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▽レス始

「永遠の煩悩者 第二話(GS+永遠のアセリア)」

ふむふむ (2006-06-19 01:18/2006-06-20 23:33)
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目が覚めると、そこに知らない天井が見えた。

「知らない天井だ……」

某三番目の子供のようなことを言い出す横島。

「まあ、『お約束』は重要だからな」

いったい誰に喋っているのだろう……


永遠の煩悩者 第二話
「スピリット」


横島は改めて自分の状態を確認していた。魔法陣によって見知らぬ土地に飛ばされたこと、謎の女との戦闘、『天秤』と名乗る日本刀を振るって意識を失ったこと、そしてベッドに寝かせられていた自分の状況。これらから判断すると……

(力を使い果たして意識を失った後、誰かに助けられたんだろうな。)

ちなみに『天秤』と名乗った剣は自分の内に存在すると感覚的に理解していた。自分の状況を確認したあと、これからどうなるかについて考え始める。

(きっと美人の姉ちゃんが助けてくれたんやろーなー、そして看病生活が始まって……ぐふふふふ!!)

なにを考えているのか一発で分かりそうな顔をして怪しげな笑顔を浮かべる横島。しかし、完全に馬鹿なことでもない。妄想によって煩悩パワーをあげて霊力を回復させているのだ。

コンコン

突然ドアがノックされ、扉が開く。横島は美人の姉ちゃんがやってきたのかと目を向けるとそこには可愛い女の子がいた――――――ただし横島のストライクゾーンからはかなり低めだったが……

「ラスト、ソロノーハティン、ヤァ、ウズカァ、ソゥ、ラハテ・レナ」

やはり聞いた事のない言葉で喋ってくる。そして困った顔でこちらを見ていた。どうやら向こうも言葉が通じないのが分かっているようだ。

(『翻』・『訳』の文珠を使うしかないか……)

この文珠を使うと残りの文珠の数が三つになってしまうが言葉が通じなければ文字どうり話にならない。こっそりと『翻』・『訳』の文珠を発動させる。

「どうしよう、やっぱりエスペリアが言ってたように言葉が通じないんだ……」

困った感じの声が聞こえてきた。改めて見てみると、年は11歳ほど、日本人ではありえないような美しい青髪、髪型はポニーテールで非常に快活な空気をだしている。ロリコンではない横島だがやはり可愛いと感じていた。

「大丈夫だよ、今ならちゃんと言葉は通じるから」

妙に好青年な声を横島が出す。普段の彼を知るものなら気持ち悪いの一言だろう。

「あっ……本当だ!やった、これでたくさんお話ができるね!」

ぴょんぴょん跳ねて本当に嬉しそうだ。横島としても今どこにいるのか早く知りたかったので、会話は望むところだった。もっともここがどこなのか薄々は気づいているのだが……
「まず自己紹介すると、俺の名前は横島忠夫っていうんだ。好きなように呼んでくれ」

「ネリーはネリー・ブルースピリットっていうの。とっても『くーる』な女なんだから」

横島にはネリーのどこら辺が『くーる』な女なのかさっぱり分からなかったが、突っ込むと五月蝿くなりそうなのでそのまま流す。

「まず聞きたいんだけど、ここはどこなんだ?」

「えーとね、ここはラキオス王国の第二詰め所だよ」

第二詰め所というのは今自分がいるところなのだろうが、ラキオス王国なんて国は聞いたことはなかった。横島はますます自分の考えが当たっているのではないかと思い始める。その考えを確かめるための質問をした。

「君たちは自分たちの世界をどう呼んでいるんだ?」

「う〜ん……ネリーたちの世界に名前なんてないけど……ただオルファがカオリ様に聞いたらしいんだけど、ファンタズマゴリアって言ってたらしいけど……」

「そのカオリ様っていうのは?」

「ヨコシマ様がいたハイペリアから来たエトランジェ様だよ」

横島は自分の考えが当たった事を確信した。この世界は自分たちがいた世界とは違う異世界だと。霊力をまったく感じないのも、『天秤』と名乗った妙な剣も、そして自分の体に流れる霊力とは異なる力も異世界だからこそなのだろう。

