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▽レス始

「終わった世界のその後に 五話(GS+Fate)」

シヴァやん (2006-04-23 13:11)
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 no side in chaos

「うにょら〜」

 真っ白な空間にある執務机の前。奇妙な声をあげながら、意思の少女は高速で書類に判を押していた。

「うにゃら〜」

 残像が残りそうなその動作だが、掛け声のせいで台無しな事この上ない。

「ふにょら〜」

 だがそれ以上に、コスプレチックなスーツを着た見た目小学生の美少女が、額に汗をにじませながら必至に印鑑を振りかざしている情景は、なんと言うか一種異様な和み空間を形成していた。

 だが、この少女は世界意思である。言うなれば現在の世界の最高責任者にして、最終決定者なのである。その証拠に、書類の内容は星雲の軌道決定なんていう洒落にならない物まである。

 「っふうっ。ようやく終わった。まったく、いきなりこんなに持って来ないでよね。危うく見逃すところだったじゃない」

 恨みがましい眼で見やる先には、白い羽を持つ少女と黒い羽を持つ少女、そして鱗に覆われた羽根を持つ少女がいた。

「そうは言ってもそれがあなたの仕事なんだから、仕様が無いでしょう?面倒なら後継者でも創りなさい」

 黒い羽の少女が言う。

「それに、ちゃんと間に合う分量と時間でしたでしょう?いつもの方法なら」

 鱗の羽の少女が言う。

「第一、どんな緊急の書類だろうと趣味を優先しようとするのは君だろう?録画でも別にかまわんと思うのだが?」

 最後に白い羽の少女が言った。

「うにゅ〜。そんなこと言ったって〜」

 机の上に突っ伏し、はふ〜とため息を洩らす。そして徐に顔を上げ、

「まあ間に合ったからいいか」

 そうポジティブシンキングのもと、グイーと伸びをし、

「さて、ようやく見れるわね」

 そう言ってどこからとも無くリモコンを取り出し、

「ポチッとな」

 ボタンを押す。

 すると、いきなり少女の正面に大画面が現れた。

「さてさて。暇つぶし暇つぶし。………ん?」

 非常に嬉しそうに画面を見て、ふと、背後の気配に気がついた。振り返れば、笑顔でたたずむ三人娘。

「?まだ何か用事が?」

「いえ、本国の方だと観客が大勢いまして」

「どうせならここで見ようかとな」

「ここなら大画面だし」

 三人が三人とも、居残る気マンマンだった。

「ちょっと。仕事急がせたんだからさっさと持って行きなさいよね」

「もう空間転移で送り付けました」

「あっそ」

 脱力する意思に向かって、

「そう言えば、大丈夫なんですか?こんな面子を揃えて?」

「ん?なにが?」

 首を傾げる意思に向かい、

「聖杯の中身の事だ。あのままにしておけばおそらく、いや確実に『この世の全ての悪(アンリ・マユ)』で出るぞ?」

「そうなったら抑え切れなくなるかも知れませんが?」

「ああそれ?そうなったらそうなったで、人間の自業自得よ。後処理は私の管轄だし、オリジンの封印完全開放と後押しとで何とかなるはずよ」

 三人の疑問をすっぱりと切り捨てる。

「そんな事より、これからが楽しくなるんだから注目するならこっちよ」

 そういって、リモコンのスイッチを押し、

「それに、彼なら守るためにどんな事でもするわよ」

 映し出した場面に注目した。


 side YOKOSIMA

「それで?いきなり手を出してきたって事は戦る気なのか?」

 給水塔の上に立つ赤い騎士に向かってそう問う。

「答えるまでもあるまい」

 そう言って、騎士はいつの間に拾ったのか、先ほどの双剣を構えた。

「そうだな」

 それに応じてこちらも霊波刀を両手に作り出し、自然体に構える。

 そして意識と注意は戦闘状態のまま、思考を加速させる。

 相手の得物は左右の双剣。さっきは確かに弾き飛ばしたはずだが、今はその両手にある。確証は無いがおそらくは物体出納(アポーツ)かそれに類するものだと推察。注意が必要。

