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「幻想砕きの剣 9-6(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-06-14 22:55/2006-06-14 23:36)
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10日目 ドム軍  夕方


 戦況は、ほぼドムが想定した通りに動いていた。
 方々から入ってくる報告も、多少損害が多いが想定範囲内である。
 汁婆のスピードからすると、そろそろ本隊が大河の奇襲を受ける頃だ。

 だが、その報告に耳を傾ける内にある疑念が沸いてきた。


「………偏りがあるな…」


 主な戦闘が起きてる隊は、シア・ハスが指揮する隊と、バルサロームが指揮する隊。
 戦力的には、この2つの隊はほぼ同等なのだが…地形の関係で、突破するとしたら明らかにバルサロームの隊が与しやすい。
 タケウチが居るが、やはり1人は1人。
 カバーできる範囲はたかが知れている。
 だが、その一方で損害が多いのはシア・ハスの隊。
 気になって再び情報に目を通した所、魔物達の本隊に異変があったのだ。


「…シア・ハスの隊に殺到している…?」


 魔物達の部隊は、前面…ドム達の本隊に迫るのでもなく、バルサロームの部隊を突破しようとするのでもなく、シア・ハスの部隊を狙っている。
 はっきり言うが、シア・ハスの部隊に迫った所で何のメリットも無い。
 むしろ、退路を断たれ、包囲されて殲滅されるのが関の山だ。

 これは何かの策か?
 いや、そうとも考えられない。
 このままだと、放っておいてもドム達の勝利は確定する。
 シア・ハス達が戦っている区域には、魔物・兵士合わせてもそれほどの人数は存在できない。
 そこへ向かって殺到しても、ぎゅうぎゅう詰めになって動けなくなるだけ。
 戦闘区域に流れ込もうとして詰まった魔物達を、バルサロームの隊か大河が襲撃して終わりだ。
 伏兵を使うにしても、被害が大きすぎる。
 そもそも、この状況からの逆転の一手など、ドムでも思いつかない。
 窮地からの大逆転を身上とするタイラーでも怪しい。

 これは何かの意図があるのか?
 全体の動きを見ると、何かしらの指令が下されているのは間違いなさそうだが…。


 そうこうしている間にも、シア・ハスの隊は被害を受けつつも魔物達を殲滅していく。
 倒しても倒しても、次から次へと流れ込んでくる為に被害もバカにならないが…そこは歴戦の勇士達と、ルーキーとはいえ頑丈さが売りの傭兵科。
 そう簡単に押されはしない。

 一方、バルサロームの隊は6割方魔物達を殲滅していた。
 この調子なら、すぐにシア・ハスの救援に向かう事も出来るだろう。

 だが、それでは無駄な犠牲も出てしまう。
 潮時と見たドムは、シア・ハスとバルサロームに伝令を送った。


「そろそろ渓谷に敵を誘いこませろ。
 いい加減、大河と汁婆も始める頃だ」


 それぞれ指令を送るべく、馬を走らせる伝令役達。
 それと時を同じくして、渓谷を通して『ドォーン』という鈍い音が響いてくる。
 反響してまるでバケモノの遠吠えのようにも聞こえるが、ドムはそれの音の正体を知っていた。


「大河と汁婆が到着したようだな。
 それにしても、あいかわらず凄い轟音だ…。
 こちらに来る頃には、2割くらいは減っているかもしれんな」


 鈍い音の正体は、大河がトレイターを振るって魔物達を威嚇する音だったのである。
 その轟音が渓谷を反響してドム達の部隊にまで響いた。
 兵士達は多少動揺したが、大将のドムが計算通りと頷いているのを見て回復した。


「さて、そろそろ弓兵は配置に付け。
 他は渓谷の出口付近で待機、バルサロームとシア・ハスの隊が通り過ぎたら魔物達を通さないように足止めせよ!」


 ガチャガチャと金属音を立てながら、与えられた配置に移動する。
 兵士たちに緊張が漲っていく。

 暫くすると、右翼前方から兵士達の姿が見え始める。
 バルサロームの部隊である。
 ドムの指示通り、適当に敵をあしらいながら渓谷に敵を誘い込んできたのだ。

 ドムはそれを確認して被害が大きくない事を確かめ、今度は左翼を見る。


「…シア・ハスの隊が少し遅れているな。
 妙に敵側の圧力が強いからか…。
 ………いや、問題なさそうだな」


 作戦に大きな障害が出てきた時には、狼煙を上げる事になっている。
 それが無いという事は、シア・ハスは多少苦戦しながらも充分役目を果たしているのだろう。
 相変わらず、シア・ハスの隊が狙われる理由は解からないが…。


「ふん…とにかく、目の前の事を先に片付けるか。
 総員、バルサローム隊を援護せよ!」


 ドムの号令と供に、兵士達は渓谷へ突入する。
 こう言った場所での乱戦は危険だが、無理に攻め入らずに壁になる程度なら問題ない。
 バルサロームの部隊だけを通し、魔物達の突撃を受け止める兵士達。
 バルサローム隊も、重症人以外はすぐに方向転換、壁となっている兵士達の援護に当たった。
 進行方向を遮られ、追いかけてきた魔物達は急ブレーキを強いられた。
 当然後ろから詰めて来た者達がいきなり対応できる訳がなく、あっちこっちで玉突き衝突が起こっているようである。
 無論、これもドムの計算内だ。
 理想を言えばシア・ハスの部隊も同時に魔物達を誘い込みたかったのだが、それは贅沢というものだ。

 一方、シア・ハスの部隊もドムの指示通りに動こうとしていた。
 傭兵科のルーキー達が多いため多少手間取っていたが、彼女の姉御肌は傭兵達にとっても、非常に馴染み深い。
 ぶっちゃけた話、オトナの美女(しかも女王様っぽい格好)に命令されるのがカイカンだったという理由もある。

 シア・ハスの部隊は、渓谷に掛けられている橋を目指した。
 一言で言うと貧相な橋だが、まだ充分使える。
 あまり利用価値が無いので作り直されたりしていないが、頑丈さだけは折り紙付きだ。
 しかも、ドムの命令によって事前に補強作業や小細工も仕掛けてある。

 シア・ハスの部隊は海賊上がりだけあって、非常に逃げ足が速い。
 傭兵科ルーキー達もそれは同じで、この辺は見事に息が合っていた。
 追いかけてくる魔物達に、おしりペンペンなどする余裕すらある。
 …すぐにシア・ハスにド突かれたが。

 挑発が効いたのかは不明だが、全軍揃って追いかけてくる魔物達。
 シア・ハスの隊は、急いで橋を渡りきる。


「全員渡りきったね!?」


「生きてるヤツは全員問題ありませんぜ!」


「よぉーし、それじゃ一発イこうかい!」


 橋の向こうから、魔物達が迫ってくる。
 シア・ハス達は迎え撃つような陣形を保って待ち受ける。

 ちなみに、今の状態は↓のような状態である。


     ↓大河&汁婆
    谷↓魔物の群 谷
    谷↓魔物の群 谷
魔物→ 橋======橋 シア・ハス隊
    谷↓魔物の群 谷
    谷↓魔物の群 谷
   ドム&バルサローム隊


 大河と汁婆が追い込み、ドムとバルサローム隊が足止めし、
 そしてその上を通る橋を通り過ぎて、魔物の群を待ち構えるシア・ハス隊。

 シア・ハス隊を追いかけてきた魔物達は、多少狭いながらも橋に殺到する。
 だが、それがシア・ハス…ドム将軍の狙いであった。
 橋を魔物が2,3体ほど渡りきる。
 その瞬間!


「爆破ァ!」


「アイサー姐御!」


「姐御はやめなァ!」


「アイサー女王さずごぉぉん


 響く爆音と崩壊音と鉄拳音。
 誰が殴られたかはノーコメントだ。
 別にセルとは限らない。

 それはともかく、シア・ハスの合図と供に、橋が一気に爆破された!
 爆発自体は然程強くなかったものの、爆発の場所が問題だった。
 橋を支えていた部分だったのである。
 いかに橋が頑丈と言えども、支点の部分を破壊されてはたまらない。
 多量の土砂と橋と供に、魔物達は悲鳴を上げながら渓谷へ落下して行った。

 この爆薬、戦闘開始前に工作員へドムが命じて仕掛けさせた。
 全てドムの計算内、である。

 落下した橋と魔物達は、真下で鮨詰め状態になっていた魔物達を押し潰す。
 そのもう少し向こうで暴れていた大河と汁婆は、いきなり落下して来た魔物と橋に多少びびったようだ。
 しかしそれも一瞬で、また魔物達を逃がさないようにトレイターと蹴りを振るう。


 策略通りに戦況が動いた事に大した喜びも見せず、ドムは渓谷のあちこちの出っ張りの上で待機していた弓兵達に合図を送る。


「今だ!
 一気に殲滅せよ!」


 軽く見積もって数十の弓兵達が現れる。
 彼らは思い思いの矢を取り、狙いもつけずに乱射し始めた。

 魔物達の数が数なので、適当に撃てば必ず当たる。
 中には飛んでくる矢を避けようとして、周囲の魔物とぶつかってしまいそのまま倒れたりケンカになったりする魔物も居る。
 あと5分もしない内に、魔物達の殆どは死に絶え、弓兵達の矢も尽きるだろう。
 そうなったら、今度はドム・バルサローム隊の出番である。
 と言っても、残った数少ない敵を蹂躙するだけだが。


 シア・ハスの部隊も、あまり多いとは言えない弓兵達が活躍していた。
 橋の向こうで、まだ渡っていなかった魔物達を遠距離攻撃しているのである。
 普通の弓なら届きづらい距離だが、シア・ハスが選んだ強弓使い達である。
 何とかリーチに入っていた。
 基本的に血の気が多いシア・ハスとしては、少々物足りないようだが…これも戦術という事くらいは解かっている。


「さて、野郎ども!
 下の魔物達に、石でも岩でも投げつけてやんな!」


「「「「「ヘイッ!」」」」」


 いじめっ子のようなノリで、下に犇く魔物達へ落石投石土砂崩れ(小)。
 軍として多少問題あるような気がしないでもないが、これは戦争だ。
 石を持ち出そうが弓矢を持ち出そうが、急所に当たれば同じである。
 こちらはその辺に弾がゴロゴロ転がっているため、弓兵達と違って気軽に投げつけられるのが強みである。

 ポンポン投げられる石達。
 たまーに間違って弓兵に当たりそうになるが、その辺はご愛嬌だ。
 …さすがに30センチのデカブツが当たりそうになった弓兵は、表情が引き攣っていたが。


