「(いったい、いつまで走れば良いんだ!?)」
何処まで続くか分からない通路を走って、早4,5時間が経過した。レオリオは、全身、汗だくでほぼ最後尾を走っている。
「(し、信じらんねー! もう4,5時間は走ってる筈だぜ! 何で、誰一人脱落しねーんだ!?)」
未だ、衰える様子の無い受験生の集団にレオリオは、自分の平凡さを痛感してしまう。
「大丈夫?」
まだ余裕のゴンに聞かれ、レオリオは無言で親指を立てた。
「(なめてたぜハンター試験を……いや、本試験に集まった受験生達を……)」
レオリオは、此処に集まったのが様々な達人であり、ハンター予備軍とはいえ、とんでもない連中である事を考えると、ふとクラピカや此処に来る時のナビゲーターの言葉を思い出す。
会場に辿り着く確率が一万人に一人、そして新人の合格率は三年に一人、だという。
「(マジで選ばれた者にしかなれない職業か……俺みたいな凡人にゃ夢のまた夢ってか……くそぉ……)」
そこで、レオリオは鞄を落とし、歩き出してしまう。
「レオリオ!」
「ほっとけよ」
それを見て、思わず立ち止まるゴンをキルアが制する。
「遊びじゃないんだぜ、ゴン」
他人を気遣っている間に、どんどん先へと進んで行く。そうキルアが訴えると、レオリオは歯を噛み締めた。
「ざけんなよ……絶対ハンターになったるんじゃーーーーーーー!!!!!!!! くそったら〜〜〜〜〜〜!!!!」
が、レオリオはそこで諦めなかった。大きく手足を振り、ダッシュする。
「レオリオ?」
「おやおや……随分と醜いが、その精神は好意に値するね。好きって事さ」
レオリオは、前を走っていたクラピカとカヲルに追いつき、「うおおおおおおお!」と叫びながら走る。それを見てゴンは笑うと、釣竿でレオリオの鞄を拾った。
「お〜、格好いい」
見事に鞄を掬い上げるゴンを見て、キルアが興味津々の反応を示す。
「後で俺にもやらせてよ」
「スケボー貸してくれたらね」
現在、60km地点だったが、未だ脱落者はいなかった。
「(バカな!!)」
彼は信じられなかった。
「(バカな! バカな! バカな!)」
激しく切れる息。追い付くどころか一方的に開いていく距離。低下していく思考能力。今の状況が信じられなかった。
「(俺が脱落!? そんなバカな! 俺に敵う奴なんて一人もいなかった……勉強も! スポーツも! 全てがトップだった! 俺以外の人間なんてただのクズ! 俺に利用されて捨てられていくだけのガラクタだった筈!! いやだ! 信じない! あり得ない! 俺が落第生!? 脱落者!? 負け犬!?)」
落伍者、落ちこぼれ、バカ、愚者、負け犬……様々な自分を卑下する単語が思い浮かんで来る。
「(いやだ!!)」
187番……新人のニコルは、大量の汗を流し、涙や鼻水まで垂れ流して走っていた。その体力は、誰の目から見ても限界だ。
「いや……たくない……」
自分の武器であるノートパソコンを落とし、必死に付いて行こうとする。
「限界だな」
「良し、やるか」
そんな彼を見て、わざとペースを落とし、話しかける者達がいた。受験番号197番長男アモリ、198番三男イモリ、197番次男ウモリのアモリ三兄弟だ。
「へい、新人(ルーキー)!」
「だらしねーぞ、坊や! まだ走り出して6時間程度だぜ?」
「こんなトコでへばる奴、初めて見るぜ」
「表彰モンの能無しだぜ、テメーはよ」
「ハンター試験始まって以来の落ちこぼれだよ、お前」
「才能ねーんだよ、バーカ!」
「二度と来んな、クズ野郎!」
嘲り、嘲笑するアモリ三兄弟。その罵詈雑言にニコルは完全に走る気力を失い、膝を突き、打ち震えた。
「ありがとよ、上出来だ」
「おう」
前へ戻って来たアモリ三兄弟に、トンパは礼を言って金を渡す。
「アイツ、恐らくもう試験受けないな。新人にしちゃ、いいセンいってたのに」
「人を傷つける嘘ってのは、心が痛むぜ」
「トンパ、本当にお前さんは相手の弱点を見抜いて抉るのが上手いな」
「フフン、俺の生きがいだからな」
他の受験者達は、ようやく一人落ちた事に対し、今回のハンター試験のレベルの高さを感じた。
