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「ある英霊?の物語 第8話(Fate+DUEL SAVIOR)」

柘榴 (2006-06-02 14:38)
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 イリヤの手を引いて走ってきた俺の目の前にあったのは酷い有様だった。

 俺たちが一番最初にいた召喚の塔がものの見事にぼろぼろになっている。

 「うぁ、ひどいな………」

 「来たのかシロウ」

 「あぁ、悪い遅くなって。で、何があったんだ?」

 「俺も今来たところだから分からん。先生達が今調べてる」

 俺の問いにそう答える大河。本当は俺、知ってるんだけどね、何があったのか。

 「そう………となると、やはりこれは計算された物理的な作用による爆発ということですか……」

 「ミュリエル学園長」

 「シロウ君、なんですか?」

 ダウニーとダリアの二人と話しているミュリエルさんに声を掛ける。

 「今爆発って言いましたけど、これは誰かがやったものなんですか?」

 「………えぇ、恐らく」

 「ちょっと待ってください!一体誰が召喚の塔を破壊したっていうんですか!!?」

 ちょっと顔色の悪いリリィがそう叫ぶ。多分フラッシュバックでもしてるんだろうな。

 「落ち着けリリィ。お前、気付いてないだろうけど、かなり顔色悪いぞ」

 「あ………うん、ありがとう、大河……」

 大河の声と肩に置かれた手の温もりで、落ち着いたらしい。けど、今から楔打たなきゃいけないんだよな……大河、フォロー頼むぞ。

 「お兄ちゃん!!」

 「大河君!!」

 「師匠!!」

 と、全員揃ったか……ちょうどいいな。

 「学園長、さっきの誰かっていうの訂正します。……破滅がやったんですか?」

 「「「「「!?」」」」」

 「?」

 「何故そう考えたのです?」

 驚く大河たち、何のことか分からないイリヤ、で、俺の考えを聞こうとするミュリエルさん。

 「今、爆発って言ったところから、これは多分に人為的なものだって事が分かります。ここ、爆発物とかないですからね。で、爆破して得するのは、救世主に関する塔なんだから、救世主に敵対する側、つまり破滅ってことになると。」

 「つまり、破滅がこの学園にいるって事か?」

 「………その可能性は否定しません。しかし、限りなく低いでしょう。何故なら、破滅にとりつかれたものは理性もなく、ただ己と周囲の破壊のみが目的となるからです。このような破壊工作をする理性など持ち合わせられません」

 「いや。そうとも限らないんじゃないですか?」

 「えっと、どういうことですか?」

 「だから、破滅にとりつかれてなくても、それに手助けする人間がいるかもしれないって事。」

 イリヤにそう答えると、リリィが怒りに顔を染めながら、こっちに怒鳴り散らす。

 「ふざけないで!!人間の中に破滅に手助けする奴がいるですって!!!?そんなの、そんなのあるわけないでしょう!!!!」

 「落ち着けリリィ!!」

 「放して!放して大河!!あいつ、あいつが!!」

 大河の腕の中でもがくリリィ。

 「悪い、ちょっとこいつ外に連れてくな。」

 「頼む。まだ他の皆に話したいこともあるから。」

 「貸し一つな。ほら、行くぞリリィ」

 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

 俺に敵意の視線を向けながら、リリィは大河に連れられ外へと歩いていく。

 「あの子の居た世界は破滅に滅ぼされているのです。」

 「なるほど。それならあの行動も理解できます。」

 ミュリエルさんのその言葉に納得した顔を見せる。話される前に知ってはいたんだけどね。

 「ですが、信じられません。破滅に味方する者が人間に居るなんて……」

 ベリオも俺の言葉に納得してないらしい。

 「そう難しいものじゃないだろ?破滅を一つの宗教と考えれば」

 「宗教、でござるか?」

 「そ。例えば俺が知ってる宗教なんかだと、汝が成したいことを成せって言うのを最上の教義に挙げてるのもある。それだとありとあらゆる非道徳的な行動も許される訳だからな。似たように滅びこそ神のご意思だって考えてる奴が居てもおかしくないだろ?」

 実際そんな事言ってたしな。ダウニー先生は。

 「第一救世主伝説だって見方を変えれば、末法思想みたいなもんだし。」

 「なるほど、言いえて妙でござるな。」

 「けど、それって私たちがこの先……」

 「……そう、人間を相手にしなきゃならないってことになる。それも破滅を信じてるなんて凄まじい電波野郎をな。」

 未亜の言いかけた言葉を俺が繋げる。

 「まだ今回の事件が破滅が起こしたものとは限りませんよ。」

 「かもしれません。けど、覚悟は持ってた方がいいと思うんで。」

 じっとこちらを見つめるミュリエルさんの視線と俺の視線が絡み合う。

 先に折れたのはミュリエルさんだった。こうしている時間が惜しいという所か。

 「……何にせよ、今はまだ調査してみなければ分かりません。ダウニー先生、ダリア先生、至急調査の準備を」

 「「はっ」」

 「貴方たちは命があるまで待機しているように。いいですね?」

 「はい。行こうか。イリヤ」

 「あ、あの、ミュリエルさん!」

 「どうしました、イリヤさん?」

 「あの、犯人探し、大変だと思いますけど頑張ってくださいね。手伝えることがあるならお手伝いしますから。」

 「………ありがとう。気持ちだけもらっておきますね。」

 媚や諂いからじゃない本心からのイリヤの言葉に、ミュリエルさんは優しい笑みで返す。

 「……学園長が笑ってる……」

 「あ、明日は雪でござるか?」

 「ミュリエル……久しぶりに貴方の笑顔を見ました」

 「………イリヤちゃん、何ていい子なの……(ウルウル)」

 何か、最後だけ見てるところ違わないか?