 程なくして、今回の戦いも勝利に終わる。
 だが、ドムは魔物達が何に執着して、シア・ハスの部隊を追っていたのか…その疑問が、延々と頭の中で渦を巻いていた。


戦闘終了後、一応後片付けをして駐留地に帰還したドム。
 後片付けとは、この場合魔物の死体が腐る前に焼いて、爆薬で落とした橋の瓦礫を退けるだけ退ける事だ。
 それ自体は、大して手間はかからなかった。
 魔物の死体の数は多かったが、別段手厚く葬る義理も無い。
 ちょっと大きな瓦礫は、ユカか大河の一撃で粉々だ。

 手早く片付けて戻ってきた早々、ドムはバルサロームとシア・ハスを呼び出していた。
 用件は被害状況の確認と、魔物達の動向について。


「……以上が我が隊の被害状況です」


「そうか、ご苦労だった…。
 …予想はしていたが、シア・ハスの部隊の消耗率がやや高いな…」


「とうとう傭兵科生徒に死人が出ましたしな…。
 今まで出なかった事が驚異的ですが」


「そうですね。
 避けて通れない道ですが……。
 他の傭兵科生徒達に、動揺が広がっています。
 戦場で死を実感したのでしょう」


 傭兵となるには、避けて通れない道である。
 つい10分前まで同じ席で食事をしていた友人が、あっけなく消えてしまう。
 それだけなら、戦場とは程遠い日常でもよくある事だ…残念な事に。
 だが、戦場では日常と違って悲しんでいる暇は無い。
 簡単な葬式をする暇すらない。
 そういうのは、全てが終わった後だ。
 ルーキー達も頭では理解しているだろう。
 だが理性と感情は別モノだ。


「ベテラン兵士も何人かリタイヤしたしな…。
 ルーキー達の統率力に問題が出るか」


 世話になったベテラン兵士が、ルーキー達を庇って死んだ。
 庇われたルーキーを責めるルーキーも居るだろう。
 恩師が死んだという動揺と、改めて感じた死の恐怖。
 これらが捌け口を求めて暴走し、暴発する危険がある。


「さて、ルーキー達が一丁前の傭兵になれるかの登竜門と言ったところだが…暢気に見守ってやれる状況でもないな。
 例の作戦、明日から決行だ。
 準備にかかれ!」


「「はっ!!」」


 ドムに敬礼し、バルサロームとシア・ハスは出て行った。
 残されたドムは、戸棚にあった資料を一冊抜き取る。
 それはシア・ハスの部隊に関して、出来る限り合戦の記録を集めさせたものだった。


「…やはり、特におかしな動きをした訳でも特別な物資を補充しているのでもない。
 何故シア・ハスの部隊は、あれほど執拗に狙われたのだ?
 此度の戦は、どうも散発的に仕掛けてきた戦とは違った。
 明らかに目的がある……シア・ハスの隊に?
 魔物を引きつける何かがあるのか…」


 或いは誰かが指示した?
 いずれにせよ、あれ程の損害を出しながら、なおもシア・ハスの隊のみを狙う理由にはならない。
 一応、シア・ハスにも隊内で心当たりがある者は居ないか、密かに調査を進めるように言ってある。
 大々的に調査しないのは、先も述べた恐怖の捌け口を作らないためである。

 しかし、あまり成果は期待できないであろう。
 時間が足りない。
 とにもかくにも、作戦を成功させる事が第一だ。
 しかし、ドムの表情は晴れない。


「…如何に勝利のためとは言え…俺は気が進まぬ…。
 陛下の心情を、お察しするにあまりある…。
 ……タイラー、お前は俺には出来ぬ事をした。
 それは感謝すべきなのだろう……だが……俺は…」


 脳裏に浮かぶのは、アザリンの顔。
 心の底に憂いを押し込め、領主として民を護ると決めた顔。
 己の無力さを嘆きながらも、決して歩みも手も止めない、偉大なる主。

 ドムは心の底から、アザリンの笑顔を曇らせる“破滅”とタイラーの策、そして自らの限界を憎んだ。


「こっちおかわりー!」

「はい、今行きまーす」

「注文決まりました」

「暫くお待ちくださーい」

「ユカさんこっち向いてー!」

「はい、お二人様ですか?」


 大河とセルは、食堂の窓際の席でユカを眺めている。
 テーブルの上には、半分くらい食べてしまった丼。
 最初はユカを待ってから食べようと思っていたのだが、もう彼女は当分戻って来そうにない。
 結局ゆっくり食べていた。

 食堂は異様な盛り上がりを見せている。
 普段から食堂というのは、食事時には賑わうものだが、今回はそれ以上である。
 理由は簡単、武神ユカ・タケウチがウェイトレスとして働いているからである。
 例によってウェイトレス姿で待機中だったのだが、そのまま食堂に行ったのがマズかった。
 ここ最近妙にフラストレーションが溜まっていたのか、食堂に入るや否や速攻でウェイトレスに早変わりしてしまったのである。
 仕事本能がムクムクと沸いて出たらしい。

 食事はどーするのか、と聞こうとした大河とセルだが、ユカはもう完全になりきってしまっている。
 何を言っても、業務的なやり取りしか返してくれそうにない。
 仕方なく注文して(と言っても、ウェイトレス状態のユカに一部暴走しそうだったが)、窓際の席を確保してモソモソ食事をしているのである。

 唐突に現れたウェイトレス(しかも可愛くてD)に、他の連中も熱狂している。
 細かい事は気にされてない。
 女性兵士は多少気にしたようだが、特に意味がある事でもない。
 結局ユカは誰に注意を受ける事もなく、込み合った食堂内をあっちへこっちへ行き来していた。
 なんと言うか、目の輝きが違う。
 実に活き活きとしていて楽しそうだ。


「…ユカの天職がウェイトレスってのも、コレ見ると実感できるよな…」


「そーだな。
 む…結構美味い…」


「……どうしたんだセル?
 以前のお前ならユカの姿にヒートアップして、ロリに目覚めたお前でもユカの写真を撮って売りさばくくらいはやるだろうに」


「……流石にそんな気分じゃなくってな…」


 胡乱気な大河の視線を受けて、セルは多少居心地が悪そうにしている。
 どうにもテンションが下がっているようだ。
 今朝はこんな兆候は見られなかったのだが。

 セルは丼を箸で突付きながら周囲を見回し、溜息をついた。


「…本当にどうしたんだよ?
 恋煩いか?
 アルディアちゃんに会いたくなったのか?」


「…そうだな、今は非常に会いたい…」


 大河の軽口に、遠くを見詰めて答えるセル。
 大河の片方の眉が上がった。
 どうもちょっとばかり深刻な問題らしい。


「……俺達はスリーマンセルで行動してたし、お前も今日は単独行動だったみたいだから解からないだろうけど…。
 …………同期の桜がな、散っちまったんだよ…」


「…それって…」


「まぁ、よくよく考えてみれば、今まで散らなかったのが不思議なくらいだ。
 俺達みたいなルーキーが最前線に放り込まれて、誰一人死ななかった…大河のお蔭でもあるんだろうな。
 でもよ、今回でついに…死人が出ちまった。
 多分、お前も顔くらいは知ってるヤツだ」


「……」


「改めて実感したよ、俺達は死の淵に立ってるってな。
 俺はユカさんと大河の戦力に護られてたようなモンだし、死の危険はそれほど強く感じなかった。
 でも、今回はユカさんとも別れて、シア・ハスの姐御の部隊に組み込まれた。
 一時的なモンだけどな…」


 セルは箸と丼を置き、コップの水を一気に飲み干した。
 やるせない表情が浮かんでいる。


「近くに圧倒的に強い味方が居るってのが、どれだけ有り難い事なのか身に染みたぜ。
 あそこでは、強い味方は居るけど普通のベテラン兵士だ。
 大河やユカさんみたいに、人間離れした力で一気に殲滅するんじゃない。
 敵を一体一体確実に仕留める、戦慣れした普通の人間だ。
 当然俺の役割もキツくなって、本当に必死にならなきゃ生き残れない。
 シビアで、容赦が無くて、無慈悲な戦場…。
 恐ろしい所に来ちまった、って心底思ったぜ。

 周りを見てみな、多分俺と同じような表情しているから。
 死人が出た事で、恐ろしさを改めて実感したんだ」


 セルに言われて周囲を見てみると、確かに無理にテンションを上げている節が見られる。
 中には本当にユカの姿にハイテンションになっているのも居るが。
 死の恐怖を強引に誤魔化しているのだろう。
 これを超えなければ、傭兵として独り立ちするのは不可能だ。


「……あんまり長く続いて欲しい精神状態じゃねーな」


「そりゃそうだろ…。
 ユカさんがウェイトレスに熱中してるのも、側で仲間が殺されるのを見た光景を忘れたいのかもしれないな」


「…いや、最初はそうだったかもしれんが、あれはもう素だ」


 だって笑顔が輝いているから。
 その笑顔に癒されている兵士及び傭兵が多数。
 こんなところでも戦力として貢献しているユカだった。


「……今後の事、大河は何か聞いてないのか?」


「…一応聞いてる。
 近い内に、でかい動きがある筈だ。
 詳しい事までは言えんが」


「…さすが救世主クラス様、ってとこか…。
 俺達みたいな末端には、そんな情報入ってこないからなぁ…」


 多少の僻みが入ったセルの愚痴に苦笑して、大河は丼の中身を一気に掻き込んだ。
 米粒一つ残さず食いつくし、遠くで動き出しているであろう未亜達に思いを馳せる。


「時間と距離を考えれば、そろそろの筈だが…どうしてるかね?」


12日目  未亜のハーレムチーム 朝


「おっとっと……おぅとっとっと…」


 揺れる床。
 未亜は規則正しく揺れる床に合わせて、右に左に重心を揺らす。
 それを冷淡な目で見詰めるリコは、空中にふよふよ浮いているというのに同じように揺れていた。

 少し向こうでは、リリィが蹲っているのが見える。
 そこは揺れる床ではなくて、普通の地面だ。
 どうやら気分が悪くなったらしい。
 その背中をダリアが撫でている。


 未亜達が居るのは、秘密工場が在る山脈の麓。
 内陸側ではなく、海に面した外陸側である。

 謝華グループの援助により工場はフル稼働し、目的の物も完全に作り上げる事が出来た。
 後は運び出すだけなのだが、ここで問題が一つ。
 造ったモノがでか過ぎて、出せるルートが限られているのである。
 そのルートの安全を確保するため、朝も早くから山を下ってきたのである。

