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▽レス始

「これが私の生きる道!外伝5慰労会を兼ねた温泉編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-29 19:59/2006-04-30 20:48)
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(2月25日、関東地方某温泉宿)

叔父さんの家を出た俺とラクスは某温泉地にある
温泉宿に到着した。
この宿は昔ながらの温泉宿を目指しているとかで
、海を見渡せる高台に聳え立ち景色の素晴らしい
露天風呂の他二人っきりで入れるカップル風呂、
各種娯楽設備やみやげ物屋などが全て揃っていて
、外に出る必要が無いと言うのが俺達には都合が
良かった。
石原首相は一部の批判をものともせずに俺達への
報道陣の接近を禁止して違反者は強行排除してい
たのだが、近付けない故にその報道合戦は過熱し
ているようであった。

 「おーい!カザマ、待ってたぞ」

 「よう!新婚さんか」

 「お前もそうだろうが」

石原三佐が宿の入口で俺達を待ってくれていた。
宿の入口には黒い木の板にザフト・オーブ・自衛
隊パイロットさんご一行と書かれていた。

 「みんな来てるの?」

 「ああ、お前達が最後だ」

 「悪いな」

 「マスコミの連中が五月蝿いからな」

俺達の移動に合わせて追いかけてくる報道陣をか
わすのが忙しくて到着が遅れてしまったのだ。

 「マスコミの連中も手を変え品を変えなのさ。
  一度も話した事が無い自称親戚やら同級生が
  連中に雇われて俺達に話掛けてくるんだよ」

 「ふーん、そうなのか」

 「(すいません。覚えてないです)しか言わな
  かったけど」

 「まあ、入れや」

宿に入ると仲居さんが俺達を部屋に案内してくれ
る。

 「こちらの(桜の間)になります」

 「(桜の間)かラクスっぽくていいね」

 「本当ですわ」

 「お茶はどちらでお召し上がりになりますか?
  」

 「えっ、どちらでって・・・」

 「貸切りになっていますので、二つある宴会室
  の一つを共用のリビングとして開放していま
  す」

 「じゃあ、そっちで飲みます」

俺は仲居さんに心付を渡してから荷物を置いて宴
会室に向かった。

 「ふーん、部屋割りはカップル同士か」

アスラン・カガリ、キラ・レイナ、ニコル・カナ
、イザーク・フレイ、ラスティー・シホ、石原三
佐・マユラ、ハワード一尉・アサギ、トール・ミ
リィー、ミゲル・アビーなどいわゆる夫婦同士か
恋人同士で部屋が割り振られていた。

 「でも、ディアッカはハイネと相羽一尉はホー
  三佐とでサイはカズイ?あいつ彼女いなかっ
  たか?」

 「俺達とは付き合いがないからな。遠慮したん
  だと」

俺達の後ろからハイネが現れた。

 「ハイネか」

 「ハイネかは酷いよな。俺は親友だろうが」

 「後は誰が来てる?」

 「ジローは嫁さんが妊娠中で駄目。コーウェル
  は仕事が休めずに駄目。クルーゼ司令は・・
  ・」

 「ミサオさんも9ヶ月目だもんな」

 「クルーゼ司令は来てるよ」

 「部屋は誰と?」

 「一人部屋だよ」

 「いいな」

 「クルーゼ司令と相部屋なんて嫌だろう?」

 「そうだな」

 「確かに、そうですわね」

俺とラクスは即座に頷いた。

 「えーと、後は・・・。げっ!ユリカとエミ!
  誰だ、呼んだのは?」

 「さあ?いつの間にかリストに入っていて・・
  ・」

 「もういい。次は・・・。えっ!レナ少佐とマ
  リューさん?」

 「ユリカとエミが呼んだみたい」

 「マリューさんがここに来たら楠木重工プラン
  ト支社は誰が面倒を見ているんだ?」

 「今日は土曜で明日は日曜だからトンボ帰りだ
  ってさ」

 「まあ、他所様の会社だからいいけど・・・」

その後、俺達とハイネは宴会室に移動した。
この部屋は洋室風の宴会室で暖房が効いた部屋に
大きいテーブルと椅子が置かれ、正面の大型スク
リーンからテレビ番組が流れていた。

 「やっと、到着したよ」

 「ヨシさん、すいませんでした」

 「ヨシヒロさん、御免なさい」

 「いいんだよ。俺達が目的だったんだから」

実は協定を破ってしつこく迫ってきたジャーナリ
ストがいたので、同道していたイザークとフレイ
を先に行かせたのだ。 

 「ここは完全に部外者侵入禁止だし、自衛隊の
  レンジャー部隊が周りの林で守備に就いてい
  る」

 「石原三佐、大げさ過ぎない?」

 「ここには露天風呂があるんだ。変な盗撮野郎
  がラクスさんの入浴姿を撮ってそれが世間に
  出たら、日本は世界中で大恥をかいてしまう
  からな」

 「でも、レンジャー隊員は覗き放題だな」

 「全員、女性だ」

 「へっ?」

 「レンジャー隊員は全員女性なんだ」

 「女性なの?」

 「あまり彼女にしたいとは思わないけど、女性
  である事には間違いない。だから、忠告して
  おく。女風呂を覗こうなんて考えるな。捕ま
  ったら地獄を見るからな」

 「わかった」

俺達が椅子に座ると仲居さんがお茶を淹れてくれ
て、お茶受けにここの温泉地のお土産らしきお菓
子を出してくれた。

 「久し振りの温泉だから楽しみだな」

 「私は初めてです」

 「俺は、昔家族と行ってさ」

 「そうなのですか」

 「私も随分久し振りだな」

 「えっ!クルーゼ司令?」

部屋にはほぼ全員が揃っていて、みんなはラフな
私服姿なのに、クルーゼ司令はただ一人温泉宿の
浴衣に着替えて椅子に座ってお茶を飲んでいた。

 「本当は隣の和室の宴会室が良かったのだが、
  夕食の宴会はそちらで行うようなので今は使
  えないらしい」

 「クルーゼ司令、気合が入ってますね」

 「温泉は大好きなんだ」

 「でも、ミサオさんを置いて参加して大丈夫で 
  すか?」

 「もう、9ヶ月目に突入しているからな。移動
  が辛いから不参加だそうだ。ここで産気付い
  ても大変だし、少し太ってしまったから、み
  んなに会うのが恥かしいとも言っていた」

 「妊婦が太るのは当たり前だと思いますが」

 「赤ちゃんの分だけ太ってしまったと言ってい
  るが、20キロも太って豚になってしまった
  のだ」

 「また、そんな事を言うと後が怖いですよ(少
  し太ったって・・・。赤ちゃんって20キロ
  もあるのか?)」

 「今、君が考えた事を私が考えないと思うかね
  ?」

 「はは・・・」

 「本人に面と向かって言えない事を今ここで言
  っているんだ」

 「悲しい現実ですね」

 「君も後数年すれば私の立場が理解できるさ」

 「わかりたくありません」

クルーゼ司令は嫁さんの尻に敷かれ過ぎて、もう
後戻りが出来ないようであった。  


 「みんなにお土産があるんだよ」

 「何ですか?」

 「正確に言うと、ある人と無い人がいる」

 「まず、キラだ」

 「へえ、何ですかね?」

俺は「番第屋」で購入したガレキをキラに渡した

 「僕のフリーダムですか」

 「そうだよ」

 「こんな物が販売されているんですね」

 「俺も驚いたけど、この会社の人間はガレキの
  販売に命を掛けているようだ」

 「オーブ軍のトップエース、キラ・ヤマト二佐
  は(殺戮の堕天使)と呼ばれ、その公式撃墜
  数は百五十機を超えるか・・・。僕って凄い
  んですね」

 「自分の事なのに・・・」

説明書を読みながら惚けた事を言っているキラに
レイナが冷静にツッコミを入れた。

 「俺はどうなんだ?」

 「俺は?」

今まで黙っていたホー三佐とハワード一尉が聞い
てくる。

 「えーと。オーブ軍エースのバリー・ホー三佐
  は(剣神)と呼ばれ、多少性格が破綻してい
  るが撃墜数はトップクラスを誇るか・・・」

 「誰が性格破綻者だ!」

 「当たってるよな」

 「そうだよな」

俺とハワード一尉はお互いに頷き合う。

 「みんなはどう思っているんだよ?」

ホー三佐が周りを見渡すと、全員が視線を逸らし
た。

 「そんなバカなーーー!」

ホー三佐は「レイダー改」のガレキを持ちながら
部屋の隅でいじけ始める。

 「俺は?」

 「ハワード一尉は無いよ」

 「えっ!無いの?」

 「無いよ。専用機も無いし、地味だし」

 「そんなバカなーーー!」

ハワード一尉もホー三佐の隣りでいじけ始める。
どうやら、二人の友情は回復したようである。

 「マユラとアサギはこれね」

 「やったー!ストライクルージュ改だ」

 「Bストライクもある」

 「そんな・・・。アサギのもあるのに・・・」

ハワード一尉は更にいじけてしまう。

 「カガリちゃんは(暁)ね」

 「まあ、実戦で使った事は無いけどな」

 「俺とガイが使ったけど」

 「何々、アスハ家のお姫様でオーブ軍少将の地
  位にあるが、猪突猛進で血の気が多くて気が
  短い・・・」

 「大きなお世話だー!」

 「ああ、カガリ。説明書を破いちゃ駄目だよ。
  作り方がわからなくなる」

カガリが激怒して説明書を破り始めたが、キラが
的外れな事を言って止めに入っていた。  

 「次は石原三佐と相羽一尉ね」

 「自衛隊では核動力機は秘密兵器なんだが・・
  ・」

 「でも、俺の(シップウ核動力機)があるのは
  嬉しい」

 「そんな、地味仲間の相羽一尉の機体まである
  のに・・・」

 「地味で悪かったな!」

ハワード一尉は更にいじけてしまった。

 「ユリカとエミの機体もあるんだよ」

 「美人エースと呼ばれていたから当たり前よ!
  」

 「そうですわ」

 「えーと、説明書にも美人パイロット二人組で
  何故(悪魔の姉妹)の二つ名がついたのかは
  不明である。推測では悪魔のように容赦なく
  敵を倒すからであろうと・・・」

