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「幻想砕きの剣 9-9(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-07-05 22:32)
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13日目 夕方 本隊


 ドム達は言葉を失っている。
 目の前には、荒れ果てた大地と数々の死体。
 そして流れ出る血に染められた大地。


「…バルサローム…」

「は…」

「俺は…軍人になってから、いや産まれてからこれ程の死山血河を見た事がない…」

「私もです…。
 “破滅”が起こる以上、このような事態は予想できましたが…」

「…民衆達がここを通る前に、処理を急がせろ」

「御意」


 バルサロームは部下を動員して、散乱した死体や血を片付け始めた。
 と言っても、精々燃やす程度だが。

 ドムはアザリンに目を向けた。
 流石に顔が蒼い。
 やはり年頃の少女、血生臭い戦場跡を直接見たのは刺激が強すぎたらしい。


「…ドム」


「は」


「この先も、このような戦場跡が幾つも転がっていると思うか?」


「…恐らく…幾つかは在る筈。
 このような戦場跡が…幾つも進行ルートの上にあるとは限りませぬ。
 しかし、やはり皆無とも言えません。
 少なくとも、あと…2つ…いや3つは覚悟をされておいた方がよいかと…」


「覚悟など…この地を去る事を決めた時、既に整えたわ。
 後始末にどれほどかかる?」


「…荒れ様は酷くても、残っている死体の始末には然程時間は必要ありません。
 どうも、まだ安定していないようですし…」


「安定?」


「無限召喚陣から召喚されたのでしょう。
 召喚陣からの魔力の補給が途切れ、存在を確立するためのエネルギーがつきかけているようです。
 最初に魔法使いを数人動員し、簡単な…そう、解呪の術を使えばエネルギーは散り、魔物の死体も消えていくはずです。
 長く見積もっても、5分程度でしょうか」


 無限召喚陣、と聞いてアザリンは怒りと悔しさに奥歯を噛み締めた。
 その召喚陣は、自然界に満ちているマナを吸い取って力に変える。
 つまり、今現在進行形で、アザリンが愛するホワイトカーパスの地の生命力を吸い取り続けているのだ。
 おまけに、必要なエネルギーは膨大ときている。
 しかも、おぞましい“破滅”の魔物を生み出すために。
 アザリンにとって、これ程の怒りの燃料があるだろうか。
 もしもここに無限召喚陣を作り出し、実行した者が居れば、それが例え“破滅”の将だとしても衝動的に殴りかかっていたかもしれない。

 だが、今ここで怒りに震えている時間はない。
 もしもホワイトカーパスの地のマナが吸い尽くされてしまえば、今度はどこからマナを調達するか?
 答えは目に見えている。
 人間だ。
 最初は小動物や植物からマナを吸い取る無限召喚陣。
 その吸い取る対象は、自らが呼び出した魔物達でも容赦はない。
 生命力の弱い順に命を吸い取られ、絶命してく事だろう。
 矛先が人間に向く前に、通り抜けなければならない。
 しかも、もしも人間が召喚陣の真上を通ったとしたら、生命力の強い弱いに関係なく、問答無用で吸収される事だろう。
 進路上に無限召喚陣があれば、とにかく破壊しなくてはならない。


 アザリンはドムの報告を聞いて少し考えた。
 目の前に広がる魔物達の死体は、全て消し去るべきか?


「…いや、魔物の死体の幾つかは残しておけ」


「…民に不安を与える事になりますが?」


「だが、覚えておいて貰わねばならぬ。
 これが“破滅”だ、これが戦い…戦争だ、と。
 それに、気が抜けすぎるのも問題だしな…」


 ドムは少々難色を示したが、結局はアザリンに従った。

 そして再び前進したのだが…後ろからついてくる民衆達は、この光景を見てどう思っただろうか。
 自分達は今、戦争の真っ只中に居るのだと突きつけられて。
 一歩間違えれば、こうなるのだと思い知らされて。

 これが切欠となって、暴動が起きそうになった。
 子供が泣き出した。
 足が竦んだ者も居る。
 そう言った者達を宥め、励まし、強引にでも連れて行こうとするバルサローム達。
 彼らの苦労は、並大抵ではなかった。
 この時ばかりは、バルサローム達はアザリンに恨み言を零したものだ。

 ゴチャゴチャと揉めながらも進む民衆達。
 だが立ち止まる事だけはしなかった。
 疲れても、配られた神水を少しだけ飲み、強制的に気力体力を回復させてまた歩く。
 中には後先考えずに、一気に飲み干してしまった者も居る。
 そういう愚か者には、周囲の人達が僅かに分け与えたり、兵士が自分の神水を分けてやったりしている。
 だが、それでも…港町への道のりは、酷く長く感じられた。


13日目 夕方 大河・ユカチーム


 大河の体力は、いい加減全快してきていた。
 元々召喚器の力で、傷の治りも早いのである。
 トレイターを振るった反動で受けたダメージは、その性質は打撲や打ち身に近かった。
 そういう傷に対しては、召喚器の回復力は望外の力を発揮する。
 反動の大きさが大きさなだけに多少時間がかかったが、もう大丈夫だ。


「つーわけで、同期連携をまた大っぴらに使うから」


「使うのはいいけど…召喚陣を傷つけないでよ?」


 少し不安そうにユカが大河に釘を刺す。
 今までは、同期連携を使って、魔物達に一撃加え、同期を切り、魔物達をひきつけ、また同期…という面倒な手順を踏んでいた。
 同期に入るためには、一瞬ではあるが自分の内部に精神を向けねばならない。
 その瞬間は、完全に無防備である。
 ユカがフォローに入ってくれるからいいものの、危険な事には変わりない。
 しかも魔物の集団の中なので、ユカのフォローにも限界がある。

 そんな訳で、無限召喚陣を一つ潰すのに結構な時間を食っていたのである。
 結構な時間、と言っても2人の基準で、世間一般から見れば神速もいい所だったが。


「早い所、次に行こう。
 そろそろ本隊に追いつかれちゃうよ」


「ああ、そうだな。
 次の無限召喚陣は…本隊の進路上にある辺りだっけ?」


「うん…。
 しかもかなり大きな陣…。
 それにしても、こんなに沢山の陣を張るなんて…。
 本気でホワイトカーパスのエネルギーが枯渇しちゃう…」


 ユカは怒りと悔しさが入り混じった顔をする。
 既に3つの無限召喚陣を叩き潰したが、まだ幾つも点在している筈だ。
 規模自体はあまり大きくなかったのが救いだが、それでもマナの消費は相当なものだろう。


「それにしても、どうして一箇所にでっかい召喚陣を張らずに、幾つも点在させてるんだろうな?
 戦力の分散は、この場合あんまり意味がないんじゃないか?」


「多分、マナの密度の問題だよ。
 マナが濃くて多い所には大きな召喚陣を、比較的薄くて少ない所には小さな陣を。
 …ま、単なる推測だけどね」


 半分は正解である。
 もう半分の理由は、主に大河にある。
 彼の圧倒的な攻撃力を恐れ、一箇所に固まっていると問答無用で全滅させられる恐れがあると踏んだのだ。
 大河が居なければ、全戦力を一箇所に集結し、人海戦術を用いて本隊に襲い掛かっていた事だろう。
 もしそうなれば、カバーする範囲に対して圧倒的に数が足りない兵士達は、その圧力に耐え切れずに民衆達を護りきれない。

 ちなみに、竜巻を起こして最初に潰した召喚陣は原作よりも少し小さいくらいで、後の召喚陣は精々5分の1程度の大きさである。
 だから術者を殺して召喚陣を暴走させても、然程大きな爆発は起きなかった。


「さて、もうちょっとスピード上げようか。
 それにしても、汁婆は本当にどうしたんだろうね?」


「さーな。
 アイツの事だから、万が一って事は無いだろうけど…。
 怪我して動けないって事はあるかもな」


「あの汁婆が?」


 ありえない、と言わんばかりのユカ。
 大河としても、汁婆が行動不能なまでの傷を負うことなど想像すらできない。
 と言うか、傷がついても即座に回復しそうだ。


「ま、無いもの強請りをしても仕方ないやね」


「行こうかねサクサクと」


 妙な訛りがある口調でボヤくと、2人は走るスピードを上げた。
 本隊が到着する前に、召喚陣を叩き潰しておかねばならない。

 ユカは懐の神水を意識する。
 召喚陣の上に集っている魔物達を襲撃する前に、少しずつ飲み干している。
 そうでなければ、如何にユカと言えども体力が保つはずがない。
 戦闘中にも、時々隙を見つけて飲んでいた。
 だから体力を使う攻撃を、ポンポン叩きつけられるのである。


「残りはどのくらいだ?」


「ん、まだまだ余裕だよ。
 少し多めに入れてくれたしね。
 …あ、そこの丘の上から召喚陣が見える筈だよ。
 偵察して行く?」


「おう、行こう行こう」


 急ブレーキをかけ、2人は進路を変換する。
 そのまま小高い丘の上に駆け上がった。

 そして目を細める。


「…ほら、あれあれ」


「…多いな…」


 大河は顔をしかめた。
 木々の向こうに、魔物の団体さんが見える。
 しかも、その数は先程潰したどの召喚陣よりも多い。
 召喚陣の規模も相当なものだ。
 どうやら早い時期に敷かれた召喚陣で、殆ど魔物を突撃させずに戦力を貯め続けていたらしい。


