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「これが私の生きる道!外伝2人は見掛けによらない編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-22 01:27/2006-04-22 08:19)
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(コズミックイラ72、2月初旬プラント周辺宙
 域)

 「それぞれに相手を選んでからペア飛行を開始
  しろ。今日はデブリ帯だから、障害物があっ
  て厳しいぞ。計器のみに頼らずに目視を重視
  するんだ。ペアを組んだ相棒の注意も聞き逃
  すな」

 「「「了解!」」」

俺は今日もアカデミー生にモビルスーツ操縦の訓
練を施していた。
9月の入学時より数ヶ月、生徒達は手取り足取り
の状態から脱して、俺の仕事は細かいコツなどを
教えるくらいになっていた。
後、数ヶ月もしたら彼らには実戦に即したよりハ
ードな訓練に移行して貰うつもりだ。
そして、入学から一年を過ぎたら小隊長としての
訓練や艦船からの発進、作戦指示に従っての敵勢
力の撃破訓練、自身で立てた作戦を実行して演習
を行うなど、日々その内容は厳しくなっていく。
アカデミー生は将来の幹部候補なので、その訓練
内容はかなり厳しくなっていた。

 「ルナ、一緒にやるか」

 「そうね。よろしく、シン」

 「レイ、一緒にやろう」

 「ああ」

シンはルナマリアとレイはステラと組んで飛行訓
練を開始するが、実戦まで経験した彼らにとって
は多少つまらない訓練かも知れなかった。

 「ルナ!大きい岩があるぞ!」

 「わかってるって!」

シンとルナマリアは二機で見事な連携を保ちなが
ら、デブリ帯を抜けて目的地にゴールした。

 「よし、なかなかのタイムだ。次!」

二機で組んだ訓練用のジンが次々にデブリ帯を抜
けて目的地にゴールしていくが、シン達のタイム
を超える者は現れなかった。

 「ルナマリアも上手くなったものだな」

俺が受け持っている生徒達の中では一番がステラ
でほとんど僅差の二番がシン、次がレイで多少落
ちるが四番は他の生徒達から群を抜いてルナマリ
アという感じになっていた。

 「ステラとレイならレコードタイムを出せるか
  な?」

そんな事を考えながらレイ達の様子を観察してい
たのだが、今日はレイの動きがいまいちのような
気がする。

 「レイ、大丈夫?」

ステラがいつものボーっとした声でレイに無線を
入れているが、レイの変化に気が付いているらし
い。

 「ああ・・・」

レイは何とか返事をするが、肝心のジンの方がフ
ラフラと飛び始める。

 「ありゃあ、駄目だ。このままだとデブリに激
  突するぞ」

俺は自分の黒いジンをレイ達の方向に高速で飛ば
す。

 「レイ!あぶない!」

 「ステラ!両側から抑えるぞ!」

 「了解!」

完全にフラフラに飛んでいて、今にもデブリにぶ
つかりそうなレイのジンを間一髪で両側から抑え
る。

 「ふう、危機一髪だ!」

 「疲れたー」

 「ステラ、ありがとうな」

レイのパートナーがステラであった幸運を喜びな
がらレイのジンに無線を入れる。
これが普通の生徒だったらジンはデブリに激突し
て、レイは怪我をしていたに違いないからだ。

 「おい!レイ、大丈夫か!」

 「スゥーーー、スゥーーー」

 「寝てやがるな。こいつ・・・」

俺の心配を他所にレイは静かな寝息を立てながら
、コックピット内で眠っていた。


 

 「それで、何かいいわけはあるか?」

俺は放課後に危うく大事故を起こす所だったレイ
を呼び出して事情を聞いていた。
このまま放置するわけにはいかなかったからだ。

 「レイ、わかっているよな。パイロットっての
  は体調の管理も重要で、実戦配備されている
  パイロットには決められた睡眠時間が義務付
  けられているくらいなんだ。それを睡眠不足
  で訓練中に寝るなんてパイロット失格だと言
  われても文句は言えないんだぞ!」

