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▽レス始

「これが私の生きる道!外伝4実は俺、秋葉原って初めてなんだよね編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-26 00:42/2006-04-27 01:31)
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(2月22日午後、東京近郊のある住宅)

俺とラクスは日本政府が用意した車でお祖父さん
の家に向かった。
本当はタクシーを拾うか電車にでも乗って行きた
かったのだが、多数の報道陣に狙われているので
それだけは止めてくれと石原首相に懇願されてし
まったのだ。
石原邸をお姉さんにお礼を言ってから出て、車で
1時間ほどで東京近郊のお祖父さんの家に到着す
る。
親父は二人兄弟の次男でこの実家には長男である
叔父さんとその息子である従兄弟が二人いた。
二人は二十歳と二十二歳で俺と歳が近く共に大学
に通っていて、長男の義成兄さんは今年就職する
ようであった。

 「どうも、久しぶりです。義弘です」

 「おお、本当に久しぶりだな」

日本にいた頃には年に一回は帰っていたのだが、
プラントに上がってからは一度も帰省していなか
ったので約5年ぶりであった。

 「お祖父さんもお祖母さんも元気そうで」

 「お前に会うまでは生きていないとな」

 「そうよね」

 「またまた、そんな歳でもないでしょうが」

 「お前が嫁さんを連れて来てくれるとは思わな
  かった」

 「そうかな?」

 「まだ二十歳で結婚というのは早い方だろうし
  な」

 「プラントではそう珍しくないんだよ」

 「まるで、昔の日本みたいだな」

 「お祖父さん、話は中でしましょうよ」

綾乃伯母さんの勧めで家に上がってコタツに入る
事にする。
日本は二月でまだとても寒いからだ。

 「始めまして。ヨシヒロの妻のラクスと申しま
  す」

 「おお、可愛い娘だな。お人形さんみたいだ」

 「本当ですね。お祖父さん」

お祖父さんとお祖母さんは目を細めながら嬉しそ
うに言った。

 「テレビで見たことあるけど、実物はもっと可
  愛いわね」

伯母さんもそれに続いた。

 「なあ、義弘」

 「何です?叔父さん」

 「うちの綾乃と交換しないか?何ならお祖母さ
  んも付けるぞ」

叔父さんがその言葉を発した瞬間に伯母さんとお
祖父さん、お祖母さんに殴られていた。

 「ヨシヒロ、日本では(交換しないか?)は決
  められた挨拶なのですか?」

 「違う。俺の周りの人達がおかしいだけだ」

日本の名誉の為にそれだけは否定しておいた。


 
 「叔父さん、義成兄さんと義則は出かけている
  の?」

 「義成は就職先の工場が近くにあってな。そこ
  で、卒業までアルバイトをしているんだ。義
  則は大学の試験の監視員のバイトに出掛けて
  いる」

 「ふーん。そうなんだ」

俺とラクスはコタツに入り、みかんを食べながら
叔父さん達と話をする。
この二人の従兄弟は歳も近く、帰省した時にはい
つもつるんで遊んでいた仲だったので、早く会い
たかったのだ。 

 「ただいまー!」

玄関から声がして、誰かが帰ってきたようだ。

 「義弘、久しぶりだな。しかし、でかくなった
  な。お前」

茶の間に俺と身長が同じくらいで、体型もよく似
た眼鏡をかけた若い男性が入ってくる。

 「義成兄さん、久しぶりだな。でも、兄さんも
  俺と同じくらいの身長じゃないか」

 「お前が急速に成長したんだよ」

 「そうかな?それで、バイトはもういいの?」

 「ああ、お前が帰ってくるから早引けした」

 「すまないね」

 「気にするな。俺はお前の嫁さんに興味があっ
  ただけだ。ラクスさん、始めまして義弘の従
  兄弟の義成です」

 「始めまして、義成さん。ヨシヒロの妻のラク
  スです」

最近、ラクスは初対面の人に様付けをあまりしな
くなった。
俺が意外と他人は、特に日本人は驚く事が多いか
ら、よほど目上の人で無い限りはさん付けの方が
いいよと教えたからである。

 「この犯罪者が!十六歳の嫁さんか羨ましいな
  」

 「プラントではそう珍しくないよ」

 「俺、プラントに移住しようかな」

 「ただいま!」

そんな話をしていると、また若い男性が帰宅して
きた。

 「外に沢山の報道陣がいてさ。俺にフラッシュ
  焚いてどうするんだよって!義弘やっぱり来
  てたんだ」

 「おうさ!元気そうだな。義則」

髪を茶色に染めた俺になんとなく似ている、俺と
同い年の従兄弟の義則が挨拶をしてくる。 

 「始めまして。ヨシヒロの妻のラクスです」

 「始めまして、義弘の従兄弟の義則です。ヨロ
  シクね。しかし、可愛いな。お前、犯罪だぞ
  。これは!」

 「兄弟して同じ事を言うな」

 「兄弟だからな」

 「納得」

挨拶を終えた俺達は他の話をする。

 「義成兄さん、どこに就職するの?」

 「楠木重工だ」

 「えっ!楠木重工・・・」

 「世間って狭いですわね・・・」

 「何だ?どうしたんだ?」

 「兄貴、義弘は楠木重工の会長の孫と戦友だっ
  たと思うが」

 「ああ、そうか。ユリカ様とエミ様は自衛隊で
  パイロットをしていらっしゃったからな。今
  回の帰国は報道陣の注目の的だったし。まあ
  、お前達ほどでは無かったけど」

