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「魔除けの鐘を鳴らす者達 第5話前編 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-04-22 01:03/2006-05-28 05:58)
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第5話 前編 新たなる日常

「お早う、シンジ君。調子はどう?」

Nervの訓練用エントリ−プラグに乗ったシンジが欠伸を噛み殺し、通信回線から朝の挨拶を返す。
朝一から血の味がするLCLに浸かるのは、爽やかな目覚めの気分を充分だいなしにしてくれる。

「慣れました。悪くないと思います」

良くも悪くも人は環境に適応するものと苦笑する。

「それは結構。エヴァの出現位置、非常用電源、兵装ビルの配置、回収スポット・・・全部頭に入っているわね?

「・・・・・多分」

自身なさげに赤木リツコに答える。本当のところ半分も覚えていない。
連日連夜Nervの頭脳ともいえるス−パ−コンピュ−タMAGIから情報を引き出す為にハッキングを仕掛けているので、家事と修行とイルイとのスキンシップ以外、万時てきとうに過している。

「では、昨日の続き。インダクションモ−ド始めるわよ」

仮想シュミレ−ションが起動した。アーケドゲ−ムで人気爆発のバ−ニングPTに似ている。リアルな画像だが、半分は遊び感覚。戦場の緊迫感が一切感じられない。
全身の産毛が逆立ち、凄さまじいGによって起きる嘔吐に耐え、内臓を引っくり返される感覚もない。
まあ、それなりに技術はあがる。

――シュミレ−ション スタ−ト――

仮想空間に第3使徒サキエルが敵として現れる。
狙いを定めパレットガンのトリガ−をひく。

「目標に命中」

デ−タを取っている伊吹マヤが、すかさず報告する。
命中率74% ライフルの扱いは素人同然だったシンジにしてみれば上出来。
シンジにとって銃は、近接戦闘に持ち込む為の牽制用武器としか今まで見ていなかった。
プログナイフを装備しての白兵戦の訓練回数は10回。その10回とも仮想敵を瞬殺してきた。

「しかし・・・・・よく乗る気になってくれましたね、シンジ君」

シンジがエヴァに乗せられた経緯を知っているだけに、続けてエヴァのパイロットになってくれるのは難しいとマヤは思っていた。

「彼には彼の考えがあるわ。それにタダで乗ってくれる訳じゃないわよ」

初号機に乗るにあたってシンジはゲンドウに契約書を突きつけた。
Nervがシンジを、どの程度必要としているのか見る意味合いもあった。
恩師マスタ−アジアに頼まれたので、今後もエヴァには乗るつもりだが、その事を態々Nervに教える必要はない。
あまりにもキナ臭いNervという組織を信用するのは危険だ。
シンジがエヴァに乗るのは、あくまでビジネスライフだからと思わせていたほうがいい。
碇ゲンドウとの親子の絆?味噌汁で顔を洗って一昨日きやがれ。
そして主な契約内容は、だいたい以下の四点。


一つ パイロットが了承できない、無謀な作戦の命令拒否権

一つ 使徒一体を倒すごとに報奨金。日本円で100億。碇シンジが指定した口座への即時振込み

一つ プライベ−トに置いて、盗聴、監視の禁止。前文の内容を破った場合。
実力行使によって対象を排除。Nervの関係者と判明した場合。罰金として1億円を指定した口座への振込み

一つ イルイの戸籍を用意。碇シンジの養妹としての登録


技術部長としては、実験に協力的に参加してくれるので問題ないのだが、作戦部長の葛城ミサトに報告書が回ってきた時、命令拒否権の項目にミサトは荒れ狂った。
親友の目的が、使徒への復讐と知っているリツコは、彼女を宥めるのに酒屋を7件はしごした。
ロッジクに考えれば、シンジの命令拒否権の申請は納得がいく。

10年前に自分を捨てた父親に、手紙一つで呼び出され。謝罪の言葉かけずに初号機に乗り戦場に出ろと命令するゲンドウ
搭乗する見込みがないと判断すると、重傷の綾波レイを使った脅迫
初号機が戦場に出て最初の命令が『歩いて』
武器を用意できず、ロンド・ベル隊への援護要請の却下

自分の命をチップにする戦場で、兵士が一番憎むのは優秀な敵よりも、無能な味方の指揮官だ。
軍隊は上官の命令が絶対と叩き込まれるだけに、無謀とか無理とわかっていても従わなければ規律が乱れる。
兵士にとって最大の恐怖は、軍内部の派閥競争のバランスで昇進してきた実戦経験ゼロの士官を上官にもつこと。なまじ派閥争いで勝ち抜いてきたので自己保身だけは人よりもあり、味方を盾にしても自分だけは生き残る。

有効な命令を何一つ出せなかったNervを、信用する要素がシンジには一つもない。
酒場でクダを巻くミサトに根気よく説き伏せた。

「ミサト、貴女7年前の一年戦争に強制徴兵されて、ア・バオア・ク−での戦いが初戦。それも乗る機体は【RB−79 ボ−ル】キャノン砲使用不可能。武装は左右についているマニピュレ−タ−のみで残量エネルギ−は生命維持装置を含んで一時間可動できるかどうか、そのうえ発射口から出たら目の前には【MSN−02ジオング】が待ち構えていて、自分を親の仇のように執拗に狙ってくる。貴女ならそんな状況に追い込んだ上官を信用できる?」