そんな会話を、人ごみに混じって聞いていたアスカは明らかに嫌悪の表情を浮かべた。
「何、あの狸オヤジ……何かあると思ったら、新人潰して楽しんでる訳?」
「ジュース飲まなくて良かったわね……」
きっと、あのジュースにも何か仕掛けがあったに違いないと確信するアスカとレイ。
「このペースだと、あの狸にちょっかい出されそうね……」
「上げる?」
「もち!」
アスカとレイはペースを上げ、トンパから離れる事にした。
「げ!?」
が、そこで、道が平坦なものから先の見えない長い階段になっており、受験生達は驚く。
「さて、ちょっとペースを上げますよ」
サトツは、そう言うと平然と長い階段を二段飛ばして歩き出す。歩いている姿は普通の徒歩と変わっていないのに。
「この階段で、かなりリタイヤしそうね……って、レイ!?」
いつの間にか、レイは階段ではなく壁を走っているのでアスカだけでなく、他の受験生も驚く。
「こうやってれば普通の道と変わらない……アスカもしたら?」
「嫌よ! アタシは正々堂々とスマートにクリアしてやるわ!」
「あっそ……じゃあ、お先に」
サラッとアスカを置いて、レイは更にペースを上げて壁を走る。
「はっは〜! やるな、嬢ちゃん!! 本職顔負けだぜ!」
先頭グループを走るハンゾーは、忍者みたいな真似をするレイに対し、笑いながら言った。
「ハッ! ハッ! ハッ!」
一方、レオリオは服を脱いで腰に巻いて階段を走っていた。
「レオリオ、大丈夫か!?」
「この上なく面白い顔になってますけど?」
クラピカとカヲルが尋ねると、レオリオは笑って答えた。
「おう!! みてのとーりだぜ!! なりふりかまわなきゃ、まだまだいけることがわかったからな!!」
相当、疲れてるようだが、クラピカとカヲルは、形振り構わなければ、限界以上に動けるという彼の精神に笑みを浮かべた。
「フリチンになっても走るのさ〜! クラピカ! カヲル! 他人のフリするなら今の内だぜ!」
「フフ……どうします?」
「私も彼を見習うとしよう」
そう言い、クラピカはレオリオのように上着を脱いで鞄に入れると、彼に続き、カヲルも二人に付いて行くよう、ペースを上げた。
「レオリオ、一つ聞いて良いか?」
「へっ、体力消耗するぜ、無駄口はよ」
「ハンターになりたいのは本当に金目当てか?」
レオリオは此処に来る前、ゴンとクラピカの前でハンター試験を受ける理由は、ハンターが金になるからだと言った。現に、ゴンに対しても自分がハンターについての誇りを語ったが、レオリオはハンターになった際の莫大な利益を訴えた。
「違うな。ほんの数日の付き合いだが、それ位は分かる。確かにお前は、態度は軽薄で頭も悪い」
「後、短気で老け顔ですね〜」
「クラピカはともかく、会って数時間のテメーに、そこまで言われたくね〜ぞ、おい!」
「これは失敬」
フッと笑って一応、謝罪するカヲル。
「だが、決して底が浅いとは思わない。金儲けだけが生きがいの人間は何人も見て来たが、お前はそいつ等とは違うよ」
「けっ! 理屈っぽい、野郎だぜ!」
「…………緋の眼」
ふとクラピカが語りだした。
「クルタ族が狙われた理由だ」
その言葉に、レオリオをクラピカはピクッと反応する。
「緋の眼とは、クルタ族固有の特質を示す。感情が激しく昂ると、瞳が燃えるような深い緋色になるんだ。その状態で死ぬと、緋色は褪せる事無く瞳に刻まれたままになる。この緋の輝きは世界七大美色の一つに数えられてる程だ」
「それで幻影旅団に襲われたわけか」
「(幻影旅団!?)」
その名前に、カヲルは目を見開く。が、レオリオとクラピカは気付かない。
「うち捨てられた同胞の亡骸からは一つ残らず目が奪い去られていた。今でも彼らの暗い瞳が語りかけてくる。“無念だ”、と」
静かな怒りを露にして語るクラピカ。
「幻影旅団を必ず捕えてみせる!! 仲間達の目も全て取り戻す!!」
冷静で、普段は余り感情を表に出さないクラピカが、此処まで怒りを見せる。それ程までに彼は幻影旅団を憎んでいるのだとレオリオとカヲルは思った。
