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「幻想砕きの剣 8-13(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-04-26 23:45/2006-05-04 23:55)
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カエデ・ベリオチーム 2日目 夜


「もうすぐ王宮でござるな。
 体も大体回復したし…」


「途中で何のトラブルも無かったのは有難かったですね。
 流石に今の状態で襲われるのは…。
 しかもカエデさんはさっきまで気絶してましたし」


「あはは…面目ない…」


「…まぁ、そんなマヌケさがカエデさんらしいと言えばらしいんですどね」


「うわっ、酷いでござる!」


「文句は気絶しなくなってから言いましょうね〜」


 カエデは悔しげに歯噛みしたが、全く反論できない。
 自分が気絶したおかげで、ベリオは後始末を1人で片付ける羽目になったのだ。
 まぁ後始末と言っても、無道の死体はそのまま放置してあるし、カエデを抱えて馬車まで移動して、状況を説明しただけだが。
 その後、増援が来る事を恐れてさっさと退き上げてきたわけだ。
 その間、ずっとカエデは目をグルグル回して気絶していた。


「それはともかく…なんか騒がしいでござるよ?」


「そうですか……?
 私には普段どおりの人ごみの音しか聞こえませんけど
 あれ、何だか煙が立ち上ってません?」


 カエデが耳を済ませて何やら喧騒を聞きつける。
 ベリオには何も聞こえなかったが、カエデの五感の鋭さは知っている。
 何気なく馬車から顔を出して王宮の方を眺めた。

 そして、王宮付近から立ち上る煙を発見した。
 大分薄くなっているが、アレは何かの大爆発の形跡だ。
 すわ敵襲かと、ベリオは殺気立つ。


「か、カエデさん!?」


「ルビナス殿、王宮に来ても実験癖は抜けなかったのでござるな…」


 ベリオは慌てて振り向くが、カエデは落ち着きはらって腕組みなどしつつ頷いていた。
 その態度にベリオは納得しかけ、次いで「ナナシちゃんのドジかも」とも考えて、ブンブン頭を振った。


「そうじゃなくて、あれは!」


「冗談でござる」


 真顔のカエデ。
 目の端っこがピキーンと光を放っているよーだ。
 ユーフォニアで殴り倒したい衝動が不意に沸いてきたが、何とか押さえ込む。


「とにかく急ぐでござるよ。
 …あの煙からして、爆発は大きなのが一回だけ…。
 騒ぎ自体はもう収束しているかもしれぬでござるな。
 御者さ…!?」


 不意にカエデの顔に影が落ちる。
 何かあるのか、と顔を上げたカエデの目に…人が映った。


「お、おぅわっ!?」


 慌てて落下してくる人物を受け止めようと両手を突き出したが、体一つ分足りない。
 勿論飛行石なぞ持っていないので、落下の勢いが弱まる事もない。
 思わず目を閉じるカエデ。


ズガアァァン!


「きゃっ!?
 な、何事ですか!?」


 轟音が響き、ベリオも顔を出した。
 カエデは右手で顔を覆って、落下してきた人物を指差す。

 その先を見て、ベリオは目を丸くした。
 先ほどの音からして、かなりの高所から落下してきた筈。
 それにこの付近の建築物はやたらと背が高く、仮に天辺から落下したら人間なぞグチャッである、グチャッ
 体が半分以上潰れ血溜りが出現し、さらにちょっと前までのナナシのよーに体の部位が色んな所に転がりそうだ。

 が、その人物は暫く震えていたかと思うと、よろよろと立ち上がった。
 とにかく重症には違いあるまい、とベリオは彼女を治療しようと声をかける。


「あ、あの「ち、ちっ……きしょおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
 るびなすのばかやろーーーー!!! うわーーーーん!」


 月を仰いで絶叫した。
 ベリオは思う。
 こりゃ本格的に重症だ、と。

 カエデはルビナスの名前を聞きつけて、この人は一体誰なのかと勘ぐった。
 しかし治療も尋問もする前に、彼女は涙をちょちょぎらせて…何故か涙が目隠しを通り抜けていた…走り出す。
 その早い事早い事。
 土煙がガンガン立っている。
 それが煙幕の役割を果たして、その姿はあっという間に見えなくなってしまった。
 かとおもったら、次の瞬間には手近な建物を垂直に駆け上がっていた。
 彼女が走った壁には、足跡がクッキリと陥没して残っている。
 そのまま一番上まで駆け上がり、目隠しをした女性は高くジャンプして建物の向こうに消えて行った。


「あおいそらなんてだいっきらいだーーー!
 うええぇぇぇーーーん!」


 カエデとベリオは、唖然としてそれを見送った。
 何だったんだ?
 見かけの割には、子供っぽい人だったが…。


「…打ち所が悪かったのでしょうか……」


「いやぁ…拙者のセンサーには、アレが地だと感知されたでござるが。
 …幼児退行したのでござろうか?」


「しかし……どこかで見た女性でしたね…。
 ルビナスさんとナナシちゃんによく似ていましたし」


 首を捻るベリオ。
 彼女は先ほどの女性を一度見た事がある。
 と言っても、直接見たのではない。
 かつて大河達と地下室を探検した時に、ルビナスの墓碑を見ているのである。
 気付かなかったのは無理もあるまい。
 墓碑を見た後に、ナナシの出現によってバッタリ気絶しているし、そもそも何ヶ月も前に一目見ただけなのだから覚えておけるわけが無い。
 それに、あの女性…ロベリアは目隠しをしていたのだ。
 目付きと髪型は、人を顔で区別するのに重要なファクターである。
 半分以上は、この二つで人を見分けていると言っても過言ではない。
 目が全く見えていなかったし、何やら髪型は乱れてメチャクチャだった。


「…色々な意味で只者ではなさそうですが……先を急ぎますか」


「そうでござるな。
 あの調子では、例え彼女がテロリストだったとしてもまともな破壊工作は出来そうにないでござるよ」


 まぁ、あれだけ人目も気にせず泣いて逃げればなぁ…。
 一方、王宮からは大分薄れた煙が立ち昇っている。
 とにもかくにも、現場に駆けつけなければ。
 王宮にはルビナスとナナシも居るのだし、大抵の事は大丈夫だろう。


「…ん? ルビナス…?」


「どうしたでござるか、ベリオ殿?」


「いや…ひょっとしてさっきの人、本当にテロリストで、ルビナスさんの体の新機能の実験台にされた恐怖のあまり、幼児退行を起こしたのかな…と」


「…十二分に在りうるでござるな…」


 微妙に惜しい。
 ルビナスとナナシのおかげで、えらい目にあったのは事実である。
 とにもかくにも、ここでじっとしていても仕方ない。
 ベリオとカエデは御者に先に進むように頼んだ。


 ベリオとカエデが王宮に到着した時、もうてんやわんやの大騒ぎだった。
 騒ぎ自体はほぼ収束していたようだが、後始末と責任問題で揉めまくっている。
 ベリオはその辺の兵士を捕まえて事情を聞きだそうとする。


「ん?
 …誰だ、貴様ら?」


「失礼、任務から帰還してきた救世主候補生のベリオ・トロープと、ヒイラギ・カエデです。
 はい、証拠の召喚器」


 虚空からユーフォニアを呼び出すベリオ。
 先ほどの侵入者の仲間ではないのかと疑っていた兵士は、慌てて敬礼した。


「失礼しました。
 実は、先ほど中庭に賊が侵入し、ルビナス・フローリアス殿とナナシ殿に傷を負わせて逃走したのです」


「ルビナス殿とナナシ殿は!?」


「両者とも、重症はありま……い、いや重症なのか?
 ナナシ殿は首チョンパになってるけどピンピンしておられたし、2人とも気絶しておられるし…」


 判断に迷う兵士。
 無理も無い。
 カエデは苦笑しながら、ナナシの首は取り外し可能だと教えてやった。


「そ、そうなのですか…まぁ、ナナシ殿は気絶していますが、特に問題ないそうです。
 しかしホムンクルスの体を検査できる程の人材はそうそう居らず、現在では医療班が大まかな検査をするに留まっています。

 ルビナス殿は…打ち身や強力な魔力による傷、そして自身の持っている力をオーバーロードさせたらしく、体に大分負担がかかっているようです」


「命に別状はないのですね?」


「そちらは問題ありません。
 ただ、当分激しい運動は禁じるべきです」


 それは普通の人間ならの話だ。
 ルビナスのボディは、頑丈さのみならず回復力もやたらと高い。
 グッスリ寝ていれば、2日もあれば復活できるだろう。

 そちらに関しては、カエデもベリオも大して心配していなかった。


「2人とも気絶している…とは?」


「はっ、ナナシ殿は…どうやら爆発の中心付近に居たらしく、その衝撃で気絶したものと思われます。
 一時目を覚ましていたそうですが、再び気絶されたそうです。
 ただ、ルビナス殿は何やら剣を抱えて倒れ、激しい頭痛を訴えられた後に気絶しました。
 医療班の見解によると、精神的なショックを受けたか、脳に膨大な過負荷がかかったのではないか、との事です。
 こちらは流石に治療が出来ず、専用の安置室に運び込まれました」


「安置室って…死体じゃないんですから…」


「ナナシ殿は元死体でござるがな…。
 了解したでござる。
 お手数かけて申し訳ない」


「いえ、噂に名高い救世主候補生と話せて光栄であります。
 クレシーダ王女にご報告があるのでしたら、今は中庭にいらっしゃいますので」


 それでは、と兵士は敬礼して去っていった。
 一応状況は把握できた。
 やはり先程の女性はテロリストだったのだろう。
 追えばよかったと少し後悔したが、もう遅いし、そもそもあの身体能力を全開にして逃げられると追いかけようがない。


