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▽レス始

「これが私の生きる道!エピローグ?編 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-18 23:49/2006-04-19 13:57)
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(11月18日、プラント周辺宙域「アークエン
 ジェル」艦内)

 「カザマ、交替のセンプウ隊を出すぞ」

 「ああ、頼むわ」

 「全く!何で俺が副司令なんてやらなくちゃい
  けないんだよ!」

モビルスーツ隊の指揮に加え、副司令の仕事も兼
任する羽目になってしまったコーウェルが文句を
言っていた。

 「それは、急に妊娠したタリアさんに言ってく
  れ」

停戦から2ヶ月ほどが過ぎたが、俺達はまだ臨戦
態勢で哨戒任務に就いていた。
各国の政治家達が講和の細かい条件を詰めていて
、まだ完全な終戦に至っていないので、停戦時の
勢力圏の境界線でお互いの監視を続行していたの
だ。
俺は分艦隊司令官の任を解かれ、「アークエンジ
ェル」とローラシア級巡洋艦一隻からなるカザマ
隊隊長兼周辺で同じように隊を編成しているアス
ラン、イザーク、ラスティー、カガリ達の司令官
のような任務に就いて、指示された宙域で哨戒任
務を行っていた。

 「でも、あの人本当にコーディネーターなのか
  ?」

 「それは俺も不思議に思った。三人目を妊娠す
  るコーディネーターなんて初めて聞いた」

俺とコーウェルは先週の出来事を思い出しながら
会話を続けていた。
先週の出来事とは、「アークエンジェル」艦長兼
方面艦隊副司令でもあったタリアさんがいきなり
倒れてしまったのだ。
俺達は「過労で倒れたのかな?」と思ったのだが
、実際には妊娠による悪阻が原因であり、それか
ら直ぐにタリアさんは産休に入ってしまった。

 「御免なさいね。私、悪阻が酷いのよ。後はよ
  ろしくね」

これがタリアさんの離任の挨拶であり、それを聞
いた俺達は放心してしまったが、さすがに申し訳
ないと思ったのか、デュランダル外交委員長が殺
人的なスケジュールの合間に差し入れを持ってき
てくれたりしていたが。

 「以前ほど忙しくは無いが、戦死者多数で代わ
  りの艦長は回って来ずに副長が艦長を兼任す
  る羽目になり、俺はカザマ隊副隊長兼カザマ
  のお守り兼モビルスーツ隊の隊長と三職兼任
  で忙しくてたまらない」

 「お守りは酷いよな。俺はクルーゼ司令ほど迷
  惑はかけていないぜ」

 「あのな、俺は状況が落ち着いたら除隊して財
  務官僚になるんだ。もう、お前の面倒を見て
  上げられないんだぞ。一応、ミゲルとハイネ
  に頼んでおくけど、モビルスーツで勝手に出
  撃してはいけないんだ」

 「あれは・・・、連合の連中が煽るから止めに
  入ろうと・・・」

 「俺も始末書を書かされたんだ!」

停戦後、特に大きなトラブル等は起っていなかっ
たのだが、先日、別の隊のモビルスーツ隊と連合
の哨戒部隊のモビルスーツ隊が些細な事で小競り
合いになった時に、俺はコーウェルの静止も聞か
ずに飛び出して間に入り、「お前は引っ込んでい
ろよ!」と暴言を吐いた連合軍のモビルスーツを
素手でどつきまわしてしまったのだ。
結局、それが引き金になって双方合わせて三十機
近いモビルスーツが殴り合いの喧嘩を始めてしま
った。

 「コーウェルも殴ってたじゃん」

 「それは、向こうが殴りかかってくるから・・
  ・」

 「それに、クルーゼ司令も速攻で駆けつけて参
  加してたじゃん」

 「始めは三十機ほどだったのに、いつの間にか
  百機を越えるモビルスーツが殴り合っていた
  し・・・」

いくら停戦になって戦争が終ったとはいえ、双方
共に多くの仲間を失っているのでそう簡単に割り
切って仲良くなれるはずも無く、こういうトラブ
ルが発生してしまったのだが、幸いにして軽傷者
が十数人出ただけで大きな事件にはならなかった
らしい。

 「それに、始末書で済んだからラッキーだった
  よな。ザラ委員長も(負けていないからそれ
  で良し)って言ってたじゃんか」

 「向こうの隊長はハルバートン中将に怒られた
  らしいけどな。(喧嘩をするなら勝てる算段
  をしてからやれ!)って言われたらしいぜ」

 「連合にしては、話のわかる司令官殿だな」

俺、コーウェル、クルーゼ司令、アスラン、ニコ
ル、イザーク、ディアッカ、ラスティー、キラ、
ホー三佐、ハワード一尉、カガリなど情報を聞い
た連中が多数駆けつけて殴り合いに参加したので
、俺達は最後まで優勢を保つ事が出来たのであっ
た。

 「でもさ、カガリちゃんは帰らないよな。まあ
  、オーブは平穏そのものだから急いで戻る必
  要は無いのかも知れないけど、始めはすぐに
  戻るって言ってなかったか?」

 「あくまでも、終戦になったらだそうだ。お前
  がアスランをおかしな場所に連れていくから
  、カガリ姫が心配してしまったんだぞ」

 「おかしな場所って、お前も喜んでたじゃん」

 「俺はあくまでも付き合いで・・・」

おかしな場所とは、戦闘終結後に行われた祝勝会
でハワード一尉が案内してくれたトップレスバー
であり、アスランを連れていった所、カガリ達に
また見つけられてしまった事件の事を指していた

キラ、イザーク、ニコルは誘わずにシン達も呼ば
ないで、秘密を守れそうな少数のグループで行っ
たのだが、何故か再び見つかってしまったのだ。

 「しかも、お前はいつの間にか逃げていやがっ
  て!」

 「俺は前回の反省を生かして、生き残りのマニ
  ュアルを整備していたのだ」

俺は今回は表に出ずに静かに遊んでいた上に、踏
み込まれた瞬間に裏口からこっそりと逃亡してい
たのだ。

 「ラクス様は何か言っていなかったか?」

 「実は、家に帰ったらその話をされてさ。(男
  の方は面白い場所に行かれるのですね。今回
  はヨシヒロはいなかったようですが)って言
  ってたんだけど、バレている可能性が高いな
  。流石に背筋が凍る思いだったから、次回の
  着物パブは不参加だな」

