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「これが私の生きる道!運命編2宣戦布告無き攻撃編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-05-12 23:54/2006-05-14 10:42)
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(十一月二十五日夜、大西洋連邦首都ワシントン
 「新国際連合本部ビル」内)

先の大戦が終了して、新国際連合が設立された時
に、その本部の設置場所を巡って議論がかわされ
た事があったが、利便性が取られた結果、場所は
大西洋連邦首都ワシントンに決定された。
その他にも、アフリカのケープタウンやオーブの
オロファト、日本の京都、インドのマドラスなど
いくつかの候補があったのだが、世界一の大国は
やはり大西洋連邦で「現実的に早く意見を纏める
のが目的である」とアルスター外務長官が発言し
た事がきっかけで、このワシントンに新国際連合
本部ビルは建設されていた。

 「東アジア共和国のレン大使とユーラシア連合
  のシュペーア大使にお聞きしたい!先程の核
  攻撃で観艦式に参加している艦隊が大損害を
  受けた事はまだ、その首謀者もわかっていな
  いし、被害を受けたのは皆同じだと思うから
  何も語るまい!だが、その後貴国らの艦隊が
  突然攻撃を開始した事については納得のいく
  説明をお聞かせ願いたいのだが!」

極東連合大使の重光大使が鋭い口調で二国の大使
を追い詰めていく。
観艦式襲撃の事実は既に世界中を駆け巡っていて
、新国連ではその対策を協議する緊急臨時総会が
開かれていた。
元々、新国連では中国と朝鮮半島の動乱に対する
対策会議も開かれていたので、ここ一ヶ月ほどは
忙しかったのだが、ここに来て核攻撃と二ヵ国艦
隊の突然の攻撃問題が加わって、派遣されている
大使達には動揺と疲労感が広がっていた。

 「それは、本国に問い合わせてみませんと・・
  ・」

 「ほう、どこの本国に問い合わせるつもりです
  かな?」

シュペーア大使の弱々しい答えにデュランダル外
交委員長が噛み付いてきた。

 「こちらの情報に拠れば、ユーラシア連合の政
  府首脳の方々はクーデター軍に囚われている
  とか。囚われの方々と何を相談するのですか
  ?そんな事が可能なパイプをお持ちなのです
  か?是非、教えて頂きたいものだ」

 「いえ、それは・・・」

いつもなら強気の返答をするシュペーア大使だっ
たが、自分にも寝耳に水の出来事が立て続けに起
こっていて、状況が頭の中で上手く処理出来ない
でいるらしい。

 「レン大使はいかがお考えですか?」

 「中央政府の大統領は全く知らなかった事だと
  ・・・」

 「大統領も知らない東アジア共和国軍を名乗る
  未知の艦隊が我々を攻撃している。そういう
  事なのですね」

 「いえ、そこまでは・・・」

 「はっきり答えて頂きたい!」

 「デュランダル大使、彼らに聞いても無駄だよ
  。何も知らないのだから」

 「アルスター外務長官!」

 「やれやれだよ。オブザーバーとして参加しろ
  だとさ。コープマンの若造は若いだけしかと
  りえが無いからな」

去年、大西洋連邦では任期満了に伴う大統領選挙
が行われ、若さを売りにしたコープマン大統領が
就任していた。
アルスター外務長官は辞任して暫らく遊んでから
、どこかの企業の顧問の誘いでも受けようと考え
ていたのだが、何故かコープマン新大統領は彼の
留任を決定してしまった。
それ以来、アルスター外務長官はクビになる事を
恐れなくなり、時には大統領を叱責してまで自分
の意見を通す様になっていた。
普通ならクビにでもされそうだが、コープマン大
統領は「自分を心から心配してくれて、叱責まで
してくれる」と勝手に解釈したらしく、お気に入
りの閣僚になってしまい、彼の辞任と長期休暇は
未だ訪れぬパラダイスになっている。

 「アルスター外務長官はどうお考えですか?」

 「ユーラシア連合政府首脳陣が預かり知らぬ所
  で大きな陰謀が計画され、それが今発動して
  いるのだろうな」

 「東アジア共和国の動乱もそうですかね?」

 「それは、極東連合にも非があるだろうな」

 「確かに、独立勢力を援助していましたが、中
  国と朝鮮半島にはノータッチですよ。朝鮮半
  島のデブ将軍はユーラシア連合と同じ根のよ
  うな気がしますし、中国の群雄割拠は彼ら自
  身の責任です。我々は知りませんよ」

重光大使はさらりと批判をかわしてしまう。

 「起こった事を色々言っても始まらない。まず
  、状況を整理して次の対応を協議するか」

 「ですね」

アルスター外務長官の意見に重光大使が賛同する
と、残りの大使達も賛成に回った。

 「まず、観艦式が襲撃されたL4宙域だ」

 「ユーラシア連合軍艦隊とアジア共和国軍艦隊
  の攻撃は続いてはいるが、残存戦力が体勢の
  建て直しに成功した上に、別行動をしていた
  特殊対応部隊の援護を受けて連中を挟み撃ち
  にしているそうです。ですが、このまま勝利
  しても損害は参加戦力の42%にも及びます
  」

同じく、オブザーバーとして参加していた大西洋
連邦軍の若い大尉が説明をした。

 「第三・第四艦隊の壊滅は痛いか」

 「はい、戦力の78%を喪失です」

 「当然、ノース中将も戦死しただろうしな」

 「はい」

 「ジークマイヤー大将とハルバートン中将が欠
  席していて助かった。月には第七・第八艦隊
  が健在だし」

アルスター外務長官はホッとした顔をする。
もし、彼らが戦死でもしていたら大変な事になっ
ていただろう。

 「不死身のハルバートンは健在だな。悪運のジ
  ークマイヤーと共に」

先の大戦時、一度左遷されながら粘り強くザフト
軍やその同盟勢力と転戦して昇進を重ね、月方面
軍のナンバー2にまで上り詰めたハルバートン中
将を皆はそう呼び、名目上は月方面軍ナンバー1
でありながらアズラエル理事に無視され、最後に
は射殺までされかけたのに、教え子に救われてそ
の地位を実質的に回復したジークマイヤー大将を
大西洋連邦軍の将兵は畏敬を持ってそう呼んでい
た。

 「その他の宙域ですが、コロニーや軍施設など
  が海賊などに集中して攻撃を受けています。
  最も、攻撃内容はこちらの気を引く為の、陽
  動である事が見え見えですが」

 「真の目的は何か?と言う事だな」

 「月基地でしょうか?再び核で・・・」

 「ありえんな。まず、成功の目が無い。考えて
  見れば、L4宙域なんかで観艦式を行うから
  あんな無様な攻撃を受けたわけで」

 「とにかく、各国で協力して重要拠点の監視を
  強化するしかあるまい」

 「そうですね。現時点ではそれが最良かと」

 「プラントとしては(血のバレンタイン)の記
  憶が生々し過ぎるので、プラント本国の警戒
  を強化しているでしょうな」

 「重光大使!」

 「いえ、構いません。事実ですから。プラント
  に住む我々は核攻撃を受けても逃げ場があり
  ませんので」

当のデュランダル外交委員長は大して気にも留め
ずに事実を語った。

 「まあ。とにかく、監視を強化すると言う事で
  」

 「次に、地球ですかね」

 「中国は相変わらずですし、朝鮮半島は臨時統
  一朝鮮政権が何とか半島の南端で踏ん張って
  います。日本からの援助が無ければ一週間と
  持ちませんでしたが」

 「実は、重光大使とレン大使にお聞きしたいの
  ですが、どうして、パッと出たゲリラにそん
  なに苦戦するのですか?」

アルスター外務長官はコープマン大統領が不思議
に思っていた事を意地悪く質問した。 

 「謎の集団が顧問団のような事をしていまして
  、最新鋭のモビルスーツ部隊とその整備士集
  団や補給部隊と共に金日併将軍の部隊を援護
  しているようです。それに・・・」