 「義弘はあの二人を良く知っているんだろう?
  」

義則に二人の事を聞かれるが、俺は真実を話して
良いものか悩んでしまう。

 「よーく、知ってるよ」

 「楠木重工は学生の就職希望ランキングでここ
  5年ほどベスト5をキープしている優良企業
  なんだぞ。ユリカ様は「血のバレンタイン」
  追悼集会で見事な歌声を披露されたし、エミ
  様はモデル顔負けのスタイルでとても美しい
  方なんだ。そんな方が将来社長になる会社に
  就職できるなんて最高に幸せだな」

 「ヨシヒロ、知らないって幸せですわね」

 「しーっ!どうせ、二人に会う機会なんて無い
  んだから黙っていようよ」

 「うーん、俺も就職活動の時は髪の色を戻して
  楠木重工に就職しようかな」

どうも、あの二人の本性を知っているのは自衛隊
関係者と俺達だけのようであり、マスコミには一
流企業の美少女役員二人組のイメージが先行して
いるようだ。
これでは、俺が事実を教えても二人に否定されて
しまうかもしれない。

 「まあ、それに気が付いたら転職すればいいん
  だよな」

俺はそう思って自分を誤魔化す事にした。


 「実は相談があるんだけど・・・」

俺は義成兄さんの部屋で秋葉原探索計画を相談し
た。
この時、ラクスは夕食の準備をしている伯母さん
とお祖母さんの手伝いをしていて、この部屋には
俺と義成兄さん、義則の三人だけであった。

 「うーん、お前は厳しいよな」

 「やっぱり?」

 「報道陣が多いからな」

石原首相が俺達に過激な取材が殺到しないように
、報道関係者は50メートル以内に接近禁止の命
令を出したので俺達に被害は出ていないが、先ほ
ど伯母さんが買物に行ったスーパーの店員に何を
買ったのかまで聞いていたようなので、俺が秋葉
原に行くと迷惑が掛かってしまうかも知れなかっ
た。

 「俺が探して止まない、エヴァの限定版DVD
  BOX、エ○ア88の初版本セット、GS美
  神○楽大作戦の初版本セット、鋼の○金術師
  の初版本セットなど欲しいものがあそこには
  あるんだ!ネットオークションでは高すぎて
  手が出ないが、現地で現金で交渉出来れば・
  ・・」

 「うーん、俺もドラ○エ困鉢爾硲董靴筏譽
  レ○テのFFコレクションのカセットとディ
  スクが・・・」

義成兄さんはレトロゲームコレクターであった。

 「俺はザフト対地球連合終戦記念新発売のモビ
  ルスーツのガレキが・・・」 

義則はプラモ、ガレキコレクター兼モデラーであ
った。

 「そうだ!大丈夫だよ。兄貴!」

 「どうしてだ?」

 「ほら、明日はあれがあるから」

 「そうか!俺達は何時もは騒がしいから行かな
  いけど、マスコミを避けるには・・・」

 「何?」

 「えーと、これだ!」

義則が俺にインターネットのあるホームページを
見せる。

 「えーと、第3回ネオ秋葉原カーニバル。世界
  中からコスプレイヤーが集結するばかりでな
  く、各店舗も大安売りを開催中!一般の方も
  奮ってご参加ください」

 「最近始まったお祭りでな。秋葉原の中ならコ
  スプレ可っていうお祭りだ。当然、屋台等も
  出るし、お店はどこも大安売りをする。コス
  プレ割引を行う店もあるくらいだ。俺は目的
  の物は静かに買いたいんだが、これにコスプ
  レして買物に回れば・・・」

 「でも、取材が厳しいのは一緒だろう」

 「ところが、そうでもない。この祭りには日本
  の政財界の若手や大物芸能人、世界各地から
  も大物が多数お忍びで参加しているから、マ
  スコミへの規制がかなり厳しいんだ。当日、
  俺達を追いかけて秋葉原の祭りエリアに入ろ
  うとしても、一週間前に許可を得たマスコミ
  関係者でないと入れないらしい。連中も、お
  前が秋葉原に行くなんて想像していないだろ
  うしな」

 「そこに入ってコスプレで誤魔化すか。いい手
  だと思うけど、急にコスプレなんて・・・」  

 「義弘はあれを着ればいいんだよ」

義成兄さんが楽しそうに笑いかけてきた。


次の日の朝、俺達は叔父さんの家でコスプレ衣装
に身を包んだ。

 「ザフトの指揮官服ね。ザフトの指揮官に変装
  するわけだ」

俺はザフトの白い指揮官服に身を包んだが、当然
これは本物ではない。 

 「まあ、本職だけど。回りの連中は本物とは思
  うまい」

 「それで、義成兄さんと義則はザフト軍の赤服
  ねえ。何処で手に入れたんだよ」

 「材料まで正確に調べて作っている会社がある
  んだよ。だから、本物とそう変わらないはず
  だ」

 「見分けがつかない・・・」 

 「だろ。しかし、お前は様になっているな」

 「本職だからね。それで、ラクスは?」

 「今着替えている」

 「女の子の衣装も持っているのか?」

 「コスプレイヤーの友達に借りたんだよ」

 「ヨシヒロ、どうですか?」

隣りの部屋で着替えていたラクスが着替え終わっ
て出てくる。

 「おー!アビーちゃんみたいだ」

ラクスは緑の女性用の軍服に身を包んで出てくる

ラクスのタイトスカート姿はとても新鮮でこれは
嬉しい誤算であった。 

 「良く似合っているよ」

 「うーん、俺の友達より似合っている」

 「何着ても似合うんだな。さすがは、元アイド
  ル」

 「ありがとうございます。でも、あの衣装も着
  てみたかったですわ」

 「あれって、あれ?」

 「はい」

ラクスは何故か例の陣羽織を持ってきていて、そ
れを着たいと言ったのだが、「何のコスプレかわ
からないから却下」と義成兄さんに止められてい
たのだ。

 「そっちの方が似合っているから」

 「ヨシヒロがそう言うなら。でも、このまま出
  掛けて大丈夫ですか?」 

 「ロングコートを上から羽織って出掛けるんだ
  よ。そして、秋葉原駅のロッカーに荷物を預
  ける。これが、この祭りに参加するコスプレ
  イヤーの常識になっている」 

