インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「幻想砕きの剣 9-7(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-06-21 22:07)
BACK< >NEXT

13日目 早朝


 早朝。
 大河達…アザリン率いる軍は早起きして、最寄の街へ寄っていた。
 民衆達は朝も早くから叩き起こされ、不機嫌な顔をしている。
 だが、この事は既に通達が行っていたらしい。
 全員何かしらの荷物を抱え、荷造りしている。

 街で最も広い広場に集められた民衆達は、一様に不安の表情を浮かべている。
 中にはアザリンへ八つ当たりや助けを求める視線を送る人々も居た。
 しかし暴動などが起きないあたり、彼女の人望の高さが窺える。

 ドムはアザリンの近くに侍り、いざと言う時に備えている。
 大河やユカは街の外側で、魔物の襲撃を警戒していた。

 暫くして、アザリンの元に数人の兵士がやってきた。
 街の中にまだ誰か残っていないかチェックしていたのである。
 一通り見て回ったが、誰も確認できなかったらしい。

 頃合と見たアザリンは、立ち上がって広場の中央に設置された台の上に上った。
 ざわめきが大きくなるが、アザリンは全く気後れしない。
 黙って杖を台に打ち付けた。
 硬質の音が、ざわめきを割って響き渡る。
 ただそれだけで、民衆のざわめきは鎮まってしまった。

 アザリンは大きく息を吸い込む。
 広場はかなりの大きさだが、マイクなどと言う無粋な者は使わない。
 間違いなく自分の声は、広場はおろか街の隅々にまで通る。
 それを全く疑っていない。
 流石に近隣の村には電話のよーなモノを使って声を伝えているが。


「朕はホワイトカーパス州領主、アザリン・ド・エル・クラン・ライクンである!」


 何一つ憚るモノを持たない、はっきりとした覇気に満ちた声。
 もしその筋の人間が見たら、是非にとスカウトする事間違いなしだ。

 アザリンの声は広場のみならず、聞いている民衆の心にダイレクトに染み込んだ。


「朝も早くから叩き起こしてすまぬが、現在ホワイトカーパスは危機に瀕しておる!
 言うまでもなく“破滅”は延々と湧き出し、その戦力は留まるところを知らぬ!
 如何に我らの軍が強力無比とは言え、このままでは補給さえままならなくなるのは目に見えておる。
 ここから王都までの道にも“破滅”は沸いて出て、補給も連絡さえも妨害された。

 このままジリ貧の状況を見詰めて、おめおめ滅んでいくのか?
 そんな訳はない!
 朕はこのホワイトカーパスが愛しい。
 朕が育ったこの地が、この景色が、そしてここで生きる民達が!
 これを護る事ができるならば、どんな汚辱にも耐えよう!
 だが、今はその全てを望む事は出来ぬ。
 ならば朕が選ぶべきは決まっておる。
 朕が選ぶのは、お主達…民に他ならぬ!
 例え…この地が“破滅”の温床となろうともだ!」


 ホワイトカーパスが“破滅”の温床になる。
 それを聞いた民達が騒ぎ出す。
 それを止めずにアザリンは続けた。


「通達が行っているとは思うが、これからホワイトカーパス総出で王都へ避難する。
 向こうでの衣食住は既に確約してある。
 それから
「ちょ、ちょっと待ってください! それはこの地を見捨てるという事ですか!?」」


 アザリンの言葉を遮って、広場の中央付近に居る青年が叫んだ。
 ドム達は一瞬反応するが、アザリンは前以て『絶対に手を出すな』と厳命している。
 警護は単なるハッタリのようなものだ。

 青年の言葉に反応して、また幾つものざわめきが生まれる。
 だが、アザリンは敢えて断言した。


「見捨てる!」


「なっ…領主ともあろう者が…!」


「言いたい事は多々あるだろう。
 朕を領主の資格無しと言う者も居るであろう。
 全く持ってその通りじゃ。
 朕は…アザリンは、領主としての義務を捨てておぬし達を取る!
 御先祖には顔向けできず、末代までの恥となるじゃろう。
 だが、切り捨てなければ護れぬのなら、例えそれが心の臓であろうとも切り捨てる!

 おぬし達が生きている間に、再びこの地を踏めるかは解からん。
 踏めたとしても、恐らく戦火によって見る影もないほどに蹂躙された後じゃろう。
 その恨み辛みは、全て朕に向けよ!
 土地を放棄し、お主らにまでその選択を強要した朕に!
 お主らを護り、養う事すら出来ないこの無能の領主に!
 切腹でも拷問でも申し付けるがよい。

 だが!
 この地は再び取り戻す!
 例えこの地を朕らが離れても、この地は滅びたのではない!
 例え戦火に焼かれ見るも無惨に焼け落ちても、大地は揺るがぬ!
 我らが帰ってくるのを待っているのだ、このホワイトカーパスは!

 再びこの地に立つために、今はここを離れる!
 そして“破滅”を一掃して、もう一度ここに立つのだ!
 どれだけ時が流れてもだ!」


 アザリンが握り締めた手から、血が滴り落ちている。
 それは最前列に居る領民達にしか見えなかったが、見えずともアザリンの心の内は窺えた。
 声。
 鬼気迫る声。
 自らの無力さと現実に直面し、己が体と同義でもある領地を捨てる決断をした覚悟。
 領主の義務とは、その保護下にある領民を護る事。
 だが、護るべきは民だけではない。
 それまで受け継いできた伝統、この地に眠る先人達の思い、民の暮らしの拠り所となる街。
 それに自分達を時に優しく、時に厳しく受け入れる大地。
 アザリンにとって、ホワイトカーパスとはその全てであった。
 護るべきホワイトカーパスを、同じく護るべきホワイトカーパスのために切り捨てる。
 矛盾に心を引き裂かれそうになる。

 声となって響く慙愧の念は、民衆達の胸を打ち抜く。
 古来から偉人や地位の高い者は、よく『自分の怒りと哀しみだけは特別だ』と思いがちだ。
 戦場で幾つもの命を奪い、幾つもの命に庇われて生き延びている事も忘れ、殺された友たった一人のために戦いを起こそうとする。
 同じ悲哀を、末端の兵士達一人一人が何度も味わっているというのに。
 そのため怒りのままに行動し、それまで積み上げてきた全てを瓦解させてしまう。
 それも仕方ないと言えば仕方ないのだろう。
 どれだけ優れた名君でも、所詮は人間だ。
 感情を殺しきる事は出来はしない。
 自分の感情だけしか目に入らなくなる。

 だが、アザリンは違った。
 自分の哀しみが、故郷を捨てる悔しさが、自分だけのものではない事をこれ以上ない程に理解している。
 その上で、なお言うのだ。
 生き延びるために、故郷を捨ててくれ…と。

 皮肉な事だ。
 アザリンは領主としての義務を放棄する事で、最大のノーブレス・オブリージュを果たしていた。
 それは、『王族にはなりたくない』『あの立場にはなりたくない』と、人々にそう思われる事。
 彼女の苦悩は、一部なりとも人々に伝わり、たった一部でもその重さに人々は圧倒された。
 自分であれば、見るも無惨に潰れてしまっているだろう…と。


 アザリンの声が終わると供に、広場には静寂が訪れた。
 風さえも遠慮しているのか、全くの無風。
 するのは人の息遣いと衣擦れの音だけ。


 ドムは思う。
 自分の終生の好敵手と定めた、ジャスティ・ウエキ・タイラーの事を。
 この計画をアザリンから聞かされた時のドムの衝撃は、並大抵のものではなかった。
 アザリンの心情を察する事すらも忘れてしまいそうになったのだ。

 そしてその後、タイラーを思って黒い感情に身を焦がした。
 聞けば、タイラーの顔を見に行った際に世間話をし、その時に強引に聞きだしたらしい。
 アザリンとタイラー…今は敢えてパコパコと呼ばない…はツーカーの仲だ。
 タイラーが閃きを得た時の表情を、逃がす事なく読み取ったのだろう。
 何でもないと誤魔化そうとするタイラーから、アザリンはこの策を聞き出した。
 即ち、ホワイトカーパスから一度離れ、王宮を中心としてアヴァター全土の戦力を布陣させる。
 こうして民や兵を移動させているのは、ホワイトカーパスのみではない。
 あちこちの州で、戦力を王宮に集中させるべく大きな動きがある。
 ただ結集させるだけでは意味がないが、その辺りはアザリンとクレアの手腕で色々と細工をしてある。

 ドムはこの時ほどタイラーの才を憎んだ事はない。
 確かに、人類が生き延びるにはこれしか無いだろう。
 自分でも、口惜しいがこれ以上の策は思いつかない。
 しかし、その策はアザリンにとてつもなく苦しい選択を迫る策だった。
 筋違いとは承知しつつも、ドムは思わずにはいられない。

 なぜ思いついたのだ、と…。
 たとえ陛下との仲に亀裂が入る事になっても、なぜその策を隠し通さなかった、と。


 ドムが思いに耽っていると、民の最前列に動きがあった。

 黙ってアザリンの話を聞いていた中年オヤジ…少々でっぷりしているが、特に見るべき点はない…が、音を立てて荷物を置いたのである。
 周囲から視線が集まった。
 しかし弱気そうに見える中年オヤジは、その視線を意に介さなかった。
 周囲の家族から、どうしたのかと制止の声があがるが、手をかざしてそれを制す。
 あまりに普段と様子が違う中年オヤジに戸惑う家族を無視してアザリンを直視する。

 そして、ゆっくりと跪いたのだ。
 見よう見まねながら臣下の礼を取る。


「そなたは…」


「名もない一市民でございます。
 陛下のお心、しかと心に刻みました…。
 私は陛下に従います。
 陛下のご決断が、正しいと信じてついて行きます。
 この命、お預けいたします。
 私は私の意志で陛下を信じて行動します。
 どうぞ、陛下が正しいと信じた道をお進みください。
 私に出来る事があれば、命を対価にしてでもお力添えをいたします」