 「うーん、自衛隊関係者なら真相を知ってると
  思うんだけどな。何で、(番第屋)は情報を
  掴んでいないんだ?」

 「素直に美人パイロットと書いた方がガレキが
  売れるからだろ」

 「「「なるほど!」」」

石原三佐の推測に全員が納得の表情を浮かべた。

 「失礼よ!」

 「失礼ですわね」

 「次はアスラン達か・・・」

アスランには「ジャッジメント」をイザークには
「リベレーション」をニコルには「リジェネレイ
ト改」をラスティーには「ドレッドノートエクス
ペディション」をディアッカには「フリーダム
」を渡した。

 「うーん、全員プラント評議会議員の息子でト
  ップエリートであるとしか書かれていないな
  。変わり種はニコルが音楽家に転進したと書
  かれているけど」

 「そうなんですか?」

 「ニコルは女性モデラーに大人気だそうな」

 「肖像権の侵害ですよね」

 「お前、しっかりしてるな・・・」

 「ジョークですよ」

 「「「(ジョークとは思えない・・・)」」」

 「私のは無いんですか?」

 「シホはこれね」

俺は「シグーディープアームズ」をシホに渡す。

 「私が一番初めにテストしたですか?本当はス
  ズキ隊長なんですけど」

 「まあ、美少女が乗ってた事にした方が売れる
  からな。モデラーは野郎が多いし」

 「俺達には?」

 「はい、ハイネは(ディンカスタム)でミゲル
  は(ジンカスタム)ね」

 「懐かしいな。そんなに昔じゃないんだけどな
  」

 「本当だよな」

 「私の機体はあるのかね?」

 「ありますよ。はい、(プロヴィデンス二号機
  )です」 

 「何々、司令官でありながらモビルスーツで出
  撃する事を好む。パイロットとしての腕は超
  一流か・・・」

 「私に比べると、大分文面が柔らかいな」

 「アスハ少将、私はちゃんと戦果を上げている
  からな」

 「むむむっ!」

 「(遠まわしに指揮官としてはどうかな?って
  言ってるような・・・)」

 「「こんにちは」」

そこまで話した所でマリューさんとレナ少佐が入
ってきた。

 「ラミアス部長、こっちこっち」

ユリカとエミに呼ばれて二人は席に座った。

 「カザマ君、何を配っているの?」

 「我々が搭乗したモビルスーツのガレキが販売
  されていたんですよ」 

 「へえ、凄いわね」

 「レナ少佐のもありますよ。俺に撃破された(
  ソードカラミティー核動力機)です」

 「その口が生意気な事を言うのかーーー!」

 「しゅいましぇーーん!」

俺はレナ少佐に口を両側に引っ張られてしまう。

 「本当にもう。えーと、レナ・メイリア少佐は
  (乱れ桜)と称されるエースパイロットであ
  り、その撃墜数は連合でトップクラスである
  が、本人自身は若く美人であるか。うーん、
  ベタ褒めね」

レナ少佐はご機嫌だ。

 「あれ?続きが書いてありますよ。周りは男性
  ばかりなのに結婚する気配は無く、嫁に行き
  遅れる可能性が高い・・・」

 「何ですってーーー!」

 「おりぇがいってゃんだゃにゃいでしゅよー!
  」

俺は再びレナ少佐に口を引っ張られてしまった。

 「私のは無いわよね。パイロットじゃ無いし」

 「ありますよ。はい、(ドミニオン)です」

俺はマリューさんの解説が説明書に書かれた「ド
ミニオン」のガレキを渡した。

 「何々、元々は技術将校でGとアークエンジェ
  ルの開発に従事していたが、その知識を買わ
  れて艦長に就任して最年少で大佐にまで昇進
  した美人艦長である・・・か。私もベタ褒め
  ね」

 「続きです。乳がでかいので被弾時に揺れまく
  りそう・・・」

 「セクハラよ!」

 「俺が書いたんじゃないですよ・・・」

 「マリュー、事実じゃないの」

 「でも、乳は無いと思う。せめて、スタイルが
  良いとか、グラマーとか」

 「まあ、所詮玩具の解説書ですよ。ちなみに、
  これがフラガ少佐の(108ストライク)で
  す」

 「へえ、ムウは何て書いてあるのかな」

マリューさんは「108ストライク」の解説書を
読み出した。

 「地球連合軍ナンバー1と言っても過言では無
  いトップエースで空間認識能力者でもある。
  開戦時はメビウスゼロで各地を転戦したが、
  月エンデュミオンクレーターの戦いで勇名を
  馳せ(エンデュミオンの鷹)と呼ばれるよう
  になる。ザフト軍のトップエースと数多の戦
  いを繰り広げ、特にラウ・ル・クルーゼには
  執拗に付け狙われながら生き残る事に成功し
  た奇跡の人であるか・・・」  

みんなの視線が一斉にクルーゼ司令に向いた。

 「私は普通に戦っただけだぞ!」

 「えーと、参考として(エンデュミオンの鷹)
  を付け狙っている時のラウ・ル・クルーゼを
  (変態仮面)と呼んで通常時と呼び分けるの
  がモデラーの決まり事である・・・」

 「(変態仮面)って・・・」

マリューさんが追加で読んだ内容にクルーゼ司令
はショックを受けて「プロヴィデンス二号機」の
箱を持ってホー三佐達の所に行ってしまった。
部屋の端でハワード一尉はいじけたままで、クル
ーゼ司令とホー三佐は仲良くガレキの部品チェッ
クを始める。

 「まあ、三人は仲良しさんですね」

 「心に同じ傷を持つ同士か・・・」

ラクスの発言に俺はそう切りかえした。

 「ヨシさんがテレビに映ってますよ」

ラスティーがテレビに映っている俺達を見つけて
報告してきた。

 「テレビ?ああ、ワイドショーだな」

 「ワイドショーって何ですか?」

 「プラントには無いけど、芸能人が新作の映画
  に出るとか、新曲を出すとか、そんな話から
  不倫しただの結婚するだの離婚するだの、ま
  あ、どうでもいい事を追い掛け回して取材し
  て発表する番組だ」

 「へえ、そんな番組があるんですか」

ニコルは感心しているようだ。

 「俺も取材を受けた事があるぞ」

 「石原三佐が?」

 「親父が選挙に勝って首相に就任した時にな。
  四十代の首相就任は初めての事だったから。
  それに、現役首相の息子が最前線でモビルス
  ーツ隊のパイロットとして戦っていたから」

 「確かに、大西洋連邦ではありえない事よね。
  政治家の子供は軍人になんてほとんどならな
  いし、なっても前線になんて出ないし」

 「マリューの言う通りね」

 「石原三佐は例外さ。それに、自衛隊は志願制
  だから」

 「そうなんだけど、俺が最前線で戦う軍人だっ
  てのが、皮肉にも親父の評価を高める結果に
  なっているのさ」

 「なるほどね。さて、テレビはどんな事を言っ
  ているんだ?」

俺が大型スクリーンを眺めると、土曜日なので一
週間のまとめの様なコーナーを放送していた。

 「あっ、石原三佐の結婚式の時の映像だ」

 「ラクスとカガリとフレイの着物姿が綺麗ね」

 「ユリカさんとエミさんも綺麗」

 「私も着物着てみたいな」

 「ミリィ、結構きついわよ」

 「えっ!本当?」

 「私と姉貴は子供の頃に着た事あるから」

明治神宮で神前式を挙げた時の様子が映し出され
ている。 

 「何だ?女性ばっかり映っていて、男は適当だ
  な」

 「仕方が無いよ。世の中そんなものさ」

ある程度映像が流れた後で、番組のスタジオにカ
メラが戻ってくる。

 「えー、この映像は石原総理のご子息の結婚式
  に出席なされた方々のものですが、その顔ぶ
  れは元歌姫のラクス・風間嬢やオーブ首長国
  連合のカガリ姫、大西洋連邦外務長官の一人
  娘であるフレイ・アルスター嬢などそうそう
  たる顔ぶれで・・・」 

