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「これが私の生きる道!運命編10のオマケ編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-07-21 20:56/2006-07-22 06:41)
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(三月中旬のある日曜日の早朝、クライン邸内)

子供が生まれてから、ほぼ半月が過ぎた。
生まれたばかりの赤ん坊とういうものは、二〜三
時間おきに泣き出して大変なものなのだが、俺も
協力してミルクをあげたり、おむつを交換してあ
げたりしていた。
クライン邸内には、ラクスや母さんや使用人達が
いて、交代で世話をしているので、俺の出番はな
いはずなのだが、軍人ゆえに泣き声が聞こえると
、すぐに目を覚ましてベビーベッドに直行してい
たのだ。

 「おっ、ヨシヒサはミルクを飲むのが早いな。
  おっと、ゲップをさせるんだったな」

俺がミルクを飲ませていると、隣でサクラに同じ
ようにミルクを飲ませていた母さんが、意外そう
な声で俺にこう言った。 

 「お父さんは役立たずだったけど、お前は意外
  と起用なんだね。感心したよ」

 「その辺に、ぬかりはないさ。ちゃんと、本を
  熟読していたんだから」

 「その本のタイトルは何なんだい?」

 「(いきなりシングルファーザーになっても大
  丈夫。子育て大百科)という本だよ」

 「感心しないタイトルだね」

 「タイトルが必死だから、詳しく書いてあって
  さ。それに、他人から紹介された本だから」

 「誰から紹介されたんだい?」

 「クルーゼ司令から・・・」

 「誰にも話さないでおくよ・・・」

クルーゼ司令の家庭生活には謎が多いので、これ
以上、話題にしない事を両者で確認する。

 「ヨシヒサは、お前に似てきたね。赤ん坊の成
  長は早いから」

 「そうだな。俺似の良い男になりそうだな」

 「ラクスの血も入っているから、ヨシヒロより
  も良い男になるね」
 
 「大きなお世話だ・・・」

 「サクラは、ラクス似だね。この子は美人にな
  るよ。男にモテそうだね」

母さんの言葉を聞いた俺にある想像が浮かんでく
る。
五歳くらいになったサクラがお花畑で遊んでいて
、俺を見つけた瞬間に、「お父さぁーーーん」と
手を振りながら俺を呼ぶ光景や、学校の入学式や
卒業式に参加したり、旅行や買い物に出かけたり
する光景が俺の頭の中を巡り、無意識に顔をにや
けさせ始める。

 「何だい?気持ち悪いね」

だが、そんな楽しい時間も終わり、年頃になった
サクラが、「デートに出かけてくるね」と言って
、俺を置いていく光景や、家にどこの馬の骨とも
わからない男を彼氏だと言って連れてくる光景や
、最後にはウェディングドレスを着て、「おとう
さん。今までお世話になりました」と挨拶をされ
る光景が思い浮かび、目から涙が流れてきた。
我ながら、恐ろしいまでの想像力である。

 「何を泣いてるんだい?気持ち悪い・・・」

 「サクラがお嫁に行ってしまう・・・」

 「そりゃあ、いつかは行くでしょうよ。いつま
  でも一人の方が心配よ」

 「それは、そうなんだけど・・・」

確かに、レナ少佐のようになってしまったら、取
り返しのつかない事態になってしまうので、それ
は嫌なのだが、なるべく嫁に行って欲しくない気
持ちも大きかったのだ。
父親とは、複雑なものである。

 「まだ、二十年も先の話だろうに・・・」

 「プラントは、結婚年齢が若いんだよ。ラクス
  は十六歳で俺と結婚した。もう、十六年しか
  ない・・・」

 「とにかく、まだ先の話だから。それで、ヨシ
  ヒサはどうなのよ?」

 「男は元気に遊びまわれば良いんだ。うん」

 「何が、うんよ・・・。お前、独身の時に大分
  無茶をしたらしいね。三日に一度は朝帰りで
  、その度に隣にいた女性が違っていたそうじ
  ゃないか。更に、友達といかがわしいお店に
  出入りしていたそうだね。まあ、ラクスと付
  き合い出してから、そういう事はないような
  ので、怒りはしないけどね」

