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「幻想砕きの剣 8-14(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-05-03 22:17/2006-05-03 23:00)
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 大剣が風を裂く。
 幾つもの命が纏めて刈り取られる。
 痕跡すら残さず消し飛ばされ、抵抗なぞ不可能。
 だが刈り取られる命は、依然としてその数を減らさない。
 刈られても刈られても、次の命が、次の命が、大剣の振るい手を狙って迫るのである。
 自らの生存本能の声に耳を貸すには、彼らは血が昂ぶりすぎていた。
 その血に身を任せれば、即刻死が訪れる。
 それでも構わず、彼らは戦の高揚感に酔っていた。


「フンッ!」


 ゴッ!


 また大剣が無造作に横薙ぎに振られた。
 常軌を逸した大きさのその剣は、またも魔物達を一瞬で消し去った。
 返す刀でまた押し寄せる魔物達の大部分を切り払う。


 橋の上で大剣を振り回し、魔物達の殆どに進軍する隙を与えない。
 大河の斬撃を潜り抜けた数少ない魔物達は、大河の後ろで待ち構えていたユカとセルに確実に迎撃されていた。

 バカでかい剣を木切れの如く振り回す大河を眺めて、ユカは敵を倒しながらも呆れた声を出す。


「なーんかメチャクチャだよね。
 現実感がないっていうか…。
 召喚器ってあんなに強いの?」


「俺の知ってる召喚器は、あそこまで強くないッスよ。
 学園で何度か受けた事がありますけど、人間相手って事で手加減していた事を考えても…。
 現に俺でも耐え切れるくらいの攻撃力でしたし」


「セル君になら、あんまり手加減が必要ない気もするね?
 何度か攻撃を受けると、すぐに耐性ができちゃいそう」


「俺は一応人間なんスけどね…。
 つーか、アレは耐性がどうのの領域じゃないでしょう。
 一発目で完全にあの世行きです。
 出るぜ黒龍波、アレなら丸ごと焼き尽くすって事ですね」


 大河の攻撃をすり抜けて来る事が出来るモンスターは、大体種類が決まっている。
 強い戦闘能力を持つ魔物は大抵デカブツで、そうなると自然と的も大きくなる。
 ただでさえ広くはない橋の上で、ただでさえ長いリーチの大剣。
 右に左に振り回すだけでも、その威力は耐え切れる代物ではない。
 体の大きい魔物が通り抜けるのは、不可能に近い。

 ただ万が一、橋に一撃を当ててしまえば、その時点で橋ごと消し飛ぶのは想像に難くない。
 その為橋の中心で、手摺などにぶつからないように立ち居地を調整する必要がある。
 だから橋の両端には、僅かだが大河の攻撃が届かない空間が発生する。
 ユカとセルは、その隙間から出てきた魔物達を屠っているのだ。
 大河は専ら大物を叩き潰しているので、自然と小物が相手になる。


「汁婆は大丈夫?」


「さっきこんなの飛んで来たッス」


 セルがポイ、とフリップを投げる。
 目の前の魔術師の顎に蹴りをくれながら手を伸ばしてみると、そこには何やら技の名前が書かれてあった。
 曰く、『天覇! 汁婆百裂猛襲脚!!』。
 …どうやら汁婆自筆らしい。
 倒れた魔術師を、迫ってくる獣人に投げつけて牽制し、動きが止まった一瞬に氣弾を叩き込むユカ。
 ふと橋の外側に視線を移せば、そこにはドッポンドッポンと立ち捲る水柱。
 よく見ると、翼の生えた魔物…主にガーゴイル達がU型の足跡を付けて、勢いよく激流に叩き込まれていた。。

 二匹一度に抜けてきたスライムを蹴り飛ばして、その後ろから迫るスケルトンの顔面に叩きつける。
 目玉がないのに目で見ているのか、目晦ましにはなったらしい。
 スライム2匹とスケルトン一体を豪快な踵落としで粉々に砕き、ユカは汁婆の様子を見るために振り返った。
 …振り返らなければよかったと後悔した。

パカカカカカカカカカカカカカカカカカ!

 いかにもウマって感じの音を立てながら、汁婆は片足で河の近辺を縦横無尽に移動する。
 ケンケンで移動しているのか、それとも得体の知れない歩法で平行移動しているのかは知れないが、そのスピードは一本足とは思えない程に素晴らしく速い。
 そしてもう一本の脚で、それこそユカの目でも追いつかないほど強烈な蹴り技の嵐を魔物達に叩き込んでいるのだ。


「…馬じゃねぇ…」


 同じく汁婆を見たセルの呟きに心底同調したとしても、誰が責められようか。
 しかもどういう理屈か、姿の見えないガーゴイルも一切逃していない。

 ともあれ、そう言った陣形で、未だに一匹も魔物達の通過を許していない。
 その最大の功績が誰にあるのか、言うまでもあるまい。
 今大河の大剣が、巨大なカメのような魔物を一刀両断にした。

 それを見て、ユカは心配になる。
 凄まじい攻撃力だが、それを生み出す召喚器の力のフィードバックが大河を蝕んでいるのではないのか?


「大河君、大丈夫!?」


「うおぅりゃっ!
 っく、余裕だ余裕!
 ちょっとばかり勝手が解らなかったけどな、でりゃ!
 精々後で筋肉痛になる程度だよ!」


「忘れてないよな!
 ヤバイと思ったらすぐに退くぞ!?」


「だから余裕だっての!
 それより自分の心配してろや!
 どっせぇぇぃい!
 っつーか、こいつらどれだけ居るんだよ?」


「さぁ…魔法の専門家の話によると、無限ナントカで魔物を大量に召喚しているらしいんだ。
 ひょっとしたら、文字通り無限に魔物が押し寄せてくるかも…」


「でもここに居るのは有限だろ?
 数が多くたって、ペース配分を間違えなければどうって事無いな。
 ずぇりゃあ!」


 一際大きな気合と共に、強く踏み込んだ大河は横一文字に大剣を振るう。
 それだけで凄まじい衝撃波が発生し、小さな魔物達は吹き飛ばされる。
 余波で橋もギシギシ鳴っている。
 これではもう戦にならない。
 大人と子供の喧嘩にもならない。

 大河は大剣を振り回しながら徐々に前進し、とうとう魔物達は橋の前まで後退させられてしまった。
 が、大河としては誤算である。


(あちゃ、調子に乗りすぎたか…。
 橋という通行制限があったから魔物達の行動が制限されてたのに、制限もクソもない白兵戦に持ち込んでどーすんだよ、俺…。
 これ以上進むと、後ろに魔物達を沢山通しちまうし…どうすっかな…ん?)


 魔物達を牽制しながら…それだけでも何匹か消し飛んだ…大河は思案を巡らせる。
 その耳に、高らかなラッパの音が響いた。
 獣人の剣を受け流し、バランスを崩した瞬間に回し蹴りを叩き込んで、獣人を川にブチ込んだセルは、ラッパの音に耳を澄ませる。


「…大河!
 援軍が来たみたいだぞ!
 あのラッパは進軍の合図だ、もうすぐそこまで来てる!」


「マジか!?」


「割と楽だったね。
 大河君、その大剣ってメチャクチャ凄いね!」


「ふっ、剣も凄いが俺も凄いのさ!
 ッてな訳で、唐竹割りゃぁぁぁああああ!」


 今までとは違い、今度は垂直に大剣を振り下ろす。
 地面に激突しないように止める、などという事はせずに、それこそ大地も砕けよとばかりに振り下ろす。


 ズッガアアアァァァァァァァン!


「キャッ!」


「う、うおおぉ!?」

 轟音炸裂。
 耳元で爆竹でも鳴らされたかと思うその爆音は、振り下ろされた大剣によって生み出された。

 この場合、大軍を相手にするのに最も効率的な攻撃は、先程まで大河がやっていたように、大剣を右に左に振り回す攻撃である。
 リーチの長さが圧倒的だし、そうする事によって複数の敵を一度に薙ぎ払う事が出来る。
 だが、この唐竹割りの威力も全く引けを取らなかった。
 その剣筋の為、真正面の敵しか攻撃できない。
 その為攻撃力は上がるかもしれないが、効率面では低くなる。
 が、この場合は十分効率的だった。


「…じ、地面ごと消し飛ばしやがった…」


「抉れてる…」


 大剣を振り下ろした大河の正面には、放射状に30メートル近い溝が出来上がっていた。
 大河が振り下ろした一撃で、正面に居た魔物達は切り伏せられ、間合いの外に居た魔物達に至っては、大剣から放射されたエネルギー波だけで消し飛ばされてしまったのである。
 運良く残った魔物達も居るが、殆どが大怪我を負っていた。

 その始点に半ば埋まっていた大剣を持ち上げて、威嚇するように再び振るって見せる。
 これには魔物達も、死の恐怖を思い出したらしい。


「チッ、やっぱりまだ力加減が解らん…。
 これでも最小に近い威力なんだけどな……。
 やっぱり横薙ぎに振るって、敵だけを潰した方がよさそうだ。

 さて……次、来いやぁ!」


 その動揺を見逃さず、大河は叩きつけるように叫ぶ。
 魔物達は気圧されして、大河に向けて威嚇するだけで寄ってこない。

 ユカとセルは大河の間合いに入らない程度に近付いて、魔物達を警戒している。
 汁婆は橋の麓で、まだ飛んでくる魔物が居ないか警戒していた。


「ねぇ、セル君。
 この橋、壊したらダメかな?」


「この橋ッスか?
 …………ちょっとダメ…ですね。
 ここを壊すと、向こうに行けないんスよ。
 他に川の向こう岸に渡れる橋は、ずっと遠くにしかないんで…。
 そうなると、向こうの村に居る人達がこっち側に避難して来れません」


