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「幻想砕きの剣 9-5(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-06-07 22:23/2006-06-13 20:00)
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10日目 ミュリエル クレア


「忙しい最中にスマンな、ミュリエル」


「いえ、クレシーダ殿下こそ…。
 しかし、一体何事です?
 “破滅”対策の研究で忙しいのでは…」


「ああ、その事で少しな。
 …少々聞きたい事があるのだよ」


 微妙にもったいぶった口調のクレア。
 フローリア学園のミュリエルの私室で、2人は向かい合っていた。


「聞きたい事…と言われると…アレですか、経験豊富な淑女の伽の技ですか?
 大河君に調教されたとは聞きましたが、まさかこれほど世の中の性が乱れているとは…」


「…おぬしの頭の中、疲れて脳波が乱れておらぬか?
 大体、乱れていると言えばお主も他人の事は言えまい。
 母娘で大河に頂かれてしまったのは誰だ?」


「…何故クレア様がそれを知っているのです?
 大河君から聞いたのですか?」


 だとしたら…と、大河に呪いでもかけてやろうかと画策するミュリエル。
 が、クレアはあっさりと言い切った。


「いや、イムニティに頼んで覗いていた」


「…殿下…いつから出歯亀になられたのです…」


「大河と契った辺りからではないか?
 リリィには既にバレてしまったので、今更隠しても露呈が遅くなるだけだからダイレクトに言ったが。
 まぁ性の乱れはお互い様としてだ、そろそろ本題に入るぞ。
 盗聴対策・人払い、共に徹底して頼む」


「はっ。
 盗聴対策については、ルビナスが以前に偏執的な程に力を注ぎましたので問題ありません。
 …ルビナス本人は、抜け穴を知っているかもしれませんが」


「いや、ルビナスならば問題ない。
 人払いは?」


「今結界を張ります。
 ………完了です。

 それで、話とは?」


「うむ…」


 クレアの目付きが鋭くなった。
 それを見て、ミュリエルは警戒を強める。
 理由は解からないが、クレアは何かを仕掛けようとしている。
 彼女の聡明さを知っているミュリエルとしては、万が一にも油断する気にはなれなかった。
 どうやって足元を掬われるか、解かったものではない。


「単刀直入に聞く。
 千年前にお主が知った真実、全て話せ」


「…私はまだ30代前半ですが」


ギリギリでな。
 …いや悪かったから殺気を溢すな。
 大体熟女の何が悪いのだ。
 大河のハーレムの中では、お主以外には居らぬ属性だろうが。
 云わばアドバンテージだぞ?
 一体何が不満だ?」


「ダリアも私と同じくらいの年齢ですが」


「………アレが本当に歳を喰うのか、確信が持てない…」


 2人の脳裏に、ノホホンとしたダリアの顔が浮かぶ。
 …彼女だったら、それこそ1000年後にも姿一つ変わってない気がする。
 某南国少年だって、一応成長するというのに。

 イヤな想像を振り払って、話を本筋に戻そうとするクレア。
 そのまま何処までも道を外していければ、と思ったミュリエルは内心で舌打ちした。


「千年前には、私はまだ生まれてもいませんが…。
 まさか前世の記憶でも話せというのですか?」


「しらばっくれるでない。
 もうネタは上がっておる。
 何時までも惚けた所で意味はないぞ、ミュリエル・アイスバーグ?」


「!」


 名前まで持ち出され、ミュリエルは動揺する。
 クレアが相手なら何時かはバレてしまうと思っていたが、名前もドンピシャで当てられるとは予想していなかった。

 いや、考えてみれば然程不思議でもなかった。
 ミュリエルが千年前の人間だと気付くならば、その切欠あるいは確証となるのは、フローリア学園が設立された時の記録であろう。
 そこには写真付きで、ミュリエル・アイスバーグの名が記されている。
 埃に埋もれた資料の中から探し当てるのは大変だろうが、決して不可能ではない。

 個人的な見解としては、1000年前の純真だった頃のミュリエルと、今の腹黒(ただしギャグ風味)のミュリエルを結びつける方が余程大変だと思う。


「…その名を何処で?」


「ふ…王宮に保管されている、ご先祖様の日記をルビナスとナナシに延々と探らせておったのだ。
 その中の一冊にあったが……他の日記は、ルビナスが衝動的に燃やそうとしていて止めるのが大変だったぞ」


「………」


 心中で微妙な顔をするミュリエル。
 彼女もアルストロメリアの筆不精は知っている。
 何時ぞや日記を書いている所を覗き込んで、「これは日記と呼べるのだろうか?」と首を傾げたものだ。
 まぁ、大雑把だったアルストロメリアが細かい日記をつけているよりもずっと説得力があったが。


「細かい事は省くが、その中の一文にお主の名があった。
 一応写真もあるぞ?
 改めてみると、全く別人だな…」


「放っておいてください。
 …しかし、それだけで私と1000年前のミュリエル・アイスバーグを結びつけたのですか?
 少々根拠が弱すぎる気が…」


「…あのな、生き証人が居るだろうが。
 リコ・リスとイムニティが。
 ナナシとルビナスには、単に物証を探させていたに過ぎぬ。
 私自身、正直信じられなかったしな…。
 リコ・リスの証言だけならば、お主は惚けきる自信があったろう?」


「…そうですね。
 そもそも、オルタラ…リコ・リスがそういった事を話す事自体…。
 彼女は基本的に、聞かれた事しか教えられないそうですから」


「そうだったか…?
 割とペラペラ喋っていたような気がするが」


「それは相手が大河君だからでしょう。
 理由は解かりませんが、彼の周囲では魔法や呪術の効果が極端に低下する現象が起きます。
 本来ならば機密に当たる情報も、そうとは意識せずに喋っているようです。

 私が1000年前の人間だと話す事自体、書の精霊として隠匿すべき情報への道を示す事になります。
 その辺りのプロテクトの基準は、私にも解かりませんが…」


 リコもイムニティも、本来ならば救世主に関する情報を簡単に漏らす事は出来ない。
 例え相手が契約者であろうとも、だ。
 情報を直接告げる事のみならず、ヒントを与える事すら許されていないはずなのだ。
 聞かれなくても教えるべき情報、聞かれない限りは教えない情報、聞かれても教えてはいけない情報。
 そして気付かせてはいけない情報。
 この四つが書の精霊達の行動を束縛している…筈なのだが。


「千年前、ルビナスとロベリアもその辺りで色々と苦労していたようです。
 正確な情報を引き出すには、正確な問いかけをしなければなりませんから…」


「やれやれ、禅問答だな…。
 それにしてもミュリエル、やけにあっさりと自分が1000年前の人間だと認めたな?」


「既に大河君にはバレています。
 それこそ無理に隠す必要もないでしょう。
 救世主に関する真実は…リリィ達には、まだ教えられませんけれども」


「そうだな…動揺が激しすぎるか」


 クレアもミュリエルの意見を首肯した。
 カエデは全く気にしないかもしれないが、リリィとベリオは激しく動揺するだろう。
 目指していた救世主が、世界を救い贖罪を果たす救世主が、自分達が思っていた存在とは真逆の存在だとしたら。
 以前程ではなくても、激しいショックを受けるのは目に見えている。
 教えるには時期が悪すぎた。


「もっと早くに打ち明けるべきだったのでしょうか…」


「いや、あの者達に重荷を押し付ける事はあるまい。
 そして…長い間、ご苦労だったな…ミュリエル。
 鉛よりも重い真実を隠し、よく学園を切り盛りしてくれた…。
 礼を言わせて貰う。

 …しかし…」


「?」


「そうなると、色々と準備して来たのが無駄になってしまったな。
 ルビナスの助言も考慮して、色々と考えてきたのだが」


「…ルビナスの助言?」


 イヤな予感がするミュリエル。
 ルビナスは千年前も今も、優しく強い女性だが…その能力を悪ふざけに使ったり、はたまた得体の知れない発明に注いだ時の迷惑さも凄まじい。
 これはルビナスに関わった者全てが抱く感想と言ってよかった。
 現にミュリエルも、千年前現在問わず色々と厄介事を押し付けられた記憶がある。
 最たる物は、言わずもがなネコ&ヒョウ化だ。
 もう受け入れたが、アレは迷惑云々の次元を超えていた。


「ああ。
 お前の過去の恥部というか若かりし日の過ちというか」


私はまだ若いです!
 少女とは言いませんが、年寄りみたいに言わないでください!」


 軽口にも敏感に反応するのは、やはり気にしている証拠か。
 それはともかく、ミュリエルはふと気がついた。

 記憶を失っているはずのルビナスが、何故自分の過去を知っているのか?


