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「NARUTO 九房武芸帖 (NARUTO×いろいろ)」

こるべんと (2006-07-03 11:57/2006-07-04 11:00)
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第一章  参上!!


誰だったろうか。『神の前に人は皆平等』と真顔でほざいた奴は。
自分がガキだった頃、どういうわけか神だの愛だのなんてものはいつだって品切れ状態だった。
物のわからなかった頃は、どうしてこんなに嫌われるのか、殺されそうになるのかと神様に何度も尋ねてみた。
だが、それを信じられたのは4歳までだ。
信じちゃもらえないだろうが、俺は4歳ですでに人殺しだった。
神もいない、愛なんて信じられない。
そんなくそガキが信じられるのは、力と金だけだ。
それさえあれば天下泰平。『世はこともなし』だ。
それでいいと思っていたんだ。


木の里隠れの目抜き通りを、一人の少年が任務通達所まで歩いていた。
赤い短ランとボンタン、赤いレンズのバイカーゴーグルといういでたちをし、金色の長髪を九房に結っている。
特徴的なのは、ギラギラと底光りのする二つの紅い瞳と両頬の爪痕のような傷だ。あんな瞳で殺気を放たれれば、誰でも尻に帆をかけて逃出すだろう。
通り過ぎる人々は、みんな視線を合わせないようにその場を早足で通り過ぎた。
と、幼い少年が目の前でつまずいて少年にぶつかった。
ボンタンの裾を掴んで身体を支えるが、少年と眼が合うと怯えたように震えだした。
だが、少年は何も言わずその子の頭を撫でると、黙って歩いていってしまった。
やがて通達所の門が見えたとき、少年は一瞬強い殺気を放った。
周囲の空気が強い緊張を示し、木々があわただしくザワザワと揺れる。
それも一瞬のことで終わったが、少年の瞳が獣のように割れていたのは門をくぐり終えるまで続いていた。
渡り廊下を歩いて引き戸を開ける少年を見ると、周囲の人々はみんな怪訝な表情を浮かべて彼を見た。


「久しぶりだな・・・・まだ生きていたのか?老いぼれが・・・」

「元気そうでなりよりじゃ。のう・・ナルト」


その名に周囲の空気が張り詰める。
数年前、行方不明になって死んだと思われていた里の忌み子が存在している。
口には出さなくても、この少年がいなくなったことはほとんどの里人にとっては喜ばしいことだった。
あの化け物が生きているなど許されることではない。
憎しみが胸のうちから蘇り、自然に武器を構えていた。
相手は人間ではないのだ。なら、何をしても文句は言われない。
感謝されはしても、罰せられることなど無いのだ。
それが間違いだったと理解したのは、一人の忍が突然倒れたときだった。
クナイで斬りつけようとしたとき、それをさえぎるように右手が胸に叩きつけられただけ。
しかし、口からはどす黒い血液が流れ落ちるのが止まらない。そればかりか鼻の穴や耳、目元からも溢れ出しやがて白目をむいて絶命した。
この騒ぎに戸を蹴破って仲間が入ってくる。


「火影様、ご無事ですか?!こ・・これは?!」

「お前は、ナルト!!この化け狐が・・・殺してやる!!」


無謀にも武器を構える忍者たちを、ナルトは嘲笑うかのような表情で見つめた。
こんな表情をされて黙っていられるわけが無い。
彼らは猿飛の静止も聞かず、一斉に飛び掛りクナイを打ち下ろした・・・
もっとも、その攻撃がナルトに届くことは無く、全員頭を半分以上吹っ飛ばされて絶命した。
 銃を抜いた気配さえ気取らせない完璧な動作と、神技のようなスピード攻撃。
 かつて最強を誇った三代目火影・猿飛であっても、今の攻撃を防ぐことは出来ないだろう。
 事実、記録によればナルトはたった一人で雨隠れの忍者の部隊を殲滅、依頼者であるマフィアの介入に一役買っている。そんな桁違いの怪物を相手にしても、自分たちが返り討ちに会うだけだ。
 ナルトは転がっている死体の一つを足元に転がすと、何の感慨も無く背中に腰を下ろし、その紅い瞳で三代目に氷のような視線を送った。


