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▽レス始

「これが私の生きる道!外伝3バレンタインをすっ飛ばして日本編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-24 09:57/2006-04-26 01:04)
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(2月15日、アカデミー教官室内)

昨日行われた「血のバレンタイン」追悼集会は世
界中に放送されて大きな関心を集める事に成功し
たのであったが、唯一の問題点を上げるとすれば
ユリカがニコルのピアノ演奏で鎮魂歌を歌った事
であろう。
他国の軍と政府関係者は見た目が清楚で少女のよ
うな外見の彼女を絶賛していたのだが、俺達や密
かに警備に就いていたミゲル、ハイネ、自衛隊関
係者は顔を引き攣らせながらその様子を見ていた
のであった。

 「知らないって凄い事なんだよね」

 「俺は知らないからな。でも、歌声は綺麗だっ
  たし、歌自体も良かったじゃないか」

スズキ部長が俺に感想を述べるが、スズキ部長は
ユリカ達の実態を知らないので評価は見た目その
ままだ。

 「いやー、凄いんですって。悪魔が天使の歌声
  で歌っているんですよ」

 「見た目に性格は映らないからな」

 「そいつは至言で」

そんな話をしていると、数人の女生徒が入ってく
る。

 「どうした?」

 「あの、カザマ教官。これをどうぞ」

彼女達は色取り取りのリボンで包まれた包みを持
ってくる。

 「これは?」

 「バレンタインですよ」

 「ああ、そうだったな」

いつの頃からか知らないが、プラントにはバレン
タインデーが存在していた。
多分、合理的過ぎるプラントでの生活に嫌気がさ
した日系人が始めたのであろう。
だが、去年からプラントではこの行事は2月15
日に行われていたのだ。
さすがに、多数の同胞が死んだ日にチョコレート
を送るというには気が引けるからという理由らし
いが。

 「ありがとね」

 「では、失礼します」

女生徒達は俺にチョコを渡すと退室していった。

 「今年は大漁だな」

 「カザマ、お前いくつ貰った?」

 「三十個くらい」

 「んな!一昨年は俺の方が・・・」

 「歳なんだよ。(おっさん)は」

 「歳言うな!」

 「大体、(おっさん)の部下は野郎ばっかりじ
  ゃん。直接生徒に接してるのは俺達ヒラ教官
  なんだから」

 「それは、そうだが・・・」

 「(おっさん)いくつ貰ったんだ?」

 「妻と娘達だけだ・・・」

 「お返しを考えなくて良いじゃん」

 「そうなんだけど悲しい・・・」

 「どうせ、俺のは全部義理だし」

 「そうか?お前、意外とモテるんだぞ」

 「俺は妻帯者だっての」

 「まあ、そうなんだけど」

 「レイみたいに300個以上も貰う奴には勝て
  ないよ」

 「同級生、先輩、女性兵士達・・・。候補にキ
  リが無いな」

 「早く終ってくれないかな。バレンタインデー
  」

 「ああ、そうだな」

本気のチョコなんて貰ったら本気でラクスに殺さ
れるので早く終って欲しいと願うだけであった。


(翌日、モビルスーツ実習終了後)

俺はいつもの通りに実習を終えると休憩室に行き
、生徒達と普通に話していた。

 「教官、昨日はどうでした?」

 「昨日?」

 「バレンタインですよ」

 「ああ、結局三十個くらい貰った」

 「凄いですね」

 「一昨年は5個で去年は任務中だったからゼロ
  だった。悲しい青春だね」

 「今、貰っているからいいじゃないですか」

 「結婚してから貰ってもね・・・」

 「安全パイだから貰えるって事ありません?」

 「かもな」

そんな話を生徒達としていると、他科の生徒達が
入ってきて話に加わってきた。

 「貰えるだけいいじゃないですか。俺なんてゼ
  ロですよ」

 「ヴィーノ、ゼロは悲惨過ぎだな」

 「ヨウランもそうですよ」

 「えっ!俺、貰ったよ」

 「誰にだよ!」

 「看護科の娘と管制科の娘に」

 「だってさ、ヴィーノ」

 「ええっ!おい、シンは?」

 「ルナとメイリンとステラに貰った。後、マユ
  から小包で大きいのが届いた」

 「みんなは?」

 「俺は彼女から・・・」

 「先輩から貰った」

他の生徒も最低一つくらいは貰っていたらしい。

 「ルナ達から義理チョコくらい貰わなかったの
  か?」

 「無いんです・・・」

 「駄目駄目だな」

 「ちくしょう!バレンタインのバカ野郎ーーー
  !」

ヴィーノは泣きながら走り去ってしまう。

 「お前ら酷いぞ」

 「教官だって、駄目駄目って・・・」

 「まあ、ヴィーノも飯食って寝れば元気になる
  さ!」

 「そんな根拠の無い想像を・・」

 「ルナ、シンにしかあげなかったの?」

 「シンとお父さんにだけです」

 「私もそうです」

 「ステラはシンとヨシヒロにだけ」

 「女って、現実的だな・・・」

その後、帰宅するとラクスがチョコをくれたのだ
が、そのチョコがハロの形をしていたのは想定内
であったが、チョコの中からハロが出てきたのは
想定外であった。


(2月18日、プラント軍本部内人事部長室内)

昨日、石原三佐とマユラから結婚式の招待状が届
いたので、新婚旅行と祖父母にラクスを会わせる
という目的と合わせて一週間の休みを取ることに
したのだが、書類を出した俺は何故か人事部のハ
ゲ部長に呼び出されていた。