 魔物が居ないか一通り確かめ、麓に桟橋を繋げておく。
 未亜が立っているのは、この桟橋の上である。
 波が妙に安定したリズムで押し寄せ、引く。
 上手くそのリズムに乗った未亜は、何が面白いのか体を揺らして遊んでいた。


「…マスター、いつまでもそうしていると、揺れない陸に立った時でも揺れる感覚が抜けませんよ」


「いやいや、それが面白いんだって…おぅ、ビッグウェーブ!」


 一際高い波をやりすごす未亜。
 気分はサーファーだ。

 リコは未亜を見物するのを止め、まだ蹲っているリリィの様子を見に行った。
 大分マシになったようだが、まだちょっと顔が青い。
 それを見ながら、ダリアが笑いを堪えているようだ。


「リリィちゃんって、意外と平衡感覚が弱かったのね〜♪
 馬車に乗ってる時は平気そうなのに」


「ば、馬車…うぷ…」


「…ダリア先生、馬の車は現在禁句のようです。
 恐らく、何時ぞやの暴走特急のお蔭で植えつけられたトラウマが強くフラッシュバックしているのでしょう。
 あの揺れ方は、どこか暴走特急の揺れ方に似ていましたし」


「そうなの?
 ま、あの御者ならね…」


 ダリアもちょっと顔が青い。
 どうやら乗った事があるようだ。


「それはともかく…これなら何の問題も無さそうですね。
 狼煙を上げますか?」


「そうねぇん、出来ればもうちょっと待った方がイイわ。
 進路に障害物は無くっても、霧が深いもの」


「ではそのように。
 …あら、リリィさん。
 もう大丈夫なんですか?」


「わ、私は最初から平気……ごめん、ちょっとウソついた。
 まだちょっとキモチワルイ」


 リリィが顔を青ざめさせて立ち上がった。
 未亜も波乗りから戻ってきて、リリィの顔を覗きこむ。


「…リリィさん、振動に弱いですねー。
 大丈夫なんですか?」


「まぁ、何とか…。
 それより…この後、ホワイトカーパスに向かうんですね?」


 未亜とリコの目も鋭くなる。
 ようやく出番か、と言わんばかりだ。

 無理もないと言えば無理もない。
 ここ数日間、ただひたすら厨房で料理料理料理料理。
 フラストレーションが溜まっているのである。
 未亜だけはフラストレーションを一気に解消する出来事があったが。

 最前線へ赴く恐怖はあるが、それ以上に好戦的になっているのである。
 それに、ようやく大河に会えるという思いもある。
 ようやく会って、浮気の制裁を加えられるという決定事項もある。


「そうねぇん、ここから一路ホワイトカーパスへ…。
 その間の護衛と、その後の護衛がみんなのお仕事よ。
 多分ホワイトカーパスへ向かうまでは問題ないと思うけど…。
 準備はいいわね?」


「「「はい!」」」


 声を揃える3人。
 見れば、丁度霧も晴れてきた所だ。

 ダリアは懐から発煙筒を取り出し、点火させる。
 暫く発煙筒を振り、そして未亜達を連れて移動する。
 この辺りに居たら巻き込まれるかもしれないからだ。
 かなり離れた位置まで移動し、さらに岩陰に隠れる。
 だが未亜達は顔だけ出していた。


「ダリア先生、いよいよですね…」


「後は神のみぞ知る、か…」


 リリィと未亜の呟きを掻き消すかのように、上方から振動が迫ってくる。
 舌を噛まないように、それぞれ顎に力を篭めた。
 そしてガシッと岩にしがみ付く。


どどどどどどどどどどどどどどどど


 更に迫る轟音。
 リリィは本当にここに居れば安全なのか、不安が沸いてきた。
 かなり離れた位置に居るが、それでもこの爆音だ。
 もし巻き込まれたら一溜まりもない。

 しかし、この状況で不安の声を上げたら即座にベロガッチンは確実だ。
 不安を押し殺して耐えるしかなかった。

 と、ダリアの指が一点を指し示した。
 釣られて視線が集中する。


どどどどどどどどごごごごごごごごごご!!

 益々激しくなる爆音。
 それと供に、山の上から何かが下ってくるのが目に入った。

 次の瞬間、下ってくる何かは海に激突、飛沫を盛大に跳ね飛ばした。
 離れた場所の未亜達でさえ、服がビショビショになりそうだ。

 一方、落下してきたモノは勢いをなおも増しながら海に流れ込んでいる。
 あちらこちらで飛沫が舞い、もう山の麓はびしょ濡れである。


(………水…)


 それが降って来たモノの正体である。
 山の上…というか、恐らく造ったモノを出そうとしている辺りから大量に水が流されている。
 どうやってこれだけの水量を確保したのか知らないが、物凄い勢いと破壊力だ。
 これだけの勢いなら、進行途中に魔物が居ようが岩があろうが、一気に跳ね飛ばしてしまうだろう。
 それが狙いなのかもしれないが。

 ダリアが再び上方を仰ぐ。
 流れ落ちる水の大軍の中に、黒い影が見えた。
 水の勢いと自由落下に加速されたソレは、あっという間に海面へ迫る。


ドッバアアァァァァァァン!!!


 一際大きな水音が響いた。
 リコは海面との衝突で、作り上げたモノが粉砕されていないか心配になる。

 だがその心配は無用だったようだ。
 どういう理屈か知らないが、衝撃を受け流したらしきモノは、慣性のままに流れて進む。
 と思ったら、同じモノがもう一つ降って来た。
 またまた響く特大の水音。

 もう未亜達の耳はバカになってしまっている。
 耳を塞ぎ、しゃがみこんで安定を図る未亜達。
 しかしその努力をあざ笑うかのように、一つ、また一つと落下してくる巨大な物体。
 未亜達に取れる手段は、ただ耐えるだけである。

 やがて、一際大きな爆音と供に、やはり一際大きな振動。
 リリィは耐え切れずにバランスを崩し、後頭部を岩に打ち付けてしまった。
 声も出せずに蹲る。
 出した所で、本人を含めて耳には聞こえなかっただろうが。

 段々と水音が小さくなっていき、振動も治まって来た。
 リコは恐る恐る立ち上がり、岩から顔を出した。
 舞い上がった水しぶきは、塩辛い雨として豪雨の如く降り注いでいる。

 その豪雨の向こうに、大きな影が幾つか見えた。


「…どうやら、上手く運び出せたようですね」

「…え? リコちゃん何か言った?」

「とは言え、よく壊れませんでしたね…。
 これからホワイトカーパスに向かう事になるのですが…」

「リコちゃーん?」


 聞こえてない。
 リコは声を掛けられいるのに気付いても居ない。
 耳が完全に機能していないっぽい。
 鼓膜が破れていないといいが…。


「さぁ、作業員の皆様に頼まれた事をさっさと済ませてしまいましょう」

「だから、リコちゃん何を言ってるの?」

「イタタ……?
 どしたの?
 さっきから口だけパクパク動かして」

「あうぅ、耳が痛いの…」


 誰の言葉も、誰にも届いていなかった。


12日目 カエデ・ベリオチーム  昼


「……ヒマでござるな」


「そうですか?
 私はそうでもありませんけど…」


「ベリオ殿がではなく、ブラックパピヨン殿が…では?」


「いえ、私も結構気になりますので」


 港町で、2人はヒマを持て余していた。
 本来なら村々を救いながらホワイトカーパス州に向かう筈だったが、何故か命令の変更が来た。
 直接ホワイトカーパスに向かわず、近くにある港町で暫く待機せよ、との事だった。
 適当に宿の一室を借りて、やる事もなく寝転んでいる。

 あまり長い日数ではないとは言え、ベリオもカエデも気が気でない。
 大河は無事か?
 浮気していないか?
 ホワイトカーパスはまだ持ち堪えられるのか?

 そもそも、どうして今更待機せねばならないのか…未だにカエデは納得していない。
 命令書には命令しか書かれていなかったし、追加の連絡も来ない。
 確かにクレアの署名があったから従ったが、今すぐにでもホワイトカーパスに向かって大河の加勢をしたがっているのである。
 しかしそこは一応上官の命令、限度を超した体育会系的体質のカエデは逆らう気になれない。
 聞いた話では、ホワイトカーパスでは大河と、話に聞いたユカ・タケウチが暴れまわっているらしい。
 元気そうではあるが、浮気の心配がより一層現実的になった。


 一方、ベリオとブラックパピヨンはと言うと、ルビナスから与えられた(そして埋め込まれた)サイコパペットを使いこなすのにご執心である。
 結構様になってきたし、ベリオ本体と離れても、長時間の間、形が保てるようになってきた。
 これなら戦力として、かなりの効果が期待できる。

 それはそれとして、ベリオの目の前に作り出されるブラックパピヨンのボディを怪しげに見るカエデ。


「…ベリオ殿、ブラックパピヨン殿……さっきから気になっていたのでござるが…何やら、普段よりも…その、体の生成の精度が落ちていると言うか…なンか形が変わってないでござるか?」


「ええ、ちょっとデフォルメしてみました」

「やったのはベリオじゃなくてアタシだけどね」


 3頭身くらいになったブラックパピヨンが、事も無げに口を開く。
 そのままクイクイパタパタと体を動かし、何故かラヂオ体操などしてみせる。
 見ていて怪しい事は怪しいが…激烈に愛らしいと言えなくもない。

 そのままへにゃっとタレるブラックパピヨン。
 顔の輪郭まで崩れた。


「…これは意図してやっているのでござるか?」


「当然です。
 顔の輪郭が変わっているのも、錯覚じゃなくて物理的に変化しています。
 最終的には、ドラゴンのようなボディを作るのが目標なのです」


「……ケモノミミとケモノシッポをつける事が目的かと思ったでござる」


「魅力的ですが、リリィと被ってしまいますし…ここは別のアピールをしようかな、と。
 見ていてください、大河君を骨抜きにしてあげますから…ふふふふふ」


 微妙にピンクのオーラが見えるベリオの笑み。
 ブラックパピヨンも同じように笑っていた。
 言ってはナンだが、大河が妄想時に浮かべるのと同じ類の笑みだ。
 何やら自信があるらしい。
 まぁ、大河の事だから骨抜きにはなっても、他の恋人達を疎かにする事はあるまい。

 しかし、一体何をする気だろうか?
 体の形を変える……まさかGIGA1/6メガネキョヌーの法則を崩す気だろうか?
 大河はツルペタも好きそうだが、ベリオと言うかブラックパピヨンがそれをやるのも如何なものか…?

