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「魔除けの鐘を鳴らす者達 第9話 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-06-04 05:38/2006-06-04 17:39)
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「あれが地上の戦艦か。我が軍のウィル・ウィプスより小さいな。だが、それよりもシルキ−=マウ独りの力で、此処までのことが出来るというのか?」

今まで、一度の召喚で呼び出せるのは多くても数人の地上人。
偶に召喚された時に乗っていた乗物もコチラに招かれるが、あれほど巨大な物がバイストン・ウェルに召喚されたのは初めてだ。
眼光鋭い男が、光と共に現れた戦艦。ア−ガマを見て、傍らに控える両頬に傷を持つ男に問う

「察するに、あの艦の中には強大なオ−ラ力を持つ者が複数いたと考えられます」

逆に考えらない程のオ−ラ力を秘めた者一人かもしれない。もしそうならば、誰一人動かせなかったアレを操れるかもしれない。
両頬に傷を持つ男が、薄い笑みを浮かべた。

「その者達とシルキ−=マウの力が同調して、このような結果になったのか?」

「おそらく、あの艦には私同様、オ−ラの力に引き寄せられた者が多かったのでしょう」

男は、ある日突然アメリカのテスラ・ライヒ研究所から、この異世界に呼び出された。

「ならば、エ・フェラリオではなくコモンの意思でオ−ラロ−ドを開くことが出来るというのか?」


この世界は大別して三層に隔てられている。ひとつは水の国ウォ・ランドル
フェラリオ達が住む領域だ。
フェラリオは『チ』『エ』『ミ』と三級から成り、ア−ガマを呼び出したシルキ−=マウはエ・フェラリオの階級にいる。
エ以上の階級のフェラリオ達はコモンには無い特殊能力を秘めており。その特殊能力を使い地上から様々な者達を呼び出しのだ。

そしてコモン達が暮らすコモン界。コモンとは、この世界の人間種族の総称だ。
数年前までは旧西暦の中世欧州程度の文明だったが、地上から召喚された両頬に傷を持つ男が齎した技術により現在は情勢が激変している。

最後の一層は、闇の蛮人ガロウ・ランが支配するボップ・レックス。
傭兵家業を生業にしている種族だ。この世界の戦闘は剣戟や投石器という原始的な武具に頼ったレベルに終始していたが、地上から持たされた技術により、その様相は大きく変質した。
その為、闇の蛮人ガロウ・ランは今では傍観に徹している。


「確信は持てませんが、今回の結果を鑑みて、不可能ではないと考えます」

「面白い。我等の最終目的のためにも、人の力でオ−ラロ−ドを開く研究を進めよ」

男の目的は、この世界の支配。使える力は手にして置くに限る。

「承知しました。ところで、あの艦の戦力を我が軍に加える方がよろしいかと。あの中にはオ−ラバトラ−と同じか、それ以上の力を持った地上の機体が搭載されている筈です」

両頬に傷を持つ男は気付いていた。
あの戦艦は一年戦争で奇跡のような戦歴をあげたホワイトベ−スと同タイプ。ペガサス級強襲揚陸艦である事を。
ならば、搭載している機体にガンダムタイプがある可能性も考えられる。

「うむ。これも天の啓示であろう。通信機の準備を!」

両頬に傷を持つ男の進言を受け入れ、ア−ガマを陣軍に取り入れようと動き出した。


「なんだ?なにが起こったんだ!?」

ブライト=ノアが状況を報告しろと艦橋のスタッフに命令する。
突然、ア−ガマのレ−ダ−や各センサ−が異常となり、七色の光に包み込まれたと思ったら、視界に入る光景が見たこともない場所に変わっている。
先程まで南アタリア島を目指し、太平洋上空を航行していたのは確かだ。それが、どうだ。今は木々が生茂る深い森の真ん中に居るではないか。
すぐさま状況を確かめようと、干渉レ−ダ−を使おうとするが、使用不能状態になっている。