「なあ、この世界には異なる世界の人間を呼び出す召喚術みたいなものはあるのか?」

「ううん、そんなの聞いたことないよ」

横島はこの世界に来る前、間違いなく何者かによって召喚された。この世界の誰かがやったのか、それとも別の世界の誰がかがやったのか。だとしたらその目的は……
考えることが多く、横島も悩んでいる。だが、横島はやはり常人とはどこかずれていた。

(普通は異世界召喚といえば呪文とか契約とかで言葉には困るもんじゃねーだろ!どうやら『お約束』を分かってないな。現実的かもしれんが話すことができないのは致命的だぞ。まったく書くほうの身にでもなって……)

いったいどこの世界の『お約束』のことを言っているのだろう。さらに考えていることもぎりぎりで原作なら雷が落ちているところだ。

「ヨコシマ様ーーー!聞いてるのーーー!」

考え事が長すぎたのかネリーが大声をあげる。

「悪い、ちょっとぼーっとしてたみたいだ。あとこの世界の人間は翼を生やしたり、手から炎を出したりするのは普通なのか」

「人間にはできないよ、だけどスピリットならできるんだ」

「そのスピリットというのは「バタン!!」なんだ?」

ドアのほうを見ると青い髪でおかっぱ頭の少女と緑色の髪のスタイル抜群でニコニコしたお姉さんが立っていた。

「ネリー酷いよ〜エトランジェ様が起きたらいっしょにお話しよ〜っていったのに〜」

「ごめん!つい話し込んじゃって……あとでシアーの好きなお菓子あげるから」

「……えへへ〜〜」

横島の目の前で二人の少女がなにやら話しているがまったく耳に入ってこない。横島は今、ドアの前にいるお姉さんを凝視することに力の全てを費やしていた。

胸――――――特大
尻――――――安産型
フトモモ―――なでなでしたい
顔――――――癒し系お姉さん万歳!!


ルパンダイブ発動!!


「生まれる前から愛してましたーーー!!!」

次の瞬間、横島は飛んだ。空中でGジャンとGパンを一瞬で脱ぎ捨て、パンツ一丁で目の前のお姉さんに向かっていく。目の前のお姉さんは「あらあら〜どうしましょう〜〜」とニコニコと笑っていた。いける!横島はそう思ったが世の中はそんなに甘くはない。突然お姉さんの前に炎の壁が生まれたのだ。

「アッチーーー!!」

炎の壁に突撃した横島は第一話で言った悲鳴とまったく同じ悲鳴をあげる。

「わわ!ヨコシマ様!いま冷やしてあげるからね。シアー、アイスバニッシャー!『静寂』力を!」

「う・うん!『孤独』私に力を」

立てかけてあった剣を取ると、呪文の詠唱のような言葉を言い出す。

「「マナよ氷となりて力を無に!アイスバニッシャー!!」」

熱がっている横島に冷気が集まっていく。冷気は横島を包み込み火を消し、横島を凍結させる。

「つめてーーーーー!!!」

「「ああ!!」」

いったいなにをやっているのだろう……


「あらあら〜どうしたんですヒミカ〜『赤光』なんて持って〜」

「どうしたじゃないわよハリオン!いったい彼はだれ!この騒ぎはなに!」

ヒミカといわれた女性はなにがなんだか分かっていないようだった。彼女が第二詰め所に帰ってくると、なぜか『神剣』の気配が一ヶ所に固まっていた。しかもその中に感じたことのない『神剣』の存在を感じたのだ。何事かと行ってみれば同僚にして戦友のハリオンがパンツ一丁の男に飛び掛かられているではないか!咄嗟に炎の障壁を張ってハリオンを守ったと思えば燃え上がっている男にアイスバニッシャーを仕掛けて凍らせるネリーとシアー。まったく状況がつかめないヒミカにハリオンがのんびり〜とした口調で説明する。