 「更に、元美人エースパイロットで現在は楠木
  重工の役員でもある立花ユリカさんとエミさ
  んも出席され・・・」

 「そして、ラクス嬢をエスコートしている夫の
  風間義弘さんの姿も映し出されていますね」

 「十六歳の奥さんですか。羨ましいというか、
  犯罪というか」

 「そんな・・・。犯罪って・・・」

俺はコメンテーターのタレントに犯罪者呼ばわり
されてしまう。

 「気にするなよ。事実なんだから」

 「そうそう、俺達から歌姫を奪った罪は重いん
  だよ」

 「フォローになって無いぞ!ミゲル、ハイネ!
  」

 「次は毎週恒例、ゲイ・大西のファッションチ
  ェックです」

司会者がコーナー名を告げると、スタジオには髪
を金髪に染め、サングラスをかけ、ド派手な原色
のアロハシャツとピチピチの皮のスラックスを履
いた50前後のオヤジが登場する。

 「何ですか?このオジサンは・・・」

 「さあ?」

 「最近、有名人のファッション評論を始めたオ
  ヤジで批評が辛口だから人気があるんだよ」

アスランの疑問に相羽一尉が答えるが、全員が「
こんな、オカマ野郎に言われたくねえよ!」とい
う表情をしていた。

 「今日のファッションチェックなんですが、帰
  国中の風間義弘さんが親しい友人と温泉宿に
  泊まっているという事なので、彼らの私服を
  チェックして貰います」

 「任せて頂戴。今日は若い男の子が多くてウキ
  ウキよ」

 「げえ、気持ち悪い」

 「彼は自分の性癖を全く隠さない。そこも人気
  の一つらしいが」

フレイが露骨に嫌そうな顔をし、相羽一尉はこの
コーナーの解説を始めた。

 「まず、始めにこの方々からです」

温泉地に入ろうとしている石原三佐とマユラが映
し出される。 

 「石原総理の息子さんよね。うーん、彼はいい
  わね。あの逞しい腕に抱かれてみたいわ。嫁
  は普通よね。どうして私を選ばなかったのか
  しら?」

 「あの・・・。ファッションに対する批評が一
  つも無いんすけど」 

 「あれじゃあ、あのオッサンの男チェックよね
  」

 「ラスティー、レナ少佐。始めは普通にファッ
  ションのチェックをやってたんだけど、次第
  に脱線してそちらの方が評判が良いから、現
  在ではこうなっているんだ」

 「相羽一尉、詳しいね」

 「良く見ているからな」

 「次はオーブから来れれた方ですね。風間さん
  の双子の妹さんで美人姉妹で有名なようです
  。それぞれに恋人らしき方を連れています」

キラとレイナ、ニコルとカナが映し出される。

 「うーん、あの茶色の髪の男の子は可愛いわね
  。でも、あのベルトの沢山付いた服は感心出
  来ないわ。私に相談してくれれば新しい服を
  買ってあげるのに。まあ、あの若草色の髪の
  子はニコル君ね。可愛いわー。食べちゃいた
  いくらい」

 「・・・・・・、あんな人に服装を批判される
  なんて・・・」

 「僕にそんな趣味は無いんですけど・・・」

 「良かったなモテモテで」

 「「嫌だーーー!」」

ミゲルの一言でキラとニコルは絶叫しながら部屋
を駆け出してしまう。

 「姉貴、私達の評価が一言も無いね」

 「別に、いらないと思う」

 「次は銀髪の方とアルスター外務長官のお嬢さ
  んですね」

 「あの銀髪の男の子は気が強そうでゾクゾクし
  ちゃう。あの女は駄目ね。媚を売っているの
  が見え見えよ。あのタイプの女にお嬢様チッ
  クなワンピースは似合わないわ」

 「言いたい放題だな」

 「昔、ある政治家の服装をボロクソにこき下ろ
  して圧力を加えられた事があるんだが、(政
  治家の権力の乱用は許さない)と逆にキャン
  ペーンを張られた事があったんだ。結果、政
  治家が圧力をかける事を止めた事があってか
  ら、誰に対しても言いたい放題で怖いもの無
  しなんだよ」

 「ふうん」

 「俺はノーマルだ・・・。俺はノーマルなんだ
  ・・・」

 「ふふふ。パパに頼んであのオカマを世間から
  抹殺してやる・・・」

イザークとフレイはブツブツと何かを言い始める
が、その雰囲気の不気味さに誰も話し掛けなかっ
た。 

 「次はオーブのカガリ姫とその護衛の方ですね
  」

 「俺って、護衛にしか見えないのか・・・」

 「泣くなよ。アスラン」

 「カガリ姫はもう少し女性らしい格好をすべき
  よ。まるで、男の子みたい。それにしても、
  護衛の男の子は最高ね。私のモロ好みよ」

 「誰が、男の子だーーー!」

カガリが激怒して椅子をスクリーンに投げつけよ
うとするが、レイナ、カナ、ミリィーが懸命にそ
れを抑えつけた。

 「アスラン、あのオカマに一番気に入られたよ
  うだぞ」

 「俺はノーマルだ・・・。俺はノーマルなんだ
  ・・・」

ハイネの一言でアスランはイザークの隣りに行っ
て一緒に何かをつぶやき始めた。

 「みんなが段々壊れていく・・・」

 「次は女性二人ですね」

 「うーん、あの歳で女二人旅は不幸よね。ファ
  ッションも若作りしているのが見え見えだし
  ・・・。一人だと失恋しての自殺旅行とも取
  られかねないわね」

 「「ビシッ!」」

変な音がしたので横を見ると、マリューさんとレ
ナ少佐が手に持っていた茶碗にヒビが入っていた

 「わっ、凄い握力・・・」

 「ふふふ、私はムウと予定が合わなかっただけ
  ・・・。そう、私は一人身では無いの・・・
  」

 「ラミアス部長が怖い・・・」

 「ですわね」

さすがのユリカとエミも恐怖で身を縮めていた。

 「ちょっと、出掛けてくるわ」

 「レナ少佐、何をしにですか?」

 「自衛隊の基地でセンプウを借りてあのオカマ
  を踏み潰すの」

 「いや、そんな事不可能ですから・・・」

 「行かせて!あのオカマに天誅を加えるのよ!
  」

 「無理ですよ。逮捕されてしまいますよ!」

ハイネとディアッカが懸命にレナ少佐を抑え付け
ている。

 「なあ、チャンネル変えない?」

 「「「全員のを聞かないと納得出来ない!」」
  」

ディアッカの提案をアスラン達が一蹴してオカマ
の評論は続く。

 「えー、次の方は・・・」

その後、ミゲル、アビー、ハイネ、ディアッカ、
ラスティー、シホ、トール、ミリィーなどは特に
目だった毒舌も無く順調に放送が進み、ハワード
一尉は「時代遅れのプレイボーイみたい」と言わ
れて指定席の部屋の隅に戻って行き、ホー三佐は
「駄目な格闘家みたい」と言われ、クルーゼ司令
は「仮面なんて付けてたら何を着ていてもコスプ
レよ!」と言われて二人は部屋の隅で二回目のガ
レキの部品のチェックを始めた。 

 「言いたい放題なのは変わらずか・・・。俺達
  、一般人なのに・・・」

 「次は立花ユリカさんとエミさんですね」

 「うーん、とても可愛らしくてセンスも最高ね
  。みんなも彼女達を見習えばいいのよ」

 「あれ?ベタ褒め?」

 「さすがは私達と言うべきかな」

 「そうですわね」

 「この番組の冠スポンサーは楠木重工だ」

 「なーんだ。そうか」

 「唯一、逆らえない存在だからな」

相羽一尉の説明で全員が納得した。

 「最後は帰国中の風間義弘さんとその奥様のラ
  クスさんです」

 「うーん、風間君は普通ね」

 「大きなお世話だ!俺は一般人だ」

 「私がコーディネートしてあげるから連絡頂戴
  ね」

 「絶対、連絡なんかしねえ!」

 「奥さんは何か清純派を気取ってるみたいね。
  結婚したんだからもっと大人の女の格好をし
  ないと風間君が浮気しちゃうかもね」

 「いやー、相変わらずの毒舌で最高ですね。で
  は、今週はこの辺で」

司会者の締めの言葉で番組が終了してコマーシャ
ルに入ったが、全員が恐怖でラクスを見る事が出
来なかった。

 「あの、ラクスさん」

 「私は大丈夫ですわ」

ラクスの顔は笑っているが、その背後から例の黒
いオーラが噴出している。

 「お風呂に行く前に少し連絡を取ってきます」

ラクスは部屋を出てから五分ほど何処かと電話で
連絡をしていたようだが、戻って来た頃には元に
戻っていたので誰も気にしなくなったようだ。

 「なあ、あれがファッションチェックか?」

 「日本の事はよくわからん」

ミゲルとハイネは不思議そうに顔を傾げるのであ
った。
後日談ではあるが、このワイドショーは次の週に
突然最終回を迎え、ゲイ・大西のレギュラー枠が
消滅した上にこの時間の番組はドラマの再放送に
なってしまったそうである。
ラクスが何処と連絡を取って、どういう流れでこ
の番組が消滅したのかは、怖くて聞けなかった事
を明記しておく。