ヨシヒサとサクラにゲップを吐かせてから、おむ
つを交換してベビーベッドに寝かせ終わったとこ
ろで、母さんに過去を暴かれてしまい、心臓の鼓
動がどんどんと速くなっていく。
まさか、俺の若かりし日々の悪行が母親にバレて
しまうとは・・・・・・。
一番知られたくない人に、知られてしまったのだ

 「お母様。どうして、お知りになったのですか
  ?」

 「ラクスに教えて貰ったのよ」

 「ラクス経由ね・・・」

俺は、ラクスに全てを握られている点については
、もう既に諦めていた。
基本的には自由にさせてくれるし、趣味等にも口
を出してこないので、理想の奥さんだと思ってい
たからだ。

 「お前の事を調べていたらしいね。可愛い顔を
  していても、実行力はあるようだし」

 「何で調べたんだろう?」

 「浮気防止だってさ。その過程で、過去の悪行
  が全てバレたようだね」

過去の悪行とは、アカデミー時代にミゲルやハイ
ネとナンパを繰り返し、おねえちゃんのいるお店
に繰り出し、朝帰りをすることが度々で、長期休
暇の時には、旅行に出かけてアバンチュール(死
語)を求めている女性を探し出す事に精を出して
いた事を指すのであろう。
あれを全て調べられていたとは、我が妻ながら恐
ろしい女である。
 
 「若かりし日の暴走は、誰にだってあるじゃな
  いか。というか、俺はまだ若いな」

 「お父さんはモテなかったからね。その話を聞
  いたら大変だね。あと、お前を優しいお兄さ
  んだと思っているレイナやカナもね」

母さんは、俺の心臓を痛めつけるばかりでなく、
俺を優しいお兄さんだと思っている、レイナとカ
ナにも暴露すると脅しをかけてきた。
こう言う時の母さんは、何か願い事がある事が多
い。
伊達に十年以上も付き合っていないのだ。

 「お母様。何がお望みですか?」

 「○ィトンの新作のバックが欲しいんだよね。
  私も歳を取ったし、そろそろ贅沢をしても良
  いような気がするんだよ」

 「親父に買って貰ったら?」

 「はぁーーー。レイナとカナが、結婚するとな
  ると色々と物入りでね。特に、レイナはもう
  妊娠しているから、すぐに式を挙げなければ
  ならないからね。そんな余裕はないんだよ」

 「じゃあ、あきらめたら?人間、あきらめが肝
  心だよ」

 「そうだね。バックは諦めて、ヨシヒロの若か
  りし日々の思い出を家に帰ったら、みんなに
  披露して楽しむ事にするよ」

 「汚いぞ・・・。そのバックいくらだ?」

 「限定品でね。二万アースダラーで完全予約品
  らしい」

 「我が母親ながら悪魔だ。あんた」

シン争奪戦の配当金が、ちょうどそのくらい残っ
ていたが、母はその事を知っているのだろうか?

 「ありがとうね。何か催促してしまったようで
  悪いわね」

 「催促じゃなくて、脅迫だ・・・」

こうして、母さんに弱みを握られてしまった俺は
、高級ブランドのバックをプレゼントする羽目に
なってしまい、シン争奪戦の配当金は、完全にな
くなってしまうのであった。
更にもう一つ付け加えると、母さんは俺にバック
を買って貰った事を黙っていて、ラクスとお義父
さんに色々とプレゼントを貰っていたらしい。
多分、孫の世話にきてくれた母さんに対する、感
謝の気持ちでプレゼントされたものであるだろう
し、クライン家の財力に比べれば、チップのよう
な金額なのであろうが、カザマ家の人間で一番強
かなのは、母さんである事が実感できた瞬間であ
った。

 


