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▽レス始

「魔除けの鐘を鳴らす者達 第7話 前編 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-05-14 09:04/2006-05-28 06:06)
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太平洋上空。
何百機の軍事輸送機。スードリが編隊を組んで一路目的地を目指している。
ティタ−ンズが誇る空挺師団だ。
その戦力は3個師団に匹敵する。
国力のない中南米の国なら5日で制圧できるだけの大部隊。

「ガディ大尉。目標制圧地点まで後、どれだけの時間を要する?」

「ハッ!目標制圧地点である第2新東京市には13:40頃を予定に到着します」

ジャマイカン=ダニンガン中佐は、部下から残り3時間程かかると聞いて肯いた。
今回の出兵は、青二才であるジェリド=メサが失敗したNervの決戦兵器の奪取を先駆けにNerv本部を制圧し、ゆくゆくは極東支部にある様々な研究所をティターンズの支配下に納めるのが目的だ。

なにが、民間の為に役立てる科学だ。
ゲッタ−線や光子力エネルギ−。それに超電磁力を使った画期的なノウハウ等のオ−バ−テクノロジ−は、全てティターンズが使ってこそ正義を保てるのだ。
この巨大な力を手に入れれば我々に盾突く愚民を根こそぎ排除してやる。
手始めは、7年前のように騒がしくなってきったスペ−スノイド供を一掃だ。
誰がお前等を守ってやっていると思っているのだ?
地球生まれのエリ−トである私のような者が支配してやっているからこそ、お前らクズどもが生かされていると言うのに。
それが生意気にも反乱なぞ起こしおって!
たかがコロニ−居住者の5割が貧困で生活できなくなる程度に財産を搾取して、守ってやっているのだ。逆に感謝されてもいい位だ。

数ヶ月前、ある宙域の情報伝達を完全にシャトダウンさせたティターンズは、その宙域に存在する宇宙コロニ−群を完全に支配化に置き、幾つかの要求を突き付けた。
簡単に言えば軍資金集めだ。それも非合法の・・・・・・

トップであるジャミトフ=ハイマンも黙認している。なにせ集められる金額が莫大なモノになる。
その宙域の連邦監査官はすでに傀儡としてジャミトフの手の内にあるので、政治的な訴えは其処ですべて握り潰せる。
騒ぎ立てる跳ね返り者も、軍事力で頭を押さえ込めるので、やりたい放題にやれる。
宇宙人(スペ−スノイド)は地球人に尽くして当たり前と考えているティターンズにとって、金銀の心地よい重みを得られるのなら、宇宙人が怨嗟の声で喚こうと露ほどにも感じない。

「ふん!極東を支配下に置いたら、次は宇宙人どもに目にもの見せてやる!そして私は特進となって、あの若造など及びも就かない地位に着くのだ!」

バイアラン14機で編成された第56連隊は、連隊長のジェリド=メサと副隊長のカクリコン=カク−ラ−を残し全滅した。
任務失敗のうえ、部隊を壊滅させたジェリドは一階級降格のうえ新参者のパプテマス=シロッコの元に更迭、もとい配属先が変わった。

いい気味だ。
若手ティタ−ンズ隊員の中で頭ひとつ分、抜き出ていたジェリドはジャマイカンにとって目障りな存在だったが、前回の大失敗でジェリドは出世街道から逸れた。
そして自分は、この作戦を成功させれば参謀本部への転属も望める。
自慢の鬚を触りながらジャマイカンは、自分の未来予想図にほくそ笑んだ。



第7話  雷を使いし者 前編 


「どお?口に合うかな?」

料理を口に運ぶ綾波レイにシンジが聞いた。

剥きだしのコンクリ−トで覆われた殺風景の部屋だが、食欲をそそる香ばしい匂いが漂っている。
机が無いので、食材の買出し途中で買ってきたビニ−ルシ−トを床に敷いて、料理を盛りつけられた大皿を置いていく
大皿から片手サイズの小皿に分けて綾波とイルイに手渡す。
主菜は中華風あんかけオムレツ。肉類が食べれないと言う綾波の為に、肉関係は一切使っていない。
ジャガイモを潰し、玉葱を細かく微塵切りにし、下ごしらえの段階で味を染みこませる。
そのままでは、ボリュ−ム感が物足りないので市販で売られている薄餅を幾重も断層に挟むように焼いた。
普通のオムレツより焼き加減とフライパン返しが何倍も難しくなるが、是なら肉類が駄目な人にも問題ない筈だ。