「え〜と彼はファーレーンさんが見つけてきた〜新しいエトランジェ様で〜先ほど私に飛び掛ってきたのは、きっとお姉さんの魅力にくらくらになちゃったんですよ〜」

後半の説明はともかく、前半の新しいエトランジュ様の所でヒミカの顔が真っ青になる。いくらエトランジェといっても何の防御もせずに炎と氷をくらえば―――――しかもパンツ一丁で……

「ハリオン!なにをやっているの!早く回復魔法をかけ「あーーー死ぬかと思った」

「「「きゃあーーー!!!」」」
「あらあら〜〜」


伝家の宝刀が炸裂した……


「そ、それでエトランジェ様……体のほうは大丈夫なのですか?……」

恐る恐るといった感じでヒミカが言う。確かに燃やされ、凍結させられたはずなのに火傷も凍傷もなかった。『神剣』を使った気配がないにもかかわらず、傷ひとつないのだから恐れないほうがおかしいだろう。

「ああ、大丈夫だよ。むしろ体の調子が良くなったみたいだ」

横島は丸一日セクハラができなくて、霊力があまり回復していなかったのだ。そこにスタイル抜群のお姉さんキャラの登場により、文珠を一個ぐらいなら作れるほど霊力が回復していた。

「そ、そうですか……」

ヒミカはここで会話を切る。これ以上話し続けたら知りたくない知識を得そうだったからだ。


「この部屋は狭いので〜居間のほうに行きましょうか〜」

確かにこの部屋で五人は狭い。誰にも異存はなかった。


―第二詰め所 居間―

そこは八人ぐらいはゆっくりできそうなスペースあり、木造の家具が並んでいる。横島はイスに座り、話をする体勢をとった。

「まず〜自己紹介からですね〜。私はハリオン・グリーンスピリットといいます〜」

「私はヒミカ・レッドスピリットと言います。よろしくお願いします、エトランジュ様」

のんびりとした動きと性格のハリオン、きびきびとした動きと生真面目そうな性格のヒミカ。正反対の二人だが仲はよさそうである……ちなみにスタイルも正反対だ。

(ルシオラとおなじくらいかな?)

いきなり失礼なことを考える横島。ヒミカの容姿は赤髪のショートカットで少年のような顔立ちをしている。胸については……微乳好きには喜ばれそうだ。

「ほら!シアーも自己紹介!」

「うん……シアー・ブルースピリットなの」

「二人は姉妹なんですよ〜」

ネリーが姉でシアーが妹のようだ。快活で元気なネリーと内気でおとなしそうなシアー、かなり仲は良さそうだ。

(シアーのほうが胸あるんだなーってちがーーーーう!!)

セクハラ小僧の本能なのか、子供の胸の大きさを確かめてしまった横島は内心で絶叫する。まさかそんなことを考えているとはヒミカは夢にも思ってない、

「それで、エトランジェ様のお名前は?」

ヒミカが問いかけるが、自分の世界に入ってしまった横島には聞こえない。

「俺はロリコンじゃない、ロリコンじゃない」

「ロリコン様ですか?」

「ちがーーーう!俺の名前は横島忠夫!ぴちぴちの18才だ!」

自分の人格、いや今までの人生を全て否定されそうになった横島はあわてて否定する。

「ヨ、ヨコシマ様ですね?」

さっきから不審な行動が目立ち、怪しさ全開の横島に引き気味のヒミカだったが、歴戦の戦士としてひるむわけにはいかなかった。

「それで他に質問はありますか?」

ようやく落ち着いた横島はさっきネリーに聞こうと思っていた質問をする。

「マナやスピリット、あとエトランジェについて聞きたいんだけど……」

「はい、マナというのは……」


説明中


「ふーん……だいたい分かったよ」

必要なことを聞き終えた横島はどこか怒りを抑えた声で返事をする。まとめるとこういうことらしい。この世界はマナというもので構成され、マナをエーテルの変えてエネルギーとして使用している。エーテルは使用するとマナに変わるので正に無限エネルギーといえる。しかし、マナそのものは有限なのだ。マナを得ることは国を豊かにすることにつながり、マナは空間に固定されたエネルギー……つまり領土を増やす以外にマナを増やす方法はないのだ。ということは……

