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「魔除けの鐘を鳴らす者達 第8話 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-05-28 07:19/2006-05-28 08:09)
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第5使徒ラミエルを何とか倒した翌日。ロンド・ベル隊指揮官ブライト=ノアは一人。
Nerv司令官室に出頭命令を受けて来た。

「先の戦闘でロンド・ベル隊へのEVAシリ−ズの出向が遅れる。その間、君達には別の任務を遂行してもらう」

司令官室に入室したブライトにNerv司令官。碇ゲンドウが今後の予定を話し出した。

「それもNerv特権による命令と考えていいのでしょうか?」

「そうだ」

Nervは地球連邦政府から超法規的権限を与えられている。
その権限を使えば極東支部直轄であるロンド・ベル隊にも命令する事ができる。
かなり業腹だが、軍人である以上従わなければいけない。

「現在、ドイツで開発されていたエヴァンゲリオン弐号機が南アタリア島へ向け、海上輸送中だ」

「南アタリア島?SDFとASS−1が存在する、あの島へEVAを輸送しているのですか?」

Spacc Defence Force。SDFの略で呼ばれる組織だ。
本拠地である南アタリア島は南太平洋。オ−ストラリア大陸やオ−ブ諸国連合から東方の位置にある。

「そうだ」

「何故、エヴァンゲリオンを南アタリア島へ輸送するのです?」

「それに答える必要はない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

秘密主義のNerv。聞きたい事は山程あるがブライトの権限では、知る権利がない。
黙っているブライトに構わずゲンドウが話を続ける。

「では、任務の内容を説明する。君達は輸送艦隊と太平洋上で合流し、EVA弐号機を受け取った後に、南アタリア島へ向ってくれ」

ブライトの顔に驚きが浮ぶ。てっきり弐号機を受け取ったら第2新東京市のNerv本部に戻ってこいと言われると思っていたからだ。

「君達はSDFとの接触が目的なのだろう?これで、正式にあの島へ行く理由が出来たということになる」

そう、彼等の協力を取り付ける為、極東支部は様々な手段でコンタクトを取ってきたが結果は、おもわしくなかった。
その事を考慮すれば、今回の命令は都合がいい。

「・・・・わかりました。EVA弐号機を受け取り、南アタリア島まで輸送します」

「なお、その任務の後、零号機と初号機を君達の部隊へ出向させる」

「その理由は・・・・・聞くだけ無駄ですね?」

「そうだ。では、健闘を祈る」

ブライトは諦めに似た気持ちを抱きながら、Nerv司令官室を後にした。


第8話 出向


「碇シンジと言います。是から、よろしくお願いします」

「碇イルイです」

黒髪の少年と淡い金髪の少女が、作業着を着た集団に頭をさげた。

「ああ、よろしくな」

「がんばれよ坊主」

「困った事があったら俺に聞きな。力を貸すぜ」

好意的な返答に再び頭を下げて、この部署を後にする。

「じゃあ次に行こうか」

「うん」

現在、シンジとイルイはアーガマ乗組員達に挨拶回りしている。顔を見せてない部署も残り少ない。
午前中には回りきれるだろう。
渡されたア−ガマ艦内のマップを見る。
軽やかな足取りで次へと向う。軍艦であるア−ガマだがNervにいるより居心地がよかった。


第5使徒ラミエルとの戦闘によって第2新東京市およびNervの損害は以前に増して酷い。
初号機は小破、零号機は中破。
特に零号機は装甲の大幅な改善が必要であり。現状ではロンド・ベル隊への出向は先送りとなった。
なら何故シンジとイルイの二人がア−ガマに乗っているのか?