「チッ、よりにもよって何と言う所に…。
 ルートのド真ん中じゃんか」


「偶然…じゃないだろうね。
 周囲の地形や召喚陣の配置から見て、こっちのルートを幾つかに絞り込んでいたんだよ。
 幾つも召喚陣を造ったのは、そのルートを全て封鎖するためだったのかも…」


 難しい顔をする大河とユカ。
 あの規模だと、避けて通るのも難しい。


「しかし、あの召喚陣を叩き潰したらどのくらいの爆発が起きるのやら…」


「…生き延びられるかなぁ、ボク達…」


 走って逃げるだけならどうにかなりそうだが、もしも魔物達が邪魔をしたら、流石に逃げ切れるか分からない。
 大河の全力の一撃で道を作り、そこを走り抜けるのが最も効率的だろうか。
 それに、魔物の掃討と召喚陣の破壊、両方ともとなるとかなり梃子摺りそうだ。
 数が多すぎるために気付き辛いが、明らかに魔物の増え方が今までより早い。
 恐らく、この付近はホワイトカーパスでも最もマナが多いのだろう。
 増殖率を考えると、かなりの時間がかかりそうである。
 召喚陣を維持している魔法使い達も、沢山の魔物に護衛されているだろうし、魔法使いの数自体が多い。


「とは言え…仕掛けない訳にはいかないよね。
 大河君、本隊が通る具体的な道は分かる?」


「ああ、大体な。
 その辺りに『この先、魔物の大群』って伝令を置いておくか。
 気付くかな?」


「大丈夫。
 その辺はちゃんと考えてあるから」


 ユカはニコッと笑った。
 しかし、大河には心なしかそれが過激派の笑みに見えたそうだ。


「…よし、これでオッケー。
 後はカチ込みだね」


「ヤクザみたいだな」


 パンパンと手の埃を払いながらユカが言う。
 大河は目の前に積み上げられた木を見ながらボヤいた。
 2人の前には、ユカがヘシ折って大河が積み上げた大木の壁。
 しかも、その壁にはトレイター(同期無し)で刻み込まれた『この先イベントボス』の字が。
 …イベントボスではないと思うのだが……まぁ、この先に何か居るというのは理解できるだろう。

 周囲には、哀れにもユカの鉄拳の餌食となった木の根が幾つか。
 住んでいたらしき小動物が、ちょっと恨めしげに顔を覗かせていた。
 蜂の巣でもあったら大事だが、その心配はなかった。
 何故なら、虫のような小さくて生命力の弱い生き物は、既に無限召喚陣によって動く体力を殆ど削られ、既に死に絶えている者が殆どだったからだ。


「さて、それじゃ殴りこむとするかね…。
 ユカ、気をつけろよ。
 本隊のルートを予測してここに無限召喚陣を仕掛けたのだとしたら、多分どこかに罠とか仕掛けられているから」


「わかってる。
 それじゃ、例によって隠密で近付いて、やや離れた所から同時に奇襲だね。
 開始時間は…分かれてから5分後。
 近付いたら会話もできないし…今の内に時計合わせ!」


 2人は付けていた時計の時刻を合わせる。
 ここから先は、手話と目線で会話する事になる。
 まぁ、もしも発見されたらその場で乱戦に突入する事になるだろうが。

 2人は口を噤んで、森の中を走っていく。
 時々上を見上げるのも忘れない。
 空を飛べるモンスターは、結構多いのだ。
 特に怪しい影は見つからない。
 どうやら発見はされていないようだ…。


「…? 、 、」


「…?」


「!! ← ×」


「!?」


 ジェスチャーで会話する2人。
 通訳&解説すると…。


「…? 、 、」
 ユカ、首を傾げて大河の肩を2回叩く。

「…?」
 振り返る大河。


「!! ← ×」
大変だ、と手をバタバタさせて、進行方向を指差し、バッテンマーク。
敵が来る、と言いたいらしい。


「!?」
驚愕する大河。


「って、何時までジェスチャーやってるんだよ!?」

「あ、つい…。
 それより、何だか沢山の敵がこっちに向かって来てる。
 どうも発見されたっぽいよ」」

「なんで……って、あ」

「?」

「透明なガーゴイル…」


 あ、とユカは口を開けた。
 透明なだけに影が薄いので、すっかり忘れていた。
 ヤツが青空をバックにして飛んでいたら、まず間違いなく発見できない。
 地上に居るなら木々が擦れる音や足音で察知できるだろうが…。

 舌打ちした2人は、周囲を見回す。
 木々が多く、ゲリラ戦には持って来いだが…。


「ボク達、正面から戦う方が得意なんだよね…」


「数が多いから、ゲリラ戦をやってると日が暮れるまで終わりそうにないしなぁ…。
 結局カミカゼモドキの特攻かよ…」


 今回のユカ達の役割は、敵を全滅させる事ではなく、本隊のルートの確保、及び敵の補充元となっている無限召喚陣の破壊である。
 敵を全滅させるのは、そのついでと言うかオマケのようなものだ。
 ここで留まって、ゆっくり時間をかけて戦う余裕はない。


「仕方ない…。
 ユカ、こっちから仕掛けるぞ。
 でっかい一撃で、木々を吹き飛ばして道を作る。
 この一発で、多分罠も殆ど消し飛ぶ。
 そこを真っ直ぐ通り抜けて、敵のド真ん中に殴りこみだ」


「我ながら無謀な戦い方するよねぇ…。
 それにしても、自然破壊…」


「言うなよ…」


「アザリン怒るかなぁ…」


「竜巻起こしたユカも同罪」


「はぅ!?」


 鋭い一言でユカを黙らせ、大河は同期連携を開始した。
 自然破壊については心が痛むが、どの道このまま放っておけば、無限召喚陣にエネルギーを吸い尽くされて森も死に絶える。
 ナンボかマシ、と大河は考えたが…森に意思があるとすれば、迷惑度は大して変わらない、とボヤいた事であろう。


「ギャアギャア言うなよ…。
 どっちみち、この世は熱エントロピー第二法則に基づいて、ゆるやかに死滅に向かう運命にある…。
 遅いか早いかの違いだっての。
 要するに、どうなるにせよ抗うのを止める必要はないって事だが」


 あれ、とちょっと矛盾を感じたが、まぁ置いておいて。
 大河は頭の上に大剣…敢えて斬艦刀とは呼ぶまい…を頭の上に掲げた。
 そしてどっかの悪一文字の斬馬刀よろしく、両手で高速回転させ始める。
 ユカはさっさと頭を低くして、大河のすぐ側で走っていた。

 トレイターが一回転する毎に、その長大な刀身に当たった木々が四散する。
 折れた枝や木の欠片が飛び散り、息も絶え絶えだった小動物達は力を振絞って逃げ惑う。
 その一切を無視して大河は更に回転を上げた。

 ユカは頭を低くしたまま大河から少しだけ距離を取る。
 密着するように後を追って走っていたのは、トレイターの回転によって木々の欠片が吹き飛ばされるからだ。
 大河の側の方が、返って安全なのである。
 が、そろそろ大河は一撃を放つ気だ。
 距離を取った方がいい。

 と、ユカはふと気がついた。


(そう言えば、大河君て気を飛ばせるのかな?)


 以前、トレイターを垂直に叩き降ろしたのを見た事がある。
 あの時は、前方30メートルが抉れていたが…どうも、あれは気やら何やらを放出したのではなく、純粋に衝撃の問題だったようだ。
 つまり、大地のような硬い触媒がなければ完全な威力を伝え切れない。
 それでも充分な威力ではあるのだが、相手が空中に逃げると分が悪いだろう。


(…今度、気の放出のやり方を教えてあげようかな?
 あの威力で、飛ぶ斬撃とか……そう、対空技にするんだ。
 地上に向けて撃ったら、大変な事になりそうだけど)


 物質を媒介にして走る衝撃と、気を媒介として宙を裂いて走る衝撃。
 攻撃力、射程距離共に優れているのは後者である。
 気は抵抗が少ないので、物質を媒介とするよりも威力の減衰が少ないのだ。
 もしも殆ど減衰がないまま、大河の斬撃が遠くまで届くとなると…。
 戦力的には一気に強くなるかもしれないが、周囲に与える被害、敵に与える被害共に許容できない程増大しそうだ。
 いや、敵に与える損害が大きいのはいいのだが。

 それはともかく、ユカの生体レーダーに感。


「大河君、もうすぐそこまで来てる!」

「おおりゃあああぁぁぁ!!!」


 気合と共に、大河はトレイターを振り下ろす。
 ユカは足を止め、しゃがみこんで安定を図った。
 そして顔と喉を覆い、衝撃で飛ばされるであろう色々なモノから身を守った。

 爆風。

 それしかユカには感じ取れなかった。
 目を閉じていたからだが、周囲の状況は気を探る事によって認識していた。
 しかし、大河の一撃で迸った気の奔流によって、それもシャットアウト。
 そして全身を揺らす衝撃。

 一瞬ではあるが、ユカは自分が立っているのかさえ分からなくなった。


「行くぞユカ!」


「! オッケー!」


 腕を掴まれる。
 大河が動いているという事は、もう目を開けても大丈夫なのだろう。
 目を開いたユカは、目に入って来た光景に目が点になった。


「…すっごー……」


 それしか言えない。
 目の前には、舗装されてるんじゃないかってくらいに滑らかな道。
 半円柱型に抉れ、真っ直ぐに続く道。
 これなら確かに邪魔が入らずにトップスピードで走れるだろう。
 左右の森からの奇襲を警戒しなければならないが、森の中をジグザグに突っ切るよりはマシだ。


