no side in JAPAN
ある晴れた昼下がり。市場へ続く道。
………の脇にあるファミレスで、とある赤毛の少女が携帯電話をかけていた。
「……そう……ん……ん、わかった」
ピッ!という音とともに電話が切られる。
その正面にはいかにも紳士然とした老人が座っていた。
「誰からだったんじゃ?」
備え付けの紙ナプキンで口を拭き拭き、そう尋ねた。
「タマ姉から。忠兄が現れたって」
「ほう」
老人が目を細め、
「それは良かったな。して、どこに?」
「冬木市に」
「ほほう」
老人は当然ある顎鬚をしごきつつ、
「ふむ、あそこか。なるほど確かにあそこに来るのは道理か。面白くなってきたな」
にやりと笑いテーブルの上にある容器からストローでチューとオレンジジュースを吸い上げ、
「ふむ、やはり旨いものだな、これは」
最後まで吸い上げてからそういった。
そのあと当然のように残った氷を噛み砕いている。
その様子を呆れた様に、というか実際呆れて少女が見て、
「まあいいけど。行くの?」
「うむ。久しぶりに様子を見に行くのも良かろう。お主らの想い人も一目は見てみたいしの。あの四人の主だとも言うし」
面白そうに老人が言った。
「わかった。その代わり何があっても不干渉に徹してね。そういう契約だし。わかってる?宝石翁、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ?」
「わかっておるわい炎帝、ミカミ ヒノメ。さて行くか」
そう言うとテーブルの上にあった小さな袋を取り上げ、席を立った。
それを見咎めヒノメが口を開いた。
「それ、やっぱり持っていくの?」
「当然じゃ。これこそ人類が生んだ文化の極み」
「……やっぱりあなたの趣味は良くわからない」
「そうかね?」
不思議そうに目の前のお子様ランチを見下ろしつつ、手に握ったおまけの袋を懐に入れた。
side YOKOSIMA
「はじめまして、トオサカ リン。私はイリヤ」
坂の上から見下ろす少女は月の光の中ということも相まって、幻想的にすら映った。
「イリヤスフィール=フォン=アインツベルンって言えば判るかしら?」
けれども後ろにいるメイドさんのインパクトが強すぎて、せっかくの雰囲気が台無しになっている。
というかアインツベルンって聞いた話だと御三家のひとつだよな。ってことは後ろの彼女はサーヴァントなのか?サーヴァントメイド?何を考えてるんだアインツベルン?
「君はあのときの。マスターだったのか」
「ええ。お兄ちゃんもきちんと召喚できたみたいでよかったね」
衛宮が呆然と言い、それにも笑顔で返す少女。
「アインツベルン?本当に?」
隣で凛ちゃんが信じられないって顔でそう言った。
「へぇ。嘘だと思うの?」
クスクスと笑うイリヤと名乗った少女。こちらの反応が心底面白いという風だ。
「ということは後ろの人がサーヴァントね。あまり強そうには見えないけど」
「同感。あれで勝てると思っているなら正気とは思えないな」
意図的に挑発的、と言うか見下した言葉をかける。さて、どう出る?
………それはそれとして、やっぱり女の子を貶す様に言うのは良心にクるな。色男なら存分に扱き下ろすのだけど。
「あら。私のサーヴァントはあなたたちが測れるような小物じゃあないってことよ」
冷静にそう言い返して、さらに逆に挑発してきた。隣でなんか凛ちゃんとセイバーのこめかみがヒクついてるな。大人気ない。というか今程度の挑発に律儀に反応するなよ。
なるほど。見た目とは違って存外に落ち着いているな。さすが殺し合いに参加しようと言う魔術師。
心中密かに高評価を下し、そこでふと違和感を感じた。
目の前のサーヴァントは明らかにこちらの戦力以下だ。
あそこまで精神が成熟している魔術師が、この戦力比を見誤るなど考えづらい。
「それじゃあそろそろ始めましょうかしら」
それにしては自信満々だけど、どういうことだ?
罠が仕掛けられている?否。そんな効果が不安定な、不確定な物では理由として薄い。
確認のために周りを探り、気づいた。
サーヴァントの気配がしない?