シンジが契約を盾にとったのだ。
Nervはシンジに対し、ロンド・ベル隊に出向する事を強制する事はできない。
使徒戦以外は契約外。従う必要がない。
だが、Nerv。いや、碇ゲンドウが推し進める計画の為には、なんとしても、出向させなければならない。

ゲンドウの思惑は兎も角、シンジとしてはロンド・ベル隊への出向は渡りに船だった。
いいかげん、一人ではMAGIを攻略するのに限界を感じていたからだ。
ハッキングは努力云々でどうにかなるもんじゃない。
アレは一つの才能だろう。あいにくとシンジにはソッチ方面の才能はあまりない。
個人使用のパソコン程度ならともかく、Nervの頭脳ともいえるス−パ−コンピュ−タ・システム。

メルキオ−ル
バルタザ−ル
カスパ−

コンピュ−タ−の単独駆動における暴走を考慮し、互いに異なる性格を持ち、合議制システムで動くMAGIは手強い。
ちなみに聖書に登場する東方の3賢者の名前を付けられている。
セントラルドグマの深々部に浸入するには、なんとしてもMAGIを口説かなければいけないのだが、独立・連動した3台の同時攻略は、いい加減手にあまる。

だから、できる者達に頼む事にした。
黒衣の皇子と付き従う二人の電子の妖精達に。個人的付き合いもある連中で昔の仲間だ。
互いに貸しもあれば借りもある。
仕事として依頼する事になるが、手許には使徒迎撃の報奨金300億円がある。
依頼金には事欠かない。

問題があるとすれば、第2新東京市はMAGIの管理下に置かれていること。シンジが第2新東京市から外部にかけるネットや電話は全て調べられている。
それに依頼内容がコトなので郵便物や人伝いも駄目だ。
できるだけ、Nervの目を欺きたい。
事は慎重に運ぶ必要がある。この自称『世界の危機を救う』を代名詞にしている組織の真の目的がわかるまでは・・・・・


話を戻そう。
ロンド・ベル隊へ出向するにあたり、契約更新の追加事項に求めたのは下記の通り。

一つ。碇イルイの同行許可書。

一つ。佐官用の住居の用意。【バス・キッチン付き】

一つ。ロンド・ベル隊出向中の給与と権限は下士官待遇。

一つ。出向中の間、碇シンジに対し命令権を持つのはロンド・ベル隊指揮官のみ。
S−111や特務機関権限を使い、命令権をロンド・ベル隊指揮官から奪おうとした場合。
契約破棄と認定する。


住居や同行者の件はすんなり決まったが、命令権に関してはNervサイドも眉を顰めた。
Nervが求める一兵士としてシンジの価値は、及第点にも届かない落ちこぼれの烙印を押されている。
碇ゲンドウが欲しいのは綾波レイのような命令に一切の疑問を持たず、自爆しろと命令すれば自爆するような、自己の考えを一切持たない兵士。
命令に盲目的な兵士だ。

レイに比べてシンジは、自我が確立しすぎている。これではNervの不当な命令を跳ね除けてしまう。
そんな兵士はNervには必要ないのだが、シンジの能力だけは、どんな事をしても手に入れたい。
戦士として最高峰(ハイエンド)の域に達している少年の力は、色々な意味で最強のカ−ドとなるのだから。

だから、Nervは契約内容の変更を要求したが、無論、シンジも自分の要求内容を下げない。
下げなければならない理由もない、譲歩すればNervはつけあがり更なる要求をしてくるは明白だ。
話が平行線を辿る中、Nerv幹部の一人が強行手段を提案した。
最も簡単な方法。人質を使った脅迫だ。
が、即座に却下された。実行犯の役割を担う諜報部一同が、断固として嫌だと拒否した。
正義感からではない。シンジの報復が恐ろしいからだ。


シンジは基本的にお人好しだが、相互主義者でもある。
己の意思で無関係の人を助ける分には代価を求めない。戦場でも助けるだけ助ける。
だが、人付き合いに関しては、親しい人間以外は、礼には礼で。悪意には悪意で応える。
それ以前に、仲間と認めた者以外は気分によって、どうでもいい扱いなる。

一度、サ−ドチルドレンたるシンジを攫おうと、Nervに敵対する組織の諜報員が第2新東京市に侵入した。

シンジだけを狙っていた内は、丁重にボコボコにしてお帰りになってもらっていた。
数回の失敗を教訓にしたのか、諜報員はイルイに目を付けた。
イルイをダシにシンジに言う事を聞かせようとしたのだ。