 「申し訳ありません」

 「お前、どの位寝て無いんだ?」

 「ここ三日ほど、ほとんど寝てません」

 「はあ?」

俺はレイの答えに驚いてしまう。
三日も寝ないでモビルスーツに乗るなんて尋常で
はないし、レイはアカデミーの講義も受けている
のだ。
それは、眠くなって当たり前だろう。
普通、パイロットというものはどんなにも忙しく
ても必ず睡眠時間を確保するものだ。

 「でも、何でそんなに寝て無いんだ?お前、そ
  んなに勉強しなければいけないほどバカでは
  ないだろう?」

座学の成績もトップレベルにあるレイがそんなに
勉強をしなければいけない理由が見つからない。 

 「曲を書いていまして・・・」

 「ミーアちゃんは新曲を出したばかりだし、あ
  れは結構売れているじゃないか」

ミーアちゃんはあれから順調に新曲をリリースし
ていて売上げもそう悪くないし、レイにそれほど
無理をさせていなかったはずだ。 

 「ユニウスセブンの追悼式典で使う鎮魂歌の選
  考会が今週末にありまして、ミーアがそれに
  出ると言うのでその曲を作っていたのです」

 「そう言えばそんな事を聞いたような気がする
  」

今度の2月14日で「血のバレンタイン」から二
年、ラクスが引退していなければ歌を歌っていた
のだろうが、彼女は引退してしまったので代わり
の歌手を選考する会が開かれるような事を小耳に
挟んだような気がした。

 「ラクス様の代わりに鎮魂歌を歌うという事は
  その映像が世界に発信されて、一流のミュー
  ジシャンとして認められるという事だそうで
  す。そんなわけで、睡眠時間を削り昨晩よう
  やく完成を見たのですが、私は限界を迎えて
  しまい・・・」

 「ああ、わかった。わかった。さっさと帰って
  寝てしまえ!明日、居眠りなんてしたら厳罰
  だからな」

俺はそれだけを言うとレイを帰らせた。
レイは基本的に真面目だし、作曲は終了したと言
っているのだ。
明日は居眠りなどしないだろう。

 「さて、俺も帰るかな」

残務を終了させた俺はクライン邸に帰宅した。


 「まあ、そんな事があったのですか?」

帰宅後、夕食を囲みながらラクスとお義父さんで
話をする。
最近は俺好みの和食のメニューをラクス自身が作
ってくれるようになって、大変楽しみな時間にな
っていた。

 「ミーアちゃんもチャンスだと思っているんだ
  ろうね。レイも責任感があるから懸命に曲を
  作っていたし」

 「そうだな。(血のバレンタイン)の追悼集会
  は世界中に放映される事が決まっているから
  、その追悼集会で歌を歌えば知名度が抜群に
  上がるだろうしな」

 「実は私、その選考会の審査委員長を頼まれま
  して」

 「へえ、そうなんだ」

 「前任者としての責任なんだろうな。私は前議
  長として追悼集会に出席する予定だし」

 「俺はアカデミーの生徒とその時刻になったら
  黙祷を捧げる事になっています」

 「そうだな。全員で行くわけにいかないからな
  。それに、今回の追悼集会は軍の護衛を極力
  無くすように努力するらしい。カナーバがそ
  んな事を言っていた」

 「でも、それで大丈夫ですか?」

戦争が終ったとはいえ、世界の混乱は完全に無く
なっていないので今のザフトはまだ準戦時体制の
ままであるし、摘発を逃れたブルーコスモス強行
派の連中の仕業と思われるテロなどが世界各地で
頻繁に発生していたのだ。
今回の追悼集会などは格好の餌食にされてしまう
可能性が高い。

 「フェイスに任命された数人の特務隊員の部隊
  が密かに護衛に就く事になっているから心配
  はあるまい」

 「それなら、大丈夫ですね」

 「君の同期のヴェステンフルス隊長とアイマン
  隊長も護衛に就くそうだからな」

 「追悼集会の方は大丈夫そうだけど、選考会の
  方はどうなんだろう?」

 「既に100組を超える応募があったそうです
  。初めて曲を作って歌うような方から新人歌
  手の方、それに、プラントでは有名なベテラ
  ン歌手の方まで多数の方が出席されます。ミ
  ーアさんもレイさん作曲した歌を歌われるよ
  うですね。それと、ニコルさんが曲を作って
  参加されるそうです」