「呆けてないで、突撃だ突撃!
 敵を察知したら教えてくれよ!」


「わかってるよ!」


 叫び返しながら、ユカはやっぱり気の放出を教えるのは止めた方が良さそうだと思った。


13日目 日暮れ 本隊


「………なるほど、確かにわかりやすい」


「ドでかい掲示板ですな…」


「…誰だ?
 XYZと書いたバカモノは。
 居るなら協力してほしいものだが…」


 ドムとバルサロームは、幾つも重ねられた木を見てボヤいている。
 暫く行軍していたのだが、周囲を警戒している兵士の一人が妙なモノを見つけたのである。
 言わずもがな、大河とユカが造った伝言板(?)だ。

 そこに書いてあったメッセージをドムに伝えたのだが、ドムはそれに興味を持った。
 特に意味はなかったが、先に展開しているらしき魔物の群がどうなっているか調査しなければ、進むに進めない。
 不本意ながら一旦行軍を止め、近くの丘に兵士をやって状況を探らせ、ついでに自分は興味が向いたモノを見物に来たわけだ。


「ところで、後方の状況はどうなっている?」


「シア・ハスからの伝令によりますと、損害を受けながらも何とか足止めしているようです。
 タイラー殿の部隊も後方を突くことに成功し、敵は浮き足立っているようです」


「…殲滅までどれ程かかる?」


「このまま何事もなければ…半日もあれば全滅できるかと」


「……クサイな…」


「は?」


 ドムは眉を顰めた。
 敵が余りにも脆すぎる。
 いかに奇襲を成功させ、如何に指揮官がタイラーとは言え、戦とはここまで思い通りになる物ではない。
 背後に何か企みがあるのか?
 そう思うと、ドムは妙に落ち着かない気持ちになる。
 タイラーと同じ危惧を抱いているのである。


「…考えたところで、今やるべき事に変わりはないか。
 俺の閃きも、差し迫った危機を伝えている訳ではないしな…。
 よし、今度は丘の上に向かうぞ、バルサローム」


「はっ」


 ドムは馬を駆り、近場の丘の上に昇って行った。
 既に数名の兵士が待機している。
 双眼鏡を使い、魔物の群を偵察しているようだ。

 兵士の一人がドムとバルサロームに気付き、仲間に合図をやって敬礼した。


「どうだ?」


「はっ、確かに魔物の軍勢が前方に展開しています。
 しかも、今までに見た事がない程の大軍団で…。
 規模は……ええと、暫しお待ちを…」


 兵士達はドムに一礼して円陣を組んだ。
 何やら相談しているようである。



「だから、全体数が約千匹で…」
「いや、そこまで行かないって」
「精々500じゃないのか?」
「でもあの増殖率を考えるとだな…」
「それを言ったら、お2人の攻撃で倒されている魔物は…」
「だからそれを計算に入れて500だって」
「待て待て、それだと400ぐらいだと」
「それは幾らなんでも…周囲の森に隠れてる魔物も居るようだし」
「当真殿の攻撃の余波で吹き飛ばされてるって」
「あ、また吹き飛んでる」
「当真殿か? あの一発で約10体が消し飛んだとしたらだな…」
「おい、また増殖したぞ」
「一気に出てきたな…このままだと1000まで行くんじゃないか?」
「いや、どうやら増殖させるのには魔法使いの数が関係しているようだし…」


「だからさー、一番上と一番下を省いて、あと平均を出してだな…結論が出ました。
 現在の全体数600、30分につき130匹増殖、当真殿とユカ殿の攻勢で、同じく30分につき約150から200体殲滅と出ました」


「どういう計算だバカモノ」


 バルサローム、呆れ気味に拳骨を落す。
 兵士は痛そうだったが、さすがに自分達の計算がムチャクチャなのは分かっている。
 既にドムは兵士達に見切りをつけ、奪った双眼鏡で魔物の群を見ていた。


「…大暴れしているようだな。
 あれだけ引っ掻き回されれば、敵の数が分からなくなるのも無理はないか」


 ドムが呆れ気味に呟き、バルサロームに双眼鏡を手渡した。
 受け取ったバルサロームは、ウジャウジャ動いている魔物の集団に目を向ける。
 その視界の中を、黒い影が走りぬけた。


「? 今のは…」


「魔物達が倒されているだろう?
 タケウチ殿が、敵の合間を縫って移動しながら戦っているらしい。
 全く…この一日で、乱戦集団戦における自分なりの必勝法を確立してしまったようだな。
 呆れた才能だ…」


 多少の嫉妬を含んだ呟きと共に、バルサロームの視界が今度は爆発に覆われた。
 これが何かは言うまでもない。
 大河のトレイターによる一撃だ。
 どうやら例によって左右に大剣を振り回しているようだが、相変わらず不条理なまでの攻撃力だ。


「ふむ…どうやらこの逃避行で最大の難所がこの辺りのようだな」


「分かるので?」


「ああ、この辺りはホワイトカーパスで最もマナが肥沃な土地だ。
 何故なら、どう言う理屈かはともかくとして周囲のマナが流れ込んでくるからなのだ。
 それを利用して、この異様なまでの増殖率を実現させているのであろう。
 言い換えれば、この周囲の土地ではマナはあまり多くない。
 無限召喚陣を敷く事は、ほぼ不可能と言っていいのだ。
 しかし、これほどに巨大な召喚陣は、恐らく史上初めてだろうな…。
 憎むべき敵ながら、大した力量だ。

 問題は待ち伏せを受けたり、敵に追いつかれたりする事だが…」


「この大軍に比べれば、そちらの方がまだ簡単だと思えますなぁ…」


 実際にどちらが困難かはともかくとして、魔物達が犇めき合って蠢き合って戦いの雄叫びを上げている光景は、そう思わせるだけの迫力を持っている。
 まぁ、その光景も大河とユカの2人にブチ壊されようとしているが…。

 ドムは大河とユカの暴れっぷりを遠目に見ながら、渋い顔をした。
 バルサロームはそれに気付く。


「どうされました?」


「いや、ああまで暴れているのを見ると、俺も少々血が騒いでな…。
 それはともかく、2人が戦い始めてどれくらいの時間が経っていると思う?」


「そうですな…先程の掲示板…言えるかは分かりませんが…あれに使われていた木の折れ跡から察するに、戦闘開始から…少なく見積もって3時間は経過していると考えられます。
 それが何か?」


「…いかんな。
 もうすぐ日が暮れるぞ」


「森の中…ですな」


 バルサロームにも、ドムが何を危惧しているのか予想がついた。
 まず、このまま戦い続ければ大河とユカは暗闇の中で魔物の大群に囲まれる事になる。
 多少の灯りは魔物達も点けるかも知れないが、不利な事には変わりない。
 いくら大河とユカと言えども、魔物ほど夜目は利かない。

 それに、このままだと数時間は本隊が立ち往生してしまう。
 休息と考えられない事もないが、神水の効果を考えるとあまり意味はない。
 それに、それだけ休んでいれば確実に後ろからの追撃に追いつかれる。

 何より、仮に順調に敵勢力を全て撃破したとして、このまま進むのは危険である。
 何せ、時間帯を考えると夜中に、道が作られているとは言え森の中を進むのである。
 必ず遭難者が出る。


「他に道は無かったのですか…?」


「ここが最もマシなルートだったのだ。
 出発の時間帯をずらそうにも、目的地に着いてからの行動に影響がある。
 世の中ままならんモノよ…」


 兵士の呟きに、苦虫を噛み潰したような表情のドムとバルサローム。
 そのドムに、兵士が何か耳打ちした。
 兵士から双眼鏡を引っ手繰る。

 じっくりと森を舐めるように見る。
 木々の下は殆ど見えないが、木の枝が揺れているのは見えた。
 じっと集中し、視界に写る全ての木の枝の揺れを把握する。


 そのまま1分ほど経過。


「…いかん!
 最大の危惧が…!」


「何事です!?」


「魔物達め、大河とタケウチ殿に勝てぬと見て本隊の方へ向かいだした!
 2人は戦闘が手一杯で気付いておらん!」


 ドムが枝を見ていた理由。
 揺れる枝の下に、魔物達が居ないか探り出そうとしていたのである。
 その揺れの幾つかが、本隊が居る方向へ向かっていた。
 恐らく、風に乗って漂ってくる大量の人間の匂いに気付いたのであろう。
 魔物…特に凶暴な魔物は、敵が目の前に居る限り、例え勝てない相手でも闘争本能の限りに戦いを挑む傾向がある。
 そして、“破滅”の魔物達はこの傾向が大きい。
 しかし、中には例外も存在する。
 いや、別方面の凶暴さ、と言った方が正確だろうか。
 目の前の敵と戦うよりも、確実に勝てる相手を殺しに向かうのだ。

 今、大河達から離れて本隊へ向かっている魔物達はそういう者達だろう。


「バルサローム、今すぐに本隊に戻って防備を固めろ!
 お前達もだ!」


「「「はっ!」」」


「ドム様は如何に?」


「俺は大河達に知らせてくる。
 あの大軍に突っ込んで無事に戻れる者は、俺以外には居るまいよ」


「それは…そうですが…」


 流石にそれはヤバい。
 指揮官ともあろう者が、敵の真っ只中に突っ込むなど…。
 しかし、他に大河達に知らせる事が可能な者は。


『その役、俺が適任だ』


 居た。
 唐突に現れたのは、銀色の肌、でっかい鼻の穴、黒目のない目、ボサボサの鬣、そして筋肉があるのか無いのかサッパリ解からないというのに力強い事だけはイヤになる程よく分かる体躯。
 そう、汁婆だった。
 しかし。