それどころか、この空域にはミノフスキ−粒子が全く存在していない。
ミノフスキ−粒子は正負両方のイオンをあわせ持つという非常に変わった性質を持つ粒子だ。
この粒子は様々な特性があり、小型の核融合炉やビ−ム兵器、浮遊戦艦が造り出されるに至った。
一般的には電磁波を吸収、撹乱する働きがよく知られており、レ−ダ−や通信機器を使用不能にする。

そのミノフスキ−粒子が無いのにレ−ダ−類が使えないとは、どういう事だ?
状況が掴めず一時的に混乱する。
だから、気付くのに遅れた。
ア−ガマの倍以上はある巨大戦艦ウィル・ウィプスの存在に。
目視確認でようやくブリッジメンバ−の一人がブライトに報告した時には、ウィル・ウィプスからオ−ラ−バトラ−部隊が発進していた。


第9話 バイストン・ウェル


「あの虫のような物体は、もしかして機動兵器か!?」

ア−ガマの周囲を数十機のオ−ラバトラ−『ドラムロ』が取り囲んでいる。
様子を見ているのか一定距離以上近寄ってこない。が、銃口は向けられている。
不穏な動きを見せれば、直にでも攻撃してくる気配が濃厚だ。

「でも、あんなタイプの機体は見た事がないですよ」

機体登録バンクに該当はない。
ト−レスが全く見たことのない系列機だと言う。

「ブライト、此方は何時でも出られるぞ」

スクランブルメンバ−だったアムロが、新たに送られた新型機スペリオルガンダムのコクピットから艦橋のブライトに連絡した。
Z計画の内の一機で高機動戦闘を可能とする可変変型モビルス−ツで大型ビ−ムカノンと有線式の擬似サイコミュ兵器。インコムを武装している。
とくに特筆すべき機能は、Advanced Longistic&In-consequence Cognizing Equipment システム。
通称「ALICE」だ。
学習型人口知能でパイロットに合わせて成長していく。アムロに最適化されるよう反応速度をコントロ−ルし、機体制御をサポ−トしている。

「総員、第1種戦闘配置!」

取り囲む謎の機体が、敵か味方か分からないが銃口を向けられている以上、此方も防衛行動を取らなければいけない。アムロ以外のスクランブルメンバ−も搭乗機でスタンバイしている。
後はブライトの命令を待つだけだ。

「艦長!前方の巨大な艦から通信が入ってます」

ブライトがアムロ達を出撃させようとした時、受信ランプが光った。

「通信だと!?」

「周波数は連邦軍で使用しているものですが・・・・・・」

確かに連邦正規軍が使う周波数を一致している。ならば、あの巨大な艦は連邦軍関係なのか?

「連邦軍の周波数を・・・・・?よし、繫いでくれ」

ト−レスがブライトの指示通り回線を開く。正面モニタ−に頭部の髪を全て剃った男が映った。
男が口を開く。

「地上の方々よ。我が名はドレイク=ルフト。バイストン・ウェルのアの国の国王である。艦の代表者との会見を希望する」

バイストン・ウェル?どこの地名だ?
それに地上の方々?此処は地上ではないのか?
ドレイクの発言はア−ガマのクル−を驚かせた。

「どうするのだ艦長?」

ブリッジに上がってきたクワトロが、ブライトに判断を煽る。
他にもリュウセイに銀鈴と大作。それにシンジとイルイとクスハも続いてブリッジに現れる。
格納庫より艦橋に近かったので、現状を知る為に急いで来た。

「この状況では会見に応じるしかあるまい。クワトロ大尉と銀鈴は私に同行してくれ」

情報が圧倒的に足りない。何も分からない状態で、むやみに戦端を開くのは愚かだ。
作戦参謀のポジションに居るクワトロと、国際警察機構のエキスパ−トである銀鈴に護衛役を頼む。