今まで気にしなかったが、確かに近くにセイバー以外の気配を感じない。
目の前にいるのに?アサシンが持つと言う気配遮断か?否定。相手の気配が読める。気配遮断という名前から、隠す物はむしろ気配の方だと推測。
一つ一つ情報を検索し、それを統合して現状の把握に努める。
そして結論。現在の情報から九割以上の確立で目の前の存在はサーヴァントではないと推測。
ならば本物はどこに?最初からいない?馬鹿な。仮にも御三家とまで呼ばれる一族。マスターでもない者を送り出すほど酔狂なわけがない。
だとするなら………伏兵か!
思い立ったら即座に心眼を起動。それによってイリヤを、その体から流れ出る力を『視』る。
流れる力は二本。そのうち細い一本はメイドさんに?どういうことだ?使い魔?人型の?マジで?
「行きなさい!」
「やっ!」
「!」
はし
一瞬呆気に取られている間にイリヤの声に従いメイドさんが飛び出した。それに呼応してセイバーも疾走る。
「ちっ!」
舌打ちしつつ、太い方のもう一本を追う。
それは右の方へと一直線に流れていた。それと認識した瞬間に微かに感じる殺気。
「右だ!避けろ、セイバー!」
感じた瞬間に反射的に叫んだ。それと平行して心眼を緊急停止。凛ちゃんを抱きかかえ、ついでに思い出して衛宮を引っ掴んで全力で飛び退る。
その直後、さっきまで三人でいた場所に何かが高速で着弾した。
side RIN
「な!?」
何よ今の?
バーサーカーに抱えられた状態でさっきまで自分たちがいた場所を見る。
そこにあったのは直径十数センチの二つの貫通弾痕。コンクリートに円形の穴を開けそのまま地面をもぐっていった何かがあった証拠の穴だ。
ただそれは通常はありえない。その直径のものが通ったのなら、コンクリートは衝撃でクレーター状に砕けていなければおかしい。しかしそうはなっていない以上射手の技術か何かだとは思うが、どのようなことをすればそのようなことが可能になるというのか。
何が貫通したのかはわからないが、バーサーカーに庇われなければ、さっきので私と衛宮君は確実に死んでいたということはわかる。
米神と背筋を流れる冷や汗に自分が生きていることを実感し、そこで思い出してセイバーのほうに視線を向け、また絶句した。
そこにあったのはセイバーの少し前にできていたクレーター。先ほど自分が思ったとおりの光景。何かが着弾したことによるクレータ状の陥没。その数三。
つまり今の一瞬で何者かはさっきの一瞬で合計五つの攻撃をしたことになる。尋常な相手ではないことは明らかだ。
先ほどのやり取りで若干熱くなっていた頭を急速に冷却する。
「あ〜あ、残念。避わされちゃったか。まさか今の攻撃を事前に感知できるサーヴァントがいるなんてね。手加減したの?」
そう言ったイリヤスフィールと名乗った少女の隣に、いつの間にか一人の女性が立っていた。いや、いまいちわかり難いけどまだ少女の域を脱していないようにも見える。
そして当然のように美人だった。
腰まで届く漆黒の髪を持ち、その浅黒い肌を皮製らしい胸覆いとミニのスカートで覆ったその姿は、セイバーとは違う凛々しさを持っていた。
その右手に持つのは一つの武器。断じて剣とは呼べないような、その細腕には不釣合いに大きな一個の岩塊。
「いえ。気配と殺気はギリギリまで抑えていた。気付かれたのは純粋に相手の技能によるもの」
そしてその少女は遠目にさえ、圧倒的な威圧感と存在感を持ってそこに在った。
「へえ?」
しかし重要なのはそこではない。それほどの威圧感、存在感を持っているにもかかわらず、イリヤスフィールが声をかけるまでまったく知覚できなかった。
「そしてあのタイミングで、いくら直前に警告が届いたとはいえあれを避けきったあちらの、おそらくはセイバーの能力も油断できない。どちらともがかなり高位なサーヴァントと見てまず間違いない」