「…カエデさん、クレアちゃんに報告を頼みます」


「ベリオ殿は怪我人の手当てでござるな?」


「ええ。
 とは言っても、怪我らしい怪我をしたのはルビナスさんとナナシさんだけのようですけど」


 2人は頷きあうと、二手に分かれて駆け出した。
 カエデは中庭に、ベリオは医務室に。
 人ごみを掻き分け、とにかく進む。

 片付けだか調査だかの人々がぞろぞろと蠢く中、クレアは陣頭指揮を取っていた。
 まず第一に優先すべきは、テロリストが残していった置き土産が何処かにしかけられていないか。
 次に二次災害の防止。
 そして人命救助が来て、最後に片付け。
 人命救助が筆頭に来ない辺り冷たいと思うかもしれないが、これは仕方ない。
 どこかに爆弾を仕掛けられたりしていて、それが爆発した日にはどれだけの死傷者が出るか解ったものではなかった。
 救護班は必要最低限にして、とにかく危険物の捜索。


「クレア殿!」


「む?
 カエデ?
 お主、任務は……いや、それは後だな。
 ヒイラギ・カエデ、何か緊急の報告は?」


「現状で危険物の捜索以上に優先すべき報告は無いでござる。
 あ、帰ってくる途中に白髪で微妙にパーマがかかった女性を見かけたでござるが」


「それが侵入者だ。
 その女は?」


「何やらルビナス殿を罵りながら、大泣きして遥か彼方へ走り去っていったでござる。
 恐らく、既に王都には居ないかと」


「そうか、解った。
 何故一日で帰ってきたのか、向こうで何があったのか、それらは後で聞く。
 お前も危険物の捜索に加われ」


「了解したでござる!」


 カエデは敬礼して、周囲に混ざって危険物を探し始めた。
 魔力に関しては全く解らないが、元々暗殺を生業とする忍者である。
 破壊工作のノウハウもそれなりに持っているので、テロリストが何処に何をしかけるのか、ある程度は予想がつく。
 普通に目が届く所は既に捜索班が探っているだろうから、カエデは目が届かない場所…屋根の上などを重点的に調べる事にした。
 器用に壁を駆け上がり、屋根の上に登る。
 そして何かを仕掛けられた形跡はないか、隅々まで注意を払って調べ始めた。


 結局の所、仕掛けなぞ何も残されていなかった。
 カエデの常識から述べると、敵地に忍び込む時には入念な前準備…例えば建築物の構造を調べたり内通者を送り込んだり、はたまた発見されて逃げる時のために何処かに陽動のための仕掛けか、何が起きても即座に離脱できるような逃げ道を用意するのが当然だ。
 だがそれらしき物は何もない。
 王宮の構造くらいは調べていたのかもしれないが、えらく杜撰だと言わざるを得ない。

 クレアは頭を捻る。


「一体何が目的だったのだ…?
 “破滅”の民である事は間違いなさそうだが、私を殺しもしなかった。
 ルビナスかナナシが起きなければ、どういう流れで戦闘になったのかも解らぬ…」


 ルビナスとナナシは相変わらず夢の世界だ。
 脳に過負荷がかかったと判断されたルビナスはともかくナナシは蹴り飛ばせば起きるかもしれないが、また大爆発されては敵わない。
 中庭で爆発を起こしたのがナナシの頭であろう事は、爆発のあった位置や、自分だけ傷一つ付いてないナナシの頭を見れば推測がついた。
 理屈は不明だが、えらく危険な機能をつぎ込んでくれたものだ。

 突付けないものは仕方ない。
 クレアはとにかく目の前にある用件を済ませてしまう事にした。


「仕方ない…カエデ、ベリオ、報告を聞こう。
 予定では、ゼロの遺跡近辺の魔物達を牽制しながら、住民の避難を援護する手筈だったはずだが?」


「住民に関しては、私達が到着した時には誰も…。
 あちこち調べましたが、人が生活していた気配は全く感じられませんでした。
 カレンダーを見ましたが、結構前に日付の更新が止まっていました」


「…住民全員が?
 あそこは大きな街とは言えないが、それなりに人も居たのだぞ。
 それが、何の痕跡も残さずに消えていたと?」


「そうでござる。
 最悪、皆殺しにされた…という可能性も考えたのでござるが、殺戮の後さえ全く…」


「これも“破滅”か…それとも住民が全員とっくに避難していたというのか?
 いや、本格的な“破滅”の影響が出始めた時期を考えると、それは少し不自然だな…。
 そもそも何処に逃げるというのだ。
 …それで、避難させる市民が全く居なかったので戻ってきた…と」


「はい。
 なお、遺跡をウロウロしていた魔物達は一通り掃討してあります。
 そして……その、言い辛いのですが…」


 ベリオは決まり悪げに口を歪め、チラチラとカエデを見る。
 カエデもベリオが何を言いたいのか察しはついたが、どうにも自分も言い辛い。
 クレアが不審を露にして2人を見ている。

 カエデとベリオは覚悟を決めて、せーので口に出した。


「「街を全部吹き飛ばしてしまいました(でござる)」」


「……はぁ!?」


 素っ頓狂な声をあげるクレア。
 流石にそこまでやるとは考えてなかったらしい。
 そもそも一体どういう経過でそうなったのだ?
 いくら救世主候補が強力とはいえ、市街戦をしただけで街が吹き飛ぶような事はない筈だ。


「いや、それがでござるな…」


 カエデは覚悟を決めたのか、自分がやった事だし、と話し始めた。
 クレアはふむふむとカエデの話を聞いている。

 結局、忍者達を発見した所から無道を倒した所まで、一気に話す。


「…そうか…。
 ………大量破壊はともかくとして、その男…恐らく“破滅”の軍の幹部クラスだろうな。
 どの道、人が全く住んでいなかった廃墟だ。
 吹き飛ばした所で、大した問題はないさ。
 廃墟と幹部1人……収支黒字だろう」


「そう言っていただけると、なにやら安心するでござる…」


「……もうやるなよ」


 一応釘を刺して、クレアは大きく溜息をついた。


「ふぅ…。
 で、結局魔物達が何を探しているのかまでは解らなかったか…」


「そちらは専門外としか…。
 ただ、手当たり次第に捜索していた所からして、何処の辺りに埋まっているのか、具体的な情報は一切持っていないようでした」


「…まぁ、元々杞憂の可能性もあったしな。
 それでは、今後の事だが……2人はホワイトカーパスに向かってもらう。
 一日休んでからだがな」


 カエデの目が輝いた。
 大河の所に行けるのが嬉しいのだろう。
 例え其処が最前線でも。
 いや、最前線だからこそ大河の元に馳せ先じたいのだろうか。

 ベリオが前に出た。


「あの、クレアちゃん…様。
 先程ルビナスさんの様子を見てきたのですが…」


「人目が無ければ、公的な場でも為口でいい。
 で、ルビナスがどうした?」


「はい、あの剣はひょっとして…」


「…やはり、そう思うか?」


 カエデは何の話か解らず、ベリオとクレアの顔を交互に見ている。
 2人の脳裏に浮かぶ言葉は同じ。


「「召喚器…」」


「…ルビナス殿が召喚器を呼び出したのでござるか?」


「ええ、恐らくは。
 あの剣は、普通の剣とは…なんと言うか、雰囲気が違います。
 私のユーフォニアもカエデさんの黒曜も、そういう雰囲気は共通しているでしょう?」


「…確かに。
 しかし、それならどうしてルビナス殿は気を失っているのでござる?」


「これは推測ですが…ルビナスさんの記憶がフラッシュバックしたのではないでしょうか?
 これは大河君や未亜さんが言っていたのですが…召喚器は、微弱ながら意思を持っているそうです。
 私も、時折ですがユーフォニアに何かを囁かれているような感覚を得た事があります。
 大抵は戦いの最中にでしたが…」


「まるでイデの意思でござるな」


「ま、またイヤな例えを…。
 とにかく、呼び出された召喚器は、主…つまりルビナスさんが自分の事を忘れているのを察知した。
 ならば記憶を蘇えらせようと、何かしらの方法でルビナスさんに情報を流し込み、その結果脳に過負荷がかかった…。
 どうでしょう?」


 ありえない話ではない。
 何せ召喚器だ。
 そのくらい出来ても不思議ではない。
 改めて考えると、召喚器については何一つ明らかになってはいないのだ。
 自分達が得体の知れない武器に頼っているという事が、少しカエデの癇に障った。


大河・セル・ユカチーム 3日目・朝


 ユカは目を擦る。
 実は低血圧で、目覚めはあまりよくない。
 しかし体は勝手に動き、普段通りに冷たい水を浴びた後で日課の鍛錬をしようとオートで動く。
 一見すると左右にフラフラ揺れているのに、重心は全く揺らがないのは“武神”の実力ならではか。

 寝ぼけ眼のユカは、半分眠ったままいつものように歩いていく。
 しかし、途中で何かにぶつかった。
 ユカは?マークを浮かべて、障害物を何とかどかそうとする。
 両手をつけて、体重を乗せるように前へ動かそうとする。
 しかし、障害物は全く動く気配はない。
 2度3度と繰り返すが、反応は全くなし。