古来より相手の大切な者を脅迫の道具に使うのは、陳腐で手垢がこびりついてる位の常套手段。
だが、効果的だからこそ陳腐にもなる。
相手のアキレス腱を押さえれるのだから。しかし、それは一歩間違えば諸刃の剣。
誰が大切な人を傷つけ、汚そうとする、どうでもいい者を許そうとするのか?
少なくともシンジはしなかった。

イルイを攫おうとした、諜報員は、ある日消息を断った。
Nervは、あえて諜報員を泳がせて情報を掴もうとしていたので、見て見ぬふりをしていた。
チルドレンではないイルイはNervにとって価値はないのだ。
だからイルイが攫われそうになっても助けようとはしなかった。
シンジの反応を知りたかったのも要因の一つだろう。

そして結果は想像以上だった。

一週間後、敵対組織の諜報員は見つかった。
ジオ・フロント内部にある、人の手によって造られた山々の中で骸となっていた。
一般職員が近づかないよう建てられた、諜報部の部署がある建物の目と鼻の先とも言える場所に変死体は捨てられていた。
最初に見つけたNerv諜報部所属の人間も、最初は人間の死体なのか溶けた肉の塊か分からなかったぐらいだ。

手足の先の毛細血管は限定された圧倒的な熱量によって破裂して、ラ−ドのように半液状となって腕や足の根元まで爛れ落ち強烈な悪臭を放ち、
身体の内臓器官は内側から壊死している。
中でも特に酷かったのは頭部だ。グロテスクに変型していた。
例えるなら、アンパンマンの顔の代わりにミ−トボ−ル(肉団子)を乗せてあると思えばいい。
腐臭を放ち、吐き気をもたらす色合いの肉団子だが・・・・・
原型の3倍以上に頭部が膨れ上がっていた。頭蓋骨は砕け、脳みそは完全に高圧な電流で溶かされ、液体となった物が冷えて固まりゼリ−のようになっていた。
世にもおぞましいミ−トゼリ−だ。

人間は生体電気信号で動く生き物だ。
知りたい情報があったとしよう。過酷な訓練を受けた一流諜報員は死んでも口は割らない。
だが、生体電気を自由に扱うことができる者が、直接脳に手を突っ込んで対象者がこの世あらざる苦痛の中で死んでも構わないといった気持ちで行えば、知っている事の半分は聞きだせる。

半分しか聞き出せないのは、された人間が全部聞きだす前に十中八、九発狂死するからである。
その後は、見るに堪えない汚い死体となる。
少なくとも女性なら、比喩的な表現だが死んでも、こんな死体には成りたくないと強く思う。百年の恋も一瞬で冷めるような醜い物体に変えられるのだから。

外法の技だ。
シンジも自分自身がタ−ゲットの内なら殺される結果になろうとも、この技は使わない。
だが、かけがえのない人が、下種な外道に汚させるような真似をされたら、加害者の人権や生命など紙屑より劣るものになる。
命の価値は平等かもしれないが、人の価値は平等ではない。

全てを救うと言える人は、人を殺さなければ生きられない世界とは無縁で、深淵に引き込まれそうな挫折も絶望も味わった事のない幸せな人だろう。
幸福にも残酷な現実を知らずに生きていける環境で生まれたのだ。

少なくともシンジは知らない。全てを救える人間など・・・・・
居たとしたら、その者はすでに人間ではない。宗教的概念の神様と呼ばれる完全無比な存在だ。
だが、そんなモノが居ないのは分かりきっている。その身で体験してきた。

それに創造主が完全無比な力を持っているのなら、何故わざわざ不完全である、この世界を創った?
老い。死に。争う。この世界を?
子供を捨てるような親を創る、この世界を?
世が不条理なのは分かった。だから護る。大切な物を。失いたくない人を。
その為に得た、この力だ。シャッフルの紋章だ
全てを救うのは無理でも、力届く限り足掻いてやる。優しくない、この世界から・・・・・