 「書類に不備がありましたか?有給は残ってい
  るというか、ザフトに入隊以来、一度も使っ
  た事がありませんけど」

 「別に、書類に不備は無いし許可も下りた」

 「では、何ですか?」

 「細かい事だが、三日間の有給を取り消して公
  務扱いにする旨を伝えようと思ったのだ」

 「へっ?公務扱い?」

 「現在のプラントにとって極東連合の主要構成
  国である日本は大切な同盟相手で、その現首
  相のご子息の結婚式だ。公務扱いで当たり前
  だろう。この式には政財界の重鎮や外国から
  の招待客も多数出席するが、プラントから出
  席する者は意外と少ないのだ」

 「何を期待されているのかはわかりませんが、
  私は何もしませんよ」

 「別に、何もしなくて良い。といか何もするな
  。普通に石原首相のご子息と仲良くしていれ
  ばいいのだ」

 「公務扱って事は費用が出るんですか?」

 「三日分の宿泊費とご祝儀と往復の交通費は出
  る。行きのシャトルの席も取ってあるから宇
  宙港で貰ってくれ」

 「至れりつくせりで感謝しますよ」

 「まあ、トラブルさえ起こさなければいいから
  楽しんで来い。でも、いいよな。ラクス様と
  新婚旅行か。うちの古女房と取り替えてくれ
  ないか?」

 「遠慮させていただきまーす!」

俺はハゲ部長に挨拶をすると部屋を急いで退室し
た。

 「ああ、言い忘れていたが同道する方々がいる
  って・・・。もういないか」

こうして、俺とラクスは日本へと出掛ける事にな
った。


(2月20日、プラント〜新成田空港行きシャト
 ル内)

 「カザマ君、ポッキー食べる?」

 「みかん食べますか?」

 「・・・・・・」

 「どうしたの?急に無口になって」

 「まさか、乗り物酔いですの?」

 「何で君達が?」

当日の朝に宇宙港でチケットを受け取ってシャト
ルに乗り込むと隣りの席にユリカとエミが座って
いた。
この予想外の事態にラクスは一言も言葉を発しな
かった。
やはり、ラクスはこの二人が苦手のようだ。

 「招待されているのか?」

 「ええ、そうよ。お祖父様の代理でね。お祖父
  様、賑やかな席が苦手なのよ。学者上がりだ
  し」

 「自衛隊は大切なお客様だものな」

 「そういう事ですわ」

 「でも、支社長と副支社長がいなくて大丈夫な
  のか?」

 「ラミアス部長に任せてありますわ」

 「部長?」

 「優秀だから階級を上げたの」

 「アバウトな人事だな」

 「うちは実力主義なのよ」

 「フラガ少佐と結婚する予定だから、わざと多
  忙にさせてないか?」

 「そっ、そんな事ないわよ!」

 「あっ、ありませんわ!」

 「(図星だ・・・。マリューさん可哀想に)」

俺はマリューさんの上司運の悪さに同情せずには
いられなかった。


 
極東連合との同盟締結とその後の終戦でプラント
との人・物の交流はかなり活発になっていた。
民間ベースでの貿易やプラント資本の企業の日本
や台湾進出、日本や台湾資本の企業のプラント進
出など戦争中から始められていたこれらの試みは
日々増大の一途を辿り、その動きは極東連合の他
の構成国やプラント同盟国にも広がっていた。
これらの相乗効果と復興作業の活発化でプラント
同盟国と中立国であるオーブ、スカンジナビア王
国の経済は順調に成長を続けていて、更にそれに
乗る形で大西洋連邦の経済も順調に回復していた

この結果、大西洋連邦を含む各国の企業は深刻な
人手不足に陥るほどの好景気に見舞われていて、
大西洋連邦ではコーディネーター排斥論が急速に
縮小しているらしい。
無論、完全にそれらの動きが完全に無くなる事は
ないだろうが、今の所、大西洋連邦にプラントに
戦争を仕掛ける理由が無くなってしまった事も事
実であった。
尚、この成長に取り残されていた国が存在してい
て、その国とはユーラシア連合と東アジア共和国
の二国であり、これらの国はプラント利権の喪失
と大量の戦力の喪失、構成国の離脱などの混乱か
ら未だに脱していなかった。

 「うーん、直行便があるって素晴らしい!」

 「プラントへの人の動きが活発になったから必
  要だと判断されたのよ」

 「急に便数を増やせるの?」

 「L4宙域の東アジア共和国所属のコロニーへ
  の輸送が減ってシャトルが余っているからい
  いのよ」

 「ああ、L4ね。俺も(新星)攻略戦に参加し 
  たから」

東アジア共和国は所有していた「新星」も失い、
L4宙域のコロニー群を完全に放棄してしまった
ので宇宙での拠点をほとんど失ってしまったのだ

そして、その時に大量に発生した難民を日本・台
湾所属のコロニーが日本人と台湾出身者以外の受
け入れを拒否した為に、東アジア共和国艦隊と日
本・台湾防衛艦隊で一触即発の危機に陥った事も
あった。  
その時は、東アジア共和国がその要求を受け入れ
て住民を中国本土に避難させる事で決着を図った
が、この事件で日本と中国は完全に決別してしま
ったのであった。

 「今では日本企業は中国・朝鮮から逐次撤退中
  でその主力をプラント同盟国、オーブ、イン
  ド等に移しているのよ」 

 「インド?あそこは大西洋連邦の同盟国で・・
  ・」

 「軍事的には大西洋連邦の同盟国でも、経済的
  には極東連合寄りというか、中国・朝鮮以外
  のアジア諸国は環太平洋貿易機構という組織
  を立ち上げたから比較的仲が良いのよ」

