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▽レス始

「WILD JOKER 巻8(GS+Fate)」

樹海 (2006-05-17 06:27/2006-05-17 18:59)
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@hollow ataraxiaー空虚なる揺り篭、100%達成+絵馬コンプリート
@後は花札とイリヤ城のコレクション集めだけだな。のんびりやっていこう

 さて。
 物事はとりあえず納まればいいという状況ではなくなっている。
 セイバーにしてみれば、敵であろうサーヴァントとマスターを見逃せという事態は許せるものではなく、一方聖杯戦争という事自体を知らない衛宮士郎という人間にとってはいきなり斬りかかるという事態は見逃せるものではない。マスターとサーヴァントとの間に一触即発に近い空気が漂い。
 「どういう事で………………………」
 怒鳴りかけたセイバーの声が尻すぼみになって消えた。士郎は唖然とした表情で、凛は非常に冷たい視線で見やっている……さわさわとセイバーの身体を触っている横島の姿を。
 「な、な、な、な、なあ」
 さすがにセイバーもまさかこんな行動に出られるとは思いもよらず意味のある言葉を口に出せないでいる。
 「うーむ、73・53・76ってとこと見た!何、まだその年齢なら未来があるさ!問題ナッシング!」
 「問題あるわっ!」
 びっ、と親指を立てたまま爽やかな笑顔を浮かべた横島は飛んできたガンドの直撃を喰らい、横に吹き飛ばされた。いきなり触られた事かそれともその光景に呆気に取られたか、セイバーは口をぱくぱくさせて身体を両手で抱きしめるようにして真っ赤になっている。

 「ちょっと、大丈夫?」
 その様子に遠坂凛は心配そうにセイバーに近寄って頭を撫でている。ほぼ同じ目線という事もあり、同年代よりセイバーが少し年下というか……上級生と下級生に見えなくもない。片方が鎧で完全武装していなければ、だが。
 「あ、はい……ってアレは貴方のサーヴァントでしょう!」
 「そうなのよ……何時も何時もああで」
 セイバーの言いたかったのは、貴方は聖杯戦争のマスターの1人なのだろう、という事だったのだが心配してくれてるのが分かる口調とどこか疲れた声混じりのため息にさすがに突っ込みを入れにくく、止まった。

 「と、とおさか?」
 そんな所へ固まっていた衛宮士郎がようやく我に返り、また月の光の元に出てきた事で相手が分かった様子で声をかけてきた。
 「む、俺の凛さんに気安く」 
 「はいはい、それはもういいから」
 何時の間にか平然と立ち上がって士郎に詰め寄りかけたのをあっさりとガンドで再び吹き飛ばしつつ、衛宮士郎へと視線を向ける……ちょっと目の前での攻撃に引いてるようだ。セイバーはさすがに気を抜かれたか、即座に攻撃に移るような状態ではなさそうだ。
 「……とりあえず、少し話したいんだけど…お邪魔していいかしら?」


 で、結局……セイバーはさすがに反対したものの、反対者が彼女だけであった事もあり衛宮邸の居間へと場所を移した。
 「ふうん、なかなかいい結界使ってるじゃない」
 他の魔術師の家にお邪魔したという経験が少ないせいだろう、珍しげに遠坂凛は周囲を見回した。士郎はというと密かに憧れていた少女を家に招いた事で少々緊張気味なようだ……お前には桜がいるだろうに……。
 「あら?」
 と、凛の視線が割れた硝子にとまった。
 「ああ、それか。さっきちょっと…御免、今片付けるから」
 そう言って立ち上がりかけた衛宮士郎を抑えて、凛は告げた。
 「いいわよ、それじゃとりあえず挨拶代わりのサービスって事で」
 そう告げ。
 「――Anfang(セット)」
 魔術回路を起動し。
 魔力を流し。
 それを己の意志に沿って導き。
 彼女が再び眼を開けた時、つい先程まで割れ散らばっていた窓硝子は再び元の割れる前の姿を取り戻していた。