「んー………じゃまー…」


 フラリと酔拳を連想させるような動きで一歩下がり、両手を腰溜めに構える。
 そして慣れ親しんだ呼吸を始め、力を収束する。


「かー、めー、はー、めー「やめんかい」イダッ!?」


 何か危険な呪文を呟くユカの後頭部に、えらく硬い塊が直撃した。
 目から火花が出るよーに痛い。
 あまつさえ、ちょっと舌を噛んだ。


「な、何事!?」


「何もかにもあるか。
 人が部屋に泊めてやったというのに、朝一番から壁を吹き飛ばそうとするヤツがあるか」


「え?
 あれ、アザリン?
 ……あ、そうか…ここってボクの家じゃないんだ」


「…寝惚けて技を放とうとするクセをどうにかしろというのに…」


 アザリンは既に普段着に着替えている。
 ユカの足元には、アザリンが投げつけたと思しき杖が転がっていた。

 昨日大河・セルと合流したユカは、そのままコンディションの調整やフォーメーションの完成度を高める為に、大きく遠回りしてからこの駐留地に到着したのである。
 が、そんな時に問題が一つ。
 部屋が足りないのだ。
 軍隊とは基本的に男社会…しかも実際に戦場に立つ兵士達ばかりが駐留地に集まっている…なので、部屋もタコ部屋が多くなる。
 別に女性の兵士ならちゃんとした部屋に入れてもらえると言う訳でもないが、女性を男性だらけの部屋に放り込むわけにも行かない。
 兵士と言えども人間で、戦場で昂ぶった神経を持て余し、しかもそれが大勢になった日には、その矛先が部屋に1人きりの女性に向けられる時がある。
 よって、女性ばかりが集まった部屋と男ばかりの部屋に明確に分かれ、部屋も少し離れた場所にあるのである。
 戦況が厳しくなってくればそうも言っていられなくなるが、まだ大丈夫だ。

 女性の部屋は丁度定員ギリギリで、ユカが入れるような隙間は無かった。
 “武神”が部屋に泊まってくれるなら狭いのぐらいは我慢する、という意見もあったのだが、アザリンが久々だし、と言い出して彼女の部屋に泊まる事と相成った。


 どうやらユカは自宅の構造通りに動こうとし、アザリンの部屋の壁にぶつかっていたらしい。
 そして道を開けようと、壁に気功術を叩き込もうとしたのをアザリンが止めたのだろう。


「えーと、とにかくおはよう、アザリン。
 朝が早いんだね」


「ああ、おはよう。
 最近忙しくてな、朝もゆっくり寝ていられん。
 よく眠れたか?」


「うん。
 でも、やっぱり高級なベッドよりも普通のベッドの方が性に合うみたい」


「そなたが庶民っぽいのは今に始まった事でもないな。
 ……ところで、前に出たがっていた大会の事じゃが…」


 話を変えて、アザリンはユカを見る。
 ユカは落ちていた杖を拾って差し出し、首を傾げた。


「大会…って、V.G.の事?」


「ああ。
 ちゃんとルールとかは読んだのか?
 何やらきな臭い内容があったようだが」


「へ?」


 ナニソレ、と言わんばかりの顔をするユカ。
 アザリンは溜息をついた。
 彼女が直情的で思い立ったらすぐ行動、な性格をしているのは幼い頃から熟知している。
 が、その単純さも。
 まさかと思って聞いてみたが、正解だったらしい。


「まぁ、どっちにしろ大会は潰れちゃったんだけど…」


「それで済む話でもあるまい。
 今回はよかったが、お前は将来絶対に詐欺に騙されるタイプだ。
 結婚相手は、とにかく用心深い男にしたほうがいいぞ…」


「結婚相手…」


 ユカの目が宙を泳ぐ。
 おや、とアザリンは目を見張った。
 今までの彼女には無かった反応だ。


「ほう、誰か意中の人でもできたか?」


「な、何でわか…じゃなかった、そんな人居ないって!
 話は変るけどさ、アザリン」


「…まぁ、いいか。
 なんじゃ?」


「アザリンの所に、何だか血統書付の馬が居たよね?
 ほら、誰にも懐かないっていう…」


 暫しアザリンは考える。
 確かに彼女の所には馬ぐらい居る。
 アザリンの家系は結構歴史ある家系なので、昔から伝わっているナニナニというのは結構多い。
 馬にしても同じである。


「…どの馬だ?
 それだけでは似たような馬がかなり居るぞ」


「えーと……ほら、昔アザリンと一緒に牧場に行った時、おじさんに見せてもらったじゃない。
 確か銀色っぽい色で、大きさは…あの時は割りと普通だったと思うけど。
 それに、走るのが一番速いって聞いた」


 最後の一言を聞いたアザリンの顔が、急に苦味を帯びた。
 それを敏感に察知するユカ。


「ど、どうしたの?」


「…シルバーの事か」


「そんな名前だったっけ?
 あの時、確かその…シルバーに乗ってた人に、頭を撫でてもらったんだよね…。
 実を言うと、あれがボクの初恋だったんだ」


 懐かしむユカだが、アザリンは何やら益々苦みばしっていく。
 ユカを見る視線は、なんと言うかとても可哀相な人を見る目だ。
 精神的にアレな可哀相な人ではなくて、今後災難に会うのが決定している人を見る視線だ。


「…まぁ、個人の趣味には何も言わんが…。
 それに幼かったしな、お互いに…。

 それはともかくとして、シルバーがどうした?」


「うん、実はね…」


 ユカは大河が馬に脅えられている事を話した。
 このままでは移動に支障が出る。


「ふ、ん…?
 確かにあのウマなら怯える事はないだろうな。
 というか、むしろある意味大河が怯えそうだ…。
 いや、逆に気が合うか?

 …まぁよかろう。
 シルバーが大河を乗せるどうかは別問題だが、一応会わせてみる」


「ありがとう、アザリン」


 満面の笑みで礼を言うユカ。
 アザリンとしては、このくらいの頼みならいくら聞いても問題ない。
 どの道シルバーに乗れる兵士は居ないのだから、駄目元で引き合わせても問題はない。

 アザリンはユカに視線を向けた。
 微妙な違和感を感じ取るユカ。
 視線がさっきからおかしい。


「まぁ、会わせるのは構わんが…」


「構わんが?」


「……気をしっかり持ってな、ユカ」


「???」


 意味不明だ。
 アザリンはポンポンとユカの肩を叩いた。
 首を傾げるユカに、アザリンは一言だけ付け加える。


「あー、それとな、ユカ。
 今までシルバーは人を乗せた事はない。
 乗ろうとした人間も、乗りたくないと言い出すのが殆どじゃった。
 従って、お前の頭を撫でたのはシルバーの乗り手ではない」


「え? でも、確かにシルバーと一緒に走っていたけど」


「微妙に記憶が歪んでおるな。
 ……まぁ、とにかく自分の目で真実を確かめて来い。
 朕からはそれくらいしか言えん…」


 首を傾げ、もう少し詳しい話を聞こうとするユカを遮るようにアザリンは言葉を連ねた。


「シルバーに関しては、こちらで手配しておく。
 牧場の場所は覚えているな?
 襲撃が無い時に、大河を連れて行ってやるといい。
 その前に、大河とセルビウムの戦力を見てどう思ったか、報告するのも忘れるなよ。

 それでは、朕は仕事に行く」


「え、あの、ちょっとアザリン!?」


 そそくさとアザリンは出て行った。
 片手を引き止めるように伸ばして、呆然と立つユカ。

 が、アザリンは戻ってきて扉から顔だけ出した。


「そうそう、V.G.の事じゃがな、朕の机の上に調査結果が置いてある。
 契約内容のきな臭い所にも下線を引いてあるから、ちゃんと読んでおけよ。
 自分がかなり危険な状況にあったのがわかるじゃろ。
 それではな」


 言いたい事だけ言って、アザリンは扉を閉めて行ってしまった。
 どうしたものか、と悩んだユカだが、言われた通りにアザリンの机の上を見る。
 一纏めにされたレポートが載っていた。

 字が小さくて、見ているだけでもクラクラする。


「…アザリンはこんな報告書をいつも読んでるんだよね…。
 速読、暗記、それに分析……さらに指示。
 ボクとは頭の作りとか脳細胞を構成する物質が、根本から違うんじゃないかなぁ…」


 幼馴染の有能さに舌を巻きつつ、ユカはレポートを捲る。
 細かい所は飛ばして、アザリンが言った下線付の文章を探した。
 3枚目で発見。
 字が小さくて読みにくいなーと思いつつも、その部分に目を寄せて読む。


「…………これって…?
 ええと、つまりV.G.に出場して敗北した者は…」


「どんな制裁を受けても、抵抗してはならない…?」


「うん……」


 ユカは大河・セルと共に牧場に向かっていた。
 その途中、ユカはV.G.の調査結果を大河とセルに見せていた。
 セルはその報告書に目を通しながら、ユカを見る。


「…こういう条件自体は、闇試合とかじゃそれほど珍しくもないんスけど…」


「そうなの?」


「ええ、ギブアップが認められている分、優しいといえば優しいかもしれないッスね。
 こういうのは相手か自分が死ぬまで続けるのが多いですから…」


 ユカはショックを受けている。
 彼女は“武神”と称されるほどの強さを誇るが、大会自体はクリーンな試合をする、所謂陽の当たる大会にしか出ていない。
 仮に出ていたとしたら、勝つ事は勝つだろうが、相手を殺せない事は想像に難くない。
 試合と“破滅”を相手にするような戦いを、全く別物として捉えているのである。

 調査結果を読み進める大河。


「しかし…これって、明らかに性的な痛めつけ…または見世物を目的としてるよな」


「せ、性的?」


「ああ、そもそも出場者からして女性オンリーだろ。
 それにこんな条件がついてるんだから、絶対何かあると思うのは当たり前じゃん。
 オマケに、この主催者…レイミとやらは、なんか強姦魔とかを集めてるって書いてあるし…ん?
 集めてるの自体は、レイミじゃなんくて他の人か?
 実質上の会長…?
 ああ、誰かが実権を握ってるのか」