「ど、どうしたのだ汁婆…。
 お前ほどの漢が傷だらけになって…」


『なに、ちっとばかり生意気な虫と遣り合ってな
 まぁ大した傷じゃねぇ
 出血が多く見えても、単なる擦過傷と変わりない』


「そうか……。
 それにしても、赤かったんだな、お前の血…」


『銀色だとでも思ってたか』


 何気に傷だらけだった汁婆に驚くドム。
 生意気な虫、と言っているが、汁婆が何かに梃子摺ったのは間違いない。
 傷の方は……汁婆にしてみれば、本当に擦過傷と変わりないのかもしれないが。


「問題ないのだな?」


『俺を誰だと思っている
 ヤツらを助けてやらにゃあな』


「…分かった。 頼んだぞ」


『オウ』


 汁婆は、それだけ言い残すと疾風のように丘を駆け下りて行った。
 兵士達は呆然としている。
 やはり汁婆を間近で見るのは、少々刺激が強かったらしい。

 ドムとバルサロームは兵士達にカツを入れ、本隊へ急ぐ。
 本隊の中枢…この場合アザリンではなく民衆達…から、極力離れた場所に戦線を築かなければならない。
 恐怖に煽られた民衆は、あっという間に暴徒と化すだろう。
 戦場を目の前に突きつけられれば、その恐怖を克服するなど無理な話だ。
 だから、民達の目に触れないように敵を食い止めねばならないだろう。
 自然とその足を止める事になってしまい、後ろからの追撃にも追いつかれるだろう。
 しかし、暴徒と化されるよりは幾らかマシだった。
 何せ民衆を相手に力を振るう訳にはいかない。


「大河達が無限召喚陣を完全に機能させなくなるまで、あとどれだけ時間がかかるか…。
 ここで守りに入っても、こちらの消耗が大きくなる。
 ここは敢えて前に出るぞ!」


「了解しました。
 援護に向かう部隊と敵を足止めする部隊、民の警護をする部隊の比率は?」


「3−4−3…いや、4−3−3だ。
 敵の根元を叩き、召喚陣を潰せば安定してない敵は自然と消えるだろう。
 援護部隊は飛び道具を主に使う部隊、足止めは重装備の歩兵部隊を主とせよ」


「はっ」


 出来れば工作兵も使って森の中に罠を仕掛けたい所だが、時間的に心許ない。
 それに、その森の中を本隊は突っ切るのだ。
 味方が罠にかかってしまっては話にならない。


 急ぎ本隊へ合流したドム達は、即座に部隊を動かし、敵を通さぬための鉄壁の防御を作り上げた。
 最初は数匹程度の魔物しか迫ってこないだろうが、すぐに増加する事だろう。
 大河達へ躍起になって迫っている魔物も、そろそろ闘争本能よりも生存本能の叫びが強くなる頃だ。
 汁婆まで乱入しているであろうから尚更だ。
 一匹外れればまた一匹、また一匹とどんどん戦線離脱し、そして本隊に迫ってくる。

 報告を聞いたアザリンは、苛立たしげに杖を握り締める。


「敵を駆逐するのに、どれほど時間がかかる?」


「このままであれば、2時間ほど…」


「遅い!」


「承知。
 魔法使い達に命じて、この付近一帯のマナの流れを掻き乱します。
 そうすると、奴らが無限召喚陣に使用しているマナの力が一時的に弱まり、増殖の速さも幾分抑えられるはずです。
 大河とタケウチ殿ならば、その隙を見逃しますまい。
 その隙に一気に攻勢をかけ、召喚陣もろとも敵を踏み潰します」


「それでもまだ時間はかかるな…。
 いっそ火計でも使えれば楽なものを…」


 アザリンは爪を噛む。
 流石にこの状況で火計は無いだろう。
 ホワイトカーパスの森を燃やすという暴挙を脇に置いても、これから進む道を炎の道にする事はない。


「陛下、どうかもう少しお下がりを…」


「いらぬ。
 ここまで民の皆が付いてきてくれたのは、朕が先頭に居るからこそ。
 領主として担ぎ上げられるのではなく、同じ道を、同じ足で同じように歩んでいたからこそ。
 先陣を切って歩んでいた朕が、いざ戦闘が近付けば兵の、民の体を盾にして後ろに下がるなど…。
 誰が許しても朕が許さぬ!」


「誰もそんな陰口は叩きませぬ!
 そうでなければ、民はここまで不平不満を叫ばずに付いては来ませぬ。
 俺自身も、そのような陰口は叩かせません!」


「それでもじゃ。
 ドム…これは朕の我侭じゃ。
 通してはくれぬか…」


 アザリンはドムをじっと見詰める。
 この目にドムは弱い。
 弱いのはドムだけではない…バルサロームも、シア・ハスも、タイラーも、この目で見詰められるとどうにも自分の意思を押し通せなくなる。
 例えそれが戦略的にマイナスだったとしてもだ。


「…承知いたしました」


「礼を言う…」


 すまない、とは言わない。

 ドムはマントを翻して踵を返した。
 アザリンがすぐ後ろに居る以上、一体たりとも魔物を通す訳にはいかない。
 アザリンには指1本触れさせぬ。
 その気概は、アザリンの護衛をしていた兵士達にまでも伝わっていた。
 それどころか、彼女のすぐ後ろを歩いていた民にまでも及んでいる。
 民達はアザリンとドムが何を話しているのかまでは聞き取れなかったが、状況を鑑みればある程度は予想がつく、

 民達は、理由はそれぞれながらも覚悟を決めていた。
 万が一の時には、自分達でアザリンを生かすのだ。
 悲壮な覚悟を決めつつも、兵士達によって誘導される民衆達。
 ともあれ、どうやら暫くは足止めらしい。
 後ろからの追っ手を考えると落ち着いていられないが、先に進んでも魔物の餌食になるだけだ。
 パニックに陥りそうなものだが、そこは目の前にアザリンが居るのだ。
 如何に領主とは言え、歳幼い少女。
 彼女が恐怖を微塵も見せずに毅然と立っているのを見て、「何とかしろお前ら!」とか「助けてくれぇぇぇ!」とか、恥も外聞もなく叫び散らせるだろうか?
 如何にパニックに飲まれやすいとは言え、人には意地というものがあるのだ。
 それに、ホワイトカーパスの人間は多少なりともラアルゴン…ホワイトカーパスの前身となった、アザリンの始祖達の血を受け継いでいる。
 闘争本能が薄れはしても、戦い対処する本能までは失いきってはいない。


 ドムはアザリンから離れ、魔物の群の迎撃に向かった。
 既に数体を迎撃し、襲ってくる魔物は徐々に増加し始めている。
 このまま増え続ければ、ドムと言えども何時かは押し切られるだろう。


「だが、支える!」


 護りに徹しなければならないのは不本意だが、大河達ならば必ずやってくれるだろう。
 無限召喚陣を落としたら、そのまま戻って加勢するように伝えてある。
 それまでは、敵の攻勢を防ぎつつもジリジリと前進するのだ。


 そのまま30分、既に日は沈んでいる。
 魔物達の攻撃は、益々数を増している。
 贔屓目どころか厳しく見ても、ドムと兵士達はよくやっていると言えた。
 本当に魔物の群を、一匹たりとも通していない。
 兵士達の士気、ドムの実力、二つが合わさってようやく出来る離れ業である。

 戦いの手を止めて、バルサロームは一旦戦線から引いた。
 ドムの側へ駆け寄る。


「ドム様、このまま前進すると戦線が森の中に…」


「分かっている…。
 後方の様子はどうだ?」


「あと一時間は保たせて見せる、と言っています。
 タイラー殿率いる部隊が、上手くやってくれたようですな。
 追撃する魔物達の数も、大分減っているようです」


「ふむ、借りが出来たか…。
 いずれ返さねばな。
 魔法使い達は?」


「疲労困憊…。
 流石にマナの流れを掻き乱すのは重労働だったようです。
 しかし、彼らの粘り強さが発揮されるのはこれからですな。
 もっと強力にマナを掻き乱すなら…長くて30分、このままなら45分。
 申し訳程度でいいなら一時間、と言った所です」


「現状のまま続けさせろ。
 戦線はこれ以上進むな。
 ゲリラ戦に長けた工作部隊を出して、森の中で大物を足止めさせておけ」


 ドムは指示を出して、剣の脂を拭うとまた敵に斬りかかって行った。
 指揮官自ら剣を手にとって戦うなど、負け戦の流れそのものだが…これがドム家のみならずホワイトカーパスの将の伝統と言えば伝統である。
 自らも戦場に身を置き、その空気を指揮官自ら感じ取り、そして共に命をかける。
 そうやってこそ得られる信頼もあるし、己の命がかかっているからイヤでも熟考せざるを得ない。
 ヘタな作戦を打てば、即座に自分も露と消える。
 そうやって淘汰され、伝えられてきた戦術と戦略、武芸はホワイトカーパスの戦力を着実に最強の名に近づけてきた。
 切り捨てる事、犠牲を払う事、そして指揮官を囮にする事、何よりも主君の命令に従う事も含めて、様々な戦術・戦略が凝縮されている。
 ドムはある意味では、その集大成と言えるかもしれない。


 流石にこれだけ派手にドンパチやっていれば、民衆達も不安に陥ってくる。
 アザリンという存在があるからこそ耐えているが、このままでは暴発も近かろう。
 いっそ本気で火刑を使うか、と考えるドム。
 その時である。

カッ――ゴゴゴゴズズズドドドドドドドドドォォォォンン!!!!