「そっか…。
 あ、ドム将軍達の到着みたいだよ!」


 やって来たドムは、たった3人+一匹で大軍を食い止めている事に一瞬呆れ返った。
 場所がいいとは言え、そう簡単に出来る事ではない。
 部下達も、3人に些か成らず敬意の視線を送っている。
 それ以上に、『本当にあの連中だけで?』という疑問の視線も多いが、これは当然だろう。
 さらに多いのが、汁婆という謎の生き物に対する驚愕の視線だが、これはもう真理の域だろう。

 ドムは素早く状況を確認し、指令を下す。


「友軍を助けよ!
 月乃影師団、前へ!」


 ドムの指令の応じ、弓を持った兵士達が前に出る。


「目標は橋の向こうだ!
 無理に狙わなくてもいい、だがあの3人と一匹にだけは当てるな!
 構え!
 撃てぇ!」


 幾つもの矢が、一斉に放たれる。
 空気を裂いて、大河を遠巻きに取り囲んでいた魔物達に襲い掛かった。


 魔物達の注意が逸れた一瞬を見逃さず、大河は素早くバックステップで後ろに下がる。
 セルとユカも合わせて下がり、弓兵のための射線を開ける。
 汁婆も駆け寄ってきた。


『全員無事か?』


「ああ、俺達は問題ない。
 汁婆も怪我は無さそうだな」


「ボケっとしてる暇はねぇぞ大河!
 ドム提督が直々に鍛え上げた、精鋭師団のお出ましだ!
 合わせて突撃をかける!」


 セルが言い終わるのと同時に、弓矢の音に混じって剣を抜き放つ音が響く。
 振り返れば、鎧に身を包んだ兵士達が、手に手に各々の武器を持っていた。

 セルもユカも得物を握りなおし、大河は再び精神を集中する。
 そして、ドムの声が高らかに響いた。


「全軍、戦闘開始!
 一匹残らず討ち取るのだ!」


「「「「「オオオオオオオオオオオ!」」」」」 


 時の声をあげる兵士達。
 だがそれに呼応したのか、闘争本能を再び刺激された魔物達が進撃を再開した。
 狭い橋に駆け寄り、我先に対岸に渡ろうとする。
 順番とか陣形とか全く考えないので、橋の上はもうぎゅうぎゅう詰めだ。
 だがそれは壁が厚いという事でもある。
 前の方に居る魔物達は簡単に討ち取れるが、奥にいる魔物に致命打を与える事は難しい。

 最初、ドムは橋を渡ってくる途中の敵を、弓兵や魔法兵に狙い撃ちをさせるつもりだった。
 空を飛んでくる魔物を弓兵に、橋を渡る魔物を魔法兵に、そして弓兵と魔法兵の警護を一般兵に。
 特に趣向を凝らしているのでもない作戦だったが、実に効率的で、確実な戦法である。
 ドムとしては、この戦いで大河・セル・ユカのスリーマンセルの力を見極める予定であった。
 襲撃の知らせを聞いた時に、近くに彼らも居ると聞いて、丁度いいと思ったものだ。
 戦力差を考えて引くもよし、たった3人で大軍を塞き止めるならそれもよし、だが功を焦り判断を誤るようでは価値はなし。

 しかし、大河達の戦闘力は彼の予想を大幅に上回っていた。

 鮨詰め状態の魔物達に向かって、大河がいきなり走り出す。
 ユカとセルは慌てずに、先程と同じ陣形を取った。
 眉を潜めたのはドムである。
 何を考えているのか知らないが、あの大軍にたった一人で、真正面から突っ込むとは無謀極まりない。
 欲を張らずに足止めに徹していた事を考えると、状況も理解できない愚か者ではないはずだが。
 だが、次の瞬間にその疑問は霧散する。

 大河の大剣が閃いた。


「奥義!
 斬艦刀・一文字斬りッ!」


 気合一閃、大河は大剣を振るいながら駆け抜ける。
 たった一歩の、渾身の踏み込みで魔物の群れを突き抜けてのける。
 ユカとドムの目にさえ朧にしか見えない剣筋は、幾つもの抵抗をものともしない。
 大河が大剣を振り切った後には、上半身と下半身が真っ二つに分けられた魔物達。
 一拍遅れて、地面に立っていた下半身が崩れ落ちた。

 軽く見積もって、この一撃だけで50体近い魔物を斬り捨ててしまった。


「……なるほど、馬車で言っていたのはホラでも誇張でもなかった訳だ。
 …いいだろう、我々も負けてはいられぬ!
 全軍、救世主の援護をせよ!」


「救世主?」
「救世主…」
「救世主だ…」
「救世主…?」
「救世主…!」
「救世主だ!」
「救世主が降臨したぞ!」


 ざわめく兵士達。
 ともすれば恐怖に値する大河の攻撃力も、味方であればそれこそ救世主にも見えるだろう。
 兵士達の動揺を押さえ込み、士気まで上げるドムの強かさに舌を巻く大河。

 大河はそのざわめきに応えるように、高く大剣を掲げてみせる。
 その大剣に注目が集まるのを待って、声高に気勢を挙げた。


「いっくぜえぇぇぇぁぁあああ!」


「「「「「
 うおオオオオおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
                   」」」」」


 再び振り下ろされる大河の大剣。
 今度は敵に囲まれるのも構わずに、橋の向こうにまで斬り込んでいく。
 ユカとセル、汁婆も前進し始めた。
 それに続いて、ドム達も軍を進める。
 士気が高まりすぎて暴走しそうになる兵も居るが、そこは統率力抜群の名将ドムである。
 勢いを殺さず、しかし無謀な突撃もさせずに兵士達の進路を指示し、戦術的優位を確保していく。

 大河が大剣を振るって進んだ後には、魔物達の陣形…あって無きが如しだったが…に巨大な穴が開く。
 兵士達はそこに切り込み、ジワジワと穴を広げて行った。
 勢い負けすれば囲まれて圧殺されかねないが、流石に精鋭部隊と呼ばれるだけあって個人の力も相当なものがある。
 それに加えて、ユカも走り回りながら劣勢に陥りかけた兵士達を助けている。
 セルは目立った動きはしてないが、ルーキーにしては強い。
 正式な訓練を受けた兵士とは違った戦い方だが、腕っ節は負けてはいないのだ。
 あとは死線を潜った数が物を言うが、それは持ち前の異常なまでの頑強さで補っていた。
 どー見ても致命傷になる攻撃を受けて、なおも平気な顔をしているセルを見て、近くで戦っていた兵士達が目を擦っていたり。

 汁婆は…相変わらず馬じゃねぇ…。
 先程にも増して激しい蹴りの嵐。

『断頭踵落!』
『天覇百裂猛襲脚!』
『尖火脚!』
『魔神飛燕連脚!』

 もうやりたい放題。
 回転しながら前後左右を蹴りまくり、周囲の魔物を片っ端から蹴散らしている。
 偶に魔物と間違えた兵士が斬りかかって来るが、戦闘不能にならない程度の蹴りで後方へ放り出していた。
 …まぁ、無理もないといえば無理もないだろう。

 そしてドム将軍。
 これがまたやたらと強い。
 得体の知れない…と言うと怒られそうだが…剣術と格闘術を駆使し、ユカにも匹敵しそうな勢いで敵を駆逐している。
 もう完全に勝ち戦の流れである。


 大河は大剣を振るいながら、誰にともなく呟く。
 誰に話しかけているのかは自分では解っているのだが、近くには聞いてくれる人は誰も居ない。
 傍から見れば、魔物達を虐殺しながら独り言を呟くアブない人にしか見えないだろう。


「なんだな、やっぱ破壊力が違うわ」


『まぁ、相性としてはこれ以上無いくらいだもんな。
 あんまり気分のいいものじゃないが』


「当たり前だ。
 いくら俺自身とはいえ、野郎と一体化するなんて…。
 なんつーか、お前が剣でよかったぜ」


『人型だったら目も当てられんな…』


 イヤな想像でもしたのか、げんなりとした表情になる大河。
 心なしか、大剣の威力もちょびっと落ちた気がしなくもない。
 まぁ、ちょっとどころか2割くらい落ちても全然問題ないのだが。


「それで?
 結局何がどうなってそんな事になってんだ?」


『俺にも詳しい事は解らん。
 …正直な話、お前が今把握している事ぐらいしか覚えてないんだ。
 しょうがないだろ、明確な意識を持ったのは昨日が初めてなんだぜ?』


「ちっ、使えねぇ……と言っても俺なんだよなぁ…。
 っつー事は、俺が聞いてたトレイターの声はお前じゃなくて、トレイターを構成する他のナニカの意思か」


 自分で自分を罵る。
 剣=自分というワケの解らん方程式に苦笑して、大河はまた大剣を振るう。
 メチャクチャな威力に見えるかもしれないが、はっきり言って手加減しまくっている。
 万が一全力を開放しようものなら、周囲一帯が味方ごと消滅しかねない。


『今俺を罵れば、いずれお前も同じ罵りを受けるのは確実だろうな。
 …あ、この台詞聞き覚えがあるわ』


「つまり…こういう事なんだろ?
 当真大河は、これから先の、そう遠くない未来において、魂が砕け散る…または欠ける。
 んでその魂の欠片が過去に送られ、トレイターの元になる」


