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「魔除けの鐘を鳴らす者達 第4話 (ス−パ−ロボット大戦)」

太刀 (2006-04-15 18:14/2006-04-17 16:40)
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「しかし、あのロボット。一体なにものだったんだ?」

第2新東京市での戦闘が終わり、アーガマは極東支部へ帰還途中。長かった戦闘待機も解除され、腹をすかしたパイロット達が食堂に殺到していた。
ガツガツと遅い夕食を食べていた兜甲児が、はしを止め。同じテ−ブルで食事している弓さやかとウッソ=エヴィンにクスハ=ミズハ。それと、ようやくA定食を確保して席についた、ひびき洸達に問いかけた。

「わかりません。それよりも僕は、あの使徒と呼ばれた敵の方が気になります」

10代後半の少年少女達がパイロットとして活動するロンド・ベル隊の中でも、更に年齢が低いウッソが昼間の戦闘でVガンダムの攻撃が何一つ通用しなかったと話す。

「強力な武器と防御装置を備えた完全自立型の兵器・・・・・単体で行動することを前提に造られていました」

「造られている?ウッソ君。あれはどう見ても機械じゃなっかたわよ」

「はい。確かに、見た目から判断すれば生物に近いです」

さやかがウッソの考えは飛躍しすぎてないかと首をかしげる。

「俺の気のせいかも知れないけど・・・・・・ライディ−ンは、あのロボットを警戒しているようでした」

ひびき洸が使徒の話題をさげ、甲児がはじめに言い出した紫のロボットの話に戻す。

「警戒?ライディ−ンは自分の意思を持ってるのですか?」

ウッソは人口知能が組み込まれた機械獣と同列なAIが組み込まれているのかと思った。

「ああ・・・・俺は何度かライディ−ンの声を聞いたことがある。おそらくライディ−ンには意思があるはず」

プログラムされた思考ル−チンとは、全くの別物。己という自我ある筈と洸は言う。

「おそらくって・・・・パイロットのお前が知らないのか?」

「ライディ−ンの内部構造は不明な点がまだ多いんだよ。ライディ−ンは1万2千年前、ム−帝国がム−トロン技術の粋を集めて造り上げたロボットだからね」

甲児の疑問に、洸は首を振りながら知らない方が多いと肩をすくめた。

「もしかしてライディ−ンは、あのNervのロボットや使徒を『知って』いるんじゃないかしら?」

「どうゆう事だクスハ?あのNervのロボットは、ごく最近に造られたように見えるぜ」

「そうよね甲児君。造られたの最近だと思うけど・・・・・アレらと似たものをライディ−ンが記憶しているんじゃないかしら?」

クスハが今までと違う視点からみた憶測を言った。

「そうか。その可能性もある。ライディ−ンは妖魔帝国と戦うために造られたロボットだけど、使徒と化石獣に何らかの共通点を見出したのかもしれない」

「共通点?」

「化石獣は悪霊を封じ込めた兵器なんだ甲児君。もしかして使徒にも魂に似た物が封入されている確立は高い」

霊?幽霊みたいなものか?と甲児が首を捻っている横でクスハが考えをまとめている。

(なるほど。だから、私は使徒に意志があると感じたのね)

洸は話しを続ける。

「実は・・・・この間、ライディ−ンにフェードインした時、ライディ−ンの声を聞いたんだ・・・・・・・『悪魔の復活に続き、虚空の彼方から破壊神が迫っている』っと。ライディ−ンは、その破壊神と戦うため、古の世より造られたロボットという内容だった」