 「ニコルが?」

 「はい。お忙しいのでプラントに上がるのは前
  日の夜になってしまうそうです。先ほど連絡
  がありました」

 「ニコルが参加ね・・・。誰が歌うんだろう?
  」

 「さあ?私も聞いてません」

 「でも、レイもニコルも出るしラクスが審査委
  員長を務めるなら俺も見に行こうかな?」

 「はい、是非いらして下さいな」

選考会は日曜日なので、俺は見学しに行く事にし
た。


(2月第一週の日曜日、某コンサートホール)

選考会は予想を超える応募者があった為に、急遽
この巨大なコンサートホールが貸し切られていた

 「応募者も凄いけど、観客も凄いな」

 「引退したラクス様を拝めますし、有名な歌手
  が多数参加しますしね」

 「俺の目的はラクス様オンリーだ!」

俺に一緒に見に来たイザークとディアッカが嬉し
そうに答える。

 「人の嫁さんに色目を使うなよ」

 「俺は一ファンとして言ってるんですよ。それ
  に、俺がアタックしても玉砕が関の山ですよ
  」

 「ディアッカ!お前は高望みし過ぎるから彼女
  が出来ないんだ」

 「イザーク、それは言い過ぎじゃない?」

 「そうだよ。お前は偶々婚約者がいるだけじゃ
  ないか!」

 「ディアッカ、たまたまでもいる奴の勝ちだ」

 「二人共酷え・・・」

ディアッカはガックリと落ち込んでいた。


 「ラクス、入るぞ」

 「どうぞ」

俺達はとりあえず、ラクスの控え室に顔を出す事
にする。
俺はラクスの夫なので当然、顔パスだった。

 「実はさ、席の場所を聞こうと思ってって!何
  だこれは?」

ラクスの控え室には沢山の花束や贈り物で溢れか
えっていた。

 「控え室に入ったら置いてあったのです」

 「凄い・・・」

 「さすがは、ラクス様」

 「実はこの部屋に入りきらないで、隣りの部屋
  にも置いてあります」

 「隣りの部屋ねえ」

三人で隣りの部屋を見にいくと花束、大きなぬい
ぐるみ、リボン付きの大きなプレゼントの箱など
が多数置いてあった。
あて先を見ると、プラントや各国の政治家や政府
、大企業、芸能プロダクション、有名人などから
来ているようだ。