 「それに?」

 「将軍のプロパガンダで統一朝鮮正規軍の半数
  以上が彼に合流してしまいまして・・・」

レン大使は申し訳無さそうに答えるが、そもそも
彼は中国の人間なので仕方が無い部分もあるのだ

 「私個人の意見だが、金将軍がまともな国家運
  営をしてくれるなら正式に承認をしても良い
  と思うのだが、あの暴言に近い国家論ではど
  うにもならない」

当然、金将軍の事を事前に調べていたアルスター
外務長官は半分呆れながら持論を述べた。  

 「そうですね。彼の主張を認めると日本国は半
  分が占領状態になってしまいますから」

重光大使も呆れ顔だ。

 「それで、極東連合はどう対応しているのです
  か?」

 「統一朝鮮海軍の残存艦艇を引き連れて逃れて
  きた林司令官が佐世保で修理と補給を受けて
  います。その結果、敵と味方の分離に成功し
  ましたので機動護衛艦隊が半島各地の船とい
  う船を沈めに回っています。これで、大分補
  給路を潰したと思うのですが」

 「次の手はどうお考えです?」

 「金将軍の援助をしている連中のモビルスーツ
  隊の撃破ですかね。彼らがいなくなれば歩兵
  と少数の車両のみの連中ですから」

 「日本でそれは出来ないのですか?」

 「出来なくはありませんが、わが国とあの国の
  歴史的背景を考えるとそれは得策ではありま
  せんな。我々としては、林司令官に戦力を援
  助して彼ら自身にやって欲しいのです」

重光大使が自分達でやるのは御免ですという態度
を見せる。

 「では、時期を見て各国の特殊対応部隊と共同
  でやらせますかな」

 「それが一番だと思います」

アルスター外務長官の意見に重光大使が賛成して
朝鮮半島対策は決定した。

 「次は・・・」

 「今、情報が入りました。イスラム連合とユー
  ラシア連合が共同管理していたスエズ運河を
  ユーラシア連合軍が占拠しました」

 「やられたな」

 「ですな」

 「更に、ユーラシア連合は新大統領としてペタ
  ン退役大将を擁立したそうです」

 「十年も前に退役した老将軍を擁立か・・・」

 「もう一つあります」

 「何だ?」

 「北京の東アジア共和国中央政府首脳が爆弾テ
  ロらしき被害にあって爆殺されました。東ア
  ジア共和国は滅びました」

 「いやはや、次から次へと・・・」

アルスター外務長官、重光大使、デュランダル外
交委員長が呆れていると、後ろで誰かが倒れる音
がした。
ショックの限界を超えたレン大使とシュペーア大
使が気絶したようだ。

 「二人に医者を!」

 「こう色々起こりますと大変ですな」

 「一つ一つ解決するしか無いでしょう」

 「ですな」

この場にいたほとんどの人間はこれで終わりだと
思っていたようだが、宇宙では更に驚愕の出来事
が起ころうとしていた。 


(十一月二十五日午前十一時、プラント監視施設
 内)

この監視施設は先の大戦で大量に発生して地球の
周りを回っているデブリの監視を目的に作られた
ものである。
宇宙空間ではどんなに小さいゴミでも場合によっ
ては重大な事故を起こす事もあるし、人類が宇宙
を住みかにしてからはゴミが次第に大きくなって
いったので、そんな大きな物が地球に落下すると
条件によっては燃え尽きないで地表に激突する事
態もありえるので、多数ある大きなデブリは監視
しなければいけないからだ。 

 「観艦式は核攻撃を受けて大混乱。ユーラシア
  連合と東アジア共和国の艦隊とは戦闘開始。
  各地のコロニーや軍の基地では海賊の嫌がら
  せのような攻撃。地球各地では戦乱が広がっ
  ている。一体、どうなっているのかね?」 

 「さあね。でも、これで終わりじゃないかもよ
  」

 「脅かすなよ」

監視施設の職員達は交替の時間が近付いたので、
多少気が抜けているようであった。

 「でも、これで終わりじゃないとすれば何処が
  狙われるんだ?」

 「さあ?」

 「ここだったりして」

 「かもな」

 「そんなわけあるか」

そんな話をしていると、入口のドアが開き交替の
人手が来たようだ。

 「やあ、ご苦労さん・・・!」

 「何だ。どうしたんだ?早く交替・・・!」

 「おいおい、何を黙って・・・!」

職員達は全員沈黙してしまう。
入口のドアの前には十数人の男達が自動小銃を構
えていた。

 「無駄な殺生は望まない。大人しくして貰おう
  か」

彼らは本当に無駄な殺生を望んでいなかったわけ
ではなく、銃を乱射して観測機器を傷つけると早
期に異常を発見される可能性が高くなる事を恐れ
ていただけの事であった。
もう一つ、「同じコーディネーターの同胞を無意
味に殺すのはどうだろう?」という意見が出た事
もあるのだが。
監視所の職員達は全員が縛られて空き部屋に閉じ
込められ、定時報告が無い事を不審に思って様子
を見に来た他の職員に発見されるまで実に半日近
い時間を無駄にしてしまい、その頃には抜き差し
なら無い状況にまで追い込まれていたのであった
。 


(同時刻、「ミネルバ」周辺)

「ミネルバ」と「アマテラス」の戦闘準備は終了
し、俺達はその周りで護衛につく。

 「おっ、シン達が戦闘を開始したな」

二艦の前方で「ミネルバ」「アマテラス」のモビ
ルスーツ隊がユーラシア連合軍艦隊所属の「ハイ
ペリオン」との戦闘を開始して、新たな戦闘の光
が発生した。

 「なあ、カザマよ」

 「何だよ!戦闘中だぞ!」

突然、無線にコーウェルの声が入ってくる。

 「コアスプレンダーのミサイルポッドは回収可
  能なのかな?」

 「知るか!」

 「あれは意外と高いんだよね」

 「使い捨てだと思え!」

 「でも、全く使用してないし」

 「コーウェル、(ザク)の使用許可を与えるか
  ら自分で拾いに行け」

 「あっ、本当?じゃあ、拾いに行こうっと!」

財務官僚という小役人になったコーウェルに俺の
嫌味は通じなかった。

 「カザマ君、敵艦隊を有効射程距離に収めたよ
  」

 「味方を巻き込まないように砲撃開始」

 「目標の優先順位は?」

 「モビルスーツが多数搭載出来る大型艦を狙っ
  て下さい。ユーラシア連合軍艦隊はこの宙域
  で孤立しています。最大の脅威であるモビル
  スーツのエネルギー源を撃沈すれば、エネル
  ギー切れになった彼らはただの人形に成り下
  がるわけですから」

 「わかった」

俺がアーサーさんに指示を出した所でシン達が撃
ち漏らした「ハイペリオン」が「ミネルバ」に接
近してくる。

 「ちっ!意外と数が多いな」

俺は舌打ちをしながら「グフ」を高速で移動させ
て「ハイペリオン」の小隊に近付いた。
「ハイペリオン」は俺の存在に気が付きビームラ
イフルを撃つが、俺は余裕でかわしながら横合い
に回りこんで右腕の四連装ビームガンを撃つ。

