪意を持っているのなら正面から叩き潰すだけで事が済む。

だが、そのような気配は無尽も感じられない。純粋に興味を持ってシンジに助言を与えてくれる。
なんにしろ、始めてこのスピリチュアルワ−ルドに訪れた時。彼の助言がなければ紋章を得る前に死んでいた事はシンジ自身が一番分かっている。
言わば彼は命の恩人なのだ。恩人に対する誠意は怠るつもりはない。

「アクセス・・・・・・」

白きマントを羽織った彼が短く呟いた。
精神波長を少年に合わせる。
無条件で信用している訳ではないが、覚悟を持った潔い態度で心を開く少年に好感を持つ。
テレパシ−能力で他人の記憶を見るのは、他者が思うように便利なモノではない。
相手の精神にダイブするのは、スキュ−バダイビングに似ている。
南海の珊瑚礁のような精神の海もあれば、極海の冷たい海のような精神もある。
触れていて心地よい精神もあれば、吐き気を催すドス黒く汚れた精神もある。
少年の内面精神は、南海の珊瑚礁をすべて紫水晶に置き換えたような精神世界を構築していた。
珊瑚礁の形を取っているが一つ、一つが本人も完全に覚えていない記憶の柱。
その幾つかに触れて少年の過去を顧みる。

「面白い。擦り切れても可笑しくない挫折と苦悩を、身を持って受けながら、人にたいして絶望していない。過去に溺れず。現在を直視して。未来を諦めない。シンジ君。君は興味深いよ」

流石、神の異を借り、人の威を狩る一族の末裔であるイカリ神児(シンジ)
太陽の勇者の血脈と同じ、現代まで残った希少な破邪の念を血に秘めた一族。
強念を開けるべき扉を失って久しいが、潜在的な破邪の意の強さは相当なものだ。

「純白たる闇の力を手にしたのか。・・・・・しかも、これは応龍の竜玉を動力源に使っている?」

シンジが自覚していない記憶から原因を引き当てた。
スピリチュアルワ−ルドにシンジのアストラル体を飛ばされた理由は是だろう。


遥かな昔。四霊の超機人たる真龍王機は、敵対する百邪のなかでも三大巨頭と呼ばれる程の力を持った邪神ヴォルクルスとの戦いで、竜玉を奪われる羽目になった。
辛くも邪神ヴォルクルスに勝利し地球内部の奥深くに封印するものの、封印式を展開する時に奪われた竜玉も次元の割れ目に落ちて失ってしまった。

応龍の竜玉はイデに匹敵する無限力を発生させる超大型五行器の鍵。
鍵としての役割だけでなくとも強大無比なエネルギ−を宿している。
竜玉を失った真龍王機は本来の力を発揮する事ができなくなり、その後地球に到来した人造神の前に膝を屈する事になったのだ。

次元の割れ目に落ちた竜玉は流れ流れて、魂の故郷と呼ばれるバイストン・ウェルに流れついた。
どういう経緯で霧島マイ博士が竜玉を手に入れたのか分からないが、狂科学者の名に恥じぬ行動をとった。
開発中のサ−バインのメイン動力源とは別に竜玉を組み込んだのだ。
永久機関の五行器と言え、邪神ヴォルクルス奪われる際に途方も無い邪気を浴びた竜玉は曇ってしまった。
曇りを払い本来の力を発揮させるのは強力で膨大な魂力を必要とした。

サ−バインが今まで動かせなかった理由は、メイン動力源に送る筈の起爆剤であるオ−ラ力を、全て曇りを払おうとする竜玉に吸われていたからだ。
オ−ラ力は生体エネルギ−に分別される。その根源は生ある魂の力だ。

超古代。先史代文明の知的生命体の残留思念集合体。それも負の霊力のみで構成された『まつろわぬ者達』の一角を占める邪神の穢れを払うには、清浄たる魂力が膨大に必要となる。

個人のみで浄化を達成するのは非常に困難だ。
人類史上類を見ない程の力の持ち主。バビルでさえ邪神ヴォルクルスの邪気を祓うのは命懸けになるだろう。
だが、レベルが数ランク落ちるシンジは邪気を祓うのに成功した。


「ルドラの雷を扱えるようになったのか?確かにアレは浄化。いや聖華能力があるから強弱に関係なく負の霊力を祓うことができるが・・・・・」

光と闇の紋章の真なる力。破邪の雷。
他の五つの紋章が霊長を守護する役割を持っているのに対して、光と闇の紋章は生ある者の天敵である『まつろわぬ者達』を倒す為に存在する。
強大な力を誇る邪悪を滅ぼす為に、極限までに鍛えられた概念武装なのだ。光と闇の紋章は。

「ボクとあの子が陸と海と空の力を持っているように、シンジ君も手に入れたんだね。光と闇と人の力を」

彼も自身の能力に覚醒した時に手にした三つの力だ。それに類する三つの武具が少年の手に収まっても不思議ではない。
少年が宿している紋章が欲したのだ。遠くない未来で必ず対峙する、破壊神に邪神や虚神といった霊長の敵に対抗する剣を。

光はネオ・シャイニングガンダム
闇はサ−バイン
そして人としての力はエヴァンゲリオン初号機

「しかし、竜玉か。アクラヴの奴。きっと悔しがるな」

久しぶりに、本当に久しぶりにククク・・・・・と彼は喉を鳴らして苦笑する。
かつて刃を交わした白のス−ツ姿の似非紳士の事を思い出す。
コテンパンにやっつけられたアクラヴが、彼から逃げ出す時に負け犬の遠吠えのように「竜玉さえあれば君に負けなかった」とほざいていた。