 「政治状況は複雑なりってか」

 「中華思想を振ります中国とその子分を気取っ
  て威張り散らしてきた隣国が嫌われただけよ
  」

 「東アジア共和国の構成国は二国しか残らない
  のか・・・」

 「残りの国は折を見て極東連合か赤道連合に参
  加するらしいわよ」

 「奢れる平家は何とやら・・・」

 「例えがおじさんくさいですわ」

 「博識と言ってくれ」

そんな話をしているとシャトルは新成田空港に到
着する。

 「あの、カザマ様と奥様と立花様達は係員の指
  示に従っていただけますか?」

 「どうして?何かあったの?」

スチュワーデスの言葉に疑問を投げかけた。

 「石原首相のご指示です。空港のロビーに多数
  の報道関係者が詰め掛けておりまして」

 「どうしてだ?ユリカ何かしたか?それとも、
  エミが?」

 「あなたが私達の事をどう思っているのか理解
  できたわ」

 「本当ですわ」

 「いえ、純粋に日本出身の英雄と世界的に有名
  だった元歌姫の奥様、そして、自衛隊の元美
  人エースパイロットから大企業の役員に転身
  したお二方の取材が目的だと思われます」

 「お前ら役員なのか?」

 「ええ、ヒラだけどね」

 「私もですわ」

 「美人エースパイロット?」

 「嘘ではありませんわ」

確かに、最終決戦時に核動力機に乗り込み多数の
艦船とモビルスーツを血祭りにあげて無事に帰還
したのだ。
その働きは十分にエースと呼べるだろう。

 「それで、アイドル扱いか・・・。知らないっ
  て幸せだな」

 「「失礼(ですわ!)よ!」」

 「あの、マスコミの一番のお目当てはラクス様
  で二番目はカザマ様なのですが・・・」

スチューワーデスさんの言葉に驚いてしまう。

 「またまた、担いじゃって。ラクスは世界的に
  人気があったからわかるけど、俺なんてただ
  の軍人なんだよ」

 「自分の事をよく理解出来ていないのね。単身
  15歳でプラントに上がってザフトに入隊。
  開戦時から常に前線で大活躍してパーソナル
  カラーを許されてネビュラ勲章を貰い、評議
  会議員の息子達を率いるエリート部隊の隊長
  になった後、最終決戦では艦隊司令官に任命
  されているわ。しかも、その時はまだ19歳
  。そんな人が注目されないはずがないのよ」

 「しかも、硫黄島でも大活躍でしたし、あの屈
  強な自衛隊パイロット達の臨時教官まで勤め
  たではありませんか。そのような方が帰国す
  るのですから、注目されて当然ですわ」

 「そう言われると、俺って意外と凄い?」

 「しかも、プラント前評議会議長の一人娘で敵
  軍の兵士にまで支持を受けていた歌姫を嫁に
  したんだから注目されて当然でしょ」

 「うーん、そうなのか・・・」

 「そう言うわけでして、機を降りるのを暫らく
  待っていただきたいのです」

 「わかりました」

 「それで、その・・・。時間が空いていますの
  で・・・」

 「空いているので?」

 「機長が写真をご一緒にと・・・」

 「はあ?」

その後、スチュワーデスと機長、副機長と写真を
撮ったのだが、機長と副機長はラクスと写真を撮
れたのがよっぽど嬉しかったらしく、天にも昇る
ような顔をしていた。
多分、この顔を乗客が見たらこのシャトルへの搭
乗を拒否するだろう。
そして、俺も数人のスチュワーデスから連絡先を
書いた紙を貰ったのだが、ラクスに「ポケットの
中の物は捨てて下さいね」と釘を刺されたので泣
く泣く捨てる羽目に陥っていた。

 「スッチーと合コンしたかった。石原三佐と相
  羽一尉と自衛隊のパイロット達を誘って・・
  ・」

 「そんな事出来るはず無いでしょ。あきらめな
  さい」

 「君の一挙手一投足は監視されていますわ。不
  可能です」

 「・・・(これはまずい!このままでは秋葉原
  探索計画も実行不能になってしまう。何か策
  を考えなければ)」

空港裏口へと向かうシャトルバスの中で俺は思案
にふけるのであった。 


 「おーい!カザマ、元気だったか?」

 「カザマ教官元気だった?」

空港の裏口に行くと、石原三佐とマユラが車を回
して待っていてくれた。
今、空港のロビーは大混乱のようだ。

 「ちくしょう!ハゲ部長め!こうなる事を予想
  していたな」

 「予想していなかったのはカザマだけだ」

 「えっ!本当?」

 「私は芸能界という世界におりましたので、多
  少は予想していました」

ラクスも気が付いていたらしい。

 「では、行くとするか。ユリカさんとエミさん
  は実家までお送りしますね。お姉様の立花副
  官房長官とご家族の方がお待ちですよ」

 「石原三佐、呼び捨てで構いませんのに」

 「そうですわ」

 「えーと、自衛隊を辞めて民間人になったお嬢
  様方を呼び捨てには出来ません。自分が名前
  を呼び捨てにするのはマユラだけです」

 「ちぇっ、残念。このまま既成事実が作れれば
  と思ったのに」

 「今から結婚を取りやめて私に鞍替えしません
  か?」

二人のあまりの暴言に全員が返答を拒否する。

 「ヨシヒロは二人を名前で呼ぶのですね」

 「だって、女扱いしてないもん」

 「納得しました」

ラクスの疑問に俺は小声で事実を述べ、それにラ
クスは納得したようであった。


石原三佐が運転する車はユリカ達を送った後、石
原首相の自宅に到着した。
広さは6LDKくらいだろうか?

