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「これが私の生きる道!外伝8俺の勝ちは決まったと思ったんだけど・・・編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-05-04 02:30/2006-05-04 09:22)
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(コズミックイラ72、7月上旬、アカデミー校
 舎内)

 「では、今日はここまでだ。各自、復習を忘れ
  るなよ。と言っても、戦史だから試験対策だ
  けやっておけばいいさ。あくまでも教養科目
  だからな。卒業順位が気になる奴はそれなり
  にやらないと駄目だが」

 「「「「「はい!」」」」」

ある講堂の一室で講義を行っていた俺は生徒達に
忠告をしてから教壇を降りる。
実は、戦史の教官が急に親戚の葬式に出る事にな
り、本当は自習にするつもりだったらしいが、ス
ズキ部長が「お前は意外と座学の成績が良かった
からな。テキストを見ながら適当にやれや。どう
せ、今日の実地教習は終って暇だろう?」と言わ
れて押し付けられてしまったのだ。
確かに、座学の成績は悪くなかったし、テキスト
通りに事を運べば楽勝な講義なのだが、「教壇に
立つと言うのは意外と疲れるものなのだな」と思
ってしまう一時間であった。

 「カザマ教官!」

 「ルナマリアか。どうした?」

 「カザマ教官って座学の講義も出来るんですね
  」

 「あくまでも代理さ。テキストをなぞってるだ
  けだから誰にでも出来るんだよ」

 「そんな事ありませんよ。結構、テキストにも  
  載ってない細かい事を話していたじゃないで
  すか」

 「雑学の類さ」

 「この講義の教官の話しはつまらないので有名
  なんですよ。実戦教習の後だから、居眠りす
  る生徒も続出ですし。でも、今日はみんな起
  きていて、こんな事は珍しいですよ」