『その通り』


 魂が傷つくのって、ヘタな拷問よりも苦しいんだよなー、と人事のように呟くトレイター改め当真大河。
 彼も経験者の筈なのだが。
 ウゲっと呻く大河。


「そ、それでそこに至るまでの経過は?」


『俺もその辺が記憶にない。
 ま、覚えてるのとどっちがマシかは解らんけどな…』


「…あ、そーか。
 お前が覚えてたら、魂が砕けた後の俺が覚えてないって事になるのか」


 魂というモノを、一つの本棚に例えるとしよう。
 この本棚は人の中にあって、今まで体験してきた事の記録を事細かに保存してある。
 記録意外にも様々なモノが保管されており、人が生きる、存在するための精神構造や燃料とでも言うべきモノが山ほど詰め込まれているのである。
 ちなみに横島や大河のよーな人種は、煩悩や萌え回路を保管する部位がやたらとでかい。
 魂が砕かれるという事は、この本棚に巨大なヒビが入るという事である。
 ヒビの大きさはまちまちだが、そのヒビによって本棚の一部が、はぎ取られてしまったとする。
 そうすると、そこに保管されていたナニかは、もう本棚の中に残っていない事になる。

 この場合とトレイター…魂の欠片が保持している情報は、いくらかの過去の記憶だけ。
 人格を形成するのに必要な要素は何一つ持ってはいない。
 つまり、魂が砕かれた後の大河は、多少記憶に混乱が見られるものの、特に問題がない状態だと推測される。
 現在のトレイターに人格があるように見えるのは、大河の魂を通して、擬似的に人格を与えているに過ぎない。


『魂ってのは放っておけば再生するから、色々な事を思い出してはいるんだが…』


「この先の事は一切覚えてない?」


『ああ。
 どーも受けた刺激に反応して、そこだけ再生しやすくなるらしいな。
 情報を渡せなくてスマン、と一応謝っておく』


「ま、いいけどな。
 これから先の展開が同じだって保障は無いし」


『むしろ聞いちまったら、魂が砕かれるのが確定するだろうな。
 因果の糸が繋がって』


「…よくぞ忘れていてくれた、ありがとう」


 情報がもたらすのは益だけではない、という好例だろうか。


「ところで、お前を喪失した当真大河はどうなったんだと思う?」


『ん〜、多分無事だ。
 俺も確認したわけじゃないが、欠けた魂を埋めるモノがあるからな。
 俺が救世主クラスに対する愛情とかを特に感じないのは、本体の方がその手の感情を全く喪失してないからだろうし…。
 ま、明確に覚醒してから救世主クラスと会ってないからよーわからんけど』


「…ああ、なるほど。
 何はともあれ、女に興味が無い当真大河なんて“破滅”みたいな代物が生まれなくてよかったぜ」


『そうでなくても、ジャククトが居るから何とかなんじゃね?』


 トレイターの声に応えて、青い光が大河の周りに集まった。
 人には見えない光だが、大河には見える。
 感受性の鋭い者なら存在を感じる事もあるだろうが、戦場でそんな事を気にできるのはニュータイプくらいだ。


「噂をすれば、だな…。
 ジャククト、お前だな?
 俺と未亜を呼んだのも、トレイターに俺の魂の欠片をくっつけたのも」


『…………』


『その通り、だってさ。
 OVERSシステムを使ったらしい』


「……つまり、全体を述べるとこうなる訳か。
 ゝ譽曠錺ぅ肇ーパス州は、部隊に居た頃に話してくれた、お前の故郷。
 旧ホワイトカーパスは滅びたが、土地と人間は残った。
 だから邪神扱いされた後も、この辺を守っていた。
 ユカと合流する前に見つけた遺跡もその名残だ。
 2燭里燭瓩知らないが、OVERSシステムを使って俺と未亜を呼び込んだ。
 い如△修了に同じくOVERSシステムを介して、未来から俺の魂の欠片が送られてくる。
 イ修虜欧侶臺劼魍砲砲靴謄肇譽ぅ拭爾鮑遒蟒个掘俺に渡した。
 Σ兇亮りでよく発生する魔法の衰退現象は、お前が俺を守っていたからだな?」


『大体そういう事…らしいぜ』


 青い光…万物の精霊となったらしきジャククトは、一際強く光って、逃げるようにフッと消えた。
 その後を見ながら、2人の大河は難しい顔をする。


『アレは…何か言いづらい事を隠しているときの態度だな』


「ああ、昔からヤバイと思ったらさっさと逃げるヤツだった。
 …俺達もだが」


『そうだな…っと、同調が解けるトコだったぜ。
 それにしても、ここまで威力が凄いとはな…』


「横っち達がアシュに抵抗するための使った手段だからな。
 ま、結局そこまで強くはならなかったらしいけど…仮にも対魔神用なんだ。
 そこらの魔物じゃ太刀打ちできんわな」


『しかも相性はこれ以上ない……。
 相手に同情するべきかね』


 異世界において、横島達がアシュタロスに対抗する手段として考え出した方法。
 つまり、霊力による完全同期連携。
 しかも同調する相手は、欠片とはいえ自分自身である。
 どれだけテンションが高くなっても、横島達のように相手の中に溶けて無くなる、などという危険は一切無い。
 何せトレイターの人格からして、大河の魂というフィルターを通して初めて意思を持っている。


『どんどん力が強くなっていく訳だよな。
 俺が本体の魂から分離した瞬間に近づけば近付くほど、魂とかの波長は相似してくる。
 一秒毎にシンクロ率が上がっていくって寸法だ』


「でもそれ、確実に魂が砕かれるって事でもあるんだよな…。
 お前の本体も、俺と同じように完全同期連携をやってたんだろ?」


『ああ、俺が覚えている限り、救世主クラスの皆と関係を持ったタイミングから戦いの細かい場面まで、全て同じだ。
 ほぼうろ覚えだけどな。
 この後も同じ方向へ進むと考えた方がよさそうだな』


 運命、などという言葉が脳裏に浮かぶ。
 大河の表情が苦々しくなった。
 気に入らない事だが、確かにそういう大きな流れは存在する。
 人がどれだけ抵抗しようと、その抵抗も結局は流れの中、という事も多々ある事だ。


『ま、所詮は憶測だけどな…。
 そもそもどういう経緯で魂が砕かれたのか解らないんだから、運命に対抗するとか言った所で』


「抵抗してるのかどうかすら解らん。
 そんな事を考えてる暇があったら敵を斬れ、と」


『そういう事。
 …あ、でもな』


「あ?」


『アレだ…トレイターが砕かれたような気がする』


 大河の動きが一瞬止まる。
 その頃には魔物達はほぼ掃討されていたので、その隙を付かれるような事は無い。
 すぐに正気に返り、また戦い始める大河。


「砕かれた…って、トレイターが?
 完全同期連携は?」


『多分使ってた…。
 だから俺がここに居るんだと思う。
 しかし…自分で言っておいてなんだが、トレイターが折れる瞬間の俺達は、正にシンクロ率100%だぞ。
 それこそ400%突破してLCLに溶けた挙句、努力と根性でS2機関を取り込みつつ自力復活しそうなくらいに力が漲ってる筈だ。
 それをへし折るなんざ、一体どんなバケモノなのやら…。
 通常攻撃ではなさそうなんだが』


「こちらの物理的攻撃力を無効化するのか…?
 あるいは何らかの概念攻撃か…」


 さもなくば、正真正銘アシュタロス並みの力を持ったバケモノか。
 どちらにせよ、あまり考えたい事ではない。


「まぁいいか…とにかく、この戦いをさっさと終わらせよう。
 同期連携を使えば、色々と出来る事が増えそうだしな」


『もう殆ど掃討してるけど』


 トレイターの言う通り、もう魔物は殆ど残っていない。
 残された少数の魔物達も、既に討ち取られる寸前だ。
 こうなってしまうと、大河の出番は無いに等しい。
 そのメチャクチャな破壊力故に、乱戦で振るったり、味方が多数居る状況では振り回せないのである。

 味方の中からセルとユカを探す。
 セルはともかく、ユカは非常に見つけやすい。
 彼女が放つ清冽な氣の力もそうだが、衣装が非常に目立つ。
 鈍い色をした甲冑の中で、ウェイトレスの格好をしていればそりゃ目立つだろう。
 しかも大河の萌えレーダーもしっかり反応している。
 ユカは兵士達の間を縫って走り、大物の魔物に対して残像を生むほどのラッシュを仕掛けていた。
 瞬く間に体を削り取られ、核まで砕かれるゴーレム。


「…凄いな。
 ユカの全身に気が漲ってるよ」


『多分切り札の一つだろうな。
 体全体の神経から筋肉まで、気功術で徹底的に活性化させて、圧倒的なパワーとスピードで捻じ伏せる。
 解りやすくて好感が持てるな』


「お前、俺の欠片とはいえ劣情とかは持ってないだろ?
 好感が持てるのか?」


『我ながら阿呆な質問だなぁ…。
 肉欲に関連しない好感だってあるだろーが。
 …ま、俺の事だから、魂全部に煩悩が染み付いてるって言われると非常に説得力があるが』


「ああ、言えてるな」


 自分で言ってても、全く恥を感じない。
 1人で納得していると、ゴーレムを倒したユカが大河に近付いてきた。


「大河君、セル君は?」


「あっちで魔術師を斬ってたよ。
 こっちの被害は?」


「軽症が10人ちょっと、暫く戦闘不能が数人。
 戦死者は0だって。
 大勝利だね」


 ちなみに戦闘不能になった数人のうち半分以上は、汁婆に斬りかかって蹴り返された人々である。

 高らかにラッパが鳴り響いた。
 戦闘終了である。


「ユカさん、大河!
 怪我は?」


「大丈夫だよ。
 セル君も大丈夫そうだね」


「同じく無事。
 ただ、気張りすぎて腹が減ったよ」


 三人でハイタッチを交わす。
 既に大河は同期連携を解いていた。
 そうでないと、気軽に触れただけでも悲惨な事になりかねない。

 未だに大剣のままだったトレイターが消える。
 ずっと握り締めていた手を解すように振ると、ユカが横からじっと見詰めていた。


「どうかした?
 俺の顔が格好いいのは解るけど、手も見惚れるほどに格好いいのか?
 ユカだったら俺も大歓迎だぞ」


「違うよ。
 格好いいのは否定しないけど…バカだけど。
 ただ、その手でどうやってあんな凄い力を制御してたのかなーって。
 筋力以上の力を搾り出すのは、ボクでも出来る…さっきもやってたし。
 でも、ボクは制御がまだ甘いんだよね。
 参考に出来るかな、と思って」