 「落ちやがれ!」

だが、「ハイペリオン」は光波シールドを展開さ
せてビームを弾いてしまう。

 「意外とやるな!」

俺は更に高速で後ろに回り込み、ビームガンで止
めを刺した。

 「やっと一機か。実戦の勘が鈍ったかな?」

「グフ」の高速性能に慌てた残り二機の「ハイペ
リオン」がビームサーベルを抜いて迫ってくるが
、俺はシールド内のビームソードを抜いて一機の
「ハイペリオン」と切り結んでから後方に押し出
し、もう一機の攻撃をシールドで防ぎながらビー
ムソードでその「ハイペリオン」を真横になぎ払
った。
最後に一機残った「ハイペリオン」がビームサー
ベルで斬り掛かって来るが、俺はスレイヤーウイ
ップを叩き付け、動きが弱った所をビームガンで
止めを刺す。

 「時間が掛かったな」

周りの状況を見ると、「ミネルバ」はタンホイザ
ーを味方がいない方向に向かって発射していて、
目標らしき敵戦艦が爆沈する様子が見える。
「アマテラス」も同様に攻撃を開始していて、陽
電子砲を敵艦に向けて発射していた。

 「本当に、どの艦も派手なんだな」

ビームソードで一機の「ハイペリオン」を切り裂
きながらシン達の方を見ると、彼らは善戦してい
るようだ。

 「お前らまだ死ぬには若過ぎるからな。戦死な
  んてしてくれるなよ」

俺は祈らずにはいられなかった。


(同時刻、ディアッカ視点)

 「シン、お前は艦艇を落とせ!一番火力がある
  んだから。ルナマリアもシンと一緒にやるん
  だ!レイは(ハイペリオン)を落とせ!お前
  の起動兵装ポッドなら光波シールドが張れな
  い部分や方向からの攻撃が可能なんだ!」

 「了解です」

 「了解!」

 「了解!」

俺の指示でシンが「ブラストインパルス」の火砲
を一隻の駆逐艦に一斉に発射すると駆逐艦は瞬時
に爆沈する。
ルナマリアも巡洋艦の後方に回りこんでから防御
火器を「アビス」の両肩の三連装ビーム砲と連装
炸薬砲で潰し、ビームランスで艦橋を切り裂いた

 「二人共、凄えな」

更に、ルナマリアは撃沈寸前の巡洋艦に胸部のビ
ーム砲を発射して止めを刺した。

 「うわ、えげつねえ」

もう一方のレイとステラを見ると、レイは「カオ
ス」の起動兵装ポッドを巧みに操作して三機の「
ハイペリオン」を瞬時に撃墜し、ステラは起動兵
装ポッドに気を取られて隙を見せた「ハイペリオ
ン」にビームライフルで止めを刺していった。

 「まあ、理に適った戦法だな」

「ハイペリオン」の正面防御力は現時点でも量産
機の中では最強だ。
だが、光波シールドを張るのはパイロットの判断
なので、パイロットが判断する前に撃墜するか、
光波シールドが展開出来ない方向から攻撃すれば
一応は倒せる事になっている。
勿論、それを実行するにはそれなりの技量が必要
なのだが・・・。

 「リーカさん達はどうかな?」

ベテラン組の三人はリーカの「センプウ改」が敵
の気を引いている隙に、シエロとテル・ゴーンが
死角を突いて「ハイペリオン」に止めを刺してい
る様子であった。
以前、カザマ司令が「リーカさんは目が見えなく
て電子機器を組み込んだ眼鏡で視力を調整してい
るんだが、その技量は驚異的だ。俺は絶対に敵に
回したくない」と語っていたのを思い出した。
目が見えない女性パイロットが赤服を着ているの
だ。
その技量は大したものなのだろう。
現に、リーカが小隊長格で指揮を執っている事に
シエロとテル・ゴーンは文句の一つも言っていな
いのだから。 

 「アスラン達はどうなったんだろう?」

アスラン達の様子を観察すると、オーブ軍の「ム
ラサメ」は三機編隊を崩さないでMA体型のまま
、一機の「ハイペリオン」に突撃を掛けながら背
部の二門のビーム砲で攻撃を仕掛けていた。

 「あんな武装あったんだ・・・」

ディアッカが情報部から事前に聞いていた「ムラ
サメ」とは何かが違うようだ。
六門のビーム砲を光波シールドで必死に防ぎなが
らビームライフルを撃とうとした「ハイペリオン
」が遂にビーム砲に捕らえられて爆発する。
敵モビルスーツを撃破した「ムラサメ」小隊はM
A体型のまま、他の「ハイペリオン」に突撃を開
始して同じ攻撃を繰り返した。

 「常に三機編隊を崩さずか・・・」

「ハイペリオン」は反撃してビームライフルを撃
つが、そのビームは機首に装備されていた光波シ
ールドで弾かれてしまった。

 「嘘!あんなものまで装備してたのか」

「ムラサメ」はモビルスーツ体型に変型し、ビー
ムサーベルを抜いて三方向から「ハイペリオン」
を攻撃する。

 「モビルスーツ体型になってもえげつないな」

「ハイペリオン」を始末した「ムラサメ」小隊は
近くにいた敵駆逐艦に目標を変更して接近を開始
、背中のビーム砲を両肩にマウントさせてから合
計で六門のビーム砲を撃ち込んで駆逐艦を撃沈し
た。

 「機動性、火力共に一流の量産機か・・・」

 「それだけじゃないぞ。ディアッカ」

 「うん、アスランか!」

 「防御もフェイズシフト装甲完備だし、整備性
  も悪くない。モルゲンレーテ社専務シュウイ
  チ・カザマ渾身の作なんだ。この(ムラサメ
  )は」

当時、モルゲンレーテ社の部長であったシュウイ
チ・カザマは渾身の作の「M−1」が「センプウ
」に敗れた事が悔しくて堪らなかった。
モルゲンレーテ社上層部は高性能バッテリーの開
発と量産に貢献した上に、フェイズシフト装甲の
量産化を他国と協力して成功させた彼の功績を高
く評価していたのだが、彼自身は完全に負けたと
思っていた。
そこで、日本が次期量産機として開発中だった「
ハヤテ」を打倒すべく、積極的に「ムラサメ」の
開発に関わって行く事を決めたのであった。

日本が開発する「ハヤテ」は確実に極東連合軍で
採用される事が決まっているので、その他の赤道
連合、大洋州連合、イスラム同盟、アフリカ共同
体、スカンジナビア王国、南アメリカ共和国の内
の三つくらいの国で採用されれば自分達の勝利だ
と考えていた。
ユーラシア連合は独自の力でモビルスーツを開発
するだろうし、東アジア共和国は既にアレなので
考慮していない。

そんな理由で開発が始まった「ムラサメ」であっ
たが、その道のりは辛く、険しいものであった。
当時の事をカザマ部長の部下が証言しているが、
日頃、娘が絡まないと怒鳴らなかった彼が毎日怒
鳴っていて、テストパイロットとして選ばれたヤ
マト技術二佐とコードウェル二尉は毎日のように
厳しいテストを繰り返し過ぎて、倒れる寸前だっ
たそうだ。

更に、機動テスト終了後にはヤマト二佐にはOS
の新規開発という仕事が残っていて、「駄目だ、
睡眠時間が取れない。カレッジに通えない」と毎
日の様に呟いていたそうである。

一部では娘を奪った男への復讐劇と囁かれながら
も、とりあえずは原型が完成したのであったが、
これにもカザマ部長は咬みついた。

 「MA体型時に武器が使用出来なければ意味が
  無い!ビーム砲を装備しろ!そうだ、モビル
  スーツ体型時に背中に来るようにすれば、射
  撃時に両肩にマウント可能になるな」