「私も行きましょう」

R−GUNで戦闘待機しているイングラムが同行を希望してきた。

「少佐が?」

「私はEOTの研究者でもあります。今回の事態の解明が、ある程度できるかもしれません」

「イングラム教官が行くなら、俺も行くぜ」

あの虫型のロボットが間近で見られるかも知れないとの考えを、おくびにも出さずリュウセイも名乗り出た。

「彼は射撃の名手です。護衛で同行させますが、よろしいか?」

イングラムの意見にブライトは分かったと頷く。

「ちょっと待ってください。なら、もう一人護衛にシンジ君を連れっていってもらえませんか?」

銀鈴の申し出にブライトは何故?と問う。
確かにシンジが乗るべき機体はア−ガマには無いので戦闘に参加できないが、わざわざ危険かもしれない所に連れて行く必要はない。

「シンジ君は、私より強いです。なにかあった場合。彼が居ると居ないでは全く違います」

国際警察機構のエキスパ−トにそこまで言わせる少年の力をブライトは何も知らない。
シンジに対する命令権を与えられたが詳しいプロフィ−ルは、何一つ寄越さなかったのだNervは。
ブライトにとってシンジは特殊兵器を操縦できるが、それ以外は普通の14歳の少年という認識があった。

「わかった。では残りの各員は第2種戦闘配置に移行。アムロ、後は頼むぞ」

銀鈴にそこまで言わせるのだ。シンジの実力は知らないが、銀鈴の実力を知っているのでシンジにも護衛を頼む事にした。

「ああ、了解した」

もしもの場合、アムロに命令権が移行するよう指示する。

「クスハさん。イルイちゃんを、お願いします」

「ええ、わかったわ。それよりもシンジ君達こそ気をつけてね」

心配そうな表情を見せるイルイの頭を撫でながら、シンジは心配しなくても直に戻ってくるよ。と、クスハにイルイを預け、必要になるかもしれないので小道具を部屋まで取りに戻った。
準備が済むと、ブライト、クワトロ、銀鈴、イングラム、リュウセイ、シンジ達6人は小型艦載機でドレイク=ルフトが乗る巨大戦艦へと向った。


「我が軍の旗艦、ウィル・ウィプスへよく参られた。私はアの国の王。ドレイク=ルフトである」

「機械化部隊参謀のショット=ウェポンです」

ウィル・ウィプスに着艦したブライト達は、謁見の間のような広い部屋に通された。
装飾が施された壁際に幾多の武装した兵士達が控えている。
中央の玉座に座る男と傍に立つ男が見える。
頭部の髪を全て剃った男と、両頬に傷を持つ男がブライト達に名前を告げた。

(ショット=ウェポンだと?)

(あれはイングラム=プリスケン少佐か?)

ショットとイングラムが互いの顔を見て同時に驚く。
ショット=ウェポンはSRX計画のメンバ−であったが、ある日突然、行方不明になった。
SRX計画の主要メンバ−。グルンガストシリ−ズを開発したロバ−ト=オオミヤが、テスラ研究所に勤めていた時の先輩にあたる。
その男が、こんな異世界に居るとは思いもよらなかった。
では、先程の機動兵器はショットが開発したのかもしれない。イングラムは、そう考えた。

「私は地球連邦軍極東支部第13独立外部部隊ロンド・ベル隊の指揮官、ブライト=ノア中佐です」

ブライトが代表して名乗りでる。

「連邦軍・・・・・ショットが、かつて所属していた地上の軍隊とやらか」

「かつて・・・・・?では、あなたは・・・・・」

ブライトがショットを見る。

「そう。私はここに来る前、連邦軍極東支のSRX計画へ、イングラム少佐と共に参加していた」

「な、なんだって!?」

驚きの声をリュウセイがあげた。

「君達が驚くのも無理がない。まず、この世界・・・・・バイストン・ウェルについて説明しよう。ここバイストン・ウェルは、君達が住む地上と海の狭間に存在する世界だ」

「地上と海の間に?」

「ただ、地上とバイストン・ウェルが直接つながっている訳ではない」

概念的な言い方を誤解しないよう説明する。

「つまり次元が異なる世界と言うわけか」

「その通りだ、イングラム少佐」

自分の伝えたい事を即座に理解するイングラムに、ショットは満足そうに肯いた。
現状を理解する。
それはロンド・ベル隊に異次元を行き来する手段がない以上。地上に帰りたければロンド・ベル隊を召喚したドレイクに従えと暗黙の脅迫が含んでいる。
その意味あいが伝わっと感じたのか、ドレイクが本題にはいる。