 そんな照れる事ないのに、と呟く大河の脇腹にセルの肘が入った。


「お、ま、え、は、あれだけ慕ってくれる女の子が居るのに、今度はユカさんにちょっかい出す気か!?
 ユカさんのファンに毎晩毎晩夜襲をかけられるぞ!」


「ふっ、男児たる者、一歩外に出れば7ダースの敵を持つと言う。
 今更増えたくらいで、大した違いはないだろう」


「ダース単位で持ってるヤツは、お前意外に……いや居るな、しっと団の恨みを買ってる人が山ほど。
 しかし、ユカさんのファンは12人24人じゃねーだろ」


「問題ない。
 何故ならこの場合の1ダースとは、12人ではなく12種類の事だからだ。
 従ってユカのファンが何人居ようと、増える敵の数はプラス一種類でしかないのだ」


「テメーはどれだけ恨みを買ってんだ!?」


「集めれば小さな国を一つ作れそうなくらいには」


「自慢にならん!」


 いつもの漫才を始めた二人を、ユカとドムが呆れて見ていた。
 ドムに気付いたユカが頭を下げる。


「あ、ドム将軍。
 お疲れ様でした」


「タケウチ殿こそ。
 お蔭様で、随分と楽な戦に出来ました。
 …それにしても、凄まじい力でしたな…」


「うん…」


 ドムとユカは大河を見る。
 周囲の兵士達も、先程までとのギャップに戸惑っているようだ。
 今更ながら、『あれが本当に救世主か?』という疑問の声も上がっているようだ。
 ドムはそれを見て、駐留地に戻ったら多少脚色して説明する事を決めた。


「ともあれ、何時までも此処に居る事はないな。
 全軍、撤収する。
 ラッパを鳴らせ!」


「ハッ!」


 ドムの命令に敬礼で応え、兵士はラッパを吹き鳴らす。
 …ラッパじゃねぇ、ありゃトランペットだ。
 何故?


「撤退にせよ突撃にせよ、それぞれ使う楽器が違うのだ。
 音色が違うから、どの命令が下されているのかすぐに解る」


 さいですか。

 トランペットの音に応じて、陣形を立て直す兵士達。
 撤退時でも理路整然と、が軍隊の理想である。
 流石によく訓練されており、大河達を放っておいて持ち場に付く。


「大河、セルビウム、何時までやっている。
 帰るぞ。
 お前達とタケウチ殿は、俺の隣に居るといい」


「あっ、は、はい!
 し、失礼します!」


「まーた上がってるよコイツ…」


 ギクシャクしながらも、大河との漫才を中断して慌てて駆け寄るセル。
 憧れの名将の隣を歩けるというのだから、そりゃ感激もするだろう。
 ドムはセルの心境など気にせずに、駐屯地に向けて進んでいる。

 少し遅れて、大河もドムの元に歩み寄る。
 セルが抜けたポジションに、ユカがいそいそと収まった。


「う〜ん…ドム将軍って、やっぱりスゴイ人なんだね…。
 ボクはアザリンと遊んでいる時から結構会ってるし、従兄弟のお兄ちゃんって感じがするんだけど」


「オジサンと言われなくてよかったな…。
 ま、アヴァターを見回しても、比肩するに値する者を探す方が難しいって言われてるしね。

 …ところで、さっき何か話してなかったっけ?」


「あ、そうそう。
 あのね、召喚器の力の逆流とかってないの?」


 ユカは大河よりも少し背が低いので、微妙に見上げるようにして聞いてくる。
 豊かな胸元の谷間が、服に隠れて見えないのが残念だ。
 いや、これはこれで萌えるか。


「普通は無い…が、俺にはある。
 …トレイターは、普通の召喚器とは機能と構造がちょっと違う。
 細かい事は省くけど、俺の力と同調してその威力を増しているんだ。
 だからトレイターの方に何か不都合があったり、同調にズレがあったりしたら、その分俺の体に返ってくる」


 ユカは身を乗り出した。
 大河の顔に鼻先をくっつける程に密着して、その目を覗き込んだ。
 Dの感触が、大河を捕らえて離さない。


「そう、正にそれなんだよ!
 ボクの氣功術も、威力が大きすぎて、何て言うの、こう、ヘンな具合に体に影響が出ちゃってさ。
 何とか抑える方法を探してたんだ」


「まー落ち着けって」


 感触は名残惜しいが、密着しすぎて歩きにくい。
 ここでこけると、後ろから馬とかに踏まれて重症に陥りそうだ。
 …ウマといえば、汁婆は何時の間にか消えていた。
 残されたフリップによると、『牧場に帰るぜ 何かあったら駆けつけてやるよ』との事だ。
 大河を乗せるのは、一応OKという事か。

 ユカをちょっと強引に体から離す大河。
 その時、ユカの腕をちょっと強めに掴む。
 すると。


「キャッ!?」


「え?」


 ユカは大河の手を振り解き、慌てて距離を取った。
 そして驚いた顔をしている大河を見て、慌てて言い訳する。


「ゴ、ゴメン。
 別に大河君に触られたくないとかいう事じゃなくて、今はちょっと…」


「?
 今は触られると不都合があるのか?」


「…うん。
 詮索しないでいてくれると助かる」


「解った。
 ユカが話そうと思うまで、詮索しない事にするよ」


 ふぅ、とユカは安堵の溜息をつく。
 ヘンなヤツだとは思われていないようだ。

 が、その安堵もすぐに吹き飛んだ。


「そして日常から激しく密着したスキンシップを繰り返す!」


「ふぇ!?
 何で!?」


「今は触れられると困るんだろ?
 それに触れられたくないんじゃない、って自分で言ったじゃないか。
 つまり普段はむしろ触れて欲しい!
 可愛い女の子からの誘いを断る俺じゃない!
 それはもう時間と都合の許すままに、ダラダラした退廃的で粘着質なスキンシップをジョージ…もとい常時…いやむしろ情事希望する!」


「そういう意味じゃないよっ!」


 鉄拳一閃。
 大河の脳天に突き刺さった。
 高く響く、小気味良い音。

 それを聞いた兵士達は、一様に思った。
 『ああ、頭蓋骨の中身は軽いんだ』と。


「それにしても…」


『あ?』


「ジャククトの野郎、避妊の魔法まで打ち消してないよな…」


『……(汗)』


 汗腺もないのに、器用に汗を流すトレイター。
 一抹の不安が拭いきれない。

 ジャククトは打ち消す魔法や魔力を自分で選択できたが、悪戯っぽい…と言うか、トラブルを好む傾向にある。
 面白がって避妊魔法をキャンセルするくらいはやりかねない。
 大河としては、出来たら出来たで腹を括る覚悟はあるが…いくらなんでも、まだ早い気がする。


『…ま、まぁ…大丈夫なんじゃないか?
 いくらジャククトでも、こんな戦争の真っ只中に…。
 妊娠したら、即座に…って訳じゃないけど戦力外になっちまうしな』


「…なんちゅうか、ロシアンルーレットな気分…。
 しかも引き金を引くのは、自分の意思で弾が入ってる所に止められるスキルを持ってるヤツ、みたいな…」


ルビナス・ナナシチーム  3日目・朝


「ルビナスが目を覚ました?」


「はい。
 現在、ベリオ・トロープ殿を加えた医療班が体調のチェックを行なっています。
 それと、何やらクレシーダ様にお話があると」


「そうか、後で行くと伝えておいてくれ。
 ご苦労だった」


「は」


 一礼して、執務室から文官が出て行く。
 ルビナスは昨日の戦いの後、倒れてずっと眠り続けていた。
 ナナシはすぐに目を覚ましたのだが、体が上手く動かないそうだ。
 カウンター型カイザーノヴァの余波を、ボディがモロに受けてしまったらしい。

 カエデとベリオは、王宮内の危険物の探索を続け、結局何も見つけ出せないまま朝を迎える事となった。
 2人とも完徹だったので、これから眠ろうという時にルビナスが起き出したのだ。
 これではホワイトカーパスへの出発は明日になりそうである。
 寝不足のまま戦地に向かう事もあるまい。

 クレアは大欠伸をして、また書類を相手に格闘し始める。
 完徹なのはクレアも同じ。
 しかし書類をさっさと片付けないと後が辛い。
 侵入者のお蔭で、侵入の目的調査、警備の見直し、破壊された庭の修理など、やるべき事は山ほどある。