 「では、出掛けますか」

俺達は上にロングコートを羽織ってから出掛ける

最寄の駅から秋葉原まで一時間ほどで到着して、
ロッカーにコートを預けてから祭りの会場に直行
した。

 「うわー!すごいな」

 「世界規模のお祭りになってしまったからな」

秋葉原はここ数百年で大きく変化していた。
駅を降りると、様々なジャンク屋がパソコン・無
線等のの部品からモビルスーツの部品まで売って
いる「ジャンク品街」とアニメ・ゲーム関係の様
々な商品を売っている「新オタク街」、そして、
俺達が目指している「回顧主義街」の三つに別れ
ていてそれぞれが何百店ものお店を経営していた
。 

 「回るのに一日掛かるな」

 「今日はお祭りで屋台も出ているし、車の通行
  は完全にストップして道路は歩行者天国にな
  っている。人での多さも通常とは比べ物にな
  らない」

確かに沢山のコスプレイヤーや普通の親子連れな
ど何万人もの人で賑わっているようだ。

 「この二日間で一年の売上げの10%を稼ぐそ
  うだ」

 「そいつは凄い」

色々なお店を回りながら義成兄さんに詳しい事情
を聞く。
ラクスは初めて見る光景に目をキラキラさせなが
ら見入っていた。

 「ラクス、面白いかい?」

 「はい、色々な物があるんですね」

 「何か買ったら?」

 「そうですわね」

そんな話をしながら俺達は「ジャンク品街」に移
動する。

 「義則、ここで何か買うのか?」

 「ジオラマ用のジャンクパーツとか金属片を買
いにね。本物の材料を削りだした方がリアル
  になるから」

 「ふーん」

義則が入ったお店には多数のジャンク品が転がっ
ていたが、大半は何に使うのかわからないような
ゴミばかりであった。

 「武器の類は無いよな。さすがに」

 「銃刀法違反だからね」

 「あれ?これはジンのセンサーだな。何に使う
  んだ?」

 「ああ、これは防犯センサーとして使うんだよ
  。軍事用で精度が良いし、モビルスーツの部
  品を使っているっていうだけで嬉しい人は多
  いんだ」

 「このシグーのコックピットシートは?」

 「純粋に椅子として使うんだ。結構人気あるん
  だよ。モビルスーツのシートは」

 「センプウの部品は少ないな」

 「あれはフェイズシフト装甲が使われているか
  ら高いんだよ。ジャンク屋も装甲を剥ぎ取っ
  て売るだけで 結構な金額になるからここに
  は持ってこないし」

 「俺もオタクだが、こっちの方面の事は理解し
  ずらいな」

 「でも、すぐに何の部品かわかるんだな」

 「仕事だからね。簡単な整備くらい出来ないと
  前線ではつらいし」

 「さすがは、プロの軍人だ!」

義則の買物が終ったので、次のお店に向かう。

 「義成兄さん、ここは?」

 「俺の愛する(回顧堂)本店だ!最も、ここに
  しか店舗は無いが」

 「(回顧堂)か」

お店に入ると、多数の古い玩具や漫画本やグッズ
で溢れかえっていた。

 「お前の探しているのもはここにある!」

 「やったー!」

 「ヨシヒロ、あまり無駄遣いをしてはいけませ
  んよ」

 「わかってるって!」

俺は自分の欲しいもの探索を開始した。

 「義弘は相変わらずガキだな。俺も変わらない
  けど」

 「可愛いではありませんか」

 「あいつ、俺達と家族以外には壁を作ってやけ
  に大人びていたからな。ラクスさんの前であ
  あいう態度を見せるって事は君の事を信用し
  ているんだね。安心したよ」

 「そうですか?最近では沢山の友達の前でああ
  いう態度を取りますよ」

 「友達が出来たみたいだな。昔は俺達とレイナ
  、カナくらいだったんだけど。しかも、俺達
  は遠くに住んでいてなかなか会えなかったし
  」

 「今は毎日が楽しそうですよ」

 「そうか。ラクスさん、これからもあいつの事
  を頼むね」

 「はい」

 「さて、湿った話はここで終わりにして俺も目
  的の物を探すか」


俺はショーケースに入った高額商品の値段交渉を
開始した。

 「エヴァ○ゲリオ○限定版DVDBOXだ。保
  存状況は最高で付属品も全部付いている。こ
  れは五万アースダラーだが、4万5千アース
  ダラーに値下げしよう」

 「ふむ、確かに付属品が全部揃っているし、保
  存状態も今まで見た中では最高の一品だ。4
  万アースダラーなら買おう」

 「4万3千アースダラーだ」

 「今、現金で4万アースダラーを払う」

 「交渉成立だ」

ザフト軍の指揮官服に身を包んだ俺と、祭り期間
の為に地球連合軍の将官服に身を包んだ「回顧堂
」のオヤジが値引き交渉をしている姿は先の大戦
を彷彿とさせる物であった。