 「へえ、凄いな」
 感心した声が洩れる。
 目の前で演じられたのは簡単なものではあるが、正に魔術だ。
 「…何よ、これくらい衛宮君にも出来るでしょ?」
 だが、遠坂凛にしてみれば、これは魔術としてはごく簡単なもの。魔術師であるならば、誰でも……。
 「いや、出来ないぞ?俺に出来る事って言ったら強化くらいだし」
 「はあ?」
 よくよく聞いてみると、衛宮は正式に魔術を習ったものではないらしい。いや、養父はれっきとした魔術師だったようなのだが、魔術を習うのを反対されたせいで本格的な意味での魔術は教えてもらえなかったらしい。
 「……呆れた…それなのにサーヴァントで…」
 セイバーを引いたのね、は言わなかったようだが、余程未練があったんやなー……。まあ、触媒もなかったようだし、だからこそ殆どの英霊が召喚されてしまうまで待ったんだろう。……いや、無論準備をあれこれしてたらあの時期になってたってのもあったんだろうが。
 んで。
 我が愛すべきマスター、遠坂凛さんはというと、こんな状態でほったらかしに出来なかったらしい。教会なら説明してくれるって事でこれから教会に行く事になった。何でも教会には聖杯戦争の監視役がいるんだそうだ。
 先代が言峰璃正っつーおっさんで、今はその息子の綺礼って奴がいるらしい。ちぇー…どうせなら美少女がいりゃあいいのに……いやいや、ここは矢張りそのおっさんに実は美人の娘がいて……。
 「いて何よ?」
 「ええ、そいで俺に惚れてですね」
 「惚れて?」
 「そりゃもーあんな事やこんな事を……は」
 我に返ってふと前を見ると思いっきり笑顔な凛さん……いや、この笑顔って怖いんですが……ああ、おい。そこの衛宮士郎にセイバーちゃん。何故俺にご愁傷様とか自業自得です、って顔を向けるの?
 次の瞬間、俺は凛さんの一撃で宙を舞ったのだった…ぐふう、いい右フックだぜ…!


 「あいててて、凛さんちょっとくらい加減してくださいよ」
 「うるさい!あんたにはそれくらいでちょうどいいのよ!」
 あっさり起き上がった俺に本気で衛宮の奴、化け物見るみたいな眼向けやがって。別に外れたやつが壁に穴あけたからってなんだってんだ……ちなみにセイバーは平然としていた。どうやらサーヴァントがあの程度の魔法でどうにかなるなんて思ってないらしい…なんかそれはそれでちょっと悲しい。少し位心配そうな顔してくれても……。

 さて、で、問題が一つ発覚した。セイバーが霊体になれないらしいのである。
 霊体となれば、俺はともかく一般の感覚ではまず見えない。サーヴァント同士であれば、感覚的にいる、って事は分かるがどこにとはっきり分かる程じゃないみたいだし。まあ、そういう嗅覚が優れてる奴だっている事はいるだろうけどさ。犬とか。
 まあ、とにかく、だ。
 鎧を纏った金髪碧眼の美少女を連れて歩くなんぞさすがに拙い。神秘は秘すべきもの、増してや既にこの街には最低五名以上のサーヴァントとマスターがいるのだ。私達は聖杯戦争の関係者ですって看板上げて歩き回る訳にはいかん。
 「けど、なんで霊体になれねえんだ?」
 「簡単です」
 そう言ってちらりと士郎を見るセイバー……ああ。
 「早い話、衛宮が魔術師としてはへたれだって事か」
 あ、なんか衛宮の奴が落ち込んでる。『いや確かにそりゃそうだけどさあ…』…やっぱ他の奴に言われるとショックか。

 で、結局何か姿を隠すものをと探してきたのが…。
 「……これ?」
 黄色いレインコート……いや、確かに姿完全に隠してるけどさ……。なんつーか、ちょっと……。セイバー自身は顔色変えてないけれど、漂う雰囲気はむすっとしてるというかお世辞にも満足してるとは思えない。まあ、そうは言っても俺っていうサーヴァントがいる状態でついていかないって選択肢はありえねーし、臨戦態勢も崩せないってか……まあ、衛宮がへたれだしなあ。