 カエデが疑問符を浮かべていると、ブラックパピヨンがニヤリと笑った。
 デフォルメ状態なので、あまり怖くない。


「カエデ…アンタの事だから、この胸を消しちまうんじゃないか、なんて考えてるんだろうけど…甘いよ」


「? では、一体何を」


「この姿を見て解からないかい?
 ロリ娘化も可能なんだよ!
 しかも、基本的に形が自由自在なだけあって、胸の大きさだけ保持する事も可能!
 巨乳のロリっ娘は、まだ大河の周りには居ないのよ!」


「おおぅ、言われて見ればそうでござった!
 その手があったでござるか!
 ちっちゃいのにおっきいというアンバランスさで、師匠を虜にする気でござるな!?」


「その通り!
 なんならリコと同じくらいの年齢で、涙目上目遣いのままパイズリとかも可能!
 マスコットサイズになって、文字通り全身で大河のアレを弄るのも可能!
 更に、性器だって決まった形を持たないから、締め付けの強さや柔軟性も調整可!
 ケダモノの如くガンガン突き上げられても、切れちゃったりする事はありません!」


「いや、しかし体がロリでも中身がブラックパピヨン殿では真のロリとは言いかねる…。
 …それに、切れはせずとも、精神が壊れる気が…」


「そこまで疲れてたら、体が勝手に散るだけだけどね」


「と言うか、リコ殿が複数の意味で切れる気が」


「そこまで知らないよ…」


 ブラックパピヨンはキレたリコの恐ろしさを知らない。
 知識の有無が生死を分けるいい例である。

 実際の所、ご奉仕はともかく本番は当分不可能だ。
 責められて、意識が朦朧となった状態ではボディを維持できない。
 もし中途半端な所でボディが消えれば、ブラックパピヨンも不機嫌になるだろうが、大河が洒落にならない変貌を遂げかねない。
 手負いの獣は手強いように、オアズケをくったケダモノも恐ろしい。

 なので、特に意識せずとも体を維持できるようになるまで、本番はベリオの体でやる事になるだろう。
 まぁ、大分要領が掴めて来たし、専用の体で体験できるのもそう遠くはあるまい。


 などとヒマを潰していたものの、実際手持ち無沙汰なのは3人とも変わらない。
 ブラックパピヨンの集中力が切れると、やっぱりやる事が無くなった。


「はぁ…クレアさんは何を考えているんでしょうね…」


「さて…そもそも、誰が全軍を指揮しているのでござろうな?
 クレア殿やアザリン殿は、軍略は専門ではござらぬし…。
 ここに留まるのも計略の内だというのは予測できるのでござるが……うん?」


 ふとカエデは窓の外を見た。
 何やら騒がしい。
 身を乗り出して周囲を見回すと、何だか妙に人の流れが激しい。
 どういう訳か、明らかに訓練を受けた兵士達も居るようだ。


「? 何があるんでしょう…」


「この時期に兵士が借り出される仕事と言えば、“破滅”関係に決まっているでござるが…。
 一般市民も、妙に慌しいでござるな。
 夜逃げでもするのでござろうか?」


「夜逃げ……夜逃げ?
 あ!
 まさか、ゼロの遺跡の街と同じように…!」


「!? 何処かに連れ去られるのでござるか!?」


 もしそうだとしたら、これは一大事だ。
 市民の安全を確保せねばなるまい。
 しかしその一方で、住民失踪の影に蠢いているであろう“破滅”の尻尾を握れるかもしれない。

 目の前の市民達を助けたいのは山々だが、彼らを見殺しにしてでも“破滅”の尻尾を捕らえなければ、また他の地で大量に一般市民が失踪するかもしれない。
 無論、助けたからと言って尻尾をつかめないとは限らない。
 助けなかったからと言って、100%の確立で“破滅”を捕らえられるとも限らない。

 市民の命を棄てて確実性を取るか、目の前の命を救って博打を打つか。
 勢いのままに後者を選択しそうになるが、ブラックパピヨンの冷静な視点はそれを許さない。
 走り出そうとした2人に、ちょっと待ったコールを掛ける。


「目の前の命を助けたいのはわかるけどね、ここで助ける事でもっと沢山の命が消えるかもしれないんだよ?
 命を数で見る視点だって、時には必要さ。
 感情論は相手と状況を見て使わなきゃいけない」


 うぐっ、とベリオとカエデは黙り込む。
 そしてブラックパピヨンは再び体を作り出し、2人の目を見据えて言う。


「ベリオ、前に大河に言われた事…覚えてるかい?
 ほら、大河と会ったばかりの頃に言われたろう?
 友人一人の命と、見ず知らずの人間100人の命。
 どっちを助けるべきなのか。
 答えを出さなきゃいけない…」


「それ…は…」


「私だって、結論は出てないさ。
 でも、私達の結論が出ていなくても、時は待ってくれない。
 最低でも、今の決断を下さなきゃならないんだ。
 何もしないで居る事だけはできない。
 だろ?」


 そう。
 今この時だけでも、決断しなければならない。
 あまりにも重い選択。

 だが、ベリオは一瞬の逡巡の後、意を決して顔を上げた。


「目の前の命を見捨てる事はできません!
 不確実だからと言って最初から見捨てては、救世主の務めなど果たせません。
 今やるべき事は、住民達の安全の確保、それから“破滅”の尻尾を掴む事です」


「……いいのかい?
 勝率もわからない博打を打つ気か?」


「確かに、人を数字で見る事も必要でしょう。
 ならば私は、切り捨てられる少数をこそ救いたい。
 ええ、私とて切り捨てられる命の上に立っている事は承知しています。
 今まで奪ってきた魔物達も、切り捨てた少数だと言う事も。
 そんな私ですが、せめて切り捨てられた同胞を救いたいのです。
 切り捨てられなかった誰かは、クレア様や大河君…この世界のみんなが守ってくれるでしょう。
 例え、後になって後悔するとしても…それを背負う覚悟は、とうに済ませました。
 それに…大河君に聞かせてもらった名言に、こういうのがあります。

 曰く、確立なんてものは単なる目安でしかない!
 後は勇気で補えばいいんだ!
…と」


「…勇気で補える事かはともかくとして…アンタがそう言うなら、アタシもそれに乗ろうかね。
 確かに見殺しってのは気分が悪い」


 盛り上がっている2人を他所に、カエデは耳を澄ませていた。
 閉じていた目を右だけ開けて、ポリポリと頭を掻く。


「あー…お2人とも、盛り上がりに水を差すようで申し訳ないのでござるが…」


「「?」」


「どうやら早とちりだったようでござるよ。
 民衆達は、王都へ向かうようでござる」


「王都へ?
 それじゃ、あの兵隊達は?」


「よく見てみたら、バーンフリート王家の紋章があるでござる。
 つまり…正規の兵士達でござろうな。
 ニセモノでもなさそうでござるし…」


「「……」」


 自分達の決意は何だったのか?
 盛り上がっていた反動で、何だかやる気がなくなってしまった二人だった。

 しかしそれはともかくとして、何故民衆が王都へ向かおうとしているのかは解からない。
 カエデは更に耳を澄ませた。
 ざわめく人の群の中から、何か手掛かりとなる情報が得られないか探っているのである。
 ベリオも同じように耳を澄ませてみるが、彼女には雑音しか聞こえない。
 ブラックパピヨンはと言うと、もう体も具現化させてない。


「……?
 今、なんか救世主候補を探せとか言う声が聞こえたような…」


「そんな細かい声まで聞き分けられるのかという疑問は置いておいて…。
 私達がこの街に居る事を知っているのは、クレアちゃんとかだけですよね?
 ここに来るまでに立ち寄った村にも、行き先はホワイトカーパスだと告げていますし…」


「じゃ、王宮からの指令でござろうか…」


 この港町で救世主候補という戦力を遊ばせておく理由もないし、兵士達と合同で何かをするのが自然な展開か。
 それはともかく、今からあの兵士達の前に出て行くべきか?
 ニセモノという事は無いだろうし、まさか誰かの陰謀のために反逆罪なんぞで逮捕される事もあるまい。
 救世主クラスは王族直属で、今はクレアにしか命令権がない。
 例え反逆と世間が見なしたとしても、クレアが「反逆などしてない」と言えばそれまでである。
 物理的に拘束しようとしても、救世主クラスを一人捕らえるのに、どれだけの代償が必要になるか。

 それはともかく、ベリオはベッドから飛び起きた。


「行ってみましょう。
 どうせヒマなのですし、私達に用事があるならそれもよし。
 無くてもこの大騒ぎの状況を把握する事はできるでしょう」


「…そうでござるな。
 では、外に出てその辺の兵士に聞いてみるでござるよ…?
 む、誰か来るでござる」


 カエデが目を鋭くして、扉の外に目を向けた。
 宿屋なのだから、何の関係も無い人が来てもおかしくないのだが、それが全身を鎧で包んだ訓練された軍人となれば話は別だ。
 カエデ達を探して来たのかもしれない。
 もともとこの街で滞在する場所は、数箇所の宿屋しかないのだ。
 居場所がばれる事は、それほど不思議な事でもない。

 やや警戒心を強め、カエデとベリオは自然体ながらもすぐに動ける体勢をとる。
 襲ってくる事はないだろうが、念の為である。


 ドアがやや強めにノックされた。
 野太い声が聞こえてくる。


「失礼いたします!
 こちらは救世主候補生の、ベリオ・トロープ殿とカエデ・ヒイラギ殿でしょうか?
 自分は王宮の伝令を伝えに来た、ヤマモトと申します!」


「…どうぞ、入ってください」


「はっ、失礼します!」


 ガチャリとドアを開けて入って来たのは、やたらとゴッツイ鎧に身を包んだ若い男。
 一目見てカタブツだと解かる雰囲気と言葉遣いである。

 ベリオとカエデの姿を確認し、ピシリと敬礼。


「遊撃部隊“そよかぜ”副隊長、マコト・ヤマモトです!
 さっそくですが、王宮からの伝令を伝えさせていただきます!」


「ご苦労様です。
 救世主クラス、ベリオ・トロープです」


「同じく、柊カエデでござる。
 では、伝令をお願いするでござる」


「ハッ!
 救世主候補生ベリオ・トロープ並びにカエデ・ヒイラギは、派遣された兵力と合流し、そのまま待機。
 進軍の命令があると供に、ホワイトカーパスへ向かい、その途中で遭遇する敵戦力を撃破せよ。
 以上、一言一句間違いなくお伝えしました!」