と分かりやすく言ったら、ミサトは泣き上戸になり、シンジの寝ている部屋に押しかけて謝った。
深夜に叩き起こされ、酒臭い息を吐き、涙と鼻水で化粧が落ちたグシャグシャの顔で頬ずりしながら謝ってくるミサトに、流石のシンジも降参した。
作戦は基本的に従うし、命令拒否する時は理由を説明するとシンジはミサトと約束して安眠を取り戻した。
よほど鼻水でパジャマを汚されるのが嫌だったのか、それとも隣で安らかに眠っているイルイを無粋な事で起こしたくなかったのだろうかは当人でないと分からない。


「エヴァに乗ってから、まだ間もないのに・・・・・あのシンクロ率を弾き出すなんて」

作戦部長としてシンジの訓練を見ている葛城ミサトが、次々と出される訓練結果に驚嘆を隠せない声でリツコに言った。

「本人にその気がないにしても、優秀な成績よ。碇司令があの子を、ここに呼んだ理由も納得出来るわね」

「・・・・・そうね」

画面から目を離さずミサトの言葉に同意する。どれも貴重なデ−タだ。初号機以外の零号機と弐号機の基本プログラムが大幅に改善できる。

「――で、どうなの?シンジ君の学校生活は?」

一通りデ−タの採取作業が終了したリツコは、マヤに解析するよう命じ、シンジとイルイの2人を引取ったミサトに、普段はなにをしているのか訊ねた。

「転校して一週間・・・・・相変わらずよ。未だにイルイちゃん以外、誰からも電話はかかって来ないのよね」

「電話?」

「必衰アイテムだから、携帯を渡したんだけどね。イルイちゃん以外の相手に使った様子がないのよ。アイツ・・・・ひょっとしてイルイちゃんに構いすぎて友達いないんじゃないかしら?」

それは、あり得る。記憶喪失で戸籍も無かったイルイに、父親に捨てられた時の自分を見ているのかもしれない。
連邦政府の登録バンクをMAGIで調べたが、イルイの戸籍情報はなかった。
フランス人形のような金髪の髪に琥珀色の瞳を見て、日本人と思う人間はいないだろう。
立て続けに起きる戦乱の中、日本は比較的、裕福で安定した情勢を保っているが、諸外国の中では日常レベルの行政が麻痺しているような国もある。
イルイも、そんな国々の出身と考えれば戸籍が登録されていないのも納得できる。
MAGIを使えば人ひとり位の日本国籍を作るのは造作もない。それにNervに不信感を持っているサ−ドチルドレンに恩を売ることもできる。
現在、イルイのフルネ−ムは碇イルイとなっている。

「ところで、もう一人の転校生の調査は済んだの?」

シンジとイルイが通う、中学校へ同時期転入してきた男子生徒。タイミングがあまりにも良すぎるのでミサトは転校生の経歴を調べた。

「大体はね・・・・」

「煮え切らない答えね。結果は?」

歯切れの悪い親友が、苦虫を何十匹も噛み砕いたような顔を見せた。

「データは名前も含め、全てダミ−。ただし、マルドゥック機関からの報告はなし。つまり、イレギュラ−ね」

「・・・・・・・・・・・・」

ミサトの目の下にクマがでている。この二日間その事を調べていたので徹夜が続いていた。

「でも、私達に尻尾をつかませない子供なんて・・・・タダ者じゃない。絶対、訳ありね」

「どこかの組織の諜報員?」

「詳細は現在調査中」

「あら、らしくないわね。それとも、ウチの諜報部のミス?」

「・・・・・それはないわ」

第2新東京市はMGIに完全管理された都市だ。人や物資の流れも当然把握している。

(そうね。こちら側の人間の手引きがなければ不可能だわ・・・それとも、その子が逆に利用されているだけ?)

外部からのMAGIのアクセスを自分に気付かせず行うのは無理、内部の人間で別組織の協力者がいるものとリツコは考えた。

「私の勘だと、少なくとも彼はア−スノイドじゃないわね」

「宇宙に住む人達からも目の敵にされているものね、此処は。それで、その子の名前は?」

「ヒイロ=ユイよ」

「ヒイロ=ユイ?ジオン=ズム=ダイクンと並ぶコロニ−解放運動の指導者の名前じゃない」

リツコは以外な名前に、軽く驚いた。

「そう。怪しいでしょ?私の勘じゃ、パ−ペキに偽名ね」

「私もそう思うわ」

仮にNervと敵対する組織の工作員なら、シンジと同じ中学に転校してきた目的は、大まかに3つ考えられる。
初号機専属パイロット。碇シンジの監視また、情報を引き出す為に拉致拷問。それと最悪のパタ−ンが初号機パイロットの殺害。
使徒が攻めてくる以上、殺害の可能性は低い。敵対組織も使徒がサ−ドインパクトの引き金になると情報をリ−クしている。