 まあ、見た目はとりあえず我慢するとして移動した。
 幸い特に誰かと出会う事もなく進んでいく。橋を超え、新都へと渡り、坂を昇り……そして教会へと辿りついた……うひー衛宮が近寄りたくないって言ってたけど……こいつひょっとして霊感あるんじゃねーかな?ここ……相当の悪霊ってか無念を抱えた霊体ってか……はっきし言ってろくなもんじゃねーぞ?確かに教会ってのは最期に葬られる場所のひとつじゃーあるが、唐巣のおっさんの教会もそうだが、普通のこういう場所は同時に天へ導きやすい道もあるから、ここまで澱んだ感じはしねーもんだが……うむ、ちゃんと地脈の流れ自体はしっかりしたのがあるみてーだし……一体どういう事だ?

 で。
 とりあえずセイバーと俺、二人とも外で待ってる事になった。あーあんな中に入らんですんで良かった。
 こんな教会で暮らしてる奴なんて…どんな歪んだ奴なんだか。とはいえ……こ、この状況はこの状況で辛いぞ…いや、だってセイバーがじーーーーーーーーっと見張ってるんだもん。うう、美少女に仇のように睨まれるのは堪えるのう……。いや、実際潜在的な敵ではあるんだけどさ……。
 『どうするの?』
 ひのめが声をかけてくれたので少し我に返った。そうだな、まずは関係改善だ。
 そう思って、話しかけようと振り向きかけた瞬間。
 「よう、お前らもご同類かい?」
 そんな軽い声が掛けられた。


 一方その頃…。
 【教会内】
 「ちょっと綺礼、いる?」
 そう言って、凛が教会へと踏み入った。実の所、この教会の主の事を彼女は知っている。だからあまり物怖じもしない。
 礼拝堂には人の姿はなかったが、そのままずんずんと進んでいく。間もなく、奥から長身の男性が姿を現した。
 「ようやく来たか、凛」
 この男がこの教会の主、言峰綺礼。前の主にしてこの男の父親である璃正が亡くなった後引き継いだ男だ。
 「サーヴァントを召喚したのならば、一度は顔を出せ」
 そう言ってふと士郎を見やって。
 「彼は?」
 何気なくそう尋ねた。
 「あ、彼、衛宮士郎って言うんだけど、彼もサーヴァントを召喚したのよ。だけど、殆ど聖杯戦争の知識がないみたいだから……介添役のあなたから説明してやってくれればって思って」
 凛の言葉に険しい顔になった言峰。凛にしても、サーヴァントを召喚した程度で、この男がこんな顔をするとは思わなかったので少し面食らった。が、すぐに普段通りの顔に戻って思案する様子になった。

 「ふむ……これは少し纏めて説明すべき部分もありそうだな」
 そう呟くと、彼が出てきた奥の方に視線を向け、告げた。
 「出てきたまえ、君にも説明する必要が出てきたようだ」
 少し躊躇ったような一瞬の間の後……1人の男性が、いや、スーツに身を纏っていても、体を鍛えていても、その線は柔らかい。所謂男装の麗人という奴だった。と、衛宮士郎から感じられたのはその程度だったが、遠坂凛は体をやや強張らせた……彼女はその相手を知っていたのだ。
 「紹介しよう、バゼット・フラガ・マクレミッツ嬢。彼女もまたマスターの1人だ」
 「封印指定の執行者…」
 紹介を受け。遠坂凛は恐れを含んだ声でそう呟いた。 