「・・・・・わからない。でも」

「でも?」

「もっと食べてみたい」

フォ−クの先を唇に挟んだ綾波がポツリと言った。
気にいってもらえたようだ。
手間暇と工夫を惜しまず作った料理だ。貶されデモしたら流石に落ち込む。

イルイも美味しそうに食べてくれる。うん。うん。いい事だ。
ご機嫌斜めだった空気が和らいだようだ。
別に狙った訳じゃないんだよ?裸の綾波の上に倒れたのは・・・・・・

涙目で拗ねた猫のように不機嫌オ−ラを全身から放っていた最愛の義妹も、食事を取り出すと、どうにか何時ものような雰囲気に戻ってくれた。
やっぱり人間。美味しい物で空腹を満たされれば大抵の事は許せるようになる。


シンジが数分の気絶から意識を取り戻すと、壱中の制服に着替えた綾波が食事を取ろうとしていた。
別にお昼時だから可笑しくないのだが、メニュ−が栄養ブロックとビタミン剤なのにシンジは疑問に思った。
ダイエットしている女の子ならともかく、パッと見でも華奢に見える綾波には必要ないだろ。
ハ−ドなパイロットを続けるのなら逆に、もう少し肉を付けないと持たない。
その事を聞いたら、今までずっと栄養ブロックとビタミン剤だけで過してきたと言う。

聞いた当初は、綾波が冗談を言っているものかと思った。
少なくとも此処は戦場でも辺境開拓の宇宙コロニ−でもない。
この国ならジャンクフ−ドでもよければ、コンビニに行けば何時でも好きなだけ買える。
訳が分からなかったが、裸を見た侘びに昼食をご馳走すると、急いで材料を買いに行って料理を作り、いま食べてもらっている。
話をしていると綾波は一般常識の大部分が欠落しているのが分かった。
知識や知性は、かなり高い綾波がだ。

おかしい・・・・・・・・・
まるで意図的に、人が自然と身につける常識を学ばせないようにしていたみたいだ。
Nerv・・・・いや、あの男は何を考えてるんだ?

「綾波は、此処に一人で住んでるんだよね?」

食後のお茶を渡しながら、綾波に聞いてみる。
イルイは慣れない不機嫌モ−ドを解除したのち、お腹一杯になったので、お昼寝している。
シンジに寄りかかりながら寝る姿は、子猫が親猫に身を委ねているようにも見える。

「・・・・・そうよ」

「淋しくない?」

「・・・・・淋しい?・・・・・分からない」

趣味か仕事か世捨て人でもない限り、このような場所に年頃の、女の子が住むのは変だ。
だが綾波は、孤独というものが本当に分からないらしい。

「そうか、もう一度聞くけど、食事の件は赤木博士と司令の指示なんだよね?」

「そうよ」

碇ゲンドウを父親と認めていないシンジは役職で呼んだ。

「司令の指示か、・・・・・・おかしいと思った事はない?」

「ないわ」

「どうして?」

「あなた、碇指令の子供でしょ。信じられないの?お父さんの事が・・・・・・・・」

シンジの言葉に過剰に反応した綾波だが、最後まで言い切る前に黙り込んだ。いや、黙り込まされた。
強烈なプレッシャ−が部屋の空気を支配する。
シンジの電撃のような鋭い殺気が綾波を貫いたのだ。