 「そうかな?」

 「そですよ」

俺の気分が良くなりかけた時、ある場所から誰か
の鼾が聞こえてきた。

 「一人、爆睡している奴がいるな」

 「レイですかね?」

ミーアちゃんに曲作りを急かされる運命のレイが
疑われる。

 「あいつは基本的に真面目だから、よっぽどの
  理由が無いと居眠りなんてしない」

 「じゃあ、やっぱり・・・」

 「シンだろうな」

鼾が聞こえる方向の席に向かうと、シンは机に突
っ伏してよだれを流しながら爆睡していた。

 「例外はいるみたいですね」

 「こいつがパイロット専攻科でトップ3に入っ
  ている事が信じられない・・・」

 「私とステラがノートを見せてあげてるからで
  す。シンは記憶力は良いから・・・」

確かに、こいつは覚えが速いが、テストが終ると
すぐに忘れるという欠点も持ち合わせていた。

 「ねえ。シン、起きて」

シンの隣りの席で荷物を纏め終わったステラがシ
ンを揺さぶるが全く起きる気配が無い。

 「シン、起きるんだ!カザマ教官に失礼だろう
  」

シンの前の席にいたレイもシンを揺さぶるが全く
起きようとしない。

 「俺が起こしてやるよ。えい!喰らえ!」

俺はシンの額にマジックで「肉」と言う字を書い
た。

 「カザマ教官、そんな子供っぽい事を・・・」

 「これはあくまでも、居眠りをした罰だからな
  。レイ」

俺は続いて、瞼の上に目を書き、更に口の回りに
「某青い猫型ロボット」の髭を書いた。 

 「まだ起きないか。シンは相変わらずバカだな
  あ」

 「へへへ、それほどでも・・・」

俺の言葉に反応して寝言を言うが、何かを勘違い
しているようであった。

 「シン、お前はシスコンだよな?」

 「はい・・・。そうです・・・」

 「面白いな。暫らく遊ぶか。もう、放課後だし
  」

 「カザマ教官、それはどうかと・・・」

 「レイはクソ相変わらず真面目だな・・・。ミ
  ーアさんと母親に頭が上がらない癖に・・・
  」

 「悪かったな!そこまで言うなら」

シンの言った寝言でレイは止め役を降りてしまう

 「どんな夢を見ているのか知らないけど、正直
  に自分の心を偽らずに話しているのかな?」

 「さあ?どうでしょう。シン、この前、レイの
  お弁当を盗んで食べたのは誰?」

 「へへへ、俺でーす・・・」

 「やっぱり、お前か!」

ルナマリアの質問にシンは正直に答えてしまい、
レイはシンの頭に拳骨を落すが、シンは起きる気
配が無い。

 「面白いな。もっと、際どい事を聞いてみるか
  」

 「面白そうですね」

 「やりましょう」

 「ステラもやる」

全員がその気になり、シンへの質問を続行する事
にした。

 「ねえ、シンはステラの事好き?」

 「うん、好き・・・」

 「シン、ステラの事好きだって」

 「おっ!大胆発言だ」

 「ちょっと!好きは好きでも恋愛感情とは限ら
  ないわよ!シン!私の事はどうなの?好きな
  の?」

危機感を感じたルナマリアがシンに同じ質問をす
る。

 「えへへ、ハンバーグが食べたいな・・・」

 「ちゃんと質問に答えろーーー!」

ルナマリアはシンにパンチを喰らわせたが、何故
かシンは目覚めない。

 「ルナ、それは酷いぞ。所詮は寝言なんだから
  ・・・」

 「俺もそう思うぞ。ルナマリア」

 「あれ?みんな何してるの?」

俺とレイが半分引いていた時に姉を誘って帰宅し
ようとしていたメイリンが話し掛けてくる。

 「シンが寝ぼけて面白い事を口走るんだ。通称
  、(不確定発言機)って所かな?」

 「シン、ステラの事好きだって」

 「えーーーーーー!シン!私は?私はどうなの
  ?」

 「うん、好き・・・」

 「やったー!」

 「えーーー!ちょっと!私はどうなのよ?」

ルナマリアは再びシンに聞くが・・・。

 「おにぎりがいいな・・・」

 「そんな事聞いてないでしょう!シンのバカー
  ーー!」

シンのおバカ発言を聞いたルナマリアは泣きなが
ら教室を飛び出してしまった。

 「あーあ、泣かせちゃった」

 「カザマ教官の責任が大きいですよ」

 「えっ!俺が?」

 「シンを素直に起こせば良かったんですよ」

 「みんな、楽しんでたじゃん」

 「年長者の責任って奴です」

俺がレイとメイリンに責められていると、シンが
やっと目を覚ました。

 「ふあーーーっ、良く寝たー!あれ?みんな、
  どうしたの?」

 「お前が寝ている間に色々あったんだよ」

 「すいません。居眠りしちゃって」

 「もう、そんな事はどうでもいいんだ」

 「いやー、夢を見ていまして。ステラとメイリ
  ンにご馳走を差し出されて(この料理、好き
  ?)と聞かれたから(うん、好き)って答え
  たんですよ。ルナからは(どんな料理が好き
  ?)って聞かれたからハンバーグって答えた
  んですけど・・・」

 「えっ・・・。じゃあ、あの好きって・・・」

 「料理の事で・・・」

 「ルナの場合は・・・」

 「食べたい料理の事か!」

 「何なんですか?」

あまりの下らなさと別にシンは悪くないと言う事
でその日は普通に解散になってしまったのであっ
た。


数日後の放課後、俺はシンに個人的な相談を受け
た。

 「どうしたんだ?シン」

 「あのですね。実はあれからルナが口を聞いて
  くれなくて・・・」

 「だろうな・・・」

 「それで、どうしたらいいものかと・・・」

 「休日に普通にデートにでも誘ってみれば?」

 「俺、デートなんてした事ありませんけど。て
  言うか、デートって恋人同士がするものでし
  ょう?」

 「そう深く考えないで二人で遊びに行けばいい
  んだよ」

 「遊びになら何時も行ってますけど・・・」

 「二人っきりで行かないと、ルナへの謝罪にな
  らないだろうが!お前がエスコートしてお金
  も全部出すんだよ。プレゼントも女性が喜び
  そうな物を・・・。そう、アクセサリーが良
  いな」

 「あの、具体的に詳しく教えて下さいよ。ヨシ
  ヒロさん、昔女たらしだったってアカデミー
  内で評判ですよ」

 「失礼な事を言う奴だな」

 「教えてくれても罰は当たらないと思いますが
  ・・・。先日、寝ている俺の顔に落書きした 
  のヨシヒロさんでしょう?」

 「俺?レイじゃないのか?」

 「額に(肉)って漢字で書いてありましたけど
  ・・・」

 「ははは・・・」

 「変だとは思ったんですよ!下校途中に俺の顔
  を見た人が全員笑うし、家に帰ったら、マユ
  と母さんに大笑いされるし!しかも、油性の
  マジックだったから落とすのに時間が掛かっ
  て大変だったんですよ!」

