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「NARUTO 九房武芸帖 (NARUTO×いろいろ)」

こるべんと (2006-07-20 10:51/2006-07-20 10:59)
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第七章 『野生の牙は凶悪な罠を仕掛けるか』


最初に、カットマン様に対して深くお詫び申し上げます。私の不遜な文章表現の所為で、お気を著しく害されたと思います。
また、レス返しを読んで嫌な思いをされた方が他にもいるかと思います。改めてお詫び申し上げると共に、二度とこのようなことがないよう努めていく次第です。
本当に申し訳ありませんでした。

                                          こるべんとより


【午前6時30分】

ナルトは傍らに眠る少女を起こさないように寝床を抜け出し、風呂場で軽く冷水シャワーを浴びた。
昨夜の痴態の残り香が消えてしまうのは残念だが、清潔にしていないと病気になってしまうので仕方がないと泣く泣く股下の掃除をした。
寝室に戻るとヒナタもすでに起床していて、ナルトを見るなり抱きついてきた。
厚い胸板に顔を摺り寄せ、冷えた感触を楽しんでいる彼女を微笑ましく見つめた。
ヒナタが風呂場から出てくるまでに、朝食の準備を済ませておく。
今朝の献立は納豆と炊きたての白米。それと、残り物の味噌汁に沢庵が二切れずつとさっぱりした食卓である。
二人がそろうとこれを20分ほどで食する。そして、洗面所へ行き一緒に歯磨きをする。
着替えをする段階になって、ヒナタははたとナルトを見た。
この前まで着ていた学ランを着たと思ったら、何かに気がついたようにさっさとまた着替えだしたのだ。
それから10分後のナルトの服装は、しなやかな特殊鋼糸繊維で織られた黒色のノースリーブで上半身を包み、下半身を同じく特殊防弾繊維を使用した細いカルサン(ニッカボッカ)を穿き、両腕には肘まですっかりとどく指ぬきグローブとゴーグルが装着されているというあきらかに戦闘仕様といった感じのものだった。
ヒナタはその姿を見ただけなのに、一瞬で赤面してしまった。
鋼の鞭のようにしなやかな筋肉が衣服の下からでもはっきり分かる上に、昨夜のことをあからさまに思い出さずにはいられなくなる。
ちなみにもらった額当ては加工して、グローブ甲部分に手甲として使われている。
ナルトいわく、

「学ランは戦闘状態じゃないとき限定。これからは任務のことを考えて、動きを阻害しない服装をする必要があるから餓狼の任務時の戦闘服に着替えただけだってばよ」

ということである。
ついでに付け加えさせてもらうと、禁術の巻き物を持ち出そうとしたミズキは取引相手との商談中に暗部に捕まり牢にぶち込まれている。


とにもかくにも卒業試験に合格したナルトとヒナタは、アカデミーの大教室に足を踏み入れた。
すると、すぐ傍で退屈そうにしていたちょんまげ頭の少年――――奈良シカマルが声をかけてきた。

「よう、お前ら二人とも合格できたか。おめでとうさん」

「ありがとうってばよ!!」

「うん、でもネジ兄さんの話だとまだ『試験』は残ってるらしいから・・・」

「なるほど・・・去年のNO.1ルーキーの話だから、事実関係は確認済みだろうな。つーか、まだあんのかよ?!めんどくせー・・・」

「つーか、あんな基本忍術で卒業っていうのは普通に考えてありえねーってばよ」

奈良シカマル:究極の面倒くさがりといってもいいほどの怠け者で、口調にまでその性格が現れている。
が、その知能指数はすこぶる高いらしく本気で勉強すれば、アカデミー始まって以来の頭脳明晰少年と言われるに違いないだろう。
ナルトと普通に会話が出来るアカデミー生の一人。

「つーか、ナルト。お前あれだけのことしておいてよくお咎めなしになったな?」

「ん?ああ・・・・いろいろあったからなぁ・・・いろいろと・・・・」

そう呟くナルトの瞳は、あきらかにとんでもないことをやってのけた顔だっだ。
その表情から恐ろしい何かを感じ取ったシカマルに、さすがにそれ以上の追求は出来なかった
その後も三人仲良く談笑を続けていると、