 俯いていたため少々聞き取りづらい声だったが、静寂に染まった広場に染み渡るには充分だった。
 数秒の間があり、まず中年オヤジの隣に居た幼い娘が同じように礼を取った。
 その後ろで、名も知らない壮年が膝をつく。
 今度はアザリンの左側で皺くちゃの老人が、酒瓶を抱えた青年が、赤子を抱えた人妻が、髪を染めたヤンキーが。
 更に先程声を挙げた青年が、学校に通い出したばかりの少女が。

 また、離れた村では、アザリンが居るであろう方向に向けて、とある店の主人が、平凡な農夫が、先日仕事をやめたOLが。

 みな、アザリンに向けて頭を垂れていた。
 数瞬、アザリンは立ち尽くす。
 広場の中には、誰も立っている者は居なくなった。
 例外はアザリン本人と、広場の隅に立っている警備兵だけ。

 アザリンは泣き出しそうな嬉しそうな、ドムをして『あのようなお顔は、もう二度と見れぬであろう』と言わしめた表情をする。
 しかしそれは一瞬で、キッと目を鋭くした。


「みなの心、確かに受け取った!
 では、これより避難に入る!
 南門より出て、そのまま南下して港まで行くぞ!
 だがその前に、一人一つずつ渡す物がある。
 みな、あれを見よ」


 アザリンは広場の隅っこの方を指差した。
 釣られてそちらを見る民衆達。
 殆どの者は人ごみに遮られて何も見えないが、無理に人を押しのけようとする者は居ない。



「見えている者は数えるほどであろうが、あそこには水が入った樽がある。
 無論、樽はあれだけではない。
 街の外に、数えるのも億劫な程準備されておる。

 この水は普通の水ではない。
 我がライクン家に伝わる秘薬を全て使い、そんじょそこらの回復魔法とは一線を画する程の癒しの魔力が篭められておる。
 これを呑めば、徹夜続きの受験生も締め切り間近であっち側が見えている漫画家も、たちまちの内に元気溌剌になる特別な水じゃ。
 少量ではあるが、これを全員に配る。

 これから我々は、それこそ徹夜で目的地まで移動する事となる。
 馬でも使えば一日で行ける距離じゃが、何せこの人数じゃ。
 遅々として進まぬ事は目に見えておる。
 そこで、この水という訳だ。
 先も述べたように、この水は特別な神水。
 疲れてもう動けぬと思ったら、水を少しだけ飲むがよい。
 それだけでも、また歩き出すには十分な力が漲るじゃろう。
 これを使い、一瞬たりとも休まず足を止めず、港まで進む!
 休憩時間を無しにすれば、明後日の夕方には全員が到着できる。

 なお、この街に居ない者達には、合流時に配る事とする。
 一滴たりとも無駄にするでないぞ!
 もうこれ以上の神水は無い!」


 これがドムとアザリンの策である。
 タイラーの策で最大のネックだった移動時間を、大幅に縮める。
 ショートカットをするのでもなく、進軍スピードを上げるのでもなく、単純に休憩時間を削る。
 捻りも何もないが、有効な手段である事は間違いない。

 本当は大河が連結魔術で作り出した神水なのだが、それをバカ正直に言うわけにはいかない。
 大河本人の希望だし、幾らでも作れると思われると面倒な事になりそうだ。
 だからアザリンの一族に伝わる秘薬という形で誤魔化した。 

 多少は疑問を持つ者もいたが、そんな場合でない事くらい理解している。
 また、怪しげな水ではるが、アザリンが大丈夫と言うからには大丈夫なのだろう。


 民衆は兵士達の誘導に従い、ゆっくりと移動し始めた。
 神水は街の出口で受け取る。
 民衆達は今一度、自分達の育った街を目に焼き付けて、それを振り切るようにして歩き始めた。


 ユカと大河、セルと汁婆は民衆達の先を進む。
 彼らの役割は、道の先に敵が居ないかどうか偵察する事である。
 流石に街どころか領全体の民衆を護りながら戦うのは不可能だ。
 となると、先に道を阻む敵を全て蹴散らし、さらに後方へ戻って、追撃してくる魔物達を撃退…という事になる。
 この後、別の街からも領民が合流してきて、もっと移動速度が落ちるだろう。
 どんなに少なく見積もっても、1戦2戦交えるのは免れまい。
 街に罠でも仕掛けられればよかったのだが、そこまでの余裕は無かった。


 汁婆に乗り、大河達は微妙にビビリながら道を進む。
 2速歩行での汁婆猛ダッシュはとても心臓に悪い。
 しかもショートカットの為に、時々森を突っ切る。
 反射神経だけで枝を避け、何故か突っ込んでくる鹿を蹴り飛ばし、さらにバラ園では流石に棘を避けきれずに傷らだけ。
 まぁ、その甲斐あってかなり遠くまで偵察に来る事が出来た。


 そして…。


「うっへぇ…。
 ウジャウジャ居やがる…」


「ホント…あんな大軍、見た事ないよ…」


 ある高台に上ってみると、魔物の集団を発見した。
 高台に上ったのは、ユカが『軍気が見える』と言ったからだ。

 高台の少し向こうには、数える気にもならない程の魔物達が集合している。
 殺気だっているのが、遠めにもよく解かった。

 セルはそれを見て唸る。


「なるほど…。
 ここ最近駐留地にのみ攻撃を仕掛けていたのは、このためだったのか…」


『あん?
 どういう事だ?』


「だからな、ホワイトカーパス全体を満遍なく攻撃するんじゃなくて、駐留地のみに集中している…と思わせる事で、戦力の補強を図っているのを隠してたんだよ。
 10箇所に散らばっていた1の力を集めて、7は駐留地を攻撃、残りの3は戦力増強って感じでな。
 参ったな…こりゃそう簡単には突破できないぞ。
 それに、同じくらい…とは言わないまでも、結構な規模の軍団が近くにあると思った方がよさそうだ」


『近くか、或いは後方に…だな』


 苦い顔をするセルと汁婆。
 それはそれとして、大河はセルをおかしなモノを見る目で見詰めていた。

 セルが視線で問い返すと、大した事じゃないんだが…と前置きする。


「どうでもいいが、セルが軍略に詳しいってのは違和感があるよな」


「本当にどうでもいいな…。
 これでも学園じゃ成績は結構上位に食い込んでたんだぞ。
 実技だけじゃなくて学科もな。
 何せこの手の軍略とか戦略も覚えておかないと、使い捨てにされる危険があるしな」


「…察するに、真剣に覚えたのは戦略系ばかりで、他の科目はカンニングか…」


 ズバリ大当たりである。
 しかしセルは何一つ後ろめたい事は無いとばかりに胸を張る。


「それよりさ、アイツらどうするの?
 何だか浮き足立ってる…。
 多分、みんなが大きく移動…避難するのを察知してるんだと思うけど」


「それじゃ、これを放っておくと移動中のみんなを襲いに行くって事か…。
 ……見過ごせんな…。
 浮き足たってるのは、多分こっちの移動を予測してなかったから、大忙しで準備を整えてるんだ」


『仕掛けるなら早いうちに…か』


 このまま様子見をしていても、彼らの戦の準備が整うだけである。
 これだけの規模だと、避けて通るのも難しい。

 セルは暫く考え込んだ。


「…大河、ユカさん…。
 あの連中の相手、出来ますか?」


「……生き残る自信はある。
 大河君も一緒だしね」


「そういう言い方されると、焦らすのも冗談も言えなくなるんじゃが…。
 まぁ、俺は平気だよ。
 ただ、ここら辺一帯は更地になっちまうかもしれんけど…」


「じゃ、決まりだな。
 キツイ仕事を押し付けてスマンが…」


 大河とユカは、あの魔物の群に奇襲をかけ、その機動力を徹底的に殺ぐか、あわよくば壊滅させる。
 その間にセルは汁婆に乗って本隊へ合流し、魔物の集団の存在及び、後方から迫っていると思われる大軍の存在を知らせる。

 セルは力のない自分に歯噛みしたが、悔しさだけで大河やユカのような戦闘力を身に付ける事はできない。
 凡人には凡人の役割がある。
 天才や英雄の世界を真似るのではなく、自分ができる方法で、自分の役割を果たすのだ。


「それじゃ汁婆、セルを頼むぞ」


『任せとけ
 他の魔物達と遣り合うヒマもない事だし、ショートカットしまくって最短距離で行ってやる』


「…セル君、本隊に合流する頃にはボロボロになってるかもね」


「言わんでください…。
 ……それじゃ、ここはお願いします。
 決して無理をせずに、ヤバイと思ったらすぐにゲリラ戦に切り替えて、逃走のチャンスを待ってください。
 援軍を連れて戻ってきますから…」


 とは言うものの、どれほどの援軍を得られるかは怪しい。
 本隊の警護に加えて、後方から迫る敵を足止めせねばならないのだ。
 ドムの性格であれば、足止めよりも突破に力を注ぐであろうが…逆に大河とユカが居るのだから、多少の事は平気だとあまり兵をよこさないかもしれない。
 確かに2人の力量を鑑みるに、アレだけの魔物達を叩き潰すのは然程難しくない気もするが…。
 問題はユカである。
 大河は…よく解からない理屈だが、トレイターから受ける加護がなんか異常なまでに上昇して、殆ど永久機関な状態だそうだ。
 体力負けする事は、まず無いだろう。
 しかしユカは違う。
 彼女の戦い方は、内なる気や氣を駆使して自身の力を底上げする。
 それは取りも直さず、自分の体力を急激に消耗しているという事である。
 強さはともかく、持久力が保つのか?