 「言峰」
 あっさりばらした言峰に咎めるような声を出すバゼット。だが。
 「君と私が戦友というならば、彼女と私は兄妹弟子だ。一方はマスターを知り、片方はマスターを知らないという状態を中立であるべき、この教会で作る訳にもいかんのでな」
 少し拗ねたようなバゼット、緊張し警戒している凛、訳が分からずぼけっとしている衛宮士郎。3人を前に、まずは……。
 「ひとまず確認しよう、二人は聖杯戦争に参加する意志はあるかね?」 
 片付けやすい所から片付ける事にした。
 「あるわ」
 「あります」
 「ふむ、了解した」
 この二人に関しては当然というべきか。冬木の管理者として元より十年前からそれを目指していた遠坂凛。魔術協会からそれを命じられて冬木を訪れたバゼット。問題はあと1人の少年。ふむ、衛宮か……切嗣の後継がこのような事態となるとはまことにこの世は面白い。
 「さて、二人とも。彼に説明と決定を行わせたい。しばらく待っていてもらえるかな?」


 【教会外】
 声を掛けてきたのは若い男…に見える奴だった。まあ、どう見ても。
 「あんたもサーヴァントか」
 「ご名答」
 いや、セイバーの鎧もだけど、その全身青タイツもどうかと思うぞ、俺は。
 「ん〜……あんたのクラスは…ランサーか?」
 「ほう……何故そう思う?」
 俺の言葉にすっと眼が細くなる青タイツ男。セイバーもこちらに耳をそばだてているようだ。まあ、もっとも。
 「いや、ただ単に俺がまだ会ってね〜クラスであんたに当てはまりそうなのがそれくらいでさ」
 「ははあ、成る程な。純粋に好奇心から聞きたいんだが、他はどれに会ってないんだ?」
 面白そうな光を眼に浮かべるランサー。うわ、完全にこいつ楽しんでやがるな。うーん、こいつ何時の時代だろうと楽しむ奴だな……。
 「アサシンとバーサーカー」
 それを聞いて、納得したらしい。
 「あんたはここにいるって事は……」
 「ん、まあ俺のマスターもあの中にいるからな」
 くいっと指で教会を指す。って事は今あの中では3人のマスターが集まっているのか…。出来れば静かに皆出てきますように。
 まあ、無理だろうと思いつつ、願わずにはいられなかった。


 【教会内】
 さて、言峰の話に最初は反発していた士郎だったが、最後は了承したようだ。
 そうなのだ。実の所、手段を選ばない奴がマスターとなれば、何が起きるか分かったものではない。既に学校にはライダーのマスターが危険な結界を張っている。そうだ、目の前の彼女にも一応。
 「……貴方は手段を選んでくれますよね?」
 「当然です」
 簡潔極まりない。が、どうやらそれは信用していいようだ。まあ、執行者なんてキラーマシーンではあるが、反面必要ない行動とかは取らないだろうし、封印指定とかの殲滅を行う分、魔術協会の大前提たる神秘の秘匿に関しては心配しないでいいだろう。いわば、協会のそういう目的の為に行動する奴と言ってもいいからだ。自分から破るようでは執行者は勤まるまい。

 そんな事を考えたり話したりしてる内に言峰が近づいて来ていた。後ろの衛宮君は憮然とした様子だ。割り切らないと辛いわよ…。とはいえ、まあ、そうすぐには割り切れまい。それにどの道聖杯戦争が進めば割り切らざるをえなくなるだろう。
 「さて、良いかな?」
 全員を見回しながら、言峰が告げる。
 「まあ、先に話しておくが。此度の聖杯戦争は既に異常だ」
 最初の彼の言葉はある意味私にとっては予想範囲と言えば予想範囲だった。とはいえ、あまり歓迎したい話ではなかったが。
 「どういう事?」
 根本的に分かってない士郎、沈着冷静なバゼットは反応しそうになかったのが私が言ってみる。
 「そうだな、どう、というのは難しいが分かりやすい所では…」
 ちょっと区切って言峰は告げた。
 「既に八体のサーヴァントの出現が確認されている」