シンは寮に住んでいたのだが、父親のプラント転
勤に伴い自宅通学に変わっていたのだ。
新しい家はモルゲンレーテ社が用意した一軒家で
ホーク家とは近所だったので、寮の優先権がアカ
デミーから遠い者に変更されたからであった。

 「仕方がないな。初デートマニュアルを作って
  やるからそれを参考に頑張ってくれよ。これ
  を実行すれば成功間違いなしだ」

 「変な健康法の謳い文句みたいですね・・・」

 「そんな事はいいから、休日前にプレゼントを
  用意しておけよ。指輪はサイズがわからない
  だろうから、ネックレスとかイヤリングにし
  ておけ。あんまり安いのも駄目だが、高過ぎ
  るのも駄目だ。向こうが気を使うからな。お
  金はオーブ軍にいた時に貰った報奨金がある
  だろう?」

 「なるほど・・・」

シンは真剣に聞き入っている。

 「後のマニュアルは作成して後日に渡すから、
  二人っきりの時間を作ってちゃんとデートに
  誘う所から始めるんだぞ」

 「わかりました」

 「よし、今日は解散だ」

俺達はそれぞれの家路についた。


 「ふはははは、大成功だ!わざわい転じて福と
  なす。お詫びを兼ねての初デート!これで、
  ルナの勝利に一歩前進だ!」

俺は自室でバカ笑いをしながら、ノートパソコン
を開いて「デートマニュアル」を作成していた。
このデートが上手く行けば、グループ交際状態か
ら一歩抜け出せるし、鈍いシンもルナマリアを意
識するようになるだろう。

 「賭けの対象への過度の接触を禁止するんだも
  のな。正確には賭けの対象はルナ、ステラ、
  メイリンだ。シンでは無いし、俺はシンの方
  から相談を受けたんだ。人生の先輩としてア
  ドバイスをするのは当たり前だからな」

俺はマニュアルをキーボードで打ち込みながら独
り言をつぶやく。
決まりでは先程の言葉通りだし、俺以外の連中の
関心は女性陣三人に向いているので俺の動きに気
が付く事も無いだろう。

 「これで、俺の一人勝ちは決定だ!」

俺は大声で勝利宣言をしてしまったが、これが大
きな間違いであった・・・。 

 「婿殿、その企み看過出来ないぞ・・・」

ドアの向こうで俺の異変に気が付いたお義父さん
が聞き耳を立てていた事に気が付かなかった為に
、事態は混迷を迎える事になったのであった。


(7月上旬のある日曜日、ホーク邸内)

 「よーし、服装OK。髪型良しと」

ルナマリアは朝早くから起きて身支度に余念が無
かった。
ここ数日、シンと口を聞いていなかったのだが、
昨日の放課後突然呼び出されて今日のデートに誘
われたのだ。
嬉しくて、口を聞かなくなった原因を忘れてしま
いそうであった。

 「お姉ちゃん、早起きするなんて珍しいね」

 「まあね」

 「出掛けるの?」

 「そうよ」

 「誰と?」

 「内緒♪」

メイリンは実はある情報筋から姉がシンと二人っ
きりでデートをする事を知っていたのだが、ここ
は知らんぷリをしないと追跡すら困難になってし
まう。

 「(机の中に手紙が入っていて、シンとお姉ち
  ゃんがデートをするって書いてあったのを見
  た時は眉唾ものだったけど、まさか真実だっ
  たとは・・・。R・R・Kさんありがとう)
  」

同時にステラの机にも同様の手紙が入っていて、
その差出人は親切なI、M、Hになっていた。 

 「(お姉ちゃん、悪いけど邪魔させて貰うわよ
  )」

メイリンはステラと連絡を取っていて、このデー
トを粉砕する事を目論んでいた。


 「よう!準備は大丈夫だったか?」

早朝、ホーク邸に向かう途中のシンを俺は呼び止
める。

 「あっ、おはようございます。大丈夫ですよ」

 「プレゼントは?」

 「ネックレスを買いました。ルナの好きな赤い
  ルビーの付いた奴です」

 「上出来だ」

 「でも、自宅に迎えに行くんですね。何処かで
  待ち合わせをすると思いました」

 「だって、待ち合わせたら本当のデートみたい
  になるだろう?」

 「そうですね」

お詫びを込めた軽いデートだから、堂々と向こう
の家族に普通に挨拶してから行けば良いと教えた
のだが、俺の本心は二人で出掛ける事を既成事実
化して今後の展開を有利にする事にあった。
メイリンの妨害も予想されたが、彼女はこの事態
を知らないはずだ。
不意の事で対応出来ないだろう。
そう、俺は思っていたのだが・・・。 