「・・・・・アレを僕の父親と呼ばないでくれ、それは僕にとって最大級の侮辱だ」

静かにだが他を圧倒させる力を含んだ、冷たく透き通る声でシンジは綾波に言った。
ビクと綾波が強張る。

アレが僕の父親?冗談でも許せない発言だ。確かに遺伝的に見ればそうだろう。
NervのDNA鑑定でも、その事は確定している。
だが、それがどうした!
僕が僕である事を・・・・・いま現在、碇シンジという人格や生き方を構成するに当たって碇ゲンドウと云う人間は何のファクタ−にもなっていない。
僕を育て、生きることと学ぶことと戦うことを教えてくれた師匠。マスタ−アジアが僕にとっての父親だ。
幼い自分を捨てた男だが、別に怨んでいるのでも憎い訳ではない。唯、どうでもいい人間なだけだ。
血が繋がっているが信用なんて欠片もない。そもそも信用は互いに理解しようと歩み寄った先に生まれる。
信頼は此れまで築き上げた実績が作り出す。
あいにくと、あのNerv司令はシンジが心に持つボーダ−ラインに掠るどころか、マイナスになっている。
そんな男と師匠を比べること事態が、シンジにとって許しがたい屈辱に値する。
話しのネタに一度、顔を見れば二度と会わなくても何の支障もなかった。

「・・・・・ごめん。恐がらせたかな。でも綾波、二度と司令を僕の父親と言わないで」

綾波は悪意を持って言ったわけじゃない。綾波は、あの男を信じているのか?だから批判した僕を怒った?
信用・信頼なんて人それぞれだ。気持ちを落ち着かせる。
まずは、大きく息を吸う。そして吐く。繰り返す内に荒れている時化のようなシンジの雰囲気が、穏やかな海のように落ち着いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

全身を縛り付けていたプレッシャ−は解かれているが、綾波は何も答えない。
部屋の空気が重く感じる。
そんな時だ、いままで午睡に勤しんでいたシンジの姫君が、虚ろに目を覚ましたのは。

「・・・・・来る・・・・・・・・」

眠りから突如目覚めたイルイが、白昼夢にあったように茫然と呟く。

「来る?何が?」

「・・・・・わからない」

シンジが訊き返した時には瞳の焦点はしっかりしていた。たがイルイは、ただ戸惑っている。
寝惚けている感じではない。意識が一瞬べつのナニかに移り、自然と感じたモノをそのまま口にしたようだ。

prrrrrrrrrrrrrrrrrrr・・・・・・・・・・

シンジと綾波の携帯電話が同時に鳴った。Nervから支給されている物だ。
盗聴器と追跡用の発信機が当然のように付いていた。
初めは壊そうと思ったが、思うとこがあり壊さずそのままにしている。
必要なら直に壊せるし、壊したら壊したで、Nervは別口で余計な干渉を入れてくる。
それは面倒だ。Nerv諜報部など敵ではないが態々、手間を増やすような真似もしたくない。

「はい、シンジです」

携帯にでる。緊迫した声がシンジの耳をうった。綾波も携帯に出ている。多分おなじ内容だ。

「わかりました。すぐにそっちに行きます」

親指で携帯の電源をOFFにする。綾波も丁度、携帯を切ったとこだ。

「綾波」

シンジの言葉に綾波が黙って肯く。口にして言わなくても分かる。
新たな使徒が現れたのだ。
イルイを連れて行くかどうか迷ったが、今回は連れて行く事にしよう。
今ならロンド・ベル隊もNervに滞在している。
シャムシェル戦の時よりもNerv本部の方が安全だろう。


「状況を教えてください」

プラグス−ツを装着して初号機に乗り込んだシンジが、発令所のオペレ−タと回線を繫ぎ情報を求める。
Nervの存在意義を示す相手・・・・・・使徒に対する情報を。
使徒は第5使徒ラミエルと命名された。
太平洋海岸部から第2新東京市に接近してきた、直線と平面によって構成された無機的な形状をしている。
見た目はピラミッドを両合わせしたようなクリスタル。今まで現れた使徒とはタイプがまるで違う。

ロンド・ベル隊には現状待機が命令されている。Nervはどうしても自分達の手でだけで使徒を倒したいのか・・・・・・
使徒が防衛ラインに達したらエヴァ初号機のみで単独出撃。
シンジは「はあっ〜」と大きくため息を吐いた。