 日が暮れ、紺色の帷に覆われかけていた空を突き上げる、巨大な火柱が立ち上った。
 物凄い衝撃を伴い、まるで地震が起きたかの如き振動。
 流石のドムも兵士達も、魔物達もバランスを崩して倒れこむ。


「ムギュッ!」
「ぐえ!」
「あだだだ!」
「ふぃふぁはんはー!(舌噛んだー!)」
「重っ、重っ!」
「レ、レディに向かって失礼な!」
「そんだけ重装備ならネコだって重くなるぁだだだだ!」
「シャ−ッ!」
「このっ、魔物め潰れちまえ!」
「角が、角が当たって!」
「ケンガササッター!」 
「飛んできたキバにササッター!」


 魔物達と不本意ながらもくんずほぐれつする兵士達。
 運の悪い事にゴーレムの下敷きになったり重装歩兵の下敷きになったりムキムキマッチョに押し倒されたりと、中々に悲惨な状況になっている。
 ドムは倒れこんできたフロストガーディアンの核を咄嗟に貫き、押し潰される前に地を転がってフロストガーディアンの下から飛び退いた。

 地震はまだ続いている。
 火柱もだ。


「こ、これは…!?
 大河達か!?」


 ようやく訪れた反撃の転機に、喜色満面のドム。
 無限召喚陣を潰したのだとしたら、マナの流れに干渉していた魔法使い達には分かる筈。
 ドムは何事か報告させようと振り向く。
 が、魔法使い達は口を抑えて倒れこんでいた。
 どうやら詠唱中に舌を噛んだらしい。


「ち、ちと同情の余地があるな…」


 思わずぼやくドム。
 この振動だ、相当に強く噛み付けたのだろう。
 呪文を唱えている真っ最中だっただけに、回避のしようもない。

 ジタバタ転げまわっていた魔法使いの一人が、地べたに臥せったままドムを見る。
 必死で片手を挙げ、握って親指を上に。


「…そうか。
 よし、お前たち何時までも転んでいるんじゃない!
 無限召喚陣は潰れた、反撃に出るぞ!」


「「「「お、おおぅ!」」」」


 振動に翻弄されながらも、時の声を上げる兵士達。
 こけつまろびつ、各々体勢を低くして立ち上がる。
 それに伴って、魔物達も圧し掛かっていた人間が居なくなって自由になった。
 しかし、そこで逃がしてやるほど甘くは無い。
 バランスが取れないながらも、倒れている魔物に向かって兵士達が剣を突き下ろす。
 立ち上がろうとした魔物の殆どは、地に縫い付けられて息絶えた。

 正念場はここからだ。
 凄まじい振動でまともに立ち上がれない兵士達。
 それは魔物達の殆ども恐らく大差ないだろう。
 無限召喚陣によるあの大爆発のお蔭で、召喚陣付近に居た魔物は消し飛んだだろう。
 安定していない魔物も幾らか居たようで、既に姿が薄れ始めている。
 しかし、あの大爆発を目印として他の魔物の群が迫ってくると思われる。
 それを凌ぎ、全滅させ、道を確保してやれねばならない。


(来るなら来い!)


 覚悟を決めるドム。
 しかし、その思いは意外な…いや、必然と言うべきか…敵に遮られる。


「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「!?」


 後方から響いた絶叫。
 兵士ならこんな悲鳴は出さない。
 アザリンならば尚更だ。
 となると…。


「ちっ、民衆か!」


 ドムは自分を絞め殺してやりたくなった。
 何と言う凡ミス、そして致命的なミス。
 ギリギリの緊張感を強いられた民衆の事を忘れていた。
 突然上がった火の手のせいで、完全に恐怖心の歯止めが効かなくなってしまったのだ。
 誰が最初だったのかは解からない。
 一人のパニックは、あっという間に伝染していく。
 元々、ここまで恐怖心を抑え込めた事自体が奇跡に近かったのだ。
 こうなってしまっては、もう止める術は無いに等しい。
 力技で止めるか?
 いや、更なる混乱を招くだけだ。
 アザリンに呼びかけてもらう?
 …有効そうだが却下。
 ヘタをすると暴動の矛先がアザリンに向かいそうだし、そもそも彼女も舌を噛んだらしい。

 今は地震の為に一人として動けないようだが、地震が下火になるに連れて逃げだそうとする者が続出するだろう。
 この状況で何処へ逃げるというのか、そんな事も考えられずに。

 ドムが民衆の事を忘れたのも、無理もないと言えば無理もないかもしれない。
 戦場にこれほど大勢の民間人が居るなど、アヴァター始まって以来の事ではなかろうか。
 流石の彼も、反撃のチャンスを目の前にして、普段は居ない存在の事を一瞬でも考慮の外においてしまった。
 しかし、どれほど仕方ないと言った所で、ドムにとっては免罪符にもならない。


(何とか鎮める方法を……!?
 あれは……)


 ドムはぶれる視界の中、虚空を飛ぶ一筋の閃光を見た。
 火柱を背後に高く飛翔し、彗星のように光の尾を残して弧を描く。

 それを見た時、ドムは我知らず口元に笑みを浮かべた。
 それと同時に、地震が急に下火になる。
 無限召喚陣に蓄えられていたエネルギーが、底を付きかけているらしい。
 もうすぐ魔物と民衆は動き出すだろう。
 放っておけば、それこそ未曾有の大惨事大損害だ。
 しかしドムは慌てなかった。
 自分も逸早く立ち上がり、地震なぞ関係ござらんとばかりに空を飛んで民衆に接近しようとしていたガーゴイルに向かって飛び上がる。
 閃光一閃、ガーゴイルは3匹束になって地に叩き落された。


「うぅ、うっ、うわ、うわあぁぁぁ!」


 しかし、空を飛んでいたのはガーゴイルだけではない。
 機械仕掛けのゴーレム…ガーディアン達が大挙して民衆に迫っていたのだ。
 ドムの間合いには、少し遠い。
 このままでは、密集した民衆達はガーディアンの砲撃によって爆裂四散してミンチになってしまうだろう。

 だが。
 そうはさせじと、猛烈な加速を伴って突っ込んでくる人影!
 そして…どこからともなく流れてくる、流麗な音楽


「…音楽?」


 ドムは疑問符を浮かべた。
 どっかで聞いた事があるような曲だ。
 およそ戦いとは縁のない印象を受けるが…。

 パニックに陥っていた民衆の一部も、思わず動きを止めて聞き入っている。
 恐らくは現実逃避なのだろうが…。

 しかし魔物達には関係ない。
 頭に血が上っているらしく、音楽の事も空を飛んでくる人影の事も全く気付いていないようだ。
 ガーディアンに血の気があるかどうかは別として、音楽に構わず民衆達に狙いをつける。
 あわや発射…と思われたが。


ズガガガガガガ!


 次の瞬間、がーディアン達は粉々に砕け散った。
 間髪入れずに降り注ぐ、得体の知れないエネルギー塊。
 盛大な土煙を巻き上げながら、アザリンと民衆に迫っていた魔物達は撃退された。
 砂煙で視界を遮られ、混乱する民衆達。
 その周囲を兵士達が警護のために固める。
 しかし、その土煙は突風に吹き散らされる。


「「ユニゾンキーーック!」」


 裂帛の気迫を篭めた気合が響き渡り、混乱していた民衆は一瞬金縛りにさえ陥った。
 まるで心の一方だ。
 物凄いスピードで風を巻きながら突入してきた人影は、その勢いのままに一際巨大なゴーレムを蹴り砕く!
 そのまま着地、慣性を打ち消すのに4メートルほど横滑り。
 奇しくも停止した位置は、アザリンのすぐ前だった。

 顔を覆って突風と砂煙から逃れていたアザリンは、目の前の2人に目を向けた。


「お、お主ら…」


「アザリン、無事!?」


「ドム将軍は!?」


「朕は無事じゃ。
 ドムは向こうで戦っておる。
 報告は後じゃ。
 疾く狼藉者どもを蹴散らせ!」


「「承知!」」


 呆然としている兵士や民衆を他所に、2人…大河とユカは同時に前に出た。
 2人の息がピッタリ合っている。

 音楽は既に中盤に差し掛かっていた。
 終了まで32秒。


「大河君、行くよ!」


「分かってる!
 32秒でカタをつける!」


 視線も合わさず、大河が一歩分先行。
 トレイターを水平に薙ぎ払った。
 一瞬で消し飛ぶ魔物達。

 剣を振り切って腕が伸びた瞬間を狙って、魔物達が詰めてくる。
 しかし、今度はユカがその真ん中に飛び込んだ。
 大河が大きく飛び上がるのと同時に、ユカは両手を大きく広げて体を捻る。
 そして体内の氣を放出させながら叫んだ。


「円空破ァッ!」


 ユカを中心とし、真円を描く波動が魔物達を打ち据える。
 距離を詰めようとした魔物達は、その一撃で命を絶たれるか、バランスを崩して動けなくなった。
 その瞬間を逃さず、上空の大河がトレイターを振るう。


「フェイテッドサークル!」


 直接刀身を叩きつけずとも、この程度の距離ならエネルギーの余波だけで充分な威力が見込める。
 気を飛ばすほどの破壊力は得られないが、元が元だ。
 円を描くように振られたそれは、まだ生きていた魔物達の命を確実に刈り取った。