「これのどこが精鋭部隊だ?役にも立たない部下を持つとタンパク質の塊が増えるだけだってばよ?」


火影は溜息をつくと死体を片付けるように指示を出した。
 中忍数名が動こうとすると、額当てで片目を隠したホウキ頭が手で制した。


「ふ〜ん・・・君が噂の出向者ねぇ〜、まだ子供じゃない?」

「この世界に大人とか子供とか関係あるのか?ホウキ頭」

「あははは。まっ!それもそうだな。それから俺の名前は、はたけカカシだよ」


それ以上ナルトを見ているのが辛くなって、カカシは仲間の死体を片付けることにした。
 暗部として任務に当たり、数々の人間を殺してきたからこそナルトの実力を見抜くことができた。この世には自分よりも強くて、年下の実力者がごまんといるのだ。それがたまたま自分の師、四代目火影の実子に過ぎなかっただけだ。

 『餓狼』からの出向者ということで事前に資料を読んだときは、その正体に愕然とした。
 たった一人でいくつもの組織を壊滅に追い込み、裏社会に燦然と輝くその通称は『九房』。
 拳銃での戦闘スタイルを好み、精密機械のような正確さで相手を絶命させる。
 任務達成率は100%、誰にも頼らず生きる狼の牙。
 自分の望まぬかたちで師の実子と再会し、報告書どおりの実力を目の当たりにしたカカシは己の無力さを噛みしめた。
 迫害され傷つけられる子供を守るために、カカシは信頼の置ける部下や友人に協力を求めた。
 だが、そんな願いもむなしく子供は里から姿を消してしまった。
 自分の部下までもが迫害行為に関与していたと知ったとき、カカシは烈火のごとく暴れた。
 同僚のガイやアスマが止めていなかったら、間違いなく大量虐殺者になっていただろう。
 そんなカカシを尻目に、ナルトは三代目と話を進めていた。


「書類内容は確認した。報酬も住居の選定も問題ない・・・が!!」


ナルトはツカツカと三代目のところまで歩いていくと、眼前に広げた書類の中央を指差した。


「この最後に書かれている“忍者アカデミー入学から卒業を義務とする”ってのは何だってばよ?!」

「不満か?学問は必要じゃぞ、生きていくうえで覚えておいて損はない」

「はぁ?!墓入り目前の爺の戯言に付き合う気は、指先ほどもねぇよ」

「お主・・・友達が欲しいとは思わんのか?」

「必要性を感じない。うざい。じゃまだ。めんどくさい。人間の殺し方を知らない馬鹿どもと、お手繋いでオクラホマミキサーでも踊れってのか?」


ナルトは机に唾を吐きかけると、首をひねりながら部屋を出て行こうとした。
 その背中に、三代目は語りかけるように言葉を投げかけた。


「力だけで解決できるわけではないぞ?時には話し合い、心を通わせることも必要じゃ。お前にはそのためにアカデミーに入学して欲しいのじゃ」

 ナルトは部屋にとって返すと、書類を取り上げて名前を書き、判子を押して三代目に手渡した。

「アカデミーには入学してやるってばよ。そっちのシステムを知る上じゃ、最良の方法だからな」

「但し!!俺はおちゃらけたボケナスと仲良くするつもりは無い。必要性を感じたら関係を作る、それ以外は・・・・全殺しにしてやる。わかったか、棺桶の中身?」


 三代目は盛大に溜息をつくと、それを了承し退出することを許した。
 ナルトは退出する際に、転がっている死体の頭をわざと踏みつけて出て行った。
 『餓狼』のところのような仲間など、そうそう簡単にできるわけもない。
結局、アカデミーに入学するのだって忍者の軍事システムの解析のためにデータが欲しいだけだ。
 それに、乳臭いガキに興味はない。
 実力がない奴も同様だ。
 ナルトは渡り廊下の端まで来ると、階段を下りようとして足を止め反対側を見た。
 その視線の先には、昼休み時間を満喫するアカデミー生が見えていた。
 そのまま校内に入って、ゆっくりと歩いていると白い瞳の少年とすれ違いざまに肩がぶつかった。


「「すまん」」

二人同時に声をかけると、少し間を空けてまた歩き出す。
 歩きながら壁や柱を点検する。こうすることで、どんな用途に使用されるかおおよその見当がつく。

『ふむ、壁は鉄筋コンクリートとモルタル。柱も正確に設計されてるし、非常口の位置もいい。全体的に篭城に適した造りになってるな』


大戦が終結して年月が過ぎたとはいえ、もしもの備えに越したことは無い。
 だが、その備えは施設等の機能だけではなく、それを扱う人間のレベルアップが出来て初めて起動するもの。平和ボケしたこの里は、強大な頑強さを誇る大木からハリボテになってしまった。隙を衝かれれば、物の一日とかからずに落城してしまうだろう。