「悪魔の復活ってのは妖魔帝国の復活のことだろ?」

「そうよね」

甲児と同じ考えをしていた、さやかがウンウンと肯いた。

「では、破壊神とは何なのでしょうか?」

「使徒じゃねえのか?」

妖魔帝国を悪魔と指しているのかは分かるが、破壊神が何なのかまでは分からない。使徒を破壊神と思う甲児の考えは短絡的だが、情報の少ない今では最有力な意見だ。

「なら、ライディ−ンは使徒と戦うために造られたロボットなのかしら?でも、さっきの戦いでライディ−ンが何らかの反応は見せてないわよね?」

格納庫で戦闘待機していたライディ−ンの横で、同じく戦闘待機していたアフロダインAのパイロット。弓さやがライディ−ンに可笑しな動きは無かったと証言する。

「破壊神は別の敵のことかも・・・・・虚空の彼方とは、宇宙の彼方とも意味が取れるし・・・・」

「エアロゲイダ−のことか?」

自信なさげに言うクスハに、甲児は宇宙から地球に飛来する謎の機体群の名称を言った。

「それは・・・・わからないわ。でも、ライディ−ンは使徒やあのロボットに、その破壊神との共通点を見出した・・・・」

「俺もそう思います。ただ、その共通点が何なのかは不明だけど・・・」

洸はクスハの予想が真実に一番近いのではないかと同感する。
だが、それは多くの敵対組織やエアロゲイダ−以外の脅威が迫りつつあるということだった。


第4話「師弟」



サキエルの爆発に巻き込まれたが、致命的なダメ−ジは受けていない初号機の外装の一部が動く。

ブシュ−・・・・

シンジはエントリ−プラグの強制排出レバ−を引き、LCLで満たされたエントリ−プラグから身体を外にだした。
夜の第2新東京市の外気を肌に感じる。直立しているエヴァの上に立って居るので、地上から40メ−トル以上の高さがある。
見下ろせば足がすくむ高度だが、シンジは躊躇わず飛び降りた。

シュタ

人が死ぬには充分すぎる高さから落ちたにも係わらず、シンジは何事もなかったかのように降り立った。

「どこだ?」

首をせわしなく動かし誰かを探している。深刻な表情であちらこちらを見渡すシンジの姿を見れば、探している誰かは、シンジにとって大切な人だというのが分かる。

「どこを見ておる!ワシはここだ!」

頭上から大声が木霊する。シンジは上を見上げると歓喜の声をあげた。

「師匠!!!」

デビルガンダム事件後、姿を消していたドモン=カッシュと碇シンジの武術の師匠。東方不敗マスタ−アジアがビルの屋上からシンジに呼びかけた。

「渇っ!こたえろシンジ!」

東方不敗がエヴァより高いビルの屋上から、シンジの居る場所に向かい飛び降りてくる。
そのスピ−ドは自然落下のものではなく、宇宙から地球へと降りそそぐ流星のようだ。
ビルを踏み台にし、蹴った反動で得た速さでシンジに向ってくる。

「流派!東方不敗は――!」

長い修行時代。修行の一環とした組み手の掛け声に、シンジは即座に反応した。

「王者の風よ!」

腹の底から声をだし、気合をいれる。
師匠が無数の拳を打ってくる。ボクシングのジャブよりも速く手数も多いが、一発。一発に込められた破壊力は半端ではない。
オリンピックに出場する重量挙げの金メダルリストが、破壊鎚を全力で振るった時の打撃力よりも威力が勝っているのだから
未熟な修行時代の時、まともに喰らって一週間ほど、固形物が食べれなくなった記憶もある。
無論、手加減はされていたが、死ぬ一歩手前が手加減だったんだろうか?
覚えている限り、僕は134回。ドモン兄は87回ほど三途の河を見た。
向こう岸のお花畑が綺麗だったとドモン兄と、よく語り合った微笑ましい(?)エピソ−ドもある。
常人が超人になる為の修行に、近代スポ−ツ学など何の役にも立たないと身にしみて分かった。
あの修行に耐え切ればMSを素手で倒せる域まで、能力を高められるだろうが、恐らく生き残れるのは一億人に一人ぐらいの割合だったろう。
そういう意味では僕とドモン兄は、潜在能力と生命力。それに悪運が人一倍。いや、人百倍よかった。


「全新」

「系烈!」

師匠のガドリングを思わせるパンチを全て迎え撃つ。ランダムに打ちこんでいる様に見えるが一発でも外せば容赦なく急所にはいる。
28個あると言われる人体の急所を、いかように攻撃し、また防御するかが、この組み手の目的なのだ。