「ええぃ、余計な仕事を増やしおって…。
 何のつもりだったのだ?
 ……どうも…私を傷つけるのを躊躇っていた節があったな」


 クレアは昨日の侵入者の顔を思い出す。
 何故目隠しをしてたのかは知らないが、目を隠されていても表情はある程度解る。

 クレアを傷つけなかった理由。
 それは一体何なのか、想像を張り巡らせる。


「…私に恩義があるとか?
 ……覚えが無いな。
 相手は“破滅”であろうし…。
 では、私を何かに利用する?
 これが一番ありそうだが……」


 何に利用するのかはともかくとして、それならクレアが死なない程度に傷つければいいのではないか?
 彼女が重症を負えば、それだけでも人類側の戦力は劇的に低下する。
 ヘタな謀略よりもよほど効率的だ。


「となると、戦力低下よりもメリットが上の効果がある…?
 ………魔導兵器!?
 いや、しかし…」


 なるほど、星の形すら変えると言われる魔導兵器を使う為にクレアを利用するといのも有りだろう。
 だが、それでも辻褄が合わない。
 それなら生きてさえいればいいのだし、更に言うならあの場で攫っていけばいい。
 あの状況ならば、クレアを気絶させ、担いで逃げるのはそれほど難しくないだろう。


「…考えても解らんか。
 よし、仕事も一段落したし、そろそろルビナスの様子を見に行くか」


 時計を見れば、すでに短針が2週ほどしている。
 もう検診も終わっているはずだ。
 …ホムンクルスのボディに対して、余計な医学的好奇心を発揮しなければ、だが。


「ルビナス、入るぞ」


「どうぞ」


 医務室にて。
 ドアを開けたクレアは、まず左右を見渡した。
 ルビナスが何事かと思って問いかける。


「どうかした?」


「いや、医療班が何かやらかしてないかと思ってな」


「大丈夫よ、簡単な検診だけにさせておいたから。
 …でも、暫くは使い物にならないんじゃない?」


 何故か片手で注射器を弄んでいるルビナス。
 クレアは反射的に何時でも逃げ出せる体勢を取った。
 それを見てルビナスは苦笑いする。


「大丈夫よ、これは空の注射器だから。
 空でも充分危険だけど、お薬が入ってないのに注射を打っても面白くないわ」


「面白い云々の問題か…。
 お主の事だから、薬じゃなくて血液に溶けるガスとか入れてるんじゃあるまいな」


「あ、そのアイデアいただき」


 しまった余計な事を、とクレアは口を抑える。
 が、もう遅い。
 ルビナスが余計な事を考え始める前に、さっさと話題を変えようとする。


「ところで、医療班は何故使い物にならないのだ?」


「ホムンクルスのボディの設計図を渡したのよ。
 皆、狂喜して踊り狂ってたわ。
 なんかドジョウ掬いだった。
 妙に上手かったわね…」


「ああ、そう言えば去年の忘年会で隠し芸として披露していたな。
 しかも本当にドジョウを掬う、と言って水槽まで用意してきた。
 実際には中に入っていたのはバカでかいピラニアで、何人か噛まれて大騒ぎになったっけか」


 しみじみと思い出す。
 後で聞いてみると、本当はピラニアではなく人間を一呑みに出来そうなフナを使う予定だったらしい。
 どっかの自然の池に生息しているフナはとにかく大きく、偶に釣りを挑んで逆に釣られるのが居るそうだ。


「さて…それよりルビナス、話とは何だ?」


「え? ああ、ちょっと待ってて。
 今ナナシちゃんに図書室に行ってもらってるから」


「?
 そう言えば、ベリオとカエデは?」


「そっちでお昼寝中。
 ま、聞かせていい話かどうかは微妙だから、丁度いいわね」


 目を移せば、奥のベッドで2人が眠っている。
 余程疲れたのだろう、見事な熟睡っぷりだ。
 …腕や首筋に注射痕が残っていた気がするが、大丈夫だ。
 多分。
 睡眠薬の致死量は意外と少ないが、問題ない。
 恐らく。


「ふむ…ところで、昨日お前が呼び出した剣の事なのだが」


「ああ、エルダーアークの事?」


「エルダーアーク…やはり召喚器か。
 …そうだな、ならば昨晩の爆発は、召喚器を呼び出してその力を奮ったのだと公表するか。
 制御は出来るのだろうな?」


「当然よ。
 召喚器はそれが出来ない人間では召喚できないわ。
 それに召喚器達はそれぞれ多少なりとも意思を持ってるし、ある程度は自分で判断して行動してくれるのよ」


「召喚器に意思?
 …いや、それよりも……随分詳しそうだな?」


「ん〜、まぁね。
 クレアちゃん、ダーリンから何か聞いてるんじゃ…あ、ナナシちゃんお帰り」


 クレアが振り向くと、本を3冊ほど抱えたナナシが扉を開けようと四苦八苦していた。
 両手で持っているので足で開けようとしているが、これがまたバランスが悪い。
 倒れる前にクレアは扉を開けてやった。


「ありがとうですの…。
 ルビナスちゃん、これでいいんですの?」


「ちょっと見せて…………うん、これでオッケー。
 ご苦労様」


 ルビナスはナナシから本を受け取り、最初の2,3ページだけ目を通す。
 特に代わり映えのある本ではなく、ただの日記帳のようにも見える。


「それは?」


「クレアちゃんに頼まれてた調査の基になる本よ。
 ………ところで、クレアちゃん。
 アイスバーグって人の事、知ってる?」


 アイスバーグ。
 クレアの内心に緊張が走る。
 その名を冠する人物を、クレアは1人しか知らない。
 正確には今は冠していないが、大河から聞かされた名前だ。

 ミュリエル・アイスバーグ。

 かつてルビナス達と共に旅をし、フローリア学園を作り上げた救世主候補。
 元はと言えば、ミュリエル・シアフィールドがミュリエル・アイスバーグである事を証明するための基盤として、ルビナスとナナシに調査を頼んだのである。
 仮に調査中に名前が出てきたのだとしたら、知っていてもおかしくないが…。


「…心当たりはある。
 本人かどうかは知らぬがな」


「……じゃあ、本の精霊って居ると思う?」


「メルヒェンだな、お主にしては…。
 …何が言いたい?」


 本の精霊。
 アイスバーグの名。
 そして妙に召喚器に詳しい素振りを見せる。
 結論は一つだ。


「…記憶が戻ったのか?」


「ええ、エルダーアークを召喚した時にね。
 正確に言うと、エルダーアークが初めて召喚された時…つまり千年前に何があったか、映像付で教えてくれたのよ。
 お蔭様で脳味噌が大分刺激されて、記憶も色々な知識も沢山蘇えってきたわよ。

 ふふふふ…千年前でさえ忘れていた知識を一度に詰め込まれてね、今正に私の脳の中には、今まで学び研究してきた錬金術の知恵と知識が全て詰まっている!
 出来るわ、今ならかつて誰も成し得なかった、素晴らしい発明が!
 “破滅”なんて私の発明に任せればチョチョイのチョイよ!」


「…戯れに聞くが、研究費は?」


「アヴァター全土の資材を半分も投入すれば出来るわよ」


「却下だボケッ!」


 ただでさえ苦しい懐事情だというのにそんな事をしたら、例え“破滅”を撃退できたとしても民衆を養っていくのは不可能だ。
 食料を求めて、“破滅”より悲惨な戦争が始まるのが目に見えている。
 ルビナスは残念そうに引き下がった。
 が、彼女はまだ諦めていない。
 彼女の科学力を持ってすれば、特許を山ほど取ったりするのは朝飯前だ。
 真の天才とは、研究に使う費用もその脳味噌一つで確保できるのである。
 …まぁ、流石に時間がかかるし、その頃になったらルビナスの頭も普段通りに戻っているだろうが。


「それはともかく、記憶が戻ったという事は…救世主の真実や、ミュリエルの正体も気付いた訳だな?」


「リコちゃんとイムちゃんの事もね。
 いやぁ、イムちゃん本当に性格変ってるわ。
 リコちゃんもだけど」


 そこまで話すと、ルビナスはピタリと動きを止めた。
 恐る恐るクレアを振り返る。


「? どうした?」


「…今更ですっごく申し訳ないんだけど…ダーリンから何処まで聞いてるの?」


 寝起きと変に上がったテンションのせいで、余計な事まで喋った気がする。
 救世主の真実を知っていたとしても、イムとリコの正体を知らない可能性もあった。
 冷や汗を流すルビナスを、冷ややかに見るクレア。


(い、いざとなったら私の手で記憶を消去して…!
 むしろ新薬の実験台に!)