(その日の午前十時頃、クライン邸玄関)

 「あの・・・。本当に出かけてもよろしいので
  しょうか?」

 「遠慮せずに行ってきなさい。子供の事ばかり
  で疲れているだろうから、羽を伸ばした方が
  良いわよ。私もお義母さんの協力で、定期的
  に一人で遊びに出かけていたからね。家に篭
  りきりだと、育児ノイローゼになってしまう
  よ。友達に会いに行くんだろう?」

 「はい」

 「じゃあ、行った行った」

 「ありがとうございます。お義母様。では、遠
  慮なく」

ラクスは母さんに勧められて、友達からの誘いで
買い物に出かけるらしく、一人でクライン邸をあ
とにした。

 「さて、シーゲルさんはザラ邸に出掛けてしま
  ったから、残りはあのバカ息子のみか・・・
  」

ラクスを送り、赤ん坊の世話をお手伝いさんと協
力して終えた母さんは、俺の部屋に入ってくるな
り、話し掛けてきた。

 「何をしているんだい?」

 「サクラとヨシヒサの映像を親父に送っている
  。写真のみは嫌だそうだ。更に、それに気が
  付かない俺はアホだそうな」

 「戦地にいるとはいえ、言いたい放題だね」

親父に映像を送ってから、他の人達にも新しい写
真を送っていると、執事のセバスが客の来訪を教
えてくれる。
お金持ちの家なので、執事がいる事には昔から驚
かなかったのだが、名前がセバスチャン(略して
セバス)である事に、驚いてしまった事を記憶し
ていた。
更に、初老でロマンスグレーという容姿で、ラク
スが生まれる前から執事をしていたらしい。
まさに、執事としてコーディネートされたような
人で、俺的には、大ヒットな人であった。

 「お客さん?」

 「はい。ニコル様とカナ様です」

 「えっ!あいつら、プラントにいたのか?」

 「私は聞いてないね」

 「とにかく、行こうか」

俺と母さんで玄関に行くと、本当にニコルとカナ
がお祝いを持って立っていた。

 「いつプラントに上がったんだ?」

 「今着いたばかりよ。ニコルの予定も詰まって
  いないから」

 「カナは無職だからな」

 「働かずに食える身分だからね」

レイナと共に、それなりに優秀な成績で卒業した
カナではあったが、就職もせずにニコルのマネー
ジャーのような事をしていた。
マネージャーと言っても、正式なものではないの
で、給料もなく身分的には無職とも言えるし、ニ
コルとその内に結婚するであろうから、家事手伝
いとも言えたのだ。