「クレア様、まさか」


「旅の途中に見つけたツバメの巣(巣立ち後)を持ってきて珍味だと主張して料理したら、アナツバメどころか街のツバメの巣だったんで煮詰めた泥にしかならなかったとか。
 我が先祖アルストロメリアが鳥に取られた玉子焼きを取り返すのに同行させられ、3階建ての屋上からダイヴしたとか。
 路銀稼ぎにバイトを探したらちんどん屋に行ってしまい、縦縞服に鼻眼鏡で街を練り歩き更にそのままマ○ケンサンバも踊ったとか。
 野宿をしたら寝ている間に野牛の大軍に掻っ攫われて、そのまま10キロほど平原を渡ったとか。
 立ち寄った店で見かけた縫い包みを気に入って、旅に持っていこうかと3時間くらい立ち往生して悩んでいたとか。
 街中で見かけたトナカイを馬車に繋げてサンタの真似事をしたものの、よく見たらトナカイじゃなくて鹿だったとか。
 扉に書かれた『押』の字を信じて、何の疑問も無く引き戸を5分くらい押し続けていたとか。
 息抜きに見た幼児向けの映画を見て貰い泣きしまくったとか。
 ロベリア・リードに見せられた女性誌を2ページ読んだだけで頭がフリーズしたとか。
 ルビナスが作っていた薬を溢してしまい、そこから発生した煙を吸い込んで一晩ほど人格が壊れていたとか。
 旅の最中に拾った猫を連れて来たものの、我が先祖の『鍋にしよう』という冗談を真に受け、そのまま3日ほど逃げ回った挙句迷子になって当局に保護されたとか。
 あと、山中で野宿をする時にお花摘みに行ったものの、出している最中にバランスを崩してそのままの体勢で下の河まで転がり「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!! 認める! 千年前の人間だって認めますから、それ以上過去の恥部を思い出させるのはやめてぇ〜〜〜〜〜〜!!」…全部本当のようだな。
 ルビナスがペラペラペラペラ喋ってくれたが」


「る、るびなすー!!!!」


 人の恥を、何を考えて暴露しまくっているのか。
 ロベリアがルビナスを嫌っていた理由が、ちょっとだけ解かった気がするミュリエルだった。
 それを見て、クレアは不思議そうな表情をしている。


「ミュリエル…どうやら本当に昔は純真無垢な少女だったようだな…。
 何がお前をそうまで変えた?」


「ほっといてください、本当に…。
 ……こ、こうなれば恥を承知で暴露してしまいますが…」


「ん? ルビナスにも似たような経験があるのか?」


「ルビナスだけではありません。
 何せ当時は交通網も発達しておらず、隣の街まで行くのにも2,3日かかる事はザラでした。
 当然その時は野宿するのですが、これまた当然トイレなど無く、その辺で済ませる事になります。
 …計四人が安定しやすそうな場所で済ませるのですが、皆大体似通った場所に目をつけまして…。
 旅が中盤に差し掛かる頃には、全員が全員の排泄物(大小)を踏んだ事があるという、ちょっとした肉体関係よりも深くて濃い関係を構築し…」


「ああ、もういいもういい。
 そんな表情をしてまで語る事かい。

 その辺の事は後でルビナスと好きなだけ言い合え。
 いい加減本題に入るぞ」


 やや投げ遣りなクレアだが、このまま放っておくともっと洒落にならない過去が出てきそうだ。
 ルビナスのデンジャラスな過去を知ってしまい、そのまま記憶を消されるなんて事になりかねない。
 勿論余計な改造はデフォでついてくるだろう。
 彼女は相手がアヴァターの王女であっても容赦すまい。


「…もうちょっと語りたかったのですが…」


「過去の屈折した思い出に他人を巻き込むでない。
 それより、“破滅”と救世主に関する事…洗いざらい吐いてもらうぞ」


「…承知しました。
 ………カツ丼は出ますか?」


「…私が作ってやる」


 材料は冷蔵庫の中だ。
 大河との関係を持つようになってから、冷蔵庫の中身は急増していた。

 …ちなみに、クレアは料理の経験など一度も無い。
 10分後にはミュリエルは激しく後悔する事になるのだが、それは別の話。


「…なるほどな…大体の疑問は解決できた」


「それはいいのですが…問答のシーンを書かなくてよろしいのでしょうか?」


「知りたい人は本編をやれ…と言うわけにもいかんが、実際知ってる人はとっくに知ってるしな。
 知らない人に向けての説明も必要だが……その辺は大河達が揃ってからだ。
 二度も三度も似たような説明シーンを書く必要はなかろう。
 それに、我々にとって必要な情報はほぼ揃っていたしな。
 ミュリエルも最重要な情報は知らなかったし…」


「なんか私の情報に意味がなかったような言われようですが…。
 私とて全てを知っているのではありません。
 かつてロベリアとルビナスから聞いた情報が全てです。
 記憶が戻ったルビナスに直接聞いた方がいいのでは?
 おしゃべりなんですし」


 ミュリエルは過去の恥部を暴露された事を、根に持っているらしい。

 しかし、その表情は何時になくスッキリしている。
 何年も秘密にしてきた事を全て暴露したためか。
 もともとそれこそが、クレアの目的でもあった訳だが。


「まぁ、実際情報自体にはあまり意味が無かったしな。
 真の救世主の事は、ミュリエルが知っている程度には私も知っていた。
 召喚器の役割、前の世界、救世主候補生が全て女性だった理由。
 その辺が理解できても、やる事には変りは無い。
 それに、一番知りたかったのは『“破滅”が起こる理由とそのメカニズム』だ。
 あと、これまでの“破滅”はどうやったら治まったのか、とかな。

 文字通り根を絶たねば、いつか我々は“破滅”に敗北する。
 かつての世界がそうだったようにな」


「そうですね…。
 相手は期間さえおけば、幾らでも発生しますから…。
 しかし、根を断つ前に我々が断たれる危険性が大きいですが」


「イヤな事言うな…。
 ま、確かに現在の“破滅”をどうにかするのが先決か。
 ……もう一度聞くが…“破滅”は赤の精霊と白の精霊が、同じ人物をマスターとすれば治まっていくのだな?」


「はい。
 少なくとも、リコ・リスが見てきた過去では、その辺りを境にして“破滅”が治まっていったそうです。
 これもルビナスからの受け売りですが…恐らく、“破滅”という現象に対して、何かしらの関係があるのだと…」


 クレアは腕を組んだ。
 つまり、自分達が思っているのとは正反対なのだ。

 救世主の真の役割は、新世界を創造して現世界を滅ぼす事。
 “破滅”の役割は、その真の救世主を選び出すための蟲毒。
 そして…新の救世主が選ばれるのは、“破滅”を鎮めるためではない。

 逆だ。
 真の救世主を選ぶ為に“破滅”が発生する。
 ヘタをすると、真の救世主が生まれない限り“破滅”は治まらない。
 生まれれば新世界、生まれなければ延々と続く戦。

 ひょっとしたら、ある程度時間が流れれば“破滅”は収まるのかもしれない。
 いや、実際そうなのだろう。
 前回の“破滅”は、白の精霊のイムニティが封印されているのに治まった。
 しかし、その代償は大きすぎた。


「このシステムを創り出したのは、所謂“神”だとロベリアは言っていました。
 単なる表現でしかなかったようですが、創造主である事は間違いなさそうです。
 救世主誕生のシステムと、“破滅”発生が発生し、止むシステムは密接に結びついているはずです。
 細工をするならばこの辺りでしょうか…」


「神が創ったシステムに誤認を発生させ、真の救世主が誕生しているように見せかける…か。
 ……この件、誰にも漏らせぬな…。
 王女としては失格、多大な犠牲を払う事になるが…」


 沈痛な表情のクレア。
 このシステムから行くと、赤の主と白の主、どちらか一人を犠牲にするのが最善の方法と言えるだろう。
 少なくとも、それで“破滅”の脅威は消えていくのだから。

 救世主一人の命と、アヴァター全土で失われかけている人々の命。
 どちらを選ぶべきか、王女としては明白だ。
 なのに…。


「私は…もう以前のような王女には戻れん…。
 どれだけ犠牲を払っても、大河が……生きていなければ…」


「殿下…」


 クレアは顔を覆い、頬を流れる水を見せまいとする。


「何も言うな、ミュリエル。
 選んだ物は逆だが、お前がずっと背負ってきた業だろう。
 私とて耐えてみせる…」


 だから、少しだけ泣かせてくれ。
 無言の声を聞いたミュリエルは、立ち上がって部屋を出た。

 かつてこの世界に戻ってきた時、予想はしていたとは言え真実を知っている者が誰も居ないと知った時の衝撃。
 たった一人の戦いを始めよう、と決意し、これが最後だと一晩だけ泣いた。
 クレアは名君とは言え、やはり幼い少女だ。
 自分よりも、少しだけ時間がかかるかもしれない。
 ミュリエルは扉の前で、防音結界を張りながら考えた。 

 彼女は生まれた時から、王女としての教育を受けてきた。
 時には幼いながらも、その能力を見込まれて政務に就く事もあった。
 その仕事を初めてこなした時は、誇らしいものがあったかもしれない。
 だが。
 その裏で何が起きていたのか実感した時、クレアはかつてない重圧を突きつけられた。
 大を生かして小を殺す。
 それが一般的な政治。
 クレアは、自分が“小”だと判断して切り捨てたモノがどうなったのか、見てしまったのだ。
 どうなっていたのかはミュリエルも知らないが、悲惨な末路であった事は予想に難くない。

 それを乗り越えたからこそ、今のクレアがある。
 だが切り捨てる罪悪感が無いのではない。
 切り捨てるモノの存在の大きさ、多さを実感している分、ミュリエルよりも強い罪悪感を抱いているかもしれない。
 そんなクレアが、切り捨てるべき小よりも大を切り捨てた。
 自分が見初めた大河を、世界よりも優先したのだ。
 その決断がクレアに何を齎すのか。

 こればかりはミュリエルにも何も出来ない。


 暫くして、クレアの鳴き声が止んだ。
 ミュリエルは頃合と見て、扉を開けて中に入る。

 クレアは赤く充血した目を擦り、自分の頬を思い切り叩いて気合を入れた。


「よし、これで泣くだけ泣いた。
 今後の事を話し合わねばな」


「…もう、大丈夫なのですね?」


「ああ、元々泣き寝入りするのは私の性には合わんしな。
 世界よりも大河を取ったからと言って、世界全てを見捨てるのではない。
 とにかく少しでも被害を減らさねば…。

 …ふ、滑稽な事よな。
 私も、お主も…」


 自嘲するクレア。
 やはりまだ完全には立ち直っていないようだ。

 クレアの心がまたよろしくない方面に向かう前に、ミュリエルは具体的な話に移る。


「さて、例の計画の方ですが…難航していますね…。
 ホワイトカーパスが予想以上に善戦してくれているからよいものの…」


「ああ、謝華グループが邪魔しておったな。
 しかし、どういう訳か今朝方に物資の流れが異常にスムーズになりおった。
 しかも、援助の申し出まで…。
 何かあったのか…?
 どうもグループ内部でも、現会長と前会長…この母娘が激しくやりあっているようなのだが」