 どうやら、街に居る兵士達は王宮から派遣されたらしい。
 しかし、それでも民衆達の夜逃げの準備の疑問は残る。


「あの、よろしいでしょうか?
 任務は了解しましたが、人々が逃げる準備をしているのは何故なのです?」


「はい、恐らくこの付近は、かなり激しい戦場になると予想されています。
 この街が無事で居られる確立は、とてつもなく低いと言っても過言ではないでしょう。
 ですから王宮は街の人々を避難させるべく、物資が充分に蓄えられている王宮近辺への移住を命令されました。
 人々が王宮まで避難する際の護衛及び誘導は、我々軍人が引き受けます」


「そうですか…夜逃げではなく、公認の避難でしたか。
 了解しました。
 ありがとうございます。
 それで、私達は何処で待機すれば?」


「この部屋に居られて結構です。
 伝令があった時及び必要な時には、こちらから連絡いたします。
 ですが、どちらかお一人は連絡役に残っていてください。
 それでは、私は任務がありますので」


「お手数おかけしたでござる」


「失礼します!」


 お手本のような敬礼をして、ヤマモトは部屋から出て行った。
 と、再びドアを開けて顔だけ出して告げる。


「それと、申し訳ありませんが、お2人は極力兵士に姿を見せないようにお願いします。
 何せ閣下の部下は腕がよくても態度に問題がありまくるため、救世主候補生にサインでも貰おうと持ち場を離れかねません。
 本来ならこちらで抑えるべきなのですが、何分やる事が多すぎまして…それでは」


 再び敬礼し、ヤマモトは出て行った。
 どうも彼は苦労人らしく、部下について語る時に眉間に皺がよっていた。
 しかし、その実力を信頼しているのは口調からも明らかである。
 …意外とロベリア辺りと気が合うかもしれない、苦労人同士で。

 戻ってこないのを確認し、ブラックパピヨンは再び体を作り出した。


「…カエデ、どう思う?」


「どう思う…と言われても…。
 まぁ、拙者は軍略は専門ではござらぬが、上からの命令はキッチリ通っているようでござるな。
 無駄に規律を重視する傾向はあっても、上官の意を汲み、それに沿っているようでござる。
 つまるところ、しっかりと統率がとれているのでござるな。
 ここに拙者達が派遣されたのも、つまらぬ命令のミスでは無さそうでござる」


「結局、伝令が来るまでやる事は無いんですね…」


 ヤマモトは、この街付近が激しい戦場になると言っていた。
 となると、まず何よりも優先すべきは地の利や人の和などの優位の確保。
 市民を避難させるのも、安全確保云々よりも足手纏いを減らす意味合いが強いのだろう。
 命じた者にとってはそうでもないかもしれないが、軍隊全体を見れば戦略的優位を確保するのが優先される。

 恐らくこの街の市民の避難を急がせても、どれだけ早く見積もっても明日か明後日まで長引くだろう。
 それくらいは計算しているであろうから、進軍の命令は早くて明後日。
 極力姿を見せないように、とまで言われてしまっては外に出る訳にもいかない。
 忍者のカエデなら何とかなるが、そこまでして外に出たいとは思わない。


「ま、今の内に眠るだけ眠っておくんだね。
 連日の移動やら戦いやらで疲れが溜まっているだろうし、進軍が始まったら休むどころじゃないよ。
 何せアヴァター全土の希望の星、救世主候補サマだ。
 士気高揚の為に、徹底的にコキ使われるのが目に見えてる」


「イヤな事言いますねぇ…。
 確かにその通りでしょうけど。
 でも、私はもう少し起きていますよ。
 貴女の練習にも付き合わないと」


「それでは、拙者は一眠りさせてもらうでござる。
 代わりと言っては何でござるが、ベリオ殿とブラックパピヨン殿が眠っている時には代わりに起きているゆえ」


 そう言うと、カエデはさっさと布団に潜り込んでしまった。
 数秒して、もう寝息が聞こえ始める。
 のび太のようだと感心するが、カエデにしてみれば休める時に休むのは常識である。
 すぐに睡眠を取れるよう、更に眠りの深さをコントロールも出来るように訓練を受けていた。
 それを知らないベリオとブラックパピヨンには、単にカエデは寝るのが好きなようにしか見えない。
 まぁ、実際に好きなのだが。


「…ブラックパピヨン」


「ん?」


「どうでもいいですけど、ここの宿代は私達の自腹でしょうか?
 王宮からの命令で来ているのだし、必要経費って事で…」


「…………いいからさっさと練習するよ」


12日目  クレア・イムニティ・ミュリエル 昼


 クレアがフローリア学園の学園長室でミュリエルと話しこんでいると、気になる書類が目に入った。
 つい先日、急に経営路線を変えた謝華グループの書類である。
 クレアは影響力の大きな会社やらグループやらの代表者などは、一通り覚えこんでいる。
 謝華グループの会長も例外ではない。
 今はレイミ・謝華が会長だが、前会長ミランダ・謝華の事も知っている。
 どうも彼女には黒い噂が絶えず、注視していたのだが…。


「おいミュリエル、この書類だが…」


「は? …ミランダ・謝華ですか?」


「ああ。
 昔から怪しいヤツだったが、結局尻尾は掴めなかったな」


「私のシッポでよければ掴みますか?」


「いや後にしてくれ。
 それよりも、だ…」


 ミュリエルのスカートの下から出てユラユラ揺れるシッポは置いておいて、クレアは更に幾つかの書類を付き合わせる。
 それを受け取ったミュリエルは、少し眉を潜めた後クレアが何を言いたいのか理解した。


「妙ですね…。
 これほどの人材が、一挙に集まるとは…」


「しかも、聞いた事もない連中ばかりだ。
 更に怪しい事に、どれだけ調査しても、この人材達の足取りは一向に掴めん。
 ミランダ・謝華が自らの懐に引き止めていると見るべきか」


「おそらく。
 流石にこれだけの人数を始末するとも思えません。
 口封じには効率が悪すぎます」


 2人が怪しんでいるのは、あるプロジェクトに参加していたメンバーの事である。
 そのプロジェクトの事を特に宣伝していたわけでもないのに、超一流と称すに値する人材が集まっている。
 それだけの能力を持っているなら名前くらいは知れ渡っているであろうに、名前はおろか存在すら聞いた事はない。
 1人や2人ならそういう事もあるだろうが、これだけの数でそれはないだろう。
 しかもその後の足取りが全く掴めない?
 そんなバカな。


「仮に口封じをしたのだとしても、全員が口を噤むとは考えにくい。
 人の口に戸は立てられん。
 ましてや全員揃って失踪なんぞ、何を況や…だ」


「そもそもこのメンバー、プロジェクトの前に何をして暮らしていたのか、何処で何をしていたのか、家族が居るのかすらもはっきりしません。
 一応記録はされているようですが、思いっきり偽装ですね、これは」


「しかも程度の低い、な。
 別に露見しても構わぬというのか…?」


 しかも一度だけではない。
 暫しの時を置き、2度、3度と同じ事が繰り返されている。
 プロジェクトのメンバーを募る度に、全く違ったメンバーが集まる。
 これまた例によって、1流以上の能力を持った、名前も聞いた事が無いメンバーが。


「どういう事だ…?
 今は娘のレイミ・謝華が叛旗を翻しているようだし、何とか援護してやりたいが」


「彼女の方には、あまり黒い噂はありませんし…一応援助してくれていますからね」


「そういう事だ…。
 イムニティを偵察に出しているが、そろそろ帰る頃かな」


「もう帰っているわよ。
 本当は昨日には帰れたんだけど、ちょっと休ませてもらったわ」


「ぬ?」


 ミュリエルの背後から、イムニティの声がした。
 反射的に顔を向けるクレア。
 しかしミュリエルは、自然体…に見える警戒態勢を保ったまま動かない。
 イムニティも、ミュリエルの背中を厳しい視線で睨みつけていた。


「お久しぶりね、イムニティ。
 勝手に人の部屋に入ってきて、人の後ろを取るのは良い趣味とは言えないわよ。
 しかも盗み聞きなんて」


「そうね。
 でも趣味のいい人生を送ろうとも思わないわ。
 デバガメと倒錯的交合が趣味だもの。
 盗み聞き盗聴盗撮、私がやるなら全部上等よ。
 そもそも声をかけなかったのは、難しい話に没頭していたから気を使ったんじゃない」


「…聞いてはいたけど、随分と性格が変わったものね…」


「アナタが言う?
 あの頃は本当に夢見る乙女って表現が似合ったのに…。
 時の流れって残酷ね…」


「人は誰しもオトナになっていくのですよ。
 精霊のアナタとオルタラ…リコがオトナになるかは知りませんが」


 ピリピリとした空気で牽制の言葉を交わす2人。
 クレアは止めようかと思ったが、暫く様子を見る事にした。
 強引に押さえ込むよりも、ある程度やり合わせてガス抜きした方がいいだろう。


「私は別に大人になんてならなくても困らないわ。
 アナタが更年期障害になっても、私は永遠に若いままよ」


「永遠に若いままと言う事は、とりもなおさず成長も変化もしないと言う事。
 いくら若い娘とはいえ、永遠に同じままなら大河君とて飽きますよ。
 時の流れるままに…です」


「ある程度なら体の変化を、自分の意思で行なえるから問題ないわ。
 本来の不老不死とは、文字通り老いもせず老死もせず、ではなくて自分の年齢を自分で決められる、という事なのよ。
 書の精霊の特権ね」


「リコは自分の胸を変化させられないようですが、アナタは出来るのですか?」


「やろうと思えばね。
 リコはそういう属性とか芸風だって世界そのものに認知させられているけど、私は違うわ」


 甘いぞイムニティ。
 君も属性付で認知されている。
 後日体を変化させようとして、不条理だと叫ぶイムニティだった。
 まぁ、彼女はリコほど胸の大きさに執着してなかったが。
 …ちなみに、リコはちっちゃいままでしか居られないが、イムニティはツルペタのままながら20前後の姿になれたらしい。
 激怒したリコに、山脈を三つ越えるほど追いかけられた。
 死ななかったとだけ言っておく。


 頃合と見たクレアが口を挟んだ。


「はいはい、そのぐらいにしておけ。
 それよりイムニティ、何か収穫はあったのか?」


「あった事はあったけど……まぁ見てよ」


 バサリと外套を翻すと、何処からともなく出てきたファイルが床にばら撒かれた。
 足元に転がったファイルを拾うミュリエル。
 ラベルを見ると、略字らしきプロジェクト名を銘打たれていた。