 「ヨシさん。おめでとうございます」

 「ありがとうな、ニコル」

 「兄貴、赤ちゃんを見せてよ」

 「ああ。いいよ」

俺と母さんがクライン邸内に二人を案内しようと
すると、更に一台の車が見えてきた。

 「セバス、あの車には誰が乗っているんだ?」

 「楠木重工プラント支社長の立花ユリカ様と、
  そのお連れの方々です」

 「あの四人か・・・」

玄関横のインカムでセバスを呼び出すと、即座に
答えが返ってきた。

 「カザマ君、元気してた?」

 「お久しぶりですわね」

 「お祝いを持って参上したぜ。あれ?泉叔母さ
  んと香奈もいたんだ」

 「本当だ」

 「あら、元気そうね」

車から降りてきたのは、ユリカ、エミ、義成兄さ
ん、義則の他に、予想に反してマリューさんの姿
も見えた。

 「マリューさん、元気してました?」

 「まあね」

 「でも、妊娠してます?」

 「ええ、そうよ」

俺の見立て通り、マリューさんは妊娠しているよ
うであった。

 「ギリギリまで粘るけど、もう少しで産休に入
  らないとね」
 
 「その間、あの二匹の怪獣の世話は、義成兄さ
  んと義則がするんですか?」

 「ええとね・・・」

 「こら!怪獣とは何よ!失礼よ!」

 「そうですわ!」

マリューさんは、上司の事なので明確な発言を避
けたが、俺の言葉を聞いたユリカとエミが文句を
言ってくる。

 「それは、部長補佐である俺と義則の職務だな
  。ラミアス部長の代わりに俺達が頑張るのさ
  」

二人は、階級的には係長クラスらしいが、ユリカ
とエミの命令で、マリューさんが産休に入った時
に仕事に支障が出ないように、様々な事をやらさ
れているらしい。
若い会社とはいえ、日本企業なので、若い二人が
大きな職権を持つ事に反感を覚える年輩の社員も
いるらしいのだが、外国の支社で若い社員しかい
ない事や、成功して大きな利益を上げているので
、引きずりおろす理由もなく、特に大きな問題に
はなっていないらしい。
更に、文句を言っている社員に楠木会長が、「い
つでも部長にしてやろう。その代わり、ユリカと
エミの補佐をしっかりと頼むぞ」と言われてしま
って、それからは、誰も文句を言わなくなったら
しい。

 「おお!大したものだね。お二人さん」

 「俺と同じ歳の義弘が、指揮官なんてやってい
  るからな。俺達も頑張らないと」

義成兄さんと義則は、俺に多少のライバル心を抱
いているらしい。
だが、俺は特殊なケースであり、楠木重工の同期
の中で一番の出世株である二人は、間違いなく将
来の役員候補と言えた。
正直、そちらの方が俺には羨ましかったのだ。
ただ、相当なマゾでないと勤まらない地位ではあ
ったが・・・。

 「とにかく、入ってくれよ。サクラとヨシヒサ
  は可愛いぞ」

俺はにこやかな表情で、みんなを赤ちゃんのいる
部屋まで案内するのであった。


 「わぁーーー。この女の子可愛い。髪がピンク
  色だ」

 「男の子は、カザマ君に似ていますわね」

 「サクラはラクスによく似てるね。兄貴」

 「本当ですね。この子も歌手になるのでしょう
  か?」

 「私も早く生みたいわね」

ユリカ、エミ、カナ、ニコル、マリューさんがそ
れぞれに感想を述べる中、義成兄さんが俺に質問
をしてくる。

 「義久(ヨシヒサ)って、お前の名前から取っ
  たのか?」

 「そうだよ。伝統でしょう?」

 「えっ!そうなのか?」

 「だって、俺が義弘で、義成兄さんと義則がい
  るんだから」

 「でも、お前の親父は修一で、俺達の親父は匠
  だぞ。全然、繋がりがないぞ。更に言えば、
  お祖父さんは源一郎だ」

 「あれ?」

 「俺達って、何で統一されているの?」

 「噂では、親父と修一叔父さんの取り決めらし
  いけど」

 「ねえ。義成兄さん、私はどうなの?」

 「カナは女だから、対象外なのかな?」

 「不思議だ・・・」

 「本当にな・・・」

俺達三人に、同時に同じ疑問が沸きあがってきて
しまい、深く考え込んでしまう。

 「まあ、良いか。俺も子供が生まれたら、義の
  字を名前に入れるとするか」 

 「俺もそうするかな」

 「相手はいるの?」

カナが恋人の有無を聞いてくるが、それは最もな
質問であった。

 「いるよ。なあ、ユリカ」

 「はい」

義成兄さんとユリカが、付き合っている事は知っ
ていたが、まさか、プライベートでは、名前を呼
び捨てにしているとは思わなかった。
実は、少し前から疑問に思っていたのだが、義成
兄さんは、自分の境遇に全く不満を覚えておらず
、マゾではないのかも知れないという事だ。
もしかして、自分の従兄弟は、物凄く偉大な男な
のかも知れなかった。