 「次は鋼の○金術師初版本セットだ。これは3
  万アースダラーで・・・」


 「やったー!ドラクエ困離セット発見!おお
  !500アースダラーか!安いぞ!」


 「これは幻の(ノー○ラス号)のガレキ・・・
  。こんなに古いものがこの保存状態の良さ!
  これは買いだ!」


 「宇宙のス○ル○ィアのDVDBOXだ。これ
  は、2万5千アースダラーで・・・」


 「うおー!アイ○クライ○ーとマリ○ブラ○ー
  ズのファミコンカセットがこんな所に・・・
  。これは、買いだ!」


 「これは!限定版○ンクーガのガレキではない
  か!イベント限定品で数が少ないこの一品が
  !」

 「昔の方が男の大人と子供の違いは玩具の値段
  だけだとは言っていましたが・・・」

ラクスは三人の熱中振りに少しあきれてしまった


 「義則、次は何処だ?」

俺と義成兄さんは目的の買物を済ませたので、次
は義則の一番目当てのお店に行く事にした。

 「秋葉原とは少し趣旨が違うかも知れないけど
  、義弘も楽しめると思うよ」

そう言って義則はある雑居ビルの地下にあるお店
に俺達を案内した。

 「(番第屋)・・・。ネーミングが微妙だな」

 「ここは、オリジナルガレージキットの専門店
  なのさ」

 「おっ!風間君、来てくれたか」

 「今回の新発売キットは外せないでしょ」 

義則は「番第屋」の店主と知り合いのようで、こ
この店主は三十歳前後でまだ若かった。

 「紹介するよ。兄貴の義成と従兄弟の義弘とそ
  の奥さんのラクスさんだ」

 「へえ、あの話題の(黒い死神)と元歌姫さん
  がこんなお店に来てくれるとは驚いた」

 「だから、言ったろうが。本当に従兄弟だって
  。家の近くに大量の報道陣が詰め掛けて大変
  なんだから」

 「それで、ネオ秋葉原祭りか。事前に許可を取
  らないとマスコミは入れないからな。無断で
  入るとボランティアの自警団に追い出される
  し」

 「そういう事」

 「あの、店長さんは私達を見ても驚きませんの
  ね」

 「ああ、うちは小さいお店だけど、有名人の客
  には慣れているから」

そう言った店主が店のある一角を指差すと多数の
有名人と撮った写真が張り出されていた。

 「確かに凄いな。政治家・大企業経営者・歌手
  ・俳優・作家・漫画家・・・」

 「あれは、アルスター外務長官では?」

 「あっ!本当だ」

 「ああ、アルスターさんは昔からのお客さんで
  ね。あの人第二次世界大戦時の艦船コレクタ
  ーだから」

 「それで、度々日本に来ていたのか」

 「そんな話は放っておいて新発売のガレキを見
  ようぜ」

義則が急かすのでガレキを見てみる事にする。

 「えーと、地球連合軍対ザフト軍終戦記念シリ
  ーズ新発売ねえ・・・」

 「まあ、お船が沢山ありますわ」

 「本当だ。連合のネルソン級戦艦にドレイク級
  護衛艦、アガメノン級MS搭載空母にニミッ
  ツ級の原子力空母、フレッチャー級の駆逐艦
  、パンデクリフト級強襲揚陸艦と自衛隊の護
  衛艦、イージス艦、(あかぎ)級の航空護衛
  艦、オーブの(タケミカヅチ)に護衛艦、そ
  して、ザフトのローラシア級巡洋艦にナスカ
  級戦艦にエターナル級高速戦艦か・・・。え
  っ!(ゴンドワナ)と(アークエンジェル)
  まで?(ドミニオン)もあるのか・・・」

 「報道映像を詳しく解析して最新の技術で細部
  まで再現しているからな。最近では社員が基
  地の見学に出掛けまくっているし、オーブ戦
  時には社員を報道部員として派遣もした。う
  ちの社員はリアルな作品の為には命を惜しま
  ん!」

 「・・・・・・」

あまりの事に言葉が出ない。

 「そうだ!あんたの機体もあるんだよ」

 「えっ!俺の?」

店主が指差した方向を見ると、沢山のモビルスー
ツのガレキが見えた。

 「えーと、今次大戦で数百年ぶりに登場したエ
  ース特集か」

 「ボタン戦争時代には予想もしなかった、鋼鉄
  の巨人を操る数多のエース達。特にザフトは
  パーソナルカラーとカスタム化で味わいのあ
  る機体が多いから人気が高いんだ」