「ヒミカさん、このラキオス王国では戦争をしているのか?」

「ヒミカで結構ですよヨコシマ様。今現在のところラキオス王国は戦争状態になってはいませんが……」

「いつなってもおかしくない状況ってわけだ」

「……はい」

有限の燃料を求めて戦争する。横島がいた世界でもあったことだ。戦争云々については納得できた。昨日の夜の戦闘もそれで説明がつく。だが横島はどうしても納得できないことがあった。

「ヒミカ、もう一度スピリットについて説明してくれないか」

「はい、分かりました。スピリットについて説明します。スピリットは永遠神剣と共にどこからか生まれてくる女性型の生命で赤、青、緑、黒の四種類がいます。スピリットは妖精とも呼ばれ、生まれると人の道具として国の兵器となり、国の重要財産として「ふざけるな!!」

突然横島が大声を出す。その声には隠しようもない怒りが込められていた。四人のスピリットはいきなりにことで目を白黒させる。

「どうしたんですか?ヨコシマ様……」

「どうしたもこうしたもあるか!自分たちを兵器とか道具とかいうもんじゃねーよ!」

「いったいどうして怒っているのですか?」

ヒミカの言葉を聞いてヨコシマは怒りよりも悲しみの感情のほうが大きくなる。自分を兵器と言うことに疑問にすら思えないのかと……

「ヨコシマ様ーどうして怒ってるのー?」

ネリーが心配そうに横島を見上げてくる。横島はネリーの頭を優しくなでる。

「ネリー、兵器はお話しようとしたり、人を心配したりすることはないんだよ」

横島の声はいままで聞いたことがないくらいやさしい声だった。その言葉を理解できたのか、ネリーは目を細め気持ち良さそうに頭をなでられていた。ふと見るといつの間にか近づいたシアーが不安そうな表情で頭をこちらに向けていた。横島はやさしく笑うとシアーの頭もなではじめる。髪に触れた瞬間、ビクッと反応するがなでられはじめると非常に安らいだ顔になる。その様子を見ていたハリオンは本当にうれしそうにニコニコと笑い、ヒミカは複雑そうに見ていた。
やさしげな空気が流れていたがその時間は長くは続かなかった。