 「はあ〜。温泉って最高」

下らない事で精神的に疲れてしまった俺達ではあ
ったが、どうにか立ち直って全員で露天風呂に浸
かっていた。
この露天風呂はこの宿の売りらしく、全員で入っ
てもまだ余裕があるようだ。

 「何を飲んでいるんですか?」

 「うん、日本酒だけど」

アスランの問いに俺は答える。
お盆を浮かべてイカの塩辛を肴に、お燗をした日
本酒を飲んでいたのだ。

 「美味しいんですか?その気持ち悪いの」

 「食べてみろよ」

キラが続けて聞いてきたので、俺はイカの塩辛を
キラの口に地放り込んだ。

 「うわ!塩辛い!」

 「だから、塩辛だ。お前、日系人の癖に食べた
  事ないのか?」

 「ありませんよ。僕はオーブ生まれですから」

 「クルーゼ司令を見ろよ。美味しそうに食べて
  いるぞ」

クルーゼ司令は俺と同じくお盆を浮かべて、美味
しそうにイカの塩辛を食べながら日本酒を飲んで
いた。

 「あの人、本当に外人か?」

石原三佐が不思議そうにその光景を眺めていた。

 「おーい!義弘」

 「あっ、義成兄さん」

突然、露天風呂に義成兄さんが入ってきた。
実は、この温泉旅行に誘ったのだが、「バイトと
はいえ、そんなに休めない」と断られてしまった
のだ。 

 「時間の都合ついたの?」

 「事情を話したら工場長に絶対に参加しろと言
  われてさ。ユリカ様とエミ様が参加している
  んだろ?」

 「俺はこっちに来てから知った」

 「工場長はお二人の予定を知っていたから、絶
  対に参加しろって。(お前の人生における最
  大のチャンスだから)って。いい人だろう?
  工場長って」

 「「「(可哀想に・・・。人生における最大の
  ピンチの間違いだろう?)」」」 

全員が義成兄さんを哀れみの目で見つめ始めた。

 「あれ?みなさん、どうかしました?」

義成兄さんは不思議そうな顔をしていた。


 
 「同士よ集ったな」

露天風呂の洗い場の隅にハイネ、ホー三佐、ハワ
ード一尉、相羽一尉、ディアッカ、サイ、カズイ
が集結していた。

 「同士って、ただの覗きじゃないですか」

 「しーっ!サイ、静かに」

 「何で僕が参加しているのでしょう?」

 「君の彼女は見たことが無いが、今回は不参加
  だからな。参加資格は十分にある」

無理やり参加させられたっぽいカズイは納得のい
かない表情をしている。

 「ハワード一尉は資格があるんですか?」

 「俺は人類の神秘である女性の裸を探求するの
  みだ」

 「この人って、初めからこんな性格でした?」

 「人は知り合って付き合いが深くなると色々な
  面が見えるんだよ」

サイの疑問に相羽一尉が答える。

 「それで、作戦はどうする?衝立から覗くのは
  物理的に不可能だし、林を回り込もうにも、
  レンジャー部隊が警備に就いているんだろ?
  」

 「ホー三佐、それについては相羽一尉が情報を
  集めてくれたから心配無い」

 「ふっ、警備ルートはチェック済みだ。後は静
  かに潜入するのみだ」

 「だが、この多人数でか?」

 「そこで、人数を分ける。少人数で別れて覗き
  に行けば、カザマ達にバレる可能性も低い!
  」

 「それで、チーム分けはどうする?」

 「第一陣、ディアッカ、サイ、カズイ。第二陣
  、ハワード一尉、ホー三佐。第三陣、俺と相
  羽一尉だ。出発前にレンジャー部隊の配置図
  を貰うのを忘れないように」

こうして、男達の無謀な賭けは始まったのであっ
た。


(五分後、女風呂視点)

 「「「ぎゃーーー!」」」

突然、林の方向から若い男達の悲鳴が鳴り響く。

 「あれ?何の悲鳴かしら?」

 「大方、女風呂を覗こうとして捕まったんでし
  ょ。ヨシユキがレンジャー部隊が配置されて
  いるって言ってたから」

マリューさんの疑問にマユラが答える。

 「でも、レンジャー部隊の人に覗かれません?
  」

 「全員、女性の部隊だって」

 「あっ、納得」

レイナとカナも安心したようだ。

 「でも、みなさん。スタイルが良くて羨ましい
  ですわ。私、胸が無いですから」

 「ラクスはまだ十六歳でしょ。大丈夫よ」

 「そうそう」

 「レイナとカナは胸があるからそう言う事が言
  えるんですよ」

 「そうかな?」

 「ラスティーって巨乳好み?」

 「そういうわけでは無いけど・・・」

 「カガリはどうなの?アスランは満足してる?
  」

 「そんな事知るか!」

 「カガリは意外とスタイルが良いから」

 「意外は傷つくな」

 「イザークは大満足でしょう?彼、マザコンっ
  ぽいし」

 「えっ!そんな事ないわよ!」

 「ここでの勝ち組はマリューさん、エミさん、
  レイナ、カナ、フレイかな?」 

 「それで、普通がミリィー、カガリ、レナ少佐
  、アビー、マユラ、アサギで」

 「多少、負け組がラクスとシホ?」

 「それで、完全なる負け組がユリカさんと」

 「納得いかないわ!」

 「でも、バスとか電車に子供料金で乗れそう」

カナがぼそっと失礼な事を言う。

 「中学生に見られても小学生は無いわよ!」

 「ユリカ、落ちついて下さいな」

 「エミ!今回の件ではあなたも敵よ!」

 「確かに、マリューさんといい勝負・・・」

 「ヨシヒロは巨乳が好きなのでしょうか?レイ
  ナとカナは胸が大きいし、ステラも14歳と
  は思えないスタイルの良さで・・・」 

 「うーん、どうかな?」

 「あまり、そういう事は気にしていないような
  ・・・」

 「でも、ラクスは胸大きくなったよね」

 「そうね。私は久し振りだから良くわかるわ」

 「あっ、マリューさんもそう思いますか?」

 「兄貴に毎日揉んで貰ってるとか?」

 「いえ、あの。夫婦ですのでそれなりには・・
  ・」

 「(まずい、ラクスにまで抜かれてしまうとは
  。ここはラスティーに頑張って貰って・・・
  )」

シホは新たに決意するのであった。


(同時刻、男湯視点)

 「凄い会話をしているな」

 「壁一枚先は天国か・・・」

ハイネとハワード一尉は衝立に耳を当てて女湯の
会話を聞いていた。

 「だが、ディアッカ達は失敗したようだぞ」

 「地図を読み間違えたのかな?」

 「ディアッカは訓練を積んでいるし、あれでも
  赤服だぞ」

 「どうせ、興奮し過ぎて判断を誤ったんだろう
  ?次は俺達が行くぞ。俺達はベテランだから
  ミスなどしない」

そう言いながらハワード一尉とホー三佐は出発し
たが・・・。


 「おい!この地図間違ってないか?」

地図通りに監視網をかわしながら進んでいたつも
りなのに、二人はレンジャー部隊に取り囲まれて
しまった。

 「残念だったな。相羽一尉の掴んだ情報は偽物
  だ」

 「そこまでバレていたか・・・」

筋骨隆々で男前に見えるレンジャー部隊の隊長が
警棒を構えながら二人に迫っていく。

 「うわー。男前だけどレディーの方で・・・」

 「大人しく捕まって、背後関係を吐け!」

 「ふん、仲間を売れるか!ホー三佐!」

 「了解した!」

二人は二手に別れて独自に女湯を目指す作戦に出
たが、これは無謀であった。 
いくら訓練を積んでいて身体能力が優れていても
所詮はパイロット、専門の訓練を積んだレンジャ
ー隊員に勝てるはずも無く、ハワード一尉はすぐ
に捕まってしまう。