「さぁ…。
 確かに前会長のやり方に、現会長は反発しているようでしたが…。
 このタイミングで内紛を起こすでしょうか?
 …いえ、このタイミングだからでしょうか」


 この戦乱の時勢ならでは。
 不確定要素が多くなり、チャンスも隙も増えるだろう。
 このタイミングで仕掛けるのは、それこそオールオアナッシング…しかも影響力の差を考えると圧倒的に不利だ。
 しかし、完璧に勝利するならこのタイミング以外にチャンスが無いのも事実。


「まぁ、その辺の事は後に探らせるとしても…お蔭で工程が一気に進んだらしいな。
 これなら明後日にでも、計画を発動させられる。
 一大作戦…だな。

 こちらの指揮は、タイラー殿に任せておけばいい。
 次の問題だが…」


「作戦終了後の処置でしょうか?」


「いや、そちらは後でいい。
 謝華グループの援助が本当なら、そちらも随分と楽になるしな」


「…想定されている状況で、謝華グループが援助をするならば…これ以上ない宣伝効果が期待できますね。
 8割方本当だと思っていていいでしょう。
 …ただ、前会長がこのまま実権を握ったままだと…少々厄介な事になりそうです。
 彼女からは、色々と黒い噂が漂って来ます」


 その辺の事も、諜報員に探らせねばなるまい。
 迂闊に首を突っ込むと、どれだけ死人が出るか解からないが…。

 場合によっては、現会長…レイミを援護した方がいいかもしれない。
 イムニティを差し向ければ、まず捕獲される事は無いだろう。
 と言うか、今朝戻ってきたイムニティを即座に向かわせた。
 ブツブツ文句を言っていたが、先日裏のオークションで入手した幻の同人誌を見せたら一目散にすっ飛んでいったらしい。


「それはともかく、私が言いたいのは…“破滅”の将の事だ」


「“破滅”の将?
 …先日の報告では、それらしき人物をベリオさんとカエデさんが仕留めたと…」


「ああ。
 問題は私の方に来た将だ。
 イムニティを密偵に出している時だったから、ナナシとルビナスが戦ってくれたのだが…。

 どうもソヤツ、ロベリア・リードと名乗ったらしい」


「!?」


 ミュリエルの表情が凍りついた。

 ロベリア・リード。

 かつて供に旅をした仲間であり、世界を滅ぼして新世界を作り出そうとした人。
 そして、ルビナス・ミュリエル・アルストロメリアの3人で罠に嵌め、殺した…裏切り、見捨てた人。
 いかに道を違えたとて、ミュリエルは彼女を嫌ってはいない。
 ロベリアが聞いたら憎悪さえ覚えるだろうが、今でも仲間だと思っていた。

 その彼女が何故?
 確かに死体も焼却した筈。
 しかも宮殿を襲撃した“破滅”の将?


「…遺体も確実に燃やしたはず…。
 …私達に…復讐をするために戻ってきたのでしょうか…」


「いや、そーいう雰囲気でもなかったような気がするが…。
 とにかく、聞きたい事がある。
 彼女に子供は居たか?」


「子供ですか?
 ………いえ、心当たりはありませんね。
 …ただ…」


「ただ?」


 鉄面皮になるミュリエル。
 だが、クレアはその下で蠢く後悔ややりきれなさを見て取っていた。


「彼女には、懇意にしていた男性が居ました。
 私達とも面識があります。
 子供が出来るような行為をしていたとすれば、その人とでしょうが…。

 これは時期的に考えにくい」


「時期的?」


「私達の旅が終わる少し前の事だったのです。
 色々あって、その男性は死にました。
 その時のロベリアの怒りと嘆きは、今も…。

 その後間もなく、ロベリアはルビナスの体を乗っ取りました。
 そして…後はクレア様も知っての通りです」


 ルビナスの策に嵌まり、救世主を誕生させまいと命を断たれた。
 だが、クレアには少し気になる事があった。


「その時、すぐにロベリアの体を焼いたのか?」


「はい。
 ルビナスが『私の体を乗っ取ったロベリアは、確実に復活できないようにしてくれ』と言っていたので、最優先に」


「そうではない。
 私が言っているのは、ロベリア・リード自身の体。
 魂が抜けて、抜け殻になったであろう体の事だ」


「! そ、それは……彼女達の遺体を弔うため、少しばかり時間が…。
 救世主となったロベリアを抑え込むため、そちらに注意が行っていましたし。
 まさか!?」


 クレアは黙って頷いた。
 ひょっとしたら、その時にロベリアの体は持ち去られたのかもしれない。
 恐らくは“破滅”の民に。
 その性情と、新世界を望む心は、自分達と同じ“破滅”の民になれるのではないかと思って。


「まさかとは思うが、そこから血筋が繋がっているかもしれん。
 血縁者が居るだけならば問題は無いのだが…約一名、洒落にならんのが居てな」


「…それは?」


 緊張した面持ちのミュリエル。
 が、クレアは脱力した様子で大きく溜息をついた。


「…お前もか、ミュリエル」


「は?」


「……ダウニーだ。
 今まであった幾つかの疑念…召喚の塔の爆破、筒抜けだった情報…。
 全て説明が付く。

 …聞くが、ダウニーの本名を言ってみろ」


「…ダウニー・ヘタレ」


 クレアは無言で、ミュリエルの後頭部に飛び裏回し蹴りを放った。
 直撃を受けて、思い出が微妙にクラッシュしたミュリエル。


「じょ、冗談はともかく…私も最初はロベリアと同じ苗字だと思ったのですが、単に同じ姓名なだけだと…。
 ちゃんと身元も確認しましたし。
 最近はフノコとかヘタレとか、あと悟りを開いたエセ聖人で定着していました」


「その呼び方については何も言うまい…。
 ダミーの情報なのか、それとも重要な所だけ隠したのか…。
 とにかく、彼を監視しておけ。
 私の勘にも、妙に引っ掛かるのだ」


「承知しました」


10日目 正午 イムニティ


イムニティ


「…最近…と言うか、生まれてからずっと日陰役だけど…スパイってのは最近が始めてなのよねー」


 その役割故に、滅多に表舞台に立たないイムニティ。
 今日も今日とて、クレアの命令で謝華グループの内部をウロチョロしていた。

 早すぎる展開だと思われるかもしれないが、アヴァターにも遠距離の連絡手段は一応ある。
 それを使ってレイミは配下に連絡を取り、有能なる配下は電光石火の勢いで行動、さらに王宮に連絡が行った。
 時は金なり、を体現するかのように、一刻を争ってこそ謝華グループは伸し上がってきたのだ。
 王宮も昔から、金が絡むと無条件で行動が早い。
 伊達に利権争いで鍛えられてはいないのだ。

 イムニティ潜入による、最たる標的は、謝華グループ現会長レイミの周辺。
 なのだが…。


「まだ帰ってきてなかったのね…」


 現在、レイミは秘密工場からの帰路に居る。
 工場から街に戻り、色々とやっていたら遅くなってしまったようだ。
 …まぁ、距離から考えて帰還に一日はかかるのが常識なのだが。


「さて、どうしたものかしら…。
 あまり首を突っ込むのは気が引けるわね…。
 マスターの命令で親友の頼み兼命令と言えど、人間社会の利権争いに介入するのは気が引ける…」


 マスターたる大河の命令なら、イヤイヤながらでも権力争いの手伝いもする。
 気が進まないのは変わらないが、これも必要な事であるのは理解している。
 コミケ…もとい聖地を破壊されないために“破滅”を撃退するのだ、と自分に言い聞かせてはいるが…。


「くだらない、と思うのも否定できない…うん?」


 つらつらとイムニティが考えていると、何やら苛立った声が聞こえてきた。
 好奇心のままに近付くイムニティ。

 そちらに近付くと、何人か見かけられた社員が全く居ない。
 人払いでもしてあるのだろうか。

 これは怪しい。
 何かあると確信したイムニティは、より一層隠形に力を入れて接近する。


「まだ奪われた設備は見つからないの!?」

「手掛かりは発見したものの、その全てがダミーだったとの事です。
 現在洗いなおしている最中ですが、その事で報告が一つ…」

「さっさと言いなさい」

「は。 どうやら例の設備、使用されているらしいとの事です。
 それどころか、その成果が色々と見られます。
 あちこちで見かけられる同一人物のような人物、そして一定時期を境にバッタリと途切れる目撃証言。
 恐らく、設備の欠点はそのまま放置されているでしょう。
 我々のように研究に使うのではなく、ただ使用するだけ…」

「もういいわ。
 とにかく、一刻も早く発見し、確保ないし破壊しなさい。
 あれが王宮の耳に入るような事だけは、絶対に避けるのよ」

「はっ」


 きな臭い。
 どうやら予想外のアタリのようである。

 レイミの周囲に直接繋がる情報かは解からないが、イムニティにとっても気になる情報があった。


「同一人物のような…一定時期を境に途切れる目撃証言。
 そんなヤツが報告されてたわね?」


 クレアが調べていた、エレカ・セイヴン。
 そして、彼女とソックリだと言うアルディア。
 しかもアルディアも姿を消したままで、依然として足取りすら掴めていない。

 何かしら関係があるかもしれない。
 ここは一つ、もっと接近して、さらに物証を探すべきだろう。

 そう考えたイムニティは、何気なく声のする方へ近付いた。
 その途端。


「曲者!」

「!?」

ズドン!