 「あっ、俺の黒いジンだ・・・」

左肩を赤くした黒いジンが見える。

 「しかし、良く出来ているな」

 「当たり前だ。うちの売りはリアルな造形だか
  らな」

 「でも、少し肩の形が・・・」

 「何!何処が違うんだ?」

 「いや、それほどの違いは・・・」

 「駄目だ!うちの売りであるリアリティー感の
  喪失に繋がる重大な欠点だ!頼む、教えてく
  れ!」

店主が必死に懇願してくるので、俺は細かく教え
てあげる事にする。

 「ありがとう。君はこのお店の恩人だ。何か好
  きなガレキを進呈しよう」

 「えーとねえ。じゃあ、これ」

俺は「黄昏の魔弾」と「オレンジハイネ」特集の
商品の中からオレンジ色のジンとオレンジ色のデ
ィンを選んで包んで貰う事にした。

 「食べ物とかよりも、こっちの方がお土産とし
  ては面白そうだな」

 「有名なエースと同期で知り合い。羨ましい・
  ・・」

 「みんなの機体も探すか」

俺は特設コーナーでみんなのモビルスーツを探す
事にする。

 「うーん、ミゲルはさっきの(ジンカスタム)
  と(ブリッツ改)と最後に乗った(ブリッツ
  ジャスティス)か。良く調べてあるよ」

 「我々の情報網は連合にもプラントにも存在す
  るのだ。モデラー魂は永遠に不滅です!」

 「一応、軍事機密なんだけど・・・」

 「我々は兵器の造形美にしか興味が無い!」

 「あっ、そうですか。次はハイネか。オレンジ
  色の(ディンカスタム)と(センプウカスタ
  ム)と(ジャスティス)か」

 「我々に不可能は無い!」

 「後は、アスラン達か・・・」

 「彼らには二つ名は付いていないが、有名な若
  いエース達だからな」

 「アスランは(ストライク)と(ジャスティス
  通常動力機)と(ジャッジメント)でニコル
  は(イージス)と(ジャスティス通常動力機
  )と(リジェネレイト改)か・・・」

 「ニコル・アマルフィーは先日の(血のバレン
  タイン)追悼集会のピアノ演奏で人気に火が
  付いた。音楽家兼パイロットという事で女性
  モデラーのハートをばっちり掴んでいる」

 「確かに在庫が少ないな。でも、女性モデラー
  ってそんなにいるの?」

 「町を歩いている普通の高校生・専門学校生・
  大学生・OL・ナース・メイド喫茶のメイド
  さん・キャリアウーマン・主婦などの中に一
  定数存在しているのだ!彼女達の部屋には塗
  装スペースが確実に確保されている!」 

店主のあまりの力説に多少引いてしまう。

 「ラスティーは(デュエルアサルトシュラウド
  装備型)と(ドレッドノート)と(ドレッド
  ノートエクスペディション)まであるのか」

 「彼は大企業の御曹司なので人気が無い!」

 「そんな理由で・・・。それで、イザークは(
  シグーディープアームズ)と(デュエルアサ
  ルトシュラウド装備型)と(ジャスティス通
  常動力機)と(リベレーション)ね。ディア
  ッカは(バスター)と(フリーダム通常動力
  機)と(フリーダム供砲」

 「イザーク・ジュールは並の人気だな。ディア
  ッカ・エルスマンは砲戦主体の機体が多いか
  ら通好みだ」

 「通好みね。シホのガレキが無いな」

 「彼女は紅一点なんだが、機体に特徴が無くて
  な。こんな事くらいしか出来なかった」

店主が持ってきた普通のシグーディープアームズ
のガレキにシホの紹介が書いてあった。

 「確かに、初めて(シグーディープアームズ)
  でテストをしたのはシホだけど、その事を知
  っているとは・・・」 

ここの店主は俺ですら忘れかけている元部下の搭
乗機の変遷を正確に掴んでいるようだ。

 「こんなのもあるぞ」

店主は「ジンハイマニューバ」のガレキを持って
くる。

 「この性格破綻者のキットまであるのか」

 「(ドクター)のこの機体にはマニアがいるか
  らな。ラウ・ル・クルーゼとマニアの間では
  双璧と呼ばれている」

 「クルーゼ司令?」

 「(シグー)(ゲイツ)(フリーダム通常動力
  機)(ジャスティス通常動力機)、(プロヴ
  ィデンス)(プロヴィデンス二号機)のキッ
  トが発売されている。売上げも上々だ」

 「よくわからない世界だ・・・」

その後、オーブ軍のカガリの「暁」、マユラの「
ストライクルージュ改」、アサギの「Bストライ
ク」、ホー三佐の「レイダー改」キラの「フリー
ダム」を見つける。

 「キラのフリーダムはオーブ扱いか?」

 「オーブ軍の紋章が入っているからオーブ軍扱
  いだ。実はフリーダムはこれが一番売れてい
  る」

 「ふーん」

次は連合でモーガン大佐の「ストライク改」と「
レイダー改」、フラガ少佐の「メビウスゼロ」と
「108ストライク」、レナ少佐の「デュエルダ
ガーフォルテストラ装備機」と「核動力型ソード
カラミティー」なども置いてあった。

 「連合軍の防諜は大丈夫なのか?」

 「戦後、アズラエル派を糾弾する過程で核動力
  機の情報が公開されたからな。そのデータを
  参考に・・・」

 「うーん」

更に奥の棚を見ると、シンの「シップウ」とユリ
カとエミの「センプウ核動力機」が見え、石原三
佐の「ジンプウ核動力機」と相羽一尉の「シップ
ウ核動力機」も見えた。

 「ロングダガー、カラミティー、レイダー、フ
  ォビドゥン、ストライクダガー、デュエルダ
  ガー、バスターダガー、ディープフォビドゥ
  ン、フォビドゥンブルー、オーブのM−1と
  ザフトの量産機も揃い踏みでユーラシア連合
  のハイペリオンまであるのか」

 「フォビドゥンブルーは(白鯨)ことジェーン
  ・ヒューストン大尉の機体でハイペリオンは
  別バージョンでケナフ・ルキーニ大尉の機体
  もある。彼は優勢な自衛隊機を相手に奮戦し
  て(シベリアの守護神)の二つ名で呼ばれて
  いる」