 何に使うのか、簡単に推測できる。
 大河は苦々しげに調査結果をユカに渡す。


「でも、どうしてそんな事を…」


「さてね。
 お偉いさんになるほど、変質的な性癖を持つ傾向は高くなるしな…。
 ま、なんだ、潰れてて助かったじゃないか。
 ユカが優勝するにしても、負かした相手がそんな事になるなんて気分が悪いだろ」


「うん……その点だけは“破滅”に感謝かも…」


「戦うウェイトレスさんを集団で、か…方向性に問題があっても、盛り上がる事は盛り上がるな」


 想像してしまったのか、ユカの顔色が悪い。


「しかし…どーしてウェイトレス限定なんだ?」


「さぁ…規約には、勝利者には立地条件のいい一等地を与える、としか書いてなかったし。
 ウェイトレスに土地なんて与えてどうするんだ、って気もするけど…ボクは賞品にはあんまり興味なかったしなぁ」


「そもそもどうしてユカはウェイトレス姿なんだ?
 V.G.はウェイトレス限定だから納得できるとしても、ユカはもっと前からその格好で空手をやってたんだろ?」


「…嬉しくない?
 こういう格好」


「とても嬉しい」


「…ま、いいけどね。
 詳しい事はボクもよく知らないんだけど、ご先祖様に因んでるんだ。
 ボクの名前もね」


「先祖?」


「うん。
 3回くらい前の“破滅”が起きた頃に生きてた人で、物凄く強かったんだって。
 その人がウェイトレスの格好で、V.G.に出場してたそうだよ。
 今回潰れたV.G.も、その大会から名前を取ったんだって」


「その人は何故ウェイトレス?」


「さぁ?
 落ち着いたんじゃない?
 ボクもこの格好していると、色々と沸き立つモノがあるし…案外前世だったりしてね」


 と、馬の嘶きが聞こえてきた。
 暗澹とした思いを振り切って、ユカは前を見る。
 牧場に到着していた。


「ここにシルバーとやらが居るのか?」


「アザリンの話だと、そういう事だけど…」


 セルは周囲をキョロキョロ見回している。
 シルバーという名前からして、いかにも白馬のおうぢさまが乗っていそうだ。


「それで、どんな馬なんスか?」


「さぁ?
 ボクもあんまり詳しい事は覚えてないし…。
 とにかく普通の馬とは全然違うから、見ればすぐに解るって言ってたよ。
 何か妙に態度が他所他所しいというか、同情的だったけど」


「? そんなに凶暴な馬なんスかね…」


 アルディアの場合は白馬に乗って颯爽と登場、なんてシチュエーションは通じないだろうなー、と思っているセルだった。


「それにしてもアレだな、白馬の王子様ってのは、ナナシちゃんが喜びそうなシチュエーションだな」


「あー、言えてる言えてる。
 カエデはそっち方面には疎そうだな。
 未亜は……嬉しいのと面白がるのが半々ってトコか」


「寮長は…あれで結構乙女だしなぁ…」


「ベリオはともかく、アイツは大笑いしそうだけど…。
 リリィは……威嚇?」


「何で?」


「ネコが……いやいや、何でもない。
 ……?
 ユカ、どうかしたのか?」


 ネコりりぃの事を誤魔化した大河は、ユカが妙に機嫌悪そうなのを発見した。
 大河にジト目で一瞥をくれて、返事もせずに牧場を見回している。


「おーい、どうしたんだ?」


「別に…。
 ただ、随分女の子の友達が多いんだなって思って。
 大河君って、意外と浮気者?」


「意外どころじゃないッスよ。
 いや、浮気者と見られてなかった事が意外ですね俺は」


「黙れや開き直ったロリが」


「げふっ!?」


 余計な事を言うなとばかりに、セルの急所にピンポイントシュートを叩き込む大河。
 ユカは大河だけでなくセルからも微妙に距離を取った。

 困ったようにユカを見ながら、大河はボソリと呟いた。


「まー何だ、浮気者と言っても一応公認だし」


「………………………今なにか、とんでもない事を聞いた気がする」


  硬直時間が軽く10秒。
 ユカは大河の呟きの意味を理解できず、筋肉一つまで硬直した。


「そもそも、ユカさんは大河の噂を聞いてないんスか?
 史上初の男性救世主候補で、女垂らしだとか鬼畜だとかシスコンだとか天然のテロリストだとかロリだとかケモノフェチだとか、あと死体マニアだとか色々な噂が流れてるんですが。
 一番信憑性があるのは、二股三股を普通にかけるアヴァターにおけるしっと団の仇敵ってトコですか」


「そ、そこまで歪曲して流れてんのか!?」


 一部間違いではない…というか間違いではないのが一部。
 それを聞いたユカは、大河を信じたいけど一抹の疑念が心に沸いている。


「わ、歪曲…してるんだよね!?」


「あー、一応してますよ。
 8割以上が本当ですけど、少なくともシリアスな方向に悪人じゃありませんし。
 というか、何で大河の噂を知らないんです?」


「………実は、ちょっと前までV.G.に出るために山篭りしてたから…」


 熊とでも戦ってたのか。
 それともモンスターと?
 滝にうたれて精神統一とか?
 …ウェイトレス姿だった場合、滝で濡れた服が肌に張り付いて…。


「…ま、まぁそれは置いておいて。
 これ以上ないほど深刻な問題ではあるけど、何とか更生させるとして」


 させられないと思う。
 セルのみならず、大河自身の胸中にも同じ感想が過ぎった。


「とにかくシルバーを探そう。
 牧場の人に聞いてくるから」


「あ、その辺の馬達を見て回っててもいいッスかね?
 一応傭兵としては、興味もあるんで」


「いいんじゃない?
 それじゃ、ちょっと待っててね」


 ユカは早足に去っていった。
 どうやらこれ以上、大河のアレな評判を聞いていたくなかったらしい。
 大河は余計な事を言ったセルを睨みつけるが、馬に興味が行っていてどこ吹く風だ。


「それじゃ大河、俺はちょっと見てくるわ」


「さっさと行って、馬に蹴られて顔にU字の痣でも作ってくるがよいわ」


「へいへい」


 大河の皮肉も何処吹く風だ。
 セルを見送って、大河は溜息をついた。

 自分の右手を見詰める。
 昨日、ユカと合流した帰り道で、たったの一撃でガーディアンの半分以上を消し飛ばした手。
 あの後何度かモンスターの群れと戦ったが、はっきり言って圧勝…いや、戦いにすらならなかった。
 まるで殺戮に走っているようで気分は良くなかったが、これは戦争なのだと言い聞かせる。


「……予想は大当たりだったが…。
 しかし、これ本当に大丈夫かよ…。
 理論的には力が暴走する事は考えにくいんだが。
 それに、この調子だと一秒毎に力が高まっていく仕組みじゃねーか。
 思いっきり剣を振るったら、周囲の味方ごと消し飛ばしかねん…。
 アイツもそこまではフォロー出来ないだろうしな…」


 少し大河は手を揺らす。
 すると、その周りに青い光が集まってきた。
 大河はその光と意思疎通をするように手を振ると、呆れたように呟く。


「……全く…いくら故郷のためだからって、そこまでせんでもよかろうに…。
 つーか、テメェは何で未亜を巻き込んだ?
 女性関係に関しては、アヴァターに来てからの方が俺的にはありがたいが…。
 未亜を戦わせるのは、どうにも気が引けるぜ…」


 愚痴るように吐き捨てた。
 その時、大河の後ろで蹄の音がする。
 力強い足音だ。
 が、何処か違和感を感じる。


「? なんだ?」


 くるっと振り向く大河。
 その目の端を、茶色の馬が走り抜けていった。
 振り向いた時には既に木々に紛れていたのでよく見えなかったが、馬に白っぽい何かが乗っていた。


「…。
 今の生き物は?」


 少なくとも人間ではない。
 追うべきか、と考えていると、ユカが戻ってきた。
 何があったのか、戸惑いが表情に出ている。


「ユカ、どうかしたのか?」


「うん…。
 話はすぐに通じたんだけど…なんだかおかしいんだよ。
 あのね、前にもその馬を見た事があるんだけど」


「ほう」


「その時に、シルバーに乗ってた騎手の人に頭を撫でてもらったんだ。
 確かその人、物凄く強くて…そう、蹴り技の達人だったと思う。
 実を言うと、その人に憧れて空手を始めたんだよね」


「それは俗に言う初恋ってヤツか」


「うん、そうだね…。
 あんまりよく覚えてないけど、強い人に憧れてたし……。
 あ!
 い、今はもう何とも思ってないよ!
 もう顔も思い出せないし!」


 慌てるユカ。
 大河は彼女の態度に、『本気で俺に気があるのか?』と思いつつも、話の続きを促した。


「それで…久しぶりに来たんだから、その人にも顔を見せようと思ったんだ。
 でも聞いてみたら、そんな人は居ないって…。
 そもそも、よく考えたらシルバーは誰も人を乗せようとしないんだよね。
 当然、ボクの頭を撫でてくれた人も騎手じゃない…」


「単に記憶が混同してるだけじゃないのか?」


「かもしれないけど…蹴り技の達人っていう所だけ聞いても、全然反応はナシ。
 そんな達人が居たら、さっさと兵科に回してるってさ」


 道理といえば道理か。


「…とにかく、シルバーを探すのが先決だな。
 疑問はゆっくり後から考えよう」


「そうだね。
 ところで、セル君は「ふおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉっぉおっぉおっぉおぉお!!」…な、何!?
 今のジャッキーチェンの首を絞めたような悲鳴は何!?」


「セルの声だ!」


 すわ敵襲かと殺気立つ二人。
 それぞれ戦闘体勢を整えながら、声のした方に走った。
 その途中で何度か人とすれ違ったが、どういうワケか誰も慌てていなかった。


「どうしたんだ?
 敵襲じゃないのか?」


「日常茶飯事…の事、なのかな?」


 少し走ると、セルが平原に座り込んでいるのが見えた。
 まだ奇妙な悲鳴をあげている。


「おい、おいセル!
 どうした!?」


「セル君、しっかりして!」


 大河がガクガク揺らすが、セルは全く反応しない。
 変ってユカが調子を見る。

 脈拍や瞳孔を調べて、特に異常はない、と大河に合図した。
 ふぅ、と一安心して、また気を引き締める大河。
 セルがこんな風になった原因は、まだ近くに居るかもしれないのだ。


 セルに気付けをしようとするユカの隣で、大河は周囲を警戒する。
 その耳に、ふと馬の蹄の音が響いてきた。


(これ、さっきの馬だな。
 ……?
 さっきは気付かなかったが…気配が二つ?
 しかもピッタリくっついてる…。
 多分両方馬だが…それにしては…)


 蹄の音は一頭分。
 まさかコイツか、と大河は振り返った。

 その目に、一頭の馬が駆けているのが映る。
 大河は目を疑った。


 その時に大河が見たもの…それは一生忘れられない偶然の出会い。
 初めてのシルバーとの出会い。

 その時シルバーは風のように颯爽と……。


 馬を駆って現れた!