 一瞬綺礼が何を言っているのか分からなかった。
 「サーヴァントは七体。これが聖杯戦争始まってからの基本だったのは君達…いや失礼、凛とバゼット嬢の知っての通りだ」
 衛宮士郎が知っていたはずもない、と気付いたのか途中で言い直す。
 「実の所、凛。君の召喚の時点で既に残るサーヴァントはセイバーのみのはずだった」
 それを聞くと何だか妙に悔しくなる。裏を返せば、自分は本来狙った通りのカードを引けた筈だったからだ。だが実際に引いたのは別のカード……。
 「だが、実際には更に新たなサーヴァントが召喚された。これは過去にはなかった事だ。…まあ、第三回にはアインツベルンが基本となる七種類以外のクラスを召喚した例もあったようだが」
 基本となる七種類。剣の騎士セイバー、槍の騎士ランサー、弓の騎士アーチャー、騎乗兵ライダー、魔術師キャスター、暗殺者アサシンに狂戦士バーサーカー。言峰の言っている通りなら、私が召喚した道化師ジョーカーが聖杯戦争に参加した第二のイレギュラークラスという事になる。
 「なら、一体何故そんな事になったのよ」
 そんな事がなければ、そうすれば私がセイバーを引けていたのに、と思うとつい声が荒くなる。
 「さてな。案外聖杯が澱みを解消する為にとっておきのジョーカーでも召喚したか」
 だが、綺礼の言葉に思わず私は絶句した。そう……私が引いたカードは…ジョーカーだからだ。正にずばりと直撃したそれに私、遠坂凛としても絶句した次第だ……果たしてそうなのだろうか。
 「ふむ、本来ジョーカーはこの日本で考案されたカード。案外日本の聖杯には合うかもしれんな」
 そんな私とは別に言峰は面白そうに呟く。
 「少しいいでしょうか」
 と、今度はバゼットが手を挙げた。
 「私が答えられる範囲ならば構わんよ、何だね?」
 「澱み、と言いましたが、聖杯に澱みが溜まっているというのですか?」

 「ふむ」
 バゼットの質問に対し、言峰綺礼は面白そうな顔になる。
 「ならば逆に問おう。聖杯は聖杯戦争の勝者の手に委ねられ、それはサーヴァントを倒す事によって現界する」
 「だが、聖杯戦争が始まって、今回で既に5回目。未だ勝者は得られず、第三回では本来以外のクラスが召喚され、第四回では聖杯が破壊されるという事態すら迎えている」
 ちょっと待て。
 「聖杯が破壊されたですって?」
 「ああ、安心したまえ。今回サーヴァントが召喚された事でも分かるように、聖杯本体は無事だ」 
 私の問いに言峰はそう言うが……一体誰が聖杯を破壊したというのだろう、それに何故?聖杯を破壊したとなれば魔術師の力では無理だろう。おそらくはサーヴァントに破壊させたはず……何故なら聖杯に触れる事が出来るのはサーヴァントのみだからだ。そして、サーヴァント自身も聖杯を求めているが故にマスターに協力しているというから(まあ、例外もいるだろうが…ジョーカーもそんな感じだし)、令呪で強制執行したと考えるのが基本だろう。
 分からない。
 おそらくは聖杯を手に入れる目前まで来ていた魔術師が何故令呪まで使って聖杯を破壊するのだ。

 「まあ、そのような力を貯められながら、数百年の間実際に使われる事のなかった歴史があるのだ。歪みが生じていたとしてもおかしくはあるまい」
 考えている内に言峰の話は終わったようだった。封印指定の執行者…バゼットは真剣な表情で考えている。士郎は…よく分かってないようで?マークを浮かべてるって感じだ。
 「ところでその聖杯を破壊した魔術師って誰よ」
 誰だ、そんな馬鹿は。そう思って思わず尋ねる。
 「知らなかったのかね?衛宮切嗣、そこの衛宮士郎君の父上だよ」
 が、言峰の質問は実は予想外だった。
 思わずじろっと私とバゼット二人して睨んでみるが、士郎自身も初耳だったようで目を白黒させている。……これはこいつも知らなかったみたいね。まあ、聖杯戦争自体知らなかったんだから、当然かも。どうやら隣のバゼットも同様の判断に達したらしく沈黙を保っている。必要のない行動は取る意味がない、って所か。