「……(ゾゾゾ)
 な、なんか背筋に物凄い悪寒が走ったのだが…。
 何か不穏な事を考えていないか?」


「? いえ別に」


 トボけているのではない。
 ルビナスにとって新薬の実験や記憶消去など、不穏な内に入らないから。
 何せ学園の研究棟では日常茶飯事である。

 何か納得できなかったが、クレアは気にしない事に決めた。


「何処まで…と言われてもな。
 確かに色々と聞いているが、当の大河からして全貌を把握しきっていない。
 まぁ、紅白精霊コンビの事は聞いているから安心しろ」


「そ、よかった。
 それじゃ、救世主の事はどの辺りまで?
 こっちは別に知られても問題ないのだけれど」


「…救世主の真の役割程度だ。
 何故救世主という役割が産まれたのかとか、どうやって新世界を創造するのか、その辺りは全く…。
 お主は知っているか?」


 ルビナスはあっさりと首を左右に振った。


「知らないわ。
 その辺の事は、救世主になってから教えられる事だしね。
 ま、リコとイムニティも知らないのかもしれないけど…」


「…あの2人でもか?」


「ええ。
 だって、今まで真の救世主は誕生していないから。
 誕生すれば世界は滅んでいるんだし。
 あの2人だって、体験してないに決まってるじゃない」


「ま、それはそうか…」


 二人が難しい話をしているのを、ナナシは隣で退屈そうに聞いていた。
 ルビナスに頼まれて持ってきた日記を読みながら、手の中にある小瓶を弄んでいる。
 この小瓶、実は大河が残して行った神水の瓶である。
 本当はカエデとベリオも持って行く筈だったのだが、その疲労のために気付かなかったという体たらく。
 少し飲んだら瞬時に体力が全快するよーな代物だし、持って行けば無道と配下達との戦いも大分楽になっただろうに。
 それこそ日が暮れて昇るまで、ノンストップでガチンコバトルも余裕だったろう。


「ナナシちゃん、それ落したら大損害だからね」


「ナナシだって、ダーリンがプレゼントしてくれた物を壊したりしないですのよ!
 例えそれがアブノーマルなプレイに使う大人のオモチャでも」


「ならいいけどね…。
 ソッチ系に走るなら、私を巻き込まずにクレアちゃんを巻き込むように。
 元々真性マゾだから問題なし」


「うむ、問題ないな。
 大河の寵愛を引き寄せてくれるわ」


「私もソッチ方面の寵愛は任せるわ。
 オマケで未亜ちゃんもついてくるだろうけど、ちゃんと世話してね。

 それはともかく、クレアちゃん、ハイ」


 ポン、とクレアに本が手渡される。


「なんか未亜を強引に押し付けられた気がするが、あの女の事だから私が居ても巻き込む時は巻き込むぞ…。
 それはともかく、これは?」


「クレアちゃんに頼まれてた物よ。
 つまり、ミュリエルの事が書いてある日記」


「これが!?」


 疑いの目でルビナスと日記を見るクレア。
 その辺にあった日記と大差ないように見えるが、何故この日記がミュリエルの事が書いてある日記だと判別できるのか。
 そもそも日記の中身を知っているのか?

 その視線を読み取り、ルビナスは肩を竦めた。


「中身自体は知らなかったわよ。
 ただ、アルストロメリアとは旅の初めからの付き合いだもの。
 何時頃にどんな出来事があったか、大体わかるわ。
 あの筆不精でも、ミュリエルとロベリアに会った日の事くらい書いてるでしょう。
 それに、風光明媚で有名な場所に行った時には観光のノリで写真も撮ったもの。
 日記の並べ順と、旅の記憶を付き合わせればある程度は…」


 ちゃんと確認したわよ、と念を押す。
 クレアは試しに日記の中身を覗いてみたが、例によって謎の文字の集合体。
 アルストロメリアが筆不精だったのは、単に自分の汚い字を見るのがイヤだったのではないかと思うクレアだった。


「とにもかくにも、これでミュリエルを白状させるお膳立ては整ったな。
 問題は時期だが……今すぐ行ってもいいが、最近は冗談抜きで忙しいからなぁ…」


「ミュリエルを呼び出したら?」


「それもちと難しい。
 ミュリエルはミュリエルで、学園の予算やら生徒達を戦場に送り込まねばならぬやらで、休憩時間もロクに取れぬ状態だ。
 大河達が遠方に行ったからな。
 方々で揉め事を起こした時の対策として、根回しに走り回っておるのだ。
 学園内なら揉み消せるが、学園外だとそうも行かぬ」


「不憫な…」


 その揉め事を起こすと考えられているのは、大河に続いてルビナスとナナシなのだが。
 現に敵の襲撃を撃退するためとは言え、王宮の中庭をぶっ飛ばした。
 その辺の事は今更言っても無駄なのが解りきっているので、クレアは敢えて沈黙を保った。


「ともあれ、これでミュリエルも少しは楽になろう。
 王様の耳はロバの耳、ツンデレ魔法使いの耳はネコのミミ。
 言いたい事を言えないのはストレスが溜まるからなぁ」


「頑固ジジィどもを相手に、クレアちゃんも怒鳴りつけたいのを我慢してるんでしょ?
 私も固定観念に縛られてる自称科学者達を何度頭の中で薬殺した事か…」


 いずれ、アヴァターの科学はルビナスによって恐怖政治を敷かれるかもしれない。
 暗澹とした未来を思い、この場でルビナスを封じ込めた方がいいのではないかとクレアは思った。
 ルビナスと同じ科学教の狂信者なら、案外嬉々として受け入れるかもしれないが…それもかなりイヤである。


「時期を見て、ミュリエルの所に行って白状させてやるとするか。
 お主の記憶が戻ったと知れば、ミュリエルも喜ぶだろう。
 積もる話もあるだろうしな」


「今更と言えば今更なんだけどねぇ…」


 記憶が戻る前でも、充分仲がよかったのだし。
 それに、ミュリエルは自分の記憶が戻らない事を微妙に安堵している節があった。
 その理由には心当たりがある。


「やっぱり、腹黒くなった自分を見られたくなかったのかしら…」


「何の事を話しているのかよく解らんが、妙に説得力を感じるな」


 あの純情だったミュリエルが、と内心でとてもとても嘆くルビナス。
 実はクレア、かつてミュリエルが純情娘であったという情報を覚えてはいるのだが、真相を確かめるのが怖くて言い出せない。

 それはともかくとして、かつてロベリアを謀殺した記憶を取り戻して欲しくはなかったのだろう、とルビナスは思っている。
 思い返すと、今も胸が痛む。
 当時の自身もロベリアには負い目を感じているし、何だかんだと言っても一緒に旅をした仲間である。
 一方的に突っかかって来る事もよくあったが、ルビナスは彼女が好きだった。
 別に百合な意味ではない。
 ロベリアも反りが合わないなりに、ルビナスとの付き合い方を身につけていたし、旅は正真正銘命がけだった。
 ルビナスよりも遥かにシビアな人生観を持っていた彼女は、例え相手が大嫌いな人物だったとしても、生き残る為、目的を達成する為なら嫌悪感を抑え付けるくらいはやってのける。
 ある意味で、メサイアパーティーの中で最も不屈の精神を持った人物とも言えたのである。

 しかし、ある事件を切欠に、2人の間にはヒビが入った。
 それが段々と拡大して行き、結果として……。


「ロベリア…」


「?」


 ボソリと無意識に漏らした呟きに、ナナシが反応する。


「ロベリアちゃんがどうかしたんですの?」


「ロベリア…と言うと、昨日の賊だな?
 知り合いか?」


「ええ、かつての仲間………って、よく考えたらどうして彼女が!?」


「遅いわ!」


 本当に遅い。
 かく言うクレアも、半分くらい忘れかけていたのだが。

 ナナシはロベリアが、やたらとルビナスを嫌っていた事を思い出す。


「ルビナスちゃん、ロベリアちゃんとお友達でしたの?」


「うーん…お友達、だったんだけどね…。
 ケンカして、そのまますれ違って別れちゃったのよ…。
 どうして“破滅”なんかに…?
 あの頃は、私とは仲が悪くても同じ目的を持っていた…。
 私と敵対した時も、“破滅”を無くしたいと願っていたはずなのに」


 寂しげな、苦虫を纏めて噛み潰したような顔をするルビナス。
 それを見て、ナナシは少し考えて聞いた。


「ルビナスちゃん、ロベリアちゃんと仲良くしたいんですの?」


「え? それは…」


「どうなんですの?」


 何時になく迫力のあるナナシ。
 笑顔のままでも、彼女はとても押しが強い。
 表情を一切変えず、ニコニコ笑ったまま顔を間近まで近づけられると案外怖かった。

 ナナシの迫力に押され、反射的にルビナスは返事をしてしまう。


「な、仲良くしたいに決まってるじゃない!
 でも、仕方ないわよ…。
 今は世界の危機の真っ只中なのよ?
 余計な事を考えていたら、切っ先が鈍るわ。
 そうすると、私だけじゃなくて他の人達も危険に晒す「そんな事は纏めて後回しですの!」そ、そんな事!?」


 珍しく強い口調で、断固として言い切るナナシ。
 ルビナスにとっては堪ったものではない。
 彼女が仕方ないと言ったのは、戦いの厳しさ、そしてロベリアの実力を身に染みて知っているからだ。
 千年前の戦いでは勝とうと思えば勝てたが、それはあくまで互いに容赦が一切無い戦いでの事。
 説得、生け捕りなどと言う平和的手段を交えて勝てるかと問われると、ルビナスは確実に首を横に振る。

 ルビナスは断腸の思いで、ロベリアを切り捨てようとしている。
 だが、ナナシにとってはそんな事、の一言で済むような事なのか。


「ロベリアちゃんだって、ルビナスちゃんと仲良くしたがってるですの!
 ルビナスちゃんが違うって言っても、ロベリアちゃんが首を振っても、ナナシがそう決めたですの!
 それにナナシも、ロベリアちゃんと仲良くしたいんですのよ!
 “破滅”!?
 戦力差!?
 味方が危ない?
 みんな纏めて後でいいですのよ!
 戦争を終わらせて、それからロベリアちゃんと仲良くすればいいんですのよー!」


「…子供の理屈だが…真理は真理だな。
 ナナシも偶には良い事を言う」


 ナナシの絶叫に押されるルビナスに、冷静な声が掛けられた。
 隣を見れば、クレアが感じ入ったと言わんばかりに頷いている。

 これこそルビナスにとっては予想外だった。
 ナナシが反発するのは予想していた。
 だが、小を切り捨て大を生かすという宿命を背負っているクレアまでもが、ナナシの理屈に賛同するのか?