バタンというドアを開ける音が聞こえると数人の兵士と見られる男たちが入ってきたからだ。

「エトランジェは起きているか!起きているのならすぐに王宮に参上しろ」

エトランジェとは来訪者を意味していて、横島がそれに該当する。

「ちょっとまってよ!エトランジェ様はおきたばっかりなんだよ!」

ネリーが抗議の声をあげる。

「人に抗議するのかぁ!妖精ごときが!」

その声にはスピリットと呼ばれる存在に抗議されたという屈辱と怒りに満ちていた。兵士は横島を見ると明らかに侮蔑の表情を浮かべる。

「起きているのならさっさとこい!それとさっき人間に抗議したスピリットもだ!」

もうここには居たくないとばかりに去っていく兵士たち。あまりに突然で唐突な召集にスピリットたちは少し混乱しているようだ。

だが横島は特にあせった様子はなく、笑みまで浮かべていた。

「なあ、ネリー王宮に案内してくれないか?」

「うん……」

その声には力がなく、悲しげな声で返事をするネリー。その様子を見ながら横島はネリーに感謝の言葉を言う。

「ありがとな、俺のために怒ってくれて」

「!!……うん!!」

あっさりと元気を取り戻すネリーを見ながら横島はある決心をしていた。


王宮に向かおうとする横島たちにハリオンがのんびりとしたそれでいて心配そうな声で横島たちに声をかけてきた。

「無理をしたら〜いけませんよ〜」

横島がこれからなにをしようとしているのか、分かっているかのようだった。

「だいじょぶっすよ」

笑いながら返事をする横島だが目は胸を凝視していた。

「あまりそんなとこばっかり見たら〜、めっめっておこちゃいますよ〜」

口調はまったく怒ってないが、実際は怒っているのかもしれない。

「すんません!……それじゃーいってきます」

ネリーに手を引かれて横島は王宮に向かった。


―王宮―

王宮に着くとネリーと引き離され、王座の間に案内される横島。王座には派手な装飾をした初老ぐらいで体格のよい老人と美しい黒髪の女性がいる。位置からすると国王と王女だろう。

「よく来た、エトランジェよ」

「別に来たくてきたわけじゃないんだがな……いや目的はあったか」

相手が王族でも敬語をまったく使わない横島。彼からすればこんな爺さんに敬語を使う必要はまったくない。

「ふん、エトランジュは口の利き方も分からんようだな。だが喋れるならばそれでいい、報告によればお前の神剣は体内に隠してある聞いている。ここで神剣を出してみせよ」

「いやじゃ!なんで俺がじいさんの頼みを聞かないといけないんじゃ!」

あまりにも無礼な言葉に側近がいきりたつ。だが、ラキオス王はそれを聞いて歪んだ笑いを見せた。

「なら出させるようにするしかないな。スピリットをここに!」

すると横から小さな体の少女が歩いてくる。ネリーだった。手には神剣を持ち、目は泣いたのか真っ赤だった。

「やれ」

ラキオス王の言葉を聞き、体を振るわせるネリーだったが、泣きそうな顔で横島に突撃してきた。

「栄光の手!」

咄嗟に反応して霊波刀を形成してネリーの神剣『静寂』を受け止める。

「あれがエトランジェの神剣か?」

「いえ……報告とは形状が違います」

玉座から好き勝手な声が聞こえてくるがそれを気にしている余裕はない。

「ネリーいったいどうしたって言うんだ!」

「ごめんなさい、ヨコシマ様……でもネリーが戦わないとシアーが!」

この言葉で横島は、なぜネリーが戦っているか理解した。あの王はネリーの妹であるシアーを人質にしているのだ。

(あ、あのクソ王!!)

ラキオス王を睨みつけるが、ラキオス王は歪んだ笑いを見せるだけだった。ただ、王の後ろで自分の父親を睨みつけている王女が印象に残った。

「どうした、水の妖精……姉であるお前がその程度ということは妹はさぞ役に立たないのだろうな……はははははは!!!」

その言葉でネリーの顔色が変わる。実はネリーは本気で戦ってはいなかった。しかし、このまま弱いなどということになれば自分だけでなく妹のシアーが処刑されてしまう。

「『静寂』力を!……はぁーーーーーー!!!!」

ネリーは光の翼……ウィング・ハイロゥをだして空中に飛ぶと、そのまま一気に切りかかってくる。

「く、やっぱり早い!!」

横島は運動神経や反射神経なら人間の中でもトップクラスだ。本人も反射神経ならだれにも負けないんじゃないかと密かに自負していたが、いま戦っている少女には勝てる気がしない。スピリットといくら霊力を使えても人間では基本能力に差がありすぎるのだ。横島が負けないのはネリーが実戦経験したことがなくて、横島は実戦経験が異常に豊富だからに過ぎない。横島はネリーの剣筋を予想し、サイキック・ソーサーその部分に持ってくることで何とか対処してたが、サイキック・ソーサーにも限界が来る。

パキン!