「だが、本人たちだけがそのことに気がつかない・・・・」

少し考えごとをするかのように窓辺でたたずんでいると、隣で突然つっけんどんな声がした。

「ちょっと!!そこどいてくれる!!」

「はぁ?」


声のしたほうを見ると、桃色の髪の少女が両手を腰に当ててこっちを見ている。
 別に退く必要も無いのでそのまま立っていると、今度はさっきより強い口調で話しかけられた。


「こらっ!!話しきいてないの?あたしはそこの奥に行きたいのよ!!どけっ!!」

「おい・・・何様のつもりだ?この、くされアマ・・・」


自分で言うのもなんだが、ナルトは普段どんなに怒っていても女を殴ることは無い。
 その顔に傷をつけたりしたくないし、そういうことをするのは男のくずと認識しているからだ。
 だが、ここまで失礼なことを言われて黙っていられるほど優しくはない。
 敵として認識したなら、女子供であろうと叩き潰す。
 ナルトの迫力にたじろいだ少女は、早くも逃げ腰になっていた。それでも何とか踏みとどまって睨み返す。


「な・・なによ!!」

「お前、人に物頼む態度ができてねぇんじゃねぇか?えぇ・・・?」


次の瞬間、右手が鷹の爪のように少女の首を締め上げていた。


「うっ・・ぐう・・く、くるし・・・」


感じたことの無い握力に、少女の頚動脈は圧迫され意識を少しずつ奪い取っていく。
 と、今度は勢いをつけてボールのように叩きつけ投げ飛ばした。


ドダァァァァァン!! ドォォォォォォォォン!!


 少女は2、3メートルほど滑って漸く止まった。
 腹の虫の収まらないナルトは、獲物に狙いを定め一瞬で間をつめると、右拳を頭に打ち下ろした。
 だが、その一撃は放たれた瞬間、割り込んだ影に防がれた。
 そこには、オカッパ頭の少年が拳を両手で防ぎ少女をかばうように立っていた。


「どけ・・・」

「先程のやりとりは聞いていました。確かに、先に挑発してあなたを怒らせた彼女にも非はあります。ですが!!ここまでする必要はないはずです!!」

「けっ!!かっこつけてフェミニストきどりか?馬鹿みてぇ!!」


もう一人傍に居た少女が、倒れている彼女を抱き起こした。


「脳震盪を起こしているみたい。念のために保健室に連れて行くわ。リー、後はよろしく!!」

「お願いしますテンテン。さて・・・・あなたの名前をまだ聞いていませんでしたね?僕の名は、ロック・リーです」

「ナルト・・・二つ名は“九房”だってばよ」

「ナルト君ですか。里では見かけませんね?どこからか来たのでしょうが、ここは皆が生活する学び舎です!!争いごとはやめませんか?」

「ふっ・・・くくく・・・は――はっはっはっはぁ!!」

「な、何がおかしいというのですか?!」

「これが笑わずにいられるかってばよぉ!!忍者ってのは、裏社会で生きる存在。そんな奴らが何で殺しのテクニックじゃなくて、役にも立たないお勉強なんかしてんだ?」


リーは言葉に詰まった。それはまったくその通りだったからだ。暗号解読につながる国語や、敵地での戦闘計画を立てるために使用する地理はまだいい。
 だが、戦場で生きるための術は基礎的なことしか教えてもらっていない。下忍として活動するようになってからは、少しは知識も増えたがそれでも足りないし、自分ひとりの力で学ぶにはあまりにも量がありすぎるのが現状だった。
 すると、横から長髪の少年が現れて口を挟んできた。


「そこまでにしてもらえないか?」

「誰だ・・・!!お前、さっきすれ違った?」

「ネジ、君は彼とすでに会っていたんですか?」


白い瞳の少年――日向ネジ。
 ナルトの前に進み出ると、その全身をくまなく観察した。

『自然体でいつでも迎撃が出来る体勢をとり、対象から視線をそらさない。考えて出来ることじゃない、おそらくこいつが外から来た“出向者”だろう』

 二人は自然に距離をつめ、お互いの拳が届くところまで近寄った。
 ネジも少し半身になって拳を捌く準備をする。


「出向者というのは、お前のことだな?噂では、忍者専門の殺し屋だと聞いているが?」


 その言葉に、全員が緊張した面持ちになった。ここにいるのは、まだアカデミーを卒業する前の子供しかだけだ。ネジの言うとおりなら、自分たちの命が危ないかも知れないのだ。