「生半可な相手じゃシンジ君を拉致できないわ」

契約書の一つにプライベ−トの盗聴・監視の禁止がある。シンジは保安部の護衛が、監視と代わらないと護衛を拒否した
ミサト達にしてみれば世界に3人しかいないチルドレンの重要性を考慮すると、当然のように護衛は付けなくてはならない。
あまりに嫌がるシンジは、ミサト達に自分の実力の一端を披露した。シャッフル同盟の1人となりうる力をだ。
シンジの護衛任務につく予定だった保安部30人を訓練ル−ムに集め、一分も発たず30人全員を無力化させ、心臓を鷲摑みするほどの殺気を見学にきていたミサトとリツコの両名に浴びせた。
ただの中学生だと思っていた少年は、実は野生の大型肉食獣とたいして違わないことに気付いて、あの時は心底震え恐怖した。

「そう・・・・ね」

何やら口をモグモグさせてミサトは肯いた。

「あ――!!!葛城一尉なに食べてるんですか?」

デ−タ解析に一息ついたマヤが、弁当箱を片手にオムスビを食べているミサトを見て羨ましそうな声をあげた。

「これ、シンジ君のお弁当。美味しいわよ」

訓練前にシンジが渡してくれた。家事にかんする事はマメな少年だ。
シンジとイルイはミサトのマンションで一緒に暮らしている。
普段の生活では、あの時みせた知性ある猛獣の気配を微塵もださない人畜無害に見える少年だ。
保安部と整備部以外の職員には、14歳の中学生としか見られていない。だが、ミサトは保安部の連中が為す総べなく瞬殺された現場をみているのだ。
よく一緒に暮らせるものだと当初リツコは豪胆とも無神経ともとれる、その図太い神経に感心したものだ。

「う〜ん。あとエビチュがあれば文句なく最高なんだけどね」

徹夜続きで食堂に行く暇もなかったミサトは、我慢していた空腹感に耐えられなくなって弁当を広げた。
仕事の片手間でも食べやすいように、オムスビを主采にダシ巻き玉子と一口サイズの唐揚。青物にホウレン草の御浸しが弁当に色を添えている。

「本当、ミサトには勿体ないぐらいね」

あの少年の性格を今では大体把握している。
自分や大切な者。この場合はイルイだが、自分の身内に危害を加えられない限り、少年が自分から手を出す事はない。
考えが浅い人間は、手にした力を使いたがる。その力が強大ならなお更にだ。
けれどあの少年は、あれだけの力を持っていても、おくびにもださない生活態度を送っている。
少なくとも力を納める理性と言う名の鞘を所持している。
保安部メンバ−を瞬殺したのは、Nervに対する警告と線引きだったのだろう。
性格を知った今なら一緒に暮らしてもいいと思える。

リツコが横から、ひょいとオムスビを取って食べる。大学時代から親友の常識外の行動に慣れているので注意すらしない。
マヤは尊敬する先輩が、ミサトの弁当に手をのばしたので、ソレ以上なにも言えなくなった。
絶妙の塩加減に味付けされたオムスビを口にしながら、爪楊枝が刺さっている唐揚も一口かじる。
特性のタレに漬けこんだ鶏肉は、肉の奥底まで味が染みこみ、とろけるように柔らかい。
いくらでも食べられる味つけが、食欲を更にそそる。
唐辛子を一瓶丸ごと入れたインスタントラ−メンを「美味しい、美味しい」と食べる味オンチの親友が、手間と工夫を惜しみなく注いだ料理の恩恵を毎日うけていると思うと、ふつふつと殺意に近い感情が湧いてくる。
猫に小判。豚に真珠という言葉はまさに、この為にある。
シンジ達を、あの時引取らなかった事に、とことん悔やむリツコであった。


第2新東京市内の第壱中学校。
教室内では生徒達が休みの時間を満喫している。
一週間前、市内で戦闘があったのだが、喉もとすぎればなんとやら・・・・・
自分達とは関係ないと云わんばかりに今の学生生活を楽しんでいた。
今日も机の上で、連邦でもっとも有名なモビルス−ツのプラモデルで遊んでいるそばかす顔に眼鏡をかけた少年に、髪をおさげにした少女が近づいてきた。

「相田君、昨日のプリント。鈴原に届けてくれた?」

「え?いや・・・・・何かトウジの家、留守みたいでさ」

昨日、帰りのホ−ムル−ムで頼まれていたプリントだが、趣味の盗撮撮影に夢中で、すっかりと忘れていた。未だ相田の机の中にある。誤魔化す為、ヘラヘラと薄ら笑いを浮かでた。