 場所は幾分手狭なので凛ちゃんを巻き込まないように校庭に降りたいが、あの剣は飛剣としての用途もあるため下手に離れられない。

 相手の戦力を分析しつつ周囲の状況も把握し………

「まって。その前に一つだけ質問よ」

 殺気を飛ばしあっていた俺達二人の間に、凛ちゃんが割り込んだ。とは言っても、さりげなく両手に宝石持ってるし、無警戒ではないらしい。

「ふむ。ああ、この結果いについてなら私ではない。生憎と私にこのような技量は無いのでな」

 質問に先回りして答える赤き騎士。

「そっちじゃないわ。それはこの場であなたを倒せば判る事だし。で、あなた何のサーヴァント?」

「わざわざ自分の手の内をさらすとでも?」

 律儀にそう返す騎士。実は良い奴なんだろうか?不意打ちしたけど。

「そう。それじゃあ………」

 それと同時に騎士が飛び出し、こちらも遅れずに飛び出す。

「始めましょうか?」

 凛ちゃんが後方に飛び退りながら、どこか満足げにそう言う。

 ………もしかして仕切りたかっただけ?まあいいけど。

 苦笑を顔に浮かべながら相手の振り下ろしてくる剣に向かって、霊波刀を叩き付けた。


 ガキキキィィィン!

 瞬時に走った剣閃はそれぞれ三つ。宙に浮く互いの中間でぶつかった斬撃は、それぞれの体を後方へと弾き飛ばす。

「ちっ!」

 瞬時に体勢を立て直し、再度激突。

ガキキキギィィィィィィン!

 そのまま斬撃の応酬。

 右袈裟から左袈裟、唐竹と平行して左逆袈裟と思わせて横薙ぎ、反撃を透かして突き!

 斬って斬って突いて避けて避けて突いて防いで防いで弾いて斬って斬斬防避避防斬突突避斬!

 その悉くを防ぎ防がれ避わし避わされ、互いに無傷の攻防が続く。

 その最中に相手の能力が大体判った。おそらく能力的にはこちらの方が上。その代わりこちらは凛ちゃんの方に行かないように後退できないし、相手は感じ的に防御主体の闘い方だしで、戦闘は拮抗している。

 だが、いつまでもこうしている訳にも行かない。

「そ………らぁ!」

 一瞬の間隙をついて渾身の力で霊波刀を振るう。

カァァァン!

「くっ!」

 甲高い音を響かせて弾かれる左手の黒剣。それと同時に相手が下がる。それを追いかけ踏み込み、武器の無い右から袈裟斬り。

ギィィィィィン!

「ちっ!くっそ!」

 それをまた弾き飛ばしたはずの剣で防ぐ騎士。その場から飛び退るのを追い、更に一歩踏み込み、左袈裟。

カイィィィィィン!

 それによって右の白剣を弾き飛ばし、間髪入れずに同方からもう一度。

キィィィィィン!

 更にそれを防ぐ白剣。

 くそったれ!埒が開かねー!

 心中毒づき真っ向から唐竹。それにより相手を弾き飛ばし、即座に追う。

「フッ!」

 それに対応するように飛来する白剣。それを右の霊波刀で叩き落し、

「?」

 相手が無手というのを確認する。確かに飛来したのは白剣のみ。なら黒剣はどこに?

「チィッ!」

 その在処と軌道を察知し即座に振り向き全力で後退、しようとするがこのままでは間に合わない。間に合うには、

 縮地法。妙神流高速移動術体の項第一幕「瞬転」。

 流れるように霊力を足に溜め、足の裏から全力噴射。その衝撃をブースターにして一瞬にして前へ。凛ちゃんの鼻先に着地し間近に迫っていた黒剣を弾き飛ばし、

「I am the bone of my sword(我が骨子はねじれ狂う)」

 背後から聞こえる呪文に首筋がチリ着くような危険を感じ、凛ちゃんを抱き抱えて、

「わぷっ!?」

 全力で前へ。上下逆さになるように跳び、屋上の端から飛び出して足元にソーサーを展開。それをまた全力で蹴りベクトルを真下へ。

「偽・螺旋剣供淵ラドボルグ)」

 間一髪自分達のすぐ上をカッ飛んで行く何かを見送り、安堵の息を吐いて着地しようと体を入れ替え、

「ド畜生が!」

 追撃で別々の方向から迫る双剣を確認。両手は凛ちゃんで塞がっているため不可。足は開いているが片足での迎撃では落とせるのは一つ。両足を使って迎撃すれば弾けるが、その場合は着地に間に合わない。この勢いで胴体着陸を敢行すれば俺はともかく凛ちゃんがただではすまない。