 「観念するんだな」

 「俺は確かに捕まったさ。だが、ホー三佐は優
  れた格闘家でもある。そう簡単に負けない・
  ・・」

 「ぎゃーーー!」

 「えっ、ホー三佐が・・・」

 「1対多数だ。いくら強くても数の優位には勝
  てん!」

 「(相羽一尉、ハイネ。その地図では辿りつけ
  ん・・・)」

だが、その事を彼らに伝える術を持っていなかっ
た。


 「相羽一尉、ハワード一尉とホー三佐も失敗し
  たみたいだ」

 「やはり、そうか・・・」

 「えっ、やはりって?」

 「実は入手した地図は三種類。信憑性の薄い方
  から順番に渡していたのだが・・・」

 「えっ、それってみんなを犠牲に・・・」

 「ハイネ!君は女湯を見たいか?」

 「見たい、見たい」

 「では、仕方が無い事だ。割り切れよ。でない
  と死ぬぞ」

二人は一番信頼出来る地図を頼りに林を進んでい
く。

 「当たりだな。後はこの岩山を登れば」

 「極楽に到着か」

 「俺達は賭けに勝ったんだ!」

 「「やったー!」」

二人は大喜びで岩山を昇ろうとする。

 「待ちな!そこの二人!」

 「「えっ?」」

ハイネと相羽一尉官が振り返ると数十人の女性レ
ンジャー隊員が武器を構えて立っていた。

 「そんな、バカな!俺の情報は完璧のはず・・
  ・」

 「情報の入手先を誤ったな。沙紀!顔を見せて
  やりな」

屈強で男のような女性レンジャー隊員の中から小
柄で華奢な女性が現れる。

 「んな!早乙女三尉か!」

 「可愛い娘だな。彼女か?」

 「いや、防衛大学の後輩なんだ」

 「私は警備状況が心配だからって先輩が言うか
  ら情報を教えたのに・・・。それに、私を呼
  んでくれないんですね。私、先輩の彼女じゃ
  ないんですか?」

早乙女三尉は涙を流し始めた。

 「相羽一尉、沙紀の気持ちを踏みにじった罪は
  重い!覚悟して貰うぞ!」

 「まずい!ハイネ、逃げるぞ!」

 「えっ、ここで逃げたら極悪人じゃん。無理無
  理」

 「俺達は目的の為には手段を選ばないんじゃな
  いのか?」

 「ほう。それで、デタラメな地図で俺達を売っ
  たのか」

 「ちょっと、許せないな」

 「万死に値するな」

林の中から傷だらけのディアッカ、サイ、カズイ
、ハワード一尉、ホー三佐が現れた。

 「やあ、みんな元気?」

 「ああ、元気だよ。お前をシバキ倒すくらいの
  体力は残っているさ」

 「あれ?ホー三佐、怒ってる?」

 「俺だけじゃないけど」

 「ハイネ、どうしようか?」

相羽一尉が横を見るとハイネは姿を消していた。
生き残る為に、逃走を図ったようだ。

 「あれ?ハイネ!」

 「ハイネは小物だから無視だ。覚悟しろよ!」

 「あの、お手柔らかにね」

その直後、林の中から相羽一尉の絶叫が鳴り響い
た。 


 「では、再会を祝して乾杯!」

 「「「乾杯!」」」

風呂から上がった俺達は宴会場で夕食を取る事に
する。
メニューは海の幸と山の幸満載で大満足であった
が・・・・・・。

 「ディアッカ、その傷どうしたんだ?」

 「転びました」

 「サイとカズイも?」

 「「はい」」

 「ホー三佐は?」

 「特訓をしていてな」

 「ハワード一尉は?」

 「ホー三佐に付き合ったんだよ」

 「ふーん、ほどほどにな」

数名傷だらけの者がいたが、気にしないで宴会に
突入する事にした。

 「あれ?相羽一尉は?」

 「あそこにいますわ」

ラクスが教えてくれた方を見ると、端の席に見慣
れない女性が座っていて、誰よりも傷だらけの相
羽一尉がその娘に必死にお酒を注いでいた。

 「あの娘、誰?」

 「ああ、俺達の後輩で早乙女沙紀三尉だ」

 「可愛い娘だね。相羽一尉の彼女かな?」

 「付き合っている噂は聞いた事が無いな」 

 「でも、ここに呼んだって事は」

 「そうなんだろうな。相羽も親友の俺に隠す事
  無いのに」

 「恥かしかったとか?」

 「そんな性格してないだろう」

俺と石原三佐で挨拶に行く事にする。

 「よお、早乙女三尉」

 「石原先輩、結婚おめでとうございます」

 「始めまして。ヨシヒロ・カザマです」

 「お噂は相羽先輩からよく聞いています」

 「あのさ、二人は付き合っているの?」

 「はい!」

 「へえ、どちらから告白したの?」

 「相羽先輩です」

 「良かったな」

 「はい!」

 「相羽一尉も良かったなって・・・。君、ヤク
  ザにでも絡まれた?」

 「ヤクザと言うか、それ以上に性質の悪い連中
  に・・・」

 「そう、お大事にね・・・」

俺達は席を立つが、相羽一尉はまだ必死に酒を注
ぎ続けている。

 「ちくしょう!もっと殴っておけば良かった」

 「一人だけ幸せになりやがって!」

 「いいな、可愛い彼女で・・・」

 「俺も彼女欲しい・・・」

 「俺も・・・」

 「僕って何で巻き込まれたんだろう?」

ホー三佐、ハワード一尉、ディアッカ、ハイネ、
サイ、カズイの偽らざる気持ちであった。


 「始めまして。私、新年度から楠木重工に入社
  する風間義成と申します。よろしくお願いし
  ます」

義成兄さんはユリカとエミに挨拶をしながら酒を
注いでいる。
ちなみに、この世界の新年度は9月に統一されて
いた。

 「へえ、カザマ君の従兄弟なんだ」

 「はい、そうです」

 「カザマ君に似てるけど、メガネが知的でカッ
  コイイですね」

 「ありがとうございます」

義成兄さんは天にも昇る気持ちのようだが、それ
は不幸の始まりかも知れなかった。

 「カザマ、事情を話してやらなかったのか?」

 「正直に話した所で、今の義成兄さんが信じる
  と思う?」

 「思わない・・・」

石原三佐の心配を他所に、義成兄さんは嬉しそう
な顔をしていた。
多分、これで出世街道に乗れたと思っているのだ
ろう。

 「ねえ、ヨシナリ君。プラント支社に来ない?
  私はプラント支社で部長をやっているマリュ
  ー・ラミアスよ」

マリューさんが悪魔の誘いをかけてきた。

 「えっ、まだ新入社員ですらない僕がですか?
  」

 「ヨシナリ君、大学の状況はどうなの?」

 「実は、単位も卒論も終っていて経験を積む為
  に、地元の楠木重工の工場でアルバイトをし
  ているんです」

 「大学の行事で出席するのはもう卒業式だけ?
  」

 「はい。本当は三年で卒業出来たんですけど、
  無理やり四年通ってましたから」

 「へっ?どういう事?」

 「飛び級の人って意外と就職活動が難しいのよ
  。人事担当のオッサンとかに受けが悪いから
  ね。男の嫉妬ってやつよ。それに、隠れコー
  ディネーターだと思われるからね」

ユリカが詳しい事情を説明する。
日本では画一的で調整型の無難な新人が求められ
るので、義成兄さんはわざと四年大学に通ってい
たのだ。
この頃の大学は完全な単位制でその気になれば二
年で卒業出来るのだが、飛び級で卒業した人は海
外に職を求める事が多く、石原首相も改めるよう
に通達を出していたのだが、そう簡単に改まるも
のでも無かった。
そして、コーディネーターに地位を奪われる事を
恐れる企業の管理職や官僚などはまだ多数存在し
ていた。
最も、義成と義則はナチュラルであったが。

 「でも、カザマ君の従兄弟だけあって優秀ね」

 「弟の義則はもっと優秀です。在学二年でもう
  卒業可能なまでの単位を取っていますから。
  それに、十二歳で大学を卒業した義弘や十六
  歳でカレッジに通っている麗奈と香奈の方が
  凄いですよ」

 「よし、決めた。卒業式に出る時は日本へのチ
  ケットを取ってあげるからプラント支社で私
  達の部下として働きなさいな。仕事には早く
  慣れた方がいいわよ」

 「ラミアス部長は明日にはプラントに帰るけど
  、私達は再来週まで予定があるから、その時
  一緒にプラントへ上がりましょう。弟君も来
  年卒業したら引っ張ってあげるから」