「「天破侠乱!!!」」

最後の一手を打ち終え、拳と拳をぶつけあったポ−ズで声を揃える。

「「見よ!」」

東の空から太陽がでて来たかのように。

「「東方は、赤く燃えている!!!!」」

第3者が見ていたら、真夜中だが朝日を錯覚したであろう。
流派東方不敗は仙術の流れも組んでいる。最大の見せ場である背景を幻術で創る手間を惜しまない。怯まない。妥協しない。
武術家として、漢としての拘りらしい。文句は言えない。それに慣れると病みつきになってくる。
コツは羞恥心を忘れる事だ。別名、開き直りとも言う。

「ひさしぶりだな、シンジ。」

「し、師匠。お・・・・お会いしとうございました」

涙を流しながら、シンジは膝をつき東方不敗の右手を両手で覆った。

「どうした?男児たる者、なにを泣きだす。オマエは歴史の狭間に消えた、失われし紋章シャッフル・ル−ン・ブランクを得た男であろう」

シンジの肩に左手を置き、優しい目で2番弟子を見ながら励ました。
しばらくの間、泣いていたシンジは、ようやく落ち着くと師匠が何故、第2新東京市に居るのか訊ねた。

「シンジよ。覚えておるか、ワシがデビルガンダムを使い。あの時しようとした事を?」


忘れたくても、忘れようがない事件だ。
兄弟子ドモン=カッシュの父親であるカッシュ博士が地球再生を目的に開発したデビルガンダム。いや正式名称はアルティメットガンダム。
当初はドモンの実兄キョウジ=カッシュが狂気に侵され強奪したものと思われていた。
その時、ドモンの母親は死にカッシュ博士は開発責任者としての罪を問われ永久冷凍刑の処分を受けた。
カッシュ博士を拘束したウルベ大佐が父親を助ける条件として、逃走したデビルガンダムとキョウジの追跡をドモンに命じた。
ドモンは父親を救うべく、キョウジとデビルガンダムを追った。シンジとレインもドモンの手助けをする為、一緒に旅にでた。
最後に分かった事だが、このデビルガンダム事件を起こした真犯人はウルベ大佐だった。

アルティメットガンダムの3大理論『自己進化』『自己再生』『自己増殖』に目をつけたウルベは己の欲望に心が負けて、アルティメットガンダムを強奪しようとしたのだ。
娘であるレインを人質に取られた、ミカムラ博士を使いウルベはアルティメットガンダムのプログラムを自分に従うよう書き変えようとした。
アルティメットガンダムで世界を、欲望のまま征服しようとするウルベの野望に気付いたキョウジは、未完成であるアルティメットガンダムと共に逃げ出した。
それがデビルガンダム事件の真実の発端。

15年前のセカンドインパクト。それと7年前のジオン公国によるコロニ−落としで生態系を大きく崩された地球。
そんな地球を憂える東方不敗マスタ−アジアはデビルガンダムで全人類を、この星から追い出し自然環境を根本から再生させようと考えていた。
強行な考えを持っていた東方不敗だが、デビルガンダム事件末期、ドモン=カッシュとの拳と拳で交えた死闘と呼べる闘いの末に、なんとか和解にいたった。
そしてデビルガンダム事件が解決した後、東方不敗は「やるべき事がある」とシンジ達に言い残し姿を消した。
およそ一年前の出来事である。


「ワシは今、ビックファイヤが何をやろうとしているのか探っておる」

デビルガンダム事件当時の様々な出来事に、思いを耽る弟子へ東方不敗は第2新東京市へ来た理由を話しだした。

あの事件の時、BF団とはデビルガンダムをめぐり何度もぶつかった。
敵としては厄介極まりない相手達であった。
世界征服を策謀するBF団。その首領であるビックファイヤに関する情報は殆ど知られていない。
僅かに分かっていることは、ビックファイヤは十傑集を遥かに凌ぐ力を持っており、直属の3つの護衛団『ガル−ダ』『ネプチュ−ン』『アキレス』が絶えずビックファイヤを護っている事。