 ならば、

「サイキックソーサー!ハァ!」

 空中に展開したソーサーを飛ばし片一方を迎撃。残った方も足に展開した栄光の四肢により叩き落し、左足一本で着地。

「ぐぅ!」

 さすがに無理があったのか足に痛みが走る。

 痛めたか?大した事は無いが機動力にマイナス修正。くそ、これで速さ的には互角か。

 「大丈夫か?」

 一応の防護はした腕の中の凛ちゃんに聞くと、返ってきた返事は『問題なし(ノープロブレム)』。見た感じは少し参っているみたいだったけど、言葉に甘えてそれを無視し、その場からまた飛び退る。

 直後にそこに刺さる双剣。そしてその後ろに飛び降りてくる赤い騎士。

「まさかあれを完全に避けるとはな。さすがに驚いた」

「そりゃどうも。で、さっきの攻撃から察するにあんたはアーチャーでいいのかな?」

「やはりばれるか。あそこで使うのはまずかったな」

 そう言って足元に突き立つ剣を引き抜き構える。

 それに応えこちらも構える。

「しかしあんたどこの英霊だ?いまいちはっきりしないんだが」

「その言葉、そのまま返そう。貴様はどこの英霊だ?少なくとも聞き覚えは無いぞ?」

「ま、それはそうだろうけどね。で?まだ続けるのか?」

「マスターの命令でね。仕方が無い」

「そうか」

 互いに一滴の苦笑を零し、即座ににらみ合い再開する。

「なら、行かせてもらおうか」

 腰を低く落とし、突撃の構えを作り上げ、

カサッ

「誰だ!」

 物音によって中断された。


 side RIN 

「くっ!肝心なところで大ポカを!」

 走りながら自分を罵倒する。

 サーヴァント同士の戦闘中に、まさか人払いの結界を忘れるなんて。

 遺伝子の呪いなんて関係ない。これは私のミスだ。

 先を走っていったバーサーカーを追いかけ、校舎に駆け込む。その先に見えるのは佇むバーサーカーと、

「っ!」

 血に濡れた廊下に倒れ付す、一人の生徒の姿。

「凛ちゃん」

「アーチャーは?」

「俺がここに着いた時にはいなかった。一瞬でキメて逃げたらしい」

「追跡は?」

「不可能。だけど、こいつまだ生きてるよ。どうする?」

 それは、この男子生徒をどうするかの意味。そんなものは決まっている。この地の管理者である私は一般人を巻き込む事を良しとしないし、確実とは言えないけど手段もある。何より私のせいで誰かが死ぬのは許せない。

「助けるわ」

「手段は?」

「ある」

 一言で応え、足元の生徒を仰向けにする。

「………!」

 その顔を見てそいつが誰かを認識して、息を飲んだ。

 衛宮士郎。フラッシュバックする。夕暮れ。校庭。高飛び。飛べず諦めず挫けず何度も何度も何度もナンドもナンドモナンドモナンドモ………。

「どうかした?」

 バーサーカーの声にはっとした。頭を振り即座に復帰。傷の具合を確認して、頷く。

「これなら大丈夫。綺麗に一回だけだわ」

 心臓を通る綺麗な袈裟切り。何で即死していないのかが不思議だけれど、生きているんだから無問題。剣筋がまっすぐで傷が広がってないし、これなら修復すれば持ち直すはず。

 懐から虎の子の宝石を取り出し、

「周りの傷は受け持とう。凛ちゃんは心臓に集中して」

 従者のその声を背に受け、全力で魔術を発動させる。


 学校からの帰り道。

「はぁ」

 自分の溜息を聞いて更に気が滅入る。

 傷の修復はうまく行った。もうこれ以上ないって位うまく行った。あれを見せれば時計塔で楽々主席が取れそうなくらい、会心のできだった。

 ただそのせいで虎の子の、ついでに形見の宝石を使ってしまった。せっかく父さんが残してくれた切り札だったのに。

「はぁ」

 また溜息が漏れる。

「そんなに溜息ばかり吐いていても仕様が無いだろう?時間は不可逆なんだから。重要なのは今日のことを教訓として次回に生かせるかどうかだよ」

 バーサーカーが尤もな事を言って来る。確かにその方が重要だ。

 過去(さっきまで)より未来(これから)。

 よし。もう今日みたいなポカをしないように気をつけよう。

「それにしても、どうやったかは見ていなかったけれど、大した物ね。傷跡も残さずに治癒するなんて」

「まあ、あれくらいならね。凛ちゃんも言ってたけど、傷が綺麗だったから意外と簡単だったよ。あ、方法は霊力の応用。例の如くね」

「まったく。どこまで規格外なのよ」

 苦笑する。本当に、どこまで規格外なのだこの男は。

 先ほどの戦闘においても、昨日の骸骨兵殲滅においてもその出鱈目な戦闘技術は見せてもらった。昨日と今日のことを総合すれば、彼はまだ実力の一端しか見せていないと判る。さっきの空中での軌道変更ですら容易く行う技量の底は、一体どこまで続いているのだろうか?