「かっ、ほ…!?」


 イムニティの体を突き飛ばす、凄まじい衝撃。
 溜まらずイムニティはたたらを踏み、バランスを崩して反対側の壁によりかかった。

 衝撃を叩きつけられた体は、上手く動かない。
 このままでは隠形も遠からず破れてしまうだろう。


(い、今のは…気弾!?
 しかも壁を貫通して…いや、私が壁に引っ付いているのを感知して、衝撃を伝えてきた!?
 くっ、そんな手練が相手じゃ、私の術も通じそうに無い…。
 一度撤退する!)


 必死で魔力を練り上げるイムニティ。
 遠くでなくてもいい、この建物の敷地外へ逃げる。

 バタン、と扉が開かれる音がして、数人がバタバタと走る音。
 そして曲がり角から、2人の黒尽くめ、そして3人の女性と1人の少年が姿を現した。

 イムニティが居ると思われる辺りを睥睨しているが、気付いた様子は無い。
 まだ隠形は有効らしい。

 とはいえ、それもすぐに解ける。
 イムニティは上手く練れない力を振絞り、空間転移の術を発動する。

 が、それの瞬間に向けられる3対の視線。


「そこ!」

ドォドドゥン!


 3重の衝撃が床を走る。
 イムニティが一瞬前まで居た場所が爆砕した。

 後に残るのは、パラパラと降り注ぐ破片のみ。
 イムニティは間一髪で間に合ったのでる。

 そこをじっと睨みつけていた3人の内、最も高齢…というかただ1人の大人が構えを解いた。


「どうやら逃げられたようね…。
 あの話を聞かれたとなると………まぁいいわ、謝華グループでも探し出せないのだから、そうそう見つけられる事も無いでしょう。

 それより2人とも、反応が遅いわよ」


「「………」」


 女性の叱責にも、眉一つ動かさない。
 だがそれが返って女性を満足させたらしい。
 女性はそのまま、出てきた部屋に帰ろうとする。
 子供2人もそれに続いた。


「それでは、私は業務と探索に戻ります」


「同じく戻ります」


「一週間以内に発見しなさい。
 …いえ、例えダミーだと判断しても、それらしき情報は全て私に送るのよ。
 じゃあ、行きなさい」


「「失礼しました」」


 黒服の1人と、女性の1人が去っていく。
 それを見送る、残された黒服と女性。

 黒服は、ふ〜っと溜息をつき、残されたもう1人の女性に話しかける。


「なぁ…」


「はい?」


「ミランダ様は俺よりずっと強いのに、何でボディーガードをせにゃならんのかなぁ…」


「……それは…雰囲気に浸りたいとか…」


「そうか…。
 俺はまたてっきり、いざとなったら肉の壁にするつもりかと…。
 あの人ならヤルだろう?」


「…やりますね。
 人体実験を是としているのですから、そのくらいは…」


「ま、その人体実験云々については、知っていて黙っている俺達も何も言えんがな…。
 じゃ、戻るか」


「そうですね」


 何処となく哀愁漂う黒服は、女性…秘書に慰められながらミランダの部屋へと戻っていった。


「イタタタ……かなりダメージを受けたわね…。
 人間で言ったら、肋骨が2、3本粉砕ってトコかしら…。
 でも、ここで引っ込むほどヤワじゃないのよ、イムニティさんは…」


 微妙にキャラから外れた軽口で痛みを誤魔化し、治療をしつつ反撃の作戦を練るイムニティ。
 空間転移でミレイヌ達から逃れた彼女は、隣の建物(社交ダンス場)の屋上に身を隠したのである。
 勿論発見されないように、貯水タンクの影に隠れている。

 隠形が見破られたのには驚いたが、大きな収穫があったのだ。
 ここで引き下がる訳にはいかない。
 時間を置いて体を回復させ、再び忍び込むのだ。

 魔物でも呼んで偵察させようかと思ったが、気配を探知されて迎撃されるのが関の山だ。


「とは言え、楽に誤魔化されてくれそうな相手でもないし…。
 ………そうね、あの部屋の目立たない所に召喚陣をこっそり書いて、そこを経由して書類とかを召喚しましょう。
 無理に危険を冒す事はないわ…少々癪だけど」


 苛立たしげに呟いて、イムニティは貯水タンクに寄りかかった。
 そのまま街を眺める。


「…意外と平和よね、この辺りは」


 行く所に行けば、“破滅”の脅威が今も暴威を振るっているというのに。
 しかし、それを実感して危機感を持て、というのは人間には無理なのだろうか。

 誰か1人が不幸になっていれば、自分も不幸になってそれを理解してやれ、などとは言わないが…誰かが不幸になっているのなら、手を差し伸べてやれないものか。
 いや、目の前で誰かが困っていれば、手を差し伸べる人間も居るだろう。
 そういう人が沢山居れば、イムニティとしても態々新世界を望もうとはしなかったろう。
 あるいは、かつてのマスターも。


「でも…目の前の事しか見えてないのよね。
 私だって同じだけど…。
 これが、この世界の限界なのかしら…」


 だとしたら、それこそコロニー落としでもして人類を革新させなければ、世界がより良くなる事は無い。
 急進的だ、と言えるだろうか。
 もっと時間をかけてゆっくりと、と言えるだろうか。
 だが、それは自分達だからこそ言える言葉だ。
 人間よりもずっと長い時を生きる、自分達だから。

 志は、理想は伝えられるものだ。
 だが、どんな崇高な志も理想も、連綿と伝えられていく内に薄れ、捻れ、曲解される。
 結局、何か大きな事をしようと思ったら、1代…いや、長くても2代か3代の内に成し遂げねばならない。
 徐々に変えていくには、時間がかかりすぎるのだ。


「なら…私達が変えるべきだというの?
 この世界を…」


 神に与えられた役割を逸脱してまで。
 この世界を否定せずに。
 新世界を創らずに。


「そうしないと…同人誌も、消えちゃいそう…だし…ね……」


 イムニティはそんな事を考えながら目を閉じた。
 受けた衝撃を少しでも早く回復するため、必要な活動エネルギーを減らす。

 今度忍び込んだ時はみつかりませんように、と胸中で呟いて、イムニティは眠りに落ちた。


 その夜。
 謝華グループの建物から漏れる光が消えたのを確認し、イムニティは動き出した。
 魔力を外に漏らさない空中浮遊で、屋上から屋上へ移る。
 空間転移は使わない。
 誰も居ないとは限らないのだし、転移に使う魔力を探知される可能性も高い。

 昼間に発見された以上、何かしらの対策があると思った方がよさそうだ。
 自分達を狙っている正体不明の敵が居るのに、何の備えもしないほど間抜けではないだろう。


「転移は逃げる時にだけ…。
 ただし極力使わず、使うのであれば一度異次元へ跳んだ方がよさそうね。
 魔力の発信機みたいなのを付けられてたら、どこまで逃げても追ってくる。
 別の次元で体を検査しておかないと」


 別の次元へ跳ぶのは、非常に力を消耗する。
 ラインが繋がっている大河から流れ込む力が、最近非常に大きくなっているのだが…何かあったのだろうか?
 あのマスターの事だから、萌えとかで力を増大させているのだろうけど。

 それにしたって、今はかなりのエネルギー不足なのだ。
 以前のリコほどではないが。

 昼間に受けたダメージを回復するのに、それほどのエネルギーを必要としたのである。
 はっきり言うが、直撃を受けたら当分戦闘不能である。


「ったく…私にここまでダメージを負わせるなんて、本当に普通の人間かしら?
 実は強化人間じゃないでしょうね…」


 脇腹を摩りつつ、イムニティは気配を消して屋上のドアを開けて入り込んだ。

 この辺りが最大の難所でろう、と予想していたイムニティ。
 敵も恐らく自分と同じ考えをした筈だ。
 空間転移による魔力を検知される事を恐れ、普通に何処かのドアから入ってくる。
 となると、考えられるのは屋上か正面ゲート、そしてその辺の窓。
 窓から入るにしても、その辺は普通に防犯体制が整っている。


「だから屋上かゲートしかなかった訳だけど…。
 ……妙ね、警戒が緩い…?
 ! 人が…」


 警備員らしき者が来る。
 イムニティは慌てずに通路の端に寄った。
 流石に接触すれば気付かれる。


 警備員はイムニティの事など全く気付かず、鼻歌なんぞ歌っていた。
 気付かないのも無理はないが、イムニティは警戒を解かなかった。
 隠行を過信すればどうなるか、昼間に刻み込まれた。
 どんな手段で、どんな切欠で破れるか解からないのだ。


 しかし警備員はやっぱり気付かない。
 彼が通り過ぎるのを待とうとするイムニティだが、通路の向こうから声が聞こえてきた。


「おーい…。
 勤務場所のシフトがあるってよー」


「なに?」


 イムニティの丁度前で、警備員は振り返った。
 視線の先には、通路を走ってきたと思しきもう一人の警備員。
 途中でコケたのだろうか、ちょっと服が汚れている。


「勤務場所のシフトって…何でだよ、こんなに急に」


「いやな、先程会長がお戻りになられたんだが…今後の方針で前会長と揉めてるらしいんだ。
 それで、珍しく前会長が不意を付かれて…その隙に会長は色々と指示を出されたんだ。
 要するに、何を重点的に警備するかの違いだよ。

 この辺りはいいから、第2資料室付近を回れってさ。
 前会長がこっちに戻って指示をするまで、現会長の指示に従っておこうぜ」


「わかった、ありがとうな」


「いやいや、これも仕事だ。
 それじゃ、俺は他のヤツにも伝えに行くから」


 そう言って警備員は去っていった。
 もう1人の警備員も、第2資料室とやらに向かうらしい。

 そして残されたイムニティ。

 どうやら、警備の数が少ないのは罠でもなんでもなく、内輪揉めが原因らしい。
 しかしもう少しすれば、また警備員はこの辺りをウロウロしだすだろう。
 前会長とやらが体勢を整えれば、また全体を警備しだす筈。
 となれば、そうなる前に目的の部屋に忍び込むまで。
 第2資料室とやらは後回しだ。