「クレアちゃん、本気!?」


「本気か、と問うのは私だぞルビナス!」

「!?」


 叩きつけるようなクレアの怒声。
 見れば、クレアは本当に怒っているようだった。


「確かにお主の言も一理あろう。
 戦いの途中に、仲良くしたいなどと言っていられる余裕もなかろう。
 が、今はまだ余裕がある。
 ならば何故、ロベリアとの戦いを回避する方法を考えない?
 もしかしたら見つかるかもしれん。
 見つからなければ、そのまま戦うしかないだろう。
 が、後になって“ひょっとしたら出来たのではないか”と悔やむ事になるぞ?

 何より、今のお前は戦いが始まる前から諦めているではないか!
 本当にロベリアと以前のような関係に戻りたいと、そのザマで本当に思っていると言えるのか!?
 ロベリアと直接言葉を交わしもせず、障害となるもの…“破滅”を取り除く方法を考えもせず、ただ仕方ない、と…。
 それでも救世主候補か!?
 友の一人と相対する事すら避けて、何が救世主か!」


「!!」


 ルビナスは電撃に撃たれたような心境だった。
 確かに、自分はロベリアと話してもいない。
 彼女が何故“破滅”についているのかも知らないし、現在敵対しているからと言って、将来まで同じとは限らない。
 現在敵だからと言って、それだけで諦めてしまえるような軽い関係ではなかった筈なのに。


「そう…そう、ね…。
 初心に帰ったような気分だわ。
 今後ロベリアとどうするにせよ、向き合わないわけにはいかない。
 かつて私は全ての障害物を取り除き、願いを叶えるために錬金術を学び始めたのよ。
 病気を、怪我を、“破滅”を、全て取り除いて、私の願いを叶えるために。
 今がその時よ!
 “破滅”を取り除いて、何年かけてもロベリアと仲直りしてみせるわ!」


 握り拳のルビナス。
 心の在りようの影響か、その表情と雰囲気が一変したように感じられた。
 清冽な氣。
 クレアには武術や魔法の心得はないが、鋭敏な感受性でその氣を感じ取る。
 まるで高台に吹く風のように軽やかなのに、根をどっしりと構えた巨木を連想させるような氣。
 これがミュリエル達と共に旅をしていた頃のルビナスなのか、とクレアは思う。


(なるほど…ミュリエルが惹かれるのもよく解る)


 あるいはロベリアが反発するのも。
 この心地良い氣は、しかし反りの合わない者には少々苦痛だろう。
 己の弱さを、眼前に突きつけられる思い。
 ロベリアはそれに耐えられなかったのかもしれない。

 ルビナスは妙な方向にまでテンションが上がったのか、病室だという事も忘れて誓いの言葉を高らかに述べている。


「そう、そして!
 ロベリアとも以前のような関係に戻った暁には、未亜ちゃん達にも勝利してダーリンを独り占めに!」


「ルビナスちゃん、出来ない事は高らかに言うものじゃないですの。
 勝利云々以前に、一対一じゃダーリンには全然勝てなくて体が保たないですの」


「…そ、そりゃそうだけどね」


 盛り上がっている所に水を差されたルビナスだった。
 クレアは不埒な事を絶叫するバカモノに、キッツイのをくれてやろうと思って手に取っていた花瓶を元に戻す。


「ふむ。
 ルビナスも何だかスッキリしたようだし、そろそろ次の話題に入るぞ」


「へ?」


「次の話題?」


 キョトンとしているルビナスとナナシ。
 この連中、本当に頭は正常に稼動してるのかな、とクレアは不安に思った。
 特にナナシなど、聞けば昨晩の大爆発を起こしたのは彼女の頭だったそうではないか。
 シナプスがショックで焼き切れているのか、と本気で心配になった。

 が、ナナシのシナプスの殆どが死滅した所で、ゾンビ時代の頭に戻るのと同じだ。
 さらに言うなら、記憶力の差があるだけで頭の回転は大して変っていない。
 まぁいいか、とあっさり結論付けた。


「だから、ロベリアの事だ。
 何をするにせよ、アヤツの事を知らねば対策の打ちようがあるまい。
 昔の仲間なのだろう?」


「うーん…仲間を売るみたいで、ちょっと気分が悪いけど……仕方ないか」


 少し悩んだが、話さないわけにもいかない。
 ルビナスは「ロベリアちゃんと仲良しですの〜」と騒ぐナナシを強引に押さえつけ、クレアに向き直った。


「詳しい生い立ちまでは聞いてないんだけど…。
 お察しの通り、私の仲間…かつてのメサイアパーティの一員よ」


「ほぅ…あの実力を鑑みるに、不思議ではないが…。
 ならば、彼女か?
 かつて……白の主だった、封じられた救世主候補…」


「ええ…その通りよ」


 かつてのロベリアとの殺し合いを思い出し、ルビナスは心中で苦い顔をする。
 それはクレアも解っているが、直接的には何も言わない。
 そう、直接的には。


「という事は、彼女もルビナスと同じ、年齢が4桁に突入するぉうわあぁぁ!?」


「クレアちゃーん、同じ女性なんだから年齢な話はパスね〜」


 クレアの首筋を掠めて飛んだ注射器が、医務室の壁に突き刺さる。
 しっかり使用済みの注射器を選んでいる辺りどうしたものか。
 使い回しは厳禁の注射器だが、使用後の注射器を使って何かに感染する危険性を上げようとしたのか、あるいはもう使わないからダーツ代わりにしたのか。
 どっちにしろ、クレアにとってはロクな事ではなかった。


「そ、それで話の続きは?」


「はいな。
 名前は、ロベリア。
 ロベリア・リード。
 戦闘術は剣術を主体としたネクロ「ちょっと待て」…?」


「ロベリア………リード?」


 半眼のクレア。
 ナナシとルビナスは、何に反応したのか解らない。


「リードがどうかしたんですの?」


「リードなんて名前だからって、首輪から鎖とか紐とか垂らしていたなんて事はないわよ」


「首輪や鎖は、どっちかと言うと私の先祖の方がやりそうだが…。
 お主ら、リードという苗字に心当たりがあるのではないか?」


「「?」」


 ルビナスとナナシ、揃って首を傾げる。
 顎に手を当て、首を取って「何か出て来い」とばかりにシェイクし、互いの額を押し付けあってグリグリ。

 結論。


「ないですの」


「欠片も」


「……ルビナス!
 お前の職場に居るだろーが!
 同じ苗字を持っているのが!」


「「?」」


「だからそれはもういい!」


 また額を押し付けあうルビナスとナナシの頭を、手元にあった枕でボフボフ叩く。


「だぁって、本当に知らないんだもの」


「ナナシもですの〜。
 地下のお友達にも、リードって名前のお友達は居なかったですのよ?」


「あああああああああ、この連中は…。
 大河も忘れてやがったな?
 ええぃ、私が言ってるのはダウニーの事だ!
 ミュリエルの懐刀の一人のダウニー!」


 クレアの叫び。
 しかしナナシとルビナスは、キョトンとした顔をした後に声を揃えた。


「「ダウニー先生って、ダウニー・フノコじゃなかったの?」」


「一回脳味噌を取り替えて来いッ!」


 さらに枕をボフボフボフ。
 この連中だと、脳味噌自体は取り変えれない事もないのが始末に悪い。


「で、でもダウニー先生が同じ苗字だからって、それでロベリアと関係あると断じるのは根拠が弱すぎない?」


「確かにそうだがな…。
 ただ、ちと引っ掛かる。
 召喚の塔が爆破された事は覚えているか?」


「知らないですの」


 ナナシはその時、脳味噌だけになって眠っていたからだ。
 敢えて無視するクレアとルビナス。


「あぁ、結局犯人は捕まらなかったのよね。
 …ダウニー先生が何かしたんじゃないか、って?」


「内部の者が手引きした可能性は充分にある。
 それも、かなり高い地位に居る者、学園における信頼が高い者だ。
 どちらもダウニーならば当て嵌まる」


 そう言われたが、ルビナスはちょっと困った顔をした。


「でも、信頼が高いって言ったって…その時のダウニー先生は…アフロよ?」


「…………あ、アフロでも信用は高いだろう!」


 ちょっと勢いが削がれたクレアだった。
 実際の所、彼がアフロになったとしてもその非凡な能力を軽く見る人物は居なかったので、的を得ているといえば得ているのだろう。


「とにかく調べてみるか…。
 思い当たる節は無いでもないしな」


「?」


「いや……カエデに報告を受けたのだがな」


 王宮内の危険物捜索が一段落ついた折の事だ。
 ニンジャ軍団が襲撃をかけてきた事や、住民が全く居なかった事を伝えられた。


「以前の遠征の時もそうだったが、魔物達に待ち伏せを受けたと聞いている。
 例え魔物達を統率できる能力があったとしても、奴らは基本的に短気だからな。
 身体能力が高い分、余計な事を考えずに獲物を狩りに行く性質が強い。
 ぶっちゃけた話、魔物に何日も待ち伏せをさせるなんて事は不可能に近いのだ。

 それを鑑みると、情報を漏らす内通者が居て、しかもその内通者は救世主クラスの動きを逐一把握できる立場に居る…と考えられる」


「それは…確かに。
 救世主クラスが遠征するという情報は漏れていても、何処に行くかまでは噂の領域を出なかったし…。
 そうなると、俄然ダウニー先生が怪しくなってくるわね。
 前回も今回も、ダウニー先生は私達の遠征先を知っていたもの」


 やにわに緊張が走る。
 ダウニーが“破滅”のスパイ?