 「はい、向こうの家族に失礼が無い様にこれを
  渡すんだよ」

俺は準備していたバラの花束をシンに渡す。

 「女性は花が好きなんだ。ルナの機嫌も良くな
  り、向こうのお母さんの印象も良くする。一
  石二鳥のアイテムだよ」

 「ありがとうございます」

 「じゃあ、行って来い」

 「行ってきます」

シンはホーク邸に向かって歩き出した。

 「(これで俺の勝利の確率が更に・・・。しか
  し、シンも素直な奴だよな。花束持ってルナ
  をデートに誘えばもう決定的なのに。ルナに
  無視されたのがよっぽどこたえたようだな)
  」 

俺は喜びの表情を隠せずにいられなかった。


 「おはようございます」

 「あら、シン君。おはよう」

シンが呼び鈴を鳴らすと、ルナマリアとメイリン
のお母さんが出迎えてくれた。

 「みんなで遊びに行く約束でもしたの?」

 「あっ、いえ・・・。今日はルナと・・・」

 「ふーん。そうなんだ」

 「えっと、その・・・」

 「ルナマリアを呼んでくるわね」

お母さんはバラの花束を一目見てからルナマリア
を呼びに家の中に戻った。

 「あら。シン、早いわね」

 「おはよう、ルナ。えーと、これをどうぞ」

 「わあ、ありがとう。シン」

花束を貰ったルナマリアが笑顔を見せる。

 「(本当に機嫌が良くなった。ヨシヒロさんの
  アドバイスは役に立つなー)」

 「じゃあ、行きましょうか?」

 「そうだな」

シンとルナマリアは仲良く出掛けて行った。


 「よーし、追跡開始よ!」

 「メイリン、止めなさい。みっとも無いわよ」

メイリンが二人を追跡する為に出掛けようとする
と、お母さんが止めに入った。

 「でも、シンが・・・」

 「ルナマリアがあんなに嬉しそうにしているの
  に、可哀想でしょ」

 「他の事ならいざ知らず、こればっかりは引け
  ないわ」

 「仕方が無いわね。邪魔したら駄目よ」

 「わかってるって」

 「(絶対に邪魔するわね)」

メイリンは勇んで出掛けて行く。

 「なあ、母さん。シン君はルナマリアとメイリ
  ンのどちらと付き合っているんだ?」

休日なので食堂で新聞を読みながら朝食を食べて
いたホーク課長が惚けた事を聞いてくる。

 「そんな事、私は知りませんよ。ただ、ルナマ
  リアが今のところ多少有利だと思いますよ」

 「ふうん。うちの可愛い娘二人に好かれるなん
  てシン君は羨ましいな」

 「普通の父親としては、娘が心配になりません
  か?」

 「どちらかと結婚してくれればシン君が息子に
  なるからな。実は俺、息子が欲しかったんだ
  よね」

 「はあ、そうですか・・・」

 「でも、娘はいいよな。男を引っ張り込んでく
  れるから。シーゲル前議長の所のカザマ君が
  いい例だ」

 「それは、そうですね」

 「普通に息子がいても、エルスマン議員の所の
  ディアッカ君の様に何時までも彼女の一人も
  いないと哀れだからな」

 「そうですわね」


 「はっくしょん!」

 「どうしたんだ?ディアッカ」

 「どこかの美女が俺の噂を・・・」

 「そんな事はどうでもいいから、書類を片付け
  ろ!全く、お前が書類を溜め込むから休日ま
  でこんな仕事を・・・」

 「どうせ、婚約者には会えないんだからいいじ
  ゃん」

 「俺はコレクションの虫干しをしたかったんだ
  !」

 「そうせ、ゴミばかりじゃん」

 「大きなお世話だ!早く、仕事しろ!」

 「そうだな。早く終らせてナンパでもしに行く
  かな?」

 「駄目だこりゃ・・・」

イザークは呆れるばかりであった。


ホーク邸を出た二人は市内の中心地に向けて歩き
出した。
シンは俺のマニュアル通りに事を運んでいるよう