「ああ。忍者ってのはいい的でさ、おもしろいくらい簡単に死んでくれる。一番稼ぎやすい獲物だな」

「なら、ここには誰かを始末しに来たのか?」

「死にぞこないの爺の強制で、明日からここで世話になることになった。よろしく頼むってばよ」

「ほう、なら次こそは友好条約を結びたいところだな・・・」

「ふんっ!!」


二人はそのまま踵を返すと、まだざわついているアカデミー生たちを残し、反対方向に歩いていった。

NAME ナルト  CODENAME 九房
AGE 12


              第二章 『再会!!』


 忍界大戦以後、時代は急速に動いた。
 大戦の混乱に乗じて、マフィアたちの行動は活発になり勢力を増していっていた。
 その、『マフィア大戦』とも言うべき抗争を征したのは、

『露国・ホテルモスクワ』

『香港・三合会』

 二大勢力は付近の小勢力を次々に吸収し、各国の隠れ里を脅かす存在となっていった。
 もちろん、大名たちは勢力の討伐を隠れ里に呼びかけ、忍者たちを殲滅任務に向かわせた。
 しかし、強大な軍事力と圧倒的な資金源を持つマフィアは、怒涛の攻撃をものともせず忍者たちを返り討ちにしていった。
 幾度もの遠征で費用が嵩み、経済力が限界に近づいた頃、彼らは大名たちに歩み寄りを見せ始めた。
 密貿易や法律関係の緩和を求める代わりに、自分たちの軍事力と資金を一部提供するという餌をぶら下げ大名たちに停戦を申し込んだのだ。
 大名たちは『しぶしぶ』了承した。

(本当にしぶしぶしていたのはほんの一部の大名だけで、小国の大名たちにとってはのし上がるチャンスだった)

 まさにその瞬間から、政治の世界にマフィアが台頭するようになった。
 教育や福利厚生など、民衆の生活に関わる主な事から軍事関係まで、最早彼らなしに政治は成り立たないとまで言われるようになった。
 その逆に、昔ながらの兵法と術に頼る忍者は、いつしか、『過去の遺物』と陰口を叩かれるほどにまで落ちぶれていた。
 時代とは絶えず流動するものである。時とともに技術は進歩し、当然それは戦争の世界にも起こる。
 『温故知新』という言葉がある。進歩とは先祖が残した技術を知ることで、そこから新しい物を創造することだ。
 忍者が時代遅れになったのは、まさにそこに理由があった。使い古された『忍術』という名の戦闘だけを重視し、肝心要であるはずの『体術』や『武具』に関する研究を疎かにしてしまったために、存在したはずの多くの流派や技術を忘れ去ってしまったのだ。
 そこに彗星の如く現れたのが『餓狼』だった。それは『狼主』と呼ばれる謎の人物が創造した、裏社会最強の戦闘集団が生活する街で、その影響力は凄まじく、各国の首脳陣はおろか五影さえも無視することはできない。
 主にマフィアからの依頼を受けて活動し、数多くの暗殺事件やテロに関わっているとされている。
 なぜそんな組織がと言われれば理由は簡単、一つとして太刀打ちできる隠れ里が存在しないからだ。
 戦闘員は皆、なんらかの武術や殺人術を習得し、それに気功戦闘法を組み合わせた独自の技術を日々編み出していた。
 壊滅を試みた雲隠れの里は、斥候を含めて30名の暗部と上忍を向かわせたが返り討ちにあい、その家族から親類縁者まで皆殺しにされた。
 依頼内容に嘘をついたマフィアは、経営しているクラブで会議中に客もろとも爆弾で吹っ飛ばされた。
 また、餓狼には様々な禁書や術書が数多く存在するといわれているが、真意のほどは定かではないのが現状だ。
 運良く生き残った輩の話によると、


 『人間が怪物に変身した』

 『拳銃から怪物が飛び出した』

 『攻撃された仲間の体が、ガラスのように砕け散った』

などという説明のつかない現象ばかりが、噂のように伝えられるばかりだった。 

 底辺からの脱却。まさにそのために今回、木の葉は隠れ里初の試みを慣行、三大勢力が『激強』と推薦する殺し屋を迎え入れるという呉越同舟の苦肉の策を打ったのだ。
 手続きが終了し、ナルトは初めて教室という場所に足を踏み入れた。
昨日の騒ぎの影響か、誰一人眼を合わせようとはしない。
 イルカはそんな生徒たちを見ていて心配だった。イルカ自身、九尾来襲事件で両親を失い、たった一人で生きてきた。自分と同じ辛さを知るナルトに対して、憎むよりもその心に触れたいという気持ちのほうが強かった。裏社会で生きてきたナルトと、両親の愛情に包まれたアカデミー生たち。このふたつが利害関係を取り去った交流――つまり、友達として付き合えるようにすることがなによりも大切だと判断した。