 「うーん、一国の首相の割には普通なんだね」

 「どうせ、日頃は姉さんしか住んでいないから
  な。親父とお袋は官邸住まいだし。それに、
  政治家は金より名を残せ。これが親父の哲学
だそうだ」

 「野元前首相に聞かせたい言葉だね」

 「悪名は残せただろう」

野元前首相の自宅を捜索したら、大量の金塊と中
国から贈られたと思われる美術品で部屋が埋まっ
ていたらしい。
更に、銀行の通帳には中国系の企業から送られた
と思われる自称企業献金の賄賂で恐ろしい額にな
っていたようだ。
普通は隠すのであろうが、隠しもしない所を見る
とよっぽど捕まらない自信があったらしい。
与党大物政治家にしては情けない最後とも言える

 「まあ、プレハブに住めとは言わないけど、程
  度の問題だよね」

 「父も政治家になってからはお金が出る一方だ
  と言っていましたが」 

お義父さんも同様であるようだ。

 「政治家って普通は儲からないんだよね。儲け
  過ぎている政治家ってどこか歪なんだよ」

 「さあ、入ってくれ」

俺とラクスが家に入ると、石原首相と奥さんとお
姉さんらしき人が出迎えてくれる。

 「お久しぶりです。石原首相」

 「おお、元気そうだな」

 「ご招待に預かり感謝いたします」

 「やっぱりラクス様は可愛いな。うんうん。さ
  あ、上がって」

俺達が自宅に上がるとリビングに通されてからお
茶を出される。

 「実は君達が予約していたホテルなんだけど、
  マスコミが大量に押しかけていて収拾不能だ
  そうだから今日は家に泊まってくれたまえ」

 「えっ、そうなんですか?」

 「君、まだ特例法で日本人だから注目の的なん
  だよ。大サクセスストーリーを地でいく20
  歳の若者だ。注目されて当然だろう」

 「大サクセスストーリーですか・・・」

 「それに、ラクス様も前回の来日で大人気だっ
  たから今回も当然、注目されている。第一、
  あの(悪魔の姉妹)がアイドル扱いなんだか
  ら」

 「それが一番の衝撃ですね」

 「私もそう思う」

 「俺も・・・」

 「私も・・・」

 「人の事を悪く言いたくは無いのですが・・・
  」

俺、石原親子、マユラ、ラクスの考えが一致する

 「まあ、そんな理由だからゆっくりしてくれた
  まえ」

 「では遠慮なく」

 「お世話になります」

 「ところで、カザマ君」

 「何です?」

 「ラクス様と家のカミさんを交換しないか?」

石原首相は奥さんとお姉さんに殴られていた・・
・。


翌日の朝、俺達は着替えて式場に向かう事になっ
たのだが、その時に初めて式の詳細を聞いた。  

 「明治神宮で三々九度の杯を交わすんですか?  
  」

 「そうだよ」

 「マユラが角隠しを・・・。言いえて妙だな」

 「それ、酷いわよ!カザマ教官」

 「俺は礼服だからいいんだけど。ラクスはどう
  しようかな?おーい!ラクス、今日は何を着
  てって・・・」

ラクスは隣りの部屋から着替えを終えて出てきた
のだが、ピンクのド派手なドレスを着て出てきた
ので全員がずっこけた。

 「あら、どうかなさいました?みなさん」

 「あのね・・・。花嫁より派手な衣装は駄目な
  の」

 「まあ、そうなのですか?」

 「石原首相、どうします?着物でも借りてきて
  ・・・」

 「私の着物をお貸ししましょう」

石原首相の奥さんが着物を貸してくれる上に、着
付けと髪型のセットをしてくれる事になった。

 「へえ、プロでもないのに凄いですね」

 「ナオコが嫁に行く時の為に準備していたのだ
  が、本人にその兆候は全くなく・・・」

 「お父さん、気を悪くするわよ!それに、彼氏
  だってちゃんといるんだから」

 「ああ、大山君だったな。お前の勤めている研
  究所の同僚の」

 「半年後にオーブから帰ってくるから、その時
  に報告するわよ」

 「へえ、オーブにいるんですか?」

 「今、モルゲンレーテ社と共同開発を行ってい
  てね。彼、主任研究員だから向こうに長期出
  張中なの。あなたのお父様とも良く会うそう
  よ」

 「世間って狭いですね」

 「そうね」

そんな話をしていると着付けが終ったらしく、ラ
クスが桜をあしらった桃色の着物姿で登場する。

 「うわー、可愛いな。良く似合っているよ、ラ
  クス」

 「ありがとうございます。ヨシヒロ」

 「何か私より目立ちそうな感じ」

 「あきらめろ。少なくとも俺はお前の方が可愛
  いと思っている」

 「ヨシユキ、ありがとう」

 「あー、ラブな所を申し訳ないんだけど。そろ
  そろ時間よ」

 「もう、そんな時間か?姉さん」

 「ええ、向こうで着付けがあるんだから、急い
  で出発しましょう」

 「ところで、カザマ君」

 「何ですか?」

 「ラクス様と家のカミさんを交換しないかね?
  」

石原首相は再び、奥さんとお姉さんに殴られてい
た・・・。 


車で明治神宮に到着すると、報道陣が大量に詰め
掛けていて俺がラクスをエスコートして車から降
りると、大量にフラッシュが焚かれた。

 「何なんだ?この報道陣の数は!」

 「お前とラクスさん目当てだよ」

 「そうなんだ」