それは明らかに異常な事だった。十数メートル離れたここから、その細部までもを心に焼き付けるような存在感を、それと認識するまで悟らせないなど、どのような技術を持てば可能なのか。
「あなたにそこまで言わせるなんてね。ふふ、お兄ちゃんもリンも良かったわね。二人とも当たりを引き当てたみたいよ?」
イリヤスフィールはそう言ってまた笑った。その様子は嘲笑うと言う風ではなく、本気で感心からの笑いのようだった。
そしてその余裕こそが傍らに立つ己が従者の力量に対する信頼だった。
あの女性がサーヴァントだとすれば、その隠蔽能力の高さはある一つのクラスを思わせる。さっきの攻撃の威力を見るととてもじゃないが信じられないけれど、自分の隣にいる異常例を思うにその可能性は否定できない。
「アサシン?」
思わず声に出た。
「あ、やっぱりバレちゃうか。そう、私のサーヴァントののクラスはアサシン。もちろん真名は秘密だよ」
そしてイリヤスフィールはそれを否定しなかった。
「お爺様達はバーサーカーとして喚び出せって言ってたんだけどね。まったく、あの人たち力こそ全てって考えてるんだから。わざわざ強力なサーヴァントを弱体化させてどうするのよ。ねぇ?あ、こっちはリズ。リーズリットって言って私の、まあ護衛かな?」
イリヤスフィールはそう言って、傍らの従者達に微笑みかけた。
そのクラス技能気配遮断で近づき、マスターを攻撃するはずのクラスが、こうして堂々と敵の前に姿を現し、それがまったく不自然ではない存在感を発するなどとんだ規格外だ。
って言うか今回のサーヴァントってこんなのばっかりなわけ!?
自分の隣にいる非暴走狂戦士を思い、そのクラスからは考えられない、ありえない隠蔽技術を思い出し、こちらの規格外も似たようなものかと暗い気持ちになる。
さらに言うなら、あのアーチャーですら剣で戦っていた。
何で今回はこんなにクラスを無視するサーヴァントばっかりなのよ!?これじゃあ前回までの知識なんか何の役にも立たないじゃない!
せっかく見つけた父親の手記がほぼ無用の長物と化したことに、心中こっそりと涙を流す。
「それで、イリヤちゃん、だったか?これからどうする気なんだい?その当たりのサーヴァント二体を相手に?」
「あなたはリンのサーヴァントね?もちろん戦うわよ?そのために来たんだし。さっきのは、まあ挨拶みたいなものよ」
そう言ってイリヤスフィールはにやりと笑い、
「というわけであらためて。やっちゃえ、アサシン」
その言葉と同時に、アサシンは一気に飛び出した。その向かう先は先ほどから動いていなかったセイバー。
セイバーもそれを迎え撃とうとその手の見えない剣を振り上げ、
「はぁ!」
「シッ!」
二人同時に振り下ろした。
ガキィン!
「クッ!」
呻いたのはセイバーの方。
「ハァッ!」
「フッ!」
ガギキキキィィィィィン!
間髪入れずに繰り出された次激はそのまま乱撃へと変化し、斬檄の応酬が始まった。
「嘘でしょ?」
目の前の光景は聖杯戦争の常識を完全に砕くものだった。
そもそも切り合いが成立する事こそが異常だ。方や接近戦を得意とするセイバー、方や隠密行動を得意とするアサシン。
通常であれば数合とせずに決着が付くはずの戦いが拮抗、どころかセイバーが押されている。
さっきの攻撃やイリヤスフィールの態度から半ば予想していたとはいえ、ここまでとは思わなかった。
いったいどんな英霊を召喚したのかは知らないが、実力は神霊に近いのではないだろうか?
「バーサーカー。援護はできる?」
「無理だね。というか、援護に入った瞬間にセイバーが斬られるよ、たぶん」
バーサーカーがそう言った瞬間、衛宮君が振り向いて、
「どういうことだ!?」
「ん?ああ、セイバーは騎士みたいだからな」
?それが何で理由になるのかしら?