「中佐、目的地に到着します」

第5使徒ラミエルが、後もう少しで第2東京市の防衛ラインを超えようとした時、ティタ−ンズの空挺師団が続いて現れた。

「大尉、アレはなんだ」

ティタ−ンズも第5使徒ラミエルを捕捉した。第2新東京市への進攻方向の上を飛んでいるのだ。
嫌でも気づく。ジャマイカンが副官のガディ大尉にNervの防衛兵器かと訊いた。

「わかりません。ですが、障害になるようなら排除するのみです」

使徒に関する情報はトップシ−クレット。使徒と云う名前を知っていても使徒の能力は何一つジャマイカンは知らされていない。
それにジェリドのレポ−トにあった使徒は生物兵器のようなモノであると書かれていた。
索敵レ−ダ−が捉えた映像に映っているモノは、どう見ても生物に見えない。
だからこそ、ジャマイカンは第5使徒をNervの防衛兵器と判断して先制攻撃の命令を下した。

「ふん、Nervへの見せしめの為にも、あの防衛兵器は徹底的に破壊しろ。よし、大尉。アレをだせ」

「アレをですか?パイロットの精神コンディションがイエロ−区域ですが・・・・・」

「薬をつかえ」

「サイオキシン麻薬を!?投与すれば今回の戦闘はともかく、今後は使えなくなりますが・・・・・よろしいのですか?」

「どうせムラサメ研究所の欠陥品だ。一度使えれば構わん。それに私の為に、いや、栄光あるティタ−ンズの礎になれるのだ。奴も本望だろう」

上官の言葉に同意するものを感じ、ガディ大尉は禁断に属する薬物の使用を認めた。
ガディ大尉が出撃命令を出す。スードリの格納庫に白衣を着た研究者の集団が、一人の男を連れてきた。
あまりにも場違いな集団だ。格納庫に居る整備員やパイロット達が嫌悪感をもった目で見ている。

「プロトタイプサイコガンダム。ゼロとのサイコミュ−リンクの接続完了しました」

格納庫にあるMSの中でも一際、巨大なMS。ブラックメタリックの装甲色が妖しい光を放っている。

「アイツが・・・・・空を落とすのか・・・・?」

プロトタイプサイコガンダムのパイロット。プロト=ゼロが傍にいた研究者の一人の胸倉を掴み、危険な光を宿した虚ろな目で睨みつけながら訊く。
ムラサメ研究所の様々な実験の後遺症で、生まれた時は黒かった髪は黄緑色に変色している。
頬はこけて、手足は痩せ細っているが、何故か精気だけは溢れていた。まるでロウソクの炎が最後の一瞬に最も大きく燃えるように。
それに投与したサイオキシン麻薬の所為で、必要以上に暴力的になっていた。

「・・・・・そ、そうだ」

胸倉を捉まれた研究者が苦しそうに答えた。

「そうか、なら僕が壊すよ。空を落とす奴は僕が壊すんだ・・・・・」

プロト=ゼロの手が研究者を離す。ゴホゴホと研究者は咳こみながらプロト=ゼロのマインドコントロ−ルがちゃんと効いているのを確信した。
様々なチュ−ブが無数に付いているヘルメットをコクピットでかぶると、荒々しい声で通信する。

「出られるんだろ?出るよ」

プロト=ゼロが管制官にハッチを早く開けろと急かす。直に開けなければプロトタイプサイコガンダムがハッチを壊してでも出撃する様子だ。
管制官が急いで格納庫のハッチを開ける。
丁度その時だった。
排除対象と目標をつけた、ピラミッドを合わせつけたようなモノから光が放たれたのは。

「プ、プロトタイプサイコガンダムを搭載していたス−ドリ27号機および右翼部隊。しょ、消滅しました!」

悲鳴にも似た報告が、ジャマイカンが乗っているス−ドリの艦橋に響いた。
右翼に配置していた部隊が一機残らず第5使徒ラミエルの加粒子砲で、無機物も有機物も完全に蒸発した。
一瞬で数千人のティタ−ンズ隊員が我と分からず、虚無の彼方へと旅立った。