「ここ数年、バイストン・ウェルでは動乱が続いておる。私は、この動乱を鎮めバイストン・ウェルに秩序を打ち立てようと考えている」


バイストン・ウェルにはコモン達が建国した
『アの国』『ミの国』『ラウの国』『クの国』『ナの国』を主とした五つの大国がある。
アの国の地方領主であったドレイク=ルフトは、名君と謳われた先代国王がアの国を治めている時代は大人しく従っていた。
数年前、先代が崩御し息子であるフラオン=エルフが即位するまでは・・・・・
フラオン王が即位した年、アの国では例年にない大飢饉となった。
作物は実らず、山や森からは獣が、河からは魚が捕れなくなった。

先代ならば備蓄している食糧を一時的にも流出し、事態を収めようと政策を取ったが、フラウン王は、何の対策もたてないばかりか、民が飢餓に苦しんでいる時さえ、ただ己の快楽にいそしむだけであった。

仕えがいのある名君に膝を屈するならともかく、愚鈍な暗君に頭を下げるのはドレイクのプライドが許さなかった。
元々、野心家であったドレイクの台頭を許したのは、愚かなフラウン王こそが原因の一つでもあった。
それに拍車をかけたのが、エ・フェラリオのシルキ−=マウがドレイクの領域ラ−ス・ワウに迷い込んできたことが彼の野望に火をつけた。
ドレイクは、手中に落ちたシルキ−=マウの力を見定め、異界の文明との交錯を企てた。
そして首尾良くEOT研究者達を召喚した。
地上人ショット=ウェポンを味方につける事に成功したドレイクは、ショットの生産したオ−ラマシンの力でバイストン・ウェルの支配を企てる。

ドレイクはアの国の乗っ取りに成功すると、次は隣国のミの国に手を伸ばしオーラバトラ−という圧倒的な軍事力でミの国を征服した。
アの国の中で争っている間は、他国にとって内乱でしかなかった。
それが武力侵攻で他国を征服したとなると一機に話が変わってくる。
残りの3国。クの国の国王ビショット=ハッタは当初からドレイクと同盟を交わしていた。
そして残った2国。ラウの国とナの国は反ドレイク陣営となり、今では激しい戦争を繰り返している。

ノリで云えば戦国時代の下克上だ。
そう・・・・・バイストン・ウェルは動乱の時代に突入していた。


「私は自分の知識を生かし、この地で数多くのオ−ラバトラ−を造り出した」

ショットがブライト達を見据えて静かに言った。自信に満ちた言葉でもあった。
初見で見せたドラムロ部隊など戦力で言えば氷山の一角ほどでしかない。 
その何十倍、何百倍のオ−ラバトラ−を戦力として保有しているからこその自信でもあった。
これから我が主から話がある。それに逆らえば多勢に無勢と言う言葉の意味を、身をもって味わってもらおうと語っているようでもあった。

「貴公らに頼みがある」

ドレイクが玉座から立ち上がる。ショットの裏がある言葉の意味を理解したブライト達に合わせたようなタイミングだ。

「我々に、あなた達の手伝いをしろということですか?」

「察しがいいな。無論、報酬は出す。そして、事が成った暁には貴公らを地上に送ることを約束しよう」

ブライトの返事に、いけしゃあしゃあと恩着せがましく言ってきた。無理矢理呼び込んで酒を飲ませる、ぼったくりバ−とやり方が変わらない。

(この男、考えや目的がティタ−ンズと似ているな)

(どこの世界にも、こういう人はいるのね)

クワトロと銀鈴は、ドレイクの危険な野望の匂いに警戒を強める。
黙っているシンジは、この男殴り倒しちゃ駄目ですか?とブライトに期待の籠もった視線で合図していた。

「・・・・・話はわかりました」

シンジの視線を、あえて無視してブライトがドレイクに応える。

「返答はいかに?」

「我々だけで相談する時間を下さい。その後で答えを出します」

「良かろう。ならば、別室を用意させる」

「ありがとうございます」

近侍に部屋の手配をさせると、ドレイクが奥の間に下がっていく。
これからの事を話し合う為、近侍に導かれるまま大広間を後にしようとしたブライト達を呼び止める声がする。