余談だが、わざとイルイを攫われるように誘導したNervの諜報員は、一生、精神病院の白い壁に話しかけるだけのモノに変わり果てた。
殺しはしないが、無事に生かしておくのも癪に触る。と言った感じだろう。警告の意味合いも含めて。
殺すのは簡単だ。だが精神を恐怖によって壊されるのは圧倒的な力の差があるからだ。
Nervの諜報員達は恐怖した。
死ぬ覚悟はあっても、壊れたモノに変わるのは嫌だ。
そしてNerv諜報部では、碇シンジは不可侵のタブ−的存在となった。

諜報員達が、この有様ではシンジに対する脅迫は無理だ。強引に実行しようものなら、諜報員全員が辞めかねない。
Nervの汚れた闇に関る彼等が、簡単に辞められる筈もない。諜報員達も其のことは十二分に理解している。
だが、それ以上にシンジが恐ろしい。シンジが彼等に対し報復を躊躇する訳がないのだから。

そして、Nervの不毛に近い議論の結果、シンジが求めた契約追記事項は認められた。


「おっ!シンジにイルイじゃないか。いい所に来たな。コッチに来いよ。いいモン見せてやるよ」

挨拶回りも終わり、談話室に休憩にきたシンジとイルイの両名にリュウセイ=ダテが大きく手招きした。
談話室のテレビの前には、リュウセイだけでなくクスハ=ミズハと銀鈴に草間大作も居る。
DVDにソフトをセットしているので、映画観賞するのだろう。

「シンジ君。イルイちゃん。オレンジジュ−スだけど飲む?」

「いただきます」

「うん。飲む」

ソファ−に腰を降ろしたシンジとイルイに、クスハが紙コップを手渡してきた。
クスハ特性ジュ−スでは、ないと確かめる。
テ−ブルにはスナック菓子も開けられている。
袋にアニメキャラクタ−がプリントされ、おまけにカ−ドが付いてくる物だ。

「遠慮せず、食ってくれ」

ホクホク顔のリュウセイが言う。おまけの特典でプレミアカ−ドを引き当て機嫌が何時も以上に良かった。

「ところで、何を見るのかしら?」

見せたい物があるから集まってくれと、非番のメンバ−に声を掛けていたリュウセイに、アクション物の映画なら嬉しいなと銀鈴が聞く。

「ふふふ・・・・よくぞ聞いてくれた。俺が皆に見せたい物はコレだ!」

自信満々にDVDのパッケ−ジを見せる。

「ゲキ・ガンガ−3?」

大作がタイトル名を呟いた。若干12歳で国際警察機構のエキスパ−トとして活動する大作は、この手の物は疎かったので知らない。と言った顔をする。

「ああ!全39話収録。初回限定版プレミアDVDボックス。なんと彩色済みアクションフィギュア『ゲキ・ガンガ−V』も付いてきたんだぜ!」

よほど嬉しかったのか興奮して話す。

「甲児くん達なら喜びそう」

やや呆れ気味に、クスハが此処には居ない。ス−パ−ロボットのパイロット達の名を上げる。
甲児以外にも

『獣戦機隊』  
『マジンガ−チ−ム』
『コンバトラ−チ−ム』
『ゲッタ−チ−ム』 
『ライディ−ンとコ−プランダ−隊』

が極東支部に残っている。

ロンド・ベル隊以外の極東支部の戦力は、使徒との戦いでほとんど壊滅した。
その建て直しをする矢先、ティターンズが極東支部の岡長官を南米ジャブロ−基地に呼び出した。
その魂胆は、岡長官の拘束であるのは見え見えなのだが、岡長官は誰にもこの事を告げず、 ティターンズの本拠地と呼べる南米ジャブロ−基地へ行った。
太った外見から想像もできないが、岡長官は甲賀流忍術第17代目の当主。実力的には心配はいらない。 
今回の件は、呼び出しに応じるフリをして、ティターンズの実態を探るのが目的だろう。