特に着物姿のラクスには大量のフラッシュが焚か
れているようだ。

 「俺は準備があるから、カザマ達は控え室で待
  っていろよ。結構、知り合いも多いから」

石原三佐達と別れた俺とラクスが控え室に入ると
、確かに見知った顔が沢山いる。

 「あれ?カガリちゃんとアスラン」

カガリはラクスと同じく、水色を基調とした着物
を着ていた。
ラクスと同じく、とても良く似合っている。

 「久しぶりだな。カザマ」

 「やっぱり、公務で?」

 「大事な商売相手だからな。それに、オーブに
  援軍を出してくれた恩をオーブ軍は忘れてい
  ないのさ」

 「俺はカガリの護衛役です」

 「他のオーブ組はさすがに無理か」

 「あれ、聞いてませんか?三日後にある秘湯に
  みんなで出掛ける計画があるんですよ」

 「初めて聞いた」

 「石原三佐とマユラは新婚旅行で日本各地の温
  泉を回る計画らしくて、その日に合わせてあ
  る秘湯で全員で会おうと」

 「全員なの?」

 「オーブ、自衛隊組とにかく全員です。旅館を
  貸しきるようですよ」

 「それは、楽しみだな」

 「でも、三日後ってそれまで二人は日本に?」

 「大丈夫だよ。キサカに全部任せてあるから」

 「(キサカ准将に仕事を押し付けたのか。可哀
  想に・・・)」

 「キサカ准将にお土産を買っていきなよ」

 「当然だ」

 「(それで済めば安いものか)」

 「カザマさん、お久しぶりです」

 「あれ?フレイか」

フレイも若草色を基調とした着物を着ていてなか
なか似合っている。

 「フレイも良く似合ってるな」

 「ありがとうございます」

 「イザークがいなくて残念だな」

 「すぐに会えますから」

 「そうなの?」

 「ええ」

 「フレイはアルスター外務長官と出席している
  のかい?」

 「はい、そうです。パパは最近忙しくてなかな
  か会えないから、今日、日本で会おうと」

 「なるほどね」

 「カザマ君、元気だったかね」

 「ええ、アルスター外務長官もお元気そうで」

 「まあな。ハル前外務長官の後始末に奔走して
  いるよ。彼は留置所で健康的な生活を送って
  いるというのにな」

大西洋連邦と日本の仲はそう悪くないというか、
東アジア共和国時代にはそれほど活発では無かっ
た貿易の規模が拡大しつつあって大西洋連邦にと
って極東連合は大事な貿易相手国に変化しつつあ
った。
さすがに、数回の戦闘を繰り返し、双方に死者も
出ているので軍事的には対立が続いているが、そ
れは時間が解決してくれるだろう。
ちなみに、大西洋連邦との貿易が増えた分、東ア
ジア共和国との貿易量が減って向こうが経済的に
大損害を受けているのは周知の事実であった。
戦争での損失を大西洋連邦は各国との貿易で取り
戻すどころか、その利益を拡大させつつあるのに
対して、ユーラシア連合と東アジア共和国は凋落
の一途を辿っているようだ。

 「イギリスがユーラシア連合を離脱しようとし
  ているらしい」

 「本当ですか?」

 「あの国は大海運国で世界中にネットワークを
  持っているから、独立しても十分にやってい
  けるからな」

 「確かに、旧植民地の大洋州連合と西アジア共
  和国との結びつきが強いから・・・」

 「元々、インドが大西洋連邦に味方をしてくれ
  た理由もイギリスの仲介によるものだ」

 「となると、イギリスはユーラシア連合なんて
  邪魔くらいにしか思っていないと」

 「別に、離脱した所で貿易がストップするわけ
  でも無いし、そんな事をしたら逆にユーラシ
  ア連合に方が大打撃を受けるからな。安全保
  障も大西洋連邦と新たな同盟を結べば十分だ
  し」

 「その件でお忙しいわけですか」

 「数日後に調印をするだけだ。もう、世界中の
  国家が知っているから秘密でも何でもないし
  」

やはり、大西洋連邦は世界一の大国だけあって、
あれだけの大損害を外交と貿易で見事に回復させ
てしまった。
正直、戦争が長引かないでホッとした。
まともに戦ったら勝てる相手ではない。

 「さて、そろそろ時間だ」

時間になったので全員で会場に向かい、決められ
た位置に立つと神主が祝詞をあげてから石原三佐
達は三々九度の杯をかわした。

 「変わった儀式ですのね」

 「実は俺も初めてみた」

式は無事に終了して次は披露宴の会場に移動する
事にする。

 「ラクス、慣れない着物で大変だろう」

 「少しきついです」

 「ラクスさん、着替えを持ってきたから披露宴
  ではこのドレスに着替えなさい」

 「ありがとうございます」

披露宴会場は石原首相の同級生が経営している、
新しくオープンしたばかりの高級ホテルで行われ
るようだ。

 「えーと、俺達の席は・・・」

シンプルな白いパーティードレスに着替えたラク
スと受付を済ませてから会場で席を探す事にする

アルスター外務長官、フレイ、ユリカ、エミは政
財界の出席者の席に座っていて俺達とはかなり離
れているようだ。

 「えーと、ここか」

俺達の場所は二人の友人が集められている席のよ
うであった。
6人掛けの席に「風間義弘様」「ラクス・風間様
」と書かれたプレートが置かれていたのでその席
に座る事にする。