 不安げに見るセルを、ビッと親指を立てて見返すユカ。
 セルはそれを見て、迷いを捨てた。
 一刻も早く戻り、一刻も早く戻ってくる。

 が、万が一の時の指示は出しておくに越した事はない。


「1時間以上経っても戻らず、増援も来なかったら、それぞれの判断で行動してください。
 撤退でも徹底抗戦でも。
 撤退した場合は、魔物達に尾行されてる可能性がある時は……戻らないように」


 最後の一言を、心を鬼にして言い切るセル。
 それを大河もユカも受け止め、頷いた。


「心配しないでよ。
 秘策あり、だからさ」


「…お願いします。
 汁婆、頼む!」


『オウ!』


 セルを乗せ、汁婆は最初からスプリンターモードで走り出した。
 足がホイールスピンなどしている。
 と思ったら、一瞬後には突風を巻いて遥か彼方へ走り去って行った。

 それを見送り、チラリと魔物の大群を見るユカ。
 正直言って、ちょっと気が重い。
 セルに言った秘策とは、単なるハッタリである。
 大河とユカの圧倒的な攻撃力をアテにして、とにかく突っ切るしかない。


「…よし、大河君!」


「応!
 と言いたい所だが、その前にちょっといいか?」


「…なんだよ、水を差すなぁ…」


 今にも突撃をかまそうとしていたユカは、大河に向けて非難がましい視線を送る。
 それを受け流して、大河はある提案を持ちかけた。
 怪訝な顔で聞いていたユカだが、話が進むに連れて表情が真剣になっていく。

 そして暫く考えていたが、大河に向けて頷いた。


「これで策は固まった。
 あとは乗るか反るか…」


「心配するな。
 いざとなったら、力で乗り切ろうぜ。
 元々俺達は、細かい事を考えて戦うタイプじゃないんだから」


「ボクはそこまで猪突猛進なタイプじゃないつもりなんだけどなぁ…。
 ま、いいか…時計合わせ!
 分かれてから3分後に強襲ね」


 苦笑しながらも、ユカと大河は気配を消して森の中を進む。
 暫く進み、魔物達の群に近付くと二手に分かれた。
 近くでフォローし合って戦わないのは、大河の攻撃の余波に巻き込まれないためだ。

 進んで魔物の群を観察する内に、大河は妙な事に気がついた。
 森が静か過ぎる。
 魔物達の喧騒は別にして、その辺に居るであろう小動物とかの気配が全く無い。
 それどころか、木々も衰弱しているように見える。


「これって…まさか、マナを吸い取ってるのか?
 何のために………って、そんなの一つしかないよな」


 魔物達は、切り払っても切り払っても沸いて出てきていた。
 それこそ無限に存在するかのごとく。
 どこから沸いて出たのか、またこの魔物の群達も、どこからその数を補充していたのか。
 うろ覚えだが、授業で聞いた記憶がある。


「確か、無限召喚陣…とか言ったか。
 これ一つだけだとも思えんな…」


 恐らくは今も魔物達が増えているのだろうが、数が多すぎてサッパリ解からない。
 とはいえ、これはかなり厄介だ。
 この魔法陣を叩き壊せば、少なくともこの魔物達の内、呼び出されて間もない安定してない魔物消える。
 逆に、壊せなければいくらでも沸いてくる。
 この手の魔法陣は、術者が数人がかりで動作を継続させねばならない。
 もしもその制御を離れてしまえば、溜め込んだ力が一気に爆発する。

 傷をつけるか術者を潰したら、さっさと逃げた方がいいかもしれないが…大河の攻撃力を鑑みるに、それも少し難しい。
 そもそも誰が術者なのか見分けがつかないから、逃げるタイミングが計れないのだ。


「…仕方ない、早めにユカと合流して、ヤバイと思ったらさっさと逃げるか。
 どうせ魔物達の中心付近で落ち合うつもりだったしな」


 かなり不安だが、やってやれない事は無いだろう。
 正直言って焼け石に水だが、攻撃範囲が広くなりすぎないよう、トレイターを大剣ではなくナックルとして装着。
 勿論同期連携も使用する。
 大剣ほどのリーチは無いとは言え、これでもかなりの余波が起きると推測される。


「程々に熱を撒き散らさないといけないからな。
 それじゃ、頼むぜトレイター」


 大河は時計を見て時間が迫っているのを確認し、両手を額の前にかざして組み合わせる。
 目を閉じ、トレイターの中にある未来の自分の魂を通じて、トレイターを構成する他の部分に呼びかける。


「……探知完了…。
 …構成把握…。
 バイパス確保…。
 効率設定…。
 連結完了…。
 ……よし!」


 大河が目を開くと供に、トレイターが強い熱を放ち始めた。
 大河本人は同期連携による分厚い霊気の壁で熱風を防いでいるが、触れれば軽い火傷では済まないほどの熱だ。
 無論、それほどの熱を発しているのだから、隠れた大河の存在も気付かれる。


「ダレダ、ソコニイルノハ!」


「いくぜぇ!」


 ユカと分かれてから、ジャスト3分。
 大河が飛び出すのと同時に、魔物を挟んで反対側からユカも飛び出したのが見えた。
 あっという間に魔物の群に突入して、派手に暴れまわっているようだ。
 デカブツから小物まで、面白いように空を舞っている。

 大河も負けじと拳を握り、目の前の魔物に叩きつけた。
 声もなく四散する魔物。
 余波で周囲の魔物達が怯み、一瞬だが動かなくなる。
 その隙を逃さず、大河は魔物と魔物の間を擦り抜けて移動した。
 そしてまた眼前の敵にパンチ。
 魔物が吹き飛び、また余波で動かなくなる。
 そして間を擦り抜けてまた移動。
 撃破数は多くないが、確実に一体一体を仕留め、囲まれないようにする戦術だった。
 ユカも似たような戦い方をしている筈である。

 何故なら、無理に敵を仕留めずとも、一網打尽にする必殺技があるからである。


「ウロチョロスルナァ!」
「キサマァ!」
「コロセェェ!」
「ウオオォォゥゥゥゥゥン!」
「ドケドケ!」
「ジャマダァ!」


 密集していた所に殴りこまれた魔物達は、まともな陣形など取る事もできず、乱戦に持ち込まれていた。
 大河とユカの実力が低ければ、圧倒的な数で囲まれてジ・エーンドである。
 だが、2人にとっては事実上向かう所敵なし、である。
 ユカもヘタな防御など考えず、攻撃と移動にのみ集中しているからこそ出来る荒業だった。


 魔物の大群の中を、掻き分けるようにして進む大河とユカ。
 魔物達は何とか2人を捕らえようと、状況判断もそっちのけにして動く。
 一旦引き上げて体勢を整えるとか、そういう事も頭になかった。

 2人の後を追い、自然と大河とユカの軌道に誘導される魔物達。
 追いかけられる側には、追う側には無い利点がある。
 それは、進行方向を自分で決められる事だ。
 誘導されているなら話は別だが、追う側は追われる側の方向転換や進路決定に、しっかりと付いていかねばならない。
 高速で移動しているのなら、一瞬のタイムラグが大きな突き放しを生む事になる。
 高速で移動していなくても、方向転換と移動が迅速に出来ないこの状況では同じ事だ。

 そんな訳で、魔物達は大河とユカが、一定の軌道を描いて移動している事に気付かなかった。
 歪な軌道ではあるが、明らかに規則性が見られる。
 その軌道が収束した時、そこが勝負の瞬間だ。

 さっきから異様な熱量が、周囲にばら撒かれている。
 大河の加熱したトレイターが放つ熱だ。
 ユカは汗ばむ首筋を不快に思いながらも、また一体の魔物を撃破した。


 一方、こちらはセル。
 汁婆に乗せられ、本隊へ急いでいた。
 本隊の位置は大まかな所しか解からないが、進行ルートは解かっている。
 それに、人数が人数なだけに、遅々として進行は進むまい。
 ヘタをすると、隊の最後列はまだ街に居る可能性がある。

 襲撃を受けていなければいいが…と考えるセルの目に、大勢の人影が写る。
 よく見てみると、どうやら自分達と同じ兵士らしい。
 しかし、どうしてこんな所に?自分達と同じ斥候か?
 まさかとは思うが、“破滅”に寝返った兵士とか?


「…考えたくないが…そうも言ってられんか。
 一応用心だけはしておこう…」


 懐にある幾つかの装備を確認し、セルは汁婆に止まるように合図した。
 セルの指示に従って、急ブレーキをかける汁婆。
 例によって2メートルほど宙を舞うセル。


「ん? お、おい貴様なにものずむ………あ、あー…」


「い、生きてるか…?」


 そして問題の兵士達のまん前に、脳天から突き刺さった。
 セルはピクピク痙攣している。
 多分、深く埋まった頭では呼吸も出来ていないだろう。

 それを見ている汁婆は、『やっちまったかな…』と人事のよーに思っていた。
 その汁婆を見て、ちょっと…いやかなり驚いた表情になる兵士。
 魔物と勘違いしたとしても、誰が責められよう?


