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「霊光波動拳継承者『横島』(改訂版)25話(GS+幽遊白書+いろいろ)」

柿の種 (2006-06-12 00:50/2006-06-12 01:26)
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*オリジナル設定や技がいくつかあります。


「うわっ?な、なんだ、一体!?」

 アシュタロスを追って、扉をくぐると横島は体がぐりゃりと歪むような感覚を覚える。そして、その感覚がおさまると彼はさきほどまでいたよりも巨大なスペースにいた。その中央に巨大な器物、そしてアシュタロスの姿があった。

「あの、亜空間は私以外に対してはランダムに作用する筈だが、奇跡にも等しい確率を乗り越えてここにくるとはやはりそういう事か・・・・・・・」

「はっ? 何、言ってんだお前?」

 苦々しい口調で漏らすアシュタロスに対し、その言葉の意味のわからない横島は問いかける。しかし、アシュタロスはそれに答えず、彼に語りかけてきた。

「いや、君には関係の無い事だ。それよりも取引をしないかね。この機械コスモプロセッサはこの宇宙のあらゆる因果を自由に作り変える事のできる装置だ。わかりやすく言えば、何でも願いの適うものと言ってもいい。これで君の願いを適えてやる代わりに、私のやる事を見逃してはくれまいか?」

「てめえ・・・・・・・!!」

 アシュタロスの言葉に横島の気が膨れ上がる。その様子にアシュタロスが身構える。そして、次の瞬間。

「是非ともお願いします!!」

「だああああ!!」

 横島がいきなりその場に土下座した。その態度に思わずずっこけるアシュタロス。そして、横島はアシュタロスに詰め寄った。

「ハーレムじゃ!! 俺にハーレムをくれ!! 世界中の美女を全て俺のもんにしてくれー!!!」

「あ、ああ、わかった、いいだろう。だが、それは私の願いをかなえた後だ」

「願い? そういえば、お前の目的って何なんだ? やっぱり、この世界の支配とかなのか?」

「いや、私の願いはこの世界を創り変える事だ」

 横島の言葉にアシュタロスはニヤリと笑う。そして、彼は語った。この世界の真実と自らの野望を。


 曰く、神族と魔族はカードの表と裏である。

 曰く、デタントの流れの中で魔族は勝ってはいけない戦いを強いられている事。

 そして、彼は魂の牢獄に縛られ、死ぬことすら出来ないこと。

 故に、彼は自らの自由になる新しい世界を創りあげたいこと。


 これらの話が終わった後にアシュタロスは更に衝撃的な事実を語った。

「そして、横島君、君もある意味では私と同じような立場なのだよ」

「はっ、俺が?」

 スケール大きな話にピンと来ないまま、自分もその話の一因だと言われ、驚いた顔をする横島。そして、アシュタロスはその真実を話し始めた。

「君が先ほど潜った扉、あれは特定の存在以外はランダムな場所へと転移を行うワープ装置だ。規定外の存在である君がこの場所に転移してくる確率は本来、数千兆分の1も無い。にも関わらず君は私を追いかけてこれた。これを単なる偶然や強運だと思うかね?」

「えっ、いや、んな事言われても・・・・・・」

「それに、私はこの計画を実行するにあたって、必要な道具の一つを高価なシミュレータとして使い、未来を予測していたのだが、その予測は現在の現実の流れとは全く異なっているが、一つ共通している事がある。それは君が人類にとって重要なキーパーソンだったことだ。その予測の中で君の為に私は負けた。それを知った私は君を暗殺しようとしたのだよ」

「んな!?」

 自分が暗殺されかけた事を知って先程以上に驚く横島。そして、アシュタロスは大気圏落下の際、マリアと横島を引き離したのは自分だと聞かせた。

「しかし、にもかかわらず、君は生き残ってしまった。確実に始末したと思った君の生存を知った時の驚愕は私の長い人生の中でも1、2を争うものだったよ。だが、その事がきっかけで私はある推測に思い当たった。そして君の過去を調べ、その結果は私の予想を裏付けるものだったよ。君はこの世界を管理するもの、宇宙意志の加護を受けている。おそらくは私に対する抑止力としてね」