「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!」


「大河君まで!?」


 魂の底から絶叫する大河。
 セルの背中に一発キッツイのをお見舞いしたユカは、振り返って大河が叫んでいるのを見る。


「ど、どうしたんだよ大河君まで!」


「ウ、馬が!
 馬が、馬がああぁぁぁぁ!」


「馬がどうしたって言うのさ!?」


 未亜だったらここら辺で、「お兄ちゃんのは馬並みなんだから、恐れる相手でもないでしょう!?」くらいは言ってのける。
 しかしまだ染まってないユカには無理だろう。

 ユカの活によって意識が戻ったセルも、ガタガタ震えながら自分が見た物をユカに伝えようとする。


「う、馬が…馬のう、上に…!」


「馬が、馬の上に……何?」


「い、いやだからユカ、今さっきソコで白い馬がだな、こう馬の上に乗って乗馬をしてた!」


「…ええと、言葉の順番がムチャクチャになってるのかな?」


 漫画とかでよくあるように、形容詞と主語と述語の順番がバラバラになっているのだと思い、並べ替えてみるユカ。
 しかしドコをどう並び替えても、正しい順序にならない。
 それはそうだろう、2人の言葉はしっかりと事実を伝えている。


「いやだからな、馬って四肢が蹄だから手綱が握れないだろ!?
 だから両前足で、馬の首を、こうぎゅーっと掴まってだな!」


「…精神攻撃とか受けて、頭に何か沸いちゃったの…?」


「俺達は至ってマジメでマトモでロリです!
 信じてくださいよユカさん!」


「何気に洒落にならない発言があったような気がするけど…。
 落ち着いて考えてよ。
 普通、馬が馬に乗る?」


「そ、そりゃ俺だって…幻…覚?」


 ガタガタ震えながら、大河とセルは自分の見た物を思い返す。
 幻覚とは思えないほどにハッキリと見えていた。


「で、でもあれって…」


「あぁ…首筋のプレートに、名前が書いてあったな…。
 あの読み方って…」


「?」


 プレートにはこう書いてあったのだ。


「「汁婆…」」


「シルバー?
 近くに居るの?」


 キョロキョロ周囲を見回すユカ。
 しかし、居るのは茶色の馬ばかり。
 話に聞いた白い馬は何処にも居ない。


「…居ないよ?」


「「 FUOOOOOoooooooo!!!!! 」」


 どっかの芸人みたいな声で、絶叫しながらユカの背後を指差す2人。
 何気なくクルリ、と首を巡らせたユカの目に……馬に飛び乗る、豪快なデザインの馬に見えない事もない生き物が写った。

 一拍おいて。


 絶叫×3
「「「
       ふ
        お
       お
      お
    おお
      OO
        OO
     OOO
   ooo
    おオオ

      おオオオ
        オオぉお
         おオオお
        おOおお
      おォォ大お
    緒お尾おお

   おOおぉお
     おオおおオぉ
       おO尾おおお

    大おおおお緒お

  おお大お欧おお
   おおお墺おOH
   !!!!!!!
」」」


 ちょっと離れた所で…。


「おー、今日の見学者はよく叫ぶなぁ」


「救世主候補生と“武神”ユカ・タケウチが来てるらしいぜ。
 まぁ、いくらその2人でも汁婆を見たらなぁ」


「あれ?
 でもユカ・タケウチって、前に汁婆を見た事があるんじゃ?」


「何せ子供の頃だったらしいしな…記憶が薄れてたんじゃないのか?
 さ、俺達は俺達でお仕事お仕事…。
 さて、誰かあの汁婆に乗れるヤツは居るのかね?」


『何だよ
  うるせーなぁ』


「う、馬が…馬が…」


「乗馬だけじゃなくて、文字まで…」


「ひょ、ひょっとしてキミがシルバー…?」


 失礼な三人組をジロリと見据える汁婆。
 なんちゅぅか、馬には見えない。
 輪郭自体はデフォルメした馬に見えなくもないが、メッチャ出っ歯で鼻の穴が拳一つ分以上、さらに間接はゴム製かと言いたくなる程に丸く曲がった四肢。

 しかも二本足で直立し、フリップ(紙の板みたいな物)を使って筆談する。
 いつ書いているのかは永遠の謎だ。


『シルバーじゃねぇよ、汁婆だ
    間違えんな』


「か、カタカナでシルバーではダメなんか…?」


『汁婆っつぅのは、俺の先祖が世話になった人でな。
 旧ホワイトカーパスの重鎮で、汁を吹きかけてくる婆さんって意味だ』


「「「妖怪か!?」」」


『その通り』


 その通りなのか!?
 と言うか何でそんな名前をつける?

 混乱する三人だが、もっとも早く大河が立ち直った。
 ネットワークでバイトしていた頃は、動物が喋るなぞ日常茶飯事だった。
 ここまで豪快なデザインの生き物はそうそう居なかったが…。


「オーケイオーケイ…まだ人類全ての希望が断たれたわけじゃない。
 広い世界だ、人語を解する生き物ぐらいいくらでも居るでしょう…。

 あ、あー…始めまして救世主候補生の当真大河だ」


『おう、こんな所に何しに来たんだぃ?』


 動揺を抑えて、大河は汁婆と交渉に入る。
 正直言って乗りこなす自信なぞ無い…というか乗っても平静でいられる自信がないが、意思疎通が楽なのは好都合である。
 一応交渉するだけしてみよう。


「実は、俺ってどうも馬に嫌われるタチらしくてな。
 それで度胸の据わってる馬を探しに来たんだが」


『俺に乗せろてのか?』


「有体に言えばそうなる。
 …が、その前にちょっと聞きたい」


『アン?』


 大河は、まだ意識を遠くにやっているユカを指差した。
 「汁婆って、汁婆って…」と延々と繰り返している。
 どうやら思い出の重要な部分に、甚大な亀裂が入ったらしい。


「ちょいと下世話と言えば下世話な話なんだけど…汁婆、今までに人を乗せた事は?」


『…一応あるゼ
 ガキだったアザリンや、ユカを乗せてちょいと走ってやった』


「…成人男性は?」


『一度もないな』


 大河は暫く考え込んだ。
 黙考を経て、ユカから聞いた思い出話と、汁婆の話を噛み合わせる。


「…話は変るけど、乗馬…好きなのか?」


『ああ、楽しいゼ
 馬が馬に乗ってもヘンじゃねぇだろ』


「ヘンはヘンだが…まぁ、世の中にはもっとヘンな事が沢山あるしな。
 ひょっとして、ユカを乗せてやった事はないか?
 さっきの質問と同じじゃなくて、他の馬に乗って、そこにユカを乗せて、そんで手綱を取ったとか」


『……ああ、その後頭を撫でてやったっけな』


 汁婆は懐かしそうにユカを見た。
 それを聞いたユカの表情が、さらに深刻な様相を帯びてきた。


「そ、それってつまり…」


「い、言うなああぁぁぁぁぁ!!
 言わないでえええええ!!!!」


 結論を言いそうになったセルに、いきなり復活して拳打を叩き込むユカ。
 錯乱しかけているのか、かなり手加減無しだ。
 ボディに幕之内張りのブローを貰ったセルは、気絶も出来ずにくず折れて悶絶した。

 大河も気の毒そうに見詰めている。
 汁婆は気を悪くした様子もなく、新たなフリップを取り出した。


『種族差別はよくねぇぜ』


「そ、そりゃそうだけどさぁ!
 は、初恋だったんだよ!?
 あの時頭を撫でてくれたヒトが蹴り技の達人だったから、ボクも格闘技を習い始めたんだけど!」


『まぁ、ウマなんだから後脚が強いのは当然だな』


「思い出が…思い出が、崩れていく……」


 ユカはガックリと膝をつき、倒れかけた。
 が、それを大河が素早く支える。

 半泣きの目で大河を見上げて、あぅあぅ言っているユカ。


「しっかりしろ、ユカ…気持ちは解らんでもないが、馬でも汁婆はいいヤツだ。
 お前の目に狂いはない。
 むしろ容姿や種族に囚われずに相手を見ていた事を誇りに思うんだ」