「あ、お前たしか汁婆…?」


『あん?
 俺を知ってるのか』


「ああ、俺は元々騎乗兵だったから、牧場にも通ってた…。
 確か、今は救世主候補殿とタケウチ殿を乗せて走ってるんだよな?
 って事は…ひょっとしてこの人柱みたいなの、セルビウム・ボルトか?」


 痙攣どころか、酸欠になりかけてバタバタ暴れているセルを突付きながら暢気に話す兵士。
 しかし、それを聞いた他の兵士は大慌てだ。
 偵察に行ったはずの救世主チームの内の一人が、何の理由も無くこんな所に居るはずが無い。
 何か報告するべき事を携えているはずだ。


「お、おい!
 早くセルビウムを掘り出すんだ!
 なんか気のせいか、力が弱くなってるぞ!?」


「あ、本当だ。
 落ち着いてきたんだなぁ」


「このドアホ!
 いいから早く手をかさんかい!」


 一人だけ暢気どころかピントがずれたのが居るようだ。
 しかしそれでも歴戦の兵には違いない。
 2人も居れば、埋まったセルを引き抜くくらい造作も無い事である。

 ズボッ、と大根よろしく引っこ抜かれるセル。
 上半身が土塗れになっていたが、何とか無事のようだ。


「ぶはぁっ、ぜぇはぁぜぇはぁ、ぜぃ、ぜぃ…し、死ぬかと思った…」


『しっかり掴まってろよ、お前はよー』


「汁婆、表面だけでもいいから労ってやれって…。
 それで、こんな所で何してるんだ?
 他のお2人はどうした」


「は、はい…ふぅ…ぺっぺっ、つ、土が口に…。
 と、とにかくですね、待ち伏せされてます」


「待ち伏せ!?」


 キッと兵士達の目が鋭くなる。
 セルも土を適当に払って、先行した先で見てきた物を話した。
 ユカと大河が奇襲をかけている事も。

 うなる兵士達。


「それは…厄介だな…。
 とにかく、ドム将軍に報告しに行ってくれ。
 俺達は引き続き、周辺の捜索と他の村々への伝令にあたる。
 頼んだぞ!」


「はい!」


 ヘタクソな敬礼を返し、セルは再び汁婆に飛び乗った。
 気安く乗られているようで少々気分を害した汁婆だが、この状況で駄々を捏ねるほど子供ではない。

 兵士達を置いて、汁婆は再び加速した。
 それを見送り兵士達の一人が口を開く。


「あのさぁ…」


「ん?」


「俺、セルビウムってあんまり好きじゃなかったんだよな。
 特に強いわけでもないのに、救世主候補殿やタケウチ殿と組むなんて、明らかに贔屓だろ?」


「まぁ、それは大抵の人が一度は思っているだろうが…。
 いきなり何だよ?」


「いや、ちょっと見方を変えてみるわ。
 どんな理由や経過であれ、汁婆に乗せてもらって、しかもあの猛スピードに耐えてるだろう。
 案外凄いヤツかもしれんな」


「…まぁ、そうかもな。
 汁婆に乗ってられる神経だけでも…。
 それじゃ、偵察を続けますか」


 疾風の如き勢いで本隊を目指すセルと汁婆。
 手綱がないので、セルは強引に汁婆にしがみ付いている。
 これがまた、メチャクチャ体力を使う。
 ただでさえ猛スピードの恐怖に耐えるため、必死こいて我慢してたら現実逃避的にスピード狂として目覚めそうな程の負担がかかっているのだ。
 そこへ来て二足歩行特有の振動。
 小石を跳ね除け小岩を飛び越え小鹿を蹴りそうになり小川を水上歩行し、振動が物凄く不定期なのである。
 だから跳ね飛ばされないように常時体に全力を篭めていなければならないのだ。
 汁婆に乗れるだけの人物が居なかったのは、彼が拒む事も理由の一つだが、このスプリンターモードに耐えうる人物が殆ど居ないからだろう。
 それが解かっているから、先程の兵士はセルを見直していたのだ。

 汁婆の見かけに関しては、兵士達も何も言わない。
 何故なら慣れてしまうか諦めてしまうからだ、色々と。

 その汁婆の移動する兆候はすぐに解かる。
 異常なまでのスピードのため、砂煙が立ち捲るからだ。
 本隊の先頭を誘導していた兵士達も、すぐに気付いた。


「おい、あの砂煙は…汁婆じゃないのか?」


「なに?
 …距離がありすぎて姿が見えんな。
 一応警戒はしておけよ」


「ウスッ!」


 剣に手をかけ、いつでも抜刀できるようにする兵士達。
 その剣呑さが伝わったのか、すぐ後ろを歩いているアザリンがピクリと眉を上げる。

 本隊は先頭から順に、先導又は盾となる兵士・護衛の兵士・アザリン・また兵士・そして民衆がゾロゾロ・後衛を勤める兵士達となっている。
 ドムはアザリンよりもやや先に居る。
 フローリア学園から派遣された傭兵達は、そこかしこの兵士達の混ざっている。
 アザリンはドムに目を向けるが、視線に気付いたドムは『心配ない』と首を振って前を見る。


 確かに、敵襲の心配はなかった。
 しかし…。


「おっ、おい汁、汁婆っ、もっとゆっくり、とまとまとま止まれないいぃぃぃぃ!?」


 ドップラー効果付で迫る汁婆。
 そのムチャクチャな加速力とスピードに比例して、停止に使う距離はより長くなる。
 汁婆が本隊を目視した時にはもう遅い。
 四肢を突っ張ってフルブレーキ、しかし間に合わずに汁婆とセルは本隊に突っ込んだ。



「ぬ、ぬおおぉぉぉぉ!?」
「ひぃぃぃ、汁婆が迫ってくる〜!?」
「避けろ、避けろ!いや避けるな!」
「どっちだよ!?」
「殿下と将軍に当たる! 何とか受け止めろ!」
「ドム将軍ー!?」
「殿下には近づけさせるな!」
「イエスサー!」
「徒党を組んで対抗しろ!」
「「「「どっこりゃせーー!!」」」」


 猛スピードで突っ込んでくる汁婆を前にして、混乱しつつもスクラムを組む兵士達。
 流石にこの辺りのチームワークはバッチリだ。 
 しかし幾らなんでも相手が悪い。


 汁婆VS兵士達。
 汁婆迫ってきた迫ってきたブレーキかける、しかし停まらない!(競馬中継風に)
 兵士達体を寄せ合った、スクラムを組んで衝突に備える!
 はい激突3、2、1!


「来たぞー!」

「「「「「
  どオオりゃあああああぁぁぁぁああ!
                」」」」」


 ズゴォォォォン!!!!


 汁婆突入した止まらない止まらない、兵士達スクラムを破られて宙を舞う!
 しかしスクラムの厚さは並ではない、兵士達宙を舞いながらも汁婆を減速させる!
 何故か汁婆回転がかかる、セルが振り回される振り回されて兵士達を薙ぎ倒す、
 さぁ汁婆スクラムを突破できるか巨漢が集まったスクラムが目の前に!


「「「フンガアアアァァァ!」」」


 ズドォム!


 おおっと砂煙が上がった、しかし汁婆出て来ない!
 アザリン&ドムの前まであと少しなのに、快進撃を止めてしまったかー!?
 …ようやく砂煙が晴れてまいりました。
 どうやら汁婆は、完全に止められてしまったようです。
 汁婆の無念を象徴するかのごとく、彼に吹き飛ばされた兵士達がボテボテと間の抜けた音を立てて地面に落下します。
 いやぁ、それにしても凄い飛距離と滞空時間です。
 汁婆の突進の威力を表していますねぇ…。

 汁婆を止めた兵士・ギガンティック浜松さん、両手をかざして勝利の雄叫びを上げております。
 その前で、汁婆が荒い息をついて周囲を見回しているようです。
 ………おや?
 一名足りませんね?


「………陛下、思いっきりどうぞ」


「うむ!」


 アザリンは近くにあった岩の上に身軽によじ登り、杖の先を両手で持ってうぃんうぃん揺らしている。
 その下では兵士達がハラハラして見守っているが、彼女の運動神経はかなりのものだ。
 そう簡単には足を滑らせたりはすまい。

 ドムは自分が撃墜しようかと思ったのだが、アザリンが自分でやると言い出したのだ。
 元々活発な性格だし、久々に体を動かせる機会だと思ったらしい。
 命令を受けてドムが躊躇している間に、さっさと岩に登ってしまったのだ。
 こうなっては、今から止めるほうが危険だ。
 せめて下で警護するしかない。


 アザリンは飛んでくるソレを見据えて、杖を垂直に立てて構えを取った。
 非力な彼女の力では、直撃させたとしても大した効果は望めない。
 だから杖の片側についているゴテゴテとした装飾を重し代わりにして振り回し、遠心力を思い切り叩きつけるのだ。
 ターゲットの軌道は、極めて単純である。
 スピードはあるが、的も大きい。
 彼女の運動神経なら、軽く直撃させる事が出来る。

 アザリンは足を踏ん張り、ターゲットがリーチ内に飛び込む瞬間を待つ。
 そしてきっかり2秒後、ターゲットは杖が届く範囲内に飛び込んだ!
 アザリンは両腕に力を篭め、しかしスピーディに腕を振りぬく!


「アビゲイル…改め、アザリン砲ムラン!」

グシャッ!

「がふぉうわぁ!?」


 杖のフルスイングの直撃を受け、跳ね返されるターゲットことセルビウム・ボルト。
 どうやら汁婆最後の衝突に耐え切れず、人間大砲よろしく宙を舞ったらしい。
 そして兵士達を飛び越え、ドムを飛び越え、アザリンの近所に墜落しそうになったのを、アザリンがアビゲイルホームラン…もといアザリン砲ムランで撃墜。
 いい塩梅に直撃したらしく、素晴らしい勢いでセルはキリモミ回転しつつ落下した。
 しかも頭は下…俗に言う車田落ちだ。
 セルが狙ってやった芸なのか、アザリン砲ムランのデフォルト効果なのかは定かではない。
 なんか赤いモノが振りまかれているが、多分吐血している。
 …セルの場合は大した傷にはなるまい。

 そして、ズボッ!という音と供にセル着地。
 またも頭から埋まってしまった。


「…誰も汁婆に乗りたがらぬわけだな」


 ドムはボソリと呟いて、セルを強引に引っ張りだしてやった。
 引っ張り出されたセルは流石にフラフラしていたが、しっかり呂律は回っている。
 …が、ドムとの会話を参考にすると正気とは言いづらいかもしれない。


「おいセルビウム、この指は何本意に見える?」


「あ、あるでぃあさんのゆびにんぎょうをつけたゆびが4ほん…そのにんぎょう、ください…」


 ダメダメである。
 取り敢えず、アームスト…もといドム家に代々伝わる気付け術…ただしかなり荒っぽい…をお見舞いしてやる。
 微妙に不安だが、取り敢えず目の焦点は合った。