よってたかって
「想像してみなよ。英霊になるような騎士が、多対一の袋叩きなんてやってると思うか?そんなやつに横から手を出したら、逆にリズムを崩してやられるぞ」
バーサーカーの言葉に衛宮君は沈黙した。
「それにあのアサシンは戦士みたいだからな」
「?どういうこと?」
「騎士はあくまでその武器をもって戦う。主に剣や槍でな。一方戦士はその肉体全てを駆使する。それこそ得物を失っても拳をぶつけてな。互角以上の相手で、さらに手数が違う。さすがに厳しいさ」
「じゃあどうしようもないわけ?」
「いや。さっきから俺が殺気を飛ばして牽制してるし、いつまでもこのままな訳がない。その時が来るまで待つだけさ」
軽い口調で言ってはいるけど、その目は片時も戦場から逸らされてはいなかった。昨日から感じている事だが、こういう時はやはり彼も英霊なのだと実感できる。
ギィィィィン!
などと話し合っている間にも、セイバーとアサシンの攻防は続いていた。
共に剣を振り切り打ち合わせる。
ただ、やっぱりセイバーの方が押されていた。嵐のようなアサシンの斬檄にどうにか剣を合わせ振りぬく事によって、結果的に防いでいるという風だった。
「そろそろだな」
「え?」
バーサーカーの呟きに反射的に振り向こうとしたところで、
「フゥ!」
それまでより力強い声が響き、
ガギィィィィィィィィン!
一際かん高い音と共に、セイバーの剣が大きく弾かれ、それを更に流れるように繰り出された回し蹴りに腕を蹴られ、防御行動不可能な状態のそこに体ごと一回転してきた石斧が叩き付けられた。
「ぐぅっ!」
血飛沫を上げながら吹き飛ばされるセイバー。それを追うアサシン。そして血塗れのセイバーにアサシンの石斧が振り下ろされようとしたところで、
「なっ!?」
衛宮君がその間に割り込んで、そのまま石斧が振り下ろされ、
「少しは考えて行動しろ馬鹿」
更に一瞬のうちにバーサーカーが割り込み、その一撃を受け止めていた。
side YOKOSIMA
瞬転で割り込み栄光の手を纏った手で石斧を持つ腕を受け止め、一言目の前の阿呆に文句を言い、
「フゥ!」
受け止めていた腕を引きながら後ろ蹴りをアサシンの腹に向かって放ち、
「クッ!」
それをアサシンが足で受け止めるのを確認して、蹴るというよりは押し出す感じで飛ばした。それに合わせてアサシンのほうも俺の脚を足場に跳躍し、イリヤちゃんの横に音もなく降り立った。さすがアサシン。
それにしても基本能力は向こうが上か。その上で更にその能力に振り回されない技術も持ってる、と。うわ相手したくないなー。
そういう訳にもいかないんだろうけどな。
「あ………」
すぐ後ろで戸惑った顔をしている衛宮に向けて言ってやる。
「何を考えて飛び出した?さっきの戦いを見て、お前なんぞでは肉の盾にすらならん事は気付いていただろう?」
「な、だけど何もしずに黙って見ている事なんて………」
「それこそまさかだな。サーヴァントがやられそうになっていて、黙って見ている道理はない。だからって直接出てくるな。お前が死ねばセイバーだって現界し続けられない」
「ぐ……」
俺が言った事はわかっていたらしく、悔しそうに言葉に詰まった。
「手始めに、お前の腕の模様は飾りか?」
「あっ!」
「条件次第では空間転移すら可能にする三度だけの絶対命令行使権。それを使えばさっきも飛び出す必要などなかっただろうが。この戦いに参加しようとするなら自分に可能な事は把握しておけ」
そこでとりあえずの叱責を終え、イリヤちゃん達の方に振り返った。
「レクチャーは終わったかしら?」
「おう。待たせて悪かったな。というか、待っててもらってありがとう」
「ふふ、どういたしまして。私としてもあんな馬鹿な理由で簡単にお兄ちゃんが死んじゃうって言うのは嫌だったからね」
そう笑顔で言うイリヤちゃんを後ろから優しい目で見つめているアサシンとメイドさん。