 「凄い量だね」

 「食べ物なども沢山来ていましてとても食べ切
  れません」

 「どれも一流店の最高級品ですね」

 「美味しいなあ」

 「あのね、君達・・・」

いつの間にかシンが控え室に入ってきていてディ
アッカと二人で贈り物を食べていた。

 「あっ、おはようございます。ヨシヒロさん」

 「おはようじゃないだろう。いつの間に来たん
  だ?シン」

シンはアカデミーでは俺を教官と呼び、プライベ
ート時には名前で呼ぶようになっていた。

 「レイが見に来ないかって誘うものですから。
  ルナとメイリンとステラも一緒ですよ。後、
  ヨウランとヴィーノも」

 「みんなは何処にいるんだ?」

 「「「おはようございます!」」」

控え室にみんなが入ってきた。

 「あれ?レイは?」

 「ミーアさんと最終打ち合わせです」

 「あれ?でも、レイはステージに立たないんじ
  ゃないか?」

レイはミーアちゃんの歌の作曲者として名前だけ
は知られていたが、詳しい経歴や素顔は不明とい
う事になっていたからだ。 

 「何でも、ミーアさんを担当している音楽事務
  所の人との顔合わせと正式な契約を結ぶ為の
  ものらしいですよ」

やけに事情に詳しいメイリンが教えてくれる。

 「正式な契約ねえ」

 「印税契約とかみたいですよ。今まで数曲を発
  売してそこそこ売れていますから、結構纏ま
  った金額が貰えるみたいです」

 「将来の印税王だな」

 「羨ましいですね」

 「メイリン、彼氏にするかい?あいつ、カッコ
  良いからな」

 「えっ、私は・・・」

メイリンは相変わらず無許可でラクスへの贈り物
を食べ続けているシンを見ながら顔を赤くする。

 「なあ、多少は進展あったのか?」

シン争奪戦の進展状況を小声でメイリンに聞いて
みる。

 「私はステラと交代で毎日お弁当とおやつを作
  っているんですけど、お姉ちゃんやステラと
  違って専攻が違うからなかなか一緒になれな
  くて・・・。今まではステラだけだったんで
  すけど、最近お姉ちゃんとも仲が良いし・・
  ・」

 「あのさ、シンはまだそこまで考えていないと
  思うよ」

 「そうなんですか?」

 「俺も生粋のプラント出身のコーディネーター
  じゃないからわからないんだけど、14歳な
  んて地球ではまだガキなんだよね。ひょっと
  したらルナもメイリンもステラも異性の友人
  くらいにしか思っていないのかも知れない」