「ちょっと!!そこどいて・・いただけませんか?」

「ん?ああ・・・どーぞ」

「あ・・サクラちゃん、おはよう」

予想通り、春野サクラだった。
が、この間のお灸が効いたらしくさすがに態度をわきまえたようだ。
もっとも、いつまで効果があるか疑問だが・・・
ふとサクラの視線の先を見れば、そこにはうちはサスケがいた。
席を立って道を開けると、サクラは嬉々とした表情でサスケに擦り寄った。
その様子を、他の女子が目くじらを立てて睨みつけている。
サクラに関しても、ナルトの評価は辛辣だった。
知識だけの頭でっかちで体術・忍術ともに平均以下の成績のくせに、それに関する努力というものをちっともしようとしない。戦場に出たら、いの一番に標的にされるいい例だ。

『願わくば、この馬鹿二人とは組むことがありませんように』

組んだら組んだでうまくやっていく方法を考えるが、できれば面倒な連中とは係わり合いになりたくなかった。
そんなナルトの思いが伝わったのか分からないが、サスケは露骨なガン飛ばしをしてきた。
もっとも、ナルトは少しも相手にしていなかったが。

「よーし、全員席に着けーーーー!!」

教室に入ってきたイルカの一声で、全員騒ぐのをやめて注目した。

「えーーー・・・今日から君たちはめでたく一人前の忍者となったわけだが、しかし!!まだまだ新米の下忍、本当に大変なのはこれからだ!!」

すでに何百人と人を殺している狼がこんなところに座っているのもおかしな話だが、イルカの説明は元特別上忍だけあってためになる内容だった。
他のアカデミー生たちも身じろぎせずに聞き入っている。

「なお、これから君たちには様々な任務が与えられるわけだが、今後はスリーマンセルの班を作り班を受け持つ上忍の先生の下でこなしていくことになる」

―――スリーマンセルか、基本的な部隊編成で効率を重視する。これは合格だな。

と、ナルトが確認のメモを取れば、

―――ちぃ・・・スリーマンセルか、足手まといが増えるだけだな。

サスケは自信過剰な考えをめぐらせ、

―――絶対!!サスケ君と一緒になるわよ――!!

サクラにいたっては、私情丸出しで握りこぶしを作る始末。
他のアカデミー生も同じような反応で、仲のいい友人同士でコソコソと話したりしている。
すると、イルカが手元にあるファイルを捲った。

「なお班の編成は、バランスが均等になるようにこちらで決めた」

「ええ――――!!」

とたんに教室中から盛大なブーイングが湧き上がり、にわかに動物園の檻の様な騒がしさになった。
ナルトはこの光景に呆れ返ってしまった。
仮にも忍者という戦闘者を目指したのなら、常識で考えてみればイルカの言うことが正論だと理解できるはずだ。
任務は常に個人よりも集団の意識が重要視される。
卓越した技術や能力を有していても、たった一人で任務をこなすことなど不可能に等しい。
それが出来る人間はナルトが記憶しているなかでもごく僅かしかいないし、自分自身そこまでやると消耗が激しい。
幻影旅団の皆ならそれもできそうだが、あれだけ鮮やかな殺しと盗みができるのは集団としての意識と互いの強い信頼があるからだ。
どこまでも、平和ボケした土地だ。


「だーっ!!各班の力関係を均等にするのにこっちで決めたんだ、文句を言うんじゃない!!」

うるさくなった生徒にイルカがどなる。
敏腕教師の彼でも、ここまで騒がれるとは思っていなかったらしい。
少し静かになると気を取り直して説明を続ける。

「よし、じゃあ発表された順に席に座りなおしてくれ。まず、第1班・・・・」

イルカが発表するたびに、生徒たちの顔が一喜一憂して様々な色を見せる。
思い通りになったことを喜ぶ奴もいれば、浮かない顔をしてふて腐れる奴もいる。
返す返すも、平和ボケした土地である。

「・・・・続いて第7班は、ナルト・・・」

ナルトは机に頬杖を付いた肘を離し、姿勢を正した。

「うちはサスケ・・・」

サスケの表情が、一瞬険しくなる。
そして、さっきと同じようにナルトにガンを飛ばした。

「春野サクラの以上3名だ」

サクラは呼ばれた瞬間、おもいっきり机に頭をぶつけた。
サスケと一緒の班になれたことはいいが、どういうわけで自分を半殺しにしかけた奴なんかと組まされなければならないのかという抗議のようなものかもしれない。
おまけにナルトは『我が麗しのサスケ』を常に苛立たせ、隙あらば体術で凹ませようとする凶悪な魔王である。百害あって一利なしと考えて当然だ。(春野サクラの主観による)
これに疑問を持ったのは、ナルトも同様だった。
さっそく、手を上げて質問をする。