「たしかコッチだったわね。
 ……よし、誰も居ない」


 昼間の女も、子供2人も居ないのを確認して、イムニティは通路を進む。
 途中でちょっと迷った。
 この手の建物は、やたらと入り組んでいるくせに特長に乏しい。
 道に迷うのも無理はなかろう。

 多分、子供2人はあの女に付いて何処かへ行っているのだろう。
 一番厄介な連中が居なくなっている。
 罠の可能性は考えなくてもいいだろう。
 …一応念の為、持ってきた炸裂弾その他を建物の外側に仕掛けてきた。


「…あった、ここね。
 …やっぱり鍵がかかってる。
 ここは……逆召喚して向こうに出るか」


 懐から召喚陣の描かれた紙を取り出し、壁に貼り付けるイムニティ。
 極力魔力は使いたくないが、これならば問題ない。
 召喚陣を起動させるのには魔力を使うが、効果を持続させるのには殆ど魔力を使わない。
 魔力探知で発見される場合、大抵は急激に変動している魔力が目をつけられる。
 多少不自然でも、一定不変の状態ならばまず発見されないのだ。

 ブービートラップの類が無いか、その辺にあった植木鉢を召還陣で向こうに送ってみる。
 引き戻しも問題なく可能な事を確認して、今度は自分も入り込んだ。
 召喚陣に飲み込まれる、独特の浮遊感。

 それが消えると供に、イムニティはバッとその場を離れた。
 勘で方向を決めて前転し、3回転ほどして立ち上がる。
 そして周囲を警戒。

 が…。


「……何だ、誰も居ないじゃないの…」


 仮にも重要人物らしき者の部屋なのだから、寝ずの番くらいは居るかと思ったが…。
 余計な心配だったようだ。
 イムニティは警戒を解かずに、周囲を探索する。


 机の上……筆記用具くらいしか無い。

 机の引き出し…鍵がかかっている。
 無理に開けようとすると、警報が鳴りそうな気がしたので止めた。

 本棚…意味不明の文字が書かれたファイルが、ズラリと並んでいる。
 調べるならばここだろう。

 イムニティは試しに一冊手に取ってみた。
 ページをペラペラと捲ると、やっぱり意味不明の文字列が目に飛び込んでくる。
 どうやら経済か何かの記録らしいが…。


「…脱税とかしてても、私には解からないわ…」


 ネコに小判だ。
 大企業たる謝華グループの活動記録。
 出す所に出せば、物凄い値打ちがあるだろう。
 その経営理念や資産運用など、分析できれば企業にとって大きなプラスとなる。

 が、やっぱりイムニティには理解できない。


「…昼間に話していた、施設とやらの資料は無いかしら…」


 ファイルを本棚に戻し、ごく最近開かれたらしきファイルを探す。
 いくつか目星を付けて抜き出すと、そのファイルの一ページを無作為に選び、少しだけ魔力を付着させる。
 召喚用の目印である。
 昼間に召喚すると流石に気付かれるだろうが、誰も見てない夜中に召喚し、戻せば問題ない。
 …問題は戻し方である。
 一日毎に微妙にファイルの並び方が違っていれば、いつかは気付かれるだろう。


「ま、その辺の事は後で考えましょ…。
 取り敢えずコレとコレとコレ…あとコレも持って、一端退散…と」


 やっぱり魔力を使わず、ファイルごと隠行して部屋から出るイムニティ。
 幸にも、召喚陣は発見されていなかったようだ。
 壁に貼っていた召喚陣を剥がし、悠々と正面ゲートに向かう。

 万が一昼間の女…部屋にあったネームプレートで、ミランダと言う女だと知った…と鉢合わせしたら、さっさと空間転移で逃げる気である。

 正面ゲートに向かう途中、妙な圧迫感を感じるイムニティ。
 眉を潜め、判断に迷う。
 どうやら誰かと誰かが、激しく争っているらしい。
 殴り合っているのではなく、静かに闘志だか殺気だか威圧感だかをぶつけ合っているのだ。


(…どうする?
 このファイルを抱えたままで見に行く?
 …収穫は大きそうなんだけど、この気配はミランダとかいう女の…。
 どうやらあの女、前会長らしいわね。
 と言う事は、やり合っている相手は帰ってきた会長…レイミ・謝華?
 さっきの警備員も、2人が揉めているような事を言っていたし…)


 しばし黙考するイムニティ。
 使い魔を飛ばす?
 ノー、彼らは気配を消すほど器用ではない。
 隣の部屋から盗み聞き?
 昼間の二の舞になるだけだ。


「…もう少し近付きましょう。
 何とか聞こえる距離でなら、探知されても追いつかれずに逃げ切れるわ」


 妥協案である。
 イムニティは慎重に間合いを計りながら進む。
 途中で運良く警備員と遭遇したので、その隣で耳を澄ます。
 こうすれば、イムニティの気配と警備員の気配が混ざり合って気付かれにくい…かもしれない。


「……ら、我が謝華グループの取るべき指針は…」

「我が、とはよく言うわね。
 未だ私の足元……ない未熟者が」

「……であれば挑む、及ばなければ逃げる。
 そんな生き方をするよ……教育されてはいないわ」

「だからと言って、私が………する理由…」

「私………も知らないと…?
 奪われ……施設で何が……」

「証拠が…い…」

「そこに居……。
 ハイブリッ………。
 実験の成果を……結した、クローン人…。
 存在が……拠になる…」


「…?」


 途切れ途切れだが、とても重要な話だというのは解かる。
 その中に、一つ聞き逃せない言葉があった。

 クローン。

 イムニティとて、細かい理屈はともかくクローンの事は知っている。
 完全なクローンの生成技術が確立されていない事も。
 それに、そういう研究が倫理観に触れ、王宮から禁止されている事も。

 命を弄ぶような行為はイムニティも嫌いだが、技術探求そのものは否定していない。
 だが、実験というのがクリーンな物であるとはとても思えない。
 創り出されたクローン人間は、戸籍も無いし、その存在を知っているのは創り出した者達くらいだろう。
 つまり、人体実験には丁度いい素材になる。

 イムニティは奥歯を噛み締めた。
 久々に人類の醜い面に触れた気がする。
 だが、ここで殴りこんでも意味が無い。
 気配からするに、昼間にミランダと一緒に居た子供二人も居るらしい。
 あの攻撃力を考えると、普通の子供の筈が無い。
 ひょっとしたら、彼らこそが実験の成果を集めて創られたクローン人間なのだろうか。
 しかも、恐らく強化処理か何かを受けている。


「…これ以上の深入りは危険ね…。
 ……奪われた施設、と聞こえたけど…恐らくミランダが探しているモノはそれ…。
 クローン培養施設かしら?
 ………部屋に戻って、もう一度資料を漁ってみましょう」


 イムニティはその場を離れ、もう一度ミランダの部屋に向かった。
 特に発見される事なく、再び召喚陣で部屋に入り込む。
 壁に貼り付けた召喚陣は、丁度よく飾ってあった絵の裏側。
 カモフラージュもバッチリだ。


「さて、それらしき資料は…っと」


 本棚に一通り目を通すが、それらしき資料は見当たらない。
 当然と言えば当然か。
 そんな重要な情報を、こんな所に置いておく筈が無い。
 となると、何処かに隠し金庫か何かがあると考えられるが…。


「流石に探している時間は無いわね。
 そろそろ潮時か…。
 屋上から撤退しましょう」


 召喚陣から出て、イムニティは屋上に向かう。
 レイミ(多分)とミランダは、まだ口論しているらしい。
 下からヒートアップした気配が立ち上ってくる。
 これなら気付かれる事も無いだろう。


「さて…それじゃ、オヤスミ」


 続く内輪揉めに皮肉げな笑いを溢し、イムニティは宙へ舞った。
 一度王宮に戻り、クレアに報告せねばなるまい。

 どうやらミランダとレイミは対立しているようだし、付け入る隙はある筈だ。
 その辺りはクレアの手腕に期待するとして。


「帰ったら、あの同人誌を見せてもらわないとね」


10日目 昼 大河チーム


「…大分怪我人が増えましたね…」


「まぁな。
 だが正直な話、最初に想定しいた数値よりも遥かに軽度の損害だ。
 お前達のおかげだな…感謝する」


「い、いやそんな…」


 大河はドムに呼び出され、彼の執務室にやって来ていた。
 最近はユカに構いっきりだった大河だが、改めて見ると怪我人が多い。
 如何に大河が大暴れしようと、山一つ向こうの敵には刃は届かない。
 手の届かない所で、着々と怪我人・死人は増えるのだ。