「・・・で、今日から俺たちと一緒に勉強することになった。皆も仲良くしてやってくれ」


イルカはナルトを促すと、適当に席に座るように言った。
 ナルトは床で踵をゴツゴツと鳴らしながら、ゆっくりと緩い階段を上っていった。
 ほぼ全員が下を向き、自分の横を通り過ぎるたびに思わず安堵の息をついた。
 相手は殺し屋だ。できれば近づかないようにしたいのは、心理として当然考えることだ。
 昨日の被害者――春野サクラは一瞬視線が交差しただけで、冷や汗を流したほど。
 と、自分を見つめる視線にナルトの足が止まった。見ると、白い瞳の少女が驚いたようにこっちを見ていた。
 そしてナルト自身、彼女には見覚えがあった。
 彼女――日向ヒナタこそは、あの夜、図らずも自分が助けた少女に他ならなかったからだ。
 机の中央が開いているのを確認すると、傍で居眠りしているちょんまげ頭を起こしてどかせ、そこに腰掛けてもう一度視線を交わした。
 すると、なぜか顔を赤くして下を向いてしまった。
 その様子にイルカは少し安心して、号令をかけた。


「それじゃあ、教科書のP45を山中に読んでもらおうか?」


昼休みになると、ナルトは校庭に出て昼食を取る場所を探した。
 不意に校舎の裏で、女子数名の話し声が聞こえた。


「とにかく、あんた見てるとむかつくんだよね!!」

「アミの言うとおり!!何であんたみたいな“お嬢様”が、アカデミーに来てんのよ?!」


見ると、ヒナタが見るからに柄の悪そうな女子3人組にいじめられていた。


「おい・・・お前ら何してんだ?」

「あん?なによ、あんたには関係ないでしょ!!すっこんでいな・・・・あ・・あの・・・その・・」


アミは言い返そうとしたが、ナルトの冷たい視線にたじろぎその先が口から出てこない。
 と、もうひとり天然パーマの少女が気がついて小さく悲鳴を上げた。


「ア・・アミ。こ・・こいつよ!!昨日、サクラを投げ飛ばした転校生・・・や、やばいよ!!」


思ったとおり。群れて他人をいじめる人間ほど、強い存在が現れたとき真っ先に逃げ腰になる。
 誰かさんが言っていたが、いきがった存在ほど殺したくなるものはない。


「なあ・・・俺はお前らみたいに群れて行動する人間を見ていると、殺したくなるんだよ。だから、今すぐ家に帰って、部屋に引きこもって、二度と姿を見せないでくれるかな?」

「「「きゃぁぁぁぁぁぁあ!!せんせー!!」」」

「くだらねぇ・・・・おい、大丈夫か?」


ヒナタはしばらく声を出せなかったが、ナルトに手を差し伸べられると少しうなずいた。
 二人はそのまま、そこに座って昼食を食べることにした。
 ナルトは持ってきたおにぎりをぱくつきながら、お茶を飲んだ。
 ヒナタはその様子を横目で見ながら、どう会話を切り出すか考えていた。


「なあ、あれから何年過ぎたっけ?」

「へ?あ・・・9年ぐらいかな?あ・あのときは助けてくれて・・・・」

「別に・・・助けようとしたわけじゃない。俺自身のためにやったことだってばよ」

「う・・うん・・そ・そうだよね・・・」


それきり、ヒナタは下を向いてしまった。
 あの夜、ナルトがいなければ自分は間違いなくここにはいなかった。
白眼の秘密を求めて策を張り巡らせ、善人を装って近づいてくる輩は今でも絶えない。
 そういう者たちと極力接近しないためには、屋敷で学んでいたほうがいいのかもしれない。だが、温室育ちのまま何の苦労もしらないのでは、後々困難にぶつかったとき自己解決が望めるとは思えない。ヒナタ自身で決めて、ここに入学することにしたのだ。それに、もし忍者になることができれば、もう一度ナルトに会えるかもしれないという希望もあったから。