「イングラム少佐。君は私の所へ来てもらおうか」

ショットが2人で話したいと、バルコニ−を指す。

「よろしいかな、艦長?」

「構わんが、短めにな」

ブライトの了解を得ると、イングラムは人気のないバルコニ−へと歩いてく。
気配を殺して後をつけようかとシンジは考えたが、見晴らしがよく隠れる所がないバルコニ−に、流石に諦め。大人しく近侍に部屋まで案内された。


「久しぶりだな、少佐。こんな所で君に再会するとは」

「無事に生きていたようだな、ショット=ウェポン。俺に何の用だ?」

2年振りの再会だが、決して友好的とは云えない雰囲気で話が始まった。

「フッ・・・・・変わらんな、君は。バイストン・ウェルのことを詳しく知りたいとは思わないのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ここバイストン・ウェルは魂の故郷とも呼ばれる世界だ。もっとも君のような男には無縁かも知れないが」

「魂の故郷だと?くだらんな、いつから詩人になった?」

「ここで暮らせば、そういう言葉が口をついて出るようになる。我々地上人にとって、ここは正に幻想の世界だからな。そして、オ−ラバトラ−は、この世界でしか誕生しえない兵器なのだ」

コモンの手が入っていない森の奥にいけば、十数メ−トルサイズの強獣が生息し、剣を武器に騎士が争い。
妖精のようなミ・フェラリオが飛び交う、この世界は地上人にとってファンタジ−を想起させる。

「見たところ、動力源は地上のマシンとは、かなり違うようだが」

動力源の概念は魔装機神サイバスタ−と同種タイプと考えられる。

「オ−ラバトラ−はオ−ラ力を利用し、無限の力を発揮する優れた兵器だ」

「オ−ラ力?」

「人が持つ生体エネルギ−だよ。地上と違って、ここでは個々のオ−ラ力が非常に重要な意味を持っている。興味がある話だろ?
オ−ラ力は君やケンゾウ=コバヤシ博士が研究を進めていた念動力以上の性質を持っている。
SRX計画での研究が随分役に立った。幾つかの技術はオ−ラバトラ−にも応用させてもらっている。
私はここにきて異星人の技術を解析するよりも、人間に秘められた力に着目した方が良いと実感したよ」

「それがオ−ラ力か。だが、お前の目的はそれだけではないはずだ。一体、何を企んでいる?」

「流石に鋭いな、君は」

ショットは満足そうにイングラムの洞察力を褒めた。

「私が研究したオ−ラ力と君の知るEOTを融合させれば、より素晴らしい兵器が出来上がる」

「それを使ってドレイクの国盗りに手を貸せと?」

「ドレイクに協力しているのは、一つの手段に過ぎんよ。最終的に私は地上にオ−ラバトラ−を上げるつもりだ」

その為にオ−ラロ−ドを人の手によって操作できる研究を続けている。
バイストン・ウェルで量産したオ−ラバトラ−で地上の軍を整え。
SRX計画の機体にオ−ラ力を利用すれば異星人にも勝てる。ショットは確信に近い思いを得ていた。

「下らん話だな」

イングラムは一言で切り捨てた。なにしろイレギュラ−すぎる。地上に運良く出られたとしても今の連邦政府上層部が受け入れるとは思えない。
異端を極端に嫌う政治家達が重用なポストに就いている現状のままでは排斥されるだけだ。
政府樹立当初に機能していた健全であろうとする浄化システムは、腐敗する政治屋どもの手によって拭いきれない汚れを被り機能不全になっていた。