「先生、いいのか?俺ってばこの二人のこと殺しかけてるんだけど?」

すると、今度はそれに便乗するようにサクラが質問をする。

「そ・・そうですよ!!テンテン先輩が来てくれなかったら、私いまごろどうなっていたか・・・何とか変えられないんですか?!」

「あ――・・・それに関して説明するとだな。総合的な成績ではサスケがトップ、サクラは平均点、でナルトが断然のドベなんだ。バランスを考えて組み合わせると、自然にこういった結果になるんだよ」

「そ・・・そんな〜・・・・」

サクラはあっさりと返ってきたイルカの答えに、心底ガッカリした表情を見せた。
サスケはイルカの話で自分のプライドを満足させたのか、ナルトに対して高慢ちきな笑みを浮かべている。

「ふん・・せいぜい足をひっぱってくれるなよ。ドベ!!」

「おや、そいつは悪かった。腕より名前で昇った奴は印象が薄くて困るってば。忘れないように、ブロマイドを持ち歩いとかないといけないってばよ」

「てめぇ!!ぶっ殺す!!」

サスケは完全にキレて、ナルトに殴りかかってきた。
しかし、その拳がナルトの顔面を捉えることは無くあっさりと捌かれて、サスケは顔面を机に思いっきり強打した。

『ダンゾウ様・・・この大博打、万馬券程度では済みそうにありません』

イルカは冷や汗を流して心から思った。


イルカは前日の夜、行政府の会議室で特別上忍・不知火ゲンマと共にダンゾウと部隊編成会議をしていた。
そこで、ダンゾウがこの提案を持ち出したのだ。

「だ、ダンゾウ様!!いくらなんでも無茶です!!ナルトとサスケの仲の悪さはご存知でしょう?!」

「俺もイルカと同意見っすね。火薬庫にダイナマイトを投げ込むようなものですよ。それに、この春野サクラってのはナルトに半殺しにされかけたんですよ?」

だが、ダンゾウはそれには答えず黙って窓の外を見た。
そして、おもむろに話し出した。

「確かに、その班は下手をすれば全てを巻き込む火薬庫になるだろう。だがな、ワシはそういう物こそ必要だと考えておるのだ」

「我らの先祖は戦を繰り返すたびに多くの術と技を編み出し、勢力を拡大していった。そして、今ではこんなにも大きな里を持てるまでに成長した」

「忍にとっての進歩とは、戦の中で揉まれてこそ生まれるものだ。小部隊とは本来、仲間内で小さな争いを経験することによって成長する芽の苗床であったはず。この第7班はその試作品だ」

「実力と覚悟無き者は去れ・・・・・その気構えがなくては、この先我ら忍は二度と日の目を見ることは無くなってしまうだろう。それに・・・たまには万馬券狙いの大博打でもせんと、人生は面白くないぞ」


「で?!俺たちの担当上忍は、いったい何時になったら出てくるんだってばよ!!」

ナルトのイラついた声に、他の二人も反論せずに黙ってうなずく。
今、現在この大教室に座っているのはナルトたち3人だけだ。
他の連中はとっくに担当上忍と一緒に、2時間も前に別の場所へ移動してしまった。
ナルトは『円』を使用しているので、大きなチャクラが教室に向かって歩いてきているのは分かる。
ただ、いまだに校舎の外にいるのでここに来るまでにあと15分はかかるだろう。

「・・・・・これは、キツイ罰が必要だってばよ」

ナルトはおもむろに立ち上がると、天井から床にかけて何か細工をしている。

「ちょっと、何してんのよ?」

サクラが怪訝な顔をして、少し咎めるように言う。
ナルトは黒板消しを戸口の間に挿みこむと、椅子から飛び降りて席に戻った。

「仮にも上官なら、時間には常に正確であるべきだってば。それを初日から破るような奴には、その身をもって償ってもらう必要がある!!」

「あんたねー・・・・」

「ふん!!上忍がそんなベタベタなトラップに引っかかるかよ」

とはいえ、サスケも内心では結構期待しているのか口の端がヒクヒクしている。
とくに内弁慶・サクラは心の底からわくわくしていた。

『ふむ・・・この大きなチャクラは、あのホウキ頭か。かなりの手だれと聞いているし、どれどれ軽く審査してやるってばよ』

扉の前まで来たカカシは、すでに黒板消しの存在に気がついていた。

『ふふふ・・・こんなイタズラをするとは、中々かわいいじゃないか』

ほほえましい気持ちで扉を引こうとしたそのとき、カカシの目に引き戸に仕掛けられた一枚の起爆札が映った。

『こ・・・これは!!相手のチャクラに反応する起爆札!!死角にこんな高度なトラップを仕掛けられているということは、おそらくナルトの仕業に違いない。くっ・・・先生にも時々ひどい目にあわされたが、息子にまでやられるわけにはいかない!!』