「それで、何かあったのですか?」


「…俺を認めたら敬語にすればいい、とは言ったが…いざ言われてみると寒気がするな。
 まぁいいが…。

 例の極秘作戦の事だ」


「…いよいよ決行ですか?」


 大河の目が鋭くなる。
 ドムは黙って頷いた。
 流石に彼の顔にも緊張がある。
 だが、それ以上に闘志が燃え盛っていた。


「明後日に決行する。
 その下準備だが…大河、例の水だ」


「…どれほど造れば?」


「領民全てに配るからな…。
 近くの湖の水、全てを材料にするくらいの気でいてくれ。
 …出来るな?」


「…その湖の面積…いや体積は?」


 ドムは黙って地図の一点を指した。
 そこは少々遠い所にある、ここ一帯で最大の湖だった。
 それを全て神水に変えるとなると、随分な魔力が必要になるが…。


「…可能です。
 しかし、この湖を神水に変えたとして…どうやって持っていくんです?」


「地道に運ぶさ。
 何、魔法も使うから一昼夜もあれば充分な量が取り出せる。
 では、今から行くぞ」


「今から!?」


 えらく急である。
 いや、時間を考えればそれほどでもないか。

 ドムと大河は十数名の兵と10台の荷馬車を連れて、湖へ出発する。
 大河は汁婆に連絡して、非常時の足となってもらう事を約束した。

 ユカとセルは留守番だ。
 あまり戦力を割く訳には行かない。

 律儀にも見送りに来たセルとユカ。
 …セルは単に、ドム将軍に顔を覚えていてもらいたいと思っているのかもしれないが。


「それじゃ、行ってらっしゃい」


「お気をつけて!
 大河、ドム将軍に無礼を働くなよ?」


「解かってるっての。
 そんじゃ汁婆、一丁頼むぜ」


『ああ、何かあった時にだけな
 行き道は自分で歩けよ』


「拘るなぁ…」


「フッ、この俺でさえ乗れなかった汁婆に乗れるのだ。
 そのくらいは我慢するのだな」


 明らかに面白がっているドムに、大河は恨めしげな視線を向けた。


「じゃあ、ドム将軍は汁婆に乗りたいんですか?」


「さて、無駄話はこれくらいにしてそろそろ行くぞ。
 襲撃が無いうちにさっさと済ませる!」


 見事なスルーだ。
 この辺の呼吸も名将ゆえか。

 ジト目の大河と汁婆を他所に、ドムは馬車の御者に命令する。
 バカでかい桶を幾つも載せた馬車は、ガッタンゴットン言いながら進みだした。

 何処から取り出したのか、白いハンカチを振って見送るユカとセル。
 遅くても今日の夜には帰ってくるのだが。


「…あの、ドム将軍?
 ちょっとした疑問なんですけど、態々ドム将軍が付いてくる必要があったんですか?」


「いや、単なる興味本位だ。
 あの水がどう作られるのか、多少は興味があるのでな。
 …心配しなくても、自分から造ろうとは思わん。
 だが…得体の知れない水を飲むのは、お前とてイヤだろう?」


「その水を領民全てに渡すんでしょうが…」


「だからこそ、だ。
 上手く言いくるめるため、現場を見ておかねばな」


 ドムをジト目で見る大河。
 詭弁くさい。
 実はデスクワークに飽きたから、気晴らしについてきただけではないだろうか?
 仮にも名将と呼ばれる者が、とは思うが…大河の知っている名将は、どこか問題のある連中ばっかりなので一概には否定できない。
 ラウ・ル・ク○ーゼなんぞその典型だろう。
 指揮官が前線に出るなよ…。
 ……実は彼、世界に絶望する寸前にネットワークに拾われ、『体の治療』と称して改造を受けた。
 今では世界観を丸で無視した、仮面ライダー張りの変身ヒーローをやっているとの噂だが…まぁ、聞き逃してくださいお願いします書けと言われても時守は種を見てません俺にはムリっす。
 …更に恐ろしい噂として、仮面ライダー張りではなく、某制服月張りの変身ヒロイン(にゅーはーふ)という噂もあります。


 そのまま馬車に揺られる事2時間。
 ドム達は湖に到着した。


「さ、ここだ。
 製作にどれくらいかかる?」


「…計算が少々面倒臭いので、30分ほど…。
 造るの自体には大して時間はかかりません。
 それじゃ、俺は計算に集中するので…」


「わかった。
 ほれ、紙とペンだ」


「あ、どうも」


 紙と羽ペンを受け取り、大河は計算を始めた。
 ブツブツと呟き、時折湖を見ては数値に改変を加える。
 ドムは何を計算しているのか多少興味があったが、ここはグッと押さえ込む。
 今後もどの道、その計算を世間に出す事も利用する事もないのだ。
 見た所で仕方がない。
 …まぁ、見た所でドムにはサッパリ理解できない数式ばかりだったのだが。


「…この景色も見納めになるのか…」


 改めて湖を見渡すドム。
 広い。
 昔はこの湖が、海と大差ないように思えたものだ。

 この湖の水は全て神水に変えられ、持って行かれるだろう。
 そして民衆に手渡され、今度の作戦を乗り切る力となる。
 湖にしてみれば、たまったものではないだろう。
 自分の体を勝手に弄られ、挙句に切り取って持って行かれるようなものだ。

 だが、他に方法は無い。
 “破滅”を乗り切るためである。

 ドムは馬車から降りて、深々と頭を下げた。
 身勝手な感傷だとは解かっているが、せずには居られない。
 風が吹いた。

 後ろから大河が声をかける。


「ドム将軍、作戦に必要な日数はどれくらいですか?」


「む?
 …そうだな、神水が全員に行き渡っていれば、2日から3日と言ったところか。
 それがどうした?」


「いや、計算式に組み込むのに必要なんで。
 それじゃあ…そうだな、1週間もすれば普通の水になるように設定して…」


 また大河は計算に戻る。
 そろそろ30分である。
 もうすぐ計算が終わる頃かと見積もったドムは、連れてきた作業員達に準備をさせる。
 桶を馬車から下ろして、神水を汲む準備をするのだ。


「…これだけの量があれば、半日もあれば終わりますな」


「ああ。
 その間、何事もなければよいのだが…」


 前線からやや離れた場所に居るとは言え、魔物達が全く襲ってこないのではない。
 それに、前線の方が襲撃されている危険もあった。
 早めに終わらせるに越した事は無い。

 桶を片っ端から下ろしていると、大河が大きく声をあげる。


「よっし、計算完了!
 それじゃ作成します!」


「む、出来たか。
 皆のもの、もう少し下がれ」


 軽い足取りで湖に近付き、懐を探る大河。
 ドム達は遠巻きにその様子を見守っている。
 多分、大部分の兵達は何か派手なアクションを期待しているのだろう。
 こう、いきなり水柱や水竜巻が巻き起こったり、ヘンな光が乱舞したり、さもなくば湖全体がいきなり水蒸気爆発を起こすとか…。

 そう言った期待を露とも感じず、大河は懐から封筒を取り出した。
 言うまでもなく、アシュタロスの魔力塊が入った封筒だ。
 封筒を左手に、右手を湖に浸ける。
 意外と冷たい。


「それじゃ…。
 連結魔術、術式開始…。
 法則接続、エラー込みで異常なし…。
 前に使った術の数値変動をそのまま使用。
 不純物に対する適応化を優先…。
 寿命設定、1週間後に無条件で消失…。
 原住生物に対する影響を最小限に抑えよ。
 効果範囲は…湖全般、ただし流れ出る水路や湧き出る水脈には一切影響は無い…。
 変換後の魔力の分布率を一律に。
 …シミュレート、問題なし。
 連結開始!」


 大河が定めた法則に従って、アシュタロスの魔力塊から力が抜き取られていく。
 今までのように小規模な変換でないためか、大河の周囲に陽炎が揺らぎだす。
 変換が連続して起こり、局所的ながら世界の法則に影響を与えているのだ。

 一秒毎に陽炎の揺らぎは激しくなり、その範囲も湖に向けてどんどん広がっていく。
 ドム達は息を呑んでその光景を見詰めていた。
 魔力を操る者には、湖の内部にどんどん魔力が沸きあがっているのが見えている。
 勘の鋭い者には、既に圧迫感すら感じられるようになっていた。
 湖に注ぎ込まれた魔力の量は、それほどに多いのだ。

 そのまま4分ほど硬直していた大河。
 しかし、陽炎の揺らぎは唐突に治まった。


「…念の為に毒見……よし、問題ない。
 終わりましたー!」


「もうか?
 案外地味だったな…。
 まぁいい、総員汲み出しにかかれ!」


「「「「オイーッス」」」」


 ドムの号令により、作業員達が動き出す。
 ホースらしき物の先端が幾つも湖に投げ込まれ、もう一方の先端が桶の中に突っ込まれた。
 でっかいハンドルを回して暫く待つと、勢いよく神水となった湖の水が流れ込む。
 ドドドドドドド、と耳を打つ轟音。
 ずっとここに居たら、耳がバカになりそうだ。

 かなりの量を吸い上げているが、やはり湖の水はそう簡単には無くならない。
 それでも1つ、また1つと桶が満タンになり、蓋をされて再び馬車に積み込まれていく。
 結構な重さと大きさなので、屈強な作業員が5人ほど束になってようやく持ち上げられた。
 3つ程積み込むと、もう馬車がギシギシと悲鳴をあげ始める。


「む、この辺りが限界ですか…。
 ドム将軍、そろそろ次の馬車に移りましょう!」


「わかった。
 御者!
 その桶を駐留地に持って帰り、別の馬車で戻って来い!
 桶の積み下ろしは、向こうの作業員にやらせるのだ」


「了解しましたー!
 ああもう、これじゃスピード出せませんねぇ!?」


 苛立たしげな御者は、ドムに命令された通りに駐留地に向かって出発した。
 駐留地に着いたら、すぐに空の桶を載せた別の馬車で戻ってくるのだ。
 その際に、何か起こっていないか報告を聞いてくるのも任務である。


「同じく、そろそろ限界です!」


「よし行って来い。
 …それから、追加の馬車を向かわせろ」


「了解でさぁ!」


 瞬く間に次の馬車が送り出される。
 予想していたよりも、馬車の使用が激しい。
 少々少なく見積もりすぎたようだ。

 重い荷物を持って、馬車はゆっくりと進む。
 ただでさえ重いのに、護衛に兵士も何人か乗せているので馬としてもかなり重労働だ。

 暫くそれを見ていたドムだったが、変わり映えのない繰り返し作業に飽きたのか、作業員の中でも能力の高い一人に指揮権を押し付ける。
 そのまま連れてきた愛馬に乗り、大河と汁婆に話しかけた。