だ。

 「そうだ。どんな事でもいいから会話を続ける
  んだ。そして、聞き上手になれ。女は自分の
  事を話したい生き物だ」

俺は以前にアスランから貰ったサングラスを着け
、目立たない格好で二人の尾行を開始した。

 「よしよし、日常の会話でOKだ。後は音楽と
  か芸能人の話とかで行け!」

 「ねえ、ヨシヒロは何をしているの?」

 「ヨシヒロさん、何してるんですか?」

いきなり後ろから話し掛けられたので振り向くと
、そこにはメイリンとステラがいた。

 「あれ?二人共どうして?」

 「親切な誰かが教えてくれたの」

 「はあ?」

 「シンがお姉ちゃんとデートするって手紙が届
  きまして」

 「(ちくしょう!バレてやがる)・・・。ふー
  ん、そうなんだ」

 「それで、追跡をしていたんですが。まさか、
  その仕掛け人がヨシヒロさんだとは・・・」

 「えっ!僕知らなーーーい」

 「ヨシヒロ、ずるい・・・」

 「いや、俺はたまたま一人で散歩をしていて・
  ・・。あっ!とにかく追跡しないと」

俺はステラとメイリンの追及を振り切って追跡を
続行する事に成功する。
シンとルナマリアは仲良く会話をしながら、市内
のある映画館に到着した。

 「映画か。普通のデート内容ね」

 「ステラ、(ワンワン物語)が見たい」

 「あの、それ幼児用の映画・・・」

二人は新作のSF映画のチケットを購入して中に
入った。

 「うーん、恋愛映画じゃ無いんですね」

 「シンはそれだと寝てしまうからな。映画で女
  性が感動しているのに、男が居眠りしてたら
  興ざめだ。幸い、ルナはこういう内容の映画
  が好きだから、俺がシンにアドバイスしたの
  さ」

 「やっぱり!入れ知恵してたんですね!」

 「ヨシヒロ、ずるい!」

 「しまった!つい、口が滑った!」

俺は調子に乗って真相を話してしまった。

 「とにかく、私達も入りますよ」

 「ヨシヒロ、行こう」

俺は二人に引っ張られて映画館に入る羽目になっ
てしまった。

 「大人3枚で」

 「ヨシヒロ、お金」

 「えっ!俺が出すの?」

 「誰のせいだと思っているんですか?」

 「はい、出しますです・・・」

 「ステラ、コーラのLとジャンボポップコーン
  」

 「私もコーラのLとフライドポテトのLと○ー
  ゲンダッツのバニラ」  

 「ステラも○ーゲンダッツのストロベリーが食
  べたい」

 「あの、これも私が出すんですか?」

 「何か文句でも?」

 「いえ、無いです・・・」

俺達は席に座って二人を監視しようとしたが・・
・。

 「あのさ、シンとルナを見張らなくていいの?
  」

 「どうせ、二人共映画に集中しているから何も
  起こりませんよ」

 「ヨシヒロ、今いいところだから・・・」

 「はい・・・」

空しくなった俺は映画に集中する事にする。
さすがに、話題の新作だけあってなかなか面白い

 「さて、映画が終ったから次は昼食だな」

 「どんなアドバイスをしたんですか?」

 「えっ!いや、あの・・・。高級レストランで
  予約を取らせましたです」 

 「じゃあ、私達も追跡ですね」

 「ステラ、お腹が空いた」

 「あの、本来の目的からは遠く離れているんで
  すけど・・・」

 「さあ!行きますよ」

俺は再び、二人の引きずられてシンとルナマリア
の追跡を再会した。

 「へえ、ここ雑誌に載ってたけど、高くて有名
  な所ですよね」

 「いや、女性というのは特別な物とか、特別扱
  いされると嬉しいものなんだよ。女性は限定
  品とか特別会員とか大好きでしょ。だから、
  有名高級レストランで予約を取って招待して
  あげれば効果は抜群だと・・・」