 「防御兵器が欲しいな。そうだ!機首に光波シ
  ールドを装備させよう。これで、防御の問題
  の解決だ!」

カザマ部長の二つの思いつきによってヤマト技術
二佐とコードウェル二尉の睡眠時間は更に減少し
た。
「ハイペリオン」の様に真正面にシールドを展開
すると、大きな抵抗が発生して「ムラサメ」のス
ピードが落ちるか、最悪止まってしまうので、シ
ールドを展開させる角度や形などのパターンが何
百種類も製作され、テストを担当した二人の疲労
はピークに達した。
更に、ヤマト二佐はシールド発生時の特別なOS
の製作を指示されて「睡眠時間が更に減った。カ
レッジって何処にあったっけ?」などと発言して
、彼を心配して様子を見に来た友人達を驚愕させ
たらしい。

このように、若者達の尊い犠牲の上に、最新量産
型モビルスーツ「ムラサメ」は無事に完成し、そ
の高性能ぶりを実戦で発揮していた。

 「でも、アスランの(ムラサメ)は赤いんだな
  」

戦況はザフト軍、オーブ軍側の優位になっていた

元々、数が少ないユーラシア連合艦隊は敵の混乱
に乗じた奇襲という戦法で最初は優位に立ってい
たのだが、数が多いザフト軍艦隊とオーブ軍艦隊
が体制を建て直し、その他の国の艦隊もそれに加
わる事によって既に崩壊を始めているようであっ
た。
現に、「ミネルバ」と「アマテラス」を攻撃する
艦隊は存在せず、シン達は敵を求めて更に前進し
ていた。
そんな状況でアスランとディアッカには会話をす
る余裕があった。

 「俺のパーソナルカラーとしてオーブ軍で認定
  されている」

 「俺のパーソナルカラーはダークグレーにした
  。黒だとヨシさんとかぶるからな」

アスランの(ムラサメ)はVフェイズシフト装甲
を使っている一種の試作機なので、色が赤いかっ
た。 

 「アスランは赤でハワード三佐は・・・。紫か
  !」

 「昔、自分のガレキが無かった事が大分ショッ
  クだったらしくてな」

紫色の「ムラサメ」に乗ったハワード三佐は部下
を二機引き連れて鷹の様に「ハイペリオン」を襲
撃している。

 「オーブは量産機を一機種に統一するんだな」

 「補給と整備と訓練の手間を少なくする為だ。
  ある程度高性能で多目的に使える量産機の数
  を揃える。カザマ専務はそう言っていた」

 「ザフト軍はまだ無駄が多いと?」

 「そうだな。使用目的が違うとはいえ、(ザク
  ウォーリア)(ザクファントム)(グフイグ
  ナイテッド)(ガイア)(カオス)(アビス
  )(インパルス)に(ディン)の後継機の(
  バビ)水中用の新型機の(アッシュ)、(ザ
  ウート)の後継機の(カズウート)など数が
  多過ぎだ。その上、在来機も改良して使って
  いるからな。整備兵がよく悲鳴を上げないな
  って思う。実は俺もザフト軍にいた時には考
  えもしなかったけど、オーブ軍に入ってカザ
  マ専務と話した時に初めて気が付かされた口
  だ」

 「ザラ一佐も責任のある地位にいるのだから、
  いくら高性能でも整備性が最悪だったり、高
  コスト過ぎて数が揃えられないモビルスーツ
  をありがたがるのは止めた方が良い。モビル
  スーツは所詮は兵器なのだから、ある程度の
  性能があって数が揃っていれば後は運用の勝
  負になるんだよ。自衛隊や大西洋連邦軍はそ
  ういう運用をやっている。私の仕事は兵器の  
  開発だ。車で言うならちょっと高い新型車の
  量産に関わっている感じかな?決してF1カ
  ーの製造では無いんだ。あれは量産なんて考
  えていない代物だからな」

これは、カザマ専務の持論である。

 「改良機や派生機の実戦評価は行うようだ。元
  が(ムラサメ)なので、整備兵に負担を掛け
  難いからな」

 「ふーん、なるほどね」

そんな話をしていると、「ミネルバ」と「アマテ
ラス」が追いついてくる。

 「ディアッカ、あらかた落としたか?」

 「シン達が凄くて、俺の出番があまりありませ
  ん」

 「ちゃんと教えた通りにやっているようだな」

 「ええ、あなたの戦い方にそっくりです」


俺の戦い方は敵の弱点を突き、確実に止めを刺す

敵が降伏してもモビルスーツを降りなければ即座
に撃破、艦艇は機関を完全に停止して降伏しなけ
れば例え爆沈寸前でも止めを刺す。
「ジン」に乗っていた時に最後っ屁の様なミサイ
ルや機銃の攻撃で仲間を失った事のある俺のセオ
リーである。
その代わり、武器を持たずに降伏をした敵軍の兵
士への攻撃は厳に戒めるように教育した。

 「戦争は殺し合いだが、ルールがある。武器を
  持っていない無抵抗な人間を殺したらそれは
  戦闘では無くて虐殺だ。そこの所は良く覚え
  ておけよ」

非常にバランスが難しい所なのだが、そんな事を
教えながらこの二年を過ごしていたのだ。


 「ジェノア級の駆逐艦もハーグ級の巡洋艦も巧
  みに弱点を突いて撃沈していますし」


俺はアカデミー二年目の生徒には実戦に即した教
習を行っていた。
実習前にブリーフィングを必ず行い、仮想敵国で
ある大西洋連邦・東アジア共和国・ユーラシア連
合はおろか、同盟国やオーブ、ザフト軍の艦艇や
モビルスーツの性能や搭載武装や特徴を伝授して
、「この戦艦を落とすにはどう動けば良いのか?
」「大西洋連邦の宇宙艦隊が最小限の戦隊を率い
て侵攻中だ。これをお前達だけで撃破するにはど
う動けば良いのか?」などを検討させてから、実
際に指揮させるなど、かなり厳しく教えていた。

スズキ部長は「少し厳し過ぎないか?」と言って
いたが、どうせ、部隊に配属されれば訓練する事
だし、アカデミーの成績優秀者は若くして要職に
就く可能性が高いので、早い方が良いと判断した
からであった。

それに、俺がこれを教えていると自分自身の技量
の低下を抑えられるとい利点もある。


 「そろそろ俺はバッテリーの交換に戻るぞ。残
  敵掃討とは言え油断は出来ない。ディアッカ
  は(セイバー)にデュートリオンビームを照
  射して貰え。シン達もそろそろ一旦帰艦する
  からな」

 「了解です」

ザフト軍艦隊やその他の国の艦隊の集中砲火を浴
びて壊滅状態のはずのユーラシア連合軍艦隊では
あったが、まだ降伏はしていない。
今のうちに補給を済ませておこう。
俺はそう考えて実行に移す事にした。


(同時刻、オーブ軍艦隊旗艦「イズモ」ブリッジ
 内)

三分の一の艦隊が戦闘不能になり、ユーラシア連
合軍艦隊の奇襲を受けて混乱していたオーブ軍艦
隊であったが、ロンド・ミナ・サハク中将の的確
な指示によって混乱を脱し、ザフト軍艦隊やその
他の国と共同してユーラシア連合艦隊を壊滅寸前
にまで追い込む事に成功していた。