配下の十傑集も各自が恐るべき手誰である。

【混世魔王・樊瑞】 十傑集のリーダ−にして超一流の仙術士

【衝撃のアルベルト】 衝撃波を自在にあやつることができる

【激動たるカワラザキ】 強力な念動力の使い手

【素晴らしきヒィッツカラルド】 指パッチンで真空波を生み出し、自由自在に物体を切断する術を持つ

【命の鐘の十常寺】 『命の鐘』を使ってさまざまな物体などに生命を吹き込み使役する

【暮れなずむ幽鬼】 あらゆる生物を自在に操れる。体内に虫の大群を飼っている。

【マスク・ザ・レット】 石さえあれば、巨大石像ビックゴ−ルドを創り、操作できる

【直系の怒気】 七節棍を使った武術を得意とする武闘家

【眩惑のセルバンデス】他人の精神を眩惑するテレパシスト 

【白昼の残月】 草、石、水などあらゆる物質を針として使い、敵を粉砕する能力者

誰さえも、今のシンジと互角か、それ以上の力の持ち主。
機体を使わず単体で彼等、十傑集と対等にわたりあえるのは国際警察機構。最高のエキスパ−ト集団『九大天王』と歴史の影から世界の秩序を護ってきたシャッフル同盟。
それと地球防衛組織GGGの獅子王凱くらいだろう。

デビルガンダム事件の時に戦った十傑集は、アルベルトと怒気にマスク・ザ・レッド。
どんな時でも一筋縄にはいかなかった。
シンジのネオシャイニングガンダムが大破したのもマスク・ザ・レッドとの戦いであった。
なんとか相打ちに持ち込んだが、シンジにとっては愛機をボロボロにされた苦々しい記憶が脳裡にこびりついている。

「この一年奴等を追ってきた中、二つの情報がはいってきた」

つい先月、中国の山東省にある蚩尤塚で、発掘作業を行っていた考古学の権威、安西エリ博士が発掘されたナニかとともにBF団の手によって攫われた。
ジャイアントロボ2号を操る、眩惑のセルバンデスまで出てきたのでBF団にとって重用視されていたのが推測できる。
東方不敗が駆けつけた時には、BF団の影も形もなかった。
その後、国際警察機構九天大王の一人。【神行太保・戴宗】とチャイナドレスが似合う国際警察機構エキスパ−ト【銀鈴】と協力関係になり、BF団の地方基地に囚われていた安西博士の救出に成功した。

安西博士の情報で、蚩尤塚から発掘されたのは古代超機人が2体発見されているのが分かった。
残念な事に超機人は別の基地に運ばれており、東方不敗達が奇襲をかけた場所には安西博士と一人の少女が囚われているだけであった。

「・・・・・でだ、もう一つの情報が、エヴァンゲリオンだったと言う訳だ。まさかオマエがパイロットとは思いもよらなかったがな」

師弟の縁があるなと豪快に笑う東方不敗。

「僕は、この街でアルベルトと遭遇しました。十傑集までが出向くと言う事は、BF団はエヴァンゲリオンを狙っているのでしょうか?」

「それは分からん。奴等が本腰をいれればNervの防衛網など、在って無きがごとし。その気になれば、いつでも奪う事ができたであろう。それをしなかったと云う事は使徒に興味を持っていたのかもしれん」

「・・・・・・使徒ですか?師匠は使徒とは、なんなのか御存知なのですか?」

強力な攻撃力と反則的な防御力フィールドを持つ使徒。再生能力はデビルガンダムに匹敵した。
一撃で倒す方法があったから倒せたが、並のMSや特機では歯がたたない戦闘能力を持っていた。

「詳しくは知らん。ワシが知っている事と言えば、使徒をそのままにしておけばサ−ドインパクトを起こされる可能性があると言う事ぐらいだ」

15年前のセカンドインパクトで南極大陸が消滅した。
生態系が大きく崩れ、何億人も死ぬ大災害が世界各地に起こった。日本はそれほどでもなかったが、アメリカ大陸とユ−ラシア大陸北東部は壊滅的な被害をだした。
立て続けの戦乱で15年前ほど人類には余裕がない。もう一度、セカンドインパクト並の災害にみまわれれば、人類は終わるだろう。