「ホントにそう思う?
 馬と結婚したいとか考えていたヘンなヤツとか思わない?」


『思わないだろ、コイツは
 無闇に度量がデカいタイプだからな』


「そうそう、汁婆の言うとおりだって。
 過去に誰に惚れていようと、丸ごと受け入れるのが漢の甲斐性ってもんだろ」


「あううぅぅぅ〜」


 幼児退行でも起こしているのか、ユカは大河の腕に縋りついて離さない。
 が、ここで要らん事を一言。


「それに自分で言うのもナンだが、全開にしたら俺は馬並みだからな。
 汁婆と比べても、見劣りしない自信はあるぜ」


『ほう、言うじゃねぇか
 気に入ったゼ
 だが、そうまで言われちゃオスとして退けネェな』


「???」


 ユカは大河が何を言っているのか理解できず、汁婆と大河の間で急に発生した微妙な緊張感を感じ取る。


「それじゃ、一丁勝負と行くか?」


『俺としてもそうしてェが、普通の状態だと確実に俺が勝つ
 それとも、小さい状態でも俺に勝てるってのか?』


「流石にそれは無理だな、体格差もでかいし。
 むぅ、何か丁度いいのでもあれば…精神力だけでも、そこそこ反応させられるんだが」


「そりゃ、単なる…妄想って言わ、ないか…?」


 ユカのボディブローから何とか立ち直ってきたセルは、必死で大河にツッコミを入れる。
 額に縦線が走っていた。


「まぁ、セルの言う通りだけどな…」


『俺は対象には困らねェ
 一応ウマだからな、ここには魅力的なメスも多い
 だがお前ェは馬には反応しないだろ』


「これも種族の違いから来る価値観の差か…」


 違う気がする。


『こういう戦いは、お互いが全力を出せる対等の条件でなけりゃならネェ
 残念だが勝負はお預けだな』


「そうだな。
 …っと、忘れる所だったが…本題だ」


『悪いが、俺は誰も乗せネェぜ
 例え気に入ったヤツが相手でも、気が向かない時には乗らせネェ』


 断固とした決意が感じられた。
 汁婆にとって、ある種の誇りなのかもしれない。

 だが、大河もそうそう簡単に引き下がってやる気はない。


「気が向いた時ってのは、例えばどんな時だ?」


『俺が走る理由が出来た時だ
 戦う理由が出来た時だ
 その時になったら、お前ェらを乗せて走るのも有りだろうよ』


「ほぉ…」


 大河は少し考え込んだ。
 この手の人物との交渉の仕方は、大河もそれなりに心得ている。
 汁婆がこういうからには、言葉だけでゴリ押ししても逆効果になるだけだ。
 ならば…?


「じゃあ「敵襲ー! 敵襲ーーッ!」…!
 チッ、セル、ユカ!」


「う、うん!」


「あーくそ、まだ腹がギシギシ言ってるぜ…。
 これが“武神”の一撃か…いい体験したなぁ…。

 よっしゃ、急ぐぞ!」


 セルもユカもアレな雰囲気を強引に吹き飛ばして、迎撃に向かうべく走り出した。
 大河も走り出したが、一旦ブレーキをかけて立ち止まる。


「汁婆!
 後で話の続きに来るからな!
 それまで、ここの連中を頼む!
 馬も人もそれ以外も、関係なくな!」


『言われるまでもねェよ
 さっさと暴れて来い』


 汁婆の返答を見て、大河は振り返って走っていく。
 その後ろ姿を、汁婆は暫く見詰めていた。


「…いいのか?
 気に入ってたんだろ、あの連中」


 大河達を見送る汁婆に、後ろから声がかけられた。
 あやうく蹴り飛ばす所だったが、何とか自制する汁婆。
 話しかけたのは、汁婆を含む馬達の世話役だった。


『イイんだよ
 あの連中はそう簡単にゃ死にはしねぇ
 それに…俺はここを守らなきゃな』


「守るも何も、今まで誰もここまで辿り着いてないぞ。
 …勢いとはいえ、一度ここの守りを引き受けた以上、出て行き辛いのはよく解るけどな」


『解ってるなら言うんじゃねーって…

 ………………………………………』


「沈黙まで律儀に書かんでも」


 汁婆は暫く何かを考えている。
 表情が全く変らないので解りにくい事夥しいが、付き合いの長い世話役には解っていた。


『……とは言え…ユカの嬢ちゃんを黙って見送る訳にもいかねェか
 あそこの親父さんには、色々とよくしてもらったしな』


「面倒くさそうなフリしたって、今にも走りだしそうなのはすぐ解るぞ」


『うるせェ、格好とかお約束ってモノがあんだよ
 ………それじゃ、悪いが行ってくるぜ
 大河からここを任されたのはさっきだが、ユカの嬢ちゃんをよろしくと頼まれたのは5年以上前だ
 先約を優先させてもらうぜ』


 自分に言い訳をして、汁婆は走り出す。
 四本の脚で地面を蹴って、大河達を追う。
 その後ろを、世話役の男が苦笑いして見詰めていた。


「どうする?
 このまま突撃するか?」


「流石にそれは無謀だっての。
 とにかく味方の軍勢と合流しなけりゃ話にならん」


「じゃあ、駐留地に向かうんだね?」


 勢いに任せてかなり無茶な事を言い出す大河を、セルは呆れたように諫める。
 当然といえば当然の判断だ。
 大河的にはそれほど無謀とは言えないのだが、セルも居るし、1人が強ければ勝てるというモノでもない。


「こういう時に馬が居ないのが痛いよなぁ…」


「ボク達だけなら、その辺の馬を使えばいいんだけど」


「スマンこってす…」


 かなりのスピードで走る3人。
 流石に基礎体力の違いでセルは少々息を荒げているが、しっかり付いていっている。


「ユカさん、敵襲があったのはどの辺か解りますか?」


「うん…何となくだけど、あっちの方。
 森の向こうから、すごい…なんて言うのかな、集団の迫力?
 軍気が立ち上ってるんだ。
 こんなの見るの、初めてだよ…」


 ユカの声は少し震えていた。
 一対一の戦いなら何度もやっているが、乱戦の経験は殆ど無いのだ。


「こっちに向かってくる…。
 どうやら、今回の襲撃の狙いはこの牧場、ここの先にある街や施設らしいよ。
 …狙ってやったならの話だけど」


「敵側にマトモな知恵のある指揮官が付いているかどうか、って事ですね…」


「うん。
 人間じゃなくても、結構頭のいいモンスターも居るからね。
 人間ほど集団戦闘のやり方を承知しているとは思えないけど」


 大河とセルは顔を見合わせる。
 ユカは“破滅”の民の存在を知らない。
 命惜しさに寝返る人間の存在くらいは予想しているだろうが、組織立った敵の存在は予想していないだろう。


「…いずれにせよ、ここで退く訳にはいかなくなりましたね。
 汁婆…は放っておいても死にそうにないですけど、馬達は重要な戦力。
 ここに居るのは訓練を終えてない馬達なんでしょうが、殺されてしまえば…」


「騎乗兵達の力は大幅に落ちる。
 何とかここで足止めしなければならない…。
 ユカ、他の所から軍気は感じられないか?」


「…多分、今回の襲撃はここだけだよ。
 これだけ大きくて騒々しい氣だったら、地平線の辺りに居たって感知だけは出来るから。
 つまり…ボク達が暫く足止めしていれば、援軍も来るって事だね」


「あぁ、無謀だってのに…やるしかないか…」


 アタマイテー、とセルはボヤイて立ち止まる。
 それに合わせて、大河とユカも立ち止まった。


「闇雲に突撃しても犬死するだけ…。
 迎撃に有効な場所を探さなくちゃな」


「迎撃に有効な場所…というと…?
 相手は大軍で、こっちは少数…。
 つまり相手が一斉にかかってこられない、狭くて細い道がいい。
 それからゲリラ戦にも適している事。
 となると………あの丘だね」


「あの丘?
 あそこに何かあるのか?」


「あの丘は中程に、物凄く流れの激しい川が流れてるんだ。
 橋がかけてあるけど、あんまり大きな橋じゃない。
 平原だからゲリラ戦に向かないかもしれないけど…どうかな?」


 戦術役のセルに話を振る。
 セルは頭の中で周辺の地図を大雑把に作成し、他に適した場所は無いか計算した。


「…他に丁度いい場所も無いみたいだし、ここはその案で行きます。
 ただし、ヤバイと思ったらすぐに逃げる事!
 幾らなんでも、多勢に無勢…。
 “勝とう”なんて欲は出さずに、とにかく相手の勢いを削ぐ事が目的です。
 時間を稼いだら、これまたさっさとシッポを巻いて逃げる。
 OK?」


 2人は黙って頷いた。
 流石にこの3人で、大軍を押し返せるとは思っていない。
 が、実を言うと大河だけは違った。


(…ここらで思いっきりやってみる。
 幸い今は味方はセルとユカのみ、派手にやっても味方を巻き込む心配は無い!)


「じゃあ行くぞ!
 って、ん?」


『ちょいと遠いが、もっといい場所があるぜ』


 ポン、と大河の肩が叩かれる。
 振り返った大河の目に、異形のナマモノが写った。


「うぉわ!?」


『そう驚くなよ
 手伝いに来てやったのに』


「し、汁婆?」


 そう、二本足で立つ汁婆だった。
 驚く三人に向けて、フン、と笑ってみせる。


『いくら俺でも、一匹で牧場全てを守れねぇからな
 だったらお前らに手を貸して、牧場に一匹も敵を通さないのがいいだろ』


「そりゃそうだけどな…あーびっくりした…。
 で、そのもっといい場所ってのは?」


『あの丘の向こう側に回り込まなきゃならんが、同じ丘でも橋の形と川の広さが違う
 数で圧倒的に押されてるんだから、地の利くらいは確保したい所だな』


「遠い…って、どれくらいだ?」


『ヒトの足なら3時間以上、普通の馬なら条件付で30分。
 俺が本気で走れば、3人背負ってても5分で行けるぜ』


「どんだけ脚が速いんだ…。
 でも汁婆、戦えるのか?」


 セルの疑問に、汁婆は行動で答えて見せた。
 セルに向けて何気なく一歩を踏み込んだかと思うと、その右足が一瞬掻き消える。


ゴッ!