カカシは慌てずに引き戸から札をはがすと、黒板消しを先に落としてから教室へ足を踏み入れた。
が!!そのときである。
足元に違和感を覚えて見てみると、張られたワイヤーに引っかかってしまった。
慌てて体勢を立て直すと、その視線の先に待ち構えていたのは千本の嵐だった。

「ぬおっ!!これは厳しいぞ!!」

ホルスターからクナイを取り出し、千本を弾き返す。
しかし、同時に天井からクナイのミサイルが飛んできた。
ここは敵地ではないかと思えるほどの、見事なトラップ戦術である。

『くっ!!ここまでとは・・・!!』

ドガガガガガガガガガッ!!

サクラとサスケの目に、クナイと千本が全身に突き刺さり血を噴きながら倒れるカカシの姿が映った。

「ギャァァァァァァア!!せ・・せ・・せんせぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「っ!!本気で殺っちまったのか!!てめ、どういう神経してやがる!!」

あまりの光景にサクラは卒倒しかけ、サクケも真っ青な顔をしている。
が、当人であるナルトは平気な顔をして窓の方を見た。

「ふ〜ん・・・あの状況でとっさの変わり身の術。やっぱ、カカシ先生じゃこれぐらいかわしちまうか」

「「え?!」」

恐る恐る覗いてみると、床に転がっていたのはカカシの死体ではなく変わり身専用の丸太だった。
そしてナルトの視線を追うと、壁に寄りかかるカカシが飛び込んできた。

「よかった・・・・本当に・・・・」

「おっ・・・脅かしやがって・・・」

二人は信じられない奇跡的な状況に、安堵の溜息をついた。
が、仕掛けられたカカシ本人は怒りのためかプルプルと身体中を震わせている。
そして、涙目になりながら叫んだ言葉は、

「お前ら、本気で大っキライだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

だった。
どうやら、カカシの頭脳にはナルト以外の二人も共犯者としてインプットされたらしい。
サスケやサクラにとってはいい迷惑である。
三人はこの以外にも子供っぽい上忍に、心から溜息をついた。

『先生・・・ナルトはあなた以上に凶悪です!!』

カカシはおそらく天国にいるであろうカヤクに、心からの嫌味をムカつくほど青い空に向かって叫びたくなった。


【13時15分:校舎第三テラス】


「そうだな、まずは自己紹介でもしてもらおうか?」

テラスへ移動した3人は、今後の任務について説明を受けていた。

「どんなことを言えばいいんですか?」

サクラの疑問はもっともだ。相手の名前さえ知らないのにいきなり質問されても困るし、こちらから馴れ馴れしくすることもできない。

「そうだな。好き嫌いとか将来の夢とか・・・まっ!そんなのだ」

と、飄々と語るカカシにナルトが言った。

「それより、先生自身のことを話してくれねぇ?」

それもそうだと感じたカカシは、自分のことを話し出した。

「あー・・・・俺か?俺の名前は“はたけカカシ”。好き嫌いをお前らに教えるつもりは無い!!で、将来の夢って言われてもなぁ〜・・・・まっ!趣味はいろいろだ」

誰が聞いても、自己紹介とは呼べない内容に3人とも複雑な顔をする。
もちろん、ナルトはカカシについても事前に情報を仕入れていた。任務系件数はかなり豊富で、『木の葉の業師』という字名の通り数々の術を使いこなす。
その秘密は左眼の『写輪眼』によるコピー能力に寄るところが多いらしいが、一説によると“千の忍術”をコピーしたらしい。
また唯一のオリジナル技:雷切は、本人がその技で雷をぶった切ったという逸話まである。
ここまで聞けば尊敬に値するのだが、時間に対して凄まじくルーズな上に趣味は『イチャパラシリーズ』なる好色本の収集だというから少し複雑な気持ちだ。