 「……ん、んん!!貴方たち早く戻りなさい!!」

 全員に見られてるのが恥ずかしかったのか、ほんのりと顔を赤くしてミュリエルさんが怒鳴る。

 重い話をして沈んでいた空気が軽くなったのを感じながら、俺達はそれぞれ塔を後にした。


 ある英霊?の物語

 弟8話 迷宮に、潜ってみよう(パート1)


 「さてと……遂に起きたか。」

 「シロウさんは今回の事件の犯人を知ってるんですか?」

 「というか、黒幕をね。ゲームでもこの事件は起きてたし。」

 寮へと帰る道すがらイリヤの問いかけに答える。ちなみに皆とは既に別れてます。ばれるとまずいしね。

 「なら早くミュリエルさんに教えないと!!」

 「ちょっと待て。悪いけど今は教えられないんだよ。」

 「どうしてですか!?やったのはさっきの話だと破滅って敵側なんでしょう!!?」

 そう、確かに破滅の軍勢の一人がこれをやったと思う。

 けど……

 「今は、言えない。」

 「……何か訳があるんですか?」

 「まぁ、な。色々事情があるんだよ。」

 本当は大して理由があるわけじゃない。ただ、今黒幕はダウニー先生だって話すのは、気が引けただけだ。

 そう、あいつがスクワレナイノハイヤダッタカラ。

 ……何か、今、また変なノイズが走った気が……

 「………とにかく、今は言えない。それよりも今回の事件がきっかけでこの話が動き始めるから、その準備をする方が先決だ」

 「……分かりました。後で説明はしてくださいね」

 不承不承納得するイリヤ。後で上手い言い訳考えないとな……

 「お〜〜〜い」

 と、不意に俺たちを呼ぶ声。また来たよ、イレギュラーの一つが……

 「……はぁ、はぁ………ふぅ、いい所であった。セルビウムを探すのを手伝うがよい」

 「開口一番が命令かよ。いい根性してるなこら」

 毎度おなじみボンクラーズ筆頭のクレアさんのご登場である。

 「あれ?今日も会いにきたの?」

 「うむ。仕事がかなり溜まっておったがの。ばっくれて逃げ出してきた。」

 おいこら、今聞き捨てならんことを言ったぞお前。

 「も〜、駄目だよクレアちゃん」

 そうだ、しっかりと怒ってやれ。それが年長者の仕事ってもんだ。

 「ばっくれるときは、きちんと出来そうでかつあんまり怒らなそうな人に押し付けてからじゃないと。」

 「その辺は大丈夫じゃ。手ごろな相手に押し付けてきた。」

 「待たんかお前ら!!仕事は自分でやるのが基本だろうが!!!」

 てか、お前仮にも王女だろうが!!まだばれてないけどさ!!!

 「え〜、でも、女の子にとって好きな人に会うって言うのはいかなる事からも優先されることですよ?」

 「だからって仕事をやらない理由にはならん!!」

 「いちいちうるさいのぉ……お主、嫁いびりが趣味の姑か?」

 「お前のような嫁など大金詰まれても貰いたくないわ!!」

 「も、もしかして婿に!?」

 「どこをどうしたらそういう思考回路に繋がるんだ、この天然娘はぁ!!」

 もういい加減定番になってきた高速フックを、イリヤの頭に叩き込む。

 「はぅぅぅぅぅ………」

 「ったく……で、セルが居ないだったか?またいつものごとく呼べば来るんじゃないか?」

 あいつなら大方俺らの後にでもストーキングしてるだろうし。

 「うむ。そう思ったのじゃが呼んでも来んのじゃ。」

 「それもまた珍しいな……」

 「それで、この間セルビウムから聞いた寮の方に行ってみたのじゃがな?」

 「ふむふむ」

 「そこに居たもの達に聞いても、何やらフォースの暗黒面にでも囚われたような顔をされるだけで、まともに答えてもらえなくての。」

 「………待て。ちなみに誰に聞いたんだ、それは?」

 めっさ誰か分かる気もするけどさ。

 「ん?よくは知らん。ただ格好からすると傭兵科のもの達だろうな。」

 オウ、ヤッパリソウデスカ。アッハッハ

 「ちなみに、何か言ってたか?そいつ等」

 「いや。ただ歌を歌っておったぞ?確か……『男が嫉妬に燃えるとき〜♪シットマスクの登場だ〜♪素顔が誰だか知らないが〜♪シットの心は一繋ぎ〜』……とか」

 アニメ版かよ……てゆうか本当に何でもありだな、この世界。

 ピコーン

 (ただいま、番外編2話のフラグが一つ立ちました。残るフラグは一つです)

 ……無視しよう。うん、そうしよう。今は関係ない話だ。

 「ま、まぁ、今の話は聞かなかったことにしておこう。」

 どうせ襲われても今のセルなら、死なないだろうし。うん。

 「で、お主達なら知っているかと思ったのじゃが……」

 「ごめんね。私たちも知らないんだ」

 「てか、復活してたんだなお前。」

 「あの位の攻撃なら2秒で回復できますよ、えっへん」

 あ〜はいはい。よかったね。

 「む。リアクションが薄いですよ。罰としてナデナデ20秒間を要求します」

 「ったく、仕方ないな……ほれ、頭よこせ。」

 「は〜い」

 尻尾をぱたぱたさせながら寄ってくるイリヤの頭を撫でる。

 「んん〜〜〜♪気持ちいいです〜〜〜♪」

 「いいのぉ、イリヤは……」

 そんな様子を羨ましそうに見つめるクレア

 「……セルビウム〜〜!!どこにおるのじゃ〜〜?余は淋しいぞ〜〜〜!!!!」

 天に届けとばかりに声を挙げる。この声なら、いい加減に届くだろうな、多分……

 ………ドドドドドドドド………

 ほら、予想通り、土煙と共に足音が……って何か妙に重くないか?

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド……………

 ブヒヒ〜〜〜ン

 って、馬!!?馬の声!!?

 「………ク〜レ〜ア〜ちゃ〜〜ん!呼んだかな〜〜〜?」

 「!?セルビウムか!!?」

 「クレアちゃ〜ん!!」

 「セルビウム〜〜!!」

 声の方へと走り出すクレア。が、その前にセルの方が先に中庭へと到着する。

 「っと……おまたせクレアちゃん。」

 「セルビウム〜!!探したぞ〜〜〜!!」

 「はっはっは、ごめんねクレアちゃん。こいつを捕まえるのに手間取ってさ」

 「セルビウム〜〜」

 飛びつくクレアを受け止めながら、滅茶苦茶いい笑顔浮かべるセル。

 それはいい。それよりも、何よりも……

 「何だその規格外な馬は!!?」

 そう。セルが乗ってる馬。もうね、何と言うかでかい。それしか言い様がない。でかくて黒い。

 「ま、まさかあの馬は……」

 「知っているのか、ライデン?」

 「あれこそ噂に名高い、荒野の覇者。その素晴らしき体躯と稲妻の如き走りに惹かれ、幾人もの猛者たちが挑んだが誰一人としてその背に乗ることが出来なかったといわれているが、よもやあの馬に乗るものがあろうとは……」

 「………解説ありがとう。どこの誰とも知れない人たち」

 いつの間にか居た、ハゲの二人は言うだけいうとさっさとどこかへ行ってしまった。

 「で、何で馬なんかに乗ってんだお前は。イリヤも目を輝かせるな。」

 「だ、だって、白馬の王子様みたいじゃないですか。」

 「白じゃない、白じゃない。」

 あれをどう見たら王子様に見える、よくて拳王だろ。

 「ふっふっふ。聞きたいか?」

 「いや。その台詞で聞く気が大分失せた。」

 「まぁ、そう言わず聞け。これは紳士の嗜みってやつだ」

 「………紳士?」

 いや、紳士とは程遠いと思うのは俺だけか?