乾いた音がしてサイキック・ソーサーが砕け散る。さらにネリーはその隙をついて切りつけてくる。

「っ!サイキック猫だまし!!」

「きゃっ」

一時的に視界をふさぎ、距離を開ける。文珠を使えばどうにかできそうだが、確実にネリーを傷ひとつなく捕らえることができるかわからない。

(仕方ないか……)

できれば頼りたくないがしょうがない。横島は自分の内にいる存在に声をかける。

(おい『天秤』、見ているんだろ)

『ああ、主よ見ているぞ』

(お前の力が借りたい……頼めるか?)

『問われるまでもない。私は主のパートナーなのだからな』

どこか、白々しい声で答える『天秤』。横島はこの剣が擬人化したら絶対に道楽公務員のような外見になるだろうなと思った。次の瞬間、横島から金色の光があふれ出し、それが日本刀の形を形成し始め大きく光ると、横島の手にはシンプルな日本刀が握られていた。そのとたん横島には力が『天秤』から流れ込んでくる。

『それでどうする?あの幼き水の妖精を殺すのか?』

(馬鹿いうな!俺の狙いはあっちだ!!)

目で玉座のほうを示す横島。

『……やってみるが良い。永遠神剣第五位『天秤』の力、どれほど操れるかな?』

「うおおおおおお!!!」

吼えながら目の前の玉座に向かって走る。途中でネリーが『静寂』を振るってくるがそれは予想どうり。上段から切りつけてきた所を見ながら剣の横におもいきり『天秤』をぶつける。

ギン!

『静寂』は『天秤』をぶつけられた衝撃でネリーの手から離れ、ネリーの力が急激におちる。

(よし!あとは……)

横島は一瞬で玉座に進み、ラキオス王の目の前に立つ。ラキオス王はスピリットを突破してきたことに驚き、そして歪んだ笑顔を浮かべる。

「くくくっ……やるではないか。まさか訓練もしていないエトランジェがこれほどとは思わなかったぞ。この力があれば北方は我がラキオスの領土になるのも時間の問題といえよう」

ラキオス王の顔は更にゆがみ、顔からは欲望がにじみ出ている。

「ラキオス王、俺の願いを聞いていただけないでしょうか?」

先ほどの言葉遣いから一転して丁寧な言葉を使う横島。

「スピリットを開放してもらえないでしょうか」

その言葉を聞いた瞬間、ラキオス王はぽかんと呆けた顔した。王女は口に手を当てて驚いている。言葉の意味を理解したラキオス王は狂った笑い声を上げる。

「ぐあはっはっはっはーーーー!スピリットを開放する?スピリットは人の道具だぞ。さては貴様は妖精趣味か?」

「スピリットを開放しないのなら……」

『天秤』をラキオス王に向ける。横島には暴力で訴えるのが良いことか分からなかったが、今の自分にできるのはこれ以外なかった。

「くくく、やってみたらどうだ?」

ラキオス王の自信がどこからやってくるのか横島には分からなかった。そして横島は――――


切った。ラキオス王のひげを……


「はっ?」

ラキオス王はなにが起こったか分かっていないようだった。そして自分のひげが切られたことが分かると突然震えだした。

「ば、ばかな!!強制力は……神剣の強制力はどうした!!!」

横島には強制力が何か分からなかったが、相手にとって想定外の事態が起こったことはわかる。

「スピリットを開放しろ!」

語気を強め、さらに殺気も込める。王女は王を庇おうとした――そのとき『それは』起こった。

『そろそろか』

『天秤』が何か言った瞬間、体の全身が切り刻まれたかと思うほどの激痛が流れた。

「があああああああ!!!」

体の血液の中に刃物が入っているのではないかと思うほどの全身の痛み。激痛という言葉すら生易しく感じるほどの痛みだった。

「はっ…ははははは!!!!ようやく強制力が働いたか。……よくもワシのひげを!!!」

ガン!ガン!ガン!