 そんな事をつらつらと考え、

「そう言えば凛ちゃん。さっきの、衛宮だっけ?ちゃんと後処理したのか?」

 その一言で思考が停止した。

「え?………あ!」

 記憶の操作してない!なんて間抜け。

 急いで引き返す。

「やっぱりやってなかったのか」

 はぁとため息を吐く我が従者。うるさいわね!あの時は色々と一杯一杯だったのよ!遺伝子の呪いもあるし!

 そんな事を思うが判っている。先ほど自分に誓った事がまったく生かされていない!私は馬鹿か!

 自分自身を心中罵倒し、更に加速。

 だが遅い。先ほどの戦闘からそろそろ一時間。サーヴァントならこの時間があれば、彼の家を突き止めて再殺するには十分なはず。

 間に合え!

 必死に願い、

「凛ちゃん!走っていたんじゃ間に合わない。あいつの家の位置を、ラインに乗せて送ってくれ。そこまで跳ぶぞ」

 並走する従者からの指示に従い即座に転送、その後にバーサーカーに掴まり、

「口開けるな、舌噛むよ」

 また抱き抱えられた。そのすぐ後に、

ドンッ!

 という音と共に上空へ。バーサーカーは空中を蹴りながら一直線に彼の家へ向かった。

 ほんの数十秒後で彼の家が見えた。その瞬間、

「っ!」

 強力な光と魔力の奔流を見た。

 うそ!あれはサーヴァントの召喚!まさか七人目のサーヴァント!?

「バーサーカー!家の近くに降ろして!」

 バーサーカーにそう指示を出す。もし自分の予想が正しいのなら、直接乗り込むわけには行かない。

 バーサーカーは私の指示に従って、塀の外に着地する。ここに下りる前に見た光景は、何者かが争っているような風だった。

 そして数秒後、壁を飛び越え逃走する人影。

 あれは………アーチャー!やっぱり来てたの。

 走っていく赤い背中を見送り、

「凛ちゃん!」

 バーサーカーの焦ったような声を聞き、抱き寄せられたと思ったら飛び退っていた。その眼前に塀を飛び越え降り立つ人影。

 外見から判断して、おそらくは少女だろう。

 その凛々しい立ち姿を見て、何故か瞬間的に確信した。

 セイバー。聖杯戦争中、最高のサーヴァント。

 その名に相応しい存在感を放つ少女は、無手のまま突っ込んできた。

「ちぃ!」

 バーサーカーが舌打ちし、飛び離れる。それに構わず腕を振り下ろすセイバー。

ブシュッ!

「くっ!」

「なっ!?」

 それによって、バーサーカーの腕が何故か切り裂かれる。

 その間に目の前の少女は更に踏み込み、振り下ろした剣を振り上げ、

「止せ!セイバー!」

 途中で上がった声によって、その動きは中断された。


 <後書きですたぶん>
どもです
シヴァやんです

これを書いているパソコンのYキーが何故か不調で、書いているときに『凛ちゃん』が何度も『凛たん』になりました。
それにちょっと萌えかけたのは秘密です。

閑話休題

ようやっと戦争開始の下準備が整いました。ふぅ。

戦闘シーン難しいですね。
思ったより短くなってしまいましたし。
他の作家様みたいには全然行かないですはい。猛省。

あとそれから、ランサーの役回りが一応決まりました。
あくまで一応ですけど。しかも、あまりいい役じゃなかったり。


 ではレス返しをば

○1さま
ご指摘ありがとうございます
直感の事忘れてました。
あと、この話での横島の予知は原作終了後に手に入れた能力と言う事です

○ジェミナスさま
失ったものについては御予想のとおりだと思います
そこらへんの事情は外伝辺りで書こうかと思っております。

○ryoさま
さて誰でしょう?(ニヤッ)

○なまけものさま
殺した人数についてはまあ、人間界に存在した人数の関係上ああなります。
終末の檻は細かい説明を省くと終末戦争の現在での呼び名です。
人間関係はあまり変化してないかもですけど、慎二はかなり重要な役回りになる予定。

○がががさま
初レスありがとうございます
強さはこれで大丈夫ですかね?
いまいち能力が把握し切れてないのですが

ではでは。

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