「え?」


 セルの顔面を突風が撫でる。
 気がついた時には、目の前に汁婆の蹄が突きつけられていた。


『知らなかったのか?
 俺のケリは一筋縄じゃイカネェぞ』


「そういえば、昔も野生の虎か何かを蹴り飛ばしてたような…」


 テコンドーでもやってんのか?
 威力の方は、その風きり音とセルの背筋を走りぬけた悪寒で保障できる。

 冷や汗を流すセルに突きつけていた脚を下ろして、汁婆は四つん這いになった。


『ホラ乗れ
 あの丘までだな?』


「う、うん…。
 でも、3人も一緒に乗って大丈夫?」


『心配するな、俺の走りは何も変わらネェ』


「手綱とか無いけど、大丈夫か…?」


『俺に手綱は付けられないんだよ』


 少々不安ながらも、大河達は汁婆の背に跨る。
 騎乗に最も不慣れな大河が一番安定する真ん中に、セルは後ろ、ユカは大河の前。
 かなり密着している。
 大河にくっついても嬉しくないセルは顔を引き攣らせていた。
 セルに密着しつつ、ユカをぎゅっとしている大河は生理的嫌悪と思春期的反応が同時に出て、ややこしい表情をしている。
 そして大河にぎゅっとされているユカは、顔を赤くしつつも汁婆にしっかり掴まっていた。


『じゃあ、行くぜ!』


 フリップをドコからともなく取り出し、何処へともなく仕舞い、汁婆は四本の脚を動かした。
 馬の走り方には、幾つか種類がある。
 遅い順から、ウォーク、アンブル、トロット、ペース、ラク、キャンター、ギャロップとなっている。
 で、汁婆の走り方は。


「キャンターから行き成りギャロップ!?」


『縮地は俺の18番だぜ!』


 一歩目からトップスピード並みだった。
 急な加速に体を持っていかれそうになりながら、ユカ達は体を低くする。
 風の抵抗を極力受けないためだ。

 しかし、それでも5分では間に合いそうにない。
 どうする気かと訝しむ大河。
 しかし疑問を言葉にする前に、ユカがボソリと呟いた。


「思い出した…」


「ん?」


「前に汁婆と会った時の事。
 すごい勢いで走ってたんだけど、あれじゃ手綱なんか付けられないよね…」


「何でだ?」


『今からそれを見せてやる!
 もっとしっかり掴まってろよ!』


 器用にフリップを大河に向けると、汁婆はさらに加速した。
 慌ててしがみ付く手に力を篭める大河達。


「で!? 一体何があるんだよ!?」


「…汁婆はね、明らかに他の馬とは違うんだ。
 容姿もそうだけど、知能もそう。
 そして何より違うのは…。

 汁婆は……


 二本足で走った方が速い!」


 ユカの言葉と供に、急激に体を起こす汁婆!
 何とか振り落とされるのは免れたが、急激な姿勢の変化に付いていけない。
 ひっくり返って足だけでしがみ付いているセルの視界は、上下反対になって地面を移していた。
 そこには汁婆の足が地面を蹴る場面と、あまりのスピードで地面に火が付く瞬間。
 後方に目をやれば、汁婆が走った軌跡には火の道が描かれている。
 火事にならなければいいのだが。


「「「う、馬じゃねェぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」」」


 ユカも含めて、3人で絶叫。
 しかし汁婆は構わずにどんどん突っ走る。


 ガクンガクンと、凄い勢いで揺れる。
 これは普通に怖い。
 その中で、大河だけは別の感情を必死で押さえ込んでいた。


(揺れる度にユカの乳が、乳がぁ!)


 ユカを抱きしめるような格好になっているため、彼女の柔らかい体の感触と、揺れるDがダイレクトに伝わっている。
 ユカは汁婆に掴まるのに必死で気付いていないようだ。
 思わず力を入れてしまう大河。
 ユカは少し苦しかったようだが、何も言わない。
 大河も怖いのだと判断したらしい。

 ウェイトレス(ユカ談戦闘用)の服越しに感じる柔らかさは、大河の理性に亀裂を入れるのに充分だった。
 が、なんとか堪えている。
 流石に今から戦闘に行くのに、ソッチ方面に手を伸ばして怪我をしたら話にならない。
 しかし、両手がジリジリと上…つまりユカの胸に向かうのは抑えられなかった。


(あ、あとちょっと……!?)


 ユカの胸に手が届く寸前に、再び強いベクトルが襲ってきた。
 汁婆が急停止したのである。


「うおおおぉぉぉ!?」


 セルがベクトルを受け止めきれずに飛んでいった。
 一番安定しない後ろに座っていた事もあり、反応できなかったのだろう。
 そのまま砲丸のよーに飛んで行き、セルは地面に激突した。
 まぁ、このくらいでは大した傷にもなるまい。


「はぁ…はぁ…あー、怖かった…。
 それにしても、汁婆本当に早いね」


『まだまだ本気じゃないぜ…
 大河、何をやってんだ?』


 ユカと大河は汁婆から降りて、三半規管を正常に戻そうと頭を振っている。
 それと同時に、大河は腕を顔に擦り付けていた。


「顔に何かゴミでもついたの?」


「いや、ゴミどころか至宝中の至宝だ…。
 ありがとう、汁婆!
 ありがとう、そしてすまなかったユカ!」


「???」


『……ああ、オスなら仕方ないよな、それは』


 例によって理解してないユカと、やけに理解力のあるウマ。
 半分埋まっていた頭を引き抜いたセルは、『もう誰も汁婆について疑問を挟まないよな』と悟った気持ちになりつつあった。

 それはともかくとして、辺りを見渡して地形を確認するセル。
 眼下には川が流れている。
 しかもやたらと流れが激しい。
 これなら渡河も不可能に近かろう。

 あと1メートルほど遠く飛んでいたら、多分ボッチャン。
 背筋を微妙に凍らせながらも、セルは計算する。


「…かかっている橋の大きさからして、一度に渡ろうとするのは…小型のモンスターなら5匹から6匹、キマイラみたいな中型なら2匹。
 ゴーレムとかの大型なヤツなら、1体と小型が2匹…ってあたりか。
 よし、これなら何とかなる…。
 問題は空を飛ぶタイプだけど…」


 どうするか、と考え込むセルの肩を、汁婆がポンと叩いた。


「?」


『飛んでくる連中は任せろ』


「…何か作戦でも?」


『いや
 作戦なんてややこしいモノじゃねぇ
 空を飛ぶと言っても、川の大きさからして渡りきるのが限界の筈
 渡りきって降りてきた所を、俺がスピードに任せて片っ端から蹴り倒す』


「でもそれだと、汁婆はあっちへこっちへと走り回る事になるぜ?」


『俺はウマだ
 ちょっと走ったくらいじゃバテやしない
 それに援軍が来たら、そっちに任せればいい
 何も一日中続けるワケじゃないんだからな』


「なるほど…じゃ、それで行くか。
 大河!
 ユカさん!
 2人は橋の防衛を頼む!
 極力通さないように頼むぜ」


「「了解!」」


 セルに指示された通り、ユカと大河は橋に向かう。
 セルと汁婆はその橋を越えて少しした場所に居た。
 汁婆は飛んできた敵を仕留めるため、セルはユカと大河が討ち漏らした敵を仕留めるためだ。


「ユカ、俺が向こうに立つから、後ろは頼むぞ」


「?
 そんなに離れて立つ事ないと思うけど。
 網に穴が開いちゃうだけだよ?」


 現在の位置関係は、このようになっている。

    橋      橋
  河 |      | 河
  河 |  大河  | 河
  河 |      | 河
  河 |      | 河
  河 |      | 河
  河 |  ユカ  | 河
河河河河|      |河河河河
      セル 汁婆


 大河とユカが離れすぎている。
 これではお互いのフォローも効かないし、モンスター達も通り抜けやすくなる。
 大河とユカが並んでいた方がいい。
 しかし、それは大河も承知の上でこういう位置関係を選らんだのだ。


「いいんだよ、これで。
 何故なら、俺のリーチは今から思い切り長くなるからだ。
 ユカ、近付きすぎるなよ?
 正直言って、どこまで制御できるか解らないからな。
 ヘタすると攻撃に巻き込まれるかもしれない」


「?
 よく解らないけど…わかったよ」


 釈然としないながらも、ユカは大河に従う。
 何か考えがあるようだし、彼の実力にも信頼を置いている。
 大丈夫だと言ったら大丈夫なのだろう。
 それに、いざとなったら…。


(格好イイところを見せるんだもんね!)