「相田君、鈴原と仲いいんでしょ?鈴原が一週間も休んでて心配じゃないの?」

「大怪我でもしたのかな・・・・・」

「例のロボット事件で?テレビじゃ怪我人は一人もいなかったて・・・・・」

「まさか。市内の爆心地、見たろ?噂じゃ、あの戦闘で連邦軍極東支部の部隊がほとんど全滅したらしいぜ」

「そ、そんな・・・・」

「怪我人どころか、死人が出たって不思議じゃないね」

眼鏡の少年の話に顔色を青くした、おさげの少女が口に両手をあてた時、教室のドアをガラガラと開けて黒のジャ−ジ姿の少年が教室に入ってきた。

「何や、久しぶりに学校に出てきたら、えらい人が少ないな」

自分の机に鞄を置き、教室にいる生徒を見て呟く。一週間前なら同級生達がもっと騒いでいた。

「疎開だよ、疎開。街中であんな戦闘されちゃ、誰だって逃げ出して当たり前だよ。
ま、こんな時に転校してくる物好きが3人もいたけどね」

「喜んどるのはオマエだけやろな。生のドンパチ、見れるよってに」

嬉しそうにカメラを撫でる小学校からの友達に、トウジは呆れたように言う。

「まあね。それよりも、どうしたのさ?こないだの騒ぎで巻き添えでも食らったのかい?」

「妹の奴がな・・・・・・・こないだの戦闘でガレキの下敷きになったんや。命は助かったんやけど、ずっと入院しとった。で、ワシが学校休んで付き添いしてたんや」

トウジのショッキングな発言にケンスケと委員長が口を閉じる。

「しかし、あのロボットのパイロット、ホンマにヘボやな!無茶苦茶腹たつわ!!」

怒りをぶつけるように机を叩く。周りの生徒達が何事かと注目を集めた。

「それなんだけどな、聞いた?転校生の噂」

「転校生?」

トウジは一週間学校に来ていない。当然その間の事情も知らない。

「あの事件の後、転校生が3人来たんだよ男2人に女1人。その男の方なんだけど・・・そのどちらかが、あのロボットのパイロットらしいぜ」

「何やて!そいつ、今どこにおんねん!?」

鼻息を荒くしてケンスケの襟を掴む。

「き、教室の中にはいないよ。外にいるんじゃないのか?」

顔をドアップにして聞いてくるトウジに、それ以上顔をよせるなと身体をのぞかせた。

「そんな鈴原・・・・・相田君と、そんな関係だったなんて・・・・・・不潔よ!」

背後から見ればトウジがケンスケに言い寄ってるように見える。
イヤン!イヤン!と顔を赤くして扇風機のように首を降る少女を見て、ケンスケは教室から逃げ出したくなった。
トウジは転校生が居そうな場所を案内しろとケンスケを連れ出して教室を出た後も、おさげの少女は未だ両手で頬を押さえて首を降っている。
止めようとするクラスメイトはいない。何時もの日常の1コマである。もう少しすれば何事もなかったように戻ってくるとクラスメイト達は知っていた。


中庭のベンチに転校生の1人が座っている。整った東洋系の顔立ちはハンサム。身に纏っている空気が野生的なので、女生徒の多くは声をかけたいが、かけられず遠くからチラチラと覗いている。

「お前か・・・?あのロボットのパイロットは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

頭に血がのぼりすぎたトウジが、空気も読めず転校生に突っ掛かる。
一緒に着いてきたケンスケは、転校生を刺激しないよう無言でトウジにヤメロと必死に伝えるが、報われなかった。

「何黙っとんねん!何とか言わんかい、このボケが!」

トウジを無視したまま座っている転校生に、大声で怒鳴り散らす。

「ト、トウジ・・・こいつ、何か雰囲気が違うよ」

声を覚えられるのが嫌で、黙っていたケンスケだが異様すぎる空気に耐えられなくなった。

「フン!答える気がないんなら、腕ずくでも聞き出したるわい!!!!」

ベンチに座ったままの転校生の顔面を狙って、振り下ろしのパンチを叩きつける。
トウジは自分が強いと思っていた。
近隣の中学ではケンカ番長と呼ばれ、一つ上の3年生でも自分のパンチを避けれた奴は1人もいなかったのが、自信に拍車をかけていた。
たしかに、街中のケンカで素人が使うには腰のはいった、いいパンチだ。だが、本格的な軍事訓練を受けた者にとっては、無駄が多く、速さ、タイミング、威力、どれも及第点にすら届かない。
転校生は首を軽くひねり、トウジのパンチを最小限の動きで躱すと同時に、トウジの下腹に右の拳をめりこませた。

ウゲッ!

胃の中の物が逆流してくる不快感にトウジは大きく後ろによろめき倒れ込んだ。

「あっ!ヒイロ君にジャ−ジとメガネが絡んでるわよ」

中庭を挟んでいる校舎の一角でヒイロを見ていた女性徒が指をさしながら叫ぶ。近寄れないが観賞用としては最高級の美少年は多くの女性徒の視線を独占していた。

「なにやってるの!あのジャ−ジ!?ヒイロ君の顔にキズでもつけたら唯じゃおかないわよ!!!」

「そうよ!そうよ!ジャ−ジなんかが、ヒイロ君にケンカを売るなんて見の程知らずよ!一度、鏡をみてみなさい!ランクが違うわよ!」

哀れトウジ。男子の間ではケンカ番長として一目置かれているが、女子の間では、夏でも冬でもジャ−ジしか着ない乱暴者としか見られていない。
この一件でトウジに対する女性徒の評価は底辺まで落ちた。