「これは…?」


「さぁ?
 重要そうなヤツを適当に見繕って持ってきただけだもの。
 ああ、当てずっぽうじゃないから安心して。
 一応中身には目を通して、理解できない内容のヤツだけ持ってきたから」


「理解できた内容は?」


「暗記してるわ。
 休むためでもあるけど、その為に昨日は帰らなかったのよ。
 出納帳とか、必要とあれば言えるけど」


「そうだな、そっちは後でいい。
 収穫はこのファイルだけか?」


「いえ、ファイルはついで…みたいな物。
 結構なネタを掴んできたわよ」


 微妙に俗っぽいイムニティである。
 聞く人が居ないのはわかりきっているのに、態々声を潜めて3人を集める。
 顔に妙な画像効果がかかっているよーな気がするが、気にしたら負けだ。


「実はね…謝華グループの前会長と現会長の言い争いを盗み聞きしてきたのよ」


「レイミ・謝華とミランダ・謝華の?
 確かですか?」


「直接確かめたわけじゃないけど、会話の内容からして間違いないわ。
 どうやらレイミ・謝華は、ミランダ・謝華に反旗を翻しているらしいんだけど…。
 その対抗手段に、なんか『設備を奪われたのを知らないとでも思っているのか』って言ってたのよ」


「設備?」


「ええ。
 他にもハイブリッドがどうのクローンがどうのと言っていたわ」


 ミュリエルとクレアは眉を潜めた。
 クローン培養の技術は、アヴァターでもまだ確立されていないし、一般人はクローンの存在自体知らない事も多い。
 人間のクローンではないが、牛や馬のクローンならある程度はつくりだす事ができる。
 しかし、それを生物と呼べるかどうかは意見が分かれるだろう。
 つくりだされたクローンは、オリジナルと比べてあまりに…未熟、と言えばいいのだろうか?
 体も未成熟で、寿命も極端に短い。
 何より、意思というモノが宿らなかった。
 脳の働きを再現する事が出来なかったのである。
 ただ新陳代謝するだけの、有機物。
 それがアヴァターでのクローン技術の限界点であった。
 しかし、命の倫理を踏み破る行為である事は間違いない。


「話をダイレクトに繋げると…クローンを培養なり研究なりする施設を奪われた…という事か?
 しかし、誰がそんなモノを奪う?
 動く事もできない有機物を生み出すだけだろう。
 それとも、謝華グループはより進んだ技術を持っているというのか?」


「いえ…それは無いでしょう。
 技術が5世代分は違います。
 例え人体実験などを行なったとしても、そこまで飛躍した進歩を遂げる事は不可能です。
 まして安定した製法を確保するなど、夢のまた夢…」


 考え込むミュリエルとクレア。
 イムニティはやや広いデコ(「ほっとけ!」グシャ)を突付きながら、謝華グループ本社で聞いた会話を一から思い返した。
 しばし熟考。


「…いえ…案外、それが当たってるかも…」


「「何?」」


「技術の進歩云々はともかくとして…奪われた設備とやらが使用されているらしい、って言ってたわ。
 それに欠点はそのままで、それを裏付ける証拠として挙げられていたのは……そう、確か『あちこちで見かけられる同一人物』『一定期間を境に、急に途絶える目撃証言』。
 心当たりがあるでしょう?」


 クレアはすぐに、ミュリエルは3秒後に思い当たる。
 しかもクレアの心当たりは複数だ。

 あちこちで目撃される、エレカ・セイヴンないしアルディアに酷似した少女。
 加えて言うならば、先程クレアが発見した謝華グループのプロジェクトに参加していた人物達。
 いずれもある一時を境に、まるでこの世に存在すらしないかのように姿を消す。


「それは…まさか、アルディア及びエレカ・セイヴンがクローン人間…だと?」


「可能性の話よ。
 結局、それだけの技術力なんて誰も持っていないんだから。
 多分、ルビナスでも現状では無理なんじゃないかしら?
 ホムンクルスの体は、あくまで容器として作った…。
 言ってみれば、操縦者が中に入っている人間サイズのロボットみたいなものよ。
 自律機能を持った、文字通りの一個の生物をつくりだすのはね…。
 魂そのものから創造するのよ?
 難易度がケタ違い…格が違うわよ」


「そうか…クレイジーマッドでも無理か…。
 そうなると、普通の手段ではどうやっても無理だな」


「歯に絹着せませんね殿下…」


 自らが発した形容詞に何ら疑問を持たないクレアに、投げ遣りなツッコミが入る。
 イマイチ根性が入ってないツッコミなのは、ミュリエルもそう思っているからなのだろう。


「今までの仮定が全て正しいとして話を纏めると…。
 ミランダ・謝華はクローンの研究をしていたが、何者かに設備を奪われた。
 それを探索しているが、成果は上がっていない。
 奪った何者かは設備を使用して、アルディアやらエレカやらをつくりだし、我々…人類側の行動を妨害している。
 しかし、クローンの寿命は短い。
 アルディアもエレカも、その寿命を終えて死亡、そして身の回りの世話をしていたメイドやら執事達も…始末されたか、或いはアルディアが存在したという痕跡を全て消して失踪……と、言ったところか?」


「……疑問が多少…」


「何だミュリエル?」


「それだけの技術をどうやって確保したのかも謎ですが、そもそもどうやって設備を奪ったのでしょう?
 クローンをつくりだすには、かなり大掛かりな施設が必要となるはず。
 そんな大掛かりな施設をどうやって移動させ、また隠していたのか。

 それと…この場合、奪ったと予測されるのは“破滅”の民ですが…。
 何故わざわざクローンを?
 確か、クローンを一体つくりあげるにはかなりの時間がかかります。
 それこそ、ヘタをすれば何十年もの時間が」


 効率が悪すぎるのだ。
 普通に工作員でも育てたそうが、余程早い。

 そう言われると、クレアとしても考えが浮かばない。
 もともと、目に見えている情報だけを強引に繋ぎ合わせただけなのだ。


「ふむ…イムニティ、他に何かあるか?」


「…いえ、特にないわね。
 後はこのファイルを解読してもらおうかと思ったんだけど…」


「貸してみなさい」


 ヒョイ、とミュリエルはファイルを受け取った。
 イムニティにとっては専門用語だらけで暗号に等しい内容だが、ミュリエルならば大体の意味は理解できる。
 伊達に色々な世界を旅してない。
 その間にナンかどーしようもない程性根が穢れてしまった気もするが、代わりに様々な知識を身に付けた。
 アヴァターよりもずっと文明の進んだ世界もあったし、そこでもクローン技術と似ているモノは何度か目にした。

 ミュリエルはファイルを斜め読みして、クローンに関していると思われるファイルとページを抜粋する。
 10冊ほどあったファイルの中で、3つがヒットした。
 さらにそれを読み進める。


「…どうだ?」


「……クローンの研究過程…でしょうか?
 どうやってこの技術を確立したのかは書かれていません……。

 ……………しかし…これは…?」


「「?」」


 イムニティとクレアがファイルを覗き込む。
 2人の頭を押し返して、ミュリエルはファイルを閉じた。


「どうも、既存の施設を使用しているようですね。
 スイッチの動作がわからないとか、適当に押していたら迎撃システムが作動して撃たれかけたとか書いてあります」


「ふ、ん…?
 まさか、何代も前の“破滅”で滅びた文明が残した遺産…とでも言うのか?」


「可能性は…あるわね。
 私とリコは世界が生まれた時から存在していたけど、全てを知っていたわけじゃないし。
 最初は何処とも知れない…洞窟? いや神殿?
 なんかその辺で、救世主候補が来るのをずっと待っていたのよ。
 その頃に生まれ、滅んだ技術…どれほどの物だったのか、想像もできないわ。
 勿論、今のアヴァターと大して変わらない可能性だってあるんだけど」


 顔を見合わせて、ファイルを再び覗き込む。


「まぁ、何にせよ…。
 この施設とやらを発見すれば、ミランダ・謝華を抑える事も可能…と言う訳ですね」


「そうだな。
 万が一、これが“破滅”に奪われたのだとすれば…濡れ衣を着せるまでもなく、反逆罪とか適用できる。
 そうでなくても、ミスを追及されて大幅に影響力を削る事ができるだろう。
 ……探すか?
 しかし、どうやって…」


 謝華グループの情報網は半端ではない。
 それでも見つけられなかったのだから、探したところで一朝一夕で見つかるはずも無い。

 が、イムニティは自身ありげに言い放った。


「そんなの、“破滅”の幹部辺りを捕らえて聞き出せばいいじゃない。
 アルディアの家っていう、どう見たって怪しいスポットもあるのに。
 今から行って探してこようか?」


「いや…仮説以上のものではないしな。
 それよりは…ダウニーを監視しておいてくれ」


 は?と首を傾げるイムニティ。


「ダウニー…って、あの髪型7変化のダウニー?
 マスターにおちょくられてた、あのダウニー?
 何で?」


「…アナタの元マスター、ロベリアの子孫かもしれないからですよ」


「ロベリアの!?
 あの根暗女にガキなんて居たの!?
 …あ」


「サラリと漏れた本音はともかくとして、とにかくダウニーを監視しておいてくれ。
 どうも怪しい点が目立ってきた。
 ヤローの監視なんぞしても詰まらんのは解かるが、一つ頼む」


「別に楽しみのために監視するんじゃないんだけど…。
 まぁいいわ。
 それじゃ、ちょっと行ってくるわ」


「頼むぞ」


 イムニティは、瞬間移動で掻き消えた。
 ダウニーは学園ないから出ていない筈だ。
 恐らく、この時間なら職員室で弁当でも頬張っているだろう。

 と、思っていた二人だったが…1時間後、イムニティから返ってきた報告を聞いて眉を潜める事になる。
 曰く、ダウニー先生失踪…と。


 余談だが、ご丁寧にも彼の授業は全て自習にされていたそうな。
 余談その2だが、荷物は放置されていたものの、しっかりとカツラだけは無くなっていた。




後書に代えて…外伝。


異世界にて…アラスカ基地。
「なっ!?」
「ん?ムウ=ラ=フラガか。生憎今日はお前と遊んでやれる暇はない。どけ」
「俺が突っかかってくるお前と遊んでやってんだろが!?…じゃない、貴様、こんな所でなにを」
「暇はないと言ったろう。正義の味方をやりに来ただけだ」
「仮面を着けてるヤツは、大抵悪役だぞ」
「さもなくば生き別れの肉親が正体を隠して…まぁいい、とにかく退け。
 さっさと逃げる事だな。ここはいずれ吹き飛ばされるぞ」
「逃がすか…!」(判断に迷うが追う)