 「もはや、何でもありだな」

 「まあ、我が家の(エンジェルボイス号)があ
  りますわよ」

 「本当?ラクス」

 「はい」

 「これは?」

 「リクエストに答えて急遽販売が決まった。こ
  のガレキには歌姫の塗装済みフィギュアも付
  いている」

 「・・・・・・」

俺とラクスは深い世界に驚いてしまった。

 「おや?これは、ガイのブルーフレームか?」

 「そうだ!伝説の傭兵ムラクモ・ガイの機体を
  世界で始めて商品化したものだ」

 「その情熱には恐れ入るよ」

 「でも、最近の機体はありませんのね」

 「最近?」

 「ええ、ピンクのジンに乗って世界中で活躍し
  ていますわ」

 「それは、初耳だ!是非とも商品化したい!」

 「私が差し上げたモビルスーツですので資料を
  お送りしますわ」

 「ありがとう!ラクスさん」

こうして、本人の預かり知らぬところで「ピンク
ちゃん」は商品化が決まったのであった。

  


「番第屋」で買物を終えた俺達は昼食をとる事に
する。

 「さて、目的の物は入手したし、後は昼飯を食
  べて屋台でも回ろうぜ。祭りなんだからさ」

 「それがいいな」

 「そうだね」

 「私も賛成です」

義成兄さんの提案に義則、俺、ラクスが賛同する

 「あの、買った物は何処にあるんですか?」

 「ああ、持ち歩いて地面に落したり他の人の荷
  物と接触させて壊すと嫌だから全部郵送して
  貰うんだよ」

今時のオタクは紙袋を持ったり、リュックを背負
わないようだ。

 「俺もそう」

義則は異常な量のガレキを買ったので、持ち歩く
のは不可能だ。

 「俺もクライン邸に送った。お義父さんには予
  め、事情を説明してあるから」

 「どれほど、買ったんですか?」

 「三十万アースダラーほど・・・」

 「おい!何でそんなに金を持っているんだよ!
  」

 「株を少々」

 「本当か?」

 「楠木重工の株を沢山持っていたからユリカと
  エミに高値で売りつけた。(外資の連中が買
  占めをやっていたからそちらに売るよ)って
  言ったら高く買ってくれた」