問題は残された極東支部だ。
現在、ヘンケン中佐の部隊が極東支部に駐在しているが、戦力不足は否めない。
マオ・インダストリ−社が開発したゲシュペンストを中心とした新たな部隊。
極東支部所属。独立遊撃隊ATXチ−ムが本格的に活動を開始するには、まだ時間が必要だ。
いまは獣戦機隊の士官学校時代の校長でもあったイゴ−ル准将が、長官代理の任につき、極東支部防衛の為、ロンド・ベル隊に援護要請し、ブライトも要請を受け入れた。


「コウ君達も、そうじゃないかしら」

銀鈴が付け加える。

ス−パ−ロボットのパイロット達だけでも大幅な戦力ダウンなのに、カミ−ユ、ファ、バニング大尉、モンシア中尉、ウラキ少尉、キ−ス小尉。
それにウッソとリガ・ミリティアのメンバ−も宇宙に上がっている。

エゥ−ゴのブレックス准将から、アクシズが、あと一週間で地球圏に到達するとの情報が入った。
全長約30キロメ−トルの資源採掘船用の小惑星中継基地だったアクシズをネオ・ジオンが改造して、地球圏までの移動を開始させたのだ。

ジオンは未だ健在だ。新たにネオ・ジオンと組織名を改め再び戦いを仕掛けてきた。
7年前の一年戦争は、突如現れたASS−1によって、うやむやの内に終結した。
ASS−1。一部ではマクロスと呼ばれる外宇宙技術で造られた宇宙戦艦。
地球圏外の知的生命体の存在を知った、地球連邦政府はジオン公国との戦争どころでは無くなった。

突如あらわれた戦艦は、人類の文明技術よりも高度な技術で造られている。
マクロスは戦闘行為の痕を残して落ちてきた。それが意味する事は、地球圏以外の知的生命体が銀河規模の戦いを行っていると云う事だ。
一年に及ぶ戦争で疲弊しきった連邦とジオンは、ASS−1が南アタリア島に落ちた一週間後に休戦条約が結ばれた。
互いに戦力を回復させるのが目的なのは、誰の目にも明らかだったが、外宇宙生命体と云う第3者の存在が明らかになった以上、戦争を続けるのは無理だった。

7年の年月で戦力を回復させたザビ家は、L5宙域と衛生軌道上に先発艦隊を発進させた。
目的はL5宙域のコンペイ島の奪取だ。
今でこそ、連邦軍の拠点であるが、7年前までは宇宙要塞ソロモンと呼ばれていた

かつての軍事拠点を落とすと云う事は、戦力回復の為、大規模な軍事行動を行っていなかった7年の間に薄れたジオンの存在感をスペ−スノイド達にアピ−ルする意味合いもあった。

少しでも先見のある高官なら、ソロモンが奪い返される事は軍事的意味合いだけでなく、政治的にも極めて重用である事を知っている。
その為、ネオ・ジオンの動きが分かった時、コーウェン中将やブッレクス准将らがコンペイ島に増援艦隊の申請を連邦最高評議会に提出したが、却下された。

却下の理由はこうだ。コンペイ島には今、六個艦隊もの兵力が集結している
末端の兵員も含めれば400万人近い軍人が居る。
これは宇宙での連邦軍の主力の殆どと言っていい。
いくら軍事力を再建したネオ・ジオンといえど簡単に陥落される筈がない。
地球が唯でさえ混乱している中、コンペイ島に増援など不可能。無理を言うな。
それが連邦政府の公式回答であった。

その決定を下した政治家達の大半はジャミトフ=ハイマンの息が掛っていた。
コンペイ島の駐在艦隊は正規軍で反ティターンズ派に属している。
ジャミトフにとってはロンド・ベル隊並に厄介であった。
それ等を一掃する為に、オ−ストラリアのトリントン基地のGPシリ−ズの情報をネオ・ジオンにリ−クした。
予想通り、ネオ・ジオンのデラ−ズ・フリ−トが動き、ソロモンの悪夢と連邦士官学校の教本にも載っているほどのパイロット。
アナベル=ガト−にGP−02Aサイサリスを奪取され、同時に奇襲攻撃を受けトリントン基地は半壊状態となった。