 原作と違って全く同じ動きをするのではないが、互いのスキを補い合い、長所を活かしあうコンビネーションはユニゾン…調和の名に相応しい。
 既に地震も収まり、民衆も魔物達も自由に動けるようになっている。
 しかし、先程のようにパニックのままに逃げ出そうとする者は一人も居ない。
 全員、突然登場した二人の所業に度肝を抜かれているのだ。
 登場早々ガーディアンの群を粉砕、更にゴーレムを一撃で破壊して、10秒も経たないうちに接近していた魔物達の殆どを薙ぎ払ってしまった。
 「これまでの兵士達の苦労はナンだったのか」とか「これは現実か」とか、そういう疑問すら持てない。

 しかし兵士達は流石に優秀で、大河達が僅かに打ち漏らした魔物達を逃さぬよう、一気に集団で囲んで殲滅する。
 それを見て防衛は問題ないと判断したのか、ユカと大河はドム達が戦う前線へ向かう。
 随分な数の魔物達に圧力を掛けられ、必死に抵抗していた兵士達だが、2人の登場で気力が一気に沸きかえったらしい。
 ドムはそれを逃さず反撃に出る。


「本格的に攻勢に転じるぞ!
 無限召喚陣の爆発から逃げてくる魔物達を薙ぎ払え!」


「「「「「「「
  オオオオオオオオォォォォォ!!!
                 」」」」」」」」」


 勝利は決まったと言わんばかりの絶叫を上げ、兵士達は剣を振りかざす。
 大河とユカに道を空け、すぐにその穴を塞いだ。

 音楽の終了まで、あと20秒。

 ワラワラ沸いてくる敵達のど真ん中に突っ込んで行った大河とユカだが、その勢いは無人の野を行くが如し。
 元々大河とユカにとって厄介なのは、魔物達の能力よりもコンビネーションだ。
 しかし、今の魔物達にそんな単語は存在しない。
 無限召喚陣の大爆発から逃げる際に、辛うじてとれていた統制も全くきかなくなってしまった。

 おまけに目の前には、先程無限召喚陣のある場所で大暴れしてくれた人間が2人。
 その2人から逃れて、この兵士達を相手にしていたというのに…。
 気分的には、逃げられたと思ったら罠だった、のような感じだろうか。

 向かってくる魔物は、殆どがヤケッパチになっているようだ。
 大河もユカも、一切の慈悲を見せずに片っ端から殲滅していく。

 音楽の終了まで、あと15秒。

 大河の攻撃は、周囲の木々まで巻き込んでいる。
 大木が倒れ、時々魔物や兵士達を巻き込みかけていた。
 その倒れる木々の間を縫ってユカが疾る。
 暗殺者顔負けの気配の消し方で、見事に森に馴染んでいた。
 暗闇に姿を隠し、森の中で様子を見ていた魔物達を確実に、静かな一撃で仕留める。
 時々バシッと閃光が走るのは、ユカが気弾を使っているのだろう。

 音楽の終了まで、あと10秒。

 魔物達の勢いが弱くなってきた。
 どうやら大河達の存在を察知して、方向転換して逃げようとしているらしい。
 追撃したい所だが、夜の森に魔物達を追って分け入るのは危険すぎる。

 ユカが森の暗がりから飛び出して後退、それに合わせて大河も後ろに下がる。
 ユカは目を閉じ、気を放出する事に集中し始めた。
 額に脂汗が滲んでいる。
 本当は氣を使えれば手っ取り早いのだが、ここで多感症になるのはゴメンだ。
 大河は無防備なユカを護るようにトレイターを振る。

 音楽の終了まで、あと5秒。

 ユカがカッと目を見開いた。
 大河は背後の気の昂ぶりを感じて、トレイターを高く掲げる。
 そのトレイターの刃を目掛けて、ユカは手の中に放出され留まっていた気の塊をレーザーのように放射させた。


「究極! 気吼弾ーーーーーー!」


 トレイターに直撃。
 しかし、トレイターはこの程度では折れるどころか欠けもしない。
 ならばどうなるか?


「ぬっ…ぐぅう……!」


 当然大河の腕に負担がかかる。
 そしてユカが放った気の奔流は、トレイターの刃に裂かれて真っ二つに分かれていた!
 半分ずつになったとは言え、充分すぎる破壊力を持つ気の奔流。
 各々魔物達を複数呑み込んで、その威力はまだ衰えない。

 気を放ち続けるユカも、かなり消耗しているようだが…。
 大河はトレイターの角度を変え、究極気吼弾がトレイターの刃に当たる角度を変える。
 すると、当然真っ二つになっている気の奔流が向かう方向も変化する。
 大河は巧みに角度を変更し、周囲一帯を薙ぎ払っていった。
 分かりやすい例を挙げると、獣の槍に雷(特大)を落としたのと同じような攻撃方法だ。


 やがて、ユカが片足をつくと共に気の奔流は途切れた。
 荒い息が響く。
 音楽は既に終わり、周囲は静まり返っていた。
 …別に、兵士達まで気の奔流に巻き込んで全滅させたのではない…数人ちょっと焦げたが。

 目の前に広がるのは、壮絶な破壊後。
 森も、魔物も、その残骸があちこちに横たわっていた。
 民衆達のみならず、アザリンもドムも兵士達も、その凄惨な光景に言葉を失っていた。
 実行した大河とユカも、「ちょっとやりすぎたか?」と思っている。

 が、とにもかくにも敵襲は止んだ。
 大河とユカのコンビプレーで、近場に残っていた魔物は殆ど消え去ったらしい。
 ユカは呼吸を整えながら、油断なく周囲に目を配っている。

 大河はチラリと背後を見て、トレイターを軽く回転させ、地面に突き立てた。
 同期は解いているとは言え、充分すぎる質量を持った大剣は地響きを立てながら大地に直立する。


「……ふぅ」


「……大河」


「あ、ドム将軍…」


「ご苦労だった。
 報告を聞かせてもらう。

 総員、部隊を立て直せ!
 終わった部隊から順に、森の中の進路を確保せよ!」


 我に返ったドムの号令で、弾けるように兵士達は動き出した。
 負傷者の数、死人の数を数え、自分達の戦力を把握しようと動き回る。


 一方民衆はと言うと、静かにどよめきが広がりはじめていた。
 あれだけの破壊を為した大河とユカ。
 普段ならば恐怖の対象にしかならなくても、死が目前にまで押し寄せていたこの状況なら救いの神にも見える。
 大河の大剣に注目が集まり、大河自身にも恐怖と「助けてくれ」との懇願を載せた視線が集まっている。
 ユカも同じだ。

 大河はドムに色々と報告するので忙しかったが、休んでいたユカは敏感にその視線を感じ取った。
 これだけの人数から見詰められれば、特に敏感でなくても感じ取れるが。
 どう反応すべきか少し迷い、アザリンに助けを求めるように視線をやる。
 アザリンは悪戯っぽい表情で、ちょっとしたジェスチャーを送った。

 キョトンとしたユカだが、すぐに頷く。
 ユカは残り少ない神水を少しだけ飲むと、民衆達に振り返ってニヤッと笑った。
 そして片手を握って天に突き上げ、思いっきり腹の底から叫ぶ。


「1、2の、3、Daーーーーーーーーーッ!!」


『ぉ…ぉぉ…わ……WoooooaaaaaaaaAAAAA!!!!!』


 どっと広がる歓声。
 大河がアヴァターに来た頃に同じ事をやったが、どうも微妙に流行っていたらしい。
 先の道のりは長いものの、とにもかくにも目の前の危機から救われた民衆は抱き合って涙を流す。
 中にはユカや大河に向けて万歳したり拝んだりする者達も居た。

 大河達の大暴れは先頭の集団しか見ていなかったが、後方の者達にも話は伝わっていく。
 死の恐怖から逃れた事で色々とタガが緩んだのか、大はしゃぎして誇張しながら話は伝わった。
 伝言ゲームのように話は伝わって行き、尾びれ背びれがついて大河とユカの武勇伝が大きくなっていく。
 最終的には、一撃で魔物の群を丸ごと消滅させた、とか海を割ったとか空を砕いたとか、星の形を変えたくらいにはなっているかもしれない。
 ヘタをすると、遥か遠くの星を打ち落とした…なんて領域にまで達する可能性がある。

 オバサンネットワークの恐ろしさをある程度は知っているユカは、ちょっと早まったかな、と後悔した。
 しかしまぁ、士気が高まっているのはいい事だろう。

 兵士達に目を移せば、ユカと大河でメチャクチャに荒らしまくった森…主に倒木を脇に退けて、進路を確保している最中だった。
 魔物達の死体は、殆ど残らなかったらしい。
 ユカはそちらを手伝おうかと思ったが、バルサロームに止められた。


「タケウチ殿は強力な戦力なのです。
 お気持ちはありがたいのですが、それよりも体力の回復と温存を重視していただきたい。
 それとですな…」


 ユカはバルサロームに頼まれ、周囲の気を探った。
 魔物の大群が居れば、軍気が感じられるはずだ。
 しかし周囲には…と言うか、この辺一帯には殆ど気配が感じられない。


「そうですか…。
 ここはやはり、森の中を今の内に抜けた方がいいようですな。
 幾人か遭難する危険がありますが、朝まで待っていればまた魔物達の群が押し寄せてくるでしょうし…」


「うん…それに、そろそろ本格的に後ろも危険なんじゃない?」


「はい…。
 しかしながら、タケウチ殿と当真殿が救援に向かうには遠すぎます。
 シア・ハスや傭兵達を信じるしかありません…」


 せめて汁婆が居るなら、と付け加えたが…その汁婆もかなりの怪我を負っている。
 あまり走らせるのも酷だろう…と本人に言ったら鼻で笑われて蹴りを入れられるかもしれないが。

 で、当の汁婆はと言うと…。


「消化活動?」


「はい、援護に来た兵士達を逃がした後で」


 呆れたようなドムの声。
 あのデフォルメの激しいUMAがバケツリレーしている所でも想像しているのだろうか。

 絵面的には異様かもしれないが、これも重要な仕事だ。
 無限召喚陣の爆発は、少なからず火の粉を周囲にばら蒔いた。
 放っておけば進行ルートが火の海に沈む。
 汁婆は無限召喚陣の爆発の余波に巻き込まれない所まで兵士を逃した後、兵士達と共にあちこちに水をぶっ掛けているのであった。


「そうか…あの爆発だしな…。
 暫くは手が塞がったままだろうな。
 この辺りには、汁婆と親しい動物も居るようだし」


「『ポヨ』って鳴くヤツですか?」


「かもしれんな。
 それで、他に確認された召喚陣はないのだな?」


「はい。
 どうやらあの召喚陣にマナを結集していたようで…。
 少なくとも、この森を抜けるまでは魔法陣は残っていません」


「…そうか…。
 このまま森を強行軍して…最後尾が抜けるのは、大体明日の朝か」


「…ルートを変えられないんですか…?