 「はあ・・・」

 「だから、友達でもいいから側にいれば十分に
  チャンスはあると思う。その内、シンも恋愛
  感情に目覚めるだろうし」

 「そうですよね。ありがとうございます」

 「(ルナマリアは意外と積極的に動いているの
  かな?まあ、メイリンへの助言はオマケって
  事で)」

 「では、そろそろ時間なので行きましょう」

 「そうだね、ラクス。それで、俺達の席って何
  処?任せろって言うからチケットの予約して
  ないよ」

 「こちらの方が案内してくれますわ」

俺達は会場の係員の案内で自分達の席へ向かうが
、その途中でニコルに出会った。

 「ヨシさん!イザーク!ディアッカ!お久し振
  りです」

 「おお!ニコル、元気だった?」

 「はい!毎日学生生活を満喫していますよ」

 「そいつは良かったな。でも、久し振りにプラ
  ント来たんだから、挨拶に来いよ」

 「すいません。実はさっきまで音楽事務所の方
  と打ち合わせをしていまして」

 「打ち合わせ?」

 「自分で作曲した曲を自費で発売する事にしま
  して」

 「自費で?」

 「クラッシックがメインなんでそれほど売れな
  いんですよ。だから、大抵は自費販売になっ
  てしまいますね」

 「それで、今回の選考会は?」

 「知名度が上げれば曲が売れますからね。そう
  なれば、コンサートを開けるようになります
  。そうなれば、音楽で食べていけるようにな
  ります」

 「ふーん、現実的な話だね。それで、曲を作っ
  たのはニコルなんだろうけど、歌うのは誰な
  の?」

 「それはですね・・・」

 「こんにちは!」

 「お久し振りですわ」

 「(悪魔の姉妹)・・・」

 「もう、その渾名は止めてよ!」

 「失礼ですわ!」

 「実は、僕が通っている大学の卒業生で他の科
  の学生なのに歌唱コンクールで優勝された方
  がいると聞きまして、その方の名前を聞いた
  所・・・」

 「他にいなかったのかよ・・・」

 「ユリカさんが一番歌が上手かったんです」

 「ほら、美人で歌が上手い楠木重工プラント支
  社長ってね。いい宣伝になるわけよ。人は霞
  を食べて生きていけるわけもないから多少は
  許されるでしょう」

 「私達の明るい未来の為ですわ」 

 「俺、無宗教だけどユリカが追悼集会で歌を歌
  うのって物凄い冒涜なような気がする」

 「俺も・・・」

 「アスランが聞いたら怒りそうだな」

イザークとディアッカも心底嫌そうな顔をする。

 「もう!失礼ね!絶対に優勝してやる!」

 「覚えていなさいですわ!」

その後、二人は激怒しながら審査会場に向かって
いったが、俺達は不安を感じずにはいられなかっ
た。


 「さあて、そろそろ始まるな」

 「ラクス様も気がきくなー!アリーナ席だぜ」

俺達の席は最前列の真ん中に取ってあった。
ラクスの力は引退したとはいえ、まだ全く衰えて
いないようである。 

 「うわー、最高の席だな」

 「うんうん、来て良かったー」

ヨウランとヴィーノは大喜びであったし。

 「ラクス様は相変わらず綺麗ね」

 「胸では勝利しているんだけど・・・」

 「ラクス、凄い!」

メイリン、ルナマリア、ステラがそれぞれ感想を
述べ。

 「イザーク、わざわざ休みを取って良かったな
  」

 「そうだな」

イザークとディアッカも大喜びであったが・・・

 「レイ、お前も最前列か」

 「はい、関係者という事で・・・」

 「それで、隣りの人は?」

 「始めまして。ミーア・キャンベルのプロデュ
  ースを担当しているキング・T@KED@で
  す。よろしゅうに」

 「・・・・・・(怪しい・・・。今時、あんな
  怪しげな大阪弁初めて聞いた・・・)始めま
  して」

 「レイ君の才能とミーアの歌声で芸能界の頂点
  を目指して頑張りまっせ!」

 「はあ・・・。ですが、レイはまだ学生ですの
  で」

 「先日の事はすいまへんなあ。ミーアが無理を
  させ過ぎたようで」

 「二度とこういう事が無いようにしていただけ
  れば」

 「さすがは、(黒い死神)さんですな。若いの
  に度量が広い。感心してまいますわ」

 「(大阪弁?らしいけど怪しい・・・)」

 「そろそろ始まりますから、結果に期待しまし
  ょう」

 「そうでんな」

俺達は始まった選考会に集中する事にした。


 「うーん、みんなプロ及びプロを目指すだけあ
  って歌は上手いけど、追悼式典で歌うとなる
  と・・・」

 「曲と合っていまへんな」

 「ディアッカはどう思う?」

 「ラクス様が歌えば済む問題でしょうね」

 「イザークは?」

 「ディアッカと同じ意見です」

選考会は終盤にさしかかっていたが、審査委員長
席に座るラクスも他の審査員達の表情が晴れない

確かに、歌唱力もあり曲自体もなかなかであった
が、テーマは鎮魂歌なのだ。
バラードや流行曲を歌えばいいと言うものではな
い。

 「このままだと該当者無しか?」

 「いえ、うちのミーアの出番がまだですわ」

 「それに期待するか。レイ、自信のほどは?」

 「絶対に行けます!」

 「おお、凄い自信だ!」

 「シンはどう思う?」

俺が隣りのシンに話し掛ける。

 「おい!シン!」

 「ぐぉーーーーっ!ぐぉーーーーー!」

 「・・・・・・」

ラクス宛の差し入れを爆食してお腹が一杯のシン
は鼾をかいて爆睡していた。
このおバカは人間の持つ欲求に忠実であるらしい

 「この野郎!起きやがれ!」

 「痛い!何するんですか?」

俺がシンの頭に拳骨を落すと、シンは飛び上がっ
てから抗議してくる。

 「お前ね。普通、寝るか?」

 「だって、穏やかな曲が多いじゃないですか」

 「そういう曲の選考会なんだよ!」

俺達のやりとりを聞いていた審査員達から「五月
蝿いよ!静かにしろよ」という視線が飛んでくる
。 
さすがに、ラクスも少し怒っているようだ。

 「カザマさん、次はうちのミーアでっせ!」

ステージから静かな曲が流れ出して白いドレスを
着たミーアちゃんが歌いだすと、全観客が静かに
曲に聞き入りだした。
これは、凄い!見事な曲だ。
数分で曲を歌い終わると拍手が鳴り響いて止まら
ない。

 「やったー!うちのミーアの優勝だ!」

T@KED@さんが大喜びをしていると、最後の
参加者の歌が始まった。

 「T@KED@さん、最後の参加者ですよ」

 「もう、うちのミーアの勝ちでっしゃろ」

 「多分、そうでしょうけど。万が一って事があ
  りますよ」

最後の曲はステージの端にピアノが設置されて、
そこで若草色の髪の少年が演奏を始めた。
そして、ステージには水色のシンプルなドレスを
着た美しい少女が綺麗な声で歌いだす。