 「それ、脅迫だろう?」

 「違う!外資が株の買占めを行っていた事は事
  実だ」

 「俺の就職する会社なのに・・・」

 「結果としてユリカとエミに渡ったんだ。これ
  は良い事だろう」

 「そうなんだけど、釈然としないな」

その後、俺達は軽く昼食を取ってから、屋台を回
る事にする。

 「色々なお店がありますのね」

ラクスは綿菓子を食べながら、俺達はイカ焼きと
タコ焼きと焼きそばを食べながら歩き回っている
と、大きな人だかりが出来ていた。

 「何だ、あれ?」

 「さあ?」

義則が周りの人に聞くと、コスプレコンテストが
行われるようだ。

 「優勝商品は車だって!俺、欲しかったんだよ
  」

 「維持費は出せるのか?」

 「まあ、何とか・・・」

 「二人で出て、どっちかが優勝したら共有しよ
  うぜ」

 「よーし!優先権は優勝した方って事で」

義成兄さんと義則は勇んで予選会場に出掛けてい
った。

 「うーん、そう簡単に勝てるものかな?」

 「さあ?」

俺とラクスは飲み物を購入してから、会場の前の
方に場所を取る事にする。 

 「いやー、予選落ちしちゃった」

義則は予選落ちしてしまったようだ。

 「兄貴と同じ格好だし、義弘に変装しています
  って言ったら、髪の色が違うって言われちゃ
  って」 

 「義成さんはどうしました?」

 「兄貴は義弘に結構似ているから、予選を通っ
  て本選に出場するよ」

 「へえ、凄いね」

 「そう言えば、ヨシヒロと義成さんは良く似て
  いますわ」

ラクスに言わせると顔はそうでも無いけど、背格
好・髪型などが同じで雰囲気的に似ているそうだ

 「優勝は無理かも知れないけど、2位のバイク
  か3位のパソコンが貰えれば」

義則がそんな事をブツブツと言っていると、会場
に司会者が現れて本選が始まった。

 「では、第三回コスプレコンテストを開催しま
  す。選手入場!」

司会者の宣誓で参加者が次々に入場してくる。

 「義成兄さんは5番だな」

 「あの、10番の方なんですが・・・」

ラクスの指摘で最後の10番の出場者を見ると、
ザフトの白い指揮官服を着た銀髪のオカッパ頭の
青年が見えた。

 「ぶーーーーーーっ!」

俺は口に含んでいたウーロン茶を噴出してしまい
、それが義則に直撃した。

 「義弘、汚ねえな!」

 「すまん。イザークか?」

 「みたいですわね」

それは、間違いなくイザークのコスプレしている
誰かでは無くて、イザークそのものだった。 

 「何してるんだ?あいつ」

 「私に車をプレゼントする為です」

 「おや?フレイか?」

 「ヨシヒロさん、こんにちは」

フレイに事情を聞くと、昨日休暇を取って日本に
来たのはいいが、美術品購入で予算を使い切って
しまってフレイにプレゼントすら買えない状態に
なってしまったらしい。

 「本当、バカだよな。イザークは」

 「これで、車をプレゼントしてくれたらチャラ
  って事にします」

 「優勝は難しくない?」

この手の大会は女性が有利と相場が決まっている
からだ。
美少女がコスプレをした方が見る方も楽しいと思
うし。

 「では、結果発表です!」

参加者に話を聞き終えた司会者が審査員に発表を
促す。

 「優勝は7番の方です!」

 「やっぱりね」

優勝者はピンクのメイド服を着たかなりの美少女
が持っていってしまう。
彼女は秋葉原のメイド喫茶で大人気の女の子らし
い。

 「第二位は10番の方です!」

 「えっ!イザークが二位?」

 「やったー!通学用のバイクをゲットだ!」

バイクをプレゼントされる事になったフレイが大
喜びをしている。

 「やるな、イザーク」

 「義弘の同僚なんだろ。プロじゃんか」

 「まあ、そうなんだけど」

 「第三位は4番の方です」

 「あーあ、駄目だったか。義弘とラクスさんが
  出ればあるいは・・・」

 「アホ!俺達が出たら大混乱になるだろうが!
  」

 「それは、そうなんだけど・・・」

義則は諦め切れない様子であった・・・。


 「早めに休みを取ってフレイとデートをしてい
  ました」

コンテスト終了後、イザークとフレイも誘ってメ
イド喫茶でコーヒーを飲む事にするが、イザーク
はメイドさんに「ご主人様お帰りなさいませ」と
言われると、かなり混乱していたようだ。
ラクスは正真正銘のお嬢様なので、「メイドとし
ては教育がなっていません」と正確な論評をして
いたが。

 「それで、美術品の買い過ぎでプレゼントすら
  出来ないのか」

 「でも、バイクをプレゼント出来ましたから」

 「確かに、銀髪のイザークは審査員受けが良い
  か」

 「休みを取って来た甲斐があったというもので
  す」

イザークは普段はクソ真面目なのだが、フレイが
絡むと少しその判断基準が狂うようである。

 「ディアッカは?」

 「明後日の朝に温泉で直接待ち合わせています
  」

 「ふーん、そうか」

どうも、俺を真似てディアッカに仕事を押し付け
てきたようだ。

 「明日はヨシさん達はどうするのですか?」

 「叔父さん一家やお祖父さんとお祖母さんで近
  くの人造湖へマス釣りとバーベキューに出掛
  ける」

 「二人共、一緒にどう?」

義成兄さんがフレイとイザークを誘う。

 「いいですね。行きましょう」

 「私も行きます」

 「じゃあ、家に泊まって行け」

 「「はい」」

こうして、俺達は秋葉原を堪能した後にイザーク
達を連れて叔父さんの家に帰ったのだが、イザー
クは叔父さん達に土下座をして挨拶したり、コタ
ツを見て大喜びしたり、北海道土産の熊の木彫り
を物凄く欲しがったりと、変な外人ぶりを発揮し
ていたのであった。

 「この掛け軸には富士山が書かれているのか。
  日本に家には沢山の芸術品が飾ってあるんだ
  な」

 「イザーク君。これは、安物だから・・・」

 「この布袋様は誰の彫刻ですか?」

 「いや、これは旅行のお土産で・・・」

 「日本文化って素晴らしい!」

 「義弘。お前の部下は変わっているな・・・」

叔父さんは俺にそっとつぶやくのであった。


翌日は叔父さんの家族全員とイザーク達で近所の
人造湖に出掛けてマスを釣ったり、バーベキュー
をしてそのマスを焼いて食べたりして一日中楽し
く過ごした。
そして、次の日の朝、俺達は叔父さん達に別れを
告げてから、約束の温泉宿に向かって出発した。

久し振りに大勢で集まるこの集会でどんな事が起
こるのかはまだ誰にもわからなかった。


(3月初旬、日本海○島近海)

最高の傭兵と呼ばれた俺の今回の任務はある目標
に対しての夜間の隠密狙撃であった。
この島は数百年前から日本と朝鮮がお互いに自分
の領土だと主張してきた島であり、その領有を巡
ってにらみ合いが続いていたのだ。
昔は感情的な朝鮮が勝手に不法占拠をしていたの
だが、様々な歴史の変遷によって現在では双方が
人や物を送らず、何も建てない事で合意していた
のだが、数ヶ月前の対馬を巡る戦闘で状況が一変
した。
あの大敗北に危機感を覚えた朝鮮の大統領が再び
○島の領有を宣言して勝手に監視塔を建ててしま
ったのだ。
流石に、この件には日本も腹を立てて新国連に提
訴した。
新国連はとりあえず監視塔の撤去を朝鮮に勧告し
たのだが、聞く耳を持たないで事態は全く改善し
ていなかった。

 「そういうわけで、この監視塔を二式改狙撃銃
  で吹き飛ばしてくれ。この狙撃銃は(ヤマタ
  ノオロチ)を改良して使い易くした物で、マ
  ダガスカル共和国のマリア少将が使用して数
  多の敵機を落しているものと同じものだ」

自衛隊から派遣されてきた将校が任務内容を説明
する。

 「そんな姑息な手を使わずに、自衛隊を派遣し
  て占領すればいいだろう」

 「こんなちっぽけな島の為に、戦争を再び引き
  起こせと?」

 「自国の領土も守れない国は国としての資格が
  無い」

 「耳が痛いな。だが、今更この島を実行支配し
  なくても大きな損失が無いのも事実だ。国際
  的な常識ではこの島はほぼ日本のものだと認
  められているし、○島の近海は自衛隊の艦船
  で封鎖されている」