あ、ちなみにメイドさんは最初の狙撃が終わったらイリヤちゃんの後ろに戻っていっていた。
「で、まだやるのか?」
「当然でしょ」
何を当たり前なことをと断言した。
はぁ。気が重い。何でまたよりによって女の子と戦わなければいかんのか。やりにくいったらないぞ。まあ、手加減なんかできない位強いんだけさ。
「はぁ。衛宮、セイバーを連れて凛ちゃんのところまで下がっていろ」
「な、しかし!」
「その怪我で何をする気だセイバー。いくら直前に跳んでダメージを減らしたとはいえ、重傷には違いないだろうが。足手纏いだって理解してるなら下がってマスターの警護をしていなよ」
セイバーが反論しようとするのを切って捨て、凛ちゃんにラインを通じて声を送る。
『凛ちゃん』
『バーサーカー?何?』
『彼女相手に出し惜しみしてられないだろうから一言断っておく。結構手札さらすかもしれない』
『それは仕方ないわ。ただ一言言わせてもらうなら、まだ先は長いんだからこんなところで脱落するんじゃないわよ、パートナー』
………嬉しい事を言ってくれるじゃないか。なら期待に応えないとな。
『言ったはずだ凛ちゃん。この俺が最強だと。ならばどんな強敵が相手だろうと、敗北などありえない』
嬉しさに若干顔を緩めながら、そうきっぱりと断言する。そう、守ると決めた以上、この身に敗北は許さない。
あ、そう言えば、
『それから、魔術の攻撃が飛んで来たらセイバーを盾にするほうがいい。いくら怪我してようとその身に宿る対魔力は健在だ。下手な防御手段よりよっぽど有効なはずだ』
思い出して一言忠告。その返事が来る前に、
「じゃあ改めて始めようか。行きなさいアサシン!」
その声が第二ラウンド開幕の合図になった。
イリヤちゃんの声を合図に飛び出した俺とアサシンは、一気に間合いを詰め、ともに得物を振りかぶった。
俺は左手に霊波刀を、アサシンは右手に石斧を、
ガキィン!
振り切った。
「クッ!」
微かに呻いて跳び退る。やはり膂力がぜんぜん違う。真正面からの打ち合いでは勝負にならない。
と言うかよくセイバーは打ち合えていたよな。
地面に足が付いた瞬間に今度は斜め前、アサシンが石斧を持っているほうに飛び出す。
「ふぅっ!」
その頃には再び振り上げられていた石斧が振り下ろされ――
「フッ!」
る前に二歩目で足に霊力を込めて急加速。斧の速度が充分に乗る前に霊波刀で受け止め、
「らぁ!」
顎をかち上げるように掌底を突き出す。
「ちぃ!」
それを体を開くようにして避けたアサシンが、今度はそのまま勢いを殺さず斧を支点に回し肘打ちを放ち、
「なろ!」
それをスウェーバックで避わしながら右手にも霊波刀を生成、それを自分の肘で死角であろう脇の下に向け突き出す。
「クゥ!」
それをアサシンは、更に強引に体を捻る事で避け、
「なっ!」
俺が足に踵をとられてバランスを崩し、そこを逃さず攻めようとしたところで、
ブヲォン!
大振りの石斧に勢いを止められた。
その間にアサシンは体勢を立て直し、
「ハァ!」
「らぁ!」
再度激突。
今度はこちらが二刀、相手が一刀。
手はこちらが多いがそこを相手は速さと力で補っている。
ガギギギギギャリギギガギギィィィィィィィィン!!
止まる事なき剣戟。戦いの場所を徐々に坂の上の方に移しながらさらに打ち合う。
ギィン!
場所が坂の上、墓石の形からおそらくは外人墓地に移ったところで強打により強制的に一度間合いを空けられ、
「シッ!」
即座に突っ込んできたアサシンを迎え撃ち、
「!」
意表を突かれて突き出された左の拳をぎりぎりで避け、
「ち!」
その拳から何かが打ち出されたのを感じて、その何か、おそらくは暗器の類を大きく頭を後ろに倒して避ける。
「な!」
しかしそれは何の変哲もない小石だった。おそらくは間合いを開けた際に拾った物。しかも着弾予想地点は頬のあたりだったろう。
. . .. . . .