『外見と中身は必ずしも一致する物ではない。しかし、完璧なものほどつまらないものはない』

という言葉を見事に体現していると言えるだろう。

「んじゃ、次は右端のナルトから自己紹介頼むよ」

カカシに促されてナルトが話し出す。

「俺の名前は“ナルト”、苗字はないってばよ。好きなものは恋女房のヒナタ」

この言葉にカカシは眼を細めて少し微笑んだ。
まだ、カヤクが上忍として活躍していた頃、もっぱら会話の中身は任務や訓練か奥方のことだった。
特に奥方のことを話すときのその表情は、本当にうれしそうな笑顔を浮かべていたのを覚えている。

「嫌いなものはありすぎて教える気にもならねーけど、強いてあげるとすれば“集団自殺しないレミングども”だな。数が増えすぎると大移動しながら数を増やし、川や谷に行く手を阻まれれば飛び込んで死を選び生き残ったものだけが再び種を反映させるのがレミングの習性だってばよ」

「もし、それを恐れて馴れ合いながら生きていくレミングがいたとしたら、まったく馬鹿げた存在だってばよ。それに、そういう生き物って生きている意味がないと思うってば」

この言葉に聞いてカカシは、ナルトがこの里に抱く負の感情の大きさを改めて知り一瞬悲しみに眼を伏せた。馴れ合い続けて非情の心を失い、“死”すらも恐れて戦うことをしないこの里を暗に惰弱だと言っているのだ。
理解できないサスケとサクラは首を傾げただけだった。

「趣味は料理と庭弄り。将来の夢はこの任務が終わり次第引退して、ヒナタと一緒にゆっくり楽隠居することだってばよ」

最後の若者らしからぬ夢にカカシは担当上忍として始めての壁の出現を感じ取り、他の二人は脱力して思わず階段から落ちて尻餅をついてしまった。
カカシは本当に父親そっくりの目の前の少年に、引きつった笑いを浮かべながら質問した。

「ナルト・・・この里での結婚は男性・女性共に、18歳以上じゃないと認められないんだぞ?」

「“街”の法律なら問題ないってばよ!!」

「日向宗家から了承は得られたのか?結婚にはお互いの同意がないといけないんだぞ?」

「お互いの身体の味まで知ってんのに、どうして今更確かめる必要があるんだってばよ?それに、許可ならすでにもらって公認されてるし」

「なぬっ!!からだぁぁぁぁぁぁ?!こうにぃぃぃぃぃぃん!!」

カカシは250のダメージを受けた。カカシはひるんだ!!

「かっ!!かっ!!かぁぁぁぁぁぁぁ?!」

サクラは500ダメージを受けた。サクラは混乱している!!

「そうか分かったぞ!!ここは暖かな羽毛布団の中なんだ、そうに違いない!!目を覚ませ、俺!!」

サスケは混乱して自分を攻撃した。サスケは465ダメージを受けた!!

「はは・・・・もういいよ・・・・んじゃ、次の人よろしく・・・・」

乾いた笑いと共に、カカシはサスケに話を促す。
何とか冷静さを取り戻したサスケは、挑むような目つきで話し出した。

「名は“うちはサスケ”。嫌いなものならたくさんあるが、好きなものはとくにない!!それから、夢なんて言葉で終わらせる気はないが“野望”はある!!」

ここで、一旦言葉を打ち切りそしてさっきよりも鋭い瞳で言い放つ。

「一族の復興と・・・ある男を、必ず殺すことだ・・・・!!」

最後の“殺す”という言葉に強いアクセントをつけて、サスケの自己紹介は終わった。

―――・・・かっこいい

サクラは憧れるあまり、この暗い言葉の意味をまるで理解していなかった。
悲しき色ボケ少女ここにきわまれりである。

―――やはりな・・・

カカシは少年の一族の事件を知る一人として、この言葉を重く受け止めた。

―――くだらない。その前にお前が殺されるぞ、“カムイ”は絶対に容赦しない・・・

ナルトはサスケを馬鹿にすると共に、ここに姿を見せていない相棒のことを思った。
相棒“うちはカムイ”は、ナルトの相棒にして唯一無二の親友である。
“うちは一族滅亡”の裏に隠されたもう一つの悲劇、カムイはその被害者でありその原因は“うちはマダラ”の孫である“うちはサスケ”なのだ。
街を出るときに聞いた話によると、カムイがこの里に来るのは春先に行われる“中忍試験”の時期だという。
カムイとサスケが出会ったときの騒ぎが見ものだと、ナルトは内心ほくそ笑みながらゆったりとした気持ちになった。