「セルビウム、偵察先で何か発見したのか?」


「! は、はい!
 それが…」


 多少慌ててドモりながらも、偵察先で見た魔物の大群の事を伝えるセル。
 それを聞いて流石は名将と言うべきか、即座に無限召喚陣の存在に思い当たる。

 このホワイトカーパスの地を傷つけながら、魔物を呼び出す無限召喚陣。
 ドムにとってもアザリンにとっても、忌々しい事この上ない存在だ。
 だが、今はそれを破壊しに向かっているヒマはない。
 大河達が遭遇した魔物達のすぐ側に一つはあるだろうが、他に幾つも在る筈だ。
 無限召喚陣は、その陣の周囲のマナを大量に、しかも際限なく消費する。
 その性質上、二つ並べて陣を敷くと極端に効率が悪くなる。
 周囲のマナが、あっという間に枯渇してしまうからだ。
 故に、結構な距離を置いて陣を敷いていると推測される。
 自然が豊富なホワイトカーパスだから出来る大技…いや、外法である。


「ぐっ…“破滅”め…!」


 怒りが暴発しそうになるドムだが、すぐ側ではアザリンが堪えているのだ。
 誰よりもこの地を愛するアザリンが。
 ここで暴発するような、見苦しい真似は許されない。


「…わかった。
 一個中隊を援軍として差し向ける。
 セルビウム、お前は後方の警護の当たれ」


「え? し、しかし俺は」


「言いたい事は解かるが、今はこちらが優先だ。
 言い切るが、お前を差し向けるよりもこちらの兵士を一人差し向けたほうが援護になる。

 お前は傭兵だろう?
 罠の類も作れるな?」


「はい…。
 学園の成績では、トラップの解除の方が得意でしたが」


 得意な理由は、覗き下着ドロその他のためだ。
 数ある警報装置や監視スコープ、致死性の罠を全て潜り抜けてパラダイスへ臨もうとするセルの根性と努力は、漢であれば一角の尊敬を払うべきであった。

 理由はともかくとして、セルは罠というものを熟知している。
 この辺りの技術は、正規兵よりも傭兵の方が身近にあるし、ルーキーのセルでもベテラン兵士と渡り合えるだけの技量を持っていた。


「よし、ならば後方へ向かい、他の傭兵達と供に殿を勤めろ。
 無理に戦わなくていい。
 通ってきた道、後方から魔物が来るであろうルートに、ありったけの罠をしかけておくのだ」


「なるほど、足止めですか。
 了解しました。
 …汁婆はどうするのです?」


「大河とタケウチ殿に、伝令を持って戻ってもらう。
 それとセルビウム、後方へ向かいながら伝令を流せ。
 ……これが指令書だ」


「はっ」


 ドムから書類を受け取り、セルは後方へ向かう。
 その途中の幾つかの部隊に、指令書を見せてトラップ作成の手伝いをさせるのだ。

 大河達と同じ場所で戦えない無念を胸の底に押し込め、セルは走った。
 これはスピード勝負になる。
 即興でできる罠と、それに必要な材料を頭に思い浮かべながら、セルは両手を握り締めた。
 初の戦場…仕事場で、もっとも危険な殿軍を勤める。
 何の因果だコンチクショー。
 …覗きと下着ドロの因果か?


「おらよっ!」


「てりゃあ!」


 拳がまた振るわれる。
 それだけで、例によって魔物達は吹き飛んだり動けなくなったり。
 大河とユカの2人は、セルの心配なぞ無用とばかりに大暴れしていた。
 ユカは流石に体力が切れてきたようだが、連日の大河との特訓は着実に成果が出ている。
 まだまだ底力は尽きていない。


「ユカー、そろそろ準備はいいかぁ〜?」


「オッケェ〜イ!
 こんにゃろっ…!」


 硬いアイスゴーレムに正拳・肘内・肩口からの体当たりという陣内流鬼会的コンボを叩き込み、破壊とは行かないまでも吹き飛ばしてひっくり返す。
 呼吸が荒れるのを無視して即座に移動、一瞬前までユカが居た場所をムチ状の剣が切り裂いた。

 ユカは服のあちこちが破れ、所々血を流している。
 致命傷こそ受けてないものの、体力は確実に削られている。
 大河は今すぐにでも駆け寄って助けたかったが、作戦を考えるとそうも行かない。
 それに、大河はユカの力を信頼してこの策を打ち明けたのだ。
 ここで助けに行けば、その信頼を損なった事になる。

 衝動を抑え、拳を振るう大河を横目で見て、ちょっと笑って気を引き締めるユカ。
 しかし熱血は使わない。
 むしろ脱力を使わねば。
 この策は、熱くなったら成功しないのだ。
 もしこの状況で失敗すれば、魔物に囲まれて大乱戦に持ち込むしかなくなる。
 大河一人ならそれも可能だが、ユカがいつ巻き込まれるか気が気でない。
 ここで確実に決めねば…。


 2人が魔物の中を突き進みながら描いていた軌道は、そろそろ最後の一点に指しかかろうとしていた。
 方向転換。
 魔物を撃破、撃破、撃破。
 方向転換。
 魔物を撃破、撃破、ユカとすれ違う。
 方向転換。
 撃破、ユカと背中合わせ。
 方向転換。
 …ここだ!


「ユカ、冷気だぞ!」


「わかってる! 必殺!」


 気合一閃、ユカが普段扱う命を感じさせるような熱い闘気ではなく、冷たさすら感じさせる殺気を含んだ気を放つ。
 そして拳を回転させながら天に向け。


 「飛竜昇天破ッ!」


 竜巻が巻き起こる。
 魔物達が一斉に吹き飛ばされた。


「お、おおおぉぉおー!?」


 そして大河も吹き飛ばされた。
 何やってんだと言いたいが、これは予想の範囲内だ。
 トレイターという熱を放つ存在を装着している以上、逃れる事は出来ない。

 大河とユカが魔物の中を突き進みながら描いていた軌道は、歪ながら螺旋だったのである。
 ぐるぐると回りながら、大河はトレイターから充分な熱量をばら撒き続けた。
 そして魔物達の誘導も同時にこなし、空気を大雑把ながら渦巻き状に掻き回していく。
 そして2人の位置が螺旋の中心に来たとき、ユカが冷気を天に向けて回転付で拳を放つ。
 熱された空気は一点の冷気に向けて殺到し、その結果この大竜巻だ。

 敵が強ければ強いほど、多ければ多いほど破壊力を増すこの業。
 魔物の大群を丸ごと巻き込んだだけあって、その竜巻の規模は凄まじい。
 竜巻の内側に居るユカも、自身の闘気に引き摺られて宙を舞いそうになった。


「う、ううゥうゥゥ…!」


 ユカはしゃがみ込んで、ついでにスカートを抑えて飛ばされないように体を固定する。
 渦の中心に居るからいいものの、ヘタに動けば問答無用で吹き飛ばされかねない。
 必死で闘気を押し込め、竜巻に巻き込まれないようにした。
 しかしその代償と言ってはなんだが、色々と破れていた服が更に破れていく。
 かなりオイシイ破れ方をしているのは、もはや世界意思の現れだろう。
 だが、それを鑑賞する余裕は誰にもない。


「ぬぅぅ、ユカの肌が、肌が…ガハッ!」


 …鑑賞しようとする余裕ならある。
 さしもの大河も竜巻に呑まれ、生命維持を図るのが精一杯っぽい。
 あ、魔物と激突して団子になって飛んでいった。
 なんか他にも色々、竜巻の勢いに耐え切れずに胴体が泣き別れしているヤツとか色々居る。
 よ〜く見ると、竜巻の一部が赤くなっている気もする。
 別に大河の鼻血ではないので悪しからず。 


 少しはなれた場所で…ドムに派遣された中隊が、天を突く竜の如き竜巻を目にした。
 アヴァターでは比較的珍しい現象だが、それを差し引いても段違いの迫力である。
 進軍も忘れて、思わず見入ってしまう。

 が、一人が我に帰った。


「お、おい…あの辺りは、タケウチ殿と当真殿が居るあたりじゃないのか?」


「なぬ?
 …そ、その通りだ…。
 という事は、あの竜巻はひょっとして戦闘の余波か?」


「誰がやったのかは別として…あんなのに首を突っ込んで、生きて帰れるかな…」


「…とにかく行くぞ」


 多少の不安を感じながらも、進軍を再開する。
 あの竜巻が、もし敵が起こした現象だったら…自分達の勝ち目はないのではないか、という不安を抱えながら。


 そして……彼らの頭の上に影が差す。
 何気なく見上げ……なんか赤いのが降って来た。


バシャッ!

「うお!? なんじゃこりゃ!?」


「赤い液体……って、これ血じゃないか!」


「まさか、さっきの竜巻で当真殿かタケウチ殿が…!?」


 最悪の想像に、顔が青くなる。
 そして一度だけ顔を合わせ、無言で頷いた。


「急ぐぞ!
 例え我らの力が尽き果てようとも、お2人を助け出すのだ!
 あの方々はホワイトカーパスのために…いや、アヴァター全土の為に死なせてはならん!」


「「「「おお!」」」」


 気合を入れ、決死の覚悟を決める兵士達。
 馬に蹴りを入れ、現場に向かおうとするも…。


「ん? また何か降ってくる…。
 全員散会、上空を警戒せよ!」


 それぞれぶつからない様に注意しながら散会。
 宙を舞って飛んできたソレは、キリモミ回転しつついい按配に加速を付けて…。

グワッシャアァァァン!