 「本当ですか。ありがとうございます。あいつ
  、喜びますよ」

 「工場長と大学には話付けてあげるから心配し
  ないでね」

 「はい」

 「ラミアス部長の下につけますから、頑張って
  下さいね」

 「私、結婚を控えているから色々大変なの。後
  継者として育てるから頑張ってね」

 「ご期待に沿えるように頑張ります」

こうして、何も知らない義則兄さんとユリカ・エ
ミ、マリューさんの利害は一致を見たのであった

 「おい、とんとん拍子に話が進んでいるぞ・・
  ・」

 「義則も楠木重工に内定?」

 「早く、止めてやれよ!」

 「本人は大喜びだからな・・・」

事情を知らないレイナとカナは義成兄さんにお祝
いの言葉を言っているし、事情を知っている連中
は「可哀想に。新しい玩具が誕生か」という顔を
している。  

 「義成兄さんと義則ってマゾだったかな?」

 「知るか!」

こうして、義成兄さんはユリカとエミの新しい玩
具兼マリューさんの僕としてプラント支社で働く
事になったのであった。


数時間後、宴会の料理がほとんど無くなり、全員
にほどよく酒が入った所でマリューさんが俺に話
し掛けてきた。

 「みんな、お酒に弱いわね」

 「マリューさんが強いんですよ」

 「あなたも強いわね。いくつから飲んでるの?
  」

 「えーと、十六歳からですね」

 「私と同じくらいね」

 「それで、何か企んでます?」

 「ここまで酔いつぶれていると、面白い事が聞
  けるのよ。しかも、翌日ほとんど覚えて無い
  し。早速回りましょう」

 「いいですね」

 「ヨシヒロ〜。私も連れてって〜」

 「ラクス、完全に酔ってるな。いいよ、おいで
  」

 「ありがとう。だ〜いすき」

 「あらあら、愛されてるわね」

 「ええ、まあ」

 「まずは、今日話題の相羽一尉からね」

相羽一尉は早乙女三尉に膝枕をされて寝ぼけてい
た。

 「ねえ、どうして傷だらけなの?」

 「女湯を覗きにいったら見つかって・・・。そ
  れで、ホー三佐達に袋叩きにされた・・・」

 「やっぱり、覗きに行ったのか・・・。でも、
  それでホー三佐達に袋叩き?事情が飲み込め
  ない・・・」

 「「天誅!」」

酔っ払ったマリューさんとラクスが相羽一尉の顔
に蹴りを入れていた。

 「傷だらけの連中はみんなグルか?」

 「はい・・・むにゃむにゃ・・・」

 「「天誅!」」

 「おっかねえ・・・」

マリューさんとラクスはハワード一尉とホー三佐
とディアッカ、サイ、カズイと次々に蹴りを入れ
ていく。

 「次はキラ君ね」

キラはレイナとお互いに寄り掛かるようにして座
っていたが、目は半分閉じていて虚ろであった。

 「キラ、最近楽しい事はあったか?」

 「いえ、特には・・・」

 「相変わらず、反応が薄い奴だな。これからは
  どうだ?」

 「ハワード一尉がソープランドっていう所に連
  れて行ってくれるそうです。日本に来たら必
  ず行った方が良いって言うから・・・」

 「「ソープランド?」」

 「あのね・・・」

俺はマリューさんとラクスにどういう場所か説明
してあげる。

 「「「天誅!」」」

何故かレイナが加わって、三人でキラとハワード
一尉に蹴りを入れ始める。

 「ソープランドだあ?そんな所に行かなくても
  私が教えてあげるわよ!さあ、カップル風呂
  に行くわよ!」

酔っ払ったレイナはキラを引きずって宴会場を出
て行ってしまった。

 「シクシク、昔はおしとやかで何処に行くにも
  (おにいさ〜ん)って付いてきて可愛い子だ
  ったのに・・」

 「カザマ君って意外と女性に幻想を抱いている
  タイプなのね・・・」

 「次はニコルさんですね〜」

ニコルもカナとお互いに寄り掛かって半分目を閉
じていた。

 「ニコルは定期的にコンサートが開けるように
  なったんだろ?」

 「はい・・・。第一回目はお客さんも沢山来て
  くれて好調ですた・・・」

 「(血のバレンタイン)追悼集会の曲を販売す
  るそうだが?」

 「ええ、売上げは慈善団体に寄付します・・・
  」

 「うーん、隙が無いわね」

 「でも、それだと儲からないな」

 「知名度が上がってギャラが上がったんですよ
  ・・・。おかげで、多少はヘソクリも・・・
  」

 「ニコル、私指輪とバックが欲しい」

 「えっ、そんな・・・」

 「カタログを持って来てるの。部屋に行きまし
  ょう」

カナはニコルを引きずって部屋に戻ってしまった

 「この前の選考会のお返しじゃ」

 「ですわね〜」

 「次はイザークとフレイか・・・」

同じく目が虚ろなイザークとフレイがいる。

 「イザーク、日本は楽しいか?」

 「はい・・・。最高ですね・・・」

 「あんなガラクタを大量に買って・・・」

 「フレイ、あれは価値のある一品なんだ・・・
  」

 「何を買ったんだ?」

 「えーと、横山太観、丸山応挙、雪舟・・・」

 「本物である可能性が限りなく低い・・・」

 「横山太観ですよ・・・」

 「字が違うぞ。横山大観だ。まあ、偽物でもそ
  れなりの奴が書いていれば、そこそこ価値が
  あるから・・・」

 「そんな・・・」

 「明日の朝に近くの寺の前で骨董市があるから
  行ってみれば?」

 「本当ですか?よーし、早く寝て出掛けるぞー
  」

イザークはフレイを引っ張って部屋に戻ってしま
った。

 「あの子、意外と積極的ね」

 「そういう意図でやったのかな?」

 「わかりませんわ〜」

 「次は、ラスティーとシホか・・・」

ラスティーは寝ぼけていたが、シホは目が据わっ
たままで一人で手酌で酒を飲んでいた。 

 「どうかしたか?シホ」

 「ヨシヒロさん、聞きたい事があります」

 「何だ?」

 「どのくらいの頻度でラクスの胸を揉んでいま
  すか?」

 「いきなり、何を言い出すんだ!」

 「ついに貧乳仲間のラクスに胸で抜かれてしま
  いました。ここは、対策を考えないと・・・
  」

 「君、医者でしょうが・・・」

 「豊胸手術は抵抗があります・・・」

 「違う!もっとこう、長期的視野に立った対策
  を・・・」

 「そんな、夢のような対策はありませんよ」

 「シホ〜。後、数年あります〜。お互いに頑張
  りましょう〜」

ラクスがシホを慰めるが、その表情は自然と勝ち
誇った顔になっていて、二人の友情が壊れるのは
時間の問題と思われた。 

 「えーい、こうなれば行動あるのみ。ラスティ
  ー、行くわよ!」

 「ふぇ?」

シホは半分寝ぼけたラスティーを引きずって部屋
に戻ってしまった。

 「次はアスランとカガリね・・・」

 「ウケケケケケーーー!」

 「壊れてる・・・」

大量に酒を飲んだカガリは奇声を発しながら、宴
会室の床の間に置いてある信楽焼きのたぬきと対
峙していた。

 「わお、酔拳だ」

 「マリューさん止めないと」

 「カガリさ〜ん、頑張って〜」

 「ラクス、煽るなよ」

カガリがたぬきに拳を振るおうとした時、ホー三
佐が割って入った。 

 「きさま!我が師匠に何て事を!」

 「誰が師匠だよ・・・」

 「ホー三佐も完全に酔ってるわね」

 「ホー三佐〜、師匠を守るのです〜」

 「ラクス、煽るなよ・・・」

 「きえーーー!」

ホー三佐は信楽焼きのたぬきと対で置いてある龍
の鋳物に蹴りを入れた。

 「アスランをよくもーーー!」
 
 「アスランじゃ無いから・・・」

 「表に出やがれ!アスランの仇だ!」

 「望む所だ!師匠を狙う悪人め!」

二人は宴会場の窓から庭に出て決闘を開始するが
、両者共酒に酔っていて千鳥足だった。

 「ははは、最高ね」

 「マリューさん、まずいって」

 「二人共〜頑張って〜」

 「ラクス、煽るなよ・・・」

 「アスラン、カガリちゃんが大変だぞ!」

俺はアスランに止めるように言おうとしたが、ア
スランの様子も何処かがおかしかった。

 「いや、あのですね。カガリは可愛いし、愛し
  ていますよ。でもね、書類を俺に押し付ける
  のはどうかって思うんですよ。あれは、カガ
  リの仕事であって、それをカガリがやらない
  からキサカ准将もトダカ一佐も大変なんです
  よ。キサカさんもトダカさんもなかなか家に
  帰れないし、家族がいるんですよ。お子さん
  だっているんです。偶にはパパが早く家に帰
  ってくる事だって大切なんですよ。俺だって
  子供の頃は母はなるべく早く家に帰ってきて
  ・・・。ああ、父上は評議会議員の職が忙し
  くってほとんどいなかったか・・・」