竜の宝玉は長年輝きを曇らしていた邪気を全て祓われただけでなく、少年の魂の色。
深く透き通った紫色に染まっている。
五行器として従来のエネルギ−を生み出せるようになったが、これでは本来の持ち主でさえ使えない。少年用に塗り替えられたようなものだ。

少年がスピリチュアルワ−ルドに飛ばされたのは、邪気を祓ったが勢いあまって竜玉を塗り変えた時の反動であろう。
竜玉の表面は邪気に覆われ力を外側に発揮できなかったが、内側では蓄積された五行のエネルギ−が渦巻いていたのだ。
火事が起きた時に室内で閉じ込められた炎が起こすバックファイヤをまともに受けたようなものだ。

その時のショックで少年のアストラル体は身体から弾き飛ばされ、波長が合う彼の元に引き寄せられたと仮説を立てると納得がいく。

「なるほど。そう言う事だったのか」

彼は探った記憶と思慮深い高見で、真実に近いと思われる答えを導き出した。

「おや?」

どれくらいの間、少年の精神世界にダイブしていたか分からないが、気付くと少年の身体の輪郭がぼやけてきている。
現実世界に存在する肉のある実体の意識が戻りそうな兆候だ。

「そうか、現実世界に帰るんだね」

感慨深く呟く。彼の実体は未だバベルの塔で眠っている。
現実世界には事実上干渉できない状態だ。彼の部下達は彼が目指す最終目標の為、其々が自らの考えで独自に動いている。
やり方は厭わない。どちらにしろ彼の最終目標が達成できなければ、この世界は・・・・・
いや、限りなく近いようで限りなく遠い幾千幾万の平行世界の未来も危ういのだ。

全てを無に返そうとするヤツを倒さなければ。

ヤツは、この次元時間空に存在する。
彼がヤツの存在を知ったのは偶然だったのか必然だったのか不明だが、知ってしまった以上。手をこまねいてる訳にはいかない。
その為に彼は、GR計画を立案した。ヤツを倒す為に三段階に分かれたプロジェクトを。
犠牲や手段は黙認している。
不治の疫病に侵された者が全体の9割を越え、その9割を見捨てなくては残りの健全たる一割も死に至るのであれば、苦悩しても最終的に彼は9割の者を捨てる。
捨てなければ全滅だ。そこには人道も道徳も必要ない。冷たい計算式だけが現実世界を救う。

「ルドラの雷を使える者は、光と闇の皇としてヤツと必ず戦うだろう。覚えておくがいい。シンジ君。バラルの神子(巫女)の他に火。水。風。地の巫女が君の力を高めてくれる。見つけるんだ彼女達を」

破邪の雷の片鱗を扱える程度ではヤツは倒せない。
だが、光と闇と人の三つの力を一つにして巫女達と契約をすれば遥かな高みの域にまで届くだろう。
それでもヤツと一対一では勝てないかもしれないが、トドメの一撃を放つようにはなれる。
なにも一人でヤツと戦う必要はない。
いずれ星や人を守ろうと何百の剣が君と共に、破滅に立ち向かうだろう。

「ボクはヤツが倒れるまでGR計画を止めるつもりはない。だが、もしも君がヤツの下に先に辿り付いたのなら、ボクも一緒にヤツに挑もう」

アストラル体が意志力で身体を表していたが、輪郭がぼやけている時点で意識の半分は現実世界に戻されている。
彼の忠告も夢の中で聞いたように曖昧となっているだろう。

だが、それでも彼は約束した。碇シンジが先に辿り着けば自分も一振りの剣となり共に戦うと。
白きマントを羽織った少年の言葉を聞きどけると同時に、透き通った紫色のアストラル体に戻ると、訪れた時と同様に不意に消える。
スピリチュアルワ−ルドから元いた世界に戻ったのだ。

「約束だ。シンジ君・・・・・」


あとがき

この世界での白いス−ツの似非紳士は、大いなる炎との戦いに負けて眠りについている状態です。


レス返し

羅陰様> サイフラッシュほど反則的に便利な技ではないです。移動後攻撃は不可で気力130は必要です。
月光蝶の応用システムは組み込まれています。
リュウセイは熱血二枚目半鈍感ヤロ−を継続してもらいます。トップ部隊の彼女と出会った時にゴスロリ少女が、どんな反応をするのか、その時の楽しみと言うことで。

草薙様> 動力ならS2機関に匹敵するパワ−を秘めています。

シセン様> 親分率いる遊撃部隊は裏方に近い活動をする予定です。

ぼくと様> ロストア−ツに近いものは、確かにシンジは使えますが、あそこまで反則的に強い主人公ではないです。

アルテミス様> ミ・フェラリオの爆弾発言はミ・フェラリオ特有のうっかりスキル。エ・フェラリオに昇格すれば解消・・・・・・されといいなスキルです。

樹海様> ORではマサキ達が倒していますが、αでは第3次のラスト直前で登場していますので、この世界でも生存はしています。積極的に介入してくるかは分かりませんが。

15様> 一時的な合流はしても基本的に別行動する予定です極東支部独立遊撃隊の面々は。

左京様> 百式改単体でもゼ−タ並に使えた機体だったんですけどね。

イスピン様> ゲスト的に登場させるかもしれません。

D様> OVA版だとオ−ラバトラ−が異様にでかく感じますね。設定だとビルバインとサ−バインの大きさに変わりはないんですが。

ななし様> オリジナルキャラを登場させるより設定が決められている主人公候補の方が役割をはっきりとできるので登場させやすいです。

ATK51様> 覇者と王者では役割は似ていますが、政策ややり方が違うので一概にどちらがいいのかは個人的による所が大きいですね。
汚染物質分解型ナノマシンの応用理論は純白たる闇の剣にも組み込まれています。
どこで活用するのかは不明ですが、自己再生能力なら真ゲッタ−並にあります。

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