「無理だな。
 この辺りは人の手が殆ど入っていない。
 あの丘とあの丘は…」


 ドムの指が、森の左右に盛り上がっている丘を指差した。
 一見すると、森を避けて丘を越えた方がずっといいのだが…。


「戦略的に非常に弱い場所ある上、流れが激しい河が流れている。
 しかも最近上流に豪雨が降って、はっきり言って渡るなど戯言でしかない。
 橋をかけるなぞ何を況やだ。
 雨が降らなければ何とかなったのだが…」


「マシなルートがこの森、ですか…。
 確かに山脈越えたりするより幾らかマシですね」


 ドムも大河も、不本意そうな表情である。
 一応とはいえ舗装されている道があるが、足を引っ掛けそうな凸凹も多い。


「…嫌な想像になりますが…森に火を放たれたら?」


「心配せずとも、対策はある。
 気候的な問題でな、この辺りはちょっと前まで梅雨のように雨が降りまくっていたのだ。
 それに先程も言ったが、先日河の上流で豪雨が降った。
 その雨水がこちらに流れてきて、そして森に吸収されている。
 故にこの辺りのマナは、水の力が非常に強い。
 魔法使い達の力を結集させれば、雨を降らす事も可能な程に。
 あまりやりたくはないがな…」


 冷たい雨に濡れていれば、それだけで体力は激しく奪われる。
 神水で体力を回復しつつ強行軍を続ける民衆としては、これ以上は勘弁と言いたい所だろう。
 兵士達としても死活問題だ。


「さっさと森を抜けたい所だが…」


「いっそ、トレイターで森を伐採しますか…?」


「手段ではあるがな…。
 陛下が悲しむ」


 そりゃ大変だ、と大河は心底思った。
 アザリンは戦火に焼かれた森を痛ましげに見詰めている。
 無論、彼女とて仕方ないとは思っている。
 森の方からすれば堪ったものではないだろうが、文句は無限召喚陣なんてモノを持ち出してきた“破滅”に言ってもらいたい。
 まぁ、元々考え出したのは人間らしいが。


 結局、舗装されていた道を補強するしかないようだ。
 ドムとしても不本意だ。
 本当なら左右の丘を流れる急流に橋をかけ、それを使いたかった。
 しかし、ここには無限召喚陣が存在していた。
 橋を作った所で叩き壊されるのは目に見えているし、橋を護りぬこうと思ったらどれだけの兵力が必要になる事か。
 そもそも大人しく造らせてくれる連中でもないし、作ったら自ら進軍ルートを暴露しているようなものだ。
 囮に使うという手も考えたが、兵力の消耗が大きすぎる。


「夜の森は危険ですが…この辺りにヤバい毒を持った動物とかは?」


「居るには居るが、最早珍獣の域だ。
 たまに目撃されるだけで、俺も見た事はない。
 まぁ、噛まれたら毒なのか食ったら毒なのかは知らんが…。
 臆病な性質らしいから、こちらから近付けば逃げるだろう。
 他は……蜂のような何処にでも居る生き物だな。
 しかし、こちらは恐らく既に…」


 ドムは悔しげに歯を食いしばった。
 無限召喚陣が与えた環境への被害は、決して小さな物ではない。
 いかにマナが比較的豊富な土地とは言え、2つも3つも敷かれればあっという間に枯渇してしまうだろう。
 しかし、そのお蔭で動物や虫達に襲われる危険性は随分減っている。
 皮肉なものだ、と大河は目を細くした。


「ところで将軍、セルは?」


「セルビウムなら、後方へ向かわせた。
 流石にお前達の戦闘に付いて行くのは厳しいだろう。
 と言っても、後方も充分危険だが」


「後方…って、足止め部隊ですか?
 殿をルーキーに任せるなんて…」


「罠を張りまくって、とにかく敵の足を止めろと命じてある。
 シア・ハスも居るし、妙な欲を出さねば大丈夫だとは思うが…。
 戦に絶対など有りはしない」


「罠、か…。
 俺もよくやるけど…考えてみると、卑怯と言えば卑怯ですね」


「卑怯なのは嫌か?」


「正々堂々、に時々憧れますよ。
 軍人にとっては、卑怯は時に褒め言葉かもしれませんが…」


 ふむ、とドムは大河の顔を見る。
 別に正々堂々に拘っているのでも、卑怯な手段は使ってはならないと思っているのでもないようだ。
 状況判断が出来ている。
 憧れている、というのは恐らくアニメやドラマのように『汚い手段』を使ってくる敵を、正面から打ち負かすという構図が好きなのだろう。
 ドムとしても気持ちは分からないでもない。
 しかし…。


「…正々堂々を願い、卑怯な方法を嫌うなら…」


「はい?」


「尚更相手を卑怯と罵る事は止めることだ。
 相手がどんな手段を使ってくるにせよ、予測できる事だろう…自分の想像してない手段を使われるのはな。
 試合でも、時にはルールを破ってでも強行突破を測る事がある。
 ルールを破るというのは、それに伴う罰則さえ甘受するならば、ある種の手段になりうる。

 そもそも、俺は卑怯という罵倒以上に卑怯な存在を知らぬ。
 何せ自分の想定不足準備不足、実力不足を相手の“有能さ”のせいにするのだからな。
 卑怯な手段を使う輩は何処にでも居るし、世界に正々堂々と戦う者しか居ないと思うのは単なる無能…妄想狂だけだ。
 ならば、当然自分が卑怯な手段で狙われる事も予測できよう。
 それに対して対応策を持っているならともかく、対応できないのは相手が卑怯だからだ、とは随分な戯言だ…。
 卑怯という言葉を罵り言葉として使う者は、卑怯な手の存在を知りながらも対策を練る事を怠った者ばかりだ。

 だまし討ちは卑怯だと叫ぶのに、フェイントは卑怯だと叫ばない。
 事前に罠を仕掛けるのは卑怯だと主張するのに、その場にあった物を利用するのはおかしい事と思わない。
 背後からの攻撃は卑怯だと怒るが、それが戦闘中に時間差攻撃でも使って背後を狙っても怒らない。
 その全ては、究極的には同じ事だろう。
 そう言う“卑怯な手”の存在を知っているのに、全く備えをしておかない。
 自分の想定した範囲内でなら好きに戦え、ただし俺が想像してない方法は取るな…と言っているのと同義だろう」


「そりゃそうですな。
 俺が勝手に定めた枠に、相手が囚われる必要はない。
 でも、まぁ…卑怯は許容範囲ですけど、卑劣はいけませんね」


「そうだな。
 卑劣は人の道を踏み外した卑怯…。
 卑しく劣ると書いて卑劣。
 外道にも劣る畜生だ。
 俺はそんなモノになるくらいなら、その辺の野盗にでも刺された方がマシだ」


「野党なら?」


「似たようなモノだな…。
 ところで大河、お前はさっきどうやって空中を飛んできたのだ?」


「いやあれはリテルゴルロケットというかロケットブースターというか」


 首を傾げるドム。
 大河は妙に熱狂的に原理を説明するが、一方でぼんやりと考えていた。


(俺がドム将軍を尊敬するのは、こういう所に魅せられたんだろうなぁ…。
 将軍はきっと、どんな手を使われたところで、「卑怯」と表現する事はあっても「卑怯」と罵る事はない…。
 世界の全てを受け止めて押し返す、本当に、誰よりも正々堂々とした人…。
 どこか隊長と同じ雰囲気がするんだ…)




いよっしゃー、就職先確保!
これで卒論とゲームと勉強と幻想砕きに集中できるってモンだぜ!
…おや?
全然集中してないような……ま、いいか。
今度はJavaの勉強だよ…ま、C++と感覚的に大差ないから、割と簡単だと思います。

それではレス返しです!


1.ATK51様
うーん、イメージ的には真印の方なのですが…時守はタイラーと聞くと、どうしてもアニメ版の方に意識が飛びます。
ヤマモト君など、どうしても真印の方をイメージできないし…。
いや、ぶっちゃけた話、アニメ版のお間抜けっぷりとフケ顔が…。

頑固でないヤマモト君など、ヤマモト君ではありませんね。
タイラーに適応した後も、やはり彼は頑固でしたし…。
まぁ、あのヤマモト君がタイラー以外の事で変節するかと言われると…。

アンドレセンとキーナンに敬礼!
アザリン様をお護りした奮闘を、我々は決して忘れません!