「んじゃ、最後は女の子」

「えーと、名前は春野サクラ。好きなものっていうか、好きな人は〜・・・・」

思いっきり視線をサスケに向けながら、両手を前に持ってきてあからさまにかわいこぶっている。
サスケもなんとなく気がついているのか、少し顔を赤らめている。
その様子にカカシとナルトはアイコンタクトを交わした。

『ナルト・・・・分かってるか?』

『ああ・・・じゃ、気がつかれないように・・・』

『『ここからエスケープだ!!もち、サスケを置いて!!』』

「え〜と・・・将来の夢も言っちゃおうかな〜・・・ってあれ?!」

「んっ?!あ、あいつらいつのまに!!」

二人が気がつくと、ナルトとカカシの二人は500メートルほど階下のテラスでだべっていた。
サスケとサクラが息を切らしてやってくると、二人は露骨に嫌そうな顔をした。

「で?サクラ、自己紹介が終わったなら説明を急ぎたいんだけど」

「はい・・・お願いします」

「サスケ、桃色談義は楽しかったか?」

「うるせぇ!!ウスラトンカチ!!」

二人の皮肉交じりの言葉に、サスケもサクラも立つ瀬が無かった。

「よし!!自己紹介はこれでお終いだ。それじゃ、明日から任務を始める」

この言葉にサスケとサクラは緊張した面持ちになって、身を乗り出した。
ナルトもネジから話は聞いていたが、とりあえずポーズだけでも真剣に聞くことにした。

「まず、4人だけであることをやる。サバイバル演習だ」

「どういうことだ?」

「サクケ君の言うとおりよ。演習だったら、アカデミーで散々やったわよ?」

サスケもサクラもカカシの言葉に、大きな疑問符を頭に浮かべながら訊ねた。

「ん?いや・・・な!!俺がこのこと言ったら、お前ら絶対ヒクから!!」

「はぁ?ひくぅ?!」

二人ともいまいち理解できない表情で、益々混乱に拍車が掛かっている。
だが、カカシの次の言葉でその表情が凍りついた。

「ふふ・・・卒業生27名中、下忍と認められるのはわずか9名。この演習は、脱落率66%以上の超難関最終試験だ!!」

サクラは口をあんぐり開けて変な顔になり、サスケはクールな表情をしながら冷や汗を浮かべている。
ところが、ナルトは

「ふ〜ん、ネジのときは45%だったらしいけど、そんな高い確率ならたいしたこと無いってばよ」

と、平気な顔をしている。

「ん?たいしたこと無いって言うなら聞くが、お前の組織には試験とかないのか?」

「あるってばよ。でも、俺らの入団試験は“致死率98%”の試験だから、ぜんぜん物が違うってばよ」

今度はカカシも表情を凍りつかせた。
致死率98%・・・その数字から推測されるにとんでもない入団試験なのだろうが、そんな試験が行われているなどという話は聞いたことが無い。

「ほう!!でも、おかしいな?試験をやっているなら、大々的に募集要項でも届くと思うんだが・・・」

カカシの疑問に、他の二人も投げかける。

「デタラメ言ってるんじゃねぇのか?ウスラトンカチ」

「そうよ!!それに、致死率98%だなんて脅かしてるだけなんでしょ?!」

が、発言者のナルトは顔を俯かせてクスクスと笑っているだけだ。
カカシはその笑い声に、嫌なものを感じ取った。

「やってるってば。“流星街”に来れば・・・・」

「なっ!!流星街だと!!あの街にお前たちの組織があるのか?!」

カカシの焦ったその声に、他の2人も薄ら恐ろしいものを感じ取った。
ナルトはそれ以上何も語らず、書類だけ持ってさっさと家に帰ってしまった。
3人だけになると、サクラは思い切ってカカシに訊ねた。

「先生、あの流星街って・・・?」

「・・・・・その昔、一人の独裁者がいてな。そいつが人種隔離政策のために築き上げた、巨大な都市のことだ。」

「独裁者が死んでからは、国際上どこにも属さないただのゴミ捨て場になってな。そこには、何を捨てても許される。重火器でも麻薬でも、はては生まれたばかりの胎児でも。そこでは、捨てられたゴミを利用して1000万人の住民が暮らしていると言われてる」