で、地下。
「これは…サイクロプスだと!? …そうか、俺達は餌か…」
「私は何かした覚えは無いんだがな…何でこうなるかな?ブルーコスモスか?」
「ボケッとしてないでさっさと逃げるか停止させろ!」
「無茶言うな。それよりさっさと脚付きと逃げたらどうかね?」
「っきしょう! 止められないなら何でここに来てるんだお前は!? さっさとずらかれよ!」
 などと言っている間に、時間は刻々と過ぎる。ムウ、退場。
「やれやれ、やっと行ったか。 しかし、ムウに逃げろと忠告されるとはな…。 それでは…」
 何かベルトを付けるクルーゼ。
 大きく息を吸い込み、
「ますく・ど・むーんぱわー、せっとああぁぁっぷ!」
 漫画で言うならコマ割り四段ブチ抜き絶叫顔だけドアップ。
 しかもどっかの達人達のように、仮面の奥の目が発光している。
 叫ぶや否や、ベルトのバックルが開き、なんか緑色っぽい面が露出する。
 時を同じくして、どういう理屈か月から飛んでくるマイクロウェーブ
 なんかD.O.○.Mが悲鳴を上げたよーな気がするが、真昼間なのにマイクロウェーブが届くとか纏めて気にしてはいけない。

で、地上。
「ん?何か降ってくるぞ。敵の攻撃か!?」
「回避!」
 魔乳艦長が、回避を命じる。
 既にムウ及びフレイは収容済みだ。
 しかし、落下してきた物は避けるまでも無くアークエンジェルを外れ、なんか基地に直撃。
 ものっそい爆発が起きた。

地下。
「キタキタキタァ、マイクロウェーブ来たぁ!」
 ヘンなギアが入っているが、変身時にはいつもの事だ。
 こうでもしないと、クルーゼ的にもやってられない。
 天井…つまり地表をぶっ飛ばして迫るマイクロウェーブ。
 狙いはクルーゼの下腹…ベルトのバックルだ。
 が。
「ほいっとな」
 クルーゼ、軽やかに回避。
 流石に曲がれないマイクロウェーブ。
 当然クルーゼが居た場所…サイクロプスに直撃した。
 爆発爆発爆発。
 連鎖して、それこそアラスカ基地が吹っ飛ばされんばかりの振動が襲う。
 地上では敵味方問わず大慌てになっている事だろう。
 そしてクルーゼ自身も、その爆発に飲み込まれた。

地上
「…イザーク隊長、司令は…」
 アラスカ基地は戦闘不能なまでの被害を蒙っていた。
 サイクロプスよかよっぽどマシだが…。
 あれでは、クルーゼも助かるまい。
 だがイザークは平然としていた。
「死体の確認は?」
「…いえ、我々はしていません。
 他も同じで、仮面を被った死体は何処にも見当たらないそうです」
「…ストライク、そっちは」
「え?あ、ああ…僕もしていない…。 …助けられた…のか…」
「じゃ生きてるだろ。 その内ひょっこり顔を出す」
「そ、そんなあの爆発で!?」
「あれはそーゆー人だ。 悩むだけ無駄だ。 世の中には、お前如きでは理解できん事が山ほどある。 ちっと強いからと言って、自分が人よりずっと沢山の事ができると思っているお前には、それこそ理解できんかもしれんがな。 気にするとパゲるぞ」
「アスランと一緒にするな!」
「そーだな。もう植毛のお世話になってるみたいだし」
 一応言っておくが、デマだ…今は。
「じゃー帰るぞ。 もう気分が失せた…ストライク、貴様もさっさと行ってしまえ」
 クルーゼの元で働いていると、髪の毛が薄くなるか神経がどうしようもないほど図太くなるかのどちらからしい。

地球某所、軍施設の一室 サイクロプスを仕掛けさせた官僚の部屋
「な、な、何者だぁ!?」
「ひとーつ人の命を弄び! ふたーつ不遜なムカツク挙動! みーっつ醜いデブ短足油ギッシュ十円パゲ権勢の為に他人様を捨て駒にする無能かつ傲慢な重役を!退治てくれようマスク・ド・ムーン!
「パ、パゲてなどおらぬわ!」
「貴様がカツラを被っている事などお見通しだ。 んな事はどーでもいい! とにかく貴様の所業は許しがたい! 改めて、ますく・ど・むーんぱわー、せっとあああっぷ!
 で、月の位置も無視してすっ飛んでくるマイクロウェーブ。
 取り敢えずその部屋は、とても見通しと風通しがよくなった
 今度こそベルトのバックルでマイクロウェーブを受け、変身するクルーゼ。
 一瞬の光が消えた後には。
とぉう! 滝沢キ…もといマスクキィック!」
「げはぁ!? へ、変身してねぇ…」
「してるではないか。 ほら、仮面が違う。 続いてマイクロウェーブ波のエネルギーを転用、サテライト指マシンガン!
「ほべべべあぢいぃぃ!」
「そして! トドメに! クルーゼ…もとい、狂うぜフラァッシュ!
 再び変身、発光。
 そして…。
「ぐおおおぇぇぇぇぇ!」
 …現れたのは……ナース、バニー、スク水、メイド、巫女、女子高生、魔法少女あらため中年、女子プロレスラー、本家セーラー○ーンにウェディング○ーチ、肌ワイ、エプロン、さぁどれだ。
 …クルーゼだと言う事をお忘れなく…ああ、ギャランドゥが…。
「必殺! 超級覇王電影弾、モア・スローリー!
 誰から教えられたのか、ぐるぐる回転しつう突っ込むクルーゼ。
 なお、回転が弱いのか、体がぐるぐるするのがはっきりと見えてスゲーやだ。
 これで突進された官僚に、多少の哀悼を表したい。
「ダメ押し! 筋肉満張りの! フェイスフラッシュ!
 既に虫の息の官僚に見せ付けるように、ゆっくりと仮面を剥ぐ…。
「………………………………………!!!!!」
↑虫の息でも絶叫せずにはいられない

 1分後、涅槃を見ながら無害な生き物になった官僚を足元に、ますく・ざ・むーんは空を見上げる。
 既にマスクを深く被りなおしていた。
「今はまだ足場が弱すぎるが、いつかブルーコスモス…貴様らを成敗してやる…。あと、キラ・ヒビキは適当にいじめとこう。ムウも」
 八つ当たりを決意するクルーゼ(衣装はそのまま)の行く手には、一体何が待っているのだろうか…。
「……しかし…コスプレにも、いい加減慣れてきたな。開き直れば、意外と楽しいかもしれん」
 …多分、更なる倒錯者への道だ。
 なお、同じ日にあちこちの軍施設で同じ破壊活動が行なわれた。
 被害者に共通しているのは、その精神的ショックと、アラスカにサイクロプスを仕掛ける事を是とした点だけである。


ザフト
「おい、聞いたか? またマスク・ド・ムーンが出たらしいぜ。 今度は地球のお偉いさんをやったって話だ」
「またか? 前はザラ委員長とかボコられてたよな。 しかもその後、TVに向けてVサインまで出して、その後機動隊と追いかけっこで完勝」
「機動隊から、なんか一等賞とか旗を渡されてたよな。 何が目的なんだろうなぁ。 お蔭で強硬派が随分弱くなってるけど…和平するにしても、相手は下等なナチュラルだぜ?」
「…まぁ、俺もそう思うけどさ…マスク・ド・ムーンに比べれば、コーディネーターもナチュラルも赤子と大差ないだろ」
「………」
「…ところで、マスク・ド・ムーンの顔…どっかで見た事ないか?」
「ああ、俺も思った。 クルーゼ司令に似てるような気がするな。
 顔が見えないから、似てるのは仮面を着けてる所と雰囲気だけだけど」
「ああ…でも、思う度にそれは違うって何かに囁かれるんだ。ナンだろ」
「俺も俺も…」
「あ、噂をすればクルーゼ司令だ…」
「爆発に飲み込まれたって聞いたが…何で無傷でいられるんだろーな、あの人…」


クルーゼ「どうでもいいが、時守は壊れ指定にチェックを入れるべきか迷っているらしい。
 確かにキャラは壊れているが、ハッキリ言って今更だと思っているのだろうな。
 最近は壊れと言える程壊れているヤツも見当たらんし…。
 最初から付けていればともかく、今更付けるのは何か格好が悪いと。
 つまらん体面に拘って、愚かな事だな。
 一つ気合を入れてやりに行くか…。

 …ふむ、レス返しだそうだ。
 さて、今度は何の衣装にするかな…」


1.シヴァやん様
まぁ、マジメなキャラをギャグキャラに引き摺り落すのが壊れの醍醐味ですからw

>神水
…その手があったか。
しかし、いくら体力が回復するからって、どんな雑菌が居るか分からない野水なんぞ飲みますかね…?


2.ATK51様
必ずしもどちらか一方しか手にできない、と言うわけでもありませんからね。
まぁ、大抵の場合は手に負えない事態になるのがオチですが。

イムニティにとっては、世界の革新は相当なジレンマを産む事でしょう。
救世主による新世界なら、最初から自分も当事者ですが…人の世界から外れた存在である彼女は、ヒトの事はヒトがどうにかするべきと考えています。
彼女にしてみれば、部外者が首を突っ込むような事かと考えているのですね。

クルーゼさんが受け入れられたようでホッとしています。
誰でも彼でも無条件に救っているような気がして、ちょっと安っぽいかなと思っていましたから。

>死なない戦争
スポーツで済むなら、それが何よりだと思うんです。
戦争の痛みや愚かさを忘れてはならないと言うのは、過去への哀悼もそうですが、何よりも同じ過ちを繰り返さないためでしょう。
永遠にスポーツ感覚で、死者も出ないならばそれに越した事はありません…。
それでも誰かが文字通りの武力に訴えるから、スポーツ感覚ではいけないんでしょうね。


3.YY44様
考えてみると、ナックルズも案外謎な生き物ですね…。
まるでムササビだ…。
テイルスは…まぁ、タマモというシッポ沢山の前例が居るから分かりますが。

いやいや、やはりヒョットコの基本はヨガファイアですよ。
火吹男と書きますからね、たしか。


4.イスピン様
いえいえ、白化するよかナンボかマシでしょう。
それに私なら、悲劇のシリアスキャラより喜劇のギャグキャラになりたいですし。

ユカの初体験に関してなら、既にそこに至るプロットは頭の中に大体完成しています。
心配しなくても、2人きりですよ。
…まぁ、そこに至る前にちょっと爛れた行為を目撃するかもしれませんが。