 「ミナよ。私の(ムラサメゴールドフレーム)
  の調整がやっと終了したそうだ。出撃させて
  貰うぞ」

 「敵はもう壊滅状態だ。必要ない」

ロンド・ギナ・サハク少将の要請は瞬時にミナに
却下される。

 「ちょっと待てい!本当はすぐに出撃するはず
  だったものを整備に手間取ったから」

 「ギナが見栄を張って(ムラサメ)の装甲を交
  換するからだろうが!」

 「アスハのバカ娘が金色の(暁)に乗っている
  以上、私も目立たなければならない」

 「とにかく、必要無い事だけは伝えておくぞ」

 「実戦テストだ!行かせて貰う」

 「勝手にしろ・・・」

本来、ギナはこの艦隊の参謀長として働かねばな
らいのだが、彼には能力はあってもそんな事をす
る気は皆無で、自分用の(ムラサメ)の装甲を(
暁)に使用している特殊装甲と同じ物と交換して
(ムラサメゴールドフレーム)などと勝手に呼ん
で悦に入っていた。 

 「あはは!ロンド・ギナ・サハク、(ムラサメ
  ゴールドフレーム)出るぞ!」

 「好きにしろ・・・」

胃が再び痛くなってきたミナの声を無視して、ギ
ナはMA体型の(ムラサメゴールドフレーム)を
発進させる。

 「我が親衛隊よ。付いて来い!」

 「「「了解!」」」

続いて、ロンド・ギナ・サハク親衛隊、通称「
ギナ飼育委員会」の搭乗する六機の「ムラサメ」
が発進する。
彼らは全員がコーディネーターで、大西洋連邦で
戦闘用コーディネーターとして戦っていたが、戦
後、アズラエル理事の悪事の犠牲者と見なされて
自由を得た者や、傭兵として各地を転戦していた
者など、様々な経歴を持っていた。
全員が自由を得たのは良かったのだが、戦争しか
出来ないで居場所が無いという若者達をギナが、
「良い思いをさせてやる!」と言って引き抜いた
のだ。
確かに、待遇は悪くないのだが、常識外れのギナ
に振り回されてかなり苦労した挙句、常識人にな
っていく様子が日々、自分達でもわかるらしい。
ちなみに、先の親衛隊員達はギナに対する耐用年
数が過ぎたので、ミナの下で普通にモビルスーツ
隊の指揮を執っていた。

 「ギナよ、わかっているとは思うが。敵は・・
  ・」

 「我にたてつく者全てだ!」

 「ユーラシア連合の艦隊とモビルスーツだ!こ
  れ以上、無用な戦火を広げるな!というか、
  外交問題を起こすな!」

 「ミナ様、お任せを」

 「くれぐれも。くれぐれも頼んだぞ!」

ミナは親衛隊員の一人に丁重にお願いをする。
彼はギナの面倒を見続けている常識人なので、安
心して頼めるのだ。

 「さあ、敵の旗艦を目指して突撃だ!」

七機の(ムラサメ)部隊はMA体型のままユーラ
シア連合軍艦隊に向けて突撃を開始し、立ち塞が
った「ハイペリオン」や艦艇を無慈悲に撃墜・撃
沈していく。
ギナは性格はアレだが、その能力は超一流であっ
た。

 「久々の実戦だ!血が騒ぐわ!」

ミナの苦労を他所にギナはご機嫌そのものであっ
た。


(同時刻、極東連合軍旗艦「むさし」艦内)

同じく、三分の一の戦力が戦闘不能になり、東ア
ジア共和国軍艦隊の奇襲を受けた極東連合軍艦隊
ではあったが、歴戦の小沢海将の適切な指示によ
って混乱を回復し、他国の艦隊と共に反撃に出て
いた。
東アジア共和国軍艦隊はユーラシア連合軍艦隊よ
りも更に少数であった為に、既に二十隻ほどの艦
艇が残っているのみであったが、未だに降伏をせ
ずに頑強に抵抗を続けていた。

 「今更、(降伏を潔しとせず)って奴かな?」

 「さあ?わかりません」

小沢海将と加来海将補が話していると更に数隻の
駆逐艦が爆沈した。
特殊対応部隊の「はりま」と「すおう」所属の「
ハヤテ」隊が戦果をあげたようだ。 

 「(ハヤテ)が高性能で良かったな」

極東連合軍というか、自衛隊の最新鋭量産型モビ
ルスーツはオーブ軍の「ムラサメ」と恐ろしいほ
どに類似していた。
違いは微妙な各部の部品の差と、「ハヤテ」の方
が少し稼働時間が長くて、「ムラサメ」の方が少
し機動性が良い位で、後は「ハヤテ」が自衛隊機
特有のダークグリーンの色合いで「ムラサメ」が
「M−1」とそう変わらない色をしている位であ
った。
背中に二門のビーム砲を背負っている事やMA体
型時に光波シールドを張れる所まで全く同じだっ
たので、お互いに軍事スパイの存在を疑ったらし
いが、実際はモルゲンレーテ社のカザマ専務と統
合機動歩兵開発主任に任命された真田技術海将補
の思考形態が似ているだけのようだ。

 「でも、東アジア共和国軍のモビルスーツは(
  ストライクダガー)の改良機です。(センプ
  ウ供砲任發修譴曚俵貔錣呂靴覆い隼廚い泙
  が」

極東連合軍の統合は自衛隊の存在がネックで意外
と順調に進んでいなかった。
基本的に東アジア共和国を離脱した国が多いので
、そちらに合わせようという意見が多いのだが、
自衛隊の装備の方が優秀なので、そちらに合わせ
ようという意見も存在していて、決まりが付いて
いなかった。
結局、合同で作戦を行う時には指揮権の調整を話
し合いで決める事と新装備を共通の物にして、次
第に摺り合わせて行く事に決定したらしい。
随分と呑気な話だが、世界規模の戦争が終了した
ばかりで、「暫らく、大きな戦争は起こるまい」
と思われていたので、そのままの状態になってい
る。

 「敵は他にも沢山いるからな。もう、半分終っ
  ている国の軍を破っても自慢にならない」

 「少し、傲慢じゃないですか?」

 「あのな。参謀長はこれで終ると思っているの
  か?絶対にこれから大変なんだから。こんな 
  事ぐらいでヘタってられないんだよ」

二人が話している間にも更に東アジア共和国軍の
艦艇が爆沈していく。
他の赤道連合や大洋州連合、西アジア共和国にと
っても東アジア共和国は傲慢で嫌な国家だったの
で、積年の恨みを晴らすべく熱狂的に攻撃を加え
ていた。
「人間困った時に助けてくれる友人こそ真の友人
である」と昔の戦国大名の前田利家が語ったらし
いが、どうやら、東アジア共和国には真の友人が
いなかった様であった。

 「うん?あれは何だ?」

 「でかいボールだな・・・」

東アジア共和国軍艦隊旗艦「鄭和」から何か巨大
なMAらしき物体が発進した後、MAの前部に装
備された巨大なビーム砲が発射された。

 「緊急回避だ!」

だが、その太いビームが数隻の艦艇を巻き込んで
いく。

 「撃ち落せ!」

各艦艇やモビルスーツがビームをそのMAに向け
て発射すると、MAは球状に光波シールドを張っ
てその攻撃を防いでしまった。

 「光波シールド!ユーラシア連合から技術供与
  を受けていたのか」

東アジア共和国軍艦隊は全滅寸前ではあったが、
まだ、もう一幕ありそうであった。  


(同時刻、東アジア共和国軍艦隊旗艦「鄭和」艦
 内)