「何が起こった!?」

ジャマイカンが唾を飛ばしながらス−ドリのオペレ−タに詰め寄る。
その顔には恐怖の二文字しかなかった。

「目標からの超距離レンジ攻撃です」

「この距離で数十機のス−ドリを一撃で消滅させる攻撃だと!?ありえん!何かの間違いではないのか!?」

ジャマイカンは部下の報告に耳を疑った。常識的に在り得ない破壊力なのだ。
民間機ではない。頑丈差を第一に考え設計された軍用機なのだス−ドリは。
ここでジャマイカンは致命的なミスを犯した。
オペレ−タの報告を疑う前に、生き残っている左翼部隊と本隊を散開させ回避行動を命令するべきだったのだ。
悲しいかなジャマイカンは有能に分類される軍人だったが柔軟性が致命的に欠けていた。
それは他のティターンズのメンバ−にも当てはまる。9割ほどの隊員達はジャマイカンと同じ基層概念に捕らわれ、現実で目の前で起きている事よりも士官学校で習った知識を優先させるのだ。
これがブライト=ノアなら考えるより先に回避しろと命令していただろう。
一年戦争から今日にかけて、絶体絶命という状況下では考えるより動く方が優先される場合があるとの教訓が身に染みているからだ。

「くそ!全モビルス−ツを出せ。目標を全力で叩きつぶ―――」

ジャマイカンの命令が下る前に第5使徒ラミエルの第2射が放たれた。
白い量感にあふれた光の波が、魚の群れのように密集する本体を呑みこんだ。
光が収まると、ソコには何もなかった。
ティタ−ンズ空挺師団の本隊も右翼部隊と同じように、碌な抵抗も許されず、あの世への片道キップを握らされたのだ。
残る左翼部隊のティタ−ンズ将兵達は、たった二回の砲撃で本隊と右翼部隊を消滅させた第5使徒ラミエルに戦意を喪失していた。
コレは戦闘と呼べるものじゃない。一方的な虐殺だ。
そして生贄の祭壇に捧げられるのは自分達と分かれば、思考力が半身不随にもなる。
いままで自分達が行ってきた所業が、今度は全て返ってきたと気付く程、余裕がある者は誰一人としていなかった。


「ティターンズ空挺師団。沈黙しました・・・・・・」

Nerv本部発令所が重い雰囲気に支配される。
第2東京市Nerv本部を征服しようとしていたティターンズ空挺師団は、第5使徒ラミエルのたった3回の攻撃で全滅した。
今まで現れた使徒とは、あきらかに一線をなす。
そして、その強力無比な敵と今から戦わなければいけないのは自分達なのだ。
気が重くなるのも仕方がない事なのだろう。

「リツコ、今の攻撃に初号機が耐えられる?」

ミサトが解析班と難しい顔で話している親友に、自分達の切札が通用するか質問した。

「冗談言わないでミサト。今のを見てたでしょ。いくらエヴァの装甲でも一秒も持たず融解するわよ」

「ATフィールドを張っても?」

「・・・・・無理ね。初号機のATフィールドでも、アレのまえでは無いに均しいわ」

「じゃあ、シンジ君を一人で出撃させたら・・・・・」

ミサトが最初に実行しようとしていた作戦内容に冷や汗を流した。

「狙い撃ちされるだけね。それよりもシンジ君も、この映像を見ているのよ。彼が素直に出撃すると思う?」

初号機のエントリ−プラグにもリアルタイムで先程の戦闘映像が流れていた。
無論、第5使徒ラミエルの戦闘能力を少しでも把握する為にだ。

「駄目・・・・・・かな?」

「駄目ね」

にべなくミサトの希望的質問をリツコはあしらった。
危険と分かっていても、必要なら命を賭けるが、意味のない捨て駒のように何の対策も発てず矢面に出される事を、あの少年が納得する訳がない。

「昨日も言ったでしょ。シンジ君は契約してNervに居るけど私達に対して、仲間意識は持っていないわ。目的が同じだけの協力者として扱いなさい。間違っても一緒に住んでる家族だからとか言った用法は使わないことね」