奪取されたGP−02Aサイサリスには、秘密裏に保管されていた戦略級核弾頭Mk−88型が搭載されていたのが致命的だった。
2014年を最後に、暦を終えた西暦が生み落とした異形の悪魔。
それがMk−88核弾頭である。その破壊力はN2地雷の数百倍はある。

GP−02Aサイサリスを奪ったネオ・ジオンは核弾頭を何処に使うか?
連邦軍本拠地があるジャブロ−か?それとも政治中枢のダカ−ルか?
いや、どちらとも違う。いまこの時機に一番効果的なのは式典の為、コンペイ島に集結している連邦軍宇宙艦隊だ。
そうすれば宇宙での勢力図は一機に塗り替えられる。

核弾頭を搭載されたGP−02Aサイサリスは、軍でもトップシ−クレットに辺り、一部の将校にしか伝えられない。
なにしろ南極条約で決められた戦時協定を破った事を一般兵や民間人に知られれば、士気が下がり、大規模なデモが起きるのは自明の理だ。
その為、おおぴっらな捜索活動を連邦軍は行えない。

その変わりに、エゥ−ゴとリガ・ミリティアが宇宙でのGP−02Aサイサリス捜索に全力を尽くしていたが、状況はおもわしくない。
あと、Z計画の後継機やV計画の新型機がまもなくロ−ルアウトする。
それらを直接受け取りに行く事も含め、ロンド・ベル隊のパイロットを宇宙への応援に送った。


「みんな叫んでる。シンジみたい」

ゲキ・ガンガ−3のアクションシ−ンを見たイルイが率直な感想を言う。

「まあ、・・・・・・ね」

シンジが曖昧な苦笑いを浮かべた。
別に好きで技の名前を叫びながら戦闘している訳じゃない。
流派東方不敗は仙術の流れも組んでいる。そして言葉には力ある言霊が宿っている。
氣力が低い者や、異能の力を持たない一般人が口にするぶんには何の影響も持たないが、ある一定レベルを超えた者達が、強い意志を乗せて発する言葉は世界に働きかけ、物理現象さえ引き起こす。

戦場が持つ独自の緊迫した空気が集中力に拍車を掛けているので、日常生活では言霊が働く事は滅多にないが、使える者と使えない者では戦闘レベルのステ−ジが段違いとなる。

例えば、同じビ−ムライフルから撃たれてもアムロ=レイとカツ=コバヤシとでは威力が違うのも、その所為だ。
トップエ−スと永久3軍パイロットの能力の差は、象と蟻ほどに離れている。


冷静な時に思い返せば恥ずかしいのかもしれない。
ノリだけで叫んでる訳じゃないと説明したが、イルイはよく分からないと云った表情を見せる。
まずい。このままじゃイルイに変な人と思われてしまう。だから心の中で謝りながら大作を引き込んだ。

「大作君も叫んでるし、僕だけじゃないよ」

「え?い、いや・・・・・・ジャイアント・ロボは音声入力で戦うロボットですから」

シンジは大作の肩をポンポンと軽く手で叩いた。
君は僕の仲間。同類だ。逃がさないよ。と特定な人間には邪悪にも見える爽やかな笑みを見せた。
もちろん歯をキラリンと光らせる。作り笑顔の定番だ。
シンジは光と闇の紋章を宿す者。立派に闇の属性を持っていた。

大作の顔が引き攣る。
そして新たな道連れ・・・・・もとい、仲間を増やそうとテレビにかぶりつくように見ている青年にも話しを振った。

「それにリュウセイさんも叫んでるし・・・ほら、戦闘中に『そう!その通り!』・・・な・・いし・・・・」

「スーパ−ロボットのパイロットが叫ぶ。それは熱い魂の雄叫び!そう必然なんだ!」

ゴォォォォ――とバックに炎が見えそうなリュウセイが、シンジの言葉を遮りスーパ−ロボットが何たるか熱く語りだした。
そうなの?とイルイがクスハに聞く。「さ、さあ?」とクスハが困った顔をした。
しまった!人選を間違えたとシンジが青くなる。