地面にはいつくばって苦しんでいる横島を蹴り続けるラキオス王。

「貴様は処刑してやる!!」

「父上、お待ちください」

王女がラキオス王に進言をする。

「この者の力は処刑するにはあまりに惜しいと思います。……父上の野望に必要な人物かと」

「ぐっ……しかし!」

「父上はいずれこの世界の支配者になられる方です。度量を見せるのも必要なことかと……」

ラキオス王は考えこむ。どうせこのエトランジェは強制力で動けない。水の妖精が苦しんでいるエトランジェに心配そうに声をかけている。この姿を見てラキオス王にある考えが生まれる。

「エトランジェよ聞け!今後、貴様の力はラキオスの為に使うのだ。もし逆らったり、逃亡した場合はスピリットを処刑する!!」

「父上!!」

「お前は黙っていろ!!」

横島は全身の痛みに意識が朦朧としながらもラキオス王の話を聞いていた。そばではネリーが何かを言っているが何も聞こえない。

(これから……俺はどうなるんだろう?)

そして横島の意識はまたしても闇へと落ちていった。


あとがき
永遠のアセリアを知っている人が以外に多く、喜んでいるふむふむです。
一日の三分の一の時間を使って書き上げました。次回の第三話は永遠のアセリアとGS美神のクロスで一番難しそうな場面となりそうです。はたして横島はスピリットと戦えるのか?『天秤』にはがんばってもらいたいと思います。

ではレス返しを

<皇 翠輝様

確かに少々難しい……ですが始めたからには完結させなくてはなりません。がんばります。

<とり様

自分もこのクロスを捜し求めたのですが見つからず……ある意味チャンスかな〜と思いこのクロスをやることにしました。応援、ありがとうございます!!

<rin様

面白かったといわれるのが一番うれしいですね。ユートとの絡み(怪しい意味ではありません)も期待してください。

<覇邪丸様

修正しておきました。ご指摘ありがとうございます。悠人はちゃんと存在しています。ヒロインについては悠人はメインの誰かにはくっついてもらう予定で、横島はまだ決めていません。ヒロインいなくても話は進められるので……ちなみに『天杯』ではなく『天秤』です。

<ASKL様

アセリアとのクロスはないんですよね……仕方ないので自分で作りました(笑)。自分も色々と神剣の名前を考えたんですけど、横島を示し、なおかつアセリアの世界で戦わせるには『天秤』がいいかな〜と思いました。期待に応えられるようがんばります。

<飛べないブタ様

アセリアが意外と知名度高くてうれしいです。これからの横島君の活躍に期待してください。

<KOS-MOS様

横島は人外キラーですから人外が多い世界だったら?幼女が多いのはそれはそれで楽しめます。次回もがんばります。

<来夢様

実は『天秤』という剣はマナを欲するだけじゃなく、ある目的のために横島と一緒にいるんです。『天秤』は色々設定があるので……それは続きで……

<七野 珀翠様

横島らしさとアセリアらしさをミックスできるようにがんばります。ちなみに『天秤』は第五位です。四位だと悠人と同格になったら困ることがあるので……

<1様

私も横島が血に狂うのはどうかと思います。そこら辺は横島なので大丈夫でしょう。『太陽』という神剣は似合っているかもしれませんね。力も性格も。

<にく様

第二話で早くもフラグが立ちかけています。ちょっと手が早すぎかも……
完結目指してがんばります。

<銀鍵奏主様

ヒロインはまだ決めてません。ヒロインいなくても話は進められるので……
仮面の女性はめんどくさがりやのスピリットのお姉ちゃんです。

<諫早長十郎様

まさしくそこからこの『天秤』という神剣は生まれています。今後ともがんばります。

<野良猫様

『天秤』を褒めてくれてありがとうございます。アセリアの世界は等価が基本ですから。横島とはいろいろぶつかっていくことでしょう。これからもがんばります。

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