「恐らく全部、闇市場で売り捌かされている筈だ。顧客は特別な権力者や富豪どもだぜ。普通の人間じゃ側にさえ近づけない」
レオリオは、恐らく既に緋の眼が、幻影旅団の手許に無いであろう事を言うと、クラピカは返す。
「ハンターなら可能だ。金持ちの契約ハンターになれば、様々な情報を聞き出せる」
「契約? お抱えハンターって奴は、お前が一番嫌う誇り無いハンターだぜ。小金目当ての飼い犬ハンターじゃねぇか」
「私の誇りなど、仲間の苦しみに比べれば意味の無いものだ」
誇りよりも大切なものがある。そう言うクラピカに対し、レオリオは吐き捨てるように言った。
「悪いな。俺には、お前の志望動機に応えられるような立派な理由はねーよ。俺の目的はやっぱり金さ」
「嘘をつくな!! まさか、本当に金でこの世の全てが買えるとでも思っているのか!?」
自分の詳細な目的を話したのに、未だ金だと言い張るレオリオにクラピカが怒鳴ると、彼も怒鳴り返した。
「買えるさ!! 物は勿論、夢も心もな!! 人の命だって金次第だ! 買えないモンなんか何もねぇ!!」
「許さんぞ、レオリオ! 撤回しろ!!」
「何故だ!? 事実だぜ! 金がありゃ俺の友達は死ななかった!!」
思わずそう言ったレオリオに、クラピカは驚き、カヲルはフッと笑う。
「…………病気か?」
「………決して治らない病気じゃなかった! 問題は法外な手術代さ!! 俺は単純だからな、医者になろうと思ったぜ! 友達(ダチ)と同じ病気の子供を治して、“金なんかいらねぇ”って、その子の親に言ってやるのが俺の夢だった!! 笑い話だぜ! そんな医者になる為には更に見た事もねぇ大金がいるそうだ!! 分かったか!? 金、金、金だ!! 俺は金が欲しいんだよ!!」
金でこの世のものの全てが買える、とクラピカは思っていないし、金に執着する権力者などは嫌いだったが、レオリオはそうならなかった。
その頃、サトツのすぐ後ろではゴン、キルア、そしてレイが走っていた。
「いつの間にか、一番前に来ちゃったね」
「うん。だってペース遅いんだもん」
ゴンとレイは少し息を切らしているが、キルアは息を乱すどころか汗一つ掻いていなかった。
「レイはもう、壁走りしないの?」
「先頭だもの……」
キルアの方を見ないで簡潔に応えるレイ。
「こんなんじゃ逆に疲れちゃうよな。ハンター試験も楽勝かもな……つまんねーの」
淡白に言うキルアに、ふとゴンが尋ねた。
「キルアは何でハンターになりたいの?」
「俺? 別にハンターになんか、なりたくないよ。物凄い難関だって言われてるから面白そうだと思っただけさ。でも拍子抜けだよ」
そう笑みを浮かべながら答えるキルアを、ゴンとレイは不思議そうに見る。
「ゴンは?」
「俺の親父がハンターをやってるんだ。親父みたいなハンターになるのが目標だよ」
「どんなハンター? 親父って?」
「分からない!」
元気一杯にそう答えるゴンに、キルアとレイはキョトンとなる。が、キルアはいきなり大笑いした。
「お前、それ変じゃん!」
分からない父親を目標にするなんて、変としか言いようが無かった。
「そお? 俺、生まれてすぐ、おばさんの家で育てられたから親父は写真でしか知らないんだ。でも、何年か前、カイトって人と出会って、親父のこと色々と教えて貰えた」
かつてゴンと出会ったカイトというハンターは言った。ゴンの父親であるジンについて。
ルルカ文明遺跡の発見、二首オオカミの繁殖法の確立、コンゴ金脈の発掘、クート盗賊団の壊滅等……。
『ジンさんの活動(ハント)は幅広くて制限が無い。ジンさんは面倒くさがって申請してないが、実は三ツ星(トリプル)ハンターと比較しても何ら遜色が無い』
カイトと出会い、彼から聞いた事を話すゴンに、キルアは尋ねた。
「それって凄い事なのか?」
「分からない。ただ、カイトは自分の事みたく自慢気に、とても嬉しそうに話してくれた。それを見て思ったんだ。俺も親父みたいなハンターになりたいって」
笑って、そう言うゴン。すると、ゴンとキルアは、一斉にレイを見る。
「…………何?」