 「カザマ教官!ラクス様ーーー!」

 「おんや?アサギか?」

 「やっと到着して急いで着替えてきたんですよ
  。マユラもオーブで式を挙げてくれれば楽だ
  ったのに」

 「ハワード一尉とホー三佐はやっぱり無理か」

 「三日後の温泉で合流します」

 「それは、結構。んで、アサギ達はどこの席な
  んだ?」

 「隣りのテーブルですね」

隣りのテーブル席にはガガリとアスラン、アサギ
のプレートが置かれていた。

 「このテーブル6人席だよな。後の、4人は?
  」

 「俺達の席も3人分のプレートが置かれていま
  せんよ」

パーティードレスに着替えたカガリをエスコート
しながら登場したアスランが不思議そうに言う。

 「ヨシヒロ、私の隣は相羽一尉ですよ」

 「ああ、本当だ。でも、後の3人は?」

 「あれは何でしょう?」

ラクスが指差した方向を見ると、十数人の若い男
達が集まって何かをしている。

 「相羽一尉と石原三佐と仲が良いパイロット達
  だな。あれは」

 「おーい!相羽一尉!」

俺がその集まりに接近すると、彼らは懸命にジャ
ンケンをしていた。

 「相羽一尉、何をしているんだ?」

 「おお、カザマか。結婚式以来だな」

 「それで、何を?」

 「席決めだ!」

 「席決め?」

 「そうだ!我々は人数分の席数を確保して貰っ
  ただけで詳しい席を決めていないのだ。理由
  はわかるか?」

 「さあ?」

 「全員がラクス様と同じテーブルに座りたがっ
  ているからだ。だから、ジャンケンで席を決
  めている!」

 「相羽一尉はジャンケンに参加しないの?もう
  、ラクスの隣りにプレートが置いてあったけ
  ど」

 「「「「何?」」」」

俺の一言で全員の声のトーンが下がった。

 「相羽!貴様、ずるいぞ!」

 「いくら上官でも許されない事もあります!」

 「てめえ!先輩の俺を差し置いてズルするのか
  !」

俺の一言で相羽一尉は吊るし上げを食らっていた

 「カザマ、それはないよ・・・」

 「ズルしないでジャンケンで決めればいいじゃ
  ん」

 「カザマ教官、さすがです」

 「話がわかるな」

 「相羽とは大違いだ」

その後、席は順調に決まりラクスと同席できたパ
イロット達は顔をにやけさせていた。
こいつらがエリート士官でモビルスーツのパイロ
ットだなんて誰も信じないだろう・・・。
だが、カガリ達と同席になった3人の士官達はオ
ーブ軍少将と一佐の取り合わせに緊張していたの
であった。

 「あーあ、あいつら地雷を引いたな」

 「緊張しなくても普通に話せばいいのに」

 「お前じゃあるまいし、そう簡単に行くか」

 「ところで、相羽一尉はやっぱりラクスの隣な
  んだね」

 「俺は運の強い男なんだ」

彼は実力でジャンケンに勝ったようであった。


 「ヨシヒロ、どうして石原三佐達はゴンドラか
  ら降りてくるのでしょうか?」 

初めて参加する日本式の結婚式がラクスには不思
議でたまらないらしい。
俺に色々と質問をしてくる。

 「演出だね。理由はそれ以外無いと思う」

 「そうなのですか?」

式は次の段階に進み、司会者が二人の紹介を始め
た。

 「新郎の石原良幸さんは〜年に石原家に長男と
  して生を受け、防衛大学を卒業後、航空機パ
  イロットからモビルスーツパイロットに転向
  してエースとして大活躍をいたしました。新
  婦のマユラさんとは硫黄島戦の時に知り合い
  、オーブ線の折に義勇兵として参加していた
  時に再会して戦場で愛を育んで結婚に至った
  次第であります」

 「対して、新婦のマユラ・ラバッツさんは〜年
  に生を受け、オーブ軍士官学校の短期士官養
  成コースを優秀な成績で卒業して同じく、義
  勇兵として各地で大活躍されました。二人の
  出会った経緯は先ほど述べた通りであります
  」 

 「ヨシヒロ、どうしてこのような紹介をするの
  ですか?式に出席するという事は知っていて
  当然だと思いますが」 

 「ほら、石原首相のお客さんもいるから」

次に来賓の長くて退屈な挨拶が始まった。

 「ヨシヒロ、どうしてあの政治家の方は自分の
  自慢ばかりするのでしょうか?お祝いの言葉
  を述べればいいのに」

 「彼は愛人スキャンダルで次回の選挙が危ない
  からお祝いどころじゃないんだよ。自分のア
  ピールに必死なんだ」

 「まあ、そうなんですか?相羽さん」

事情を知っている相羽一尉がラクスの質問に答え
ていた。

 「次は、新郎の上司でいらっしゃる中川一佐か
  らご挨拶を賜りたく思います」

 「しまった!中川のおっさんだ!」

 「どうした?相羽一尉」

 「さっき、雨が降り始めた事は知っているか?
  」

 「えっ、そうなの?」

 「あのおっさんは結婚式のスピーチで雨が降っ
  ていると・・・」

 「今日は生憎の雨ではありますが、(雨降って
  地固まる)などと申しまして・・・」

 「ヨシヒロ、意味が良くわかりません」

 「ほら、結婚式に雨が振ると縁起が悪いんだけ
  ど、昔からのことわざで雨が降っても地面が
  固まるって事で結果オーライというか。二人
  の仲が固めるっていうか。そんな意味だった
  と思う」