 「そう。紳士の嗜み、それこそ、乗馬だ!!」

 「………すまん、理解できない。詳しい説明をしてくれ。」

 いや、分かってるさ。こいつが言わんとしてることが。でもさ、確認しときたいんだよ。こいつが如何に馬鹿かって事を。

 「だ〜か〜ら、俺は紳士たらんとしてるんだから、馬に乗ることくらい当たり前だろ?」

 「そこでどうしてそんな化け物な馬に乗る必要性が出てくる!!?」

 「何を言う!そんじょそこらの馬じゃ、クレアちゃんを乗せるのに失礼だろう!?」

 「程度ってものを知れ、このいかれタキシード!!」

 第一そんな拳王様御用達なUMAに乗せられて喜ぶ女性が何処に居る!!?

 「いい馬じゃの〜、城の馬屋にもここまでの馬はおらんぞ?」

 なんて言いながら、乗っかってる馬の頭を撫でるクレア。

 ………居ましたね、ここに。

 「これ程の馬を見つけるとは、流石セルビウムじゃな♪」

 「あはは、クレアちゃんの為ならこの位朝飯前だよ。」

 殴っていいですか?何か無茶苦茶腹立つんですけど。セルのいい笑顔見せられると。

 「この馬の名は決まっておるのか?」

 「ふふふ、何だと思う?」

 「ふむ………荒野の覇者云々はあくまで通り名のようだからのぉ……」

 「は〜い、黒王だと思いま」

 「やめろ。その名はやめろ」

 そんな名前付けたら、セルが本当に一子相伝の暗殺拳覚えそうだから。

 「実は、こいつが教えてくれたんだけど……」

 馬の首筋を撫でるセル。

 「言葉が分かるんかい。」

 「自分の愛馬なんだ、当然だろ?」

 あ、そ。………つくづく人外だね、この世界。

 「名前はトロンベだそうだ」

 「レーチェル・ハインシュメッカー!!!?」

 よりにもよってそっちかい!!?

 「止めろ!!お前は料理作れないだろ!!?銃も使えないだろ!!?」

 「突然何を叫んでるんだ、お前は……」

 「………はっ!!?ま、まさか、竜巻斬艦刀か!!?止めてくれ!!兄貴が、兄貴が!!!?」

 「シロウさん、お兄さん居たんですか?」

 違う、そういう意味じゃない。

 「はぁ、はぁ、はぁ……す、済まん。ちょっと暴走した。とりあえず、その名前は止めてくれ。お願いだから。」

 「断る!」

 「何でだ!!?」

 「その方がお前への嫌がらせになるからだ!!」

 ガキン!!

 「………いい根性だな、セル。一回地獄見せてやろうか?(ぷるぷる)」

 「……それはこっちの台詞だ。前にも言ったが、お前は今のところ抹殺ランキング一位なんだからな(ぷるぷる)」

 斧剣と斬馬刀で鍔迫り合いしながら、お互いに悪態を付く。

 「セルビウム、そんなことより早く遊ぼうぞ。時間は有限じゃ。」

 「そうだね〜。クレアちゃんの言うとおりだよ」

 「うのわ!?」

 突然セルの方からの力が抜け、思わずつんのめる。

 「今日はどこに行こうか〜?」

 「そうじゃのぉ、この馬で思い切り荒野を走るというのもいいかもしれんの。」

 「流石クレアちゃん!俺もそうしようと思ってたところなんだよ」

 「そうかそうか♪やはり気が合うのぉ」

 「……殴っていいか?」

 いい加減にしろよ、この馬鹿ップル。

 「というか、今は一応外出禁止だろうが。せめて敷地内に留めておけ」

 「そういえば、帰ってくるときにもそんなこと言われたな。何かあったのか?」

 知らないのね。まぁ、いいけど。

 簡単に、事件のことを説明しておく。

 「ふむ……で、犯人の目星は付いておるのか?」

 「いや。今さっき発見されたばかりだからな。気になるか?」

 「………まぁ、流石にな。」

 ふっと何とも言えない笑みを浮かべるクレア。仮にも王女だからな。

 「大丈夫だよクレアちゃん。何かあってもお兄さんが守ってあげるからね」

 「心強いのぉ。期待しておるぞ♪」

 どんと自分の胸を叩くセル。ま、いいけどね、別に。

 「そういう訳だから、あんまり遅くまでここにいると変に勘ぐられるから、さっさと帰るようにしとけよ。お姫様。」

 「!?」

 「お姫様?」

 驚いてる、驚いてる。

 「お姫様だろ?セルにそういう扱いされてる訳だし。」

 「あ、あぁ……そういうことか。」

 「そうそう。今はそういうことにしときなさい。クレシーダちゃん♪」

 にやりと笑って、そう答える。

 「……お主、何者じゃ?」

 「さてね?その話はまた今度にでも話してやるよ。今日はお互い忙しいしな。」

 「え?ちょ、シロウさん?」

 「じゃ、ごゆっくり。」

 言って、困惑するイリヤの手を引き、その場から立ち去る。

 ………どうやら追ってはこないらしい。ま、ラッキーかな。

 「シロウさん!ちょっと待ってください!!」

 「ん?おぉ、どうかしたか?」

 「どうかしたか?じゃないですよ!どういうことですかあれは!!」

 ぷんぷん怒っているイリヤ。

 「どういうことって……まぁ、何だ。種蒔き?」

 「意味が分かりません!!」

 それは確かにそうだろう。説明してないし。

 「クレアにちょっと動いて欲しいことがあるんでね。そのために、ちょっと揺さぶりを……」

 「そんなことはどうでもいいんです!」

 「は?」

 「お別れの挨拶はきちんとしないといけないんですよ!!じゃないと、お友達無くしちゃいます!!」

 「そっちかよ!!?」

 お前はつくづく天然だな!!