「お前は何してたんだ?」

「へ?!う・・私はここに入学して・・・勉強して・・・それから・・・」

「待ってるから・・・落ち着いて、ゆっくり喋れよ」


ナルトはお茶を一口飲んでおにぎりを胃に流し込むと、ヒナタの話に聞き入った。
 ヒナタは相変わらずもじもじしながら、自分のことを小一時間ほどかけて説明した。
 日向宗家当主――日向ヒアシが、分家と和解したこと。
 従兄弟のネジと仲良くなったこと。
 妹が生まれたこと。
 それを聞いて、ナルトは少しヒナタのことを知った。


「で?それはお前の一族の話だろう。お前自身は何か変わったのか?」

「え・・・わ・・わたし・・・その・・。ナルト君にもう一度会いたくて・・・それでアカデミーに入学して・・・」

「そっか・・・・お前は俺のこと怖がらないんだな?」

「え?」

「自慢して言うわけじゃねぇけど、俺は今までかなりの数の人間を始末してきた。女、子供・・・地獄に堕ちても文句は言えない・・・ていうか言う気もない。それが当然だと思ってるからな」


ナルトは話しながら、昔のことを一瞬思い出した。ろくに食べるものも無くて、残飯をあさったり森で果物を取って食べていた。何かあると、すぐに殴られて痛い思いばかりしていた。
 あの夜、自分は運命を賭けるつもりで屋敷に忍び込んだ。自分がこの先生きていくには、絶対に力が必要だった。『人を殺せるかどうか』、それをためすためだけだった。
 廊下を歩いていたとき、何かを脇に抱えた人影に出くわした。
 月明かりに照らし出されると、それは自分と同じくらい小さな少女だった。
 ナルトは服の下に隠していた漬物石を、そいつの頭に打ち下ろした。
 不意を衝かれた人影は、痛みにのた打ち回っていたが、もう一度殴ると動かなくなった。
 荒くなった呼吸を整え踵を返そうとしたとき、何かにズボンを掴まれた。
 驚いて振り向くと、さっき脇に抱えられていた少女が白く潤んだ瞳でナルトを見つめていた。
 振り切ろうとすると、少女はますます力を込めてしがみつきとうとうナルトを床に転がしてしまった。
 激しく痛む後頭部を押さえていると、少女は這うようにそのままナルトに抱きついた。
 小さな身体を震わせながら縋るようにしがみつく少女を、ナルトはもう振りほどくことができなくなりそうになった。
 突然、人の足音と叫び声が近づいてきた。
 ナルトはその手を振りほどくと急いで逃げ出し、そのまま里を出た。
 
 背に少女の視線を感じながら。


「だからいいか。俺には二度と近づくな・・・お前の幸せのためにもそのほうがずっといい」

 スタスタ・・・

 グイッ!!

 ズデーン!!グシャッ!!


「ぐおおおおおおお!!」

 ゴロゴロゴロゴロ・・・・

 ナルトは立ち上がると、ヒナタを置いてそのまま歩き出そうとして勢いよく地面に倒れこんだ。
 受身が取れなかったので、したたかに鼻をぶつけしばらくのた打ち回った。
 見ると、ボンタンの端をヒナタがしっかりと今度は両手で掴んでいた。
 あの夜と同じ、涙にぬれた瞳で自分を見つめながら。


「離せ・・・」

「いや・・・また、どこかに行っちゃうから。絶対にいや」

「しつこいと嫌われるってばよ?」

「別にいいよ・・・ナルト君がいるもの」

「・・・・・どこにも行きません。だから離してくれ」


すると、それを待っていたかのように、ヒナタに思いっきり抱きつかれてしまった。
 声をかけようとしたが、その顔があまりにも幸せそうだったのでやめた。
 そして、あの夜と同じように優しく抱きしめてやった。
 そうして二人は、昼休みが終わるまでずっとそうしていた。

これを見ていたある上忍が、


『青春だぁぁぁぁぁぁ!!俺は本物の青春を見たぁぁぁぁぁぁ!!熱いぜぇぇぇぇ!!』


と叫びながら待機所に走りこんで行ったという。


                      あとがきです!!

 以前の予告どおり2本立てでお送りできました。皆様からのレスのおかげです。
 さて、レスを送っていただいた皆様が考えるように、ナルトは銃を使って任務をこなします。
 私のつたない文章力で、どこまでアクションを伝えられるかわかりませんが、皆様応援よろしくお願いします。

 ちなみに、レヴィやラグーン商会からはては『ヘンゼルとグレーテル』までナルトは関わりがあります。そこのところは『波の国編』から『試験編』までで明らかにしようと思います。
 
 アドバイスなどもよろしくお願いします。では、次の物語で。 

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