 「じゃあ何故、監視塔が建てられた?何故、
  俺が狙撃する?」

 「三日前、自衛隊の封鎖網を強行突破した朝鮮
  海軍の駆逐艦が強行接舷して物資と人員を下
  ろして一日で建設を終えたものだからだ。臨
  検して止めれば済む問題だったのに、艦長が
  戦闘になる事を恐れて通してしまったのだ。
  次に人員は全員特殊工作員で監視塔を建造後
  、水中バイクで逃走してもういないのだ。そ
  して、君が狙撃する理由は簡単だ。自衛隊が
  やると角が立つからだ」

 「状況的に見て俺がやっても関与が疑われて当  
  然だろう?」

 「だが、決定的な証拠は存在しない。君が監視
  塔を壊せば○島は元の何も無い島に戻り、自  
  衛隊艦船が周囲の監視を続けていく事になる
  。平和に元通りになるわけだ」  

 「何とも、まどろっこしい話だな」

 「昔は大陸棚の資源とか漁業権の問題があって
  引けなかったのだが、今は資源は宇宙から格
  安で来るし、漁業権も自衛隊監視の下で無事
  に守られている。それに、今の漁業の主力は
  養殖産業だしな」

 「○島には何も無い。日本と朝鮮が権利を主張
  しているが、周りの海域は日本が実行支配し
  ている。奇策で建てられた監視塔を自衛隊が
  狙撃すると色々五月蝿いから俺にやらせる事
  にした。簡単に言うとそういう事か?」

 「当たりだ」

 「だが、どうやって狙撃する?島なんだぞ」

 「この工作船にMS用の水中バイクを用意して
  ある。それに乗って○島に接近して監視塔を
  狙撃。成功後、これから教える地点に迎えの
  工作船がいるから回収して貰ってくれ。そこ
  で報酬を渡すから」

 「うむ、俺のブルーフレームは水中でも大丈夫
  だからな」

 「あれ?ジンを使うのでは無いのか?」

 「ああ、イライジャのジンは整備中で使えない
  から俺のブルーフレームで・・・」

 「いや、それでは無くて・・・」

工作船の格納庫でイライジャとリードが「ピンク
ちゃん」の準備をしていた。 

 「おい!何で隠密任務にこのジンを使う?」

 「これしか無いからだ。それに、ブルーフレー
  ムは本格的に修理に出す事にした。もう、プ
  ロの修理屋に任せないとどうにもならん」 

 「夜間の狙撃でピンクの機体を使わせるな!」

 「大丈夫だよ。こういう時の為に、ラクス様が
  追加装備を送ってくれたから」

そう言って、イライジャはクレーンを操作して黒
い雨合羽のような物を「ピンクちゃん」に着せ始
めた。

 「おい!これは何だ?」

 「隠密作戦用の特殊コートだ。天使の羽を装備
  していても余裕で装備出来るし、ステルス機
  能も万全だ」

 「大体、あのジンでは水中での行動に・・・」

 「(ピンクちゃん)は見た目はジンだけど、中
  身はザフトの次期量産機候補のザクの技術を
  大分流用してある高性能機だ。それに、あら
  ゆる環境で使えるようにカスタム化もされて
  いる。今まで使っていて気が付かなかったか
  ?」

 「確かに、ジンにしては高性能過ぎたと・・・
  」

 「それに、お前の狙撃は○島周辺の自衛隊艦艇
  に通達がされているから、別に見つかっても
  問題無い。無視してくれるさ」

 「狙撃銃は大丈夫かな?」

ガイは最後の抵抗を試みる。

 「特別に水密処理がされているし、赤外線スコ
  ープの状態も良好だ。早く、狙撃に行けよ。
  この任務が成功すると報酬の他に証拠隠滅を
  兼ねて水中バイクと狙撃銃が貰えるんだ。ご
  ねていると風花に怒られるぞ!」

 「わかったよ」

ガイが「ピンクちゃん」に乗り込もうとすると、
隣でイライジャが何かの箱を眺めていた。

 「イライジャ。何だ、それは?」

 「うん、ラクス様から貰ったんだ」

ガイが箱を覗き込むと、「ピンクちゃん」のCG
画が書かれていて上の方には日本語で、「番第屋
。伝説の傭兵ムラクモ・ガイ専用機(ピンクちゃ
ん)スケール144分の1」と書かれていた。

 「何だ!これは!」

 「ガレージキットと言う組み立てて色を塗って
  飾る模型のようだな。しかし、こんな物が発
  売されるとはガイも有名になったものだ」 

 「傭兵のモビルスーツの模型を販売するな!」

 「俺は組み立てて色を塗っておくから、早く仕
  事を終らせろよ」

 「わかった・・・。だが、ピンクに塗るなよ!
  わかったな!」

こうして、ガイは工作船から「ピンクちゃん」で
水中バイクに乗って水深20メートルほどの海中
を進み、○島沖1キロほどの距離から浮上して無
事に狙撃を成功させのであった。

 「性能は凄いモビルスーツだが、(ピッチピッ
  チ、チャプチャプ、ランランラン)だな・・
  ・ぷぷっ」

 「ちくしょう!カザマ、覚えていろよ!」

辿りついた工作船で、笑いを必死に堪えている自
衛隊将校から報酬を貰ったガイはまた絶叫するの
であった。
こうして、「ピンクの死神」伝説は自衛隊から裏
社会全体に広がりつつあった。  


そして、数日後。

 「イライジャ!ピンクに塗るなって言っただろ
  うが!」

 「最近の俺は長い物には巻かれる性質なんだ」

イライジャは「ピンクちゃん」を設定通りに仕上
げた事をここに記しておく。       

  


         あとがき

次回は温泉編です。
運命の35話で命令を忠実にこなしたのに、アス
ランに殴られるシンが哀れ・・・。

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