 大地に激突、バラバラになりました。
 直撃した大地は、思い切り抉れている。
 わーお、すぷらった。
 その威力は、先程の竜巻の強力さを物語っているようで、兵士達に更なる不安を与えるには充分だった。
 それに、もしもこれに直撃したら…まず死ぬ。


「…急ぐぞ」

「あ、また来る」

「またかよ!?」


 進もうとした矢先にこれだ。
 不吉というか何と言うか。
 何とか気力を奮い立たせ、降ってくる物体に注意を向ける。
 激突して死ぬ気もないし、彼らは魔物の生命力を侮ってはいない。
 ヘタをすると、この勢いで落下してもまだ生きて襲ってくる可能性がある。

 しかし…。

 ぼっよぉぉぉぉ〜〜ん

 何とも気の抜ける音だった。
 落下してきた物体は地面に激突、しかもそのまま更に飛び上がった。
 ナマモノは意外にバウンドしない。
 しかし、その物体は軽く2メートルは飛び上がった。

 警戒を強める兵士達。
 しかし、その物体はお構いなしにスーパーボールを彷彿とさせる勢いで跳ね回る。
 これは攻撃ではない事は明らかだが…。


「…スライム…のようですな」


 苦虫を噛み潰したような表情の兵士。
 RPGなんかではザコとして扱われ、アヴァターにおいてもザコである事は間違いない。
 しかし、それでも意外と厄介なヤツである。
 普通のスライムでも、大きさ次第では兵士の手に負えない事がある。
 衝撃を与えても吸収されるので、文字通り切り裂かねばならない。
 しかも、切り裂いても一定以下の大きさになるまで動き続ける。
 ある程度の剣の腕があればあしらえる相手だが、とにかく時間を喰うのだ。
 今のような状況では、無視して行くのが最善なのだが…。


 ゴツン!と鈍い音がして、スライムが停まった。
 弾力に満ちまくった半液体にはあるまじき音だ。
 怪訝に思いながらも、スライムを包囲する数人の兵士。
 他の兵士は、先に竜巻の元に向かう。


 スライムは動く様子を見せない。
 これなら放っておいてもよかったか、と兵士が思った時だ。
 なんとスライムは、ムクリと人型を取って起き上がった!


「な、何事だ!?」


「あ、アタタタタ……」


 剣を構える兵士達を歯牙にもかけず、人型は頭を抑えて唸っている。
 右へ左へフラフラと、スライムを微妙に纏わりつかせてよろめいていた。
 と、その顔がチラリと見える。


「と、当真殿!?」


「はいぃ!?」


 スライムの中から現れたのは、救世主候補当真大河だった。
 よく見ると、脳天からダクダク血が流れている。

 何が何だかサッパリだが、とにかく手持ちのバンソーコーを貼る。
 どう見たってそれで間に合う出血ではない。
 しかし何故かアッサリと血は止まってしまった。
 人体の神秘と言うか、救世主クラスの根性だか力だか特異性を垣間見た気がする兵士達だった。


 大河は頭を抑えながらも、兵士達と供にユカの元へ向かう。
 魔物は全て吹き飛んでいる筈だが、無限召喚陣の爆発が心配だ。
 それに、何処かに伏兵が潜んでいるとも限らない。

 大河は状況と空から降ってきた理由を説明する。
 細かい理屈は省いたが、ユカと2人で竜巻を起こしたと言うと尊敬の目を向けられてしまった。
 空からスライムに包まれて落下してきたのは、技の性質上自分も吹き飛ばされるしかなかったので、空中でスライムをとっ捕まえてクッション代わりにしたのだそうだ。


「では、タケウチ殿はまだ召喚陣付近に?」


「多分ね。
 と言うか、まだあの竜巻消えてないのな…」


 大河の視線の先では、まだ竜巻が荒れ狂っている。
 それを眺める大河の目に、ふと疑念の光が浮かんだ。
 幾らなんでも、長続きしすぎた。
 相応のエネルギーがなければ、あの竜巻はすぐに消えてなくなるはず。
 にも拘らず存在し続けているのは…。


「まさか…陣のエネルギーが!?
 ヤベッ、ユカがヤバイ!」


「何ですと!?」


 理由は解からないが、大河がヤバイと言うならその通りなのだろう。
 そう判断して、兵士達は馬にムチをくれた。
 馬たちも主人の必死さを感じ取ったのか、不平そうな態度を全く見せずに走る。

 恐らく、竜巻が消えないのは暴走しかけている無限召喚陣のエネルギーが、竜巻に吸い込まれているからだ。
 無論、全てのエネルギーを吸い込めるはずがない。
 もう暫くしたら、魔法陣から溢れ出る魔力の量が一気に増加、炎の竜巻が吹き上がるだろう。
 早く止めねば、冗談抜きで大惨事である。
 “破滅”の仕業と言ったら納得してくれるだろうか?


 ユカとてバカではない…と言うか危機感知に関しては非常に優れているから、何時までもあの場に居るとも思えない。
 しかし、彼女が居る位置は他でもない、竜巻のド真ん中なのだ。
 ヘタに動けば、即座に巻き込まれて吸い上げられる。

 竜巻が消えるのを、召喚陣の爆発に怯えながら待つか。
 生存率が低いのを承知で、あえて竜巻に呑まれて脱出を図るか。
 ユカなら後者を選びそうだ。

 大河が竜巻に目を凝らしていると、予想通りと言うか何と言うか、打ち出される人影。
 しかし大河は更に目を凝らす。


「…違う。
 あれは獣人だ」


 召喚器の恩恵のお蔭で、大河は視力もよくなっている。
 そうでなければ、この距離で人影を識別する事はおろか、発見する事すらできない。
 使っているのは目だけではない。
 ユカの訓練に付き合ううちに、大河にもユカが使う氣の気配が少しずつ感じ取れるようになってきた。
 そちらの感覚も総動員して、ユカを探す。

 …違う。
 ……違う。
 違う…違う違う。
 違う…ちが…!


「見つけた!
 すまん、ちょっと行ってくる!」


「竜巻の現場に行っております!」


 声を上げるや否や、即座に走りだす大河。
 兵士はその背に合流地点だけ告げると、先に行った兵士達に合流すべく進んでいく。

 一方大河は、カエデも脱帽モノのスピードで木々の上を移動する。
 久方ぶりに全力疾走である。
 ユカまで結構な距離がある。
 それに、適切な高度で受け止めねば、大地でキャッチした所で衝撃を殺しきれまい。 
 だがそれに関しては秘策がある。
 今はとにかく、ユカを秘策のリーチ内に収めなければならない。

 愚痴を吐くヒマも体力も惜しみ、ただひたすらスピードを上げる。
 その歩み…いや走りは、木の枝の上を渡っているにも拘らず大地を走るが如し。

 走りながら、大河はトレイターに力を篭める。
 同期連携を開始したのだ。
 トレイターに人格を与える必要は、今はない。
 いつ必要なのかと問われても返答に困るが、今は少しでも早く前へ。

 同期が深まるにつれ、移動速度とそれに伴う破壊も強くなる。
 踏み出す足は木の枝を蹴りつけ、時に空気を蹴りつけ、凄まじい加速を生む。
 その加速…前に進む力の反作用として生まれた力は、森を容赦なく傷つけた。
 自然破壊に心を痛めるヒマもない。

 ようやくユカがリーチ内に入った。
 一旦強引にブレーキをかけ…これによる被害については何も書くまい…ユカに狙いを定める。


「いくぜっ!
 スカウト戦の必須兵器、リテルゴルロケットォォ!」


 必須かどうかはともかくとして、大河が叫ぶと同時に腰の後ろ辺りで膨大なエネルギーが膨れ上がる。
 次の瞬間にはそれが一気に爆発し、更に次の瞬間には大河は空を舞っていた。
 屁で飛んだと言ってはいけないので要注意。
 全身でエネルギーを使って加速しないのは、体全体から一様なエネルギーを放出するのは難しいし、何より上半身からもエネルギーを放出していたらユカを弾き飛ばしてしまうかもしれないからである。

 それはともかく、急激な加速、惰性で飛ぶ、調整のためにまた加速、を繰り返して大河は確実にユカに近付く。
 ユカは半分意識が飛んでいるようだ。
 無理もない。
 そして服はかなーり露出度が高くなっていた。
 無理もなくて目の保養だ。

 浪漫回路がいきなり作動して全身からオーラが放出されそうになったが、ユカが遠くに吹っ飛ばされるので自粛。


「よっ、ほっ…よっし、タイミングバッチリ!」


 細かい加速を繰り返して、何とか大河はユカを補足した。
 ユカが落下してくる位置を割り出し、突風が吹いた時のために加速の準備だけはしておく。
 そのままスピードを合わせてユカの体を抱きとめた。

 竜巻に結構な勢いをつけられたユカを受け止めるのは、少々力が必要だったが…。


「ユカ、おいユカ…起きてくれ。
 まさか大怪我とかしてないよな?
 そんな事になったら、俺はこんな作戦を提案した自分を一生罵り続けてヘンな趣味に目覚めてしまうぞ」


「……ん…?
 え…あれ……大河君、ここ…?」


 目を覚ましたユカだが、焦点があってない。
 恐らく三半規管が生涯で最高に混乱しているのだろう。
 竜巻の中に飲み込まれたのだから無理もない。
 実を言うと、大河もまだちょっとフラフラしている。

 しかし、何はともあれ無事なようだ。
 ホッと一息つく大河。


「すまん、召喚陣の爆発から逃げるのを計算に入れてなかった…」


「うぅ〜…それは…確かに失策だったけど…。
 ボクも一も二もなく賛成しちゃったし…。
 それに、竜巻の根元ってもっと細いんだと思ってた。
 発生するのは拳の上からで、外側に居るボクは逃げられるとばかり…。
 竜巻を起こすって、なんか格闘家としてロマンを感じるもんね」


「そうだな、クマ殺しと並んでロマンだ。
 しかし、思い切った事するなぁ…竜巻に呑まれるなんて」


「他に方法は思いつかなかったし、冷気を調節して纏っていればある程度は勢いをコントロールできる…と思ったから。
 それに……いざとなったら、大河君が助けに来てくれるって期待してたもん」


 冗談めかして言うユカ。
 期待されていたのは嬉しいが、ちょっと引け目を感じる大河。
 自分の発案のせいで、ユカはこんな大博打を打つハメになったのだ。
 しかしそれだけの効果はあったようで、あの付近に屯していた魔物達は全滅したらしい。