「師匠は是から、どうなさるのです?できれば僕も、お供したいのですが」

サ−ドインパクトを防ぐ。重要なことだ。でもソレはNervの仕事だ。必要なら協力するが、シンジにとっては東方不敗の動向の方が気になる。
一年前より何倍も実力を高めたシンジなら、東方不敗の足手まといにはならない。
育て、生きる術を教えてくれた師匠に、少しでもいいから恩を返したい。
デビルガンダム事件では、東方不敗の考えを間違っていると思い。東方不敗と進むべく道を決別した。
苦悩する毎日だった。苦渋の選択でドモンに付いたシンジだが、東方不敗を慕う気持ちは変わらなかった。
ドモンとの闘いで、考えを改めてくれた東方不敗。その事で一番喜んだのは間違いなくシンジだ。
その人が間違っていると分かっていても、恩義ある人に刃をむけるのは、自分が傷つくより辛かった。
理屈は関係なく心が悲鳴をあげる。人は感情によって損得勘定なしで動く生き物であると思い知った。

此処に居る必要性はシンジには無い。そもそも第2新東京市に来た目的は、10年前にシンジを捨てた父親の顔を、一度くらい見ておこうと考えたからだ。
恨み言を言いたかった訳ではない。ゲンドウの存在は手紙が来るまで忘れていた。今更、自分を捨てた訳を聞きたいとも思わない。
今現在、碇シンジの人格を形成する経験の中で、碇ゲンドウと呼ばれる人間の存在は、コンマ何%も占めていないのだがら。
ぶっちゃけた所、赤の他人と同じだ。
ドモンとレインが薦めなければ、第2新東京市に行こうとも思わなかった。

「シンジ。ワシに付いてくると言うのか?」

「師匠さえ、よろしければ」

明後日にドモン達と一緒に宇宙へあがる予定はキャンセル。どうせネオシャイニングガンダムの修理は完了していない。ゴットガンダムを取りに行くドモンと違いシンジが急いで宇宙に上がる必要はない。

「その言葉は嬉しいが、シンジ。ワシはこのままオマエにエヴァゲリオンを任せたい」

「エヴァンゲリオンをですか?確かに強力な機体ですが、使徒を倒すだけが目的でしたらシャッフル同盟を全員集合させ、僕のネオシャイニングガンダムも合わせればエヴァンゲリオンでなくとも使徒を倒すことができると思いますが?」

第3使徒サキエルは強敵だったが、デビルガンダム程じゃない。使徒が今後、現れたとしてもサキエルクラスの戦闘力なら、シャッフルの紋章を持つ者が二人掛りで挑めば十分に倒せる。

「シャッフルの面子には別の件で動いてもらうので無理だ」

そのまま続けてシンジを諭す。
超攻撃力を持ってすればATフィ−ルドを破るのも可能だ。実際シンジがライトニングフィンガ−で実現させた。だが、それでは被害が計りしれない。
力だけで挑み、日本という列島を破壊するつもりならソレもいいだろう。
現実問題、そんな事はできない。
力押しが駄目なら、別の方法を使うしかない。その方法がエヴァンゲリオン。
ATフィールドを形成できるエヴァなら、相手のATフィ−ルドの中和も可能。
使徒にとって最も有効な機体と言わざるおえない。
狩りをする時、大型獣を狙うのに小動物用の罠や小弓は使わない。それ相応の得物を用意する。理屈は同じだ。

「・・・・・分かりました。僕は、僕に出来ることをやります」

直接手助けするだけが、恩返しの方法じゃない。師匠の懸念を払えるのであれば、エヴァに乗るのも一つのやりかた。
言われたから乗るのではない。シンジは現在選べる選択肢の中で最良と考えたのだ。
感謝すると、東方不敗が礼を言った。

「それと・・・・だな、もう一つ、オマエに頼みたい事がある。来い!風雲再起!」

夜の街に愛馬を呼ぶ声が木霊する。ヒヒ――ンと鳴声をあげながら白馬が走ってくる。
体のつやといい、筋肉の張りといい、ほれぼれするほどの見事さを見せる。
たてがみを振るしぐさも勇ましい。
並の馬じゃない。普通の人間には背を跨がせる事すら許さない誇り高さを感じる。