昨晩のシンジの事をリツコは思い返した。


『こんばんは、リツコさん』

『あら、シンジ君。どうしたの?』

いつもイルイを伴っているシンジが一人で技術部長室に訪れた事にリツコは軽く驚いた。
少年と少女は2人でワンセットといった認識ができるぐらい、Nervでは何時も一緒に居るのだ。

『いきなりで申し訳ないのですが、頼み事がありまして』

シンジが話しを切り出してくる。いまから話す内容が少女を此処に連れてこなかった原因だった。

『なにかしら?』

『まず、コレを見てください』

シンジが一冊のノ−トをリツコに手渡した。
受け取ったノ−トの表紙に書かれたタイトルと内容にリツコは引き攣った顔をシンジに見せた。

『僕からミサトさんに言っても聞かないでしょうから、リツコさんから諭してもらえませんか?』

『ええ・・・・・私からミサトによく言っておくわ』

『お願いします。分かってはいますが、実際そうゆうのを目にするのは、あまり気分がよくないですからね。ああ、それから部屋にゴミに溜め込むのは止めておくよう言ってもらえませんか?掃除するのが大変なんですよ』

『できるだけ、言い聞かせておくわ』

多分その事は無駄でしょうけど・・・・・とリツコは思った。大学時代に親友のズボラな生活ぶりを知っているから。

『よかった。それでは、僕は是で失礼します』

部屋を開ける。廊下には琥珀色の瞳を持つ少女が待っていた。

『ごめん。待たせたねイルイちゃん』

イルイがそんなことないと首を振る。

『それじゃ、帰ろうか。今日の晩御飯は何が食べたい?』

今、さっきまでリツコと話していたシンジとは別人のような雰囲気だ。にこやかな笑みをイルイに見せている。
自動ドアが閉まり2人が見えなくなる。
それを見届けたリツコに、どっと疲れが押し寄せた。
あらためて手に持ったノ−トを繁々と見つめる。

手書きで書かれたノ−トのタイトルは【サ−ドチルドレン監督日誌】であった。
内容は新薬を投与したモルモットを観察するような文体だ。
少なくとも普通の人なら、こんな風に自分が記憶されるのに強い不快感を感じる。
糾弾されてもおかしくない。
だが、シンジはしなかった。
何故?
考えられるのはシンジが、とんでもなく我慢強いのか不快感を感じない位に鈍いのか。

多分どちらでもない。
裏切られたとか騙されたとも思っていないだろう。その二つは味方とか仲間と認めている相手が、自分に背いた時に使う言葉だ。
科学者らしくない根拠のない直感だが、リツコはこう考えた。

今回の件は釘刺しだ。
あえて見せる事で警告してるのだ。これ以上の介入は許さないと・・・・・・

「それにしてもミサト・・・・・・迂闊ね・・・・・あれ程、彼を甘くみない方がいいと言ったのに、理解できなかったのかしら・・・・・」

自室の机の上に無造作に置かれていたサ−ドチルドレン監督日誌。
少年が部屋を掃除する事ぐらい分かっていた筈だ。
あの少年に対する認識が甘いから、こんな事が起きるのだ。どうしたら、其処まで甘くなるのかリツコには不思議で堪らなかった。
ミサトが駄目駄目なように思うが、一概に其れだけではない。一緒に暮らしていないリツコには分からないが、彼は温かいのだ。体温ではない。
空気というか雰囲気が、家族にむける労わりの気持ちや愛情と言った見えないモノだが、長く接していれば、可愛らしい愛犬もとい忠犬のように思えてくる。
無論それはミサトに向けたモノではない。全てイルイに注がれているものだが、おこぼれで受けるモノでも、家族愛に餓えたミサトが勘違いして警戒を怠るのは無理ならぬ事だった。