 「義成、結婚式にはちゃんと呼びなさいよ。準
  備があるんだからね」

 「そうだね。会社絡みで大きな披露宴になると
  思うから、早めに泉叔母さんには伝えるよ」

 「カザマ君も、ちゃんとラクス様と出席してね 
  」

 「えっ、そこまで進んでいるの?」

 「これを見よ!」

ユリカが左手の甲を俺達に見せると、薬指に婚約
指輪がはまっていた。
どうやら、俺のあずかり知らぬ間に、大変な事に
なっていたようだ。
義成兄さんは、人生の墓場に直行するらしい。

 「おめでとう。義成お兄さん」

 「ありがとうな。カナ」

 「おめでとうございます・・・」

カナは何も知らないので、素直にお祝いの言葉を
述べているが、最終決戦でユリカと共に戦ったニ
コルは、複雑な表情をしながらお祝いの言葉を述
べていた。

 「義成兄さんの方はともかく、義則はどうする
  んだ?」

 「結婚なんて、まだ早いって。俺は人生を楽し
  む男なんだよ」

 「休みの日は、日がなプラモデルを作っている
  くせに・・・」
 
 「兄貴は暇さえあれば、ゲームをしているだろ
  うが!」

 「お前の部屋にある、あのプラモの山をどうに
  かしろ!更に、組み立てていない物が沢山残
  っている癖に、次々に新発売のプラモを買い
  足すな!」

モデラーという生き物は、新発売になると「あと
で組み立てる」と言って、プラモデルを買ってし
まうものらしい。
 
 「いや・・・。あれは新作ゆえに早くゲットし
  ようかと・・・。大体、兄貴だってクリアー
  もしていない癖に、次々に新作を買ってきて
  さ。後で中古品を買えば良いだろうが!」

義成兄さんは、レトロゲームコレクターであると
同時に、真性のゲーマーとして最新ゲームのプレ
イに命を掛けていた。
恐ろしいほどよく似ている兄弟である。
 
 「それは出来ない相談だ。新発売が、俺を呼ん
  でいるんだ!」

 「呼んでねえよ!」

二人が不毛な口地喧嘩を始めるのと同時に、俺は
エミに質問を投げかけていた。 

 「二人って付き合っている?」

 「ええ。でも、デートの大半が、玩具屋巡りと
  いうのは困りものですわ」 

 「私もヨシナリのお供で、ゲーセン巡りばっか
  しよ。おかげで、格闘ゲームの腕が上がりま
  くりよ」

 「ねえ。あの二人を見ていて気が付いたんだけ
  ど、カザマ君もオタク?」

 「イエーーース!アイドゥ」

 「あっ、そう。ラクスさんも大変ね・・・」

マリューさんが、俺を可哀想な人扱いで見つめ始
めた。

 「趣味で人を判断するのは良くないですよ」

 「そうですよ。ラミアス部長」

 「二人の言う通りです」

 「いやね。仕事に文句はないんだけど、デスク
  にフィギュアを置くのは止めて欲しいのよ」

マリューさんの話によると、二人のデスクには、
多数のプラモデルの完成品やフィギュアで飾り立
てられているらしい。
いい歳をして、恥ずかしい従兄弟達である。
 
 「ははは。二人はバカだなあ」

 「ヨシさんもですよ。(アークエンジェル)時
  代の執務室の机上の制服を着たフィギュアは
  、何だったんですか?」

俺が二人をバカにしていると、ニコルが昔の事を
思い出したらしく、俺にもツッコミを入れてきた

 
 「エ○ァンゲリオンのアスカでーーーす」

 「もしかして、(ミネルバ)の執務室にもそれ
  が・・・?」

 「洒落で飾ったら、アーサーさんが気に入って
  さ。仕舞えないんだよ。それと、追加で置い
  た綾波○イは、ハイネに持っていかれてしま
  った。限定品で高かったし、秋葉原に行かな
  いとないのに・・・。あそこのオヤジ、ネッ
  ト通販が嫌いなんだよ」