5.カモね様
ユカも喰われるのが決定してるとは言え…最近、ちょっと思いついた事があって予定が微妙に揺らいでいます。
つか、未亜を調教しろと?
受け責め両方オッケーにさせろって事ですかw


6.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>

某潜入工作員ったって、イムの姿は見えませんからねぇ。
ダンボール被って誤魔化しても、返って怪しまれるだけでしょ。
…と言うか、何故アレで誤魔化されるのか小一時間ほど問い詰めたいw
忍者アクションの『天誅』だって、足元に仲間の死体が転がってるのに普通に見張りやってますからねw

コーディネーターか…その手もあったなぁ。


7.カシス・ユウ・シンクレア様
全く、何があそこまでミュリエルを変えたんでしょうねぇ…。

イムと大河はちゃんとヤってますよ。
描写はしてませんが…王宮の秘密の部屋で、未亜とサンドイッチになったり、その前にもデバガメに目覚めた時に大河に捕獲され、ベッドに縛り付けられて一晩ほど。

流石にドム提督は壊しにくいです。
アザリン様なら、茶目っ気と言う事で遊んでもらうのも可ですが…。
タイラーさんも出てきますよ。
アザリン様を出すなら、彼もセットじゃないとダメでしょう。
まぁ、直接的な戦闘はできないので、あまり出番はありませんが…。

アルディアさんのクローンが101人…いかん、幼稚園児が群れて大騒ぎしてるよーなものだ…。
考えるだけで頭が痛い…。


8.根無し草様
まぁ、やっぱりクセの強い連中ばかりですからね。

謝華グループには、もうちょっと風呂敷を広げてもらおうと思っています。
畳みきれるか分かりませんが…。

アシュ様の魔力は大分減りましたが、まだまだ結構な量があります。
ん〜、変換効率次第では、平原を一つ火の海に変えるくらいには。

クルーゼは、多分楽しんでますよ。
色々と積もり積もった鬱憤やら不満やら絶望やらを、八つ当たりを兼ねて…もとい社会的制裁を兼ねて叩きつけまくっている事でしょう。


9.アレス=アンバー様
まぁ、確かに破滅思考のシリアスキャラは、ギャグじゃこんなもんでしょうな…。
或いは逆に際限なく沈むか。

うーむ、羞恥プレイに使えそうなネタは…精々に゛ょをしながら転がり落ちて行った所くらいか。

大河が量産されたら…いやむしろ未亜サンが量産されたら…ひいいぃぃぃい!
そんなの私の手にも負えません!
ガルガンチュワで宙に逃げても、「「「降りてこいッ!」」」の一言で動力源が停止しそう…。


10.15様
原作通りなら、さっさと救世主になってしまうでしょうねぇ。
新しい世界を望むか丸ごと滅びを望むかは分かりませんが…。

まだ就職が決まらない時守としては、研修で東京でも羨ましいッス。


11.黄色の13様
ぢつは上記の外伝、黄色の13さんへのレス返しでした。
なんか異常に筆が進み、レス返しにはでかくなりすぎたので急遽後書代行に。
本編を見てないので、その辺で読んだSSを参考に…。
と言うか、ここ2、3日異常に筆が進みます。
普段は一週間で一話書き上げるのに、3日で一話書いてしまった…。

ところで、笑いました?


12.流星様
何時の世も救世主候補は、周囲に珍騒動をばら撒いているようです。
まぁ、これって一応理由があるんですが…まぁ、当分先になりますが書きます。

クルーゼの変身がライダー風なのは、変身のきっかけだけっぽいです。
むぅ、誰だ?
あんなの書いたのは…酒も入ってなかったのに。

白の戦闘は正直ムズイっす。
まぁ、時守がなーんも考えずに突っ込んで行ったからなんですが…。
橋の辺りで待ち伏せとかすりゃよかったんだ…。


13.滓羅魏様
まぁ、何だかんだ言っても自分の書きたいモノを書いているだけですから、反発する方や受け入れられない方が居る事は理解しています。
実際、読み返してちょっと「あー、ここヤバイな強引すぎたな」と思う所も結構ありますし…。
ギャグを理由にしている所は、「説得力のある理由が思い浮かばなかったから」って所がかなり在るんです。
時守は結局、主人公最強主義ですから、どうしても大河が中心に…。
偏に時守の未熟によるものです。
人生経験の足りなさが露呈したのだと思っています。
しかし、より面白いSSを書きたいとは思っていますが、基本的に書きたいモノを書いているので…。

SSだからはともかく、異世界だって言うのはあまり理由にならない気がします…。
あと、未亜は自分では言い訳をしてるつもりはありません。
あれは単なる切欠になった事であって、その後の異常な性癖が自分の物である事くらいは理解してますから。

元々プロットも無し、行き当たりバッタリ、死人が何の脈絡もなく生き返るくらいにご都合主義万歳の、最初から(逆行無しという意味)ハッピーエンドの、精々数話で力尽きる不条理コメディを書こうと思っていたので、シリアス方面が多くなってきた最近ではマジで力量不足を痛感していますorz
…救世主クラスが全員揃った時…また前みたいなギャグを書けるか、自信がナイデス…。


14.神〔SIN〕様
廊下、廊下…バケツは何処だ?

うーむ、MもSも道は深いな…。
究極の一が究極のSなら、究極のMとは何でしょう?
全はM、一はS? by 鋼の錬金術師

しかし…前後の文を抜かして、マゾの一言を抜かすと確かに真理に聞こえますなw
だからこそタチが悪いんでしょうが…。
どうでもいいがイムよ、完成しきったマゾってのは真性Sにとっては意外と厄介なんじゃないのか?
苦しめようとしても悦んでしまうから、ある意味天敵だと思うが。
…まぁ、未亜も大河も、相手を苦しめるのが好きなのではなくて、掌の上で弄ぶのが好きなわけで…確かに対応した形とも言えるが。


ちょっと真面目な話で水を指すようですが、管理人様からの注意が入らない内に…。
レスを戴けるのはとても嬉しいし、話もとても面白い上に色々ヒントを得られるのですが…連続はヤバイです。
レスの大きさは、一応3KBまでと明記されていますし…5KBくらいに抑えるか、せめて長いレスは2話に一度くらいにした方がいいのではないでしょうか。
ちなみに、9−5で頂いたレスは、約7.5KBでした。
前に無責任に煽ってしまい、注意されるまで面白がっていましたから、一応言っておかねばと思いました。
まぁ、かく言う私もレスを投稿する時には、あまり容量を気にしませんが…。
ルールとは言え、頂いたレスが消えてしまうのは結構辛いもので…。
なお、5KBも2話に一度も、時守の勝手な判断ですので…。

と言うか、誰だパンツ井上〜〜〜!
そして…そこの関西弁!
貴様、まさかサッちゃんと違うやろな!?


15.なな月様
いやぁ、あくまで趣味の段階ですし…。
将来は…と言うか卒業後はプログラマーになりたいと思ってるので、スキルアップの実益も兼ねてます。
あんまり能力に自信ないんで、結構切実…。

実際、ミュリエルの立ち絵にメガネがないのは納得いきませんね。
実は近眼だったとか?
いずれにせよ…もしメガネをかけていれば、もっとファンが増えていたと思う…。
例えば一枚絵で、朝食を摂りつつメガネをかけて新聞を読む学園長とか。
エロスとか抜きでも、充分はまると思う…。
惜しい事を。

一人で突っ走るようになったのは、周囲に誰も頼れる人が居なかったからかもしれませんね。
千年前ならともかく、現代では救世主の事なんか誰にも…。
結局自分で手を下すしかなくなってしまう、と。

生体実験には嫌悪感も付き纏いますが…陵辱系エロゲの中だと割り切ると平気なのは何故?
純愛モノのヒロインが陵辱されるとイヤ〜な気持ちになる時守ですが、最初から陵辱仕様のゲームだと何故か平気です。

そうですねー、精々2ケタ続けばいい方だと思ってたのに…これもレスを下さる皆様のおかげです<m(__)m>


16.ナイトメア様
ロベリアの意中の人については、その内語る事になるでしょう。
まぁ、あくまで「過ぎ去った過去」の事なので、あまり詳しい描写はしないと思いますが。
これも青春期…なのか?
えらく暗い過去になりそうですが…。

隊長さんはこんな按配ですが…赤くて三倍の人はどーなってんでしょね、ホント…。
NT能力が発達しすぎて、異次元から電波を受けているとか?

おぅ、アリスソフト出身のあの方の指南書ですか!
大変貴重な…。

武装○金を読んでも、シェザルは彼に共感するかなぁ…。
同じように死のカタストロフを楽しむようですが、根っ子にあるのが何か正反対なよーな気がします。
…まぁ、確かに服装については影響を受けそうですね。
それこそ露出狂になりそう…HGみたいな挙動をするとか。


17.舞ーエンジェル様
バルドやりました〜!
月菜がモロにw
洗脳されてもなお主人公を気遣う健気さに本気で涙しましたよ。
陵辱系で結構なダメージを受けましたが…いいキャラ多数で結構な収穫になりました。
さて、どうやって登場させてやろーか…と言いつつ、既にプロットは完成していたりw
むぅ、しかし冗談抜きで話が長くなりそうです…夏休み中に週2話のペースで投稿とかしないと、来年まで終わらないかも(汗)
しかし…誰を透に宛がって、どんな壊し方をするべきか…。
ハーレムならある意味簡単なんだけどなぁ…。
そのまま出したんじゃ、他の連中に埋もれちゃいそうだし。

それはそれとして、アヴァターに神族魔族が居ないのは時守も気になってたんですよね。
アヴァター=根の世界だから、天界や魔界と言う所謂異世界が無いのは納得できるんですが…多分、その世界はアヴァターという根から派生した世界の一つだと思いますから。
でも、やっぱり人間以上の力を持ってる種族も居るだろうし…。
ひょっとして、アヴァターでは全く違った生態系を持っている種族は、別の大陸で暮らしているのではないかと思いました。
特に根拠はないのですが…広大な海や何者かに張られた結界で遮られ、互いの存在が確認できないとか。
さもなくば、アヴァターは神族魔族ヒト妖怪魔物が区別される前の世界…かも。

いい年こいて、か…ナルシストに加えて……ままごとでもやらせるか?
新技に関しては、あと一回は身に付けさせる機会がありますから、その時になんとか。

“破滅”の将達は、一般兵なら一万人でも勝てるでしょうね、マヌケやってても実力はありますから。
が、そのマヌケに耐性があり、なおかつ実力もある相手だと…ね。

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