「お前と遊んでいる暇はない」

「な、なんやて!?」

ヒイロはトウジの事など眼中にない。これ以上の係わり合いは面倒だとベンチから腰をあげた。

「あ、待たんかい!!」

ようやく吐き気が収まり、動けるようになる頃には、ヒイロの姿は影も形も無かった。
ちなみに遠巻きで見ていた女性徒達もヒイロを追っていき、姿を消していた。

「あの態度!あいつや!あのロボットのパイロットはあいつに決まっとる!!」

「そ、そうかな・・・・・・でも、あいつじゃ分が悪いよ」

トウジが地団駄踏んで悔しがり、ヒイロが使徒と戦ったロボットのパイロットだと決めつけた。
ケンスケは、例えそうでもトウジが、さっきの奴に勝てるとは到底思えないので、相手にするのは止せと忠告したが、怒りで興奮したトウジは聞きそうになかった。

(それに・・・・・どことなく綾波レイに雰囲気が似てるな。特に仏帳面で無愛想な所が)

包帯姿で周りを驚かせた赤い瞳のクラスメイトと、ヒイロ=ユイが放つ感じが近いものに思えた。

「チッ、しゃあないな。もう1人の男の転校生はどこや?」

怒りが腹の中で渦巻くものの、ヒイロの強さに恐れをなしたトウジが、怒りの矛先を変えようとした。
ケンスケは、しょうがないなと溜息をつきながらも、同じクラスに転校してきた黒髪の少年が休みの時間過している場所をトウジに教えようとした時、中庭からも見える正門で車のベレ−キ音がした。ふと目を向けるやいなやケンスケは口をあんぐりと開けた。

「おい、トウジ・・・・見ろよ。ピンクのロ−ルスロイスが正門の前に停まってるぜ」

ケンスケは始めてみるカラ−リングの高級車に度肝を抜かれていた。

「ピンクのロ−スロイルゥ?このご時世に豪勢な真似しさくって・・・・どこのどいつや?ドイツ人か!?」

「またベタなギャグを・・・・・・あ、誰か車から出てきたぜ」

関西人はこうあるべきと常日頃から思っているトウジに呆れながら、ケンスケは降りてきた人物を見て更に驚いた。
自分達と同年代の少女だった。だが、唯の少女ではない美少女だった。

「初めまして。私、リリ−ナ=ド−リアンと申します」

育ちの良さそうな気品のある顔。淡いブラウンの髪は両耳の上で細やかな三つ編みにされ、まるでヘアバンドのように後ろでまとめられている。残りの髪はストレ−トで、さらりと背中に向って伸びている。


「「・・・・・・・・・・・・・・」」

トウジとケンスケは息をのんだ。テレビの中でしか見た事のないような美少女が自分達に話しかけてきたのだ。
美少女のカテゴリ−で言えば綾波レイも同中学生の中では一際目立つ美しさをもっているが、それは人形のような美しさ。
トウジ達にはレイに精気が感じられないのだ。だが、目の前の少女は違う。人生を謳歌してる者が出す生き生きとした空気を感じ取れる。

(か、か、可愛い・・・・・!!)

(ど、ど、どこのお嬢さんや!?)

「あの・・・・・どうかなさいまして?」

見惚れている二人に、心配そうに声をかけるとバネ仕掛けのオモチャのように反応した。

「い、い、いえっ!」

「な、何ぞワシらに。よ、用ですか!?」

「はい。あなた方に、お聞きしたいことがあるのです」

顔を赤くして どもるケンスケとトウジに、探している人の事を訊ねた

「な、何でも聞いて下さい!」

貴女がワタクシめを犬と言えば今日からワタクシは犬です。とでも口にしそうな態度でケンスケはリリ−ナが探している人物の名前を教えてもらった。

「私、ヒイロ=ユイと言う少年を探しているのです。お二人に心当たりはありませんか?」

「ヒイロ・・・・・・ユイ?」

「それって・・・・さっきの転校生の名前じゃ・・・」

5分前までいた少年の名前が出るとは思わなかった。反射的に呟いたケンスケの言葉にリリ−ナは過剰に反応した。

「 !! 彼をご存知なのですね!?彼は・・・・ヒイロ=ユイは、この学園に来ているのですか?」

「え、ええ。ついこの間、転校して来ましたけど・・・・」

「ああ・・・・運命の糸というものは、本当に存在しているのですね」

「へ?」

これまでの人生。縁も所縁もなかった単語にトウジは頭をあおいだ。

「彼が現れそうな場所を何ヶ所か想定して、この国に来たのですが、こんなに早く足跡がつかめるなんて・・・・・」

「は、はあ・・・・・・」

悦に浸かるリリ−ナにかけれる言葉を見つけられないケンスケは、何ともいえない表情で一応うなずいた。

「彼は今、どこに?」

「あっちの方に行きましたけど・・・・・」

第3校舎の方に指をさした。

「ありがとうございます。パ−ガン、しばらくここで待っていて下さい」

「かしこまりました、お嬢様」

二人に礼を告げると、リリ−ナは後ろで控えていた老執事に後を頼み、第3校舎の中に入っていた。
パ−ガンはピンクのロ−ルスロイスの窓を何事もなかったように拭きはじめている。
近所の住民が、絶滅寸前の希少種を見たかのような表情を、まるで感じずにだ。