「風雲再起!久し振りだね。元気だったかい?」

白馬を見るなり裏表のない気持ちのいい笑顔で、シンジは両手を大きく広げ出迎える。
風雲再起は風を裂きながら走って来ると、甘えるようにシンジに鼻先を押し付けた。
シンジも笑いながら頭を撫でる。風雲再起は遺伝子実験で偶然誕生したサラブレット。3歳馬の外見をしているが、今年で11歳になる。寿命が他の馬の何十倍もあるのだ。
デビルガンダム事件が起きるまで、風雲再起の面倒はシンジが見ていた。10年以上一緒にいた家族の一人、もとい馬である。

あれ?風雲再起の鞍に少女が乗っている。
眩しい金髪をツインテ−ルに纏めた琥珀色の瞳の女の子。黒を基調としたワンピ−ス姿は可憐の一言につきる。
年はシンジより少し下、だいたい10歳ぐらいだろう。

「師匠、この子は?」

風雲再起が背に乗せている以上、師匠の関係者なのは確かだ。主人たる東方不敗が認めぬ人間が、風雲再起を跨ぐのは無理なのだから。

「急かすなシンジ。イルイよ。コヤツが前に話したワシの弟子の一人だ。ワシの変わりにオマエをこれから護ってくれる」

護る?何の事だ?シンジの頭の上にクエスチョンマ−クが浮ぶ。東方不敗はイルイと呼んだ少女を風雲再起の背からおろし、シンジに自己紹介しろと前に押し出す。

「・・・・・・イルイと言います」

桜色のくちびるから洩れた声には不安や脅えの感情が含まれていた。
初対面の挨拶だから声が震えているのか?
いや、そうじゃない。拒絶されるのを恐がっているような声だ。
シンジにも覚えがある。ゲンドウに捨てられ、東方不敗に助けてもらった最初の一週間はシンジも相手の拒絶を恐れて、こんな声をだしていた。

「はじめましてイルイちゃん。僕の名前は碇シンジ。シンジと呼んでくれると嬉しいな」

相手を安堵させる天使の笑顔でイルイに握手した。
イルイの瞳に宿っていた脅えの光が薄れていく。脅えていたり不安の気持ちを抱えている子供には、自分が絶対に君を傷付けない存在と知ってもらい、抱擁や握手で人の温もりを感じさせるのがいい。
シンジもそうやって幼い頃、なぐさめてもらった。

「・・・・シンジ。・・・・・碇シンジ?」

「うん、そう。僕の名前」

繰り返してシンジの名を口にするイルイ。

「イルイ。優しい感じがする名前だね」

褒めてから、空いている片手でイルイの頭を優しく撫でる。イルイの頬が薄っすらと薔薇色に染まる。
無意識にやった事なのでイルイの表情の変化に気付いていない。シンジは天然である。

「苗字はなんて言うの?」

軽い質問だったが、瞬間イルイの表情が凍りついた。

「え、あ・・・・・・その・・・・・」

うろたえるイルイにシンジは聞いちゃいけなかったかな?と自分の迂闊差を反省した。
最初の紹介でフルネ−ムを名乗ならかったのは事情があるのかもしれない。

「ごめん。無理に言わなくていいから・・・・」

「ち、違う。シンジは悪くない。・・・・わたし・・・・・名前以外。わからないの・・・・」

名前以外わからないって記憶喪失!?はじめてみた。
淋しがっているウサギのようなイルイを見て、シンジは思わずイルイを強く引き寄せ抱きしめる。

「えっ!?」

暖かな感触で全身を包まれたイルイは、きょとんと目を丸くした。

「ゴメン。無神経だよね僕。本当にゴメン」

更に力強く抱きしめる。イルイが感じている冷たい憂色を少しでも暖めるように。

「シンジ・・・・・」

会って、一刻も発っていないが、本来感受性ゆたかなイルイはシンジが優しい人であると、自分を温めてくれる波のような波動で心から感じ取った。
上辺だけの態度では、絶対にだせない魂を癒してくれる優しい暖かさは、心身共に染み渡る。
とても居心地がいい。いつまでも感じていたいとイルイからもシンジを抱きしめた。