「いくらなんでも、そんな事がある訳が・・・」

「君は思った事がないかね? よく、自分が生きてるな・・・・っと。当初は霊力にすら目覚めていなかった君がこれまでの道筋を乗り切ってくる事など不可能な事だ。例え、潜在的な力を無意識に使っていたり、類まれなる強運を持っていたとしてもね。恐らくは、結晶を持つ美神令子と前世で縁と強い力を持つものとして君は選ばれたのだろう。恐らくは君が生まれた時に、いや、霊能の家系出ない為、家に縛られる事なく、血筋のみ優秀である君の両親から君が生まれた事すら仕組まれていたのかもしれんな」

「そ、そんな・・・・・」

 アシュタロスの言葉に横島が愕然とする。流石の彼も今までの人生が操り人形のようなものだったと聞かされては精神的な動揺は隠せなかった。そんな不安定な彼にアシュタロスが文字通り悪魔の誘惑を投げかける。

「私と共に、宇宙意志に抗おうではないか。勿論、君の望みは先程の約束通りかなえる」

「お、俺は・・・・・・」

 その甘言に惹かれる横島。しかし、その時、彼の脳裏に美神とおキヌの姿が走った。怒る美神と涙を流すおキヌ。ここでアシュタロスの提案に乗ってしまえば、二人は怒るだろう。今度ばかりは冗談ですまず、縁を切られるかもしれない。

「ゴーストスィーパーは・・・・・」

「んっ?」

 漏らすような横島の言葉にアシュタロスが訝しげな表情を浮かべる。そして、次の瞬間。

「ゴーストスィーパーは悪魔に魂を売らんのじゃああああ!!!!」

 指先に霊力を集中させた一撃、霊丸がアシュタロスに直撃する。不意をつかれ、弾き飛ばされアシュタロスが無言で起き上がった後、言葉を発っした。

「それが君の答えか」

「宇宙意志の野郎は西条以上にムカつくし、ハーレムは死ぬほど惜しいが・・」

 ハーレムの所で血の涙を流す。しかし、はっきりとした意思を持って次の言葉を続けた。

「俺は美神さんとおキヌちゃんだけは絶対に裏切れないんだよ!!」

「なるほど・・・・ならば、力づくで排除させてもらおう」

 落胆しながら、表情だけは何故か眩しいものでも見るかのように言うアシュタロス。そして、言葉と共に彼は力を解放した。その力は小さい。結晶から力の一部を取り込んだとはいえ全快には程遠く、霊的な強さで言えばベスパの半分程しかなかった。本来のアシュタロス、魔神の力からすれば小さすぎる力。しかし、今の横島からすればそれでも十分に大きな力だった。度死に掛けた状態からの蘇生、その後の全力攻撃。横島は既に肉体的にも霊的にも限界近くまで疲労していたのである。しかも文珠もストック0。ここまで消耗すると煩悩エネルギーによる回復すら不可能だった。

「くっ」

 霊丸を撃った事でその疲労が限界に達し、緊張等で気づかなかったその疲労に横島は現状に気づいた。現状を認識し、いつの間にか追い詰められた今の状況に彼は冷や汗を流す。

(やばい、かっこよく啖呵きっちゃったけど、本気でやばい)

 焦りながらも必死に考える。勝利を獲得する条件は2つ。この場でアシュタロスを倒すか味方の救援がくるまで時間を稼ぐか。そのどちらかを満たせばいい。しかし、アシュタロスの弁によれば、ここにくるには数千兆分の1の以下の幸運を乗り越えなければならないらしい。ヒャクメを呼んでくるか、あるいは冥界からの神魔の中には正しいルートを呼び出せるものもいるかもしれないが、だとしても時間はかかるだろうし、そもそもそこまでは頭がまわらなかった。そうして、横島は自分がアシュタロスを倒すしかないと覚悟を決める。