「三ツ星ハンターって何?」
そうキルアが質問してくるので、レイは走りながら答える。
「世界的な偉業を幾つか成し遂げたハンターに贈られる称号よ。この称号を持つハンターは、世界に10人といないとされてるわ」
「へぇ〜……スゲーじゃん。お前の親父」
「うん……そういえば、レイさん」
「レイでいい」
「あ、うん。レイは何でハンターになりたいの?」
その質問に対し、レイはチラッとゴンを見ると僅かに表情を曇らせて答える。
「貴方と同じ………会いたい人がいるから」
「会いたい人?」
「貴方の父親みたいに立派じゃないわ。けど……温かくて……優しくて……そして悲しい人。私に……本当の笑顔と命をくれた人よ」
そう言って、小さく、優しく微笑みかけるレイに、ゴンとキルアは何故か頬を染めた。彼女の笑顔は、何処か神秘的で儚い印象を受けるが、何か惹かれるものがあった。
やがて、三人の目の前に光が見えた。
「出口だ!」
光へと飛び込むように飛び出す受験者達。その彼らの目前に広がったのは、地平線の向こうまで広がる湿原だった。
「こ、これは……」
「ヌメーレ湿原。通称、“詐欺師の塒”。二次試験会場へは、此処を通って行かねばなりません。この湿原にしかいない珍奇な動物達。その多くが人間をも欺いて食糧にしようとする狡猾で、貪欲な生き物です。十分、注意して付いて下さい。騙されると死にますよ」
サトツが忠告すると、通路側のシャッターが閉まり、逃げ道を塞がれてしまった。
「この湿原の生き物は、ありとあらゆる方法で獲物を欺き、捕食しようとします。標的を騙して食い物にする生物達の生態系……詐欺師の塒と呼ばれる所以です。騙される事の無いよう注意深く、しっかりと私の後を付いて来て下さい」
そうサトツが言うと、レオリオは笑みを浮かべて小声で言った。
「おかしなこと言うぜ。だまされるのがわかってて、だまされるわけねーだろ」
「嘘だ!! そいつは嘘をついている!!」
その時、怒声が響いた。すると、出入り口の影から血まみれの男性が現れた。
「そいつは偽者だ!! 試験官じゃない!! 俺が本当の試験官だ!!」
サトツを指差して男性が叫ぶと、受験生達が一斉に彼を見る。が、サトツは何も言わない。
「偽者? どういう事だ?」
「じゃ、こいつは一体……!?」
「カヲル」
どよめく受験生達を他所に、アスカが小声でカヲルに話しかける。
「どう思う?」
「さて……案外、それを確かめてくれる人がいるかもよ」
「あぁ……アイツ」
カヲルは笑みを浮かべながら、アスカは眼光を鋭くして一人の受験生に注目する。
「これを見ろ!!」
試験官と名乗る男性は、一匹の動物を見せた。それは、人の顔をした猿だった。
「ヌメーレ湿原に生息する人面猿! 人面猿は、新鮮な人肉を好む。しかし、手足が細長く、非常に力が弱い。そこで自ら人に扮し、言葉巧みに人間を湿原に連れ込み他の生き物と連携して獲物を生け捕りにするんだ!! そいつはハンター試験に集まった受験生を一網打尽にする気だぞ!」
その時、風を切る音がした。男性の顔面にトランプが数枚、突き刺さる。
「が……」
何が起こったのか分からず、男性は顔から血を噴き出して倒れた。一方、サトツの方にもトランプが飛んでいたが、彼は全てキャッチしていた。
「くっく。なるほどなるほど」
トランプを投げたのは、受験番号44番のヒソカだった。彼はトランプをシャッフルしながら言う。すると、死んだ男性の横で寝転んでいた人面猿が突然、起きてその場から逃げ出そうとした。が、ヒソカの投げたトランプが突き刺さって絶命する。
「あの猿、死んだフリを……!」
「これで決定。そっちが本物だね」
そう言い、ヒソカはサトツを指した。
「試験官というのは審査委員会から依頼されたハンターが無償で任務につくもの。我々が目指すハンターの端くれともあろう者が、あの程度の攻撃を防げない訳ないからね」
「褒め言葉と受け取っておきましょう。しかし、次からは如何なる理由でも私への攻撃は試験官の反逆行為とみなして即失格とします。よろしいですね?」
「ハイハイ」