「私は一旦戻る。
 汁婆、お前の足なら駐留地までどれだけかかる?」


『スプリンターモードなら、10分もあればイけるぜ』


「…本当に足が速いな…。
 では大河、お前はここに残って護衛をしておけ」


「…必要っすかね?」


 疑問符をつける大河。
 最近では襲撃は前線ばかりだし、あまり必要にないように思えたのだ。
 しかし、最近大丈夫だからと言って今も大丈夫だとは限らない。
 特に、今は湖全体を神水に変えるという大技を行なった直後だ。
 その異常な魔力の高まりを察知されてもおかしくない。
 この神水は作戦の為に重要な役割を果たすし、何より敵に奪われたらヤバすぎる。

 そんな訳で、用心の為にドムは大河を残して戻って行った。
 残された大河と汁婆は、どうにもやる事が無い。
 作業を手伝おうにも…。



「えっさぁ!」

「ほいさぁ!」

「どっこいせぇ!」

「そいやっさぁ!」

「あ〜らよっと出前一丁〜!」

「ニシンが来たぞ〜!」

「大漁じゃぁ〜!」

「ファイト〜!」

「でっぱーつ!」

「キンッ! ニクゥ〜〜〜ッ!」

「や〜れい、ほ〜れい!」


 …異常にテンションの高い作業員の皆様方。
 何だか入って行けない雰囲気である。
 捻り鉢巻に袖まくりをしている方々も居る。
 これはもう作業と言うより、祭の雰囲気に近い。


「…なぁ汁婆、あの中に入って行きたいか?」


『いんや、寝転がって屁でもこいてる』


「…何もしないというのも、それはそれで申し訳ない気もするんだけどな」


 しかし、実際に作業員の方々の手は足りている。
 満タンになった桶を運び、戻ってきた馬車から空の桶を下ろし、ホースの先端を桶から桶に運び、さらに吸い上げる水量を調節するハンドルを回す。
 1人2役程度だが、よく動く。
 見習いたいくらいの勤労振りである。


「…アヴァター人は働きすぎじゃのぅ…」


『まぁ、“破滅”が来てるしな』


 これくらいは普通だろう。
 大河も無理に混ざろうとはせずに、汁婆と一緒に木陰に入る。
 魔物の気配は全く無い。
 湖の中の生き物が、異常に急成長する兆しも無い。
 平和なものである。
 ただ、作業員達のやたらと息が合った掛け声が異様な空間を作り出してはいたが…。


 それから暫くは何事も無かった。
 神水が満タンになった馬車が出発し、空の桶を積み込んだ馬車が戻ってくる。
 汁婆が時々屁をこき、大河がそれを避けて風上へ回る。
 相変わらず威勢のいい声をあげる作業員達。
 喉とか痛くならないのだろうか…。


 そんなのどかな光景を、一つの乱入者がブチ壊した。
 やけに急いでやって来た馬車から数人の兵が飛び降りるなり、叫んだのだ。


「本陣に敵襲!
 本陣に敵襲ーー!」


「「「「「
    !!!!
       」」」」」


 汁婆と大河は跳ね起きた。
 急ぎ駆け寄り、状況を確認する。
 作業員達も一旦作業の手を休め、兵士の周りに集まった。

 注意が自分達に集まっているのを確認して、声高らかに続ける兵士。


「現在、駐留地付近で奇襲を受けています!
 当真大河殿と汁婆殿は、急ぎ本陣へ戻ってください!
 作業員の方々は、そのまま続行!
 護衛兵の方々は、我々と共同して警護にあたります!
 満タンになった桶を移送していく際には、3人以上の護衛をつけてください!
 では、各自行動開始!」


 よく通る声で言い切ると、すぐさま動き出す。
 作業員は更に勢いを増し、護衛兵達は周囲を警戒する。

 大河と汁婆は、作業員の邪魔にならない所まで離れる。


「汁婆、行くぞ!」


『オウよ!』


 既にスプリンターモードになっている汁婆に、大河が飛び乗る。
 豪快な鬣を掴み、背中に足を乗せて腰で重心を調節した。


「3、2、1!」


『GO!』


 汁婆のフリップが跳ね上がったと思うと、爆音のような足音を立てて汁婆の体が急加速。
 初速からトップスピードに乗った。
 空気抵抗にブチ当たり、大河の顔がやや平べったく広がった。
 それでも大河は手を離さない。
 それが当然と言わんばかりに、汁婆はガンガン飛ばす。

 岩を飛び越え森を突っ切り河を水上歩行し、馬車で2時間かかった道を瞬く間に制覇していく。
 …森の中に突っ込んだ際に、大河は枝のおかげで少々痛い目を見たが…些細な事だ。

 本当に10分程度で、駐留地まで到着してしまう。


『着いたぜ』


「ぬ、ぬぅ…なんか顔が普段と違った形になっているよーな気がするんじゃが…」


『ああ、風圧による引き締め効果で、いくらか引き締まった顔になってるじゃねぇか』


 ブツブツ言いながらも、大河はドムを探す。
 恐らく、ユカとセルは既に前線で戦っているだろう。
 合流するにせよ近場の敵を掃討するにせよ、彼の指示を仰がねばならない。

 ドムの姿を探すのは簡単だった。
 士気が高い場所を探せば直ぐに見つかる。
 彼が直接指揮を取っているせいか、ドムの近くを固める兵達は常に士気が高い。
 異様な盛り上がりというか、熱が発散されているのだ。

 兵士達の間を擦り抜け、大河はドムに接近する。
 少々怪しまれたが、ここ数日で大河の顔は知れている。


「ドム将軍!」


「む?
 大河と汁婆か。
 思ったより早かったな。

 早速で悪いが、一働きしてもらうぞ」


「解かった。
 ユカ・セルと合流ですか?」


「いや、今は別々に戦ってもらう。
 この布陣図を見ろ」


 大河はドムに手渡された地図を見る。
 そこには幾つかの記号と注釈が書き込まれていた。
 ドム自身には、こういう物はあまり必要ない。
 全て頭に入っているからだ。


「合戦記録ですか…?」


「面倒と言えば面倒だが、これも作法だしな。
 さて、我々はここ、敵の本隊はコレだ。
 タケウチ殿はこっちの小隊を、セルビウムはこの小隊を相手にしている。
 無論、兵士達と供にだがな」


 次々と指差されて多少混乱したが、地図の見方が解かると大体の予測がついた。
 ユカとセルの小隊は、少しばかり自分達とは離れた場所にある。

 2人が居る小隊の丁度真ん中付近に、少し大きめの記号が書かれていた。
 これが敵の本隊である。


「この本隊をもう少し誘い込み、この渓谷で足止めして一気に矢を射掛ける。
 お前がこの渓谷で暴れると、ヘタをすると土砂崩れが起きるから…汁婆と供に、敵本隊の後方に回り込んで追い立ててくれ。
 何なら火計を使っても構わん。
 この辺りには、燃え広がるような物はないからな」


「…そしてユカとセルが所属する小隊も機を見て渓谷へ向けて転進し、上手く離脱して一網打尽、ですか…。
 了解しました。

 汁婆、もう一丁頼む!」


『オウ!』


 ドムから指示を貰った一人と一匹は、兵士達が空けた道を進む。
 再びスプリンターモードの汁婆は、砂煙を巻き起こして走って行った。
 そして残されたのは。


「「「 ゲホッ、ゲホ… 」」」


 砂煙に咳き込むドム達だったそうな。




ちゃーす、時守です。
最近ゲーム作りが妙に楽しくて、ゲームする暇もありません。
バルドフォースがああぁぁ!
むぅ、一日一章くらいのペースで進めるか…?
しかし、こうもリズムに乗れる事はまず無いしなぁ…。
いやでも、幻想砕きのネタにもなるだろうし…。

それではレス返しです!


1.イスピン様
元が魔神の力ですからねぇ。
それくらいは出来るでしょう…。

むぅ、未亜はやはりこのままではいけませんね。
せめて、もう少し自分で制御できるようになってもらわないと…。
いつか時守の手にも負えなくなりそうでコワイです。

時守としても、誰も死なずに…がいいのですが、人が死なない戦争というのも…。
名前のあるキャラクターだけじゃなくて、背景キャラもなかなか殺せないんですよ…。


2.アレス=アンバー様
ユカを押し倒すのはいいですけど、その後の事が…。
何せ前回以上のS未亜を発動させて、大河にオシオキをさせねばなりませんw

食堂のシーン…やっぱり摩り下ろしはヤバイ…。
考えるだけでイタい…。

ピコピコ鳴く犬…ああ、芋ですか。


3.くろこげ様
はっはっは、何を今更w


4.皇 翠輝様
大河の心境としては、砂漠のド真ん中でオアシスがあるのに飛び込めない、と言った所でしょうか。
…未亜はアレでおkすか…。
まぁ、浮気云々は置いておいても、完全に強姦ですからね…。
重罪だ。


5.ギャラリーフェイク様
世の中には過剰防衛という言葉もありますからねぇ。

未亜の行動はともかくとしても、王家は独裁者にはなれないんですよ。
謝華グループは各方面に強い影響力を持っていますし、王家としても無視できるものではありません。
後の事なんぞ考えずに確実に勝つため、と称しても、強引に搾取すれば謝華グループから見れば山賊行為を受けるのと大差ありません。
ヘタに突付くと、全力で反撃してきます。
その辺のボーダーラインが厄介なんですね。
利敵行為と言われると返しようもありませんが…まぁ、王宮にはそこまでの力が無いと言う事です。
銀行を怒らせると怖いのと同じで、命令一つじゃ謝華グループは従わないのですよ。
ま、その辺もこれから変動すると言う事で…。


6.邪忌埋様
分かる人が一人居てくれただけでも幸いですw
時守も、随分前にちょっとやった事があるだけですからねー。


7.カミヤ様
レズレズサディストモードがぶっ通しで全開の未亜っすか…。
これは書く方にとっても、テンション維持が大変ですなぁ…。


8.スケベビッチ様
とうとうタガが外れてしまったようですし…。
これからはSがもっと大っぴらになる可能性が…。
いや、それは全部レイミに向かうかも?