「住民たちのデータは、どこにも存在しない。だから、正確な情報は一切つかめないんだ。それに、住民たちは皆仲間意識が強くてな。仲間が殺されれば、どんな手段を使ってでも必ず復讐をとげる恐ろしい連中だ」

暗部時代、カカシは一人の男に敗北を喫した。

『クロロ=ルシルフル』

カカシはその腕を見込まれて、ヨークシンで開催された大オークション会場で要人の警護を任されていた。
暗部の世界に入ってからというもの、数々の任務をこなし常に成功を収めてきた。
その自信が過信へと繋がったのだろう。“幻影旅団”の進入に気がついたときにはすでに遅く、仲間のほとんどが殺られてしまっていた。
VIPルームに飛び込んだとき、そこに立っていたのはバンダナを額に巻きつけた青年だった。
本能でこいつが旅団の一味だと確信し、捕らえて尋問するために攻撃を仕掛けた。
だが、相手の身体能力はカカシを遥かに上回り、気がつけばボロボロになって床に倒れていた。

『つまらないな。飼いならされた番犬というのは・・・・・』

脳裏に焼きついた冷めた瞳と屈辱的な言葉、それが糧になってカカシはさらなる強さを求め修行で己を鍛えなおした。
それでも、あの男への恐怖が心の片隅から消えることは無く今もカカシを苦しめている。


班編成1日前・死の森


木の葉から郊外にあるうっそうとした森では、今まさに拷問の真っ最中だった。
捕虜の男は頭からすっぽりと布袋をかぶせられ、両腕を後ろに回されて太い木の枝に逆さ吊りにされている。
服装からするとかなり高い地位にいるのか、なかなか上等な着物を着ている。
もっとも、それは自分の糞尿や血液で汚れていなければの話だが。

「おい、拷問するのもホドホドにしておけよ?獣に喰わせるにしても、もうちょっとキレイに残したいとはおもわねぇのか?フェイタン」

長い髪をシカマルよりもきつく絞ったヒゲの男が、溜息をつきながら目の鋭い青年(?)をたしなめた。

「うるさいよ、ノブナガ。拷問は楽しくやるのが一番、獣のことなんかかまう必要ないアル」

そう言うと、フェイタンは捕虜の右手を手刀で切り落とした。
捕虜はくぐもった叫び声を上げながら、また失禁した。
ノブナガはその様子に再び溜息をつき、彼を無視して今度は夜空を眺めて星を探した。
その様子に気がついたフェイタンが後ろから声をかけた。

「星なんか探して、ナルトがいる里の方向でも知りたいアルか?団員にならなかたのがそんなに悔しいアルか?」

「あたりめーだ!!ウボォーの奴も気に入ってやがったのに、マチが睨みつけて泣かせさえしなけりゃ俺たちで面倒見てたろーが!!」

「マチはツンデレだから、気持ちを伝えるのが恥ずかしいだけネ。それよりも、卑怯なのはあの狼主の『乳攻め』アルよ」

「ちくしょう、何てうらやま・・・もといけしからん女だっ!!いたいけな少年の心を色気で誘惑する有閑マダムは、うちのパクだけで十分だっつーの!!」

『ノブナガ、親父くさいアル。そして、表現がエロいアル』

フェイタンは踵を返すと、さっきの捕虜のところまで戻り眼にも留まらぬ早業で、その首を一瞬で胴体と切り離した。
そして、胸元から一枚の集合写真を取り出した。
団長・クロロを中心にして、他の仲間が取り囲むように写っている。ナルトは優しく微笑むヒソカの膝の上で、はにかんだ様な笑顔を浮かべていた。
フェイタンは鋭い瞳を細くして微笑むと、死体をそのままにして帰り支度を始めた。


翌日、暗部たち数名が森の中で発見したのは変わり果てた姿で木にぶら下がった、行政府の裁判官だった。
彼は昨夜のうちに行方が分からなくなり、御意見番から指令を受けて付近の捜索に当たっていたのだ。
また、後に判明したことだが彼は『九尾殲滅派』(ナルト殺害賛成者)の一人で、『演習場・銃乱射事件』を利用してナルトを脅し『餓狼』の情報を聞き出そうとしていたことが家族の証言でわかった。
策謀を計画するときには、声を潜めて慎重にも慎重を期さなければならない。
他の人間にまで調子に乗って話していたのでは、そこらに潜む『ネズミ』にだって聞こえてしまう。


(忠告の手紙を、どういうわけかブラフだと勘違いしていたらしい)