 「こいつは何をブツブツ言ってるんだ?」

アスランは壊れたラジオのように延々と小声で何
かを言っていた。

 「愚痴が凄いわね・・・」

 「アスランも〜逃した魚は大きかったと〜言う
  わけですわ〜」

 「自信満々だな、ラクスは・・・」

多分、ラクスと結婚してもあの性格なので、色々
溜め込むだろうと思うが・・・。 

 「それで、決闘中の二人は?」

外を見ると千鳥足の低次元な決闘が続いていたが
、両者共にダメージすら与えられないので、ただ
の下手糞な踊りにしか見えなかった。

 「疲れ果てるまで静観ね」

 「ですね〜」

 「それで、次は?」

そのスペースは関係者以外誰も近づかない地獄の
エリアになっていた。

 「義成兄さん、大丈夫?」

 「ふぁ?らいじょうぶ」

 「あーあ。義成兄さん、そんなに飲めないのに
  」

 「支社長、副支社長。ここで寝たら風邪を引き
  ますよ」

 「うーん、自分の部屋で寝ましょう」

エミは素直に自分の部屋に帰って行った。

 「ほら、支社長も」

 「わらし、テディーちゃんが無いと寝られない
  ・・・」

 「テディーちゃん?」

 「大きな熊のぬいぐるみ」

 「ぷぷっ、二十歳にもなってぬいぐるみを抱い
  て寝てるのかよ」

 「駄目ですよ〜。笑っては〜」

ラクスは噴出したいのを抑えながら俺に注意して
いる。

 「支社長、ここに代わりのぬいぐるみがありま
  すよ」

 「わー、本当だ。これを抱いて寝よう」

ユリカは義成兄さんを引きずって部屋に戻ってし
まった。

 「義成兄さん、明日はパニック状態だな・・・
  」

 「大丈夫だって」

 「そんな、無責任な事を言う」

 「男と〜女は〜なるようにしかなりませんわ〜
  」

 「ラクス・・・」

 「えーと、次は・・・」

石原三佐とマユラはもう部屋に戻ってしまったら
しい。

 「子作りね」

 「そうだな」

 「ですわね〜」

続いて、ハワード一尉とアサギもいなくなってい
た。

 「お仕置きね」

 「ですわね〜」

 「彼も懲りないよな・・・」

 「ディアッカ君はどう?」

 「えーと・・・」

 「うーん、神様。俺に可愛くてスタイルが良く
  ておしとやかなグゥレイトな彼女を・・・」

 「神に祈っている地点で絶望的ね」

 「ですわね〜」

 「ハイネは?」

 「うーん、今日はどうにか無傷だったな・・・
  。次こそはラクス様の入浴姿を・・・」

 「こいつもグルか・・・」

 「「「天誅!」」」

俺達は三人でハイネに蹴りを入れた。

 「後は・・・・・・」

サイは普通に寝ていたし、カズイは寝言で置いて
きた彼女に謝っていたのでヘタレ扱いされていた

 
 「おーい!ミゲル、アビーちゃん」

 「おー、カザマ。どうした?」

 「駄目ですよ。ミゲルをおかしなお店に誘った
  ら」

 「そんな事しませんよ」

 「なあ、カザマ。温泉ではストリップが名物な
  んだろう?どうして行かないんだよ?」

 「わっ!バカが・・・」

 「お前は、また何か企んでいたのかーーー!」

 「うわー!御免なさいーーー!」

激怒したアビーちゃんがミゲルを部屋に引きずっ
て行った。

 「真面目な娘ほど凄くなるわね」

 「ええ・・・」
 
 「ヨシヒロは〜女性の裸が見たいんですか〜?
  」

 「はは、後で部屋でラクスのをじっくり見るか
  ら・・・」

 「は〜い」

 「今更ながら、この娘も酔うと凄いわね・・・
  」
 
 「後は、ミリィーとトールか」

二人は普通に抱き合ってスヤスヤと眠っていた。

 「この中では一番まともなカップルよね」

 「心が和むな」

 「私と〜ヨシヒロみたいですわ〜」

 「・・・・・・」

 「そして、最後か・・・」

俺達の視線の先に浴衣を着崩しながら、一升ビン
を抱えて寝ているクルーゼ司令がいた。

 「変な人・・・」

 「俺も付き合いが長くなってきたけど、この人
  だけは良く理解出来ない」

 「クルーゼ司令〜お子さんの名前を考えました
  か〜?」

 「んっ!そうだった。候補を356個にまで絞
  ったんだ。部屋で最終選択を・・・」

そう言いながら、クルーゼ司令は自分の部屋に戻
ってしまう。

 「本当に変な人・・・」

 「そう言えば、レナ少佐は?」

 「おい!マリュー。こっちに来い!」

完全に目が据わったレナ少佐が大声でマリューさ
んを呼んだ。 

 「えーと、何かしら?」

 「マリュー!あなたは私よりも一つ年下なのに
  先に結婚するし、あー、どうして私は・・・
  」

 「うっ、からみ酒・・・」

 「私の周りにはろくな男がいないし・・・って
  、ちょっと!マリュー聞いてるの?」

 「はい!聞いてます」

 「あなたはフラガ少佐がいたけど、私にはササ
  キ大尉とか下らない男ばかりで・・・」

 「ねえ、カザマ君。助けて・・・」

 「無理無理」

 「んっ!何だカザマか?何か用事か?それとも
  加わるか?」

 「俺達、子作りがあるから」

 「良く言った!正直で感心した。早く、行って
  来い!」

 「ありがとうございます。ラクス、行こうか?
  」

 「は〜い」

開き直って言った言葉で虎口を脱出した俺達はま
だ酔っているラクスを連れて部屋に戻ったが、マ
リューさんはレナ少佐の相手で一睡も出来なかっ
た事を明記しておく。


翌朝、食堂で朝ごはんを食べていたのだが、ほと
んど全員が二日酔いで動けないでいた。

 「全滅だな。みんな」

アジの開きを箸で毟りながら周りを見渡す。

 「ふっ、情け無い事だ。戦時なら全滅だな」

焼き海苔でご飯を食べながらクルーゼ司令が文句
を言っている。

 「まあ、いいじゃないですか。今は戦時では無
  いですし」

 「それもそうだな」 

 「ええ、そうですよ」

 「ヨシさん!これを見て下さい。朝早く起きて
  行った骨董市で掘り出し物を大量にゲットし
  ましたよ」

突然、イザークが俺に大量の骨董品を見せ始めた
。 

 「ガラクタですよ・・・」

早朝から付き合わされたフレイが眠そうな顔をし
ながらきっぱりと否定した。

 「いや、これは価値のある一品だ!」

 「ゴミよ!」

二人が言い争いを始めてしまったので困っている
と、旅館のご主人が割って入ってくれた。

 「どうかしましたか?」

 「寺の前の骨董市で買った物の価値についてで
  すよ」

 「私が見ましょうか?」

 「わかるんですか?」

 「ええ、多少は・・・」

旅館の主人はイザークが買った物を一通り鑑定し
て評価を下した。

 「えーと、実際の生活でお使いになられた方が
  良いと思います」

 「それって、つまり・・・」

 「お値段的にはそれほどでも・・・」

 「待ってくれ!フレイが買った茶碗があるだろ
  が!」

 「フレイ、買ったの?」

 「あんまり退屈だったから、気に入った茶碗を
  買いました」

フレイは古い木の箱に納められた茶碗を取り出し
た。

 「あっ、これ。北大路魯山人の真作だ。箱もち
  ゃんとあるし・・・」

 「あっ!俺でも知ってる人だ・・・」

 「フレイ!いくらで買った?」

 「100アースダラーで・・・」

 「最低でも五万アースダラーはするんですけど
  。お客さん、掘り出し物を見つけましたね」

 「イザーク、だってさ」

 「そんな、バカなーーー!」


イザークが落ち込みつつも大量の朝飯をヤケ食い
していた時に、マリューさんは船を漕ぎながら朝
ご飯を食べていた。

 「マリューさん、大丈夫ですか?」

 「あれから、部屋に戻って朝までよ」

 「レナ少佐は?」

 「あそこよ」

レナ少佐は朝ご飯も食べずに爆睡していた。

 「後、心配なのは・・・」

アスランは普通に朝ご飯を食べていたが、カガリ
とホー三佐は自称原因不明の筋肉痛で机に突っ伏
して唸っていた。
昨日、疲労の限界が来て庭に倒れた所を部屋に放
り込んだからだ。 

 「次は・・・」

 「義成兄さんだ!」

このテーブルは一種異様な雰囲気を放っていた。
いつもはユリカと仲の良いエミがユリカから離れ
て座って朝ご飯を食べていたのだ。
更に、ユリカは義成兄さんの腕にしがみつきなが
ら、朝ご飯を食べさせていた。
一方、義成兄さんは顔面蒼白でこの世の終わりの
ような顔をしている。 

 「おーい!エミ!」

俺は密かにエミを呼び出して事情を聞く事にした

 「あの二人、どうしたんだ?」

 「朝起きたら、二人が同じ布団で寝ていただけ
  ですわ」

 「それだけ?」

 「ユリカは運命の人だって勝手に解釈して、あ
  の通りですわ」

良く耳を澄ますと、「ヨシナリさん。はい、あー
んして」とか「ヨシナリさんはどんな料理が好き
なの?」とか日頃からは想像も出来ないような話
し方をしている。

 「あーあ、もう引き返せないぞ。彼・・・」

 「石原三佐もそう思う?」

 「彼が楠木重工の後継者になる覚悟が出来てい
  れば、悪く無いかもよ」

 「でも、義成兄さん。顔面蒼白だよ」

 「雲の上の人と同じ布団で寝てたんだ。普通の
  神経をしていたらそうなるだろう」

 「普通はクビだよな」

 「あまりにショックで気に入られている事にす
  ら気が付いていないぞ」

 「(義成兄さん。御免なさい。本当に御免なさ
  い。俺に全てを話す勇気があったら)」

結局、義成兄さんはプラントへ上がって楠木重工
に勤める事になったばかりでなく、数年後にユリ
カと結婚してしまったのだ。
この時のラクスの言葉は「遠縁とはいえ、彼女達
と親戚になってしまいましたわ」であった。
一度、ユリカに「義成兄さんはナチュラルなんだ
けど」と言った事があるのだが、「カザマ君と普
通に付き合っているんだから、そんな事気にする
人じゃないんでしょ」と答えていた。
結婚後、重役を歴任した義成兄さんはその能力の
高さとユリカとは違う優しさで、会社の内外から
「仏のカザマ」と呼ばれるようになったらしい。 