 「えっ!あれ、ニコルが演奏しているのか?」

 「そうだった!ニコルは最後の順番だったんだ
  !」

 「うーん、曲も見事だが演奏が素晴らしい」

ディアッカ、イザーク、俺がそれぞれに感想を述
べる。

 「歌がまた素晴らしいな」

 「あれ、ユリカなんだろう?」

見た目が幼いユリカが少女に見えたのだ。

 「悪魔が天使の歌声を披露するのか。才能と性
  格って一致しないんだな」

再び三人で感想を述べるが、その歌声に聞き入っ
てしまう。

 「素晴らしい」

 「綺麗な声・・・」

 「綺麗・・・」

ルナマリア、メイリン、ステラもユリカの歌声に
完全に聞き入っていたし、会場の観客も音一つ立
てないで歌声に集中していた。

 「これでは、ミーアは勝てへん・・・

T@KED@さんの諦めの言葉と共に歌が終了し
て、観客が総立ちで拍手をする。

 「これで、決まったな」 

結局、優勝はニコルとユリカに決定して追悼集会
の会場で生で曲を歌う事になった。
ミーアちゃんは審査員特別賞を貰って、その曲を
新譜として発売する事にしたようだ。
ラクスはユリカの過去の偉業を知っているので、
顔を引きつらせながら賞状を渡していたが、ここ
まで観客の支持を受けた曲を優勝から外す事が出
来なくて、どうしようも無かったようであった。


その後、ニコルは追悼式典の曲の作曲者としてそ
の存在が有名になり、ミーアちゃんは新譜として
発売した曲が大ヒットして一流歌手の仲間入りを
果たし、レイも多額の印税収入を得たようだ。
そして、ユリカは追悼式典で見事な美声を披露し
てプロの歌手への誘いもあったのだが、仕事が忙
しいという理由で全てを断ったらしい。

 「こんな結果!納得出来るか!」

 「ありえないぞ!」

 「ニコルって勝つ為に、手段を選らば無過ぎ・
  ・・」

これが、イザーク、ディアッカ、俺の最後の感想
であった。


(選考会当日の夜、デュランダル委員長の書斎内
 )

 「そうか、審査員特別賞か。残念だったな。レ
  イ」

 「はい。ですが、新曲として発売される事が決
  まりました」

レイは音楽活動の話をデュランダル委員長と二人
きりになった時でないと話さない。
理由はその話にはどうしてもミ−アの話が入って
しまうので、タリア艦長の機嫌が極端に悪くなっ
てしまうからだ。

 「レイは凄いな。私が14歳の時は何の才能も
  無い普通の学生だったよ」

 「お義父さんはプラント評議会外交委員長の顕
  職に就いているではありませんか」

 「それは、この歳になってからだ。レイの方が
  凄いよ」

 「いえ、そんな」

レイが顔を赤らめて嬉しそうに笑っていると、デ
ュランダル外交委員長が頼みごとをしてきた。

 「レイ。実は、二人だけしか知らない秘密のお
  願いがあるんだよ」

 「何でしょうか?」

 「レイ、これは本当に二人しか知らない男同士
  の重要な秘密だ。絶対に口外しないと約束し
  てくれるか?」

 「はい、絶対に秘密にします」

 「そうか、では。実はな・・・」

 「実は?」

 「お金を少し貸してくれないだろうか・・・」

 「お金をですか?」

 「タリアが産休に入って、我が家の収入が多少
  減ったのは理解しているか?」

 「はい」

 「実は私の小遣いが減らされてな。そこで、印
  税で纏まったお金が入ってきたレイにお願い
  しているんだよ。頼む!この通り!」

 「はあ・・・」

自分が生まれて物心ついた時から、一番尊敬して
いる人物の頭を下げる姿を見て少しショックを受
けてしまう。

 「お義父さん、頭を上げてください」

 「レイ、私を情けない奴だと思っているのだろ
  うが、お前も後10年したら絶対に私の気持
  ちが理解できるから」

レイはあまりわかりたくない気持ちで一杯だった


(翌日、アカデミー校舎内)