「だが、オ−ラ力には興味を持っただろう?」

イングラムは答えない。が、沈黙は肯定の証とショットは見た。

「まあ、いい。交渉は一時中止ということにしよう。だが、君達は我々の協力なしでは、地上へ帰れないということを忘れるな」

自分達の立場を弁えろと仄めかす。

「ああ、そう言えば・・・・・先程、一緒に居た青年がSRXの適格者なのか?」

リュウセイの事を言っている。SRXチ−ムのユニフォームを着ていたので一目で気付いた。

「計画を離れた、お前が知る必要はない」

「SRXが真の力を発揮するにはサイコドライバ−能力が必要だ。彼は覚醒の兆しを見せているのか?」

冷たいイングラムの言葉を気にも止めずショットは言いたい事を言う。
オ−ラバドラ−を対異星人の主力兵器にしようと画索しているが、SRXが完成すれば正に一騎当千。見過ごすには大きすぎる戦力だ。
だが、サイコドライバ−の完全たる覚醒者は見つかっていない。
・・・・・いや。一人は居る。
地球連邦政府に所属する機関では絶対に協力を求められない相手。
旧西暦時代。たった一人で世界を救ったと言われる最強の超能力者。BF団のトップ『ビックファイヤ』。

一度は世界を救った彼が、何故いま世界征服を目論んでいるのか分からないが連邦政府に力を貸すことはマズ在り得ない。
それに国際警察機構の情報では、彼は長い眠りについて動けないらしい。
それでは意味がない。
異星人の地球侵略が本格化してきた今、早急にSRXを使いこなせるサイコドライバ−が必要なのだ。

「一つ役に立つことを教えよう。オ−ラ力が最も強く発揮する状況、それは生命の危機に直面した時だ」

オ−ラ力。その性質は念動力に似ている。危機に陥った時に打開しようとする人の意思が大きく左右する辺りが。

「オ−ラ力の情報は欲しいが、地上には帰らねばならない。これが俺の回答だ」

冷たく述べたイングラムにショットは、より興味が湧くであろう話を投下した。
決して無視できない内容を。

「・・・・・残念な答えだな。ああ、それともう一つ君に教えよう。彼女もこの世界に来ている。今は私達の下から離れて行方不明だがね。だが、彼女はいずれ戻ってくる。彼女の大切な者が此処にはいるからね」

「それは、本当か!?」

彼女。ショットが言う彼女に検討がついたイングラムが聞き返す。
感情の起伏を滅多に見せない男の表情に、はじめて動揺の色を見せた。
リュウセイが、この場に残っていたら凄く驚いただろう。
まるで信号機が青から赤に変わったように見えたのだから。

「こんな事で嘘などつかぬよ。これでも我々に協力しないというのか?彼女の能力を知っている君なら断るとは思えないがね?」

ショット=ウェポンがテスラ研究所から消えた時、イングラムは何もしなかったが、彼女も一緒に行方を眩ませたとの情報を入手すると、在りとあらゆる手段を持って捜索した。
それだけ彼女の重要性が高かったのだ。
結局、何一つ行方を掴むことができなかったが、今でも捜索チ−ムは組まれている。

「ハッタリはよせ、ショット=ウェポン。彼女が此処にいないのは自分の意思だろう。なら、戻ってきた所でオマエ達に協力するとは考えられない。それは、何よりオマエが知っているだろう。己の師である彼女の性格は?」

彼女は、悪ではないが善でもない。気に喰わない奴とは死んでも一緒に居る事を拒む性格は一生変わるとは思えない。
無茶を通すだけの悪魔的な頭脳と行動力も有している。
だが、これで検討がついた。たった2年でアレほどの完成度を誇る機動兵器が大量に生産された理由が。
おそらく原型は彼女が手懸けたのだ。
ショット=ウェポンは確かに優秀な男だが、無から有を作り出すには時間が足り無すぎる。
だが、参考になるモノがあれば話は別だ。

「しかし、納得がいった。此処には彼女が残した遺産が残っているのだな?」

「・・・・・・その通りだ。私は彼女の研究を引き継いだに過ぎんよ。だが、彼女に及ばないと言っても何ら恥じる事はないがね」

意外にもあっさりとショットはイングラムの言葉を認めた。
師である彼女は天才だ。それも人類史上でも稀に見る真の天才だ。
その分、驚天動地を実体化したような人間で、周りの被害を気にしないトラブルメ−カ−だったが、ショットは師の才覚に自分が及ばないと理解していた。

人が鳥のように大空を飛べず嘆くか?
魚のように水中を自在に泳げなくて悔しがるか?
獣のように大地を駆け巡る足がなくて恥じるか?