 「シン、お金大丈夫なんですか?」

 「オーブ戦の折の一ヵ月半の将校としての給料
  と撃墜報奨金があるから・・・」

 「いいな。ルナ」

 「お姉ちゃんばかり、ズルイ!」   

 「ヨシヒロさん!入りますよ!」

 「ヨシヒロ、お腹が空いた」

 「それって、スポンサーは・・・」

 「ステラ、お金持ってない」

 「あなたに拒否権はありません!」

 「わかりました・・・」

俺達はレストランに入る事にした。

 「この一番高いコースを三人前で。ワインは料
  理にあったものをお願いします」

 「かしこまりました」

 「あの・・・。君達、映画館で結構食べていた
  よね。大丈夫?」

 「大丈夫ですよ」

 「ステラ、お腹が空いた」

 「それでは、オードブルからです・・・」

俺達三人は一番高いコースを堪能するが、サイフ
はかなり寂しくなった。
ステラとメイリンは全てを平らげて、デザートの
お代わりまでしていた・・・。

 「次は何ですか?」

 「えっ、まだ追跡するの?」

俺はこれ以上の散財を避ける為に、退却したいの
だが・・・。

 「当然、最後まで追跡します!」

 「ステラも追跡する」

 「でも、君達二人の事全然監視してない・・・
  」

 「「何か!?」」

 「いえ、何でもありません」

シンとルナマリアはある洋品店に入って行く。

 「これは?」

 「一緒に服を見てあげてお互いに気に入った物
  を購入すると二人の仲も良くなるかなって・
  ・・」

 「じゃあ、入りましょう」

俺達は洋品店に入ったのだが・・・。

 「私、この服欲しいな」

 「ステラはこれ」

 「あー、良く似合ってるよ」

 「メイリンも似合ってる」

 「じゃあ、これは?」

 「あのー、二人の監視は?」

 「大丈夫ですよ。ちゃんとしてますから」

俺が見る限りにおいて、メイリンとステラはお互
いに服を選んでいるだけであった。

 「シンとルナが店を出たぞ」

二人は数点の服を購入してから店を出る。

 「さあ、追いかけるぞって・・・」

大量の服をレジに持っていったメイリンとステラ
は、俺を手招きで呼び寄せる。

 「ヨシヒロ、買って」

ステラは子犬の様な目で俺を見つめ。

 「買ってくれますよね」

メイリンはすがる様な目で俺を見つめる。

 「ああ、もうわかりましたよ!」

俺は二人にたかられて更に散財してしまった。

 「次はどうなんです?」

 「最後はホーク邸近くの公園だ」

夕方、ホーク邸近くの公園に到着した二人はベン
チに座って話し始める。

 「シン、今日はありがとう。とっても楽しかっ
  た」

 「俺も楽しかったよ。それでね、今日のお礼に
  プレゼントがあるんだ」

 「えっ、何かな?」

シンはリボンの付いた小さな包みをルナマリアに
渡した。

 「開けていい?」

 「どうぞ」

ルナマリアが包みを開けると、中身は赤いルビー
が付いたネックレスだった。

 「うわー、綺麗。ありがとう、シン」

 「喜んでくれて嬉しいな」

 「あのね・・・。下らない事で怒ってごめんな
  さい」

 「もう、いいんだよ」

 「ねえ、シン。このネックレス付けてくれる?
  」

 「ああ、いいよ」

シンはルナマリアの首に手を回した。


 「ああ!どうして、こうなるのよ」

 「指輪はサイズがわからないから却下したが、
  ネックレス及び、イヤリングは(付けてくれ
  るかな?)攻撃が発動される可能性が高く、
  そのままキスに移行するケースも・・・」