「あー!! もう、自棄じゃああー!!!!」

 思わず叫び、そうして、両手の指先に霊力を集中させる。サイキックソーサー、横島が最初に編み出した技で全身の霊力を小型の盾サイズに凝縮する技だが、霊光波動拳を学んだ横島はそれを更に発展させた。針の上に指立ちする修行・指先に集中した霊力を放つ技“霊丸”、これらを参考にして編み出したその技は2本の指先に全霊力を集中する事で、自分の10数倍の霊力の持ち主さえ切り裂く絶対の刃へと指を変化させる技である。しかし、サイキックソーサーよりも遥かに無防備になってしまうその技はまさに捨て身の必殺技。それ故にこの技、サイキックフィンガー“霊指(れいし)”と名づけられた技は禁技であり、最後の切り札だった。

「むっ」

 その技に警戒するアシュタロス。そして、横島の方から飛び出す。

「喰らえやー!! 横島・スペシャル・クリティカル・スラッシャー!!!」

 首筋を狙い、切り裂くように右の指を振る。それを、アシュタロスは後ろに飛んでよけた。腕が空振りし、そこにアシュタロスが霊波砲を放つ。

「これがかわせるか!!」

 その一撃にはそれ程威力は込められていなかったが今の無防備な横島を消滅させるには十分すぎる程のエネルギーが迫る。

「当たるか!!」

 そこで、横島は左手を地面に受け、指先から霊力を放出する。その反動で彼の体は空中に舞い上がり、霊波砲を回避すると共に同時にアシュタロスの真上に移動する。そして、右腕を振り上げた。

「ぬっ!!」

 慌てて回避に移るアシュタロス。しかしその瞬間、横島の指先にあった霊力がナイフの刃のような形に伸びた。その事で目算を誤ったアシュタロスの胸先が薄く切り裂かれる。

「くっ」

 そして、そこで地面に着地した横島は再び左手の指先に霊力を集中させると、着地の際にかがんだ膝を伸ばす勢いでそのまま人間でいえば心臓のある位置に指を突き刺した。

「ぐほっ」

 苦悶の表情を浮かべるアシュタロス。しかし、とどめのつもりのその一撃は魔神の命を奪うにはとどかなかった。

「私の勝ちだ!!」

 横島は慌てて指を抜くが、回避行動を取るには間に合わない。アシュタロスは勝利を確信した。今の横島には宇宙意志の加護は“無い”。真実を知った横島は宇宙意志に対する拒否感を持ったままであり、本人の拒絶の意思の前にはその加護も最小限に抑えられてしまう。少なくともこの詰めの状況を覆すような“奇跡”を起きない。アシュタロスが横島を勧誘したのは、実を言うとこの状況をつくることこそ真の狙いだった。

 完全な“詰み”、その筈であった。しかし、アシュタロスはここで二つの計算間違いを起こしていた。一つは宇宙意志の加護が解除されたのはあくまで横島だけであること。そして、もう一つは奇跡というのは必ずしも神やそれを超えた宇宙意志によってのみ起こされるものではないと言う事。そう、奇跡は時に“人”によって起こされる事もあるということだった。

「私のモンに手えだしてんじゃないわよ!!!!」

 数千兆分の1以下の筈の確率を乗り越えて、その場に現れた美神。宇宙意志の加護は美神にも与えられていたかもしれない。しかし、あくまでそのメインは横島であり、それ故に彼女がここにこれる筈はない。そのありえない筈の美神の放った竜の牙を変化させた鞭の一撃がアシュタロスの動きを止める。

「美神さん!!」

「やりなさい!! 横島君!!」

 歓びの声をあげる横島。そして、彼女の声に答え最後の一撃を放つ。

「極楽に逝かせてやるぜ!!!」

 仙の拳の奥義・霊光双撃”霊光弾をタイムラグ0で連射する事で共鳴を引き起こす。つまりは二重の極みと同質のその一撃がアシュタロスの霊体を完全に破壊した。


(後書き)
 アシュタロス戦、決着。次回エピローグをつけて完結予定です。

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