そう、嘆きも悔しがりも恥もしない。根本的に違うのだから。
師である彼女を一般の常識に当てはめてはいけない。
ただ、別格であると理解していればコンプレックスに陥ることはないのだから。

「彼女の遺産か・・・・・・だが、駄目だな。オマエに協力した所で素直に彼女の遺産を見せるとは思えん」


やはりドレイク軍の傘下に入る事を良しとしない、知人の毒のある言葉を黙って受け流す。
自分の意思は伝えたと、イングラムはブライト達の後を追いはじめた。
返答が分っていた様にショットが肩を竦めながら、立ち去るイングラムを見送る。
だが、そこに悲壮感はない。予想していた結果が現実のモノとなっただけと言いたげそうな表情を覗かせていた。

本当に残念だ。もし君がイエスと言ってくれたら最高の待遇で持て成したのに。
これでは強引に行かなければならない。
イングラム。君が一度決めた節を簡単に曲げる男じゃないのは知っている。
だが、いくら断ろうと最終的には我々に協力しなければいけない所まで追い込めばいい。
ショットは隣の部屋に控えていた衛兵を呼び出すと、オ−ラバトラ−隊の発進準備と人質としてブライト達の確保をしろと命令した。


調度品がそれなりに揃った部屋の真ん中に置かれたテ−ブルで話し合いをしていたブライト達は、イングラムが戻ってくると最終的な結論を出そうとした。

「さて、一応の情報は揃った。ドレイク王の申し出を受けるかどうか皆の意見を聞かせてもらいたい」

ブライトが何時もの如く纏め役を引き受け。其々の考えを聞きだした。

「自分達の世界に呼びつけて、軍で包囲し、協力を迫る。これは脅迫です。恐らく、あの男の狙いはア−ガマの力を使い、この世界を武力統一することだと思います」

銀鈴が真っ先に自分の考えを言う。少ない情報でもドレイクの魂胆を見抜くのはエキスパ−トとして活躍していた銀鈴には容易だった。

「クワトロ大尉はどうか?」

「この世界に平穏をもたらすと言う、あの男の言葉は嘘ではないのかも知れん。
・・・・・・だが、やり方はジオンやティタ−ンズと変わらん。我々が手を貸す理由はないと思う」

「ロボットで世界統一だなんて、ノリがロボットアニメの悪役だぜ。そんなのに協力するなんて御免だね」

クワトロの考えに同調するように、リュウセイも強く反発した。

「イングラム少佐は?」

「我々が、この世界にとどまる理由は何もないでしょう」

イングラムも反対する。即答だ。
最後に唯一テ−ブルに着かず先程から部屋のあちこちを調べているシンジにブライトは君の意見は?と話かける。

「あのドレイクと言う男のやり方に賛同するのは嫌です」

はっきりと返答する。もしドレイクに従うのならイルイを連れてア−ガマを降りかねない様子だ。
それにドレイクも此方が素直に従うと考えていないだろう。その証拠と言わんばかりにシンジはテ−ブルの上にジャラジャラと見つけた盗聴器を置いた。
客人を持て成す誠意ある対応とは、とても言えない。
右手は握手を求めながら、左手は銃を隠し持ち、己の要請を断ろうものなら直にでも射殺しようとしている。
ドレイクは協力と言う言葉を使っているが、実際はドレイク軍の傘下に入れと云う事なのだろう。

「よし・・・・・・ならば、ここから脱出する」

一同の表情を確かめながらブライトが是からの方針を話す。
ウィル・ウィプスの第7格納庫にブライト達が乗ってきた艦載機がある。そこまで何とか辿りつければア−ガマに戻れる。
この部屋には通信を妨害する処置が施されているのか、先程から何度も連絡を取ろうとしているのだが通信機が繋がらない。

だからと云って迂闊に部屋から出ることもできない。
扉を一枚隔てた向こうの廊下には、武器を携えたドレイクの兵士達が控えている気配が分かる。
大切なお客様の安全を護る為の警護とは、とても言えない雰囲気を放っている。
一歩でも部屋から出れば問答無用に斬りかかってきそうだ。口では友好関係と言っているがドレイクの本心がア−ガマの戦力のみにあるのは、この処置だけでも判断がつく。
ブライト達が此処に居る以上、ドレイクはア−ガマに残っているアムロ達に言う事を聞かせる人質を手にしているのと同じだ。