 「雨が降ると縁起が悪いのですか?それなら晴
  れの日に行えばよろしいですのに。それに、
  雨が降ると地面がぬかるんで大変ですわ」

日本の古いことわざはラクスには良く理解出来な
いようである。

 「今日は大安だから、それに合わせているんだ
  よ」

 「大安って何ですか?」

 「昔の暦で各日にちに振り分けられているもの
  なんだ。他には仏滅とか赤口とか友引とかあ
  るんだよ」

 「結婚式は大安に行うのがよろしいのですか?
  」

 「そうそう」

 「日本という国には、色々と不思議な習慣があ
  りますのね」

挨拶が終わり、電報の紹介が終ると次はケーキ入
刀のようだ。

 「次はケーキ入刀です。撮影をされる方はご近
  くにどうぞ」

司会者の言葉で沢山の人がカメラを構えてケーキ
に接近していく。

 「あの、そんなにムキになって撮影しなくても
  誰かから写真を貰えば良いと思いますが」

 「えーと、そうだね」

二人は大きなケーキにナイフを入れるが、このケ
ーキには細かく細工したストライクルージュ改と
ジンプウ核動力機の砂糖細工が乗っかっていた。

 「あれは、職人技だな」

 「そうですわね」

 「次は各テーブルのキャンドルに新郎新婦が火
  をつけに参ります」

その言葉と同時に相羽一尉達はキャンドルの芯を
水で濡らし始めた。

 「どうして、そのような事をするのですか?」

 「まあ、ちょっとしたイタズラかな。結婚式で
  は定番なんだよ」

火をつけに周ってきた二人だったが、友人席のキ
ャンドルは全て濡れていて火がなかなかつかなか
った。

 「相羽、やっぱりやるか!」

 「定番だからな」

 「次は友人の方からお祝いの歌を・・・」

司会者の言葉で相羽一尉と学生時代の女友達が立
ち上がった。

 「相羽一尉は何を歌うの?」

相羽一尉も女友達も結婚式で良く歌われる定番曲
を歌い始めた。

 「聞いた事が無い曲です」

 「俺達が生まれる前から結婚式で良く歌われて
  いた曲なんだ」  

 「最後に、新郎新婦から両親への花束贈呈が行
  われます」

司会者の言葉で石原三佐とマユラは両親に花束を
渡すのだが、石原三佐のお母さんが涙を流し始め
る。

 「あの、二人は実家から車で5分ほどのところ
  にお住まいだとか。会おうと思えば毎日会え
  るのですが・・・」

 「えーと・・・。結婚式の花束贈呈には涙がつ
  き物といか、決まりというか・・・」

正直、マユラの両親の方が泣きたいのだろうが、
彼女の両親はマユラが一国の首相の息子に嫁いで
しまったのでそれどころではないようだ。
緊張で顔が心なしか引き攣っている。

 「日本の結婚式は不思議な事だらけですわ」

これがラクスの最終的な感想であった。


式が終った後、石原三佐達は友人達と二次会に出
掛けてしまったが、俺達は三日後の温泉が二次会
の代わりなので他の用事を済ませる事にした。
カガリ達もそれなりに公務等があるらしく、出掛
けて行く。

 「ようこそ、おいで下さいました」


石原邸で着替えた俺達は俺の生まれた東京郊外の
市役所に車で向かった。
石原首相のお願いを聞いて、名誉市民として表彰
をされに行くのだ。
本当は断りたかったのだが、そうはいかないらし
い。

 「いやー、良く来てくれたね」

推定で80歳に手が届きそうなジジイ市長が俺と
ラクスを市長室のリビングで出迎える。
このジジイは昔、国体で優勝した俺が報告に出向
いた時に毎年のように顔を見ているジジイだった

両親に昔聞いた話によると、俺が生まれる前から
市長をしているらしい。

 「お招きにあずかり光栄です(このジジイまだ
  市長やってたのかよ!考えてみれば投票率も
  低いし、対抗馬なんて共産党のババアくらい
  だからな。普通にやれば勝てるんだよな)」

その後、生まれた家を見に行き、通った学校で自
称恩師と再会を果たした後、石原邸に帰りもう一
泊したのであった。
昔なら言いたいことも山ほどあったのだろうが、
今は特に何も言う事が無いというのが正直な気持
ちだった。


 「あー、無駄に疲れたーーー」

翌朝、石原邸のリビングで朝食を食べながら文句
を言う。
石原首相は仕事があるので官邸に戻り、奥さんも
それに付いていったので、今自宅にいるのは俺と
ラクスとお姉さんだけであった。
ちなみに、新婚の二人は昨日は新居に泊まって今
朝新婚旅行に旅立ったようだ。

 「名誉市民って何か得な事あるの?」

 「おお、日本国首相の娘とは思えない無知さ加
  減だ」

 「だって、経験ないもの」

 「賞状と名誉。そして・・・」

 「そして?」

 「地方選挙が近いのであのジジイの再選が可能
  になったかと」 

 「それは言えてる。それで、これからの予定は
  ?」

 「お祖父さんとお祖母さんに挨拶に行くけど」

 「いってらっしゃーい」

俺達はお世話になった石原邸を出てお祖父さんの
家に行く事にした。
新婚旅行を兼ねた日本来訪はまだ始まったばかり
で、俺は秋葉原に行けるのか?
温泉旅行はどうなってしまうのか?
など疑問が満載であった。 


(同時刻、パキスタン・アフガニスタン国境地帯
 )

最高の傭兵と称される俺の今日の任務はある豪商
がモビルスーツなどを密かに配備し始めたのでそ
れを討伐する事だった。
パキスタンでも有数の豪商である彼は敬虔なイス
ラム教徒で現在のパキスタン政府の政策に公然と
反旗を翻していたのだ。
西アジア共和国に参加しているパキスタン政府は
かなり複雑な事情を抱えていた。
本来ならばイスラム連合に参加するべきなのだろ
うが、政教分離を推し進め経済発展の為に大西洋
連邦との協調を選択した結果、カシミール地方を
巡って未だに対立が絶えないインドとの関係を棚
上げして、更に西アジア共和国に参加する国を増
やしたい大西洋連邦の思惑もあってこのような事
になっている。
だが、その事を良しとしない勢力は多数存在して
いてパキスタン政府はその対応にかなり苦慮して
いた。
下手に強行手段を用いて討伐すると、他国に弱み
を見せる事になり、特にインドには絶対に介入さ
せるわけにはいかなかったのだ。
こうして、俺達と他の傭兵達の集団はイスラム連
合への参加を表明して、アフガニスタンとの国境
で戦力を展開しているこの富豪の私兵集団を密か
に討伐する事になったのだ。