 「お前も懲りない奴だな・・・」

そんな下らない会話をしながら交替のモビルスー
ツ隊の発進を見送った。
今の俺達は定期的な哨戒任務は行っているが、別
に緊張する場面もほとんど無く、実に平和的な日
々を送っていた。
ただ、同期のハイネは戦争時に両軍の脱走兵や犯
罪者集団が結成した海賊の対策に追われて、毎日
の様にデブリ帯で連合の部隊と警戒任務に当たっ
ている。
戦争の拡大で急速に増えたモビルスーツやMAを
持って訓練中や任務中に脱走したり、戦場跡やデ
ブリ帯で拾って修理した兵器で武装した海賊が輸
送船や旅客機を襲う事件がここのところ増えてき
ていたのだ。
どうも、船団輸送を止めて単独航行の船が増えた
事が原因らしい。
そして、その傾向は宇宙だけで無く世界各地の海
域などでも発生していて、各国はその対応に追わ
れていたのだ。

 「そして、ミゲルは本土防衛隊任務か。アビー
  ちゃんもなかなか会えなくて大変だね」

 「そう思っていたら、ミゲルをおかしな場所に
  誘わないで下さい」

 「すいませーん」

管制担当のアビーちゃんに怒られてしったので、
つい謝ってしまう。
当然、ミゲルは今回も懲りずにトップレスバーに
集合してアビーちゃんに怒られていた口だ。

 「まあ、来週には講和条約の締結が行われて、
  地球派遣軍の兵士達も一部帰って来るし」

 「軍縮を早くやらないと財政が破綻するからな
  」

 「おお!さすがは、未来の最高評議会財務委員
  長!」

 「茶化すな!」

 「俺はありえそうだと思うけど」

 「それは、おいといて。大西洋連邦、ユーラシ
  ア連合、東アジア共和国の財政は破綻寸前な
  んだぞ。実は講和を一刻も早く結びたいのは
  連中の方なんだよ」

 「苦しいのは知っていたけど、そこまで酷いの
  ?」

 「大西洋連邦はアズラエル理事が相当無茶をし
  たからな。戦争に勝てばプラントから財貨と
  資源を搾り取れるから、財政難はすぐに回復
  すると言って軍備を拡張し過ぎた上に、あの
  大損害だ。ユーラシア連合は相次ぐ敗戦で大
  量の軍備を失い、再建した戦力も最後のジブ
  ラルタル攻略戦でまた大損害を出し、見捨て
  た極東艦隊は全滅で樺太も占領され、トリポ
  リの大軍は一歩も動けずにジブラルタルの返
  還と引き換えに撤退するらしい。彼らの維持
  費は相当なものだし。ああ、ロリアンを出た
  大西洋艦隊もジブラルタルの艦隊との小競り
  合いでそれなりの損害を出して撤退したんだ
  よな。そして、最後に東アジア共和国はもっ
  と深刻だ。構成国中経済力が二位の日本と三
  位の台湾と四位のシンガポールに抜けられた
  上に、再建増強中だった太平洋艦隊に大損害
  を出し、中国自体が内戦の鎮圧に時間と労力
  を割かれている状態だ。だから、早く講和を
  結んで内政問題に取り組みたいだろうしな」

 「ふうん、なるほどね」

今現在の地球各地の状況を簡単に説明すると、大
西洋連邦は本土の被害をほとんど受けていないの
で、それほど大きな混乱は起こっていないようで
、月基地もジークマイヤー大将とハルバートン中
将のコンビで上手くやっているようである。
ただ、大西洋連邦政府がこの戦争の責任はアズラ
エル理事にあるとする談話を出すに至って、後日
国内でアズラエル派狩りと称される公職追放と逮
捕劇が多数展開されていた。
アズラエル財団は多数の幹部が逮捕されて、当主
の死亡によりその財産も全て政府に没収された。
次に、ブル−コスモスは穏健派が強行派を切り捨
てて罪状を暴露して告発した為に、多数の幹部が
逮捕されてその影響力を小さくしたが、環境保護
団体としての生き残りには成功していた。
最後に、政治家と軍人は関係の深い人物は贈収賄
などの罪状などで告発されて逮捕され、浅い人物
はアズラエル理事の罪状を告発する事で自身の生
き残りを図っていた。
歴史上良く見られる出来事である。
結局、大物政治家はハル外務長官が逮捕され、ア
ルスター外務次官が臨時で外務長官に昇格し、軍
人ではサザーランド准将はジークマイヤー大将の
弁護により軍籍の剥奪と罪状の告発は見送られた
が、プリンス准将は高級幹部の全ての罪状を擦り
付けられて軍籍を剥奪されてしまった。
自業自得と言えよう。
尚、ラミアス大佐もハルバートン中将の弁護によ
って罪は一切無しという事になったが、彼女は軍
を退役して民間企業に就職する事を決めてしまっ
たようだ。
そして、残りのフラガ少佐達もバラバラに各地に
転任する事になったらしいと風の頼りに聞いた。


そして、南米大陸は講和条件で自由南アメリカ合
衆国に主権が返還される事になったらしいが、末
端の命令を聞かないゲリラ部隊と大西洋連邦軍の
駐留部隊との小競り合いがいまだに続いていて、
混乱を脱していなかった。
パナマは南アメリカ合衆国に返還される予定でマ
スドライバーの再建と守備をプラントと南アメリ
カ合衆国軍で共同で行う事が決められていて、大
西洋連邦軍が撤退した後にザフト軍パナマ基地部
隊が創設される事になっていた。
そのほとんどは返還予定のジブラルタル基地から
移動してくる部隊ではあったが。


日本と台湾を中心とする極東連合はその勢力を大
幅に増強させて、第四の大国としての地位を確立
しつつあった。
東アジア共和国に半ば見捨てられていたフィリピ
ンとザフトに占領されていたシンガポールの他に
、中国北東部とシベリアのバイカル湖以東の地域
が満州共和国とシベリア共和国の建国を宣言して
極東連合への参加を表明し、自衛隊と台湾軍が援
軍として現地の独立軍と共同で国境沿いに展開し
ている。
当然、そんな事を認められない東アジア共和国と
ユーラシア連合の軍と国境沿いでにらみ合う展開
になっていたが、日本はこの工作をかなり前から
準備していたようで対応は後手後手に回り、失地
を回復する事は不可能だと言われていた。
更に、ユーラシア連合は資源を取り尽くした上に
、人口の少ないこの地域を取り戻す気力に欠けて
いて東アジア共和国との温度差が現れていた。


東アジア共和国はその影響力をかなり低下させて
いた。
プラント・日本・台湾の分離独立工作で多数の内
戦地域を抱え、構成国の離脱によって講和後はそ
の地位をかなり低下させると予測されていた。
残った構成国のベトナム・タイ・カンボジア・ラ
オス・ネパール・ブータンなどの国も中国とは距
離を取りつつあり、経済的な関係は赤道連合や大
洋州連合、極東連合とに比重を移しつつあった。


赤道連合と大洋州連合はプラント同盟国として共
に戦った仲であったのでその結びつきは強く、オ
ーブとの経済協力や投資も活発になっている上に
、極東連合との関係も強化されたのでその国際的
な地位を向上させていた。


インドは大西洋連邦同盟国として最後までプラン
トやその同盟国と戦いその信頼を勝ち取る事に成
功した上に、旧イギリス植民地であったミャンマ
ー・マレーシア・セイロン・パキスタン・バング
ラデシュなどと共同で西アジア共和国を設立する
予定で、講和会議ではこの国家の創設の賛成を条
件に極東連合の創設が認められるものと言われて
いる。


イスラム諸国は開戦後にプラントの援助を受けな
がらイスラム連合という独自の国家組織を作り上
げた。
この国家は正式に地球連合に承認されていなかっ
たが、イスラム諸国の併合を狙って南下を始めた
ユーラシア連合の部隊の意図を見事に挫き、スエ
ズ運河の占領に成功してその存在感を大きくアピ
ールしていた。
講和会議ではスエズ運河のユーラシア連合との共
同管理の提案を呑めば正式に国家として承認され
るものと思われる。
唯一の懸案は旧ロシア連邦アジア系共和国の所属
問題がユーラシア連合との間で解決しておらず、
国境線で小規模の戦闘が続いている事であろう。


アフリカはアフリカ共同体の成立が確定していて
、戦後はバルトフェルド司令がザフト軍アフリカ
駐留軍司令官としてその地に留まる事が決まって
いた。
ここは、部族間の対立などが激しく、常に小規模
の紛争や内戦が絶えない地域だが、それは時間を
かけて徐々に解決していく他は無いだろう。
そして、アフリカに侵攻してきた敵軍のその後は
、トリポリのユーラシアの部隊は結局一歩もそこ
から出られずに、偵察に出した戦力を例のマダガ
スカル共和国のマリア少将が率いる部隊に撃破さ
れて無駄な損害を増やしただけであった。
マリア少将は自身で九機のモビルスーツを落とし
、彼女の部下達もそれなりの戦果を上げたので、
無駄な損害を防ぐ為に、貝のように引っ込んでし
まっているらしい。
そして、大西洋連邦の部隊は停戦後、電工石火の
速さで引き揚げてしまい、お互いの部隊が顔を合
わせる事が無いままに戦闘が終了してしまった。

 「せっかく、ラゴゥを改造して待っていたのに
  今回も出番無しか。アイシャと一緒に戦える
  と思っていたのに」

 「私、実戦を離れすぎて射撃の勘が鈍ってしま
  いそう」

 「戦闘が無かったのは良い事なんでしょうけど
  、拍子抜けですね」

 「私はケバブを食べに来ただけだったな」

これがバルトフェルド司令、アイシャ、ダコスタ
副司令、ウンガマ大将の感想であった。


マダガスカル共和国はその承認に向けて最後の調
整が行われていたが、多分承認されるであろうと
言うのが大方の意見であった。
講和後はスイスのような金融特区を作り上げて、
アフリカやイスラム連合に積極的に投資や融資を
行うつもりのようだ。
この国は地球に住んでいるコーディネーターが集
まって作られた国なので、比較的資産を持ってい
る人が多く、会社経営者などはコーディネーター
差別の無いこの国に本社を移す事や独自に銀行や
証券会社を設立する計画を立てているようだ。
そして、この新しい金融資本は非プラント理事国
が宇宙開発に乗り出す為の資金源になる事は間違
いないであろう。


ユーラシア連合も東アジア共和国の次に損害を受
けた国であった。
プラントやアフリカ大陸、イスラム圏の利権の喪
失と極東地域の喪失、いくつかの構成国の脱落な
どその被害は目を覆うばかりであり、国内では
ブルーコスモス強行派に属する政治家やアズラエ
ル理事に従っていた政府関係者の責任追及とその
地位からの追放が行われている最中であった。


以上の様に世界はまだ完全に混乱からは脱してい
ないし、講和条約が結ばれてからもそれを無くす
には長い年月と努力が必要であろうが、世界規模
での戦争がようやく終わりを告げたのだ。   
これは大きな前進と呼べるものであろう。

 「講和を結んでも世界の大国は対立を止めない
  だろうしね」

 「ああ、そうだ。大西洋連邦・ユーラシア連合
  ・東アジア共和国とその友好国である西アジ
  ア共和国対その他の国々のな。スカンジナビ
  ア王国は中立国とはいえ地理的にユーラシア
  連合寄りだし、オーブもプラント寄りになっ
  てしまった。次の代表であるウナト様も大西
  洋連邦とのパイプは大事にするだろうが、昔
  ほど肩入れする事も無いだろうしな。理不尽
  な要求が来たら助けを求める事が出来る国が
  増えたからな。傭兵として受け入れて戦うと
  いう前例を作ってしまった事だし。多分、大
  西洋連邦の政治家は愚かなオーブ侵攻作戦を
  許可してしまったアズラエル理事を一生恨む
  だろうな」

 「だが、大西洋連邦は強かだ。確かに財政的に
  は苦しいが本土にほとんど被害を受けていな
  いし、各国との正常な貿易が再開されればそ
  の企業の多さですぐに損害を回復出来る。宇
  宙開発だって世界有数の技術力を持っている
  から、戦争で失った利益はすぐに貿易で取り
  戻す事が可能だろう。アルスター外務長官は
  それを見越してアズラエル理事に睨まれなが
  らも世界中を飛び回っていたんだろうな。彼
  は真の愛国者なりってか」

実際の所、戦争を一番強行に進めた大西洋連邦が
一番被害を受けていなかったので、ユーラシア連
合と東アジア共和国との間に微妙な温度差が生ま
れ始めた事も事実であるようだ。

 「これからは経済力と技術力と政治力が国の強
  さを決める」

 「軍の役目も治安維持や小規模紛争の解決に変
  わってしまうからな。もう、艦隊決戦なんか
  起こらないさ」

 「だな」

そんな話をした一週間後の11月25日にプラン
ト及びその同盟国と地球連合との間で講和条約が
結ばれた。
調印式はユニウスセブンの跡地に集結した大西洋
連邦宇宙軍総旗艦の「ワシントン」艦内で行われ
、プラント及びその同盟国と西アジア共和国の正
式承認と貿易の自由化、軍備の縮小と核兵器と核
動力搭載兵器の生産と配備の禁止、その他ミラー
ジュコロイドの生産と使用禁止などの細かい条項
も多数盛り込まれていた。
その調印式には俺も護衛として参加していたが、
調印後はユニウスセブン跡地に「この悲劇を二度
と繰り返さないように」と彫られた石碑が立てら
れ慰霊祭が同時に行われた。
そこには沢山の花や飾られ、特別ゲストのラクス
が鎮魂歌を歌いその様子は全世界に放送された。

 「これで、戦争は終わりか・・・」

俺は核動力機の使用が禁止になったので、アーク
エンジェルで予備機扱いだった黒いジンを改良し
てビームマシンガンとビームサーベルを使えるよ
うにして貰って、それで護衛任務に就いていた。

 「そして、ラクスも歌手を引退するか」

ラクスと俺は来月クリスマスの俺の二十歳の誕生
日に結婚式を上げる事になっていて、今日の慰霊
祭を最後に歌手を引退するらしい。
ただ、例外的に年に数回ほどチャリティーコンサ
ートなどには出席するようではあるが。

 「ここにアスランのお母さんやオキタ副司令の
  家族が眠っているのか。オキタ副司令、奥さ
  んや息子さんと仲良くやっているのかな?」

そうつぶやきながら俺は用意していた花束をユニ
ウスセブンに向けて放り投げた。
ふと横を見ると、アスランも自分で用意した花束
を投げていた。

 「アスラン、少しは吹っ切れたか?」

 「ええ。でも、最近あまり思い出さなくなって
  きたんですよ。俺って薄情なんですかね?」

 「たまに思い出せばいいんだよ。きっと、アス
  ランのお母さんはお前が日々楽しそうにして
  いる姿を見て安心しているさ」

 「そうですかね?」

 「ああ、そうさ」

 「でも、たまに考えるんです。自分が母を殺さ
  れた恨みを一身に背負って全てのナチュラル
  を滅ぼそうとしている姿を。何かを間違えた
  らそういう未来もあったのではないかと」

 「間違いか・・・。でも、これだって百点満点
  の未来ではないかも知れない。でも、やり直
  しはきかないし、これが運命ってもんだ」

 「運命ですか。でも、この終わり方で十分大成
  功だと思いますよ」

 「成功か。それで、ザラ隊長は成功の秘訣は何
  だと考えているんだ?」

 「意外とイレギュラーな人が一人で大きく未来
  を変えてしまったのかも知れませんよ。俗に
  言うバタフライ効果ってやつです」

 「SFチックな話だね」

 「ええ(まさかとは思うけど、この人って可能
  性もあるんだよな。勿論、彼だけでは無いの
  だろうが)」

そんな話をしてから、俺達は自分の母艦に戻って
プラントへの帰路に就いたのであった。


(12月24日、クライン家近くの教会)

プラントには敬虔なキリスト教徒はほとんどいな
いが、結婚式を教会で行いたいと願う人が多いの
でこのような教会が少数ではあるが、作られてい
た。
今日はここで結婚式を挙げた後、クリスマスパー
ティー兼俺の誕生会がクライン邸で行われる事に
なっていた。

 「おーい!カザマ、来てやったぞ!」

 「先に人生の墓場に直行する友を慰めなければ
  いけないからな」

ハイネとミゲルが軍務を抜け出して俺の控え室に
現れる。

 「しかし、変わり映えしないな。軍服だから仕
  方が無いけど」

 「ミゲルもアビーちゃんと結婚する時は軍服だ
  ぞ。嫌だったら除隊してからにしろよ」

ザフトの現役将校が結婚するので、式では軍服を
着用するのが決まりになっていた。
多分、連合とかだと礼装用の軍服を着るのだろう
が、歴史が浅く実用本位のザフトにはそんな物は
存在しなかった。

 「俺は何を着ても似合うからいいんだよ」

 「自分でそんな事を言うか?」

 「ハイネは彼女を見つけてからそのセリフを吐
  け!」

 「うわっ、傷つくな」

ミゲルの自信満々な発言に俺とハイネで突っ込み
を入れるが、ハイネだけは見事に言い返されてい
た。

 「話は変わるけど、それが噂の(フェイス)の
  バッジか」

ハイネとミゲルの白い指揮官服にフェイスのバッ
ジが輝いていた。

 「ああ、大軍が戦っていた戦時には指揮を混乱
  させるだけだという理由で任命されていなか
  ったけどな。これからはテロ部隊の鎮圧、要
  人警護、武装勢力との戦闘、内乱鎮圧の手助
  けなど政治的・外交的要素が絡む任務が増え
  そうだからな。俺達は緊急時には議会の直接
  命令で少数の精鋭部隊を引き連れて地球・宇
  宙を問わず、即座に駆けつけなければいけな
  いそうだ」

 「へー、それは凄いな。さすがは同期の星!よ
  っ、偉いよ!」

 「お前は新婚だから勘弁してくれって断りを入
  れて教官任務に就いたそうだが・・・」

 「ミゲル君、正解!俺はシン達をビシバシ鍛え
  る事を最優先事項に添えたからな」

 「まあ、そういう事にしておいてやる。シン達
  が俺達のような任務に就いたらちゃんと指揮
  官に復帰するんだぞ」

 「了解!」

三人で駄弁っていると、アスラン達が入ってきた

 「おめでとうございます。ヨシさん」

 「ありがとうな。アスランは出立の準備は整っ
  たのか?」 

 「まだ三日ほどありますよ」

アスランは先週ザフトを除隊して今日は礼服を着
ていた。
彼はカガリのオーブ帰国に合わせて一緒に付いて
行くことになっていたのだ。
オーブ軍に入ってモビルスーツ師団の指揮官に正
式に就任するカガリの参謀職兼パイロットの指導
教官の任務に付くらしい。

 「階級も一佐でヨシさんと同じですよ」

 「へえ、大したものだ」

 「ヨシヒロさん、聞いて下さいよ。僕はもうモ
  ビルスーツに乗らないって決めたのに無理や
  り部下にされてしまったんですよ。アカデミ
  ーを卒業しなきゃいけないのに技術将校まで
  兼任させられるし、僕は過労死してしまいま
  す」

軍をきっぱりと辞めて学業に専念するつもりだっ
たキラはアスランに懇願されてその部下として軍
務を続ける羽目になったようであった。
さすがに、アカデミーへの通学が考慮されてバイ
ト扱いのようだが。 

 「最強の男なんだから、キリキリ働いてくれよ
  。オーブで面白いお店を見つけたら連れて行
  ってやるからさ。ヤマト二佐殿」

 「そうそう。辞めたかったら、自分の後継者を
  育ててからにしろよ。カザマですらそれが終
  るまでは辞めないんだから」

 「わかりましたよ」

ハワード一尉とホー三佐に説得されてキラはしぶ
しぶ了承した。
この二人もアスランの下でモビルスーツ隊の指揮
とパイロット育成にかかわる予定になっていた。

 「そう言えば、ニコルもオーブ行きだったな」

 「アスラン達と一緒に行きますよ。僕は完全に
  留学目的なんで学生生活を満喫します」

 「そいつは結構だ」

 「ふん!この忙しい時にザフトを辞めやがって
  !」

新しい白の指揮官服に身を包んだイザークが久し
ぶりに不機嫌そうに文句を言う。

 「イザーク、人の進む道は人それぞれなんだか
  ら文句を言うなよ。お前はジュール隊隊長の
  任を全うすればいいんだから」

 「ラスティー!お前もやめた側の人間の癖に反
  論するな!」

 「俺はほら、跡取り修行ってやつだ。毎日親父
  に付いて回っているから忙しくてさ。今日だ
  って久しぶりの休みなんだぜ」

 「ラスティーとニコルはいいよな。俺なんてイ
  ザークのお守りが大変なんだから」

 「ディアッカ!お前!」

 「シホの偉大さが改めてわかるってもんだ」

 「俺の副官任務も堅実にこなしていたからな」

ニコルはオーブへ留学する予定で、ラスティーは
臨時評議員を辞任したマッケンジー会長の秘書的
な仕事をしながら後継者修行を日々送っていて、
ジュール隊隊長としてザフトに残留したイザーク
とその副隊長を務めるディアッカ、そして、軍医
としてアークエンジェルのリヒャルト先生の下で
修行をしているシホと合わせてそれぞれ別の道を
歩みだしていた。

 「まあ、栄光のカザマ隊は永遠に不滅ですって
  やつだな」

 「自分で言うなよ」

 「でもさ、結構大変だったんだから」

 「まあ、とにかく目立っていた事は確かだな」

 「ザラ国防委員長お気に入りの部隊だったとい
  う噂だし」

 「ザラ元国防委員長だ」

 「そうだった」

ハイネの指摘通り、ザラ国防委員長は講和条約締
結後、評議会議員職を辞して研究者の道に進む為
アカデミーの院生になってしまい、亡くなった奥
さんの研究を引き継ぐために、若い学生に混じっ
て真面目に勉強しているという話だ。
そして、それと同時期にシーゲル元議長も議員職
を辞して、今は自宅でバラの栽培と品種改良に勤
しんでいる。

 「元国防委員長閣下が同級生・・・。院生達は
  大変そうだな」

 「父上があそこまで思い切った事をするとは思
  いませんでした」

 「でも、お前の母上は偉大な人だよな。一度で
  も会って見たかったな。ハイネもそう思うだ
  ろう?」

 「カナーバ議長、ジュール新国防委員長を凌ぐ
  良い女だったかも知れないな」

 「ここだけの話だが、ニコルの母上もなかなか
  良い女なんだよ」

 「本当か?」

 「本当だ」

 「ここだけの話になってませんよ!」

 「綺麗なお母さんを誇れよ。ニコル」

ニコルは俺とハイネを半分諦めたような表情で見
ている。

 「よう!久しぶり」

控え室に新しい客が入ってきた。
石原三佐、相羽一尉、そして、意外にもフラガ少
佐が入ってくる。

 「今、そこで憎き元敵軍のエースである(エン
  デュミオンの鷹)殿と会ってな。お前に会い
  たいそうだからお連れしたわけだ」

 「フラガ少佐は度胸があるね。ここに平気で入
  ってくるんだから。でも、どうしてここへ?
  」

 「俺は有給が溜まっていたからレナ少佐とマリ
  ューの付き添いだ。お前ね!女性ばっかり優
  遇して招待しておいてライバルの俺は無視か
  よ!」

 「ライバルなら(黄昏の魔弾)があそこにいる
  よ。後、クルーゼ司令はどこだ?」

俺はクルーゼ司令が挨拶に来ない事を疑問に思っ
たが、彼は先にチャペルに行ってグリアノス隊長
と何かを話しているようだ。
後で聞いた話だが、「ムウが来そうだから危険を
かわしたまでだ」と語ったらしい。  

 「始めまして。(エンデュミオンの鷹)さん。
  俺はミゲル・アイマンだ」

 「始めまして。それと、隣りの君は(オレンジ
  ハイネ)君だっけ?」

 「その二つ名は使用禁止だ。そうだ、カザマに
  聞きたい事があったんだよ。実はある筋から
  その渾名を広めたのがお前だって噂を聞いて
  な」 

 「それはガセでしょう」

 「本当か?」

 「うん、本当」

 「怪しいんだけど、今日は祝いの席だから追及
  は後日だな」

ハイネの追求を取りあえずかわした後、石原三佐
と相羽一尉から近況を聞いた。
彼らは決戦終了翌日には自分達の本拠地に帰って
しまったからだ。

 「東アジア共和国との国境付近での小競り合い
  が絶えない。暫らくは準臨戦態勢だな。でも
  、俺は三宅坂勤務だし、相羽一尉はテストパ
  イロット勤務だ。日々刺激が無くてつまらな
  い」

 「カザマやシンの尊い犠牲のお陰で(ハヤテ)
  は完成間近だ。真田一佐と栗林陸将がありが
  とうだってさ」

 「はいはい。シンにも伝えてあげなよ。そこら
  辺にいるから。ところで、石原三佐はマユラ
  と会ったかい?」

 「勿論。でも、年明けにはマユラはオーブ軍を
  辞めて日本に来る事になっているんだ」

 「へえ、パイロットの仕事をなげうって愛しい
  彼の元にお嫁入りってやつか」

 「俺の自宅近くにモビルスーツ隊の訓練基地が
  出来るんだよ。そこで彼女は臨時教官の仕事
  をする事が決まっている」

 「臨時ね。どうせ、石原三佐がすぐに孕ませち
  ゃうからでしょう?」

 「カザマもそう思うだろう」

 「カザマ、相羽、お前らな・・・」

 「まあまあ、式には呼んでね。無理やり休んで
  でも出席するから」

 「奥さんと二人で招待するから出席してくれよ
  」

 「帰りに温泉なんてのもいいな。新婚旅行とし
  ては」

 「それが目的かい!」

 「それも、あるけど。お祖父さんとお祖母さん
  にラクスを紹介したいんだよ」

 「十六歳の少女が嫁だから驚くんじゃないの?
  しかも、ピンクの髪のお姫様だし」

フラガ少佐の言葉にみんなが頷いた。

 「まあね。日本だったら不良が出来ちゃった婚
  ってパターンだよな」

 「それは言えてる」

俺と石原三佐の日本談義に他の連中が首を傾げて
いる。

 「そういえば、コーウェルとジローはどうした
  んだ?」

 「コーウェルは新しい職場では下っ端だからギ
  リギリにならないと来ない。ジローは奥さん
  と病院に寄っている」

 「病院?ナターシャさんは具合でも悪いのか?
  」

 「ああ、それはな・・・」

 「「お待たせー!」」

 「遅いぞ!二人共!」

 「悪いな。俺、まだ下っ端で雑用が多いんだよ
  」

コーウェルはザフトを除隊後、財務省に転職を果
たしたのだが、新入りの彼はまだ雑用に追われて
いるようだ。

 「俺はナターシャと病院に行ってた」

ジローは再び新型機や試作機の試験部隊の隊長に
就任していた。 

 「病気か?」

 「いいや。妊娠したみたいなんだな。これが」

 「「「「おめでとう」」」」

同期の四人で同時にお祝いの言葉を言う。

 「それで、何ヶ月だって?」

 「2ヶ月だ」

 「なあ、ほら見ろ!俺の予想は正しかっただろ
  う?」

 「ちぇっ!外れた」

 「俺も」

 「俺もだ」

そう言いながらミゲル、ハイネ、コーウェルが百
アースダラー札をサイフから取り出して俺に手渡
した。

 「どういう事?」

 「先月、ジローの結婚式の時にカザマがナター
  シャさんが妊娠しているって言うから、俺達
  はそれは無いだろうって反論したんだよ。そ
  こで、この賭けが成立したわけだ。おかげで
  大損したけどな」

 「あのね・・・。君達・・・」

 「これで、出産祝いをやってやるから怒るなよ
  」

 「お前は相変わらずだな」

 「そう言えば、タリアさんって来るのかな?悪
  阻が酷いって聞いたけど」

 「それは、もう大丈夫です。ザフトを休職して
  からは元気そのものですから」

 「よう、レイ!元気だったかって。毎日会って
  いるからな」

レイ、シン、ヨウラン、ヴィーノが入ってくるが
、俺は今アカデミーでモビルスーツ操縦の教官を
やっているもで、彼らと毎日のように会っている
のだ。 

 「教官、おめでとうございます」

 「おめでとうございます」

 「「おめでとうございます」」

 「来てくれてありがとうな」

レイとシンはともかく、ヨウランとヴィーノまで
来てくれるとは思わなかった。

 「「ラクス様のウェディングドレス姿が拝める
  なんて幸せです」」

 「ああ、納得」

 「女性陣が一人もいないな」

 「ミゲル、女性は女性の所に行くだろう。普通
  」

 「それも、そうか」

 「あれ?でも、親父がいないな」

 「お前の親父さんならもう席に座ってデュラン
  ダル外交委員長達と話していたぞ」

 「顔ぐらい出せっての!」

 「ラクスさんの様子を見に行った後、(野郎の
  衣装に興味は無い)と言って引き揚げてしま
  ったそうだ」

石原三佐達がその光景を目撃したらしく、詳しく
事情を話してくれた。

 「所詮、親父は親父か・・・」

 「おい、そろそろ時間だぞ!」

ハイネの指摘で俺はチャペルに向けて歩き出した


(同時刻、ラクス視点)

花嫁用の控え室ではラクスが薄いピンク色のウェ
ディングドレスを着て、母さんとレイナ達が集ま
ってメイクをしてあげながら、色々な話に花を咲
かせていた。

 「うーん、やっぱり十代でウェディングドレス
  を着ると初々しくて可愛いわね」

 「ありがとうございます。お義母様」

 「お母さんはいくつの時に結婚したの?」

 「二十二歳の時よ。私もあなた達ほどでは無い
  けど、飛び級で大学を早く卒業してね。ワシ
  ントンの大学で研究員をしている時にお父さ
  んと出会ったのよ」

 「へー、そうなんだ」

 「職場結婚でしたのね。お義母様は」

 「ところが、結婚したら手間ばかり掛かる男で
  ね。今も変わらないけど」

 「「それは言えてる・・・」」

自分の母親の指摘にレイナとカナは同時に頷いた

さすがは、双子である。

 「でも、ラクスは今日から私達のお義姉さんで
  ・・・」

 「私達は小姑さんか」

 「今まで通りにラクスと呼んで下さいな」

 「ラクス、ニッコリ微笑んでね」

フレイがデジカメを構えて写真を撮りはじめた。

 「ミリィが写真を絶対に撮ってきてくれって。
  サイ達も楽しみにしているそうよ」

 「女性なら誰もが憧れるウェディングドレス姿
  ってね」

 「マユラは年明けには日本に移住して石原三佐
  と結婚式じゃん」

 「えへへ、まあね」

 「と言うわけだから、ラクスさんもカザマ司令
  と二人で出席してね」

 「はい、喜んで」

 「私も早く結婚したいな」

 「アビーはそんな先の話じゃないんだろう?寧
  ろ大変なのは私の方だ」

 「カガリは国家行事になるからね。式も大変そ
  うだし」 

カナが「大変そうね」という顔をする。

 「そうなんだよ。ひっそりと少人数の参加者で
  ってわけにはいかないんだ」

ラクスと俺の結婚式はマスコミシャットアウト、
個人的な付き合いのある人以外ザフト・政府関係
者の招待無しという事になっていたが、それでも
、かなりの人数になってしまっていた。
カガリとアスランの結婚式はそれは豪勢なものに
なるのだろう。
年明けには臨時代表の座にいたウズミ様が辞任し
てウナト様にその地位を譲り、完全に引退して悠
々自適の隠居生活に入ってしまうので、アスハ家
新当主としては政治的にも大々的に結婚式を執り
行わねばなるまい。

 「ラクス、お客さんよ」

シホが控え室の入口を指差すとタリアさん、ミサ
オさん、ナターシャさんが立っていた。 

 「こんにちは」

 「久しぶり。元気だった?」

 「お久しぶりです」

 「おお!妊婦三人組!」

 「私達はともかく、ナターシャが妊娠している
  のが良くわかったわね」

 「さっき、病院に寄っているって聞いたから。
  まあ、勘ですけど」

アサギの勘の良さに全員が驚きの表情をする。

 「おめでとう。何ヶ月?男の子?女の子?」

 「2ヶ月です。多分、男の子だって」

 「あら、男の子なの。私の娘のお婿さんにしよ
  うかしら」

 「えっ、クルーゼ司令と親戚関係に・・・」

ナターシャの冷静な突っ込みに全員が心の中で賛
同する。

 「あのね・・・。この子は可哀想ね。お父さん
  が少しアレで」

 「家は全員息子だから、誰か一人くらいお嫁さ
  んに貰う子がいるかもよ」

 「ありがとうね。タリア」

女二人が友情を確認している時に更に乱入してく
る女性達がいた。

 「「おめでとうございまーす」」

 「げっ!(悪魔の姉妹)」

 「それを言うなー!マユラー!」

 「そうですわ」

以前、ブスと呼ばれた上に酷い目にあったマユラ
が露骨に嫌な顔をする。

 「カザマ司令、招待状を出していたんですね」

アサギも何気に酷い事を言っている。

 「それで、後ろのお二人さんは誰?」

 「始めまして。元ドミニオン艦長のマリュー・
  ラミアスです」

 「元ドミニオン所属のレナ・メイリア少佐です
  」

 「えっ、連合の軍人・・・」

 「(乱れ桜)・・・」

 「カザマ君に(来れたらどうぞ)って挑発され
  たから、可愛いお姫様のお顔を拝見しに来た
  の」

 「私は軍を辞めたから気にならないわね」

いくら戦争が終ったとはいえ、プラント本国には
戦死した兵士の家族が多数住んでいる。
そこへ堂々と来れるこの二人の度胸は大したもの
なのだろう。

 「さすがですわね。始めまして、私は元アーク
  エンジェル艦長タリア・デュランダルです」

 「私と同じく元なんですか?」

 「産休を取っていまして」

 「それは、おめでとうございます」

 「ラミアスさんは軍を辞めてしまわれたのです
  ね」

 「色々ありましたからね。民間企業に就職しま
  した」

 「私達の部下なんですよ。ラミアス課長は」

 「えっ!楠木重工の・・・」

 「可哀想に・・・」

ユリカ達がマリューの上司だと聞いた瞬間、全員
がマリューを哀れみの目で見つめ始めた。

 「ちょっと!失礼でしょ。自衛隊を退職して楠
  木重工プラント支社長になったこの私に対し
  て!」

 「そうですわ。副支社長の私にも失礼です」

 「プラント支社?」

 「そうよ。材料をプラントから輸入するよりも
  、ここに工業コロニーを作って完成品を生産
  した方がコスト削減を図れるからね。モルゲ
  ンレーテ社も同様の事をするし、他の国の企
  業も検討中よ。だから、ラスティー君の会社
  は今頃大忙しでしょうね」

 「最近、ラスティーが忙しそうなのは事実ね」

シホが思い出したように言う。

 「モルゲンレーテ社の計画の責任者はお父さん
  だけど、プラントでの現地責任者はシン君の
  お父さんよ」

 「へえ。じゃあ、シン君は家族と会いやすくな
  るわね。私なんて、パパが外務長官に昇格し
  てしまったから忙しくて全然会えないのに」

レイナの説明にフレイが羨ましそうに感想を述べ
た。  

 「そんなわけで私達はプラント在住が決定しま
  した。さあて、ここで良い男見つけるぞ!」

 「おー!」

 「二人はそれで良いんだろうけど、ラミアスさ
  んは?」

 「私はフラガ少佐と結婚する予定だから、ここ
  と月を行ったり来たりの生活ね」

 「そして、バジルール少佐もノイマン中尉と結
  婚を前提にお付き合い中で、あぶれているの
  は私だけか・・・。カザマ君なんて密かに良
  いと思っていたんだけど、こんなに可愛いお
  姫様がいるから勝利は覚束無いわね」

レナ少佐が盛大なため息をつく。

 「ここであぶれている人と言ったら、ディアッ
  カ君とハイネさんとコーウェルさん?」

 「さっき見てきたけどパッとしないわね。それ
  に、ディアッカ君は私をオーブでおばさん呼
  ばわりしたしね。ああ、そうだ!オーブでピ
  ンクのストライクに乗っていた女が私をおば
  さん呼ばわりしてね。そいつの成敗が今日こ
  こに来た目的の一つなのよ。さあて、そこの
  二人の内どちらかしら」

 「ええと・・・」

 「当時、ストライクルージュ改に乗っていたの
  はアサギです」

マユラは自分が助かる為に、アサギを即座に売り
渡した。

 「ちょっと!マユラ酷い・・・」

 「この口がおばさんって言ったのかーーー!」

 「ぎょめぇんにゃさーい!」

レナ少佐に両側から口を引っ張られたアサギが半
泣きで謝っていた。

 「本当にもう。私はまだ二十歳代だっての!」

 「「こんにちは!」」

 「わー、ラクスのウェディングドレス綺麗」

プリプリと怒っているレナ少佐を横目にしてルナ
マリア、メイリン、ステラが入ってくる。

 「そのドレス良く似合ってるわよ。ステラ」

 「ありがとう。お母さん」

 「シン君は何か言っていた?」

 「良く似合ってるって」

 「良かったわね」

 「うん」

ステラは母さんに見立てて貰った水色のドレスを
纏い、ルナマリアとメイリンもそれに負けじと赤
いドレスとピンク色のドレスを着ていた。 

 「レイも良い男なんだけど・・・。シンばかり
  モテるのね」

 「レイはアカデミーで恐ろしいまでの人気を誇
  っていますよ」

 「私なんて近寄れませんよ」

タリアさんの心配事にルナマリアとメイリンが事
情を説明している。

 「レイ、お手紙とかお菓子とかいっぱい貰って
  る」 

 「どれだけ沢山貰っても完食してますよ。レイ
  って見掛けよりもよく食べますね」

タリアさんとミーアちゃんの女の争いに巻き込ま
れた結果、レイの胃袋は拡張を続けてシンと張り
合うまでに成長していた。
おかげで、レイ宛てに届いた手作りのお菓子など
は順調に消化されているようだ。

 「ミーアの女狐さえいなくなればいいの。そう
  、私の希望はそれだけなの・・・うふふ」

不気味な雰囲気を醸し出しつつあるタリアさんと
全員が距離を取り始める。 

 「ミーアさんは週に何回も来て・・・」

 「メイリン!しっ!」

メイリンが余計な事を話そうとしたので、ルナマ
リアが急いで止めに入った。
もし、そんな事がタリアさんの耳に入ってアカデ
ミーに毎日来るようになったらたまらないからだ

 「さて、そろそろ時間ですよ」

母さんの指摘で全員がチャペルに向かって移動し
始めた。


結婚式というものは自分が予想していた通りのと
いうか、以前にテレビで見た通りに進んでいった

俺が神父さんの前で待っていると、ピアノ演奏が
流れてシーゲル元議長にエスコートされたラクス
が入場してくる。
後ろではアデス艦長とスズキ部長の娘さんが花び
らを撒きながら歩いていた。

 「ピンクのドレスってのがラクスらしくて似合
  っているけど、その色に拘るね」

 「私の好きな色ですから」

神父の前で宣誓を行い、指輪を交換して口付けを
かわした後に外に出てお披露目を行う。
クルーゼ司令が用意した式典用のジンが両脇に置
かれ、式典用の装飾された剣を捧げていて、ルナ
マリア達がライスシャワーを盛大に撒いていた。

 「さあて、問題のブーケを拾うのは誰かって事
  なんだけど・・・」

写真撮影等を終えてから、ラクスが持っていたブ
ーケを投げようとすると、目が血走った三人の女
性が最前列に陣取っていた。

 「レナ少佐、ユリカ、エミ・・・。切羽詰って
  いるのかな?」

 「さあ?イベントだからだろう」

他の女性陣は自分が貰えればラッキーくらいの感
覚らしいが、三人の特にレナ少佐の顔は真剣その
ものだ。

 「そんな迷信にすがるくらいなら自分で探しに
  いけばいいのに・・・」

 「ディアッカ君!聞こえたわよ!後で必殺技を
  お見舞いしてあげるわ」

先ほど、口を両側に引っ張られたディアッカの顔
に恐怖が走る。

 「では、行きますわよ」

ラクスが放り投げたブーケは気合を入れた三人の
手を弾いて後ろにいたマユラの手の中にすっぽり
と納まった。

 「何だよ!面白くないな。マユラなんかもう三
  ヶ月もしない内に結婚するのに」

 「結婚する予定だからブーケが手に入ったんだ
  ろう」

ハイネのつまらなそうに言った発言にジローが冷
静に返事をする。

 「そりゃ、そうなんだけど・・・」

 「参加者のみなさんはクライン邸に移動してく
  ださい。ささかながら祝宴を行います。クリ
  スマスパーティーと婿殿の誕生会も兼ねてい
  ますので遠慮なくご参加ください」  

シーゲル元議長の言葉で全員がクライン邸に移動
して、盛大なパーティーが行われた。
その後は各々が自分の道を進み、なかなか会えな
くなる人もいるのだろうが、この縁が友情が一生
続きますようにと祈らずにはいられなかった。


(五十年後、クライン邸庭園内)

あれから五十年という月日が流れた。
その後の世界は小さな争いは沢山起こったが、そ
の度にみんなで協力して解決をしたので、その争
いが大きな戦争に発展する事は無かった。
地球は資源が枯渇する寸前になったというか、無
理して採掘すると環境破壊が進んでしまうので、
多数の人たちが宇宙・月・コロニーに生活の拠点
を移して生活を行い、その人口は150億人を超
えるまでに増えていた。
現在地球には40億人ほどの人しか住んでいなく
て、残りの住民は全て宇宙に在住している。
そして、宇宙に移住した人達は自身の自治権を求
め、それを地球各国が認めた為に五つの国家が新
しく誕生して新国際連合に加盟するまでに至って
いた。
その後のプラントはコーディネーターを生んでく
れるナチュラルや出生率が高いハーフコーディネ
ーターを受け入れながらどうにか人口を増やし、
その間に出生率を上げる研究を進める事に成功し
たので全人類の10%の人がコーディネーターに
なっていたが、コーディネーターはプラントの他
に宇宙国家群、月、オーブ、スカンジナビア共和
国などにも多数が移住してその地位が確立されつ
つあった。
未だに大西洋連邦やユーラシア連合ではブルーコ
スモスがコーディネーターのナチュラルへの回帰
を求め、一部が過激なテロを行っていたが、既に
その行動が大きな影響力を持つ事は無くなってい
た。

 「ヨシヒロ、何をしているのですか?」

クライン邸の庭に自分で設置したテーブルセット
に腰掛けながら、文章を一生懸命に打ち込んでい
る俺にラクスがお茶を持ってきた。
半世紀も経った自分の妻の髪はほとんどが白くな
ってしまったが、その笑顔は当時とそれほど変わ
っていないような気がした。
俺の勝手な思い込みかも知れないが。

 「昔の日記や簡単なメモを集めて自伝らしきも  
  のを書いているんだ。俺も歳を取ったからね
  」

 「まだ、十分若いