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「魔除けの鐘を鳴らす者達 第6話 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-05-06 08:23/2006-05-28 06:03)
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第6話 お使いに行こう


「ブライト艦長、Nervの碇司令から出頭命令が出ています」

「出頭命令?」

第4使徒シャムエルと戦闘状態になった初号機の援護の為に第2新東京市に来たロンド・ベル隊だが、駆けつけた時には戦闘が終了していた。
無駄足になったが、使徒が撃破されたならばそれでいい。使徒との戦闘は、多大な被害をロンド・ベル隊に与える激戦になる可能性が高いのだから。
ブライト=ノアがア−ガマを極東支部に帰還させようとする、直前にNervから通信が入った。

「はい。ア−ガマを地下ケイジに収容し、その後Nerv本部へ代表者が出頭するように、と」

「そうか・・・・」

ブライトがト−レスの報告に困惑染みた表情を見せる。

「二、三度門前払いを受けて、ようやくお目通りが叶うか・・・・・・」

ブライトの相談役とも云えるアムロ=レイが顎に手を当てながら言った。

「ああ、Nervに聞きたいことは山ほどある。アムロ、クワトロ大尉と共に一緒に来てくれ」

戦闘力は連邦軍部隊でも群を抜いているロンド・ベル隊だが、殆どのメンバ−が民間からの善意の協力者。軍事的、政治的な話ができる人間は少ない。
アムロ、クワトロの両名を補佐として連れて行こうとするのは、思考能力。判断力も含め。両名が持つ勘の鋭さに期待する所も大きい。

「ああ、分かった。クワトロ大尉には俺から話ておくよ」

アムロが頷く。

「サエグサ、ア−ガマを指定通りケイジへ移動させろ」

「了解」

ア−ガマの操舵手サエグサが、Nervから送られてきた入港指示に従ってア−ガマを地下格納庫入り口まで移動させた。 
第2新東京市内から離れた山の一部分が、ゴゴゴと震動を挙げて動く。カモフラ−ジュの為、造られた機械仕掛けの木々が収納されていく。
3分も発たない内にペガサス級戦艦が楽々と通れるゲ−トが現れた。
核パルスエンジンの出力を最低限に萎め、ゆっくりとア−ガマは地下ケイジに入港した。


ブライト、アムロ、クワトロの三名が通された部屋はNerv司令官室。
部屋の広さはかなり大きい。高い天井と床にはセフィロトの樹が描かれている。
人間、天使、神の身分階級を分かりやすく十段評価した図だ。
だが、うす暗い部屋にボンヤリと光るセフィロトの樹は、部屋の主人の怪しさに拍車をかけていた。

「連邦軍極東支部所属、第13独立外部部隊ロンド・ベル隊のブライト=ノア中佐です」

「同じく、アムロ=レイ大尉です」

「クワトロ=バジ−ナ大尉です」

「Nerv司令官の碇ゲンドウだ。早速だが、君達に命令を伝える」

一週間の入院生活を終えて復帰してきたゲンドウは、単刀直入に切り出してきた。

「お言葉ですが、Nervに我々へ命令を下す権限があるのですか?」

ロンド・ベル隊に現在命令できるのは極東支部の岡長官だけだ。それ以外の命令は将校クラスの階級の持ち主でも拒否する権限をロンド・ベル隊は有している。

「ある」

一枚の書類をゲンドウは机越しに対峙する3人に見せた。
そこには地球連邦最高評議会で可決された命令書であった。民主主義を建前にしている地球連邦政府は独裁を防ぐ為、大統領と呼ばれる役職はない。
代わりに、決定権は11名の評議員によって決められる。
その11名が全員集まって会合した決定は、軍人として最高階位の元帥でも従わなければならない強制力がある。
ブライトは入念に書類に目を通した。
書類には評議員11名全員の印が押されている。特別な技術で造られ、印に触れば印の持ち主のホログラフィ−が出る特別性だ。
全部の印を触り確認する。間違いない。この命令書は正式なものだ。
内容は要約するとロンド・ベル隊・・・・・いや極東支部は緊急時と認定された場合、無条件でNervの指揮下に入れられる

「使徒が出現した状況下ではNervの指揮権が優先されることに、なっているのでしょうか?」

クワトロ=バジ−ナも命令書の内容を確認して質問した。

「その通りだ、クワトロ大佐」

「・・・・・私は大尉ですが」

クワトロの声色が少し変わった。

「フ・・・・・・・・・」

ゲンドウは両腕を組んだ姿勢を崩さず受け流した。そのままロンド・ベル隊に新たな命令を与えた。

「我々Nervの決戦兵器エヴァンゲリオン初号機と、そのパイロットを君達の部隊へ出向させる」

「な、何ですって!?」

「あのロボットをロンド・ベル隊に!?」

ゲンドウが口に出した命令内容はブライトとアムロを驚かせた。

「そうだ。すぐにエヴァ初号機とそれに必要な機材の搬入作業を開始させる」

「待って下さい。我々にエヴァ初号機を運用して、使徒と戦えとおっしゃるのですか?」

「そうだ」

「一体、何の理由で・・・・・?」

「それに答える必要はない。君達はただ、私の命令に従えばいい」

エヴァンゲリオンをロンド・ベル隊に預ける理由?
我々が使徒と何とか戦える戦力を持っているからか?
たしかにロンド・ベル隊は、第3使徒サキエルと一度戦っている。
あの時はマジンガ−Zとゲッタ−ロボの協力攻撃でATフィ−ルドを破ったものの、倒すまでには至らなかった。
だが、今なら、あの時よりも戦力がアップしている。ゲッタ−チ−ムもゲッタ−ロボからゲッタ−ドラゴンに乗り換え、マジンガ−Zも弱点であった空を飛べない欠点を、紅の翼ジェットスクランダ−を取り付けた事で克服した。
それらの事を見越してか?

「我々の敵は使徒だけではありませんよ」

クワトロが使徒だけに構っている訳にはいかないと言った。
ゲッタ−チ−ムの巴武蔵の犠牲により、恐竜帝国の帝王ゴ−ルは深い傷を負い。
恐竜帝国じたいも壊滅的にまで損害をだしたので、当分は動けない。
いま活発に動いているのは、Drヘルの機械獣軍団と妖魔帝国の化石獣軍団が代表として挙げられる。
それら以外でも、ジオンの残党や謎の異星人など敵対勢力はいくらでも存在する。

「無論、それは承知している。君達は使徒が現れた時だけ我々の指揮下に入ればよい」

「では、使徒とエヴァ初号機についての情報を教えて下さい。あれらは一体何なのですか?」

「使徒は人類の敵だ。奴等を全て倒さねば、人類は滅亡する。そして、エヴァ初号機は使徒を倒すために造られた汎用人型決戦兵器だ」

「・・・・・なるほど。我々は、それ以上の情報を知る必要がないというわけですね」

アムロがゲンドウの思惑を読み、あえて挑発するように言う。

「そして、不必要な情報を知ろうとすれば、Nervを敵に回すことになる。・・・・・と?」

クワトロも同じようにワザと冷めた口調で言う。今の時点では、Nervはロンド・ベル隊に対し妨害行為を行わない。Nervの手駒になる強力な戦闘部隊を必要としているからだ。
子供じみた挑発行為だが、これで相手が少しでも熱くなってくれれば、その分情報を引き出しやすい。

「2人共、一年戦争で優秀な戦績を残したニュ−タイプだけのことはある。鋭い洞察力を持っているようだな」

「!」

(この男、私の正体を知っているのか?)

アムロとクワトロの挑発に乗らず、ゲンドウは持っている『情報』と云うカ−ドの一枚をめくる事で2人を黙らせた。

「それと・・・・初号機起動及び作戦行動に必要な人員も合わせて出向させる。エヴァに関しては君達の手をわずらわせる事がないようにするつもりだ」

エヴァ初号機の搬入作業と運営機材をア−ガマに設置するまで、ロンド・ベル隊は第2新東京市に留まる事になった。


ロンド・ベル隊がNerv本部にて、待機命令が出てから一週間発った。
この一週間。妖魔帝国やDrヘルの機械獣軍団も目立った行動はしていない。
束の間の平和が流れていた。
天気がいい昼下りの時間に、ロンド・ベル隊のメンバ−の内5人が、物資の買い出しに第2新東京市内に足を運んでいた。

「これで大体の買い物は終わったな」

コウ=ウラキが日用雑貨から食料までパンパンに入った袋を乗ってきた車のトランクに入れて一息ついた。

「そうだな。だけど、いくら人手が足りないからってパイロットの俺達が買い出し部隊になるとはなぁ・・・・・・」

兜甲児が両手に抱えた買い物袋を、コウに続いてトランクに入れながら愚痴をこぼした。

「しょうがないさ。軍の支給品だけじゃ足りないものだってあるんだから」

「そう。これも重用な任務よ。それに、こういうことをやってると生きているって実感がわくでしょ」

コウの意見に、同じく買い物要員として来た銀鈴が同意する。

「そんなもんかなあ・・・・・」

甲児が首を捻った。そんな甲児にフフと優しい笑みを銀鈴はうかべた。
国際警察機構のエキスパ−トとして生きてきた銀鈴は、日常生活において極当たり前の事が、どれだけ尊いモノか身をもって知っている。

「そうですね。いつの間にか戦いが日常になって、以前の生活を忘れてしまっている」

クスハ=ミズハが店から貰ってきた健康器具のカタログから目を離し今の生活を思い浮かべる。
3ヶ月前は私が戦場に出るなんて夢にも思わなかった。
高校生として東条学園に通う平和な日常が、当たり前のように過せるものとばかり思っていた。
クラスメイトの甲児君がニュ−スに出てくるマジンガ−Zのパイロットなのは知っていたけど、学校に来た時の彼は、人一倍元気はあるけれど他のクラスメイトと変わらなかった。
留学生のブリット君やさやかさん。それにボス君。同じクラスメイトの中でも、とりわけ仲が良く、学校帰りの時など、よく5人で遊びに行った。
さやかさんやボス君が、甲児君と共に光力研究所を守るロボットのパイロットと教えてもらった時も、ピンと来なかった。
それだけ彼等が、当たり前の日常に馴染んでいたから。

「それにしても、Nervって秘密組織だろ?その内部に入った僕達を簡単に外へ出していいのかな?」

コウが疑問を浮かべる。

「その点はぬかりないわよ。諜報員らしき人がちゃんと私達を尾行しているようだから」

「ええっ、本当かよ!!」

銀鈴の言葉に慌てて甲児が辺りを見渡した。

「今回の買い出しにはブライト艦長が便宜を図ってくれたようだし、変な真似をしなければ大丈夫よ」

銀鈴が茶目っ気をだして明るい声で心配ないと言った。

「でも、そんなことに気付くなんて、さすが国際警察機構のエキスパ−ト。すごいなあ・・・・・」

「あら、ほめたって何も出ないわよ」

クスハが尊敬の目で銀鈴を見た。勘が鋭いと甲児達によく言われるが、今の今まで自分達を尾行している人間には全く気が付かなかった。

「あのさ、もう用がないんだったら、俺・・・・・行きたい所があるんだけど」

買い物要員として来た最後の一人。リュウセイ=ダテがソワソワと落ち着かない様子で、車に荷物を詰めていくクスハ達に用事があるんだと言いだした

「わかってるわ。おもちゃ屋さんに行きたいんでしょ?」

「な、何でわかるんだ!?」

リュウセイはクスハに考えを読まれ焦った。

「あら。リュウセイ君の行きたい所なら、私だって気づいていたわよ」

銀鈴が追い討ちをかける。

「ど、どうして?国際警察機構のエキスパ−トって、そんなこともわかっちゃうの!?」

「うふふ・・・・・違うわよ。さっき、おもちゃ屋さんを通りかかった時、ショ−ウインドウが気になって仕方がない様子だったもの。そうよね、クスハ?」

「その通りよ」

クスハもクスクス笑いながら頷く。

「なあんだ、そうだったのか」

リュウセイは納得した。

「それだけ君の考えてることが、分かりやすいってことじゃないのかい?ところで、何を買うんだい?」

「フフフフ、聞いて驚くなよ。100分の1スケ−ル、形状記憶合金の『ゲットマシンBOX』だ!」

大見得をきって言うリュウセイにコウは、おもわずコけた。

「ゲットマシンBOXって・・・・・つまり、ゲッタ−ロボの玩具のことかい?」

「その通り!あの合体変型を新素材の形状記憶合金で完全再現してるんだぜ!」

早乙女研究所にも特許料がそれなりに入っているらしい。

「なあ、リュウセイ。マジンガ−Zは出てねえのかよ?」

甲児としては、祖父が残したクロガネの城の事も気になった。

「もちろん、ちゃんと完全変型のホバ−パイルダ−付きで既に発売さてる。俺、もってるよ」

保存用、観賞用、遊び用に三つもだ。それも全て初期限定発売のプレミア物。ス−パ−ロボットオタクを自負するリュウセイとしては当然の事だった。

「へええ・・・・俺の知らない間に、そんなものが売られているのか」

おもちゃには興味がない甲児は、おもわず感心した。

「早いとこ5機合体のコンバトラ−Vも発売してくれねえかなぁ・・・・」

140分の1。ライディ−ンの販売は決まっているがコンバトラ−Vは、まだ企画段階と愛読している雑誌に書かれているのを思い出し、恋人を思うように溜息を吐いた。
遊び方はもちろん、一号機が落とされ合体できない残りの機体が劇的に、特攻を仕掛けるシチュエ−ションだ。
コンバトラ−チ−ムのメンバ−が聞いたら第一次内部大戦が起きるだろう。

「本物が、すぐ近くにあって何時でも見られるのに・・・・・男の子って変わってるわね」

銀鈴が呆れたようにリュウセイを見る。格納庫に行けば幾らでも見られるのに、そこまで情熱を持って模擬品を収集したいのか?
純真無垢な笑顔で早くおもちゃ屋に行きたいと顔に出しているリュウセイに、是だけ打ち込めるモノがあるのだと別の意味で凄いと銀鈴は思った。

「と、いうわけで俺は別行動をとらせてもらう!」

リュウセイは言うなり、踵を返し目的のおもちゃ屋に向い走り出そうとした。

「きゃっ!」

勢いよく振り返ったリュウセイに、後ろから歩いてきた女の子が驚いて倒れそうになった。
青いワンピ−ス姿の少女だ。輝く金色の髪をリボン飾りで纏めツインテ−ルにしている。
琥珀色の瞳は、驚きの為おおきく開いている。

「おっと、だいじょうぶ?イルイちゃん?」

少女の隣に歩いていた少年が、倒れこむ背中に手を回しイルイと呼ばれた少女を支えた。

「うん。だいじょうだよ。シンジ」

「そう、よかった」

自分を支えてくれる少年に、眩しい笑顔で礼を告げる。

「すまない。ケガはないか?」

リュウセイは慌てて中学生位の少年と、それより2,3歳年下に見える少女に駆け寄った。

「大丈夫みたいです。でも、お兄さん。気を付けてくださいね」

「ああ・・・・ごめんな。うっかりしてたよ」

シンジがリュウセイにケガは無いと言ったので、リュウセイは安堵して、頭を下げてイルイに謝った。

(悪い人じゃなさそうだな・・・・・)

いくら自分が悪いと分かっていても、年下から正論で反省しろと言われ、己の非を認められる人間は少ない。特に10代の少年少女は、その傾向が強い。
だが、ある意味リュウセイは助かっていた。ここで街のチンピラのような対応をしていたら病院のベットで数ヶ月は暮らす生活が待っていたのだから。

「もう、リュウセイ君。何やってるの」

クスハもシンジ達の傍にやってきて、リュウセイと一緒にイルイに謝った。

「私はクスハ=ミズハ。ごめんね。あっ!これ私が造った特性ジュ−スなんだけど、よかったら飲んで」

謝罪の意味を込めてか、魔法瓶からコップに注いだジュ−スをイルイに薦めた。
クスハは皆から高い評価を得ているが、悪い癖がある。
誰にでも健康グッズで手に入れた商品を薦めるのだ。

「ありがとう」

コップに注がれた液体は濃いオレンジ色。ミックスジュ−スにも見える。
特におかしい所は見当たらないので、どうしようと見上げてくるイルイに、人の善意を素直に受けるのも情操教育にいいだろうとシンジは、お礼を言って受け取りなさいとイルイの頭を撫でながら言った。
人を安心させる笑顔を見せるクスハに、イルイはコップを受け取って、お礼を言う。

「いただきます」

匂いはフル−ツ特有の甘い香りがする。果実から直接絞ったのが果汁以外にも細かい何かが混ざっている。多分フル−ツの実を細かく切って入れてあるのだ。
見た目は、かなり美味しそうだ。
コップに口をつけるとイルイはコクコクと飲んだ。

「どお?お姉ちゃん特製の健康ジュ−ス?おいし・・・・・・・」

クスハが最後まで言い切る前に、イルイはふらっと倒れた。
力が入らなくなった手の平からコップが落ちる。アスファルトの地面に半分程残ったジュ−スが水溜りを作る。
その中には、細かく砕いた果実以外に錠剤も見られた。

「イ、イルイちゃん!?」

シンジがあまりの事に叫んだ。イルイが朦朧とする中、ブツブツと何か口にしている。



『優しいカナフ・・・・・
気丈なケレン・・・・・
無邪気なザナウ・・・・・
みんな言い子ね。そう、この人が・・・シンジがわたしの・・・・・・・・・・・
そう麒王機・・・・・
あなたはシンジを主に決めたの?でも、駄目よ。あなたは闇の帝王との戦いで受けた傷が癒えていないわ・・・・・
大丈夫よ。シンジは強念を開ける扉は無いけど、紋章の後継者よ・・・・・・・・・・
それだけじゃないのよ、ディ−ンの火に唯一対抗できるルドラの雷を使えるの・・・・・・』


まずい。分からない事を小さな声で口ずさんでる。意識が飛んでいるのだ。
もしかして、さっきの飲み物は毒だったのか?
地面に落ちたジュ−スに目を向けると、オレンジ色の錠剤も見えた。
それを、見た瞬間。穏便にすまそうなんて気持ちは吹き飛んだ。
シンジの身体から危険な気配を感じ、銀鈴がクスハの肩を掴み強引に後ろに下げさる。

「答えろ!何を飲ませた!?」

今まで、優しいが気弱そうな雰囲気を纏っていた少年が豹変した。
銀鈴の背筋に冷たい汗が伝う。この感じBF団の十傑集と一対一で戦う時なみに本能が危険を訴える。
目の前の少年は、敵とみなした者の喉首を、躊躇わず噛み切る牙を持っている。

「答えられないのか!!!」

騒ぎを聞きつけ集まった野次馬が、シンジの怒声で一斉に散っていく。
生き物が持っている生存機能が正しく反応したのだ。
ここに居るのは危険だと・・・・・・好奇心や野次馬根性も、圧倒的な殺気の前では無力だった。

「こ、こいつ・・・・・」

死にかける程の修羅場を、幾度もマジンガ−Zと共に潜り抜けてきた甲児でさえ、気を抜くとシンジの殺気に飲み込まれそうだ。
クスハは腰を抜かして動けなくなっていた。生身で是ほどの殺気を浴びせられるのは初めてだったのだ。

シンジが構える。流派東方不敗の基本的な構えだ。

「えっ!?もしかして、貴方・・・・・シンジ君?」

シンジの構えに銀鈴は、1人の格闘家を思い出した。それに、少年が連れていた少女にも見覚えがある。
あの子、そう東方先生がBF団基地から救い出した・・・・・そう、名前はイルイ。
だとすると間違いない。この少年は碇シンジだ。

「・・・・・覚悟をきめろよ」

やさしい目元とイルイに言われた瞳に、殺意の炎が宿っている。
シンジが最終通告を言い放ち、飛び掛ろうとした間際、シンジのシャツを掴む指先があった。

「・・・・・イル・・・・イち・・・・ゃん?平気なの」

シャツの裾を掴んでいるのは、さっきまで倒れていたイルイだった。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

シンジが平謝りでクスハに頭を何度も下げる。
素人相手に、心を壊すような殺気を浴びせたのは不味かった。
ペタンと未だ腰を抜かしているクスハも、説明しなかった自分も悪かったから気にしないでとシンジに笑いかける。
ああ、いい人だ。それに芯は強いな、クスハさん。
あれだけ濃厚な殺気を浴びたら誤解と分かっても、浴びせた相手とまともに話せない位に取り乱すのが大抵の反応だ。
有象無象な女性は掃いて捨てる程いるが、いい女になる素質を持ち。
なおかつ開花させている女性は更に少ない。
先程のシンジの行動は、下手をすれば心に恐怖を刻み込んだのだ。
それを笑顔で許せるのは、人間としての器が大きい証拠だ。

毒だと思ったクスハの特性ジュ−スは、唯(?)の健康ドリンクだった。
あの錠剤もビタミン剤だと説明された。
見た目はオレンジジュ−スを基準としたミックスジュ−スのように綺麗な色なのだが、味は言葉では言い表せない。これにタメをはるのはミサトカレ−位なものだ。
効能は比べるまでもないが・・・・・

消費アイテム


『クスハの健康ドリンク』
出撃時1タ−ン行動不能。気力+40


『ミサトカレ−』
気力−50 ステ−ジクリアまで行動不能。精神コマンド封印。
パイロット肉体・精神共に汚染され以後の5ステ−ジ出撃不可。


「ここに綾波が住んでるのか?」

あれからクスハ達と別れたシンジとイルイは、ファ−ストチルドレン。綾波レイが住んでいるマンションまで来ていた。
廃墟のように淋しい所だ。人が住んでいる感じがしない。
昨日の夜Nervに行った際、赤木リツコから綾波レイの更新されたIDカ−ドを渡すよう頼まれたのだ。
第4使徒シャムシェル戦で命令拒否権を使い、命令を拒否したことについては特にお咎めは受けなかったが、エントリ−プラグに設置されてあるボイスレコ−ダ−を壊したのは不味かった。
その件はリツコにこってりと説教された。

ここ最近の一週間はエヴァンゲリオン設備用の機材をア−ガマに取り付けている為、リツコとミサトを初めてとしたNervスタッフは缶詰め状態。
暇と呼べるのは、第4使徒シャムシェル戦からシンクロテストもなく、学校をさぼって自己鍛錬していたシンジと、シンジの傍から離れないイルイぐらいであった。
そう言えばヒイロ=ユイは、第4使徒シャムシェル戦の次の日には、転校手続きをすませ第2新東京市から姿を消していた。

「402号室。ここだよシンジ」

エレベ−タは動かないので非常用階段で4階まで上がってきたシンジとイルイは、綾波レイの部屋を見つけた。
イルイが呼び鈴を押すが反応しない。
2回、3回と指先が何度もスイッチを押してもチャイムが鳴らないので、「どうしようシンジ?」とイルイが見上げてきた。
ガンガンと近所迷惑と思えるくらい派手にドアをノックしてみる。
このマンションには他に人が住んでいないのか、これだけ五月蝿くしているのに誰一人様子を見にこない。

「なんで綾波は、こんな所に1人で住んでだろ?」

他のチルドレンの報酬は知らないが、シンジは成功報酬で、使徒一体倒す事に100億円要求している。
契約の際、Nervが自分をどれだけ必要としているのか知りたかったので、法外と思える報酬を要求した。
断ったら、断ったらで、其処から自分に有利な条件を突きつけようと考えていた。
けど、ゲンドウはシンジが出した要求を、あっさりと呑んだ。
これにはシンジも拍子抜けした。シンジが指定した口座先は、永世中立国ピースランドが国営で運営している銀行である。
完全独立された管理コンピュ−タ−は外部から一切物理的アクセスをしておらず、MAGIでも浸入不可能だ。
一度振り込まれれば、本人以外振り下ろしは不可能。先日、口座を確認したら確かに200億振り込まれていた。
ここまで大盤振る舞いする以上、Nervにとってチルドレンの価値は低くはない筈だ。
だからこそ疑問に思う。何故こんな場所に住んでいるのか。

「ごめんください。綾波。碇だけど・・・・・」

このまま受口にIDカ−ドを入れて置いても、気が付いても貰えないないだろう。
再び呼びかける。返事はなかった。
ドアのノブを回すと鍵は掛っておらず簡単に開いた。覗きこむようにドアを開けて玄関を見た。
未開封の封筒や、読まれていないだろう広告が無造作に床に散乱している。
綾波は居ないみたいだ。
鍵も掛かけずに出かけてるのか?無用心だな・・・・・

「綾波、入るよ」

居ないなら、居ないでIDカ−ドは部屋の目立つ所にでも置いておこう。
書置きの一つでも添えて置けばいいだろう。
2人は玄関に入った。
1LDKの部屋は玄関から直ぐの場所にキッチンが備え付けられている。
主夫根性が身に染みているシンジは、使われていないキッチンの寂れ具合が妙に気になった。シンジ達が住むようになる前の葛城家のキッチンよりはマシだが・・・・・

初めて葛城家に入った時も、部屋の汚れは酷かった。
まるで東京湾にある夢の島のように
ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、餓死しかけたペンギンが、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が、ビ−ルの空き缶が転がっていた。

わざわざ作戦部長が一緒に住もうと言ってきたので、最初は怪しんだ。
相手の意図が読めなかったのだ。けど、ある意味チャンスであった。
監視されるのは嫌だが、幹部クラスのNervの人間と暮らせば色々な事が判明すると考え同居の提案を受け入れた。
でも、自活した女性が暮らす部屋で無かったのは確かだった。
イルイには、健やかに育って欲しいと考えるシンジにとって、今の環境はあまり宜しくない。
掃除をして綺麗にした矢先、腐海の森にしてくれる妖怪ビ−ル飲みがいるからだ。
まあ。今となっては後の祭りである。

綾波レイの部屋は、ゴミこそ少ないものの、床は一度も掃除がされてないのか、とても汚れている。
壁は剥き出しのコンクリ−トのままだ。
年頃の女の子の部屋なら、明るい色の壁紙を張るのだが、剥き出しなのは、もしかして綾波の趣味か?
家具と言えば、パイプ椅子にベットとタンス。それと小型冷蔵庫ぐらいしかない。
定住地と呼べる場所を作らず修行の旅をしてきたシンジだが、さすがに是が女の子の部屋とは思えなかった。


「この部屋。暗いね」

イルイがカ−テンを開けた。うす暗かった部屋に太陽の光が差し込み明るくなった。

「・・・・ん?綾波のか?」

タンスの上にレンズにヒビが入った眼鏡が置いてある。無骨なフレ−ムは女の子が掛けるには似合わない。
近づいて眼鏡を手に取って掛けて見る。
ヒビが入っている所為か、屈折した光を取り込んで目がチカチカして痛い。
このままだと幻覚が見えそうだ。
現にほら、今まで無かった白い裸体がレンズ越しに見える。

あれ?裸体・・・・・・・・・?

よく見てみる。女の子だ。シャワ−を浴びていたのだろう。
浴室から今、出てきたのだ。
色素が抜けた水色の髪は、水滴を毛先から落ちている。純白の肌にも所々に濡れた箇所がある。
ああ、下の茂みも同じ色なんだ。何故かシンジは、そんな事を思った。

「あ、綾波!?」

うわずいた声がシンジの口から出た。
頭が真っ白になり考えが纏まらない。女の子の裸を見るのが初めてな訳でもないが、慣れるほど見慣れているモノでもない。
上手く説明ができる心理状態ではないシンジはアワワと立ちすくんだ。

何故、此処に居るの?といった目で綾波がシンジを見てくる。
浴室に入っていたのでシンジの声が届かなかったのだ。悲鳴の一つもあげず、肩にバスタオルを掛けている姿勢で止まっていた綾波だが、シンジが掛けている眼鏡を見ると、無表情に見えた顔に若干の変化が現れた。

キッと目がつりあがり、裸のままシンジに近づいてくる。一直線に。
シンジの顔まで届く所まで歩いてくると、右腕がシンジの掛けている眼鏡を取ろうと伸びてくる。
反射的に避けようとしたシンジだが、後ろのタンスに当たり体勢が崩れた。よろめいたシンジに、もつれるように綾波の身体が迫ってきた。
後ろ足で踏ん張ろうと力を入れたが、汚れた床は滑りやすく、後ろに倒れる所かシンジは前方に綾波を押し倒す形で倒れこんだ。

倒れこむ際、足がタンスに当たり上段の半開きであった引き出しの中身が散乱する。
綾波が使っている下着類だ。
ブラジャ−やパンティ−が周りに落ちる。だが、そんな事は一切気にならない。何故なら裸の少女の上に倒れていたから。

(透きとおる紅玉みたいな瞳だな・・・・・)

綾波を押し倒した姿勢でシンジは固まっている。僅か10cm先に端整な顔があった。
初雪より白い肌はきめ細かく見る者を魅了する。
左手は柔らかな乳房を握っていた。手の平にちょうど収まる大きさだ。指が押し込んでる部分がマショマロのように形をかえているが、元の形に戻ろうとする弾力が心地よい。

「綺麗だ・・・・・・・・」

何も考えられなくなった頭が、考えなしの言葉を紡いだ。

「な、なにを言うの・・・・・・」

緋色の瞳に動揺の光が宿った。何を考えているか分からない。「人形のようだ」と周りから言われてきたが、綺麗なんて言われたのは生まれて初めてだった。

僕は一体、何を言ってるんだ!?
少しだけ平常心を取りも戻したシンジだが、せっかく取り戻した思考力を早くも無くしかけてた。
どうすればいい?頭にぐちゃぐちゃとした考えだけが生まれては消えていく。

「あ、あの・・・・・綾波・・・・・・ぐはっ!!

後頭部に硬いモノがクリ−ンヒットした。クスハ特製ジュ−スの口直しに買った缶ジュ−スだ。それも中身がまだ入ったまま。
ちょうどツボに入ったのだろう。意識が急速に薄れていく。
意識を失う前に、なんとか投げた本人を見つけた。

頬をリスのように脹らましたイルイが、投げ終わった格好で上目づかいで睨んでいるのが実に印象的だった。


あとがき

スパロボの消費アイテムにアレがあったら、あんな効果だろうと思った。
腹痛で苦しむパイロットを尻目に平気な顔の作戦部長。
あの人の味覚は、甘党の水の魔装機神のパイロット並に他者には受け入れないだろう。

シンジと綾波が初めてプライベ−トの時間で会う場面です。この世界では。
綾波の扱いは、未だ決めかねている今日この頃。


レス返し  

15様> 青きのグル−プは表立っては、まだ動きません。人種の対立以前に、爬虫人類を始めとした人類外がいるなか内輪もめする程・・・・・・・アホですが、妙に悪知恵だけは働くので当分活動はなし。

蓮葉 零士様> 機動武闘外伝 ガンダムファイト7thは知りませんでした。参考になります。名前ですがスパロボのSSでオリジナルロボットを出しても覚えてもらえない方が多いので、過去のシリ−ズで登場した。また設定資料にある機体のみで行くと思います。

ななし> 特訓は、分からないですね。デビルガンダム事件で会得した力を展開によって出していく方になる筈です。

ジント様> 今回登場したメンバ−とは全員初対面ですが、テスラ・ライヒ研究所方面には、かなり顔が効きます。

ケイン様> 組織が大きくなればなる程、トップが下っ端連中のやっている事を知らず。
下っ端連中は特権意識をもち、学校の成績はいいが、人間的にはバカの集まり。
相手が黙って殴られると信じている連中を纏めるのは、老獪なジャミトフでもキツイでしょう。自分に都合のいい兵士を作る以上、そんな奴等になるのは仕方がないのですが・・・・
バイアランの武装はメガ粒子砲だったのを資料で見ました。
あと片腕を斬られて平気なのは、スパロボ世界だからと割り切りってもらえれば幸いです。
MSがガンバスタ−のスーパ−イナズマキックを切り払いする世界ですから。

風を見る者様> 腐女子ネタは遊びに使っても、間違っても野菜にはならないのでご安心を。
ガンダム神話ネタならFのデュオあたりが、伝説のガンダム乗りとアムロに言った記憶があるような気がします。

ATK51様> 念動力者は乗ったら操縦方法が分かるんですけどね。いくらニュ−タイプでも・・・・・・F91のシーブックは、かなり神話に近い搭乗をしているような気がします。

イスピン様> お見事!シャア専用ゲルググの方がよかったかな?
あのイベントはやっていません。シンジ君は。

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