 「戦力はストライクダガーが八機、ゲイツ二機
  、センプウが二機で合計十二機だ。他にも対
  戦車ヘリが六機、戦車十二両、装甲車その他
  車両多数で兵力は1000名ほどと思われる
  。これは偵察機が見た最後の情報だ。最も、
  これを報告した後に落されてしまったが・・
  ・」

パキスタン軍の情報将校が敵戦力についてレクチ
ャーする。

 「ゲイツとセンプウだと?」

 「コーディネーター傭兵が参加しているのだ。
  機体はジャンク屋から購入したようだが」

 「センプウはやっかいだな」

 「ビーム兵器が無いとつらい」

 「それは、俺が倒そう」

ガイが手をあげる。

 「俺のブルーフレームはセンプウよりも高性能
  機でフェイズシフト装甲完備だ。俺が倒す」

 「では、任せようか」

 「ああ、そうだな」

他の傭兵達から特に異論は出なかった。
モビルスーツなら何を倒しても報酬は変わらない
のだ。
それなら、リスクを背負う事をしないのが傭兵と
いうものである。

 「念の為に言っておくが、例のアブダエル氏を
  絶対に殺すなよ」

 「何でだよ!」

 「親玉なんだろう?」

パキスタン軍情報将校の言葉に傭兵達が反論した

 「契約書に書いてあるぞ!理由はこうだ。この
  地方では未だに中央政府の統治が行き届かず
  、部族支配がまかり通っている。アブダエル
  氏はこの地方の有力な部族の長で、下手に殺
  してしまうとこの地方が内乱状態に陥ってし
  まう可能性があるからだ。つまり、戦力のみ
  を壊滅させて経済的な損失を与え、暫らく本
  業の商売のみに専念させるのが今回の目的な
  んだ」

 「まどろっこしい話だな」

 「もう、数百年もこのままだ。俺は特に腹は立
  たん。では、作戦開始!」

情報将校の指示で傭兵達が自分の戦力を取りにい
くのだが、ガイは見てはいけない物を見てしまう

 「おい!ロレッタ!このピンクのジンは何だ?
  」

 「何だって、これで出撃よ。ガイ」

 「待て!ブルーフレームは?」

 「修理中」

 「さっきまで大丈夫だっただろうが!」

 「またバランサーの不調で歩けないのよ。こう
  立て続けだと一回全部バラした方がいいかも
  」

 「でも、相手はセンプウだから・・・」

 「ピンクちゃんのミニビームガンはセンプウの
  ビームライフルとそれほど威力に変わりはな
  いのは知ってるだろう?」

リードが話に加わってきた。

 「ああ、でも火力不足かな?」

 「安心しろ!ラクス様から予備パーツと一緒に
  新しい武器が届いたんだよ。

 「あたらしい武器?」

 「これだ!もう、取り付けてあるぞ!」

ピンクのジンの背中に天使の羽のようなものが付
いていた。

 「これは何だ?」

 「何に見える?」

 「白い天使の羽・・・」

 「これも、ラクス様がピンクちゃんに取り付け
  ようとしていたらしいが、使わなくなったの
  で一緒に送ってくれたようだ。予備パーツま
  でくれたから断る理由も無いしな」

もう、このジンがピンクちゃんと呼ばれている事
にガイは反論する気力もないようだ。

 「天使の羽のどこが武器なんだ!」

 「良く見ろよ。羽を広げると六門のビーム砲が
  撃てるんだよ。どうも、こいつはフリーダム
  の武装試作機の部品を流用して製作されたよ
  うだな」

 「これしか無いのか・・・」

 「イライジャならもう出撃したぞ」

 「どちくしょう!」

ガイはピンクのジンで出撃してその圧倒的な火力
で多数の敵を粉砕したが、味方の傭兵達はおろか
敵武装勢力の兵士にまで笑われていたのは当然の
結果と言えよう。
戦闘終了後、捕まった武装勢力の兵士達は自分達
が捕まった事実すら忘れてピンクのジンしかも、
天使の羽バージョンを見て爆笑していたのだから
・・・。

 「ぷっ、見掛けで油断させてこの高性能ぶり。
  さすがは最高の傭兵ムラクモ・ガイか」

パキスタン軍の情報士官は笑いたいのを懸命に堪
えながらガイに報酬を渡していた。

 「カザマの野郎!覚えてろよー!」

ガイの絶叫はパキスタン国境で三度響き渡ったの
であった。
尚、「ピンクの死神」伝説はパキスタンと情報を
密かに集めていたインドにも広がった事を伝えて
おく。  


          あとがき

次は「秋葉原探索編」か「温泉編」のどちらかを
書くと思います。
運命のファイナルプラスを見たんですけど、俺が
シンなら絶対にキラと握手なんてしないと思いま
す。
後、ブックオフでSEEDのベストアルバムを見
つけたので購入したのですが、「あんなに一緒だ
ったのに」が入っていないバージョンである事に
自宅に帰ってから気が付いて少しへこみました。
同じようなベストアルバムで収録曲に変わりが
あるなんて卑怯だ・・・。


  

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