サトツの忠告に、ヒソカは一応、頷いた。すると突然、大量の鳥がやって来て、試験官に変装した人面猿と、人面猿に群がり死肉を貪り始めた。
「あれが敗者の姿です」
「自然の掟とはいえ……」
無残な姿に受験生達は動揺する。
「私を偽者扱いして受験生を混乱させ、何人か連れ去ろうとしたんでしょうな。こうした命懸けの騙し合いが日夜、行われている訳です。何人かは騙されかけて私を疑ったんじゃありませんか?」
その言葉に何人かの受験生が苦笑いを浮かべる。
「アスカ君も騙されたんじゃないかい? 君、単純だし」
「騙されてないわよ!」
カヲルの発言に、アスカは思いっ切り怒鳴りつける。
「では参りましょうか。二次試験会場へ」
そして、再びサトツが歩き出すと、受験生は彼に続いて走り始める。
今度はぬかるみで、かなり体力が奪われてしまい、受験生が苦しそうな表情を浮かべる。すると、段々と目の前が真っ白になって来た。
「霧が……」
「ゴン、レイ、もっと前に行こう」
サトツのすぐ後ろを走っているキルアは、横のゴンとレイに言った。
「うん。試験官を見失うといけないもんね」
「そんな事よりヒソカから離れた方が良い。あいつ、殺しをしたくてウズウズしてるから」
そう言われ、ゴンはハッとなり、レイは無言で走り続ける。
「霧に乗じてかなり殺るぜ」
そこで、ふとキルアが不思議そうにゴンが自分を見ているのに気づいた。
「何で、そんなこと分かるのって顔してるね。何故なら俺も同類だから。臭いで分かるのさ」
「同類? アイツと? そんな風には見えないよ」
「それは俺が猫被ってるからだよ。その内、分かるさ」
そう言ったキルアをレイは無言で見つめる。
「ふ〜ん……レオリオー! クラピカー! キルアが前に来た方が良いってさ〜!!!」
ゴンが後ろのレオリオとクラピカに向かって叫ぶとキルアはガクッと肩を落とす。
「どアホー!! 行けるなら、とっくに行っとるわい!!」
霧の向こうからレオリオの返事が届く。
「緊張感の無い奴らだな〜、もう」
「…………」
レイは、アスカとカヲルの事が気になりながらも、先程から妙に引っかかるものがあった。最初はヒソカだと思っていたが、彼とは別に、ずっと見張られているような感じがした。付かず離れずの位置にいて、何か探ってるような感じだ。
「うわああああああ!!!」
「ぎゃああああああああああああ!!!」
「ひいいいいいいい!!!」
「逃げろぉー!!!」
霧が濃くなり、あちこちから悲鳴や絶叫がしたので、クラピカ、レオリオ、アスカは立ち止まる。
「ちぃ! 知らねー内にパニックに巻き込まれちまったぜ!」
「どうやら後方集団が、途中から別の方向へ誘導されてしまったらしいな」
「(カヲルとも逸れたし、レイは先頭……厄介ね)」
アスカも結構、鋭い方だが、こういう霧の中で襲われた際、カヲルやレイの方が感覚が鋭い。その時、アスカはゾクゥッと身を竦ませた。
「(このオーラ! マズい!)クラピカ! レオリオ! 危ない!」
アスカが叫ぶと、クラピカとレオリオはハッとなる。すると突如、霧の中からトランプが飛んで来て、受験生に突き刺さる。アスカはトランプを素手で弾き飛ばし、クラピカは糸で繋がれた二本の刀で落とす。が、鞄を置いて来てしまったレオリオに防ぐ手段は無く、トランプが腕に突き刺さった。
「ってぇーーー!!」
アスカ達はトランプの飛んできた方を睨み付ける。
「テメー、何しやがる!?」
レオリオが腕を押さえつけながら、霧の中から現れるヒソカに向かって怒鳴った。
「ククク……試験官ごっこ」
ヒソカは冷笑を浮かべながら答えた。
その様子を近くの木から見つめる人物がいた。
「ヒソカの奴……随分、早く発情したわね。他はどうでも良いけど、あの少女……」
その人物の視線の先には、アスカが映っていた。
「マスターが気にしている彼女を殺すようだったら、私が止めるしかないわね」
フゥと息を吐き、その人物は髪をかき上げた。
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