現在、この艦隊を指揮しているのは、艦隊司令官
田大将を殺害した参謀長の氾少将と赤いスカーフ
を腕に巻いた将校達であった。

 「やはり、この戦力ではな」

 「予想よりは持ったかな?」

 「最後の切り札(先行者)がどの位、持つかだ
  な」

ユーラシア連合軍と東アジア共和国軍の艦隊は、
先の大戦後も目立った増強も行われずに放置され
てきた。
原因は本国の戦力の回復が最優先だった事と、こ
れ以上の戦力の増強に意味が無いと判断されたか
らである。
ユーラシア連合宇宙軍の守備範囲はL1・L2宙
域のコロニー群のみであり、あまり戦力を増やす
と同じ宙域を守っている大西洋連邦宇宙軍の艦隊
と無用な摩擦を起こすと思われたからで、艦艇は
増やされずに、搭載モビルスーツが全機「ハイペ
リオン」に代えられただけであった。
東アジア共和国軍は更に悲惨で、極例外的な少数
のコロニーの防衛をするだけで、大多数のコロニ
ーはL4宙域で放棄されたか、構成国の大量離脱
によってその所属を変えてしまい、「宇宙軍なん
て必要あるのか?」と陸・海・空軍の将校に嫌味
を言われていたくらいであった。

 「我々はここで死ぬが、各国の宇宙軍は大混乱
  に陥り、戦力を細切れにして各地の警戒に就
  かなければならないだろう。そして、その影
  響は地球への資源の輸送の減少を呼び、世界
  の経済が混乱する。その隙に本国の連中が失
  われた領土を回復してくれれば・・・」

 「祖国に栄光あれ!」

 「栄光あれ!」

だが、彼らはエミリア達が元ザラ派も援助してい
て、彼らが「ユニウスセブン」の落下を目論んで
いる事を全く知らなかった。

 「祖国に栄光あれ!」

 「栄光あれ!」

彼らが歓声を上げた瞬間。「鄭和」のブリッジに
「すおう」の陽電子砲が飛び込んで、彼らを焼き
殺したのであった。   


(同時刻、「ハヤテ」隊石原二佐視点」

石原二佐は「ハヤテ」隊を引き連れて、東アジア
共和国艦隊の「ストライクダガー改」隊を多数撃
破し、艦艇も血祭りにあげていたが、突如、敵旗
艦の「鄭和」から大型のMAらしきものが発進し
て、巨大なビーム砲を発射したので驚きを隠せな
いでいた。

 「何だ?あれは?」

 「さあ・・・」

相羽三佐も首を傾げているが、あの巨大なビーム
砲は驚異なので早めに始末しなければならない。

 「喰らえ!」

「ハヤテ」隊や各艦艇がMAに向かってビーム砲
を発射するが、全体に展開された光波シールドに
よって弾かれてしまう。

 「動きは鈍重そのものだが、火力と防御力が洒
  落にならない。さて、どうしたものか」

突如、光波シールドを解除したMAは再びビーム
砲を発射して更に数隻の艦艇を撃沈した。

 「光波シールドさえ無ければ!」

ビームが集中してMAに命中するが、対ビームコ
ーティングを施した装甲らしく、多少、融解した
り凹んだりする程度で、あまり効果は無い様だ。

 「全艦艇!バラバラに散れ!」

極東連合軍の小沢海将の指示で各艦艇が距離を取
ってバラバラになっていく。
現状では、これしか手が無いからだ。

 「弱点が無いな」

 「困ったな」

先程のビーム砲の攻撃で、部下の乗った「ハヤテ
」を二機も失ってしまった石原二佐と相羽三佐は
攻略法を考えるのに苦慮していた。

 「再び、光波シールドが無くなった時に、接近
  戦で片をつけるか?」

 「俺がやろうか?」

 「バカ!お前は嫁さんが妊娠しているだろうが
  !俺がやる!」

 「お前も彼女が目の前にいるだろうが」

 「五月蝿い!俺がやる!」

再び、MAが光波シールドを解除したので、相羽
三佐は「ハヤテ」をMA体型に変型させて突撃を
敢行する。
狙いは後部のスラスター内部だ。

 「よーし!いけるか?」

だが、突然、MAは相羽三佐の方向にビーム砲を
向けて発射体勢に移行し、発射口内が眩く光り始
めた。

 「駄目か・・・。ヨコスカの(制服倶楽部)の
  亜美ちゃんをデートに誘いたかったな・・・
  」

相羽三佐が覚悟を決めた瞬間、MAは全ての活動
を止めてしまい、更に、MAから降りてきた三人
のパイロットが手をあげて降伏してしまう。

 「あれ?」

 「あれれ?」

相羽三佐と石原二佐が突然の終幕に驚いていると
、「すおう」艦長の太田一佐が無線を入れてくる

 「どうやら、エネルギー切れの様だな」

 「そんな・・・。俺の必死の決意って・・・」

 「相羽三佐、君には、他にしなければいけない
  事があるのだよ」 

 「停止したMAの回収ですか?」

 「そんな事よりも、もっと重要な事だ」

太田一佐が無線を切り替えると、「すおう」の管
制官をしている、早乙女三尉の冷たい声が聞こえ
てくる。 

 「先輩、(制服倶楽部)の亜美ちゃんって誰で
  すか?」

 「えっ、聞こえた?」

 「聞こえました!」

 「しまった!(先日、石原二佐の嫁さんが妊娠
  して、お祝いを兼ねて飲みに行った時に、二
  次会で行った、キャバクラのお姉ちゃんの名
  前をつい言ってしまった・・・)」

 「私というものがありながら!」

 「誤解だよ。石原二佐もいたんだから!なあ!
  石原二佐、そうだろう?」

相羽三佐は親友に助けを求めるが、石原二佐は既
に部下を引き連れて「はりま」に帰艦していた。

 「あれ?いないな・・・」

 「真面目な石原二佐がそんな所に行くはず無い
  でしょうが!(すおう)に帰艦したら覚悟し
  なさい!」

 「ばっ、ばか!俺達は今は任務中で俺は上官だ
  ぞ!」

 「相羽三佐、それは卑怯だぞ」

 「そうですよ。隊長」

 「俺もそう思うぞ。ちゃんと説明してやれよ」

 「最低!」

太田一佐、部下のパイロット、小沢海将、女性士
官などから非難の声が上がってくる   

 「早乙女三尉、時間は後でちゃんと作ってあげ
  るから、遠慮なく真実を追求したまえ」

 「太田艦長、ありがとうございます」

太田一佐の一言で相羽三佐は更に追い込まれて行
く。

 「さて、生存者の救助を・・・」

 「それは、他の部隊の人間がやっている。早く
  帰艦しろ」

 「あれ?俺、逃げ場無し?」

 「無いよ」

 「そんな!バカなーーー!」

その後、例のMAは回収されて、その名前が「先
行者」である事が判明したが、ただのテストパイ
ロットとして任務に就いていた彼らには、それ以
上の事情が知らされていなかった。

そして、相羽三佐は早乙女三尉の鋭い追及で悲鳴
を上げていた事だけを明記しておく。

 「ちょっと、飲み屋で可愛い女の子と話しただ
  けなのにーーー!」

 「反省しなさい!さあ、キリキリと話して貰う
  わよ!」

 「俺だけが悪いんじゃねえーーー!」


(同時刻、「ミネルバ」周辺」

俺達は交代でエネルギーの補給を行った後に、ユ
ーラシア連合軍艦隊の包囲戦に参加していたが、
十数隻になっても彼らは全く降伏をする気配を見
せず、頑強に抵抗して我々の損害を増やしていた