DBZチーム…ヤムチャは誰だw


2.くろこげ様
シェザルがナルシストっぽかったのは、原作でも同じだと思います。
うろ覚えですけど、「私を倒れさせたな」とか顔がどーしたとか、そんな台詞を戦闘中に言ってたような。

そーですねぇ、最初はミノかゴルゴーンを予定していたのですが…。
その中で言えばベヒモスでしょうか。
いや、白の章の中で唯一見た事があるってだけですけど。
ぐあー、きたかぜゾンビウザイ!
…でも狙撃の一発で叩き落すカイカンと来たら…!


3.文駆様
この先、ナルシストの辺りをちょこちょこと弄ってみようかと。

原作での救世主候補の強さって、ルートによって随分変わりますよね。
ベリオルートの時はシェザルにあれだけ苦戦したのに、未亜ルートやクレア様ルートだと…。
相手に回復役(?)のロベリアが居るか居ないかも大きいと思いますが。
まぁ、何れにせよあのUMAには勝てる気がしませんが…w


4.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>
でもバディはそのままでよかとデス。

はっはっは、Sモード未亜を舐めてはいけません。
例えお楽しみが待っていても、目の前にオヤツが転がっていたら手を出すのに躊躇なんぞしませんぜ。

汁婆は、思いきり接近戦タイプですからねぇ…。
結界を張れるベリオならともかく、近接戦闘が弱いリリィにとっては天敵です。
四天王…どうしよう…候補は居るのですが…。
それに、原作未亜ルートでは補充されてましたよね、セルが。
要は強ければいいって事なんでしょうか…でもセルだしなぁ…。


5.謎様
しみじみ言わなくてもw
壊れてるのは今更ですしねー。

一応真タイラーをイメージしてます。
アニメ版ほど脱力したキャラを動かすのは、時守にはちょっと無理くさいです…。


6.アレス=アンバー様
シェザルの本格的な登場は、暫く後になりそうですね。
出てきてもチョイ役で終わりそうな予感もヒシヒシと…。

自爆装置付仮面?
…持ってますよ、狂ーゼは。
改造手術したんだから、当然自爆系の仕掛けは盛り込んでいるでしょう。
まぁ、流石にホイホイ使いませんが。

どっちかと言うと、大河には未亜の執念とか色情狂の霊とかが憑いてそうですね。
…いや、横島も大河もそんなの憑いてないか。
あの煩悩は生来の実力に決まってますw


7.カシス・ユウ・シンクレア様
どっちかと言うと、美形でも平凡そうなタイラーが、「この人軍の最高責任者」的扱いを受けていたからかも…。
閣下はパッと見て、地位が高そうには見えませんからねぇ。

四天王は、一人を壊した以上は全員壊さなきゃバランスが取れないじゃないですか。
そして上役を壊した以上、部下も壊さなきゃバランスが取れないじゃないですか。
更に下っ端を壊した以上、それと戦う味方側も壊さなきゃ(略
こーして幻想砕きの世界は壊れていくのですw

少なくとも、汁婆はセルより強いです。
ドム将軍とまともに遣り合えるくらいは。

原作のタイラー閣下の事は知りませんが、アニメ版ではラスト付近以外は全て運でしたねぇ…。
無責任三国志でのタイラー閣下は、思いっきり黒幕的立場で恐ろしい御人だと思いました。
まぁ、全盛期のクローンとやりあうのはもうゴメンだと仰っていましたが。


8.イスピン様
どっちかと言うと、昇竜拳よりも紫炎脚ですかね、蹴り技メインだし…。
しかし、スーファミ時代のマスターズ方式は燃えるだけであんまり意味が無かったなぁ…。

竜を相手にスカウトで…よく考えてみると恐ろしい話だと思います。
話は変わりますが、オーケストラ(白)でも精霊手は中々便利ですなぁ。
NPCの工藤が持ってるんですが、序盤ではミノとかを一撃必殺できますし。
某HPじゃあんまり役に立たないと書かれてましたが、どうしてどうして。
でもやっぱり狙撃が好き。

…オーケストラでは、ナーガは見ないなぁ…忘れられたか?


9.YY44様
汁婆が関わっている以上、どんなマトモな突っ込みも無駄ですにゃぁw
セル辺りと戦わせると、セルが死ぬかゾンビモードになりそうだし。

シェザルの『らしさ』は、この一回きりかもしれません。
徐々に壊れてもらう予定ですからw
流石に汁婆に体を固定されている状態から、ダミー人形に摩り替るのは無理でしょう。


10.嗚臣様
アニメ版のタイラーは、格好いいとは言いがたかったですね。
まぁ、あの何事にも鷹揚としている性格はある意味格好よかったですが。

私生活ではユリコさん辺りに普通にジャスティーと呼ばれているようですが、他に呼んでいるのは…?
と言うか、タイラーの愛称といわれると即座にパコパコが出てくる今日この頃。
ヤマモト君には、恋するよーなしないよーな男としてハッスルしてもらいましょw

まぁ、確かに大河が大人しいのには時守も違和感がありますが…どーにも、やっぱり救世主クラスという同類が居ないとね。
一応シリアスモードだし。


11.流星様
蹴鞠にされたオークロードとか、シェザルを抱え込んでケンケンで移動する汁婆とかですか?
どうにもあの一匹と一人の戦いはやりづらいです…。

タイラー閣下のイメージは、一応真印バージョンです。
アザリン様が真印である以上、やはりタイラー閣下もセットがいいと思いまして。
…あんまり上手く書けませんが。


13.神〔SIN〕様
ロベリアサン…アンタ本当に苦労してんだね(T_T)
いつかきっといい役を振ってあげるからね!
“破滅”の将達が繰り広げているドド阿呆な光景が目に浮かぶようだよ。
しかも、千年前のメサイアパーティでも貧乏籤を引きまくって…。
アルストロメリア…流石はクレアのご先祖様よ…。
つーか、食費減らすならアルストロメリアが最初でしょうが!

と言うか大河、アンタ何を屋台を切り盛りしてんのよ?
バイト? アヴァターじゃ必要ないデショ。
ま、まさか本当にロベリアと組んで美人局を…?

しかし、実際ダウニーは何を考えて学園でスパイやってたんだろうか…。
出番が目的か?
それとも、“破滅”の民とは名ばかりで、実際は“破滅”の将以外は全て魔物だったのか?

つーか、それだけの処理能力があるなら、自分一人で行動してた方がいいのと違います?
無能な上司とアレな部下に見切りをつけて、いざ新天地へ!
弱小企業に就職するとかアルバイトだけしてるとかでも、きっと今よりは幸せを感じられると思うなぁ。
…ところでロベリアさん、アナタどーして“破滅”の将をやってるのか、自分で思い出せる?
最初の志なんて、遥か遠き過去に擦り切れてると思うんだが…それこそ某正義の味方がまだマシに見えるほど。

ちなみに今日銀魂の13巻買いました。
長谷川サン、残念な事にアナタは13巻には出番無いよ。
頑張ってくれ!
アナタが頑張れば頑張るほど、俺が同じ境遇になった時には感情移入して根性出せるから!

と言うか、ロベリアさん既にオチてる!?


14.ナイトメア様
シェザルの衣装が進化(退化?)するのか…その手があったな。
…でも、そうなると仮面は? 仮面は?
最終的にはヘンタイ仮面の仮面になるのか?
なお、その仮面は自分で着用したモノに限るが。

トイレの怪談の伏線については、ふとその場で思いつきました。
いくら何でも、あんなその場限りのギャグをここまで伏線として引っ張ってくるよーな技量なかとですたい(汗)

無道の復活…別の体に変わるとなると、途端にギャグっぽく使えそうですね。
別の体に移ったと言う事は、即ちその体に適した技を使わねばならず、それを把握するまでは戦闘力が落ちると言う事。
そして大河達に倒され、別の体、別の体と乗り換えて、最終的には丁度いい体が無くなったので、近所で死んでいたトノサマガエルの体に…w
…ルビナスは、何気に幼い頃にはカエルに爆竹を詰めていたクチかも…。

無道だったら、男性が使ったストッキングを被っても何の違和感もありません(笑) 
足洗邸の住人達…本屋に見当たらないよぅ。


15.舞ーエンジェル様
読みましたよー!
非常に参考になりました。
…しかし…本気でどう壊そうか…。
ツキナは一応考えてあるのですが、ギャグ風味じゃないしなぁ…。
基本は矢張り修羅場でしょうか。
クーウォンは……親馬鹿とか?

ブラパピは…寝返りませんねぇ、これは…。
属性付加については、約1名考えております。
ロベリアは北極で迷子になっています。
無道は…お楽しみです。
大河をぶつけると、その場で“破滅”の将が全滅してしまいそうなのです。
なので、“破滅”の将もある程度パワーアップさせてからぶつけるつもりです。

オーラパワーとエロパワーでは、当然後者の方が強いデス。
ノリ的に。


16.なな月様
(心情的に)あの答えはNOである。
妹の話では、傘を差していても両手でハンドルを持っていれば問題ない、との事でしたが…。
あんまりアテになりませんね。

シェザルは違和感が無さ過ぎて、逆に薄い気がします。

土座衛門メカ進藤…何故だろう、何か心が浮き立つなぁ。
フォーグラーっぽいブツは登場予定ですよ。
一応、それなりに重要な伏線…かな?

リコの呪い…むぅ、呪詛返しをしてはいけない気分なのは何故だw

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