 「大事なことです!!約束してください、これからはきちんと挨拶するって」

 「いや、あのね、イリヤ。そういうことじゃなくて……」

 「約束、してください。」

 む〜、と睨み付けられる。

 あぁ、何だろう?このいかんともしがたい罪悪感は……

 「だからな……」

 「む〜」

 「あれはある意味必要だったと言うか……」

 「む〜」

 「……(汗)」

 「む〜〜〜」

 「………………はい、ごめんなさい。約束します」

 「はい♪絶対ですよ?」

 一転してにっこりと笑みを浮かべ、俺の頭を背伸びして撫でるイリヤ。

 はぁ……何なんだかなぁ……

 「うふふ♪シロウさんも意外とお子様ですね。」

 お前には言われたくないわ、と言いたくなったが、我慢する。

 くそ、よりにもよってイリヤに説教されるとは。

 「で、クレアちゃんに協力してほしいことって、政治か、経済関係ですよね?」

 「当たり前だろ、あれでも王女なんだから………って、イリヤ?」

 「へぇ〜、クレアちゃん王女様だったんですか……言われてみると、納得ですね。」

 あの、もしもし?

 「何で政治関係だと思ったわけ?」

 「え?だって、クレアちゃん、上流階級、それも結構上位のほうだと思ったんですけど。」

 「だから、何でそう思ったんだよ?」

 さっきの話し振りからすると、こいつクレアの正体は知らなかったんだろ?

 「分かりますよ。だって、物腰がわざとはっちゃけてますもん。」

 「わざと?」

 「はい。性格は多分あの通りだと思いますけど、長い間躾けられた礼儀作法とか、動作って中々抜けないんですよね。体に染み付いちゃって。で、クレアちゃんのそれって凄く綺麗だったんですよ。それこそ、英国貴族もかくやって感じの正当な礼儀作法。」

 当たり前のように、すらすら話すイリヤ。

 「だから、多分貴族、もしくは豪商とかの上流階級、それもあの年で体に染み付いちゃってるってことは、幼年期から嫌って程仕込まないといけないですから、そこまでする必要があるのは、相当の地位を持ったお家だろうなって、当たりをつけてました。それに、人を使うのに慣れてる感じもありましたから、もしかすると、もうお家の仕事を手伝ってる、それか、すでに継いでる可能性もあるかなって。」

 …………凄い。

 普通、そこまで読むか?

 「……シロウさん?」

 「お前、凄いな。よくそこまで分かるな。」

 「凄いでしょう、えっへん♪」

 「そういうことをされると途端に、褒める気が失せるけどな。」

 胸を反らしたイリヤが、途端にがっくりとうなだれる。

 「あぅ〜、ひどいですよ〜」

 「だから、そういうへっぽこを直せと言うとるだろうが……」

 言いながら、イリヤの頭を撫でてご機嫌を取っておく。

 「えへへへ」

 「しかし、よく気付いたな。本当に。」

 「周りにそういう子が一杯いる学校ばかり行ってましたから。高校だと、特にはっちゃけた人が多くて。」

 まぁ、高校辺りになるとそういう英才教育受けてた奴が、だんだんはっちゃける頃なんだが。

 「ちなみにどこの高校行ってたんだ?」

 「えっと、知ってるかどうか分からないですけど……」

 ちょっと言いよどむイリヤ。何だ?もしかして、外国の学校か?

 「私立桜蘭高校っていうんですけど、知ってますか?」

 あそこかよ!!?

 「知ってるも何も、卒業生だっての!!」

 「え!?そうなんですか!!?」

 「あれだろ!!あの、ホスト部なんてふざけた部が承認されてる!!?」

 「そう!そうです!!部長が何故かキングと呼ばれるのが伝統な!!」

 うぁ、伝統になってるのかよ、よりにもよって。

 「俺が居たのは初代が運営してた頃だからな……無茶苦茶やってたよ、本当に。」

 なまじほとんどが超上流階級な上に、美形揃いだったから、もう手のつけようがなかったんだよな。

 「初代の人が残したっていう数々の逸話は未だに伝説として、ホスト部に語り継がれてるそうですからね……」

 いやはや、随分と懐かしい名前が出たもんだ……卒業して、もう2年は経ってるからな……

 「あそこになら確かに、いいとこのお嬢様やら何やらが集まるな……けど、それ抜きにしてもお前の洞察力は凄いわ。うん、褒めてやる。」

 「えへへへへ。もっと褒めてください♪」

 すりすりと体を擦り付けてくるイリヤ。よしよし、もっと撫でてやろう。

 なでなでなで……

 「………って違う。今すべきことはこれじゃないだろ。」

 「ふえ?」

 「いや、ふえじゃなくて。」

 いかんな、ついほのぼのとしてしまう。

 「とにかく、クレアの協力はさっき言った、しておきたい準備の一つな訳。理解したか?」

 「でも、あの言い方だと、むしろ敵対されませんか?」

 「……あ」

 「…………シロウさん」

 じと〜って感じでイリヤに見つめられる。だ、大丈夫。何とかしてみせるさ。うん。

 「と、とにかく!!」

 「どうなんですか?その辺?」

 「それは置いといてともかく!!これから他にも色々しなきゃならないから、イリヤは寮に戻って待ってること!!」

 「あ!逃げる気ですね!!」

 「いいから、言うこと聞いて大人しくしてろよ!!絶対だぞ!!じゃなきゃ、もう二度と撫でてやらん!!!」

 「えぇ!!!?」

 イリヤが泣きそうな顔で一瞬動きを止める。

 よし!魔術回路起動!!

 「じゃあな!!」

 そう言って、赤い魔力を放出しながら、俺は全速力でその場から走り去っていったのだった。


 「ふぅ……ここまでくれば大丈夫だろう」

 しかし、どう考えても俺の行動は、子供そのものだな。うぅ、自己嫌悪……

 ………けど、今から話すこと、イリヤが聞いたら、絶対反対するだろうからな……

 ……………気を取り直していこう。

 さ、交渉相手のリコを探さないとな。てか、どこにいるんだか……

 考えながら、辺りをぐるぐる見渡す。

 って、居たよおい。

 丁度同じように辺りを見回しながら、図書館に入ろうとするリコの姿を発見する。どうやら、もう、禁書庫に入るつもりらしい。

 危なかった……ある意味運がいいな、俺。

 幸運に感謝しながら、リコに歩み寄って声を掛ける

 「どこ行くんだ、リコ」

 「!?シロウさん……」

 後ろから声を掛けられて、かなり驚いた表情を見せるリコ。

 「何故ここに?」

 「何故って、導きの書、取りに行くんだろ?赤の書の精」

 あ、びっくりしてる。そりゃそうだよな、いきなり言われればな。

 「…………どういう事です?」

 「待て待て、いきなり喧嘩腰になるな。お前と争う気はないから。」

 「信じられません。何故貴方が私の事を知っているのです?」

 その発言は俺の言葉を肯定することにならないか?

 「知りたい?」

 「言いなさい。言わないというのなら……」

 「だから戦う意思はないっての!!とりあえず、その本しまえ!!」

 ミスったな……いきなりバトルムードになってるよ。BGMも変化してないか?

 「話す!話すから、まず落ち着け!!」

 「………」

 「………何なら、今度王都の料理店のメシ奢るから。」

 「信じましょう。話してください」

 ……………ツッコミしてもいいですか?

 「ご飯を奢ってくれる人に悪い人はいませんから」

 と、当然の事のように話すリコ。お前は何処の古流格闘技の使い手だ?

 「さいですか……とりあえず座って話しましょ」

 適当な図書館横の物陰に腰を下ろす。んで、隣にリコ。その隣にイリヤ……………って。

 「お前は何時の間にいるんだ!!?」

 「?先程から後ろにいましたよ?」

 「はい♪シロウさんの後尾行してました♪」

 「お〜〜〜〜ま〜〜〜〜〜〜え〜〜〜〜〜〜は〜〜〜〜〜〜〜〜…………寮で待ってろって言ったろうが!!!」

 ガツンと頭に一発。

 「ひぅ〜〜〜〜〜〜………だ、だって、心配だったんですよぉ……またシロウさんが敵対モードな交渉するんじゃないかって……実際今だってそんな感じでしたし……(うるうる)」

 「う゛……」

 「理不尽な理由で、女の子を泣かせるのは、最低だと思います。」

 ぐさっ!!

 くぅ、リコの言葉が心に響く……

 「う、うぅ……仕方ないだろうが。こういう交渉しかしたことないんだから。」

 「なら、なおさらの事、イリヤさんには同席してもらった方がいいですね。」

 「そうです!あ、リコちゃん、お菓子食べる?持ってきたんだけど?」

 「頂きます。」

 もぐもぐとチョコレートを食べる二人。その様子に溜息が思わず漏れる。

 「分かった。但し、話だけだぞ。それを聞いたらさっさと帰ること!いいな!!」

 「(それはシロウさん次第ですけど……)はい、分かりました」

 「もぐもぐもぐ……」

 「じゃ、食べながらでいいから聞いてくれ。まず、俺の言うことがどんなに突拍子もないことでも信じること。」

 「もぐもぐ……はい。それで?」

 もう食べ終わったのか、リコ。早過ぎ。

 「俺はこの世界の、というか、今回の救世主に関する事件の結末を知ってる。誰が救世主に選ばれるか、救世主の本来の役目は何なのか、それを知ってるからこそ、お前とイムニティのことも知ってる。」

 「!?イムニティまで!!?……いえ、続けてください。」

 「えっと誰ですか?イムニティって?」

 「リコの双子の姉妹とでも考えとけ。役割は違うけどな」

 一応その辺は説明したつもりだったんだが……

 「で、どうしてそんな事を知ってるかって言うと、今回の事件はある世界では一つの物語として描かれてる。俺はその物語を読んだことがあるんだよ。」

 「どういう事ですか?貴方たち守護者が居た世界にそんなものがあったという話は聞いたことがありません。」

 「そう。誰にも言うなよ。俺とイリヤ、まぁ中の人は守護者じゃない。全く別の世界の人間だ」

 「は〜い、そうで〜す♪俗に言う憑依合体って奴です。」

 オーバーソウルはしないけどな。

 「そんな事がありえるのですか?」

 「普通はない、と思う。そもそも英霊は人間より遥かに高次元の存在だからな。何でこんなことになったのか、俺たちも分からないけど。あ、ちなみに英霊云々っていうのも、別の物語として描かれてて、それを知ってるだけなんだけどな。」

 「それで、私たちの当面の目的はラスボスの神を倒すってことなんです」

 「神を!!?」

 馬鹿、説明無しにいきなり言うな。

 「不可能です!第一神はこの世界とは別次元に存在するもの、それに会うことすら普通には為し得ません!!」

 「それをやった奴がいるんだよ、俺が知ってる話だと。」

 立ち上がるリコを宥めて、もう一度座らせる。

 「その話では、救世主に選ばれた奴が、神を倒す選択をした。尤もそいつは完全な救世主じゃなかったけどな。世界を創るっていう力を持たない、異端の救世主なんだから」

 「それは誰……!?まさか!!!?」

 「その通り。当真 大河。そいつがその物語の主人公であり、救世主となるもの。で、今のリコのマスターだろ?」

 飲み込みが早いな、流石本の精霊。

 「そんな……マスターが……」

 「呆然としてる所悪いんだけど、聞きたい事があるんだが?」

 「………何ですか?」

 突然だった為、まだ顔色が悪そうなリコ。ただ、これは答えてもらわないと。

 「どうして、大河を選んだ?俺の知ってる話だとお前が選ぶのはどちらかというと緊急措置に近いものだったし、こんなに早く選ぶものじゃなかった。その辺を聞いておきたい。」

 「?そうなんですか?」

 「イリヤには話してなかったけどな、で、どうなんだ?」

 「………私にも分かりません」

 「はぁ?」

 なんだそりゃ?どういう事?

 「私も何故大河さんを選んでしまったのか分からないのです。大河さんと戦って、負けて、その………スル事になった時、思わず契約を結んでしまったのです。」

 おいおい。何だよそれは。つまりなにか?救世主を選ぶのを頑なに拒んできたこいつが、理由らしい理由もなく契約を結んだと?

 「ただ、そう。その時に、というか、大河さんに会ったときから薄らと感じていたのは、この人が、この人しか私の主にはなれない。そんな想いがあったことです。」

 思い出すように、そうリコは語る。

 「…………それは、最初から?」

 「はい。それが何なのかは分かりませんが」

 ここで少し整理しよう。

 大河は何故か皆を愛している。そして、愛される側もそれが当然だと感じている節がある。

 もしかして、こいつらには未来の記憶がある?

 「確認したい。リコはこの後起こる出来事を知ってるか?」

 「…………いえ。それは分かりません。」

 「でも、大河を愛してるって気持ちは最初からあったと。」

 「……………思い出してみると、そういう気持ちが初めから少なからずあったと思います。」

 「? ? ?」

 「訳分からないって顔してるぞ、イリヤ。安心しろ、俺も分からん。多分、逆行に近いものが起きてると思うんだけど。」

 そう、逆行だろう。というか、そうとしか思えない。

 ただ、だとすると記憶が無いのが全く分からない。おまけにこの様子だとヒロイン全員がそうなのだろう。

 「…………だ〜、折角物語通りの事件が起きたかと思ったら、余計に訳分からない事が増えてるし……一体何なんだよ」

 頭をグシャグシャに掻き毟る。

 「貴方はこの事件が起きる事を知っていたのですか?」

 「あぁ。もしかしたら起きないかもしれないとは考えたけどね。この事件が元で、お前と大河、イムニティと未亜が契約することになるんだよ。物語だと。」

 「未亜さんが、ですか……それは納得ですね。あの人の精神は歴代の救世主を超えるとも思えますから」

 「イムニティもそんな事言ってたよ。一応、それは阻止しようと考えてたんだけどね……」

 「はい先生!それはどうしてですか?」

 誰が先生だ、俺は家庭教師のお兄さんか?

 「一応の保険。未亜ルートに行ってほしくないからな。このままだとハーレムルートっぽいけど。」

 「ルート?……………つまり、幾つか分岐点があるわけですね?」

 「そ、俺が知ってるだけでもその物語は、7つ、いや8つの結末が存在する。で、唯一完全に神と対峙するのは、ハーレムルート、つまり救世主クラス全員が大河と恋仲になるルートなんだよ。そのルートならまだしも、未亜一人のルートだと大河も未亜もお互いが苦しまなきゃならないからな。そこに行く可能性は潰したかった。」

 未亜が白の主にさえならなければ、兄妹で戦う、なんてことは避けられるからな。

 「でもそうすると、誰が契約するんですか?やっぱり契約しないと話が進みませんよね?」

 「そのために、俺がリコと一緒に行こうとしたんだよ。」

 そう答えると、二人ともえ?って顔をする。何をそんなに驚く。

 「大河がそこに行くのは、即救世主になるから避けたい。同様に未亜や他の救世主候補にも契約は出来れば結ばせたくない。なら後は、俺が一緒に行くしかないだろうが。幸いリコと一緒に一足早く行けば、ショートカット使って誰より早く最深部に行けるからな。」

 「それなら私も」

 「お前は駄目。………危ない目にはあわせたくないからな。」

 イリヤの意見は即座に却下。

 「でも……」

 「でももストも無し。さっきも約束したろ?話すだけだって。ついでに言うと、お前が絶対そう言ってくると思ったから、話をする気も本当は無かった」

 何で守りたい人をわざわざ危険な目に合わせなきゃならないんだ。

 「しかし、そう簡単に行くでしょうか?」

 「それも考えてる。契約済みのリコと契約してないイムニティなら、ほぼ間違いなくリコが勝てる。そうなったら、あいつもとにかくその場で契約してくれそうな相手を選ぶはずだからな。」

 元々の話のほうでは、その役はリコがやっていたんだけど。

 「で、契約さえしてしまえば、救世主の役割とかは俺は良く知ってるから、大河と戦いさえしなければいい訳。あ、それと死なないようにすることか。ここまでで何か意見はあるか?リコ」

 「……………何故、貴方は大河さんに協力するのですか?言ってみれば、貴方は今回の件とは全く関係がない存在でしょう?」

 「……………ムカツクから。」

 リコの問いにそう答える。

 「大河も未亜も、リリィもベリオもカエデも、リコもナナシも、俺は好きだから。そいつらが幸せになるなら、やれることはやりたいんだよ。その幸せを潰す奴がムカツクんだよ。……………愛し合ってる奴らが、よく分からないモノで引き裂かれるのは大嫌いなんだよ。だから大河に手を貸す。神もぶっ倒したくなる」

 アンナオモイハ、ミタクナイシ、アジワウヒツヨウナンカナインダカラ。

 「ま、そうは言っても出来るのは不安要素を消しながら、大河が神と戦えるようにお膳立てしてくことしかないんだけどね」

 あはは、情けない。けど、このお話の主人公は大河だしね。俺は脇役に徹しましょう。

 「そんな訳で、協力をお願いしたいんだけど……いい?」

 「………………貴方がマスターに力を貸したいと考えているのは分かりました。分かりました、力をお貸しします。」

 よっしゃ!とりあえずリコちゃんゲット!!

 「良し、そうと決まれば早速動こう。もたもたしてたら召集掛かって、皆で行くことになるからな。」

 行って立ち上がる俺とリコ。大してイリヤは不安げな顔でまだ座っている。

 「イリヤ?」

 「…………どうしても、私はついていっちゃ駄目ですか?」

 「………イリヤ」

 見上げるイリヤと屈んで目線を揃える。

 「地下はモンスターが大量に放されてる。その中を進まなきゃいけないんだ。」

 「大丈夫です!私、戦います!!モンスターなんて私が」

 「イリヤ」

 続けようとするイリヤを、抱きしめて黙らせる。

 「………気持ちは嬉しい。だけど、イリヤには残ってて欲しいんだ。」

 「……私が弱いのが悪いんですか?」

 「そうじゃない。そういうことじゃないんだ。ただ、イリヤには別の仕事をお願いしたいんだ。」

 「何ですか、それ?」

 「他の皆が図書館に入るのを出来るだけ遅くして欲しい。それは残ってるイリヤにしか頼めないことなんだよ。」

 イリヤの瞳を見つめる。……あぁもう。そんな泣きそうな顔するなよ。

 「な、お願いしてもいいか?イリヤにしか頼めないことだから」

 「そういう台詞ってよく使われますよね。…………分かりました、けど、必ず戻ってください。約束です。」

 「約束する。安心しろって、何といってもリコも一緒なんだからな。死ぬことは多分無いって。」

 「出来れば、私も残っていて欲しいのですが……」

 「そこでやる気を削ぐ台詞を言うな。」

 苦笑しながら、イリヤの頭を撫でる。

 「な?帰ったら、いっぱい撫でてやるからな。そのためにも言ったことはやってくれよ?」

 「………はい。」

 頷くイリヤに微笑を返して立ち上がる。

 「じゃ、行ってくる。よろしくな。」

 「必ず!必ずですからね!!」

 その声に手を振りながら、俺とリコは並んで図書館へと入っていく。

 「シロウさん」

 「?どうかしたか?」

 「…………いえ。ただ、待たされる者の気持ちというのは、辛いものですよ」

 「あぁ、分かってる。だからさっさと行って、さっさと戻ってこよう。」

 「………はい。」


 もしかしたら、リコには分かっていたのかもしれない。この後起きる事が。それは同じ女だからなのか、それとも……


 「………シロウさん。ごめんなさい、嘘付きました。」

 去っていった背中を見送りながら、そっと呟く。

 「私、ただ待ってるのはごめんです。」

 だから、勝手に動く。

 まずはミュリエルさんの所に行こう。そして、二人が、地下に潜ろうと話していたと言おう。

 そうすれば、きっとミュリエルさんは二人を追いかけるよう指示をするはず。中が危険で、かつ救世主に関するものがある所なら、クラス全員で行かせられるだろう。

 私一人で行っても追いつけないかもしれないし、追いついてもすぐに返されてしまうかもしれない。

 けど、皆と一緒なら、返される可能性も減る。私一人を追い返しても意味がないのだから。

 それに、仲間が多い方が追いつけるにも早くなるはず。

 「………ふふ、黒いな、私。」

 でも、これが今までの私。

 元の世界でずっといい子の仮面を被ってきた私。

 「シロウさんが居ないと、こうなっちゃうんですよ?私。」

 だから、側にいないと。

 だから、いつでも側に置いておいて。

 危険でも、何でもいいから。

 貴方がノゾムナラナンデモスルカラ。

 モウアンナノハニドトイヤダカラ。

 届かない言葉と想いは宙に消えていった。


 あとがき

 ソロモンよ、私は帰ってきた〜〜〜!!!

 てな、感じで第8話でした。う〜ん、約一ヶ月ぶりだから既に忘れてる人もいるかもw

 ここ最近、仕事始めたんですけど、それと平行して、持病が再発して、仕事と通院の繰り返しで全然書けませんでした。駄目じゃん俺。

 で、ある意味リハビリで書いたんですけど、微妙かも……ま、どうか大目に見てやってください。

 次回の更新は今回よりは早いと思います。通院もようやく終わったんで。

 そんなわけでレス返し言ってみよう〜〜。


 >陣様
 カエデが影技ちっくな事をやったのはネタです。いや、カエデエンドの時の血化粧がどう見ても刀傷の化粧にしか見えなかったものでwいずれは本当に影技使うかも……ま、あくまでバランス崩さない程度でですけど。。ただの蹴りで地面割ったりとかは流石に無茶すぎですからねw
 >仁王立ちで〜
 しまった!!忘れていた!!気をつけなければ……w

 >セラト様
 以前に引き続き、今度は奥さん出してみました。ちなみに、作者内では後二組位あれのカップリングを出そうと思っていたり……(こらこら)
 加護で戦うスタイルは一応初めから考えてはいたので、受け入れてもらえてよかったです。ただ確かに敏捷下がるんですよね……あの戦い方をエミヤがしなかったのは、敏捷もそうですが、わざわざ事前に出しておかなくてもその場で即座に出せるから、やらなかったと考えてます。主人公は投影を手早く出来ませんから、あの様なスタイルになったと。
布都御魂剣は初めAかなとは思ったんですけど、認知度がそんなに高くないだろ、と思ったのでBにしました。+補正は確か持っている宝具そのものの数が無茶苦茶少ないって元ネタで設定があったので、無しにしました。

 >ミゼル様
 うぃ、確かに早いです。それに物によってはただ身に付けておけばOKみたいな加護もあるので、奇襲にも使えたり。実は使い勝手結構いい?
 アニメ版は見たいけど、見れてないんですよ。地方なもので(涙)DVD出たら確認したいですけど。

 >監獄様
 いつも通りキレのあるネタ突っ込みありがとうございますw
 作者がネタまみれな人間なのでこういう、ネタに関するツッコミをきちんとしてくれると結構嬉しかったりします。ので、これからもじゃんじゃんこういう感想送ってくださいねw
 しかし、わかめ高校に気付いたか……やりますねw

 >くろこげ様
 変態は増やすものじゃありません。自然と増えるんです。ほら、一匹見つけたら20匹は居ると思えって感じでw
 ゲイボルクに関するご指摘ありがとうございます。てか、きちんと事前に調べておけよとセルフツッコミしたくなる今日この頃……w

 >アレス=アンバー様
 事前投影は確かに一長一短ですね。まぁ、主人公にしてみたら、あくまで防御力向上がメインですので、あまり壊さないでしょうけど。
 ゴルンノヴァやサイブレードはちょっと強力すぎかな〜とか考えたりして、どうしようか迷ってます。後者はともかく、前者は下手するとエクスカリバー並みの破壊力出しますからねぇ。
 セルは変なところで、ではなく、変なところ「が」レベルアップしましたw日本語は気をつけましょうw

 >カミヤ様
 >てっきり大河〜
 ミスリードは作者の楽しみの一つなので、引っかかってくれると結構楽しかったりwこの辺り、TRPG畑で育ったところが出てきたりします。
 投影品は確かに重いでしょうね。特に次回では、予定としてすでに5本位背負わせますから、一本二キロとしても、10キロ。約米袋一個。それ背負った挙句、両手に剣を更に持つ……頑張れシロウw
 イリヤの隠し事は終盤にも関わってきますし、今回もちらっと出てきました。というか、黒いです。黒いですけど、スキルお子様持ちなんですよね〜。この辺も伏線になってたり〜w
 シアニー嬢は出すときはこれ!と考えていたので。さってと、次はゴッヘルかな〜?
 伏線は回収していきますけど、回収するより張る方が多くなっていったりして……頑張れ、俺!!

 >シヴァやん様
 ども、お初です。
 ネタが一杯っていうのは、褒めてもらっているのだろうか?と考えてみたり。冗談ですw
 元々ネタ好きなもんで、気がつくとやたらと入れまくるんですよね〜、ネタ。それこそこれDUELか?と言いたくなるほど。駄目じゃん。今回のネタは果たして分かってもらえたでしょうかねぇ。
 イリヤの中の人の予想は、お任せします。明かされるのは終盤辺りですけど。ちなみに、作者の友人に中の人の正体明かしたら、「予想できるか、そんなもん!!」と言われてしまいましたw
 >貫通者〜
 オォ、ベリィ〜シット!!(Vのお方の如く)そう言えばそうだった!!