早急に逃げださなければならない。脱出の為に動き出そうとした一同に思いがけない乱入者が現れたのは、その時だった。
突如、ピンク色の物体が開いている窓から飛び込んでくると、リュウセイの後頭部に飛び蹴りをかました。
銃の安全装置を外そうとしていたリュウセイは、いきなりの事に持っていた銃を、お手玉するように手からこぼした。

「地上人はマシンと一緒に出て行け!」

ピンク色の物体がテ−ブルの上に降り立った。体長30cm程度の羽をはやした女の子だ。
小さな身体に反して大きな声でブライト達に怒声を叩きつける。

「いて!よ、妖精!?」

リュウセイは痛む後頭部を抑えながら、羽を生やした女の子を見て目を丸くした。

「ほ、本当だわ」

銀鈴も童話の絵本でしか、見た事のない妖精に驚いている。

「ヨウセイじゃない!あたしはミ・フェラリオのチャム=ファウよ!」

チャムと名乗った手の平サイズの女の子が、頬を膨らませて怒った。
どうやらチャムは妖精と言う呼び名を嫌っているようだ。

「だから、お前みたいなのを俺達は妖精って呼ぶんだよ」

リュウセイが何故かムキになって叫ぶ。
それに反応してチャムが、「違うモン!」と手足をバタつかせ全身で反発する。
まるで子供同士のケンカのようにリュウセイとチャムは言い争いを始めた。
それに対し他のメンツと云えば・・・・・・

ブライトは固まっている。
銀鈴は困っている。
クワトロは戸惑っている
イングラムは我関せずと沈黙している。

そしてシンジは

まるで人形のようだな・・・・・・・あっ!そう言えばイルイちゃん。そういった類の物持っていなかったな。
やっぱ、あの年齢位の女の子にはカワイイ人形の一つでも持っているのが普通なんだろうな。
うん。決めた。今度イルイちゃんを連れて買いに行こう。

と、全然関係ないことを考えていた。


あとがき

スパロボシリ−ズで一度だけ登場したSガンダム。
あのデザインは好きだったんですけどね。
隠しキャラのような扱いで、機体だけが登場しましたが乗っていたパイロットは名前すら出なかった憶えがあります。


レス返し

AT51様> 仲間として受け入れた者が、貫き通す覚悟を見せれば、納得するのは別にしても協力はします。
全ての人間に理解されようとも、理解しようともシンジは思っていません。
基本的に気の合う仲間と平穏に暮らせれば不満はないのですから。


ジント様> この世界にネルガルは無いです。黒の皇子達は、限りなく近いようで限りなく遠い世界から訪れた異邦人的な扱いになると思います。

15様> ハッカ−として是以上の者達はいないでしょう。
昔の仲間を掻き集めれば、現状のロンド・ベル隊を上回る戦力が集まることは確実です。

イスピン様> この世界にイレギュラ−ジャンプして落ちた時に乗ってきた戦艦はありますが、ナデシコではないです。

ケイン様> まあ、アレはゲッタ−ロボのデットコピ−のようなモノですから、ですが逆に其処に惹かれたのかもしれません。

アルテミス様> 違う所で他者が欲望のまま利権を漁るのは構いませんが、自分の領域を侵そうとすれば、とりあえずブン殴ります。
あの奥さんが求めていたのは、自分を好きな理想の王子さまであって、彼女が本当に料理人の彼を好きだったか怪しいと思いながら放映当時は見ていました。
恋人に対する甘いワガママを通り越して、自己中にしか見えない態度でしたから。
 
六彦様> シャッフル同盟は別に正義の味方ではないですし、シンジが宿した紋章の役割は他の五つとは別途の意味をもっていますから問題ないです。
それに悪党の人権など意味のないモノと思っていますから。

ななし様> 気付くと小隊からいなくなりミッションクリア時に修理代だけを要求するコですから・・・・・・
精神コマンドは悪くないんですけど、なんでアレだけ駄目駄目なんだろ?
見えないマイナス補正が掛っているとしか思えない。

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