 「「そんな事、聞いて無い!」」

メイリンとステラはダブルラリアートを発動して
、俺の意識は薄くなっていった。


 「ありがとう」

ネックレスを付けて貰ったルナマリアは目を瞑っ
た。

 「(えっ!ヨシヒロさんの言う通りだ。ここは
  、ファーストキスのチャンスを生かさないと
  。頑張れ!俺)」

シンも目を瞑り、唇を合わせようとしたその時・
・・。

 「お姉ちゃん!抜け駆けは無しって言ったでし
  ょ!」

 「メイリン!ステラ!どうしてここに?」

 「そんな事はいいのよ!これ、どういう事よ?
  」 

 「えっ、あのね・・・」

 「シンもお姉ちゃんばっかり贔屓してずるいわ
  よ!」 

 「えっ、今日はこの前のお詫びを込めて・・・
  」

 「それで、キスするわけ?」

 「あのーーー。そのーーー」

 「シンはキスしたいの?」

ステラが何時もの口調で聞いてくる。

 「まあ、俺も男だし・・・。したいかな?」

 「じゃあ、ステラとキスしよう」

ステラは目を閉じて口を尖らせた。

 「ちょっと!ステラ!その天然攻撃は止めなさ
  いって言ったでしょ!」

 「シン、キスしたいって言ったから」

 「それは、私の予定だったの!」

 「お姉ちゃんも自分からしようとしただけでし
  ょ!」

 「悪かったわね!大体、お互いの合意の上での
  事だったのにあなた達が邪魔するから・・・
  」

シンを置き去りにして、三人の乙女の言い争いは
夕方の公園に響き渡っていた。 


 「あの、お兄さん。大丈夫かね」

メイリンとステラのダブルラリアートで気絶して
いた俺は、犬を散歩させていたおじいさんに心配
されていた・・・。


 「ただいま」

散々な休日になってしまった俺は、重たい足を引
きずるようしてクライン邸に帰宅する。
さすがに悪いと思ったのか、メイリンに「夕食を
どうですか?」と誘われたのだが、今日は家で夕
食を取ると言って出て来たので、帰宅する事にし
たのだ。 

 「今日はお父様が美味しいお店から出前を取っ
  てくれたんですよ」

そう言いながら、お手伝いさんが出してきた食事
はお昼にステラとメイリンで食べたお店のコース
メニューであった。

 「このお店のコースは・・・」

 「婿殿、どうしたのかね?箸が進んでいないよ
  うだが」

 「いや、これはですね・・・」

 「ヨシヒロ、私はヨシヒロがせっかくの休日な
  のに一人で遊びに行ってしまった事や、ステ
  ラ達に色々買ってあげた事を怒ってなんてい
  ませんわ」

 「(怒ってるな。間違い無く・・・)」

 「さあ、婿殿。せっかくのご馳走だ。遠慮無く
  食べたまえ」

 「(あっ、情報漏洩の犯人見っけ!)」

俺は無理やり食事を全部平らげた後、夜中になる
までラクスのご機嫌取りに奔走する羽目に陥った
のであった。


翌日、アカデミーの教室でシン達が話しているの
を目撃する。

 「お姉ちゃんはいいわよね。シンに素敵なネッ
  クレスは買って貰うし、デートは最高だった
  しで・・・」

 「ステラもデートに行きたい・・・」

 「じゃあ、俺と行こうか?」

 「シンがいい」

ヴィーノの提案がコンマ一秒で却下されてヴィー
ノは隅でイジケ始める。

 「私も何処かに連れてってよ。勿論、二人っき
  りで」

 「だから、俺と行こうよ」

 「却下、私はシンに聞いてるの」

 「そんな・・・。俺って・・・」

ヨウランもヴィーノと一緒に教室の隅でイジケ始
めてしまう。

 「シン、連れて行かないと収まりつかないわよ
  」

 「だよなーーー」

結局、シンはメイリンとステラもデートに連れて
行ってしまった為に、俺のルナマリア先行逃げ切
り型計画は失敗に終わり、無駄な浪費をしただけ
で終ったのであった。


(同時期、赤道連合領のある海域)

最高の傭兵と称される俺の今日の仕事は最近、こ
の海域を荒らす海賊の退治であった。
今までは情報の漏洩等があり逃がし続けていたら
しいのだが、今回は情報を流していた軍の将校を
逮捕して組織の全容を掴んでいるので失敗は無い
と思われる。