俺の話を聞いていたマリューさんは、俺達を怪訝
な目で見つめ始めた。 

 「(こんなオタクに倒された兵士は無念でしょ
  うね。まあ、可愛いけどね)」

 「でも、ニコルも新作のロープレが出ると、私
  を相手にしてくれないわよ」

マリューさんに続き、カナもニコルに対しての不
満を述べ始めた。

 「お前、ゲームなんてするんだな」

 「○ラクエと○ァイナル○ァンタジーの新作は
  必ずやりますよ」
 
 「○ラクエは、87が出たばかりだったよな」

 「ええ。でも、最近は不作ですね」

 「俺は、例の通信対戦型のモビルスーツシュミ
  レーションならやるけど・・・」 

 「あれの最新バージョンは、(グフ)が選べま
  すしね。僕は、(セイバー)を選びますけど
  」

 「俺は(ザクファントム)を良く選ぶけどな」

 「義成兄さんは、マニアックな機体を選ぶんだ
  ね」

 「そうか?義則は(ジンハイマニューバ2型)
  を良く選んでいるぞ」

 「俺は、(ジン)が好きなんだよ!」

 「俺も大好きだぞ!」

 「おお!兄弟よ!」

俺と義則の機体の好みが一致している事が判明し
て、二人は更に固い絆で結ばれた。  

 

 「男って、いくつになってもこれなのね・・・
  」

 「綾乃義姉さんも大変よね。ヨシヒロみたいな
  のが、二人もいるんだから」

 「ヨシナリは良い人なんだけど、あの行き過ぎ
  た趣味はね・・・」

 「ヨシノリもそうですわ」

 「ラクス様ならどう言うかな?」

 「(あら。可愛いではありませんか)で終わり
  よ。きっと」

俺達がゲーム談義に花を咲かせている横で、女性
陣は呆れた顔をしながら会話を続けていた。


 「さあて、お祝いの品を持ってきましたよ」

 「プレゼント大歓迎!」

自分達の話を終えた俺達は、昼食後に持ってきた
お祝いの披露を開始した。
隣の部屋では、ミルクを飲んだサクラとヨシヒサ
が静かに眠っていた。

 「まずは僕達です。まあ、幼児用の服とオリジ
  ナルの楽曲なんですけどね」

 「私の自作なのよ。可愛いでしょう?」

カナは、自作した赤服をディフォルメした幼児用
の服を俺達に手渡す。

 「良く出来てるけど、三歳くらいにならないと
  着れないかな?」

 「オムツとか、今使えるベビー服は余っている
  んでしょう?」

 「そうなんだけどね」

クライン家の影響力は、絶大な物であるらしく、
子供が生まれてから、世界各地の政・財界人から
沢山のお祝いの品が届いていた。
そして、その量はハンパではなく、ミルクやオム
ツなどは使い切れないほどあって、余った分を各
地の孤児院や、途上国の産婦人科医院に寄付をし
ていたほどなのだ。

 「でも、サクラの分はスカートなんだな。ルナ
  とステラを思い出すよ」

すでに、二人の改造軍服に文句を言う人間は皆無
になっていて、他国の軍人達も、「ザフト軍では
ミニスートが軍服なのか。羨ましいな」などと、
本気で思ってた人もいたくらいであった。

 「次は私よ。はい、0歳児用の絵本よ」

 「ありがとうございます。マリューさんは気が
  利きますね」

 「ラミアス部長は、そつがないわね。私達はこ
  れよ」

ユリカ達が差し出したお祝いの品は、高級な幼児
用の玩具であり、予想に反して、ごく普通の品々
であった。
もしかしたら、義成兄さん達の意見を取り入れた
のかも知れなかった。
 
 「へえ。気が利くじゃないか」

 「本当はカザマ君の子供だから、モビルスーツ
  が良いと思ったんだけど」 

 「庭が広いから遊べると思いましたの」

 「いや・・・。モビルスーツは・・・」

最近は、大人しかったのですっかり忘れていたが
、やっぱりこいつらはユリカとエミなのだ。
普通、モビルスーツを送られても、喜ぶ人間なん
てごく少数であろうし、維持費を考えたら嫌がら
せ以外の何物でもない。