 ユカは目を閉じ、精神を集中する。
 呼吸を整えると、体の内側に小さく、しかし力強い光が宿るのを感じた。
 ユカの切り札である。
 出来るなら使いたくはないが、いざとなったら発動させる。


「さぁ、来るなら来いッ!」


 拳同士を打ちつけあって、ユカは気合を入れた。


 大河は目を凝らす。
 今はまだ豆粒程度の大きさでしかないが、ネズミ算を彷彿とさせる勢いで増殖している。
 進軍スピードを考えると、5分もあれば交戦するのは確実だ。
 逆算してみると、ユカが軍気を感じた時にはかなり距離があった事になる。
 大した感受性だ、と感心しつつも、大河は手を掲げてトレイターを呼び出した。

 ガシッ、と手の中に巨大な質量が納まる感覚。
 ユカ達はそれを見て息を飲んだ。
 セルが青ざめる。


「た、大河!
 それってお前が召喚器を呼び出した時、ゴーレムと一緒に闘技場の半分近くを丸ごと吹き飛ばした形態じゃないのか!?」


「ええ!?
 あの『シスコンの鑑事件』のアレ!?」


 山篭りしていたユカも、その程度の噂は聞き及んでいたらしい。
 そう、大河が呼び出したのは、青い燐光を纏わりつかせる超ド級の大剣だった。
 しかも、かつて使った時よりもさらに長い。
 普通なら重心が移動してバランスを崩しそうだが、大河は全く揺らがなかった。

 ブン、と軽く振り回すと、それだけで空気が渦を巻く。
 ユカは大河が距離を取った理由がよく解った。
 これだけのリーチを誇る武器ならば、逆に離れていた方がいい。
 その形態上、左右に振り回すのが主な使い方になるだろう。
 そんな時にユカが近くに居ては、剣筋を邪魔するだけである。


「…ボクの仕事は、大河君が討ち漏らした敵達の始末。
 セル君の仕事は、ボクが打ち漏らした敵の始末。
 でも…殆ど大河君が片付けちゃいそうだなぁ…。
 セル君もボクと一緒の位置にした方がいいかな?」


 大河は長い長い斬馬刀を肩に担ぎ、モンスター軍団達が来るのを待っている。
 豆粒だった魔物達は既に個体の区別がつく程に距離を詰めていた。

 大河の一撃の射程範囲に入るまで、あと30秒強。

 大河は青い光を纏うトレイターに向かって話しかけた。


「さぁ、一丁暴れてやろうか、トレイター。
 いや…それともこう呼ぼうか?」


 視線をトレイターに移し、確かめるように続ける。


当真大河…と」


「………………バレた?」



どうも、最近冗談抜きで気が抜けきっている時守です。
学校に行く理由が殆どない…。

でも就職活動はあんまり…。
何故か最終面接までは残っても、そこで全部落ちてます。
旅費を考えると、落すなら最初で落せと叫びたい…。

暗い話はこれまでにして、次回はかなりの謎が解けると思います。
トレイター=大河の理由や、大河の圧倒的な攻撃力の秘密とかが。

それではレス返しです!


1.ななし様
おお、超人ロックを知っておられますか。
先日後輩に話したところ、ナニソレ?と言われたので通じるか不安だったのですが…。
知ってる人は知ってるんですねぇ。


2.文駆様
あまり深く考えてないんですけどねw
こうなったら、量より質の路線で行ってみようと思います。

どーもアルストロメリアもどっかヘンテコな人物のようだし、一人くらいは振り回される常識人がいないと…。
パゲのロベリア…彼女の血統は、髪で悩む宿命があるよーですw

うーん、ちょっと所じゃなく偏りが出そうですが…不出来な作品になっても、見捨てないで下さいお願いします<m(__)m>


3.アレス=アンバー様
一歩前に進んでも、所詮はカエデですw

ベリオの黒さは生来のものでは?
何せブラックパピヨンを生み出すくらいですしw
でもブラパピよりもベリオが黒いよーな。

カイザーノヴァはヤバかったでしょーか。
でも人体にはあまり破壊力が強くないという、ルビナスの科学力の神秘です。

いっそ、課題となっているマトモな将を彼女で間に合わせてしまおうかと画策しております。


4&5.くろこげ様
彼女の言う『私の世界』とは、世界そのものというよりも人生の事ですが…それを差し引いても説得力がある説ですね…。

ロベリアが無警戒だったのは、欲しかった美しい肉体が手に入るという焦りと、侮りではないでしょうか?
いくらマッドでも、自分の体は弄るまいと思っていたとか。
所詮一般人には、マッドの考えは理解できませんよ。


6.なまけもの様
あっはっは、ズバリ言い当てられましたな…。
まぁ、普通に復活させるんじゃ面白くないですから、腐れさせるか体の一部が喰われて義手でも付けさせるか…。
色々考えてみます。

>ぷよぷよ
時守は意味もないネタを時々仕込むのが大好きです。

エルダーアークよりも、ルビナスボディのギミックの方が強力な気がするなぁ…。
召喚器の立場ナシw

ああ、ユカは百合は平気そうですね、ソッチ系っぽい後輩のためでしょうか。


7.悠真様
ぐわぁ、何たる不覚!
ロケットパンチ系の技を出しても、ドリルが出てねぇ!
回転する螺旋の鋭角形を忘れるなんて!

それはともかく、そろそろ本気で“破滅”側の戦力を増強させなきゃいけません…。
幾つか案はあるので、頑張って全部出そうとしてみます。


8.カシス・ユウ・シンクレア様
転速閃はカエデ専用技として、結構前に思いついたヤツです。
うう、格闘系に比べて魔法系は説得力のある必殺技を考えにくいッス。
それこそ以前のレスでいただいたネタから引用したくなるほどに…。

ナナシのイメージは、夜麻み○きの漫画の登場人物、十六夜のイメージです。
まぁ、十六夜には敵という概念自体ない気がしますが…。

ユカの参入によって、救世主クラスに波紋が起きる……かもしれなくもないかもしれないw
正直、ネタはあるのですが…着地地点が決まりません。
今回はギャグで誤魔化すわけにもいかないので、ちょっと困ってます…。


9.K・K様
そのまさかになりそうですな。

考えてみると、今の王宮は最前線よりもヤバイ人材が揃っている気がします。
そんな真っ只中に突っ込んでいったロベリアさんに黙祷を…w

ルビナスを知らない人がロベリアの言った悪口を聞いたら、半分くらいは冗談だと思うでしょうか。
サイコパペットは、実はちょっと前にポスティーノに頼んで持ってきてもらったのです。
すっかり書くのを忘れてました…。

では、オギャンバイ!


10.ナイトメア様
何やら色々と大変そうですね。
お体に気をつけて…。

この場合、“破滅”の存亡の危機とは、存在意義の危機のような気がしますw
無道はまだリタイヤはしそうにないです。
クローンを魔導兵器に…その手があったか。
ちょっとネタに当たってます。

以下電波…。
王都へ突き進むモンスターの群。
その姿は人の恐怖を煽らずにはいられない。

魔物達は、警備が手薄だった側面から王都へ侵入した。

中略……。

迎撃に走る兵士達。
しかしそこで見たのは、数々のコスプレ衣装に身を包み、すっかり様変わりしている魔物達の姿だった。
どうやら聖地に突っ込み、突破しようとする間に洗脳されてしまったらしい。
同人誌やらグッズやらを片手に持っているのが哀愁をそそる。
その姿は、人の同情心とか笑いを煽らずにはいられなかった。

「…戦うの? あんな魔物と…」by兵士一同


11.神〔SIN〕様
確かに、無道の脳味噌は殆どカラっぽいですね。
頭蓋骨を差しても、肝心の脳にはカスリもしてないとw

確かにあっけないですが、一応パワーアップさせて…させて…いかん、状況を考えると見せ場が作れん(汗)
ア○○ス○○○リア復活は、前に予告したと思いますが…幾つか問題が。
まぁ、打開策はありますけど…。

被害妄想全開のロベリアさんは、時守にも手に負えそうにないので…。
ルビナスを嫌う理由を持たせてみました。
天然かどうかは知りませんけど、聞いててオイオイ…と思う台詞はありましたね。
あと妙にオトメチックなところとか。

原作のユカとは…ちょっと性格が違ってるよーな気も…。


12.なな月様
得体の知れない何者かが……おおぅ、ヒラメイタ!
アレを混入させてしまえ!
これで無道の出番も作れそうだ…ありがとうございます!

確かに…レベリオンのシステムは、大分趣味に走った形跡が…。
某BASTARDのDSを封印してたアレと同じよーなシステムですなw

ダウニーが仕事で迷惑をかけているのは、溜まっていた書類やら情報やらを一気に流出させているからです。
一段落すればそれも収まるのですが……ロベりゅんの胃が保つかなぁ…。

うーん、リアルとスーパーの区切りを付けずに、思いつたのを全部つぎ込みましたしね…。
ちなみに、ルビナスの使ったヘルファイアはドラゴンボールの人造人間だかロボットだかの技です。
ヘルズファイヤだったかな?
…彼はリアルロボ?それともスーパーロボ?


13.舞ーエンジェル様
ええ、復活させますよー。
多少の問題を抱えながら。
考えてみれば、既に死人になっているから息継ぎとか不要なんですよね。
これだけでも、結構強くなるかも…。

銀魂アニメは近所じゃ見れません…羨ましい。
その時、ダウニーは一体どんな髪型を…?
でもきっと、そのハンマーは光にしちゃうヤツなんでしょう。


14.アルカンシェル様
ええ、つい先程思いついたネタを使って復活です。
問題は、どうやってギャグに引き擦り込んでやるか…ですw

よくよく考えてみると、ルビナスにえらいモノ渡しちまったなー、と自分でも冷や汗…。
ブラパピは正確に言うと分離じゃありませんが、まあ些細な事ですね。

ロベリアには色々と苦労が集中する事になりそうです。
なまじ常識を持っているから…。
最後はかなり悲惨な事になりそう…。

人面豚…ですか?
知りませんが、それはアレですか、顔を切り取ってブタにくっ付けるとか、拷問とか、あと言い掛かりとか。
『どんなに作家が頭を捻っても、現実の方がずっとタチが悪い』。
田中芳樹先生あたりが、似たような事を仰っていました。
ほんにその通りで…。

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