「流石に二度はゴメンだけどね…」


「そうだな…貴重な体験だが、一生に一度で充分だ」


 ここが空中だという事も忘れて、染み染みと頷く2人。
 そしてユカはようやく自分がまだ落下しているという事を思い出した。


「それより大河君、どうやって着地するの?
 流石にこの高度からの位置エネルギーを受け流すのは至難の業だよ。
 水の上に落ちても、高度が高度だけに…」


「水がダイヤモンド並みの硬度になるってか?
 上手く潜れても、充分な深度をもった湖もないし…。

 ま、その辺は何とかするよ。
 リテルゴルロケットの小を何度か使って、慣性を中和するから」


 リテルゴルロケットが何を指すのか知らなかったが、どの道ユカには何も出来ない。
 大河に丸投げする事にした。

 ちょっとだけ地上を見て、高度を確認。
 高所恐怖症の人間でなくても、尻と足の裏辺りから血の気が抜けていくような錯覚を覚える高さだ。
 流石にユカも怖い。


「……えいっ」


「おひょっ!?」


 ユカ、大河に抱きつき。
 ふにょんとした感触が大河に押し付けられる。
 勿論押し付けられたのはそれだけではない。
 服が破れて露出していた腕とか首筋とか、その辺の感触もバッチリだ。

 自分が何を押し付けているのか、ユカも自覚している。
 と言うか、ぶっちゃけ狙ってやった。
 恥ずかしいが、これぐらいしておかねば…。


(救世主クラスの人達が合流した時に、つけ入るスキがなくなりそうだもん…)


 そうユカが心中で呟いた時、2人の体は強く揺さぶられた。
 物凄い空気の振動。


「くっ、爆発しやがった!」


「うわ、竜巻が…」


 大河とユカの目に、竜巻の根元で大爆発が起こったのが見える。
 とうとう無限召喚陣が暴走したらしい。
 しかも、暴走して溢れ出したエネルギーは竜巻に飲み込まれ、竜巻の色が赤く染まっていく。
 炎の色だ。

 大河は素早く目を走らせ、先行した筈の兵士達を探す。
 時間から考えて、まだ現地には到着してないはずだ。
 だが見つからない。


「大河君、とにかくアレを止めないと…。
 ……ボクじゃ無理だな…。
 トレイターで切れない?」


「無茶言うなぁ…。
 ま、出来るけどさ…。
 ユカ、ちょっと投げるぞ。
 悪いけど手を離してくれ」


「…うん」


 名残惜しいやらホッとしたやら、ユカは少々フクザツな心境で大河に絡めていた腕を放した。
 どうやら大河はシリアスモードらしく、ユカに目をやらずに竜巻を注視している。

 根元の爆発はほぼ全て竜巻に飲み込まれている。
 爆炎の類はそのまま竜巻によって上空まで連れて行かれ、猛烈な勢いを付けられて放り出されるだろう。
 吹き飛んでいく火の玉は、何処に着弾するのか知れたモノではない。
 最悪、本隊に居る民間人達に直撃、何て可能性もある。

 大河は自分の位置と方向を確認し、自分と竜巻を結ぶ直線上に集落の類がない事を確認した。
 そしてユカを上に向けて放り投げ、トレイターを大剣に変える。


「この一撃で竜巻を掻き消し、炎の類は全て向こう側に向ける。
 フルパワーでやったら、地形が変わっちまうかもな…。
 この際だし、自然破壊には目を瞑って…。
 ……ん?」


 竜巻に狙いを定めようとすると、視界の端を何かが横切った。
 別に空を飛んでいる魔物がまだ居たのではない。

 海だ。
 海を船が進んでいる。
 大河はそれが何なのか、大体の見当がついた。


「…あれは…工場で作ってたヤツか。
 と言う事は、未亜達がいるんだな?
 ……ヤベェヤベェ、フルパワーでやったらでっかい津波が起きたかも…」


 冷や汗をかく大河。
 自分の一撃のために、限りある資材と人材を注ぎ込んで作られたブツが破壊されては堪らない。
 上昇させていたシンクロ率を意識して下げ、トレイターを上段に構えた。
 無論、ここからバカ正直に振るっても竜巻に届く筈がない。
 大河はトレイターから放たれる力に、形を与えた。


13日目 午前 未亜のハーレムチーム


「…何アレ?
 竜巻ってヤツ?」


「え? どこどこ?
 うわ、ナマで見るのは初めてだよ…」


 船の艦首に出て、リリィと未亜は襲撃に備えて待機していた。
 リコとダリアは別の船に乗っている。

 昨日昼の事である。
 山から下って工場から引っ張り出されたのは、内部で建設されていた軍艦だった。
 落下の衝撃で何処か壊れてないか、チェックと修理に約半日。
 人員を配置し、満を持して出発したのが明朝。
 そして現在、ホワイトカーパス州のとある港へ進行中、という訳だ。

 元々、アヴァターでは船というのはあまりメジャーな乗り物ではない。
 根の世界だから…なのかは知らないが、アヴァターはかなり単純な作りになっている。
 海の中に大陸が一つだけ…パンゲアというヤツだ。

 故に、船を使う機会は非常に限られる。
 黄河よろしく向こう岸が見えない河もないし、精々河下りに使われる程度。
 それにしたって、船を下流から上流へ持っていく労力を考えると割に合っているとは言えない。
 あまり必要とされないから技術の発展も遅い。
 研究するのは、ごく一部の物好きだけであった。
 当然、人が何十、何百人も乗れるようなバカででかい船というのは作成されず、今回が初めての試みである。
 況や大砲その他を据え付けるなど、発想すらされていなかった。

 無論、造られていたのはこれだけではないのだが。


「それにしても、私達がここに派遣された理由って…あんまり意味なかったんじゃない?」


 未亜の言う通りである。
 襲撃を警戒したのは確かだし、遠距離専門の人材を集めたのは、宙を舞い水の底から攻撃してくる魔物を撃退するためだ。
 船の甲板に乗り移ってくる魔物は、普通の兵士達でも何とかなる。
 遠距離専門と言っても、接近戦が出来ない訳ではないのだし。 


「ま、一番怖かったのは、外に出してから出発までのタイムラグでしょうね。
 それと、今後の役割を考えると…多分、本番はこれからよ。
 ……あっ、なんか竜巻がパワーアップした。
 燃えてる…」


「…どう見たって大惨事だよね…」


 何があったのだろう?
 とにかく大変な事だと言うのは解かるのだが…。

 しばし未亜は考え込んで、リコにテレパシーを送った。
 穴倉の中に居る間は非常にヒマだったので、赤の力の扱いを暇潰し感覚で学んでいたのである。


(リコちゃん…リコちゃん…)


(…マスター?)


 ダリアの隣で、同じく竜巻を眺めていたリコ。
 突然契約者からのテレパシーが送られ、眉を顰めた。
 未亜の赤の力扱いは、あまり上手いとは言えない。
 所詮は付け焼刃である。
 付け焼刃でもこれだけ操れれば充分及第点だが、荒いのは否定できない。
 テレパシーを送られると、鬱陶しいノイズが必ず入るのだ。
 リコにとっては、耳元で小さなガラスキーの音がちょくちょく鳴るような感覚だ。


(マスター、何かあったのですか?)


(何かって程じゃないんだけど…あの竜巻、どう思う?
 明らかに自然のモノと違うよね)


(はい。
 大量の魔力が含まれているようです。
 何者かが意図的に起こした現象だと思われます)


(まさかとは思うけど、お兄ちゃんとか…)


(…あの竜巻は、一歩間違えれば天変地異クラスです…。
 いかにご主人様とは言え…えっと…あの…その…)


 言い切れない。
 大河だった在り得る。
 彼女達は現在の大河の全力を見ていないが、その特異性は誰よりも詳しく知る所。
 その辺の石を蹴り飛ばしただけで、地震を起こしたり噴火を誘発するかもしれない。


(ま、アレを誰が起こしたのかは別として…何か見つけられない?
 あの竜巻から)


(…一応、もっと観察してみます)


 そう言ってリコはテレパシーを切った。
 未亜に言われた通り、魔力感知に重点を置いて竜巻に目をやる。
 異常を探す…と言っても、あの竜巻自体が異常である。
 気候的にも、この辺りで発生するはずがない。
 人工的に発生させるとしたら、何処をどうやればいいのか検討も付かない。

 観察してもどう反応すればいいのか迷っていると、横からダリアが肩を叩いた。


「ちょっとちょっとリコちゃん、アレ見てアレ」


「? 竜巻だったら既に見ていますが」


「そうじゃなくて、もうちょっとあっち側よ」


 リコの首を掴んで、グキッと捻じ曲げるダリア。
 鈍い音がしたが、敢えて気にすまい。

 首筋に走る鈍痛を堪えながら、リコはダリアの指差す方へ目を向ける。
 だが、特におかしな物は発見できない。


「…何があるのです?」


「あら、見えないのぉ?
 愛の力が足りないんじゃない〜?」


「誰に向ける愛ですか、誰に」


「大河君に決まってるじゃなぁ〜い。
 ほら双眼鏡」


 懐から双眼鏡を取り出し、リコに渡すダリア。
 しかし何処に仕舞っていたのやら、物理的に納得が行かない。
 特にリコは。


「…胸ですか?
 その反則的というか挑発的と言うか、くすくす笑ってごーごーのような乳ですか?
 そこにアンリ・マユがいて、色々しまってあるのですね?
 なんでそんな所に…アンリ・マユな影はドラクエの袋の中に入ってればいいんです。
 私へのあてつけですか?
 むしろ見せ付けて「はいはい、そのくらいにしておいて」……結局なんですか、もぅ…」


 なんか赤の精霊から別の精霊にクラスチェンジしそうなリコを止めて、ダリアは強引に双眼鏡を覗き込ませた。
 しかし、リコの視界に移るのは空だけだ。
 ダリアはリコの隣に顔を寄せて…乳の感触にリコが拒絶反応を起こしかけたが…双眼鏡の角度を微調整する。


「……この辺かしら?」


「…あ? あ、ああ!?
 ご、ご主人様!?」


 思わず叫ぶリコ。
 幼女の危険な発言に視線が集まったが、生憎と今は構っているヒマはない。
 この辺りは潮の流れが激しいのだ。

 集まった視線を全く意に介さず、リコは双眼鏡を覗き込む。
 大河は空中で、何やら大剣を上段に振りかぶっていた。
 その切っ先が向かう先は、あの竜巻らしい。


「何をする気なのかしらね〜?」


「と言うか、どうやってダリア先生は見つけたんです?
 どう考えても人間の目では発見できない距離でしょう」


「愛の力…と言いたいけど、私の目って梟並みの視力なのよね〜♪」


「ダリア先生がトリなのは目じゃなくて頭です」


 さり気無く失礼な事を言い、また双眼鏡に集中する。
 大河は大剣を真っ直ぐ上に向け…。


「!?」


 リコは息を呑んだ。
 大河とトレイターの間を行き来する、不可思議な力が感じられたからだ。
 もっとよく見ようとした瞬間、リコの視界は白光に遮られた。

 何事かと思って双眼鏡から離れると、異様な光景を見る事が出来た。
 竜巻から少し離れた場所に、光る柱が浮いていた。


「あれは…?」


「発信源は大河君みたいねぇ」


 唖然として見守る二人の前で。
 光の柱はゆっくりと前に倒れていき…。

キィィイィィン!