 「それで、何をくれる予定だったんだ?」

 「デブリ帯で見つけた普通の(ジン)を、ジャ
  ンク屋から買い取って修理したの。

 「今では、実験機だけどな」

 「えっ!モビルスーツの開発なんてやっている
  の?」 

義成兄さんの発言に俺は驚いてしまう。

 「ああ。作業用モビルスーツの統一規格の開発
  を、極東連合とプラントで行っているからな
  。ウチの担当は装甲板の開発なんだよ。フェ
  イズシフト装甲は高くつくから、重要部分の
  みの装備にするか、安全性・耐久性・コスト
  性に優れた、新素材を開発中というわけだ」

 「そんなわけで、ニコルの親父さんである、ア
  マルフィー技術委員長との付き合いも多いわ
  けだ」

 「へえ、父はそんな事をしているんですね」

義則の続けての発言に、ニコルが意外そうな顔を
しながら感想を述べていた。
 
 「兵器ばっかり作っている余裕は、戦後にはな
  くなるからな」

 「そうね。戦争時は予算が軍に集中し易いし、
  民需の成長が停滞するから、軍事兵器開発で
  うちは装甲関連だけど、フェイズシフト装甲
  の量産で会社を成長させていたわ。でも、こ
  の戦争が終われば、更なる軍縮と予算の削減
  で仕事が減った分を、作業用のモビルスーツ
  と、途上国が先進国の援助で開始する宇宙開
  発部門に食い込んで、会社を成長させなけれ
  ばならないわ。各国の企業も必死だから、戦
  争時並に大変なのよ」

 「ユリカがまともな事を言っている・・・」

 「失礼ね!私は優秀な支社長なのよ!」

 「ついでに言わせて頂きますと、私もですわ」

確かに、実績をあげていなければ、栄転と言う名
目で本社に飛ばされて、飼い殺しにでもされてい
るのであろうが、楠木会長が何も言ってこないと
いう事は、この二人が優秀な証拠なのであろう。
「憎まれっ子世にはばかる」というやつである。

 「さて、僕はそろそろお暇しますね。家族との
  夕食を約束しているんですよ」

 「まあ、久しぶりだから当然だろうな」

 「カナは、どうする?ここに泊めて貰う?」

母さんが、カナに今日の宿泊予定を聞いている。

 「ははは。それが、私も招待されていてさ。緊
  張しちゃって大変なんだよ」

 「初めてじゃないんだろう?」

 「三回目だけど、緊張が薄まらないのよ。私は
  、姉貴ほどおしとやかじゃないから・・・。
  気に入られているかどうか、気になっちゃっ
  てさ・・・」

 「大丈夫だろう?ユリカとエミじゃあるまいし
  」

 「失礼よ!」

 「そうですわ。優秀で美人な深窓の令嬢なのに
  !」

確かに、二人は優秀だし美人でもある。
だが、その見事な性格と行動で全てを台無しにし
ていたので、俺的には、一生深窓にいて欲しい気
分であった。
義成兄さんと義則を生贄として捧げてしまった、
俺の罪を思い出してしまうからだ。

 「大丈夫ですよ。母さんはカナを気に入ってい
  ますから。カナは楽器を弾けますからね。趣
  味が合うと言っていましたよ」

確かにカナにはサバサバした部分があって、多少
女らしくない部分があったが、家事は全てこなせ
るし、レイナと双子なので、我が妹ながら美人で
スタイルも良かったのだ。
更に、レイナも最近はおしとやかとは言いかねる
部分が多々出てきていて、「やっぱり、双子なん
だよな」と思う事が多くなっていた。