「な、何だったんだ?」

「ワシが知るかいな。何や気がそがれてもうたけど、もう一人の男はどこや?」

キツネに化かされた気分を味わっていた二人は、10分間中庭でボ〜と立ち尽くしていた。


「定時連絡。現在位置、特務機関Nerv本部が存在する第2新東京市。
Nervは使徒という正体不明の敵を破壊するため、人型兵器を秘密裏に開発していた
Nervは単なる研究施設ではなく、軍事組織的な側面を持っていることが判明
極東地区の研究施設では最も危険度が高いと思われる
さらに人型兵器のパイロットの情報も入手。引き続き調査を進める」

自分を追い回す女性徒達を振り切り、人気のない校舎裏からドクタ−Jに向け小型通信装置で連絡を終えたヒイロが、その場から離れよとした際、人の気配を感じた。

「誰だ?」

いつでもシャツの背に隠してある拳銃を掴める姿勢で、ヒイロは警戒しながら気配がする方に視線をむけた。
そこには包帯姿に色素の薄い水色の髪を持つ少女がいた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「今の話を聞いたのか?」

知っている人間だった。監視対象の一人。ファ−ストチルドレン綾波レイ。転校を偽って第壱中学に潜り込み、ずっと監視してきたエヴァのパイロットの一人だ。
ヒイロの眼光が鋭くレイを射抜く。監視対象だが秘密を知られた以上。排除しなければならない。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

答えは返ってこない、痛い沈黙がしばらく続く。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

(何だ、この女は・・・・?)

ヒイロの殺気が混じった視線をものともしないレイとの無言の対立に、ヒイロは戸惑いを感じずにはいられなかった。
もう一人の監視対象。サ−ドチルドレン碇シンジを初めて見た時、戦士としての勘が最大現の警告を発した。
アイツは自分以上の戦闘力を秘めていると・・・・・
いつもイルイと言う少女と一緒にいるが、ヒイロが意識をむける度に、警告するようにヒイロ限定に殺気を放ってくる。
シンジもヒイロが自分を監視している事に気付いてはいたが、バックの組織を知る為に、しばらくの間、泳がそうと考えていた。
ヒイロとシンジ。直接、挨拶を交わした間柄ではないが、転校してきて最も気にしている人物同士でもあった。

レイはヒイロに興味を示さず、校舎裏を見渡すと、何事もなかったように立ち去った。
どうやら探しものをしていたらしい。
ヒイロは改めて監視対象人物が一筋縄ではいかないと、作戦の見直しを考えていた。


「シンジ、お日様。気持ちいいね」

「そうだね」

転校してきてから一週間。シンジは初日に見つけた絶好の日向ぼっこスポットで、イルイと共に陽光が生み出すまどろみを楽しんでいた。
初めての学校生活。この十年間。修行に明け暮れ、一般人が通う学校なるものに行った事はなかった。
勉強は兄弟子の恋人レイン=ミカムラがみてくれていたので、並の大学生以上の知識はある。
それに、シンジの愛機ネオ・シャイニングガンダムの微調整は自分で行わなければいけなかったので、電子工学に関してなら一流エンジニアに匹敵する技術を持っている。

ミサトの強引な進めで第壱中学に通いだしたが、久々にのんびりと過せる一時を満喫するのも悪くなかった。
一般人との集団生活をおくる上でのアドバイスは聞いている。身体能力と知識は人並みを装い、毒にも薬にもならない人間の猫をかぶれだ。

一般人は異端を嫌う。
嫌われるのは構わないが、面倒な事に排除しようと動き出す人間もいる。
害を及ぼすかもしれない。危険かもしれない。手に負えないかもしれない。
しれない。しれない。しれない。
一旦そういった不安の火をつけられると、枯れ草の草原のように瞬く間に燃え上がるのが民衆だ。
別にシンジはキャンプファイヤ−のように踊る民衆に対し、憤りは感じない。
良くも悪くも、シンジは一般大衆なんて、そんなものだと達観していた。

問題は火付け役にして、狂気のマイムマイムを踊らせる振付師のほうだ。
なかでもシンジが一番嫌っている火付け役兼振付師は、時代錯誤の差別主義組織ブル−コスモスだろう。
次点は僅差でティターンズだ。

デビルガンダム事件の折、デビルガンダムと関係があるとの場所の情報をリ−クした。
ブル−コスモスが運営する研究所だ。
シンジと兄弟子のドモンは情報を頼りに研究所に忍び込んだが、そこでおぞましい光景を目のあたりにした。
年端もゆかぬ子供に劇薬以上に危険な薬物を投与して、強化人間にする実験が行われていたのだ。
施設の研究者たちのイカレ具合も凄かった。
「青き清浄なる世界」と言う言葉を免罪符に、道徳や良心を完全に捨てていた。