9.根無し草様
レイミは公式設定じゃ処女って話ですからねぇ。
未亜を相手にするなんて、ゾーマにレベル一桁の遊び人が殴りかかるよーなもんで。

思った時には既に行動が終わっている。
とすると、私はもうとっくにしっと団!?
しっとの心は! 父心! 押せば命の! 泉湧く!
…ヤバイ、ちょっと楽しくてスッキリしてしまった。

改造機能は、ギャグじゃなくてエロの方かも…。


10.無瞑様
肝に銘じておきます…。
前にも同じ指摘を受けましたし。

ですが、時守的にはS未亜は…そう、ガンパレで言うとソックスハンター的な位置付けになります。
ある意味ではこっちがメインストーリーとの説もあり…。
なので、多分なくなる事はないと思います。
まぁ、これから暫くは強烈なSもレズも発動しないと思います。
ユカと会っても、ちょっと色々と考えて貰わねばならないので…。
穏やか…と言えるかどうかは疑問ですが、未亜にももうちょっと性格の変化を来たしてもらう予定です。


11.kasumi様
あ、やっぱり引きましたか…。
一応彼女にも倫理観はあるんですが、言ってみれば「大金を前にした美神令子」…ダメぢゃん。
ギャグも交えてますが、正直許される範囲かは微妙です…。
レズS未亜自体がギャグですから、シリアスに向けては発動しないでしょう。

どうせ喰われるにしても、一波乱おこしてほしいですね、ユカには。


12.謎様
実際自覚してますし、アレは一種の2重人格ですからねぇ…。
この際だから、ユカには徹底して狙った行動を取ってもらおうと思います。


13.文駆様
某SO3では、MPが0になっても死亡扱いですぜw
実際そんなアイテムがあったような…。

うーむ、まだ許容範囲ですか…。
ギリギリ境界線が狙い目なのですが、まだまだ時守は甘いです。
恐怖を感じさせつつ不快感を与えない、というのが最終目標ですな。

生き死にに関しては確かに仰る通りですが、人が全く死なない戦争というのもおかしい気がして…。
モビルドールで戦争をやっても、人は痛みを感じないってヤツでしょうか。
生き返りに関しては、時守的には微妙です。
生き返るのにも相応の理由があればOK。
安易な奇跡はあきまへん。


14.なまけもの様
うーむ、アシュ様の魔力を活用するネタが無いんですよね…。
今のように神水を作るか、炎とかに変換するとか、物理的な衝撃に変えるとか…。
連結魔術を使わずに封筒の外に出すと、何が起きるか分かりませんし。

履き古したニーソで興奮するあなたには、ソックスナマケの称号を送りたい!

S未亜に関しては、行動に正当性(?)があれば大抵の事は許容、と言う事でしょうか?
まぁ、報復も正当っちゃ正当なのか…。
つまり、現在の恐怖の上に正論で武装させれば、冗談抜きで無敵と言う事でしょーか。

>未亜の調教
レイミと会える機会が少ないから、余計に激しくねw


15.カシス・ユウ・シンクレア様
明らかに犯罪だと思いますがw
正当防衛でも、殺人は殺人ですし。

セルが大河達に付いていくのも、そろそろ限界っぽいです。
ユカと同等の実力を持っいるといえば、まず救世主クラス、それから半歩下がってレイミ、ドム。
ギリギリミュリエルが並ぶかどうか、と言った所ですね。
で、次点でタイラーの部隊…かな。
あと、名前も出てないのがチラホラと。

ドムは既に提督です。
幻想砕きの中では、将軍って事になってますが…時守は階級にはあまり詳しくないので。
たしか真タイラーに一覧表が乗ってたなぁ…。

死ぬべき所で死なせないというのも、結構問題があるのですよ。
どっかのスーパーコーディネーターが瞬間移動能力者だと噂になるよーな感じで。
時守は見てませんが。


16.流星様
ビールはまずいよね、ビールは…。
直腸からダイレクトに吸収したら、酔っ払うのが早く(殴
…失礼。

カービィは吸い込んで、吐き出す…。
……イソギンチャクは、イソギンチャクはな…飯を食うところと、いらなくなった物を吐き出す穴が…言えねー!


17.15様
お初ですw
精神病院と違うなら……オトナのクラブ?
まぁ、通院暦があるのと人としてイカレてるのは違いますからね。

東京の空は狭かったが…当分出る事はなさそうです。
地下を歩いていると、方向感覚まで消えるんですよね…。
太陽が見えないのが痛い…。


18.アルカンシェル様
さすがに詳細を語る度胸を持ちません…。

しかし、その気になれば未亜はさっさと抜け出せてましたよ?
大儀名分を造るのに、敢えて大人しくしてただけ…。
レイミが襲ったのも、ある意味罠にハマったのかも…(汗)

関東軍に比べりゃ、確かに未亜はずっとマシですね。
エロを書くのは、普通に話を2本書くよりエネルギーを消費するんです…。
唯でさえエネルギー持続が必要な長編で、エロはキツイっす。

>バファリン
優しいだけじゃ生きていけない、ですよ…。


19.竜神帝様
まだ大丈夫、ですか…。
懐の深いお方だ…w


20.YY44様
むぅ、大河との絡みは冗談抜きで先になりそうです。
今、タイラーの作戦の辺りを書いているのですが…もう話が進まない進まない…。
時間軸とかメチャクチャになってしまいました。

ハリモグラ…ど、何処に針が!?


21.神〔SIN〕様
おお、ついにレスが長編になったか!?
今更といえば今更ですがw

未亜はまだ正常だったのか…どっちかと言うと性情と言った方が正確な気もしますけど、
アレですか、性癖が人として間違ってるだけで、精神に異常を来たしてる訳じゃないんですね。
一番厄介な状態だ…(汗)

蹴る・殴る・コーラを飲むの3連嬲りを受けて、必死に映像を写すTVに乾杯!

破瓜の権化…なんてピッタリな!
本気で大河のキャッチフレーズにしていいですかw

未亜さーん、テロもハーレムもいいですけど、それだけ養える経済力が必須条件ですぜー?
全員を満足させる精力とか技巧とかは…心配してませんが。

結野アナが掻っ攫われても動じないキャスに拍手。


……あれ?
N○Kのチャンネルつけたら、なんかAV流れてんですけど…。
しかもSMのレズ物………ってこ、これはぁ!?
未亜さんがハメ撮りしてらっしゃる!?
いやハメてはないけど、公共の電波にバイブでヤってるトコ流してらっしゃる!?
電波ジャック!?
これも一種の露出プレイか?
ああ、もう八割がた結野アナが陥落しておられる…。
何?

「お兄ちゃん、オモチャが沢山あるから遊びにおいでよ。
 あと、性的に欲求不満な10〜30代の女性大歓迎♪
 レイミ〜、警察とかが余計な事しないように圧力かけといてね〜」

「大河の旦那ァ、共犯者扱い覚悟でも来なけりゃ未亜ちゃんがキレますぜ。
 俺としては、大河の旦那がヤられてもどうでもいいんですが」

…まぁ、イってこい大河。
どうせ警察も機動隊も軍隊も、アレに逆らおうなんて度胸は持ってないから…。


22.ナイトメア様
うーむ、こうして考えるとえらい経過を辿ってきてますね。
原作? なにソレ?って感じで。

クラスチェンジは…ブラパピはどーなってるんでしょう?
聖剣伝説3じゃ、2段階目のクラスチェンジにアイテムが必要だったなぁ…。
リリィとミュリエルはケモノミミだとして、他は…同人誌に、試験管に、カツラに、アルディアの写真、そして…未亜には…SMセット?

ルビナスに改造させると、最終的にはメカ翡翠並みの大軍勢を形成しそうな気が…。


23.舞ーエンジェル様
書いていて今更気付いたのですが、シェザルのヘンタイっぷりが弱いです。
色々と期待されている身としては、もう一段階パワーアップをさせないと…。
うむ、アレを埋め込んで狂乱させてみよう。

残念ながら(本当に、本当に残念ながら!)ユカとのエロは洒落にならん程に先です。
救世主クラスと合流後、ユカとクラスメートの間に一波乱ありそうだし、そこから更に話がややこしく…。
今の内から書いておこうかなぁ…この分だと、ユカのエロはそれこそ丸一話使わないと皆さん納得してくれそうにないし…。

見た感じ、シェザルの戦い方は暗殺者っぽいと思うのですが…。
暗殺者が重火器なんぞ使うかなぁ…。
アレですね、ドラゴンボールのゲームでミスターサタンが出てますが…彼、プレゼント爆弾とかバズーカとか色々使って戦うのですよ、健気にw
どうもキャラが被りそうな気が…そーだ、シェザルをヘタレにすると言う手もあるか。

むぅ、まだ弱いな…壊れ方が。

24.なな月様
いやいや、ゼンジー先生ほど強烈なのは早々…居ない…と…心当たりが幾つか居るな…。

色事マジモードの未亜にも、大河は辛うじて勝てます…今はまだ。
あと、ネコりりぃとかが別の意味で勝てることも…。

ミランダに関しては、私も似たよーな感想をちょっと(バキッ)
失礼、歳甲斐もなく…ワタシハナニモイッテマセン。
…いつか未亜が女王様対決しそうです…、


25.米田鷹雄(管理人)様
いつもお仕事ご苦労様です<m(__)m>

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