「ゴホン!その辺にしてワシの話を聞いてもらえるか?」

黙ってシンジとイルイを見守っていた東方不敗だが、放っておけば何時までも抱擁していた二人に聞こえるよう、わざとらしく咳を吐いた。

「うわっ!!」

「きゃぁ!?」

自分達がしている事に気付いた二人が慌てて離れる。どちらとも茹でタコのような顔をしている。
今になって恥ずかしくなってきた。

「――そ、そうだ師匠、聞きたい事があるのですが」

顔をペシペシと叩き誤魔化そうとするシンジに、東方不敗は声をだして笑ってしまう。

「いや、悪いの。シンジ、そう怒るな」

あまりに笑いこける師匠に、シンジは拗ねて地面に『のノ字』を書いている。

「イルイは安西博士と同じ基地に囚われていたのだ」

安西博士以上に厳重な監視下のもとで閉じ込められていた。
最初に見た時は、なにかの実験の最中だった。無数のコ−ドを刺された少女の姿は、あまりにも痛々しかった。
電気信号を受信するコ−ドは幸いにも浅く刺さっており、身体に傷が残ることはなかったが少女の心には、大きなキズを刻み込んだ。

不憫に思った東方不敗が一緒に助け出した。その時には既に記憶が失われていた。
助け出した後、精密検査で調べたら少ないが薬物投与されたのが分かった。少量だったので依存性も後遺症もでないが、大人でも分量がいき過ぎれば発狂してしまう危険な薬物に、東方不敗は怒りをあらわにした。

「ワシはまだビックファイヤを追う為、旅を続けなければならぬ。そこでだシンジ。この東方不敗が頼む。オマエがイルイを護ってやってはくれぬか」

あれだけ執拗な実験を繰り返してきたBF団なら、何時イルイを取り返そうと動くか分からない。だが、旅にこのまま連れて行くのも同じくらい危険だ。
頭を悩ませて第2新東京市に着いた時、初号機と第3使徒サキエルが戦っている真っ最中であった。

紫の巨人がエヴァンゲリオンかと、暫らく戦いを眺めていると、おかしな事に気が付いた。
初号機の動きに見覚えがあるのだ。あのクセのある足捌きは間違いなくシンジのモノと分かり、初号機がサキエルに捕まり頭部を破壊されや否や東方不敗は飛び出した。

―――そして、今に続く。

恩義ある師匠たっての頼みだ。出来うる限り融通はきかせる。
ビックファイアを追い続ける以上、危険な目に遭うのが日常茶飯事になる事は目に見えている。

ギュとシンジの片腕をイルイが掴んできた。東方不敗に助けられた当時を思い出し恐いのだ。
震えるイルイの身体の震動が伝わったのが、シンジに決意させるキッカケになった。

「おまかせください師匠。この紋章に誓って僕がイルイちゃんを護ってみせます」

シンジの意思に呼応して輝くシャッフル・ル−ン・ブランクを見せる。
紋章を揚げての誓約。それはシンジにとって神聖にして最上級の約束。
東方不敗は、決意の光を瞳に宿した愛弟子の姿を見て安心し、別れの言葉を告げると風雲再起に乗って第2新東京市を後にした。


同時刻。うす暗い闇の中、秘密結社ゼ−レのトップ達と碇ゲンドウが会合していた。

『使徒再来か・・・あまりにも唐突だな。15年前と同じく、災いは何の前触れもなく訪れる・・』

バイザ−で顔を半分ほど覆った老人。キール=ロレンツが会合の口火を開く。

『しかし・・・NervとEVA、もう少し上手く使えんのかね?』

『零号機に引き続き、君らが初陣で壊した初号機の修理費・・・・・国が一つ傾くよ』

『玩具を君の息子に与えるのはいいが、肝心なことを忘れてもらっては困る』

『人類補完計画。これこそが君の急務だ。我々にとって・・・・この計画こそが、この絶望的状況下における唯一の希望なのだ』

複数のゼ−レメンバ−の話の最後にキ−ルが締め括る。

「わかっています」

ゲンドウが表情を一切変えずに答える。

『いずれにせよ、使徒再来によるスケジュ−ルの遅延は認められない。それに・・・情報操作の方はどうなっている』

「ご安心を。その件については対処済みです」

『それは一般に対する処置だろう?私が言っているのは、監視者と傍観者に対する処置のことだ』

「あえて情報を与えておくことも処置の一つと考えますが」

ゲンドウのやり方は、ある意味有効だ。隠しすぎると余計なまで関心を集めてしまう。

『彼等は例の文書と同等の情報を持っている可能性が高い』

「記述によれば、還元された卵は1つです。自分たちの手許にそれが無いと知れば、ここへ現れるでしょう」

『だからこそ、彼らは我々の計画を知ろうとしている。そんな連中に情報を与えるのは危険ではないのか?』

「槍の引き上げは、まもなく完了します。あれさえ手に入れれば、問題ありません。それにEVAをロンド・ベル隊に出向させれば、使徒をそちらに引きつける事が可能です。また、その方がそちらのスケジュ−ルに載っているSTMCと接触する可能性が高いと思われます」