  


朝食を食べ終わった俺達は宿を出発して、お土産
を購入してからプラントへ帰国して、翌日はクラ
イン邸でゆっくりと過ごした。
こうして、俺達の新婚旅行は終わりを告げたので
あった。


(三月某日、デブリ帯内)

最高の傭兵と称される俺の今回の任務はある海賊
組織の壊滅であった。
実はこの仕事はあるプラント企業からの依頼で、
ユーラシア連合のライバル会社が雇った海賊が集
中的に輸送船を襲うので何とかして欲しいとの事
であった。

 「今日は楽勝だったな」

 「イライジャ、いかなる時も気を抜かないのが
  傭兵だ」

 「そのジンで説教されてもね・・・」

 「五月蝿い・・・」

今日も俺の「ピンクちゃん」もとい、ジンは海賊
達のモビルスーツをなぎ倒していた。 

 「おーい!ガイ!」

 「何だ?リード」

 「実は、ラクス様から・・・」

 「新装備はいらん!」

 「違うよ。新しいモビルスーツをお詫びにくれ
  るそうだ」

 「本当か?」

 「(ピンクちゃん)も引き取るってさ」

俺は嬉しさを表に出さないように必死だった。
悲しいかなブルーフレームは長期の修理中で戻っ
てくる気配は無かった。
実は、採用競争でM−1がセンプウに負けてしま
った影響で、部品がなかなか集まらないらしいの
だ。
残り少ない部品もオーブ軍が持って行ってしまう
し、モルゲンレーテ社でも部品の生産が終了した
ようでブルーフレームの前途はかなり厳しいよう
であった。

 「そうかそうか」

いつの間にか、多数のコーディネーターらしき作
業員が効率よく「ピンクちゃん」をバラして梱包
して運び出していく。

 「(色はアレだったけど、武器もアレだったけ
  ど、意外とお前は優秀なモビルスーツだった
  ぞ)」

俺は密かに二ヵ月付き合った相棒に別れを告げた

 「それで、代わりのモビルスーツは?」

 「隣りの格納庫だ。調整を頼むぞ」

 「任せろ!」

俺は隣りの格納庫に向かうが・・・。

 「おい!何でピンクのジンがまたあるんだよ!
  」

 「これが新しいお前の相棒の(ピンクさん)だ
  」

 「名前なんてどうでもいいんだ!ピンクのジン
  は止めてくれって・・・」

 「とにかく、乗ってみろよ」

 「一回だけだからな!」

俺は「ピンクさん」もとい、ジンを作動させる。

 「武器はビームライフルとビームサーベルか。
  普通だな」

ビームライフルが風花が毎週楽しみにしている魔
法少女アニメの主人公が使っているステッキに似
ていたり、ビームサーベルの鍔がお馴染みのピン
クのハート型だったり、相変わらずシールドがハ
ート型で真ん中に「ラクス LOVE」と書かれ
ていたり、光波シールドも内臓されていて、それ
を展開させるとハート型だったりとツッコミ所満
載だったが、俺はプロだ。
道具にケチをつける事は止めよう。

 「リード、このスイッチは何だ?」

 「変型スイッチだ」

 「変型するのか?」

 「(ピンクさん)は変型モビルスーツの試験機
  なんだよ」

 「これは、どう変型するんだよ?」

 「バクゥに似た形だってさ」

 「そうか」

俺は「ピンクさん」もとい、ジンを変型させてデ
ブリ帯の大きな岩の上で疾走させた。

 「ふむ、平地ではこの機動性は役に立つな」

 「ぷぷっ、そうだな」

 「どうした?リード」

 「そのまま、帰って来いよ」

 「変な奴だな」

俺は帰艦してから「ピンクさん」もといジンを降
りると、その外見に絶句してしまった。

 「ははは、金持ちのババアが抱いてるプードル
  みたいだ。あー、最高に可笑しいや!」

四足歩行で背中に二門のビーム砲と左右のペガサ
スの翼にビームの刃が付いていて攻撃力は高そう
だが、他の外見はピンクのプードルそのものであ
った。

 「これは・・・」

格納庫内ではロレッタとイライジャが引き付けを
起こしながら爆笑していた。 

 「笑うな!」

 「だって!普通、ありえないわよ。そんなの」

 「ガイ、俺は乗らないからな」

 「俺だって乗りたくないわ!」

 「でも、モビルスーツはこれしか無いんだよ」

 「何で、俺ばかりこんな目に・・・」

 「ラクス様が(ピンクさん)のガレキを後で送
  ってくれるって」

 「いらん!」

 「責任者は風花よ。文句があるならあの娘に言
  いなさい」

 「言えない・・・」

日頃、契約面や財政面で迷惑を掛けっ放しなのだ

モビルスーツを代えてくれだなんて口が裂けても
言えなかった。


 「どうも、ありがとうございました」

 「こちらこそ、最新鋭の機体と補修部品と新型
  武装まで頂いてしまって」

その頃、風花はザフト軍事工廠の責任者であるユ
ーリ・アマルフィーと会っていた。

 「一号機の(ピンクちゃん)のデータでザクの
  実戦配備が大幅に短縮されました。こちらと
  しては大助かりです。しかも、あなた達は口
  が堅いときている」

 「それで、二号機の(ピンクさん)は?」

 「あれは、変型機の運用試験機です。思う存分
  使ってください。面倒は見させて貰いますの
  で」

 「わかりました」

 「では、これが今までの報酬になります」

アマルフィー委員長は風花に小切手を渡した。

 「どの銀行でも換金出来ますので」

 「えっ、500万アースダラーですか」

 「少なかったですか?」

 「いえ」

 「では、またデータ集めの方をお願いします。
  報酬の方はまた数ヵ月後に」

 「おまかせください」

アマルフィー委員長は「ピンクちゃん」を輸送船
に乗せてプラントへ帰国した。

 「ガイ、御免なさい。モビルスーツの面倒を見
  てくれるから費用がほとんど掛からないし、
  外見はあれだけど性能は最高、こんな美味し
  い仕事は無いの。しかも、全ての仕事が終れ
  ば新品のセンプウが貰えるのよ。センプウな
  ら改良も補修部品集めも楽になるわ。それま
  で、我慢してね」

風花は一人つぶやくのであった。


(数日後、デブリ帯内)

今日も俺はデブリ帯で別の海賊を追いかけていた

 「待て!」

 「ふん、俺様のデブリ戦の腕を舐めて貰っては
  困るな」

海賊達の最後の一機のジンはカスタム化されてい
て、予想外の高速性能でデブリ帯をすり抜けて行
った。

 「しかも、ここは俺達のホームだ。部外者の傭
  兵なんぞに遅れは取らん」

 「しまった、このままでは逃げられる。本当は
  嫌なのだが・・・」

俺は「ピンクさん」もとい、ジンを変型させてか
らデブリ帯の岩や大きな障害物を義経の八艘飛び
の要領で走り抜けて行く。

 「なっ!速い!」

 「残念だったな」

俺はペガサスの羽のビーム刃で海賊のジンのスラ
スターを切り落してから、モビルスーツ体型に戻
してビームライフルを突きつけた。 

 「そのピンクのジンは・・・(ピンクの死神)
  」

 「その呼び方は禁止だ!アジトを吐いて貰おう
  か」

 「仲間は売れん!」

 「では、死ね!」

 「待て!」

 「何だ?」

 「俺とお前は仲間じゃないか」

 「ふざけるなよ!俺は傭兵だが、お前達のよう
  な悪事は働かない・・・」

 「違う!そういう事ではない」

 「では、何だ?」

 「俺とお前は同じラクス様のファンではないか
  。しかも、シールドに(ラクス LOVE)
  まで書くなんて相当なファン・・・」

 「五月蝿い!その名を口にするな!」

俺がビームライフルを発射すると、海賊の乗った
ジンは爆発してしまった。

 「ぬおーーー!カザマの野郎!覚えてろよ!」

ガイの絶叫はデブリ帯に木霊した。


        あとがき

昔から疑問だったのですが、種でニコルが死んだ
時、ブリッツの何が爆発したんだろうか?
当時、ガンダム友達の誰に尋ねても答えてもらえ
ませんでした。
次回はどうしようかな?


(追伸)通りすがりの豚様へ

あー、書き忘れてた。本人的には書いたつもりだ
ったのに・・・。
直しておきます。
ごめんなさい。


 

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