ただ、例外的に数隻の艦艇が赤いスカーフを巻い
た将校を殺害して降伏していて、この攻撃が反乱
軍主導で行われていた事だけは判明していたのだ
が・・・。

 「降伏してくれなければ、どうにもならない。
  攻撃続行だ!」

リーカ達を交代で「ミネルバ」の防衛に回し、俺
自身が先頭になって攻撃を続行し、更にその後ろ
からシン達が付いてくる。

 「俺がかき回すから、止めを刺せ!」

 「「「「了解!」」」」

俺は数機で固まって光波シールドを展開している
「ハイペリオン」にスレイヤーウイップを立て続
けに叩き付け、その防御体型を崩してからレイ達
に止めを刺させる。

 「喰らえ!」

隙が出来た「ハイペリン」の後方からレイが「カ
オス」の起動兵装ポッドで攻撃を加え、ルナマリ
アが「アビス」の両肩のビームで止めを刺してい
く。

 「ルナ!」

 「何ですか?」

 「初陣にしては上等だ!後で、何かを奢ってや
  る!」

 「やったーーー!」

 「あの、俺は?」

 「シンに奢ると破産するから、嫌だ!」

 「そんなー」

戦況は完全にこちらが有利であったが、一つ困っ
た問題が発生した。
敵は少数なのに対して、こちらが多過ぎるので同
士討ちを避ける為に、砲撃が薄くなってしまって
、敵艦艇がなかなか沈まなくなってしまったのだ
。 

 「さっき、東アジア共和国軍艦隊は全滅に近い
  状態だって、連絡があったから、こちらも何
  とかしないとね」

四連装ビームガンで「ハイペリオン」を蜂の巣に
しながら独り言を言っていると、「ミネルバ」か
らアーサーさんの悲鳴に似た報告が無線に入って
きた。

 「ええっ!何か大きいMAらしきものが出て来
  たんだけど」

 「モビルスーツ全機待避!タンホイザー発射用
  意!」

 「わっ、わかった」

「ミネルバ」は俺達が待避したのを確認してから
タンホイザーを発射する。

 「よし!木っ端微塵になりやがれ!」

だが、そのMAらしきものは陽電子砲を弾き返し
てしまう。

 「嘘!」

 「タンホイザーを跳ね返した・・・」

ユーラシア連合軍艦隊は全滅寸前ではあったが、
まだ、戦いは終わりそうになかった。


(同時刻、ユーラシア連合軍艦隊旗艦「ナポレオ
 ン」艦内)

 「はははははは、(スレイヤー)の威力を見た
  か!一隻でも多く道連れにしてやるわ!」

ドゴール少将は始めから生還を考慮していない。
手持ちの戦力で一人でも、一機でも、一隻でも多
くの敵を倒す事しか考えていなかった。
先の戦争時に作戦の失敗で中央から遠ざけられた
自分がここで踏ん張るのは、自分の息子達や一族
の栄光の為で、他の同志達には、これから祖国が
陥る絶望的な未来と、それを防げるのは自分達だ
けだという半分洗脳めいたプロパガンダで操って
いたからだ。
そして、彼自身もエミリアの部下に洗脳されてい
たのだが、彼自身はその事に気が付いていなかっ
た。

 「しかし、東アジア共和国軍に渡った(ボール
  )じゃなくて、(スレイヤー)が回ってきて
  運が良かった」

両艦隊の旗艦が収納していた、二機の大型MAは
エミリア達が提供した試作機で、大西洋連邦軍で
配備された「ゲルスゲー」と「ザムザザー」の試
作機というか、原型機に当たる機体であった。

「ボール」は製作していた技術者達がそう呼んで
いただけで、東アジア共和国軍の連中は「先行者
」と呼んでいた。
形は完全な球形で前部に一門の巨大ビーム砲と全
方位に張れる光波シールドが大きな特徴になって
いる。
本当は陽電子・ビームリフレクターを装備したか
ったのだが、開発が間に合わずに、ユーラシア連
合発の手馴れた技術である光波シールドが使われ
ていた。
この機体はほぼ、大型MAの一号機と呼んでも過
言では無い機体なのだが、稼働時間が極端に短い
という欠点を抱えていた。

次に、「スレイヤー」という機体を説明すると、
この機体は「ザムザザー」の一代前の試作機に当
たる機体で、見た目はエイそっくりで陽電子・ビ
ームリフレクターを装備し、前部に装備された四
本のアームの内、二本を操作して発生させる事が
可能で、もう二本の腕はヒートクローとして使用
可能であった。

だが、当然、弱点は存在した。
今度は稼働時間を確保する為に、飛び道具が全く
装備されていなかったのだ。

「スレイヤー」はドゴール少将の期待を裏切らず
に、オーブ軍の護衛艦の攻撃をリフレクターで防
ぎながら接近し、ヒートクローで艦橋部分を引き
裂いた。

 「その調子だ!もっと大型艦をやってしまえ!
  」

艦隊が全滅の危機を迎えているのにも関わらず、
ドゴール少将はご機嫌であった。


(同時刻、「ミネルバ」周辺)

 「おいおい!あんな化物に接近されたら、(ミ
  ネルバ)だってやられてしまうぜ!」

ディアッカが驚いた様な口調で誰に話すでも無く
、声をあげていたが、確かに、奴に接近されたら
、大変な事になってしまうのは事実であった。

 「ふははははは、我に任せるが良い!」

 「何だ?」

 「げっ!金色の(ムラサメ)!」

 「あの色のモビルスーツは・・・」

 「そうだ!我こそオーブ軍にこの人ありと言わ
  れたロンド・ギナ・サハクだ!」

 「確かに、嘘は言っていないな。目立つ事この
  上ない人だから・・・」

 「さあ、親衛隊の諸君!いくぞ!」

七機の(ムラサメ)は合計で十四門の背中のビー
ム砲を一点に集中して発射する。

 「意外と、頭を使っているな」

 「意外は余計だ!アスハのバカ娘の腰巾着が!
  」

ギナを発見して、失礼な事を言っているアスラン
がギナに腰巾着呼ばわりされる。

 「でも、効いてませんよ」

アスランの指摘通り、ビームは弾き返されてしま
った。
考えて見れば、「ミネルバ」の陽電子砲すら跳ね
返すのだから、当たり前なのだが。

 「それで、次の手はどうしますか?」

アスランはかなり冷たい口調でギナにお伺いを立
てている。

 「ふん!敵の艦隊を叩けばエネルギーが尽きて
  終了だ!親衛隊の諸君!行くぞ!」

 「あっ、逃げた・・・」

ギナは親衛隊を引き連れ、ユーラシア連合軍艦隊
に引導を渡し始めた。 

 「でも、エネルギーが尽きる前に(ミネルバ)
  がやられる可能性の方が高いよな」

 「カザマ司令!俺に作戦があります!」

 「自信はあるのか?」

 「単純な作戦ですから」

 「よし、任せる!」

俺はシンに任せる事にした。

 「ディアッカ!俺達は・・・」

 「援護ですね」

俺とディアッカは大型MAを援護している数機の
「ハイペリオン」の排除に回る。

 「メイリン!ソードシルエット射出!」

 「了解です。ソードシルエット射出します!」

 「レイとステラはソードシルエットからエクス
  カリバーを受け取ったら、二手に別れて敵の
  ヒートクローを斬りおとせ!」 

 「「了解!」」

「カオス」と「ガイア」は飛行中のソードシルエ
ットからエクスカリバーをもぎ取ると、それを両
手で構えてから大型MAに攻撃を仕掛けた。

 「喰らえ!」

 「行け!」

ステラは右のレイは左のクローと鍔迫り合いを始
め、その隙に、シンとルナマリアは大型MAの後
方に回り込もうとする。

 「「「させるか!」」」

 「おいおい、俺達がいるんだぜ」

 「他所様の心配をしている場合じゃないぜ!」

大型MAの護衛に就いていた、三機の「ハイペリ
オン」がそれを妨害しようとしたが、俺とディア
ッカが三機の行く手を遮り、戦闘を開始する。

 「シン、後ろを取った!」

 「ルナ!後ろだ!」

突然、大型MAの後ろから尻尾の様な物が生え、
その先端からビームサーベルらしき物が発生して
「アビス」を切り裂こうとする。

 「やられてたまるかーーー!」

ルナマリアはその尻尾の先端のビ−ムサーベルと
ビームランスで切り結び始めた。

 「よーし!これで!」

大型MAは下部の二本のヒートクローはステラと
レイに押さえられ、隠し武器であった尻尾のビー
ムサーベルもルナマリアに押さえられていた。
最後に残った上部の二本のアームは後ろに回せな
いので、シンは死角を取る事に成功していた。

 「行けぇーーー!」

シンは「ブラストインパルス」に装備している二
本のビームジャベリンを両手に持ち、そのまま大
型MAの背中らしき部分に突き刺した。  

 「やったー!」

ビームジャベリンが大型MAに突き刺さった瞬間
、レイとステラがヒートクローを斬り落とし、ル
ナマリアも尻尾を斬り落とす事に成功していたが
、シンの止めの一撃で大型MAは誘爆を開始する

 「シンの奴、上手くやったな」

 「ですね」

俺が一機、ディアッカが二機の「ハイペリオン」
を撃ち落し、シン達が大型MAを落とした瞬間に
ギナがユーラシア連合軍艦隊旗艦「ナポレオン」
を撃沈して、その他の艦艇がようやく降伏した為
に、長かった宣戦布告無き艦隊決戦は終了したの
であった。


戦闘終了後、俺達は格納庫内で取りとめの無い会
話を始める。

 「シン、まあまあだな」

 「もう少し、褒めて下さいよ」

 「調子に乗るな」

 「えー、酷いなー」

 「でも、(ハイペリオン)二機に空母一隻、駆
  逐艦三隻ってのは凄いな。勲章を申請してお
  いてやる」

 「えっ!それって、ネビュラ勲章ですか?」

 「アホか!そんなに簡単に貰える物じゃねえよ
  !」

 「そうだぜ。俺ですら持っていないんだから」

 「俺は持っている!」

 「はいはい。ヨシさんは偉いですね」

 「ディアッカ、俺を微妙にバカにしていない?
  」

 「気のせいですよ」 

 「レイは冷静に頑張ってくれたようだな。(ハ
  イペリオン)八機は大した物だ」

 「ありがとうございます」

 「お前も勲章が貰えるな」

 「ステラも冷静でいてくれて助かったよ。そし
  て、(ハイペリオン)五機と駆逐艦一隻か。
  良くやったな」  

俺はステラの頭を撫でてあげる。
彼女は俺に頭を撫でられると、子犬の様に喜ぶか
らだ。

 「ありがとう。ヨシヒロ」

 「ルナマリアは・・・。えっ!戦艦一隻と巡洋
  艦二隻と駆逐艦四隻と(ハイペリオン)が五
  機!やるもんだねぇ」

 「先生が優秀ですから」

 「ルナ。今度、何処かに寄港したら、何かを奢
  ってやる」

 「ありがとうございます」

 「ステラにも奢って」

 「ああ、いいよ」

 「俺は駄目ですか?」

 「お前は食い過ぎるから駄目!」

 「ちぇっ!ケチ!」

 「何よ、カザマ司令はケチねえ」

俺達の会話を聞いていたリーカさん達が話し掛け
てくる。

 「シンは洒落にならないくらい、食べますから
  」

 「あら、そうなの?でも、そういう風には見え
  ないわね」

 「シン、俺達が奢ってやるぞ!何が食いたい?
  」

 「えっ、本当ですか?ゴーンさん」

 「ああ、いいよ」

 「私も奢ってやろう」

 「三人で奢ってあげるから」

 「やったーーー!」

 「(知らないって幸せだよな)」

シンは後日、寄港先で高級肉を何キロも食らい、
リーカさん達を恐怖のどん底に陥れたようだ。

 「人の忠告って聞くものなのね」

これがリーカさん達のその時の感想であった。


 「おっ!コアスプレンダーのミサイルポッド発
  見!続いてソードシルエットも発見!これで
  、国民の皆さんの血税が節約出来るぞ〜」

戦闘終了後の戦場でコーウェルは一人、(ザク)
を操縦しながら、インパルスの部品集めに奔走し
ていた。


(十一月二十五日夜十時、ジュール隊旗艦「ボル
 テール」艦内)

 「やはり、敵襲があったか!」

謎の集団に監視所が襲われていて、職員が監禁さ
れていた事に気が付いてから一時間後、「(ユニ
ウスセブン)が動いている」という報告を受けた
プラント最高評議会は現地に幾つかの部隊の派遣
を決定した。
最初に到着したのはジュール隊の面々であったが
、ジュール隊は「ユニウスセブン」の残骸にフレ
アモーターの存在を確認、それを破壊すべくモビ
ルスーツ隊を発進させたが、「ジンハイマニュー
バ況拭廚鯀爐詁罎良霑集団に襲われ、その目的
を達成出来ずにいた。

 「一体、奴等は何者なんだ?」

 「隊長、向こうは凄腕揃いです!うちの新人達
  ではっうわーー!」

 「おい!アスハス!ちっ!やられたか」

アスハスは緑服ながら、先の大戦を生き延びたベ
テランだったのだが、向こうにはそんな連中が沢
山いるらしい。

 「隊長ぉーーー!」

 「助けてくれーーー!」

ジュール隊には新人が多く、使用モビルスーツが
「ゲイツR」であった為に、次々に撃破されてい
るようだ。
どうやら、自分は大きなミスをしてしまったらし
い。

 「ディアッカがいればこんな事には・・・。え
  えい!俺も出るぞ!」

イザークは急ぎ「スラッシュザクファントム」で
出撃して現場に急行した。
すると、自分の部下達は実戦経験の無さを露呈し
て、性能的には格下の「ジンハイマニューバ況
」に押されていた。

 「体勢を立て直せ!二機で一機の敵に当たるん
  だ!」

「スラッシュザクファントム」のビームガトリン
グ砲で「ジンハイマニューバ況拭廚鬟丱薀丱蕕
しながら、イザークは部下に指示を出し続ける。 

 「(ユニウスセブン)はまだ動き始めたばかり
  だ。今の内に何とかすれば、地球への落下と
  いう最悪の事態は防げる。後、三十分持たせ
  ればアイマン隊が援軍に到着するし、ヴェス
  テンフルス隊もすぐにやって来る。何とか敵
  を撃破してフレアモーターの破壊を・・・」

イザークは焦りと戦いながら、必死に敵と交戦し
ているが、部下達は一機、また一機と撃破されて
いく。

 「地球にはフレイがいるんだ!絶対に落とさせ
  ん!」


「ユニウスセブン」の落下阻止限界点まで後、十
時間。
プラント最高評議会からの発表で「ミネルバ」「
アマテラス」「はりま」「すおう」も援軍として
参加する事が決まり、万が一の事態に備えてラコ
ーニ隊とコバヤシ隊が「メテオブレイカー」を用
意して現地に急行していた。
果たして「ユニウスセブン」の落下を防げるのか

敵の戦力は「ジン」だけなのか?
「ミネルバ」達は間に合うのか?

今、地球は滅亡の危機に立たされていた。


 


         あとがき

次は「ユニウスセブン」編です。
主役はイザークとハイネとミゲル?

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