 「そうだな。俺にピアノを教えてくれたのは、
  カナだったからな」

 「みたいですね。でも、ちゃんと定期的に練習
  しています?」

 「忙しくてやってないな。でも、子供達の前で
  演奏して尊敬されるべく、練習を再開するか
  な」 
 
 「現金な性格してるわね。ヨシヒロは」

 「カナはともかく、私はヨシナリのお義母様に
  気に入られてみせるわよ!私はスーパーお嬢
  様なんだから」

 「私もですわ」
 
 「伯母さんも、息子達を無職にしたくないだろ 
  うから、気に入った振りをするだろうな・・
  ・」 

 「ですよね」

 「そうよね」

 「綾乃義姉さんも大変よね・・・」

ユリカとエミの宣言をよそに、俺とニコルとカナ
と母さんは、社会の悲しい現実を語り合っていた

 「本当に、失礼な親子よね・・・」

 「本当ですわ。ヨシノリも何か言って下さい・
  ・・って。えっ!どこにいるのですか?」 

俺達が不毛な会話を続けている内に、二人はどこ
かに行ってしまったらしい。

 「どこに行ったんだろう?」

 「そうよね」

 「若旦那様。お二人でしたら、若旦那の部屋で
  映像を見ていますが・・・」

俺達が二人の居場所を探していると、セバスが現
れて俺に二人の居場所を教えてくれた。
我が家の執事ながら、ナイスタイミングだ。

 「映像ね・・・」

 「あの不毛なアニメでも見ているのかね?」

 「不毛って、それはないでしょうが・・・」

 「綾乃義姉さんが、兄弟して不毛な趣味に嵌っ
  ているって言ってたからね。まあ、自分の息
  子もそうなんだけど・・・」

母さんの耳が痛くなる言葉を聞き流しながら、俺
の自室に行くと、二人は俺のコレクションの古典
アニメを一生懸命に鑑賞していた。

 「面白いかい?お二人さん」

 「うーん。我が従兄弟ながら、最強のコレクシ
  ョンだな」

 「そうか。ここはこうなっていたのか・・・。
  ガレキでも出ていないから、自作していたの
  だが、細部がわからなくてな。しかも、この
  作品は世間にも出回っていないし・・・。よ
  く入手できたな。我が同胞よ」
 
 「ふっ、我が情報収集能力を侮るでないぞ。こ
  のコレクションには、七十万アースダラーの
  資金が掛かっているのだからな。給料を株式
  に投資して、稼いだ利ざやを全て回している
  から、気合が違うのだよ」

 「おお!我が従兄弟ながら漢だな」

 「そうだな。○オウのような気合を感じたな。
  (誰よりも、愛深きゆえ)というわけだな」

 「わかってくれたか!兄弟よーーー!ここには
  、俺の価値観を理解してくれる人が少なくて
  な!」

 「俺もそうだぞ!」

 「俺もだーーー!」

俺達は感極まって、泣きながら三人で抱き合って
いた。
日曜日の夕方のお屋敷の部屋の中で、古典ロボッ
トアニメの映像と、主人公の気合の入り過ぎた声
が響き渡り、そこで抱き合う三人は、他人には思
いっきりシュールに見えたであろう。

 「こんな下らない物に、七十万アースダラーも
  ・・・」

 「バックくらい罰は当たらないわよね」

 「僕は付いていけません・・・」

 「結婚を考え直そうかしら・・・」

 「ここで逃したら、一生結婚できませんわよ。
  要は、ラクス様のように許容すれば良いので
  すわ」

 「ムウはまともで良かった・・・」

 「でも、浮気癖があるから心配なのでしょう? 
  」

 「それは、そうなんだけど・・・」 

三人で抱き合っている俺達の横で、女性陣の半分
あきらめたような声のトーンでの会話が続くので
あった。
三月中旬の日曜日、ヨーロッパでの戦火をよそに
、プラント本国は平和そのものであった。


         あとがき

そろそろ最後なんで、話を考えながら10話に入
れ忘れた内容を追加で書きました。
こういう話を書いていると、いつのまにか忘れて
、使わなくなるキャラクターというものが出てく
るので、試しに書いてみたのですが。
次は、最後の決戦に入れるといいなと考えていま
す。

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