いまでも思い出すと、心にドス黒い負の炎が燃え上がりそうで嫌だ。
師匠やドモン兄。それにデビルガンダム事件を解決した時の仲間がいなかったら人間不信に陥っていただろう。
まあ、あの研究所で出来た唯一の救いは、三人の子供を助け出せたくらいだ。
男の子二人に、女の子一人。今のイルイちゃんと同じ位の年齢だった。
現在は信用できる人物のもとで身体のリハビリと心のカウンセリングを受けている。
良くなって欲しいものだと、心底願う。


異端と言えば、異端と言える程目立っている人物が2人居る。
一人はヒイロ=ユイ。
そして、もう一人が零号機パイロット。綾波レイ。

綾波レイは登校できるまで容態が回復して、3日前から学校に来ている。
挨拶しても無視された時、なにか嫌われるような事をしたのかと思った。クラスメイトに彼女は誰に対してもあんな風だと教えられた。
感情の起伏が乏しい。と言うより感情表現の仕方が分からないように見える。
人格を形成するに当たって大きなウエイトを占める幼年期。その時、人との関りを一切行わなければ彼女のような性格ができるのかもしれない。
こんど、カウンセラ−の資格をとっているレインにでも相談してみよう。
きっと、いいアドバイスをしてくれる。

「ん・・・・誰か来た?」

芝生の上に敷いたシ−トで寝そべっていたシンジが、ぼんやりとレイへの対応に頭を悩ませていると、自分達に近づいてくる男子生徒が2人。
一人は確か同じクラスのメガネ君。名前は覚えていない。もう一人のジャ−ジ姿の生徒には見覚えがない。知らない人間だ。だが、穏やかなとは、とても言えない雰囲気で此方に来るので警戒して立ち上がった。

「お前か!こないだのロボットのパイロットは!?」

こないだと言う言葉が指す意味は一つしかない。一週間前の使徒との戦闘だ。
いつかバレる事だし、秘匿義務はNervサイドの契約書には書かれていないので、あっさりと肯いた。

「そうだけど」

(何だ・・・・パイロットは、さっきの奴じゃなかったのか・・・・って、トウジ!いきなり殴りかかるか!?)

あっけらかんとトウジの問いに答えたシンジに、ケンスケは耳を疑った。ヒイロの方がどう見てもパイロットに見えたからだ。
ヒイロがパイロットと言われれば、ケンスケは疑いもせず信じた。だが、シンジに対する印象は、顔立ちこそ中性的で整っているが自分達とさして違わない中学生に見えた。

「そうか!なら歯くいしばれぇ!!!」

そしてシンジが答えたとたん、またも、問答無用で暴力で解決しようとする友達に頭をかかえた。

「君に殴られる覚えがないんだけど?」

殴りかかってくるトウジの拳を、シンジは半身をずらし躱した。勢いのついた上半身はシンジを通り抜けたが、下半身は通り抜けれなかった。
シンジがさりげなく残していた足で、トウジの足を払ったのだ。

「ぐげぇ!?」

受身も取れず、トウジは豪快に転倒する。そこにシンジは音もなく歩み寄り、身を起こしかけたトウジの顎の先端を爪先で蹴り抜いた。

「ちゃぴゅら!?」

タコ型の火星人が存在したら、こんな声で悲鳴あげるだろう。
白目を剥いてぶっ倒れるトウジに興味を無くしたシンジは、突然ケンカを売ってきたトウジに驚いているイルイの頭を優しく撫でて大丈夫と優しく囁いて落ち着かせる。

「え〜っと・・・・たしか、同じクラスの人だよね?この人は何で僕に殴りかかってきたの?」

外見上から想像もできない過激なやり方で、トウジをノックダウンさせたシンジが、いきなり殴りかかってきた訳を知らないかとケンスケに訊いた。
ああ・・・・・短い寿命だったな。猫の被り物。との思いは表情に一切でてない。
ピクピクと地面に這いずくまっているトウジにとって運が悪かったのは、イルイと一緒に居る時に、暴力を振るったからだ。

『イルイはBF団に狙われている。だからオマエが護ってやってくれ』と師匠直々に頼まれているだけに、BF団の工作員が近くにいないか注意していた。

ヒイロ?ヒイロは違う。BF団の下級工作員の動きやパタ−ンには特徴がある。ヒイロの足さばきや、動きの癖はどれも当てはまらない。
それに一度、ヒイロが宇宙側の誰かに定時報告しているのを、つけて見た事がある。
それらを考えるとヒイロはBF団の工作員ではない。けど、生半可で相手にできるヤツでもないので敢えて放っていた。
トウジとケンスケの動きから素人と結論ずいていたが、自分と同じで気配や癖を完璧に近いまで抑える手錬とも考えた。

だから蹴った。でも、違ったようだ。
大丈夫、手加減はしている。それに無駄に頑丈そうに見えるよ、このジャ−ジ君。

「あ、ああ・・・・・こいつ鈴原トウジって言うんだけど。トウジの妹、こないだの戦闘でケガして入院してるんだ」

「・・・・そうなんだ。妹さんのケガは酷いの?」

「命は助かったらしいけど、退院はまだ時間が掛かるそうなんだ」

戦いを行う以上、被害をできるだけ抑えようとはするが、当然限界はある。
軍人が戦場でどれだけ命を賭けようと、助けることができなければ、民間人にとって自国の軍隊も同じ憎い敵。