翌日、シン達が教室に入るとレイが楽譜を机に置
いて真剣に悩んでいた。

 「レイ、選考会はもう終ったじゃんか」

 「あの選考会はこれから毎年行われる事になっ
  た。そこで、今から曲作りに励んでおけば、
  俺の勝利もそう難しくないだろう」

 「えっ!今から曲を作るのか?」

 「ニコル・アマルフィー!来年は絶対に倒す!
  」

レイは大きな闘志を燃やしていた。


(2月某日、中央アジアのある共和国内)

最高の傭兵と噂される今日の俺の任務は難民達の
護衛であった。
この国はユーラシア連合に所属していたのだが、
国内の80%を占めるイスラム教徒がイスラム連
合への帰属を表明して残り20%を占めるキリス
ト教系住民への攻撃を開始してしまったのだ。
そこで、ユーラシア連合はこの国からキリスト教
系住民の避難を援護しているのだが、数が多い為
にいくら兵士がいても足りず、運が悪い事にイス
ラム過激派の私兵が避難民を襲って略奪を繰り返
しているらしい。
そんなわけで、俺達はある避難民の殿に付いて敵
私兵集団へのけん制を行っていた。
幸い、私兵集団には装甲車くらいしか装備されて
いないので、イライジャのジンを見ると逃げ出し
てしまっていたが。

 「今回は楽な任務で良かった」

 「ブルーフレームの調子が悪いからな」

 「今度は何処が壊れたんだ?」

 「バランサーの不調で修理に後半日掛かるそう
  だ」

 「立てないのでは話にならないか・・・」

 「だがよ、ガイ。今回はモビルスーツは使わな
  いだろう」

 「そうだな」

ガイがリードと大型トレーラーの運転席で話して
いると突然、イライジャから連絡が入る。

 「ガイ!敵の私兵集団にモビルスーツがいるぞ
  !機種はストライクダガーが三機だ。今、向
  かっているところだ。援護を頼む」

 「おい!ガイもピンクちゃんで出撃だ!」

 「ガイ!早くフォローについてくれ!ピンクち
  ゃんがあるだろう?」

 「リード!イライジャ!」

 「何だよ!」

 「早く援護に来い!」

 「100歩譲ってあのジンで出撃する事は了承
  しよう。だが、何であれをピンクちゃんと呼
  ぶんだ!」

 「ラクス様の命名だから」

 「ピンク色だから」

 「大体、何で色を塗り替えない!」

 「お前な、塀や壁とは違って板金塗装だから手
  間が掛かるんだよ。それに、どこにも損傷が
  無くて綺麗そのものだから一旦全部剥がさな
  いといけないし、剥がしたら早く塗装しない
  と錆びてしまうし。とにかく、面倒くさいか
  ら塗装がかなり剥げてからにする」

 「その言葉忘れるなよーーー!」

その後、ガイはストライクダガー小隊をイライジ
ャと共に始末して無事に任務を達成したが、担当
のユーラシア連合の士官に爆笑されながら報酬を
渡される事になった。
更に、南米の左翼ゲリラに加え、イスラム過激派
の連中からも「ピンクの死神」として恐れられる
ようになった事も追記しておく。

 「風花、色を塗り替えてくれ!」

 「予備機だし、無傷なので勿体無いです。その
  まま戦って下さい」

 「ちくしょう!カザマの奴!覚えてろよー!」

ガイの絶叫は中央アジアの乾いた大地に響き渡っ
た。


         あとがき

実は会社の同僚が隠れガンオタである事が判明し
ました。
その伝で種と運命の全話を貰ったのでこれを書き+
ながら見ています。
先に運命を見ているのですが、シンはやっぱり扱
いが悪い・・・。
それと、ファイナルプラスとファフナーの年末特
番も他の方からビデオテープでもらったんですけ
どファフナーの方が圧倒的に出来が良い・・・。
来年、SEEDの三作目が放映されるという噂で
すけど、本当なのでしょうか・・・。
あれの続きって、怖いもの見たさではありますが
、見てみたい気もします。


  

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