『EVAはSTMCと戦う為に造られたものではない。いずれにせよ、使徒再来によるスケジュ−ルの遅延は認められん。予算については一考しよう・・・・』

『碇、後戻りは出来んぞ』

碇ゲンドウに進むべき道は既に決められている。選択肢は他にない。裏切りは死をもって報いると含みのあるゼ−レメンバ−の言葉を最後に、立体ビジョンに映し出されたモノリスが消えていく。


「委員会の連中はどうだった?」

会合を終えて司令官室に戻ってきてゲンドウに冬月がゼ−レの反応を聞いた。

「彼らは我々を警戒している。スケジュ−ルを遅らせるのではないかとな」

「仕方のないことか。そうするとゼ−レの注意をしばらくそらす必要があるな」

「すでに手は打ってある」

「ほう。DCか?それともSDFか?」

「両方だ」

マホガニ−の机に両肘をついたゲンドウは、冬月に策謀の欠片を覗かせる。

「なるほど・・・・毒を以って毒を制すつもりか」

「そうだ、それも、強力な毒を・・・」

「その毒、シュウ=シラカワとイングラム=プリスケンは、こちらに牙をむく可能性もあるぞ」

「問題ない。彼らにとって、使徒とEVAは共に利用すべき存在の筈だ。我々に足掻おうとも、いずれは協力することになる」

「だが、あの2人はゼ−レ以上に危険な存在かも知れんぞ」

冬月の懸念はもっともだ。あの2人の裏には強大なナニかが蠢いている。

「それよりも、弐号機と例のサンプルの方は?」

「昨日、セカンドチルドレンと共にドイツを発った。1週間後に南アタリア島へ到着する予定だ。後は、使徒とゼ−レを上手く欺けるかどうか・・・それが問題だな」

「ロンド・ベル隊の手配はすでに済ませてある。完成しているEVAシリ−ズは、いずれあの部隊へ出向させる」

「だが、それでは此処が手薄になるぞ」

「ロンギヌスの槍さえ手許にあれば問題ない。それに使徒は、サンプルを狙ってくるはずだ」

ロンド・ベル隊。彼らの鈴は上手く天使と悪魔を引き寄せれるか?
冬月の心配を他所にゲンドウは、両手を組みゲンドウポ−ズを取ると、世の中をすべて見下したゲンドウスマイルで「問題ない」と言いのけた。
一時間後、シンジがNervに参加する為の条件を書いた契約書を持ってきて、契約後、シンジに親子のスキンシップとうそぶいて殴られ、病院送りにされとも知らずに・・・・


あとがき

コ−ディネ−タホ−ス。風雲再起!
100万馬力のパワ−に、大地を駆け!空を駆け!大気圏さえ突破する。
・・・・・馬じゃないだろ(汗)
シンジとイルイの今後の関係は、そうですね・・・・・
DESTINYのシンとマユみたいな関係で・・・・・シスコンになるのか?


レス返し

ATK51様> 世界観はス−パ−ロボットですがノリはGガンで行くのは確かです。赤毛の幼馴染と鋼鉄娘で、シンジを楽しく引っ掻き回したいとは思っています。

ななし様> 誤字指摘感謝します。シンジがNervに持つ不信感は最初の対応で決まったようなものですからね。

15様> 悪を断つ剣の方ですか・・・・今は、まだ登場させるかどうか分かりません。

シセン様> 赤毛の幼馴染は、ほぼ確定ですが綾波レイは今後の行動しだいと言うことで。

風を見る者様> 鬚は今回のラストで病院送りにしました。家庭内暴力で告訴はなし。
 

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