付け加えておくと、彼の肉体の一部と思われる右腕が葬式の前日、クール宅急便で家族の元へ届けられたという。
そして、その家族も葬式の数日後に無惨な死体になって見つかった。


『彼岸花が咲き乱れし野原で、緋の眼が血塗れて倒れようとも蜘蛛は歩みを止めはしない。
その足をなお強く、牙の鎖が繋ぎ止めるのだから』

9月4日 午前11時55分 クロロの予言より


あとがき

いつも励ましやアドバイスのレスをありがとうございます。さて、今回からようやく本編へ入ることが出来ました。イロイロとアイディアはあるのですが、それを綺麗にまとめるのは難しいです。
この前、スターチャイルドTV主題集・第2弾を漸く手に入れ、『born Legend』を聴きながらアイディアを日々考えています。
今回のレス返しです>

アト様>
誤字の報告ありがとうございます。しかも、2回も教えてくれて申し訳なく思っています。修正用のパスワードを半角英語に指定していたため、携帯からアクセスが出来ず直すことが出来ませんでした。
三代目火影は人情ある性格ですから誰にでも優しいのかもしれませんが、いざ事が起きたときに率先して行動できないようでは意味がないんですよね。
アンチ三代目ではないのですが、原作を読み直すとどうしてもその欠点が浮かび上がってきてしまいます。

覇邪丸様>
ヒアシの身の上に起こった数々の事故は、全て誰かさんたちの意思決定の名の下に行われたと思っていてください。
カムイの登場はもう少し先になりますが、楽しみにしていてください。

敵の敵の敵様>
ありがとうございます。読者の皆さんが楽しく読んでいただけることが、一番の幸せです。
ナルトとヒナタの子供ですか〜・・・・果たしてどんな子が生まれてくることやら・・・・

ジェナミス様>
アドバイスをありがとうございます。前回はギャグ色を強くしようとしたのが裏目に出てしまい、返ってゴテゴテしてしまいました。これを糧に自分でギャグを考えてみようと思います。
影技はとりあえずアフタヌーンKCデラックスで、旧刊本を3冊揃えました。これで、少しは資料がそろったと思います。

火を断つ腕>
表門死殺技・火断亡のことでしょうか?あの技は私も好きですから、ナルトには使わせたいと思っています。
印象的なのは、武技言語を唱えたロウが炎を切り裂いて闘技場への道を作り出した場面ですね。
あれを見た感じだと、火断亡でも真空波を放つことができるんでしょうか?

子供>
そうですね〜、二人の子供が生まれたとしたらどんな性格がいいでしょうかね?

ナルトが使う技については、オリジナル奥義も考えています。
問題は影技のように、カッコイイ当て字が見つからないということなんです!!
国語は得意ですが、漢字が分からないとこういうときに苦労するんですね・・・

樹海様>

武技言語こそは、クルダ流の極意の一つと言えるでしょうね。今のところ、ナルトにはエレと同じ武技言語を使用させようと考えています。

HUNTER×HUNTER>

今回、幻影旅団とクロロたちの名前を出しました。彼らもこの物語に、少しずつ関わってきます。
ナルトは具現化系(後天的特質系)と考えてください。それに関したオリジナル奥義もありますので。

カットマン様>
前回のレス返しでは不快な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
改めて深くお詫びするとともに、このようなことが二度とないように努めていきたいと思います。

そして今回も、説明が後手になってしまいましたね。文章構成力が欲しいと思う、今日この頃です。
ヒナタのベットシーンに関しては、あらんかぎりのイメージをつぎ込んでこのような形になりました。少し、乱れすぎたでしょうか?あんまり自信がありません・・・
カムイのサスケへの復讐の理由はある程度考えてほぼ決定しているのですが、『中忍試験編』までにもうすこしイメージを膨らませたいと思っています。
また、三代目に関しては“中途半端な冷徹人間”と表現してもいいと思っています。ナルトに対する優しさもそうですし、大蛇丸に対する非情な心も全て中途半端だからここまで問題を大きくしてしまうのでしょう。
どんな行為も中途半端な気持ちで行えば、余計な問題を起こす種をまいたり、他人を余計に傷つけてしまうだけです。


いつも拙作に対するアドバイスやレスをありがとうございます。読者の皆様が楽しく読める作品を目指して頑張りますので、これからもよろしくお願いします!!
それでは、次回でまたお会いしましょう!!

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