俺はその右目の可視域の位置から放られた何の影響もない小石を避けた。避けてしまった。
目を向ければしてやったりと言うようなアサシンの顔。
その結果に内心盛大に舌打ちし、勝負をかけるために今度はこちらが強打を打ち込みそれに合わせて跳んで間合いを開け、
フォン!
右の霊波刀を消して、着弾で爆発しないように調整したソーサー四個を生成。それをそれぞれ微妙にタイミングをずらして投擲、同時に駆ける。
「ハァ!」
それを迎え撃つアサシンは、ソーサーには見向きもせずにまっすぐ俺を見据えている。
その体にソーサーが次々着弾するが小揺るぎもしずに俺を待ちうけ、飛び掛った俺の霊波刀をその石斧で迎え撃った。
ガキィィン!
しかしそれも計算の内。もともとソーサーに大した威力は持たせていない。おそらくはそれを読んでいたからこそ、彼女は見向きもしなかったのだろう。だからこそこの一撃に正面から迎え撃った。そしてそれは間違い。
「とったぁ!」
その激突点を支点に体を回転させ、その間に足に生成し直した霊波刀を、腕に生成するよりも威力が落ちるとはいえ、充分に首を切り落とせるであろう一撃を、アサシンの喉めがけて体ごと叩き込み、
キィィン!
「な!んだと!?」
しかしその必殺を期した一撃は、何故か喉で止められていた。
「残念」
その予想外の光景に、硬直したのはほんの一瞬。しかしその一瞬で俺は足をアサシンに掴まれ、振り回された後に地面に叩き付けられた。
「グ、ガ、は、アァ……!」
叩きつけられた後、地面をバウンドしながら吹っ飛び、墓をいくつか砕いた後にようやくとまった。
痛む体を起こし、ざっと自分の体を確認してみる。
結果は肋骨が何本か砕けていた。よくこれだけで助かったもんだと自分自身に感心した。
「ちょっと!?大丈夫、バーサーカー!」
近くに来ていたらしい凛ちゃんが隣に来てそういった。
「なんとか、ね。だけどあれが効かないとはね。と言うかどうやって防いだんだろ?」
疑問を口に出す。すると、
「知りたい?」
イリヤちゃんがそう言ってきた。それに凛ちゃんが反応し、
「あら、教えてくれるの?」
「実質ダメージが無いとは言え、私のアサシンに一撃入れたんだもの。せめて商品くらいは無いとね」
笑いながらそう言った。
ただ視線は俺を見据えて外していない。
その油断なきそれを見て、やはりサーヴァントのマスターとして一流なのだと思う。
そのイリヤちゃんは、
「私のサーヴァント、アサシンの真名はヘラクレスよ。これで全部説明できると思うけど?」
そうやってかなりキツイ爆弾を叩き込んできた。
<後書きですたぶん>
どもです
お久しぶりですまた一月近く間が空いてしまいました遅筆ですいませんウガー
よし反省?終わり
長くなりましたんでここで一旦切りです。次回第一期ヘラクレス戦終了です。
短くなると思いますけど
という訳でヘラクレスはアサシンでした。
個人的にヘラクレスがなったら一番強いクラスではないかと思ってます。
何かバトルシーンがグダグダになった感がありますけど、これが私の限界ですのでご容赦を。
ではレス返しをば
○2さま
すみません。そうでした。
後書きですから修正はいたしませんでしたが、ご指摘ありがとうございます。
○ハンプティさま
はい。メイドさんはヘラクレスではありませんでした。
意表を突けたようでなんか嬉しいです
○匿名さま
リズに関してはその通りです。
遠坂に関してはアビリティうっかりが発動して伝え忘れてます。確か原作でも知らなかったような表記があったような気がしますし。うろ覚えですけど。
反英雄ちっくなのはそういう属性なのを空想しました
○ryoさま
と言う事でリーズリットでした。
○ゆるさま
面白いと思っていただけるようで
ありがとうございます
と言うわけでメイドさんはリズでした。
○teさま
大当たりです。
また一月近く開きそうな予感が。
ではでは