「そう!俺だってマジンガ−やゲッタ−ロボみたいなス−パ−ロボットに乗りたい!
でもライディ−ンやコンバトラ−Vも捨てがたい。
ロボット・・・・特にス−パ−ロボットは男のロマンだ
R−1は確かにいい機体さ!武装が全て実弾兵器で、R−ウィングという飛行形態にも変型する。
でも、みんなパ−ソナルトルパ−をモビルス−ツと同じようにしか見ないんだよ!
ス−パ−系のロボットってのはな、見た目のインパクトがド−ンとあって、変形とか合体とかバリバリやって、ものすげえ必殺技も持ってて・・・・・・
俺は!俺は!イングラム教官が、かっこいいス−パ−ロボットに乗せてくれるって言うから、高校を辞めて軍にはいったのに!」

「まあ、まあ、リュウセイ君。きっといつか乗れるわよ・・・・・多分。だから落ち着いて」

「そうよ。クスハが言う通りよ。ねえ、アメ玉あげるから興奮しないで」

保母さんが、手のかかる園児を相手するように、クスハと銀鈴がリュウセイを宥めている。
リュウセイの呆れそうな志願理由だが、銀鈴は本当の理由を知っている。
彼は病気の母親を、最先端医療を施せる病院に移し、入院費を全額、軍が負担するという条件でイングラムの話を受けたのだ。
無論、ロボットが好きだからと云うのも動機の一つだが、どこかの眼鏡をかけた盗撮マニアのように、女の子にモテて、周りからチヤホヤされるヒーロ−になれるからと云った甘い英雄願望を持って軍に入隊した訳ではない。

「すいません。リュウセイさん。イングラム少佐ってどんな人なんですか?」

イングラムの人名にシンジが強く反応した。
ラミエル戦も終わった後に会った長髪の男。イングラム=プリスケン。
初顔合わせの時、挨拶を交わしただけで背中に冷たい汗が流れ、本能がシンジに強く訴えた。この男はヤバイと。
危険レベルはデビルガンダムと対峙した時と同じ、特S級に値する。
シンジが持っているようにイングラムも確実に持っている闇の属性を・・・・・
ただ決定的に違うのは、シンジが持っている闇は『蒼き闇』人が安らぎの夜、また始原の海を連想させる闇だ。
だが、イングラムから感じたのは『虚無の闇』すべてを無に返し、滅びをもたらす闇だ。
もう一つ持っているシンジの光の属性『紅き輝光』も弾けるようにイングラムに反応した。
だから知りたかったイングラムとは、どんな人間なのかと。

「えっ?ああ・・・どんなって、まあ、うるせえ教官だけど、PT操縦の腕は抜群だし、頭もいい人だよ」

リュウセイは天井しらずに高まったテンションをあっさりと下げ、シンジの問いに答え始めた。

「スペ−スノイドなんですか?」

「・・・・・・・俺も詳しくは知らないが、昔は木星のヘリウム輸送船団にいたらしい。あと、EOTとエアロゲイタ−については、やたら詳しいなあ」

木星・・・・・・ならジュピトリアンなのか?

「それに、SRX計画の機体に人間の超能力を使うアイデアもイングラム教官が出したらしいんだ」

「超能力ですって?」

銀鈴が一番に興味を惹いた。自分が持つ異能力と関係あるからだろう。

「ああ、リ−ダ−のアヤは念動力者だし、その力を使ってパ−ソナルトルパ−に乗ってる。それに、R−1とR−3、R−GUNには念動力を感知・増幅するT−LINKシステムが装備されてる」

「なら、リュウセイさんも超能力者なんですか?」

大作が訊いた。

「らしいんだけど、どうも俺そっちの才能がないみたいでさ。だから、スプ−ン曲げとか、予知は出来ないよ」

「リュウセイさんは、どうしてR−1へ乗ることになったんですか?」

僕が最初にエヴァに乗る理由は嵌められたようなものでしたが。とシンジは内心で思った。

「俺か?俺は半年前まで、ただの高校生だったんだけど軍が秘密裏に行っていた適正審査でイングラム教官の目に止まったらしいんだ」

「秘密裏の適正審査?」

「ア−ケ−ドゲ−ムでバ−ニングPTっていうのが、あってさ・・・・みんなやったことない?」

「ありますよ。ちなみに持ちキャラはテムジンです」

僕のテムジンが操るトンファ−から逃れた相手はいないとシンジが答える。

「そうか!なら、こんど対戦しようぜ」

「いいですね。でも、僕強いですよ」

誇張でもない。ありのままの事実を言う。CPU相手のストリ−トモ−ドでノ−ダメ−ジパ−フェクトでクリアした事もある。乱入自由のプレイヤ−対戦で100抜きも達成した。
並の相手なら連続コンボを決めて秒殺する。

「俺だって強いぜ。俺、その全国大会で優勝したことがあるんだ。
まあ、その全国大会そのものが適正検査だったらしいんだけど。
優勝した後でイングラム教官が俺の所へやって来て・・・・・SRXチ−ムに入るよう勧められたのさ。
ま、俺はロボットが好きだったし、他にも色々と事情があったからな。
いま考えりゃあ、最初からイングラム教官に仕組まれた事だったのかも知れないなあ・・・・・」

(私と同じだわ。彼も一般人だったのに、いつの間にかSRX計画に参加することになった。だったら、あの事件を仕組んだのは、イングラム少佐なの?)

クスハがグルンガスト弐式に乗るキッカケを思い返し、自分達をサンプル扱いするイングラムに今更ながら不信感を強めた。

「そう、だったんですか・・・・話てくれて、ありがとうござい・・・・・」

ガットォ―――ン!!!!

シンジが礼を言い切る前に、アーガマが強く揺れる。
激しい震動に敵襲かとシンジ達は第2波に備えた。だが、次の衝撃は来ない。
代わりに来たのは、不思議な光だった。まるで異界に導く篝火みたいに・・・・・
考える間もなく、七色に輝く光にア−ガマが飲み込まれていく。

「ひ、光が・・・・広がって・・・・!」

誰が言ったか、その言葉を最後に、太平洋上空を航行していたア−ガマが地球上から消失した。


あとがき

倒すべき敵には敬意を払いもしますが、壊すべきモノには風の聖痕の主人公のようにシンジ君は成ります。

カツ=コバヤシ。命中率89%の攻撃を外し、回避率8%でも被弾して撃墜される伝説の男。
別名 気合+1 または+2


レス返し

ケイン様> ゲ−ム設定を使っていますので、矛盾を突かれても答えかねます。それでも応えるなら別系統技術からアプロ−チしたと思って下さい。

アルテミス様> クスハ達や孫光龍のように、超人機は真に認めた主の意志を優先させる様に思えます。
あとは乗り手の思惑次第と言うことで。

ATK51様> ミサトのミサトたる由縁は場の空気を読めない事と、戦闘中のパイロットに余計な事を言うことにあります。
まあ、だからこそロンド・ベル隊に参加したら戦闘指揮官ではなく作戦参謀なんですが。
シンジをめぐる多角関係は本人達が顔会わせしてからと言うことで。

火素矢様> あまりの男運の悪さに苗字を弄り、運気を上昇させようとしたリツコの苦肉の策。画数変化で体調が良くなり。宝クジが当たり。猫グッズを好きなだけ手に入れて・・・・・・嘘です。すいません。単純に間違えていただけです。

15様> 陸・海・空の三体のしもべは、盾の神子の祈りに一時的に応えただけでアレから。また休眠にはいったと言うことで。
剣たる覚醒したサイコドライバ−にも同じように 陸・海・空のしもべ達が現世に存在しているのでコインの裏表が同時に見えない様なものと思って下さい。

イスピン様> イルイは陣営には付かず、個人に付きます。いまの所イルイのナイト兼王子役を務めている少年が最有力候補ですね。
デビルガンダム事件時の話は長くなるので、ちょっと書くかどうかは分かりかねます。

いそはち様> スーパ−モ−ドはともかく、そのうち初号機の大幅パワ−アップはすると思います。

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