「同僚を疑うのはちょっと気が引けるけど…」


「調べぬわけにはいかん。
 だが、そう簡単に尻尾を出すとも思えんな。
 しばらくは監視に留めるべきか」


「あ、それは女性にしておいた方がいいわよ」


 突然の注文に、クレアは首を捻る。
 目で問いかけるも、ルビナスはお茶なぞ飲みながら窓の外を見詰めている。


「おい、ルビナス?
 ……ナナシ?」


「…ダウニー先生は、その漢らしいアフロに惚れ込んだムキムキマッチョのバディビル集団にストーカーされて以来、影から飛んでくる男性の視線に非常に敏感になっているんですの」


「…………」


「ちなみにカツラを被ったり波平カットになった頃には、粛清とか天誅とか証して襲われかけたとか」


「……………………」



ちわっす、そろそろ気力が立ち直ってきた時守です。
さー、もう一丁勉強して幻想砕き書いて就活に精を出すか!
…あれ?
優先順位がちょっと違うようなw

幾つかの複線を解消できたと思いますが…どうでしょうか?
解かりにくかったら質問疑問オッケーです。
スルーだけはしませんから…多分。


それではレス返しです!


1.悠真様
あのUMAに何者と問うのは無粋でしょう(笑)

逆行は逆行ですが、単純な逆行では色々と不都合が出ますのでこうなりました。
ある意味、大河×2より強いかも…。

ウィッス、就職がんばります!
ちょっと世の中ナメてましたが、根性入って来たぜー!


2.風雷棒様
何度投げても刺さらないのと、刺さっても即再生するのではどちらが神に選ばれているのか…。
ズシオは神とか悪魔とか超越した存在に選ばれているよーな気がしますw

シルバーは、あだ名として『銀色』とでも表現しようかと思ったのですが、わかりにくくなりそうなので。

V.G.リバースをやってレイミ・謝華が何か企む立場なのかと思ったのですが、アドバンスをやるとどうも彼女も手駒に近いようで…。
むぅ、ややこしい…。

3.nao様
知ってる人は容赦なく知ってますからねぇ…。
アクの強いキャラクターは、自然と名前が広がります。

次のゲストは……亀でも出すか?
温泉亀か、某アーティファクトがゴロゴロしてる島で空を飛ぶ謎の亀…。


4.謎様
パッション燃やしていただけると、時守としても書き甲斐がありますね。
ユカは可愛い→エロス&萌えという風にキャラを持って行きたいですから。


5.20face様
……リリィ辺りに催眠術をかけて、代用するのではダメですか?
サリナ辺りがエライコトになると思うのですがw


6.竜神帝様
一番最初の男性救世主…と言うと、元祖トレイターの事でしょうか?
まぁ、前の世界での男性救世主がどの辺に居るかとか、その辺りは先の話という事で。


7.アレス=アンバー様
ええ、強いですね。
何が強いって、その第一印象が。
ヘタすると、見るだけでも結構な破壊力が期待できるかも…。

一人くらいは常識人が居たほうが…と思いましたが、その思い付きのせいで皺寄せが当分続くロベリアさんです。
なーむー。

トレイター=大河に関しては、原作をやった人なら一度は考えた事があるのでは?
時守は単純に図式というか人間関係が似ているので、大河=トレイター、未亜=ジャスティなのでは?と思った事があります。
なお、幻想砕きのジャスティは未亜ではないので悪しからず。


8.神楽様
通称ウマ…今考えると、上手いことを言っていたモノです…。
ポヨとか出しても、ここまで反響はなかったろうなぁ…。

9.九重様
残念ながら浮気は…って、トレイターは剣ですよ?
他の剣と浮気する…とかw

ちょっと強引な設定だったかもしれませんが、一応時守的には辻褄が合っているので…。


10.恥騎士様
はじめまして、感想ありがとうございます。
馬と来たらやっぱりアレでしょうw

原作のお婆さんは…セル?
トレイター(大剣)に括り付けましょうかw

今回で解かったように、トレイターの強力さは経験値云々じゃありません。
…強力すぎる…。


11.文駆様
他の二つはともかく、ラブラブ天驚拳は…。
大河がモーホーのナルシストになってしまうw
…シェザルとキャラが被るかな?

口からミサイルが出てくる無道…。
きっとその時には顎が外れて、しかも涙目ですねw

時守も検索してみました。
ああこりゃとんでもないわ…世界は広い…。


12&15.黄色の13様
時守も斬艦刀を思い浮かべます。
ぶっちゃけ親分にハマッてトレイターを大剣にしました。

汁婆は2足でドリフトできましたっけ?
原作では4足でしか出来なかったと言うしなかったような…。

リューンはかつて大切にされていた何か、との事でしたので、かつてホワイトカーパスで信仰されていた大河の戦友が万物の精霊となった物…という位置づけです。

アルディアは、設定上世間知らずで子供っぽい人格を意識したのですが…自然と似てしまったようですね。


13.ななし様
ドラグーンバスターですか…。
使えない事はありませんけど…どうしようかなぁ…。


14.カシス・ユウ・シンクレア様
全力と言っても、流石にフルパワーは出せません。
山一つくらいなら簡単に吹き飛びますから。

ロベリアさんは…最近はいっその事、不幸キャラで最後まで行ってもらおうかと危険な考えを持っています。
かなり悲惨な運命を辿る事になりそうなのですが…。

今のユカでは、未亜には対抗できそうにないですね。
もうちょっと腹を括ってもらわないと。

ナナシ=十六夜なら…カイはルビナス、ジェンドは……ロベリア?
ナナシが懐いているし、ジェンドと同じでナナシに癒されてるっぽいし…。


16.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます!

ロベリア落下の音がパワーアップしてるのは、離れた所から音を聞いたのと至近距離から聞いた違いです。

ユカはこれから段々と染まっていってもらおうと思います。
それでも当分はウブなまま…ケケケw
V.G.はヴァリアブル・ジオです。
しかし企画者からして、過去の資料をちょっと読んだだけなので細かい事は考えてませんw

ユカのポイントアップはまだまだこれからです。
彼女にはエロな役割も背負ってもらわねば…。

トレイターは、自分では喋る事はできません。
大河が人格…云わば喋るための機関を付けてやらねば何もできないわけですね。


17.通りすがりのツッコミン様
おお、ヘルズフラッシュでしたか!
そーだったそーだった、ゲームがあるんだから確認しておけばよかった…。

自爆…自爆…オチ付きの自爆………やはりナナシの役割か…?


18.根無し草様
ルビナスさんとロベリアさんの関係は、多分1000年前もこんな感じですw

汁婆は、私が知る限り最大クラスに規格外の馬です。
あとは…龍狼伝の千山くらいかなぁ…でもあの馬、賢くてデカくて強いけど普通の馬だし…。

盛り上がろうにも、圧倒的戦力差をどう埋めようか四苦八苦してますw


19.ナイトメア様
おお、お久しぶりです!
あー、やっぱり汁婆は強いなぁ…色々な意味でw
あの王子は……あかん、時守の手に負えん…(涙)
棒王は…いっそ召喚器にして出してやろうかなぁ…。

エルダーアーク(極大)を振り回すだけならまだカワイイです。
彼女がエルダーアークの力を全開にして、自分の怪しげな発明品と組み合わせた日には…。

大河の子供か…むぅ…課題だな…。
最終回までには結論を出さねば…。


20.K・K様
オギャノス!
もといオギャンオス!

ロベリアさんが頑丈なのは、ギャグだからだけじゃなかったと…。
…ありそうだなぁ。
ロベリアさんが知らないだけで、ルビナスが造った遠距離操作用リモコンをポチっと押すと…ロベリアさんのボディが、ボディがぁぁぁ!

ロベリアさんにも、色々と感傷はあるのです。
クレアを殺さなかったのは、ある意味では戦略的優位よりも重要な事のためなのです。
ま、その辺は結構先になりそうですが…。

ユカの初恋は…トラウマになってなければいいけどなぁ…。
アヴァターの婚姻制度にも色々あるのでは?
王家が制定したのは一夫多妻OKでも、地方によっては古来から続く一夫一妻の価値観とか風習が色濃く残っているとか。
まぁ、一夫多妻でも好きな人が他の人とおおっぴらにイチャついていれば不機嫌にもなるでしょう。

えー、トレイター=大河に関しては作中で説明したのですが…正直、理解しづらかったかなーと思っています。
理解しづらい事があったら、レスついでにでも書き込んでください。


21.神〔SIN〕様
未亜=ジャスティは、幻想砕きでは成り立ちません。
最初はそうしようかと思ったのですが、幾つかの設定上無理があるな、と思いまして。
それに…読まれそうですからねw

大河がトレイターの正体を見抜いた理由は…何度かトレイターと同調していたからです、無意識に。
その辺りがヒントになって、邪神=ジャククトの存在=OVERSシステムの介入、など連鎖的に仮説を作り上げていきました。

法則に付いては…別の世界に行っても、似たような性質を持ったエネルギーがあれば、世界に多少の負担をかけながらもそのまま存在できます。
無い時には、それこそ連結魔術の出番です。
霊力やら氣やらで起こる現象を、間接的に再現している訳ですね。
そして設定の矛盾は、さらに反則的な秘密な設定があります。
多分、幻想砕きの最後の最後くらいに解き明かされるでしょう。

大河の知り合いのパロキャラ…むぅ、急に言われても…。
ツバサの小狼とか、フルメタの連中とか、他にもちらほらと…。

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