「「キャッ!?」」


 光と竜巻が接触した瞬間、響き渡る甲高い音。
 いや、気圧の差が生んだ錯覚だろうか。

 思わずしゃがみ込んだ2人が顔を上げた時には…。


 竜巻は、その形を崩して崩壊しようとしていた。




ようやく卒論のテーマが決まりました、時守です。
最近やたらと筆の進みがいいのですが、この辺りを書いた時には逆に展開に詰まったりして、結構苦労した覚えがあります。
強引な展開でも、お見逃しを…。

ところでこのホワイトカーパス逃避行、下手をすると10話近く続く可能性があります。
色々とイベントが盛り沢山で、中々話が進まないんですよ…。
幾ら何でも冗長だ、と思うのですが…これも偏に未熟ゆえです。


それでは、レス返しです!


1.あうあう様
きっと神経にダイレクトに笑気ガスでも注入されたんでしょう…。


2.アレス=アンバー様
うーん、ブラパピの端末は一応ブラパピ専用です。
そうでないと、ベリオの電波とブラパピの電波が混線しちゃいますから。

カツラは…多分、もし髪が復活してもそのまま持っていくと思いますw

あー、クルーゼに夜道で会ったら、ゴルディオンを使う暇もなく逃げましょう。
下手に殴りかかると、暴漢と認識してぐるぐる回りながら反撃してきます(怖)


3.竜神帝様
時守もここまで壊れるとは思いませんでした…電波の神の思し召し。
もう一度登場させるなら、是非とも絡ませてみたいと思います。


4.文駆様
やはり味方として登場する場合、仮面は必須ですね。
…いや、ダウニーの場合は新しいカツラでしょうか?

まぁ、グリコだってお菓子よりオマケの方が価値がありますからw


5.ガンスベィン様
うわぁ、リアルにヤバw
と言うか、原作の方でもヤケになるならなるで、そのくらいに留めておけばよかったのにw
そーなるとストーリーが成立しませんけどね。


6.カシス・ユウ・シンクレア様
言われて見ればとびかげソックリ…。
しかし、あれほどの奇行にはまだまだ届きません。

無傷な理由…理不尽な頑丈さはギャグの基本ですw
ヤマモト君とか出しましたが、タイラー御大はやっぱり扱いにくいです…。
部隊名はそよかぜ以外にもきたかぜとかありますね。

ミュリエルは別にシッポを付けているのではありません。
単にルビナスに付けられた変身機能で、文字通り生やしてみただけです…根っ子がスゴイ気になる…。


7.謎様
確かに…大河一人でもでっかい竜巻起こしたからなぁ…。

後書? いや、書き始めたらなんかこー指が勝手にw


8.カモね様
そー言われると本当にやりたくなりますなぁ。
まぁ、ユカについては何もないって事は無いと思います。
本人が納得してから大河とくっついて欲しいと思っているので、ナニかあるとしても当分先になりますが。
未亜は…実際、そろそろ他の人達に反撃のチャンスを与えないとねぇ…w


9.流星様
元気になりすぎって気もします。
救世主クラスが集結と言っても、暫く顔を合わせる事は無さそうですね。
カラミが書きたいけど、どーもリズムが思い出せなくて…。

>ルビナス&ナナシ
あ、忘れてた…冗談冗談、だからその注射器をシマッテクダサイ。


10.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>

魔物達がシア・ハスに群がる理由…本気で説得力があるんですが…。
SD化しても、ブラパピのボイーンは健在です。
リコに喧嘩を売っちゃってます。

クローン施設…そうですねぇ、過去の遺物でなければ他の世界から流れてきたとか。
あっ、追いかけられて死に掛けたイムが泣いている…。


11.イスピン様
むぅ、マスク・ド・ムーンは思った以上に破壊力があったようです。
良作(?)は時間をかけずとも創れると言いますが、本当ですねぇ…。

脳天天国はヤバイっしょ…あれ、どう見ても麻薬だし。
法則とか世界がどうとか言うのは、いくら言っても抑止力は働きません。
いえ、別の意味で働きます。
何故なら何を言っても、それは全て電波故の発現と認識され、本人も自分が何を言っているか理解できなくなっているからです。
よし、これで楽屋ネタもオッケーか!?


12.15様
クルーゼさん、最初は結構苦しんでいたんですよ。
何故なら人並みの羞恥心というのがあったから。
まぁ、その結果がアレですから…あまり意味があったとは思えませんが。

>壊れ指定
一晩寝たら、それで気にならなくなっちゃいましたw(オイ)


13.根無し草様
シリアスとギャグの落差は、大きければ大きいほどいい!

そろそろストーリーを動かしたいのですが、正直言って遅々として進みません。
たった2,3日の工程が、それこそ何週間分にも…(汗)
冗長になるのが決定してますが、どうかお付き合いください。<m(__)m>

ダリアは…まぁ、ダリアだしなぁ…。
逆に手篭めにした可能性まで…。


14.黄色の13様
我が肩甲骨の辺りに降臨なされた、電波の神に感謝です。
普段なら絶対に出来ないしw
イヤ本当に、誰かに乗り移られたとしか思えないくらいでした。
切欠をくれた黄色の13さんに感謝!


15.YY44様
続き…っつーと、マスク・ド・ムーンの大暴れの方ですか?w

そもそもあのモグラだか犬だかは、生物学的に節操が無い気がするのですが。
SE○Aの人も、原型を忘れてらっしゃるのではと思ったり。

シェザルの仮面…確かに、あの目の所から何か出そうですね。
あと口からも。
筋肉マンのお面を被りながら、牛丼食いあさって欲しいですね!


16.神〔SIN〕様
た、大河君色んな意味でピーンチ!?
ちゅーか、素晴らしいまでのマゾっぷり…でもヤローのマゾは嬉しくない…。
ヘンタイな兄を持ったベリオは一体どういう反応をするのでしょう…。

ブラパピ(…ねぇ、ベリオ)
ベリオ (…分かってます。
     殺しましょう、大河君がこの生き物に気付く前に)
ブラパピ(…私に兄は居ないわ)

ってな事を予定していますw
ところで無道、お前死んでるのにどーやて喋ってるんだ?
まさか幽霊になったのか?

仮面ライダーについては、あまり詳しくない…。
子供の頃にRXを見た記憶があって、アマゾンとかの種類を覚えるのに躍起になってました。

ところで…したんですか?
ウルトラマン大人買い…。


17.なな月様
高々30分の面接のために、新幹線で片道4時間はキツイですよね…。
しかも、面接とかは大抵午後からですから、仮にホテルに泊まったとしても…チェックアウトは10時、時間を持て余す…。

実際、戦争でどれ位ヒトが死ぬのかは…ちょっと時守には想像がつきません。
悲しいけど、これって戦争なのよね…と言いつつビグ・ザムに特攻かました人にしても、MSやガンダムを用いた少数精鋭での戦いですから…。
三国志時代のような、大勢の人間がぶつかり合う光景は想像がつきにくいです。

波の揺れって、船の上に居ると酔いの原因になりますが、地上に降りると妙に楽しいんですよね。

ぷにキョヌー…と言うと、全身が乳の柔らかさとか!?
ああっ、抱きしめてみたい!

ソフトハウスキャラのアレですか。
時守も興味はありますが…。
ソフトハウスキャラのキャラクターは、妙にひょうきんだったりマヌケだったりしますからね。
さぞや愉快な学園が出来上がるでしょうw


18.舞ーエンジェルさま
ええもう、あれほどいい娘は中々居ませんよ。
ウチの未亜にも見習わせたいくらいで…。
2番手は…憐とバチェラが同格でしょうか。
なんと言うか、こう…絡ませたい?
いや、ユリな意味ではなくて。
憐は抱き心地がよさそうですね〜、何かお人形さんみたいw

極力全員を出したいと思っていますが…一部力量不足が如何ともしがたいキャラが居ます。
ズバリ、ゲンハ。
ギャグモードでのキチクならまだしも、リアルでああまでイカレられると…狂気を書くのはマジで難しいです。
まぁ、一応考えてありますが…。

権堂…は、多分ムリっす。
もうとっくにクレアが粛清してますからw
ユーヤ…もとい優哉は…ゲンハと同じタイミングで出すか…。
しかし、ネットワークとバルドを絡めると……いかん、レイカ・タチバナの野望なんぞ5秒で発覚して、隊長が潰しにくる(汗)

そんじゃ、今からArcadiaに行ってきまーす!


19.ナイトメア様
ど、何処の捻れた城の守護者ですか!?
エイジャ兄弟!?
言いえて妙でしょう?
狂うぜフラッシュw

ヤベーっすねぇ、秩序永遠者は…。
ちなみに、その場合未亜達の反応は……くたばってるかな、色々な意味で。

BACK< >NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze