授業時間に突入してしばし後の屋上。衣類こそ綺麗だが、何故かボロボロな雰囲気を与える横島とその傍にちょこんとひかえるひのめ、そして腕組みして立つ凛の三者が話をしていた。
とりあえず生徒に手を出した訳ではない事を説明する事から話は始まった。
「……成る程、触ったって相手はライダーだったと……サーヴァント相手なら最初からそう言いなさいよ」
「……言う前にぶっ飛ばされた気が」
言いかけたが、ギロリと睨まれる。
「『あんな所であんな事言ってたのが悪い!』」
凛とひのめ二人に口を揃えて宣言されてしまった。
「で、戦闘の結果は?」
続けてとりあえずの戦闘の内容を話した所……。
「……ふーん、つまりライダーが相手でまだ奥の手を見せるのは早そうだったから絡め手でいったと」
方法が方法なせいでジト目ではあるが、一応納得したらしい。
「って事は犯人はライダーとその契約者って事ね、この結界は…で、基点、呪刻は見つかった?」
「いえ、まだです……」
実の所、しばらく(美少女を)探してて、で、いい加減探すかーとやり始めたらライダーと遭遇。戦闘終了後に凛にとっ捕まったので探してる時間あるはずがない。
「………あまり性質のいい結界じゃないんだから、早めに……せめて弱めておいた方がいいのよ。とりあえず早く探して頂戴……で」
「で?」
「実際に戦ってみてどうだった?ライダーは」
真剣な表情で凛は尋ねた。実際問題として英霊の質にもよるだろうが、ライダーというクラスはセイバー等と比べれば弱い部類に入る。本来騎士の英霊であるセイバー、ランサー、アーチャーに比べればライダーはあくまで騎乗『兵』なのだ。それだけにもし横島が、ジョーカーというクラスが更に弱いならそれだけ戦術戦略は練らなければならない。
「ん〜今回はともかく、命のやり取りって事なら負ける気はしないっすよ」
そうした凛の思いに対して横島はあっさりとそう返した。
横島の自信には根拠がある。
彼は生前に美神令子のやり方を目の当りにしてきた。
押して駄目なら引いて上げて下げて回して、それで駄目ならぶち壊せ。
手段を選ばぬその方法には非難も多かったのは確かだが、戦場という場では勝利した者こそが勝者。そこに卑怯も何もない。いや、戦場で卑怯な、と言う事自体が戦場を理解していない証拠と言える。
そういう意味では、横島は強い。何せ何の力もない頃から命の危険のある場へ平然と放り出されてきたのだ。英雄と呼ばれる程の強い奴が大抵伝説でそう書かれているように、最初から強かった訳ではない。
「本当?」
「本当ですってば、まあ、宝具とか特技次第ではまた違った結果も出るかもしれんすけど」
それを聞いて凛は改めて考え込んだ。確かに英霊はそれぞれを象徴する宝具を持つ。横島の持つ宝具を考えてもその力は魔術師のそれとは次元が違う。確かに宝具の内容次第では優れた英霊でも逆転される可能性はあるだろう。
「……とりあえずライダーがこの学校内の誰かのサーヴァントって分かっただけでも収穫か」
そう呟き、凛は考え込む。
「霊体になったサーヴァントを気配だけでなく、はっきり見えればもっといいんだけど」
「見えるっすけど」
「そうね、だから困って…」
言いかけて、はた、と凛は停止した。それからゆっくりと横島の方を見る。
「……見えるの?」
「魔力の流れはともかく、霊気とか霊体とかそういう向こうの世界関係なら生前の俺の専門分野だったっすからねー、一度姿も見てますから、単なる強い悪霊とかの間違える事もねーっすよ」
実の所、霊脈、レイラインと呼ばれるマスターからサーヴァントへの繋がりも横島には見えているそうだ。魔術師には分からずとも横島には見える。実の所、魔術回路やら何やらは肉体ではなく魂に付属するものであるから、魂魄からなる霊体関連技能に特化しているとも言える横島に見えるのはある意味当然なのかもしれない……という事にしておこう。もっとも、さすがにマスターとサーヴァントの距離が近くないと見えないそうだが(大体教室くらいの範囲か?)。
それに横島だと美人の幽霊なら何が何でも見つけ出しそうでもあるし。うん、英霊も一種の幽霊みたいなものだしね。
「まあ、何か複雑な気持ちだけど、それなら話は早いわ。順次回っていきましょう
結局、そういう事になった。
で、だ。
問題が即座に起きてしまった。
「やあ、遠坂」
格好つけた物言いっぷり。自信というか自分は他の奴とは違う、とでも言いたげな声の響き。女性にもてるのが当り前と感じているようなそんな声。こんなのには覚えがあった。西条だ。もっとも奴より濁ってる感じがしたのだが……。
で、どうやらこいつは凛ちゃんが気に入ってるらしい。まあ、凛さん美人だしな。もっとも、凛さん自身はそんな気は全くないようで、あっさり振ったというか冷たいというか……顔が引きつってた。
で、まああっさり分かれた訳だが。
「凛さん、今のは?」
「ん?間桐慎二。まあ、弓道部の副部長なんだけど……」
成る程、あの美綴さんが部長で、あいつが副部長と。
「なんか気に食わないのよね」
うむ、それは同感だ。ただ……。
「まあ、それは同感なんすけど…ライダーが傍にいたのは問題っすよねえ」
「は…?」
さすがに、それは予想していなかったらしい。
何でも彼もまた魔術師の家系ではあるらしい。
ただ、間桐は嘗てこの地に移ってきたらしいが、この土地が合わなかったのか、どんどん衰退していって、今の慎二って奴ではとうとう魔術師たる魔術回路がなくなってしまったらしい。つまり神秘に繋がる知識は豊富にあるけれど、魔術師ではなくなった、という訳だ。
「あ〜でも、繋がりはなかったな」
慎二がマスター?でも、とか呟きだした凛さん横目に呟く。
「繋がり?」
「ええ、マスターとサーヴァントには色んな繋がりがありまして。どうも魂に魔術回路とかが繋がってるみたいで、結果魂からサーヴァントっていう霊体に向かって魔力を供給する為のラインがあるんですけど、あいつにはそれがなかったんですよ。つまり確かにライダーはいたんですが、俺と凛さんみたいに直接繋がってるって訳じゃないみたいなんです」
その言葉に考え込んだ。
横島の言っている事が本当ならば、それはすなわち魔力供給が為されていないという事。考えてみれば当然だ、間桐慎二には魔術回路はない。それはすなわち魔力供給が出来ない事を意味する。そしてサーヴァントはマスターからの魔力供給なしでは現界し続ける事など無理だ……いや、そりゃあある程度の時間なら大丈夫だろうけれど。だからこそ、私は間桐の人間をマスターとしての候補から外していたのだから。
だが、横島の意見で事は変わった。
慎二の傍らについているライダー。今の彼からは供給されてないらしいが、慎二につき続ける意味などないからおそらくマスターから命じられたのだろう。令呪をもってすれば誰かに命令権を譲る事も可能なはずだ。そして間桐の関係者で魔術師は……。
「桜……」
その声はどこか悲しみと寂しさの気配を含んでいた。
おまけ
もう一つのWILD JOKERその構想
セイバー:小竜姫
ランサー:メドーサ
アーチャー:タマモ
アサシン:シロ
真アサシン:小笠原エミ
ライダー:六道冥子
バーサーカー:伊達雪之丞
キャスター:魔鈴めぐみ
金ピカ:美神令子
ジョーカー:横島
実は、当初考えていたのは、サーヴァントにGSキャラを当てはめて大騒動、という展開を考えていたのですが
これではフェイトのキャラクターがとっても喰われてしまいそうだったので、結局現在の形になりましたw
『後書き』
とりあえずFate/stay nightは攻略終了〜
攻略がどんくらい行ったかは『バルハラ温泉』って言葉で表しときます。
さてと、実の所いざクリアしてみると、当初予想していたよりずっと組み込みたい部分とかが見えてきまして…。
反面、予想していなかった弊害も出てきて、これまで書いた部分と合わせて再構築にひーこら言ってました。で、どう考えても修正し直したこの続きにはhollowも必要だと考える状態になりまして……。
給与出次第買ってクリアしてから本格的に続き、って事になりそうです。
>夢島流さん
はい、頑張って書いていこうと思います。
>1さん
>心眼(偽):Bというけどあの回避能力と危険察知能力を考えると最低でもセイバー並みじゃないか?(直感 A)美神限定で−がつくと思うけど。
セイバー程の未来予想に等しいような直感はどうかな?と思ったのもありますが…
矢張り横島には心眼だと思うのですよ!
>仕切り直しって、回復能力もこみな気がするんですが。
実の所、横島の回復能力に関しては考慮していません
実際、横島はDrヌルやベスパによる一撃などで死んだり、或いは死に掛けています
あくまで横島の回復はギャグだからこその演出だと判断しています
>致命的な危険の回避率は減少じゃなくて上昇じゃないですか?
これはこちらのミスですね、ありがとうございます
>にくさん
あれこれ考えてる部分はありますが、彼がいる相手に本当の意味でのちょっかいは出さない程度の分別は出させるつもりです。
実際、横島はおキヌちゃんや小鳩ちゃんとかシロとかに下心満載の手出しとかしてませんでしたからね。普段の行動で見せてるよりずっと自制心実はあるんだと思ってます。
なにより、この横島はルシオラと分かれて1年足らずで死んでますからね〜…。
……裏を返せば、明確な彼がいない相手には遠慮しないって事でもありますがw
>tyiさん
うむ、まあ、横島らしいと思っていただければ…
>ヒロヒロさん
>麺さん
えーと、敢えてまとめて
麺さんが書かれているように、ライダーの能力値は慎二から桜へとマスターが変わる事で、幸運こそ下がるものの反面筋力・耐久・敏捷の三点が全て1ランク上昇してるのですよねー。
この時点では慎二がマスター、すなわち桜からの魔力ラインが細いと思われるのでまだ低い能力値のままです。
>アレス=アンバーさん
原作のメドーサも美人ですしね♪
まあ、横島が手出さない訳はありませんw今後どうなっていくかお楽しみに〜
>蓮葉 零士さん
まあ、案外四文字でなく、三文字ってのは悩む所も多いものです。
確かに通常戦闘には十分ですが、裏を返せば細かな制御が必要なものとかの事柄ではもう一文字あれば、ってものも多いですから…
で、レーヴァテインは実は……これはまだまだ先に語る予定なので今は内緒〜