 >クーロン様
 どもです。楽しんでいただけたようですね。
 カエデがクルダちっくな事をしたのは、カエデルートのラストバトルからです。ちなみに、何で自分の血?と思われた貴方。あれは「自分の中にある師匠」に見守っていてほしい、という事もあったり。まぁ、色々と中に注いでますしねw(下品だな俺)
 グレイプニルや天の鎖は、たぶん投影出来ないんじゃないかなと思います。シロウが投影できるのは基本的に武器ですから。(例外がローアイアス)仮に出来たとしたら……大河や未亜が作ってくれと頼みにくるかも。前者はプレイ用、後者は捕獲用にw
 レーヴァテインはそのうち出しますね。やっぱ、有名どころですし。
 イリヤの武器の大火力……ニヤソ 考えてますよ〜色々とw
 次回も頑張るんで、楽しみにしててくださいね〜。体は一回壊したから、多分大丈夫w

 >悠真様
 うぃ。彼です。赤いバンダナマンです。ちなみに、未だ独身ですw
 アーチャー武器も何か出したいなとは思ってます。今のところはどれにするか考え中ってところですけど。
 次回も頑張りますんで、よろしく。

 >雪龍様
 そう、赤いあの人ですよwちなみにパフェは無茶苦茶甘かったですけど、どこか塩辛かったそうです(リライト曰く)w
 >巨乳〜
 このお話でのイリヤは巨乳属性です。大丈夫!巨乳属性とロリ属性は両方持ってても両立するはず!!

 >蒼一様
 う〜ん、やっぱり動きづらさが皆さん気になるのか。まぁ、背中に大荷物背負ってれば当然かな?
 あのカップルの無駄にアツアツな感じは作者も大好きなので、喜んでもらえたなら幸いです。というか、どうしてもカップルはさっさとくっつけと思ってしまう自分がどうだろう?
 今回の話も楽しんでもらえましたでしょうか?

 >バルカン9999様
 ロリ=貧乳ではないと作者は声を大にして言いたいw彼女たちはあくまでボンクラーズですのでw
 下手糞な説明でしたが納得していただけたなら、良かったです。てか、神話寓話の武器って結構色々あるんですねぇ、もしかすると今回書いて頂いた武器が本編に出るやもw
 中の人についてはあんまり書かないでおきますね。楽しみも減るのでw本編を楽しみにしていてください。

 >七誌様
 某変態執事……懐かしいなぁ。今度番外編書くときにエドゲイン君でも出そうかな?(コラコラ)
 概念武装死ぬほど装備はやるかもしれませんね。主人公は自分が物凄く弱いっていうのを自覚してますから、それをどうにかしようとして。
 >ギャグキャラ特性で〜
 う〜ん、難しいですねぇ。場面がギャグなら、下手すると中途半端に溶けた状態になって復活するとか……面白いな。よし!ネタゲット!!(ぇ

 >ななし様
 あぁ、そういう事なんですね。あはは、勘違いしてた。
 う〜ん、今回の事件中はちょっと書けませんけど、それが終わったらそういう練習もありかもしれないですね。アドバイスありがとうございます。

 >ひげ様
 共感……していいのだろうか、果たして?だってペドですよ?ある意味。作者自身もちょっと共感しましたけど(この辺り駄目人間と言い放ってるw)
 エスパーではない……で、では、まさか新手のスタンド使い!!?貴様、見ているな!!!(笑)
 短剣サイズに縮小は、今はちょっと無理かも。そこまでの応用はまだ主人公には出来ませんね、カラドボルグは唯一の例外って所です。
 今回の事件で色々と起こす予定です。どうか、主人公たちを嫌いにならないでくださいね。

 >カシス・ユウ・シンクレア様
 どの位強いか、という質問でしたが、現在の状態でも白の騎士状態とタメ張れるんじゃないかな?というか、クレアが側にいたらきっと勝つなwセルは個人的に結構好きなキャラなので、幸せにしたかったんですよね。方向性は別にしてw
 イリヤの秘密が今回ちょっと出てきました。てか、イリヤのイメージが壊れたとか言われたらどうしよう……(ガクブル)
 次回も頑張りますので、どうぞよろしく。

 >なまけもの様
 >ピンピロピロリン
 あ、確かに。てか、元はそっちで行く予定だったのに……音を忘れてた……
 刀狩か〜。確かにそうかも。あいつもシロウもある意味刀剣マニアだからなぁ。
 作者もディアスは大好きです!!もう、影技の中では1番と言って良いほど!!ぶっちゃけ干将莫耶での技のイメージは作者内で八葉だったりw
 >愛だね
 愛か?むしろ哀では無いかと思ったりw
 >六象図
 そちらの意見で正解です。あぁ、うろ覚えで書いたツケが……気をつけます
 この作品では変態が強いんですよ。ある意味魔装機操者?感情のうねりが高ければ高いほど強いw
 ボンクラーズの配役はまんまそれです。
 うぃ。赤い人であってますよ〜
 思い出せなかったことは、割と今後に関わってくる伏線ですので、作品中で語っていきます。
 わざわざご説明ありがとうございます。イタクァは使うかどうか分かりませんが、一応銃に関して考えてることがあるので、楽しみにしていてください。
 >幼女っぽく3頭身〜
 どちらかというとSD化、かな?イメージとして私の狼さんという漫画に出てきた犬モードプリノがあるもので。

 >seilem様
 納得してもらえたなら良かったです。てか、読者様皆優しいなぁ……
 固有結界は、下手すると最終戦まで出ない可能性も……この辺も微妙にお話に関わってくるからな……あぁ、いっそ喋りたい!!
 今回のお話で、イリヤを嫌いになったりしないでくださいね、根はいい子なんですよw
 とりあえず綿は未亜がやるとして、そうなると次は祟り……誰がやるんだろう?はっ、もしやシロウが!!?(笑
 イリヤの髪は三つ編みでOKです。後はオリジナルアチャ子より、ちょっと余計に幼い感じでいいかと。楽しみにしてますねw

 >黒アリス様
 >「聖爆(セイバー)!!」〜
 うし、ネタゲット!!(ぇ
 まぁ、冗談としても、作者もちょっと面白いかなとは思いますね。無手関係は大好きですし
 小太刀からはちょっと読み取れないんじゃないかと。あれで戦うってことが何度かあれば別でしょうが。
 イリヤの性格は素です。ただ、ちょっと2重人格に近いものがあるんですよね。あんまり喋るとネタバレになるので、言えませんけど

 >名無しの権三郎様
 こちらこそ、初めまして。
 DS知らなくても楽しめる、というのは嬉しいですね。こういう2次創作はどうしても元ネタ分かってないと楽しめないものですから(ネタばっかりだから、どれかにヒットするだけでは……というセルフツッコミは無視)
 ブラックウイングは投影したいですね〜。機会があったらそのうちやるかも。

 >九重様
 ども、今回はちょっとした壊れがなかったですけど、どうだったでしょうか?
 >ブーリン
 分かる人が居た〜〜〜!!!あれ、作者が小学校の頃の奴ですよ?よく分かりましたね……大正解です。そして、実は作者と同年代?

 


 

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