『諭して・・・・・か、違うわね。やめさせろと言ってるのね・・・・・彼は・・・・・』

先程リツコに向けられたシンジの瞳の光。まるで闇の焔のようであった。

ブルと身震いする。

敵意や殺意が籠もった眼光ではないが、他人では変える事も動かす事もできない意思力が秘められていた。
警告はした。
無視するようなら上等だ。ただ排除する。
俺にとってオマエ達など我慢して付き合う程の価値もない。
嫌なら黙って大人しくしていろ。
目は時において言葉より多くの事を語ると言うが、正にソレだった。

リツコが内線電話の受話器を手にとる。作戦部長室に居るミサトを呼び出す為だ。
ようやくロンド・ベル隊にエヴァの設備搬入作業が終わり、休息が取れると思っていたのに・・・・・
この沸々と湧き上がる苛立ち。
原因である能天気な親友で憂さを晴らさなければやっていられない。

昨夜の出来事である。


あとがき

シンジが心に持っている対人関係表で、イルイは絶対に護るべき者に位置付けられていますが、ミサトは十段評価で、

1が心から信じられる戦友。又、命を賭けるに値する大切な人
2が共に戦う仲間
3〜4が一般で言う友達
5〜6が唯の知人
7〜8が顔も知らない一般人
9〜10が一緒に居ると不愉快になる奴

10以下は明確な敵と分類されています。

・・・・・ミサトは、よくて(6)と言ったところですね。敵でもないが味方でもないとシンジは思っています。


レス返し

ATK51様> 感想ありがとうございます。文章に対する感想は色々と参考になりますので。
スパロボでゲンドウ性格の主人公なら、仲間に背後から誤射と言って撃たれそうで嫌ですが、上官や敵対している者とのやりとりは面白そうですね。

15様> 乗り換えはしないと思います。むしろ乗る?マスタ−ガンダムの風雲再起のような役割で出すかもしれません。

てぃREX様> あんなモノを投げつけられては敵としても号泣ものです。喰らったら精神汚染のカミ−ユ状態にジョブチェンジものです。

ななし様> アレは腐海に投げ込むのではく、アレを投げ込んだ所が腐海になると思います。企業廃棄物より更に危険です。戦術汚染ではなく戦略汚染になります。

イスピン様> 食わせるなら魚のガギエル辺りかな・・・・・・いや、駄目です。その前に海が、死海に変わってしまいます。

レ−ン様> 名前の誤爆報告に感謝します。

アルテミス様> アムロは、年齢的にまだ20代。狡猾が売りのゲンドウの腹を読むには人生経験が足りないでしょう。
クワトロなら看破できたかもしれませんが、藪をつついて蛇が出るのを嫌がったと思ってください。
誰もが知っているようで知らない正体を隠しているので・・・・・

ケイン様> 鬚男にすると某組織の司令官。ヒゲ男ならAの時は記憶喪失。OR2ならスト−カ気味のあの人が乗っていたアレですか?
同じ人物でも、あそこまで性格が変わるのは、早々居ませんが・・・・・
いや、記憶喪失にするといいのかな?
OR2では、最後あたり仲間になると期待していたけど結局ならなかったAの主人公片割れの人。

るうく様> えらい人には解らんのです!何が入っているのか分からないが、飲んだら決して忘れない味を持つ特性ドリンクの効能を!
・・・・・・っと、偉くなくても分かりたくないですが。
作成者の恋人になるには、毒見役も兼ねないといけません。ああ、だからORのリュウセイは幼馴染で、あそこまで好意を持たれていても相手にしなかったのか・・・・・
あと誤字報告感謝します。

Jack様> 話の展開次第と言うことで。

シセン様> だってゲンドウですから・・・・・(意味はありません)
スパロボでは登場してないGジェネのゼロ君に今回は出てもらいましたが、基本はやっぱりスパロボシリ−ズで登場したモノだと書きやすくていいですね。
スパロボをプレイした事がある人なら分かってもらえますから。
オリジナルは難しいので大変と思いますが頑張って下さい。
参考になる小説とは違うのですが、新木伸先生の星くず英雄伝の世界観やノリは好きですね。

いそはち様> やれるのなら初号機との人馬一体を麒王機でやってみたいと思っています。

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