「イルイちゃん。ごめん・・・・・ちょっと離れて」

シンジと手を繫いでいたイルイの右手を離すと、倒れているトウジの上半身を後ろから起こし

「てぃ!」

活を入れた。

「くぅ・・・お花畑が・・・・・はっ!転校生!ようもやったな!」

意識が戻ったトウジは、背中越しに居るシンジの存在に気付くと、懲りずに殴りかかった。

「ト、トウジ〜〜〜〜!!!」

学習能力がないのか?ヒイロでもシンジにしろトウジより明らかに強いのは、ケンスケにも分かる。それに、どんな理由があろうと今のトウジの行動は正当防衛で処理される。
再び、シンジのカウンタ−でトウジがノされるもと思っていたケンスケの目に入ってきたのは、シンジの右の頬を殴ったトウジの拳だった。

「・・・・・なんで?トウジに殴られる」

わざと殴られたとしか考えられないシンジの行動。

「妹さんの事は、ごめん。本当にごめん。僕にはそれしか言えない」

ケンスケにはシンジが敢えて殴られた訳を悟った。謝罪だ。シンジの立場は組織から見れば一兵士。殺し合いの戦場で総ての責任を負わなければならないのは、兵士に『殺してこい』と命令する上官だ。
責任が全くない訳ではないが、トウジの怒りはシンジにとってスジ違いもいい所だ。端から見れば逆恨みでしかない。
だが、トウジの気持ちもだいだい分かる。もしも自分の手の届かない所でイルイが重傷を負ったのならシンジも今のトウジと同じになるかもしれない。

「い、妹の命だけは助かったから、この程度で勘弁しといたるけどな・・・もし、今度も同じ失敗してみい、タダですませへんぞ」

トウジがバツの悪そうな表情で叫ぶ。素直に謝れると、訳も話さず殴りかかった自分も悪かったと思える。だが、自分の行動を反省し謝れるほど、トウジは大人ではなかった。

「シンジに酷いことしないで!」

イルイがシンジとトウジの間に割ってはいる。両手を広げ庇う形でだ。

「ワシの妹と変わらんぐらいの年の奴が、なんで此処にいるんや?」

小学校高学年位の年齢にしか見れないイルイが壱中の制服を着ているのにトウジは面喰った。

「僕は大丈夫。だからイルイちゃん。そんな顔しないで」

キッとトウジを睨んでいるイルイ。そんな表情にシンジは顔を曇らせる。
会って短い時間しか過していないが、互いに家族として過してきた。
その大切な家族が、いきなりやって来た男に殴りかかられて、怒るなと云う方がむりだ。
イルイの視線にタジタジしているトウジの背後から、赤い瞳の少女が小走りで現れた。

「・・・・・非常召集。先、行くから」

綾波レイは、そう告げると現れたのと同じように小走りで校門へと向った。
シンジはポケットに入れていた携帯を取り出し電源を入れる。イルイが傍に居るので携帯は煩わしかったので電源をOFFにしていたのだ。Nervからのメ−ルが山のように届いていた。


あとがき


ヒイロに殴られ、シンジに蹴られ。不幸一色のトウジ君。
『今日のアンラッキ−アイテムは黒のジャ−ジです』と朝の占いを見たのに服装を変えなかったのがいけなかったのか!?
ごめん。嘘です。
だって!だって!ス−パ−ロボット大戦シリ−ズのトウジ君って!トウジ君って!!
超電磁ロボの胴体部パ−ツの人並に存在感がないものだから!少しでもアピ−ルしようと思って!!!
またまた嘘です。すいません。
話の流れでトウジ君が、この役に一番相応しかったので演じてもらいました。
いや、彼にはすまないと思っている(SEED伝説の議長口調で)

今日の教訓 知らない人を殴る時は、殴り返される事を考えよう。


レス返し

弐様>  人物名の漢字違や間違いは気付かないと、本当に気付けないので誤字報告に感謝します。
シャッフル・ル−ン・ブランクについては話を進めて行く内に明かして行きたいと考えています。


ジント様> 大戦の方だと、イルイは戦闘中に主人公に発見されて保護されたと思いましたが。それと『ヴァ』の件ですが参考になりました。忠告ありがとうございます。

15様> 今のロンド・ベル隊の中には居ません。ですが、デビルガンダム事件はガンダム同盟ではなく、裏ス−パ−ロボット混成チ−ムで勝利したので是から登場させたいと思っています。
悪の野望を打ち砕く日輪の人なんかが代表例。

イスピン様> マスク・ザ・レッドはシンジと因縁ができているので、まず出します。それ以外は未定で。

風を見る者様> ボスと師匠を同時に出したら他のキャラの存在感が喰われそうなので、ちょっと分かりません。ですが、できたら出してみたいですね。

ななし様> 誤字を見るたび思い出せ!じゃないですけど誤字の指摘を受ける度に「やっちまった―――――!」と恥ずかしさで赤面しそうっス。
あと人から面白いと感想を書いてもらうと、次の話を書く時のヤル気になるので感謝します。誤字指摘ふくめて。

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