 「他に何か質問はないかね?」
 そう綺礼が問うて来るが、私すら驚きがあれこれあったお陰で考えが纏まらない。正直自分としても一晩考えを纏め直したいところだ。そんな感じの事を告げ……私達は教会を出た。バゼットはというと、もう少し残るようだ。まあ、何を考えてかは知らないが、いきなり外に出るなり戦闘って事になる心配はなさそうだ…。


 …出たら、サーヴァント達が和やかに会話をしていた。
 いや、正確には和やかなのはジョーカーこと横島と初めて見る青い服の男で、セイバーは警戒を緩めていない。 
 「何してんのよ」
 ちょっと色々あって不機嫌な声で呼びかける。
 「お、嬢ちゃんがこいつのマスターか?それともそっちの坊主か?」
 「俺のだ!」
 えっへんと胸を張るジョーカー。
 「ほう、なかなかじゃないか」
 「やらんぞ」
 ……こいつらなんだかえらく仲良くなってるわね。
 「ま、お互いサーヴァントなんだからその内戦う事になると思うが、そん時はお手柔らかにな」
 そう言って、あっさりと手をひらひらさせつつ青い服の男は背を向け立去る。その背中に。
 「ああ、そうだな。こっちこそ頼まあ」
 横島もあっさりと返していた……そこには気負いはない。だが……彼らの間には何かがあった。そう…明日戦って死のうともそれも仕方ないとでも言うのだろうか、或いは死ぬ可能性もあると分かっているのか。……こいつらは幾つの死線を越えてきたのだろう、ふとそう思う。現代日本の人間が死ぬ可能性なんて事故と病気くらいのもの。殺し合いに巻き込まれるなんてそうそうあるもんじゃない。
 私達魔術師は普通の人間よりは高いかもしれないが、どちらかと言えばそれは己に負けてというもの。魔術師同士の殺し合いなんて案外ないものだ。
 けれど、こいつらは……おそらく幾度となく死線を越えてきたのだろう。それがふと分かってしまった。
 何故かは分からない。けれど……きっとそれは正しいのだと思う。


 何となくそんな事を考えていたせいだろう。気付いたらもう分かれる場所まで来ていた。
 「それじゃ遠坂、今日はありがとう」
 士郎が礼を言ってくる。明日からは敵同士、そう言い掛けてふと考える……。
 「遠坂?」
 不思議そうに手を伸ばしたまま固まる士郎をちらりと見て、セイバー見て、更に自分のサーヴァントである横島を見る。
 「ねえ、衛宮君」
 決意して声をかける。
 「私と手を組まない?」


 『後書きっぽい何か』
 久々の続篇です。
 次回バーサーカー登場……の前に凛から早々に持ちかけられた手を組まない?発言。その理由は次回で。

 さて、今回、バゼットさんに登場して頂きました。Fate/hollow ataraxiaに登場した彼女。実にいい味出してくれてる事もありますが、実の所彼女の登場自体はこの作品を書き出す時点で決めていました。いえ、ランサーの本来のマスターが別にいた、という事を知った時点で構想に入っていました。
 そして、hollow ataraxiaを実際にやってみて、なんとも出してあげたいという気分に更に相成りました。彼女にもランサーにも活躍の場面は出てくる予定です。復讐者アヴェンジャーも出来れば出したい所ですが……こちらは現在未定。
 さて、とりあえず続きは何時になるやら。

 では恒例の返信。
 …今回は少なくて寂しい。
>テイクさん
>シュタインバーグ
失礼しました
シュバインオーグですよね。早速訂正しました。
何故こんな間違いを…と思い、ふと目に入ったのが書き出す前に読んでいた一冊の小説
『ストレ○ト・ジャケット』
……ああ、そういえば、この作品の主人公って○イオット・『スタインバーグ』だったっけ…。

>tomさん
うーん……まあ、こんなものかと


 

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