 「つまり、この囮の輸送船をモビルスーツ隊が
  取り囲んだら、俺がそいつを撃破すれば良い
  と?」

 「そういう事だ」

 「海賊のアジトの方は正規軍が同時に攻撃を開
  始しますので」

 「つまり、凄腕のモビルスーツ隊は俺らに任せ
  て正規軍の連中は空のアジトを押さえる方に
  回るんだな」

 「すいません。モビルスーツは推定でもグーン
  が五機とゾノが二機確認されていますので、
  我々のモビルスーツ隊ではどれほどの被害が
  出るか・・・」

 「気にするな。俺は仕事をしてるに過ぎない」

赤道連合の連絡将校が申し訳無さそうに言うが、
俺は気にしないようにと言ってあげた。

 「向こうが停船命令を出して浮上したら、船の
  上から射撃を加えて撃破か。逃げられたら船
  が沈められてしまうな」

 「それは別口で、イライジャが自衛隊から貰っ
  た水中バイクで攻撃を仕掛けるんだ」

リードが続けて説明を始める。

 「一機でか?」

 「心配か?やはり」

 「ああ」

 「そう言うと思って新型の水中用モビルスーツ
  をラクス様から貰ったんだ。お前なら乗りこ
  なせるだろう?」

 「それは大丈夫だが、そのモビルスーツは?」

 「こっちだ!」

俺はハンガーに到着すると、またもやあの色のモ
ビルスーツが見える。

 「俺にはピンクのジンにしか見えないが・・・
  」

 「こいつは新型の水中用変型モビルスーツの変
  型機構試作機の(ピンク様)だ」

 「もう、名前なんてどうでもいい・・・」  

 「淡白な奴だな」

 「そういう問題じゃないだろうが!」

 「武装の説明をするぞ。両肩の部分は対ビーム
  コーティングがされていてシールドも兼ねて
  いるし、モビルスーツ体型時には三連装ビー
  ム砲と連装炸裂砲を搭載していて、MA体型
  時には高速誘導魚雷を発射する。次に、あの
  長いランスはビーム刃も出せる。そして、M
  A時には機体上部の二連装ビーム砲が使用可
  能になるって寸法だ」

 「そうかい・・・」

このジンはシルードを持っていない代わりに、胸
の部分にLOVEラクスと書かれていたり、ジン
の全長を超える長さのランスの先がハート型でビ
ーム刃を発生させるとそれは綺麗だったりするの
だが、プロの傭兵たる俺が気にしては負けだ。
俺はプロの傭兵、道具は選ばない・・・。


「ピンク様」もとい、ジンの調整を終えて慣らし
運転をした俺は相変わらず回りから笑われたが、
その時はこのジンの色を笑っているのだとばかり
思っていた。


俺は最近傭兵稼業を始めた新人の傭兵だ。
今日はまだ三回目の仕事の上に、あの有名な(ピ
ンクの死神)と仕事をする事になってしまったの
だ。
まさか、こんなに早くあの伝説の傭兵に会えると
は思っていなかったので、嬉しさと緊張で震えが
止まらない。
彼はふざけた色と形のモビルスーツで敵を心理的
に混乱させて今まで大戦果を上げてきたらしい。
その姿勢は俺も見習わないといけないのかも知れ
ない・・・。

 「そろそろ、来るぞ!」

俺達は空の輸送船に隠れて海賊を待っていた。
連中には大量の高価なレアメタルが搭載されてい
るという情報を流していたのだ。

 「よーし!死にたくなかったら降伏して積荷を
  渡すんだな!」

海上にグーン七機とゾノ二機が顔を出して輸送船
を取り囲んだ。

 「情報より二機多いな。だが・・・」

全機が一斉に偽装用のホロを取り払うのと同時に
射撃を加える。

 「なっ!全機一旦退却だ!」

だが、不意打ちを受けてしまったので、生き残り
はグーン一機とゾノ二機のみになってしまう。 
俺は一機のグーンを倒す事に成功したが、(ピン
クの死神は肩の三連装ビーム砲の射撃で三機のグ
ーンを瞬時に撃破してしまった。
その技量は驚異的と言える。

 「ちくしょう!あの船を沈めてしまえ!」

怒りで我を忘れた海賊の首領は輸送船の撃沈命令
を下した。

 「イライジャ!グーンを任せるぞ!」

 「了解だ!」

いつの間にか水中にいたジンが水中バイクのよう
な装備に乗ってグーンを戦闘を開始するが、まだ
ゾノ二機が残っているのだ。
彼はどうするのだろう?

 「俺はゾノを倒す。残りの連中は輸送船を守れ
  !」

 「「「了解!」」」

ここ一番で胆力のある(ピンクの死神)が残りの
傭兵に指示を出した。
本当は彼に指揮権は無いのだが、全員が素直に指
示に従う。
さすがは、(ピンクの死神)だ。

 「では、俺はゾノを追うぞ!」

ピンクのジンは輸送船から海に飛び込む瞬間に変
型したのだが・・・。

 「なあ、ハートだよな。あれ・・・」

 「ぷっ!ハートだな」

 「ピンクのハートそのものだな」

 「ぷぷぷっ!背中に(LOVEラクス)だって
  さ」

 「そんなに、ラクス・クラインが好きなのかな
  ?」

 「せっかく、最高の傭兵なのにな・・・。ぷぷ
  っ!」

 「「「「「あはははははははははっ!!!」」
  」」」

輸送船に残った傭兵と乗組員全員が爆笑してその
声が「ピンク様」の無線に入ってきた。

 「ハート型だと!やっぱりそういう事かーーー
  !ちくしょう!カザマの野郎!覚えてろよ!
  」

MA体型の「ピンク様」でゾノ二機を瞬時に撃破
したガイは南太平洋の海で絶叫するのであった。


       あとがき

運命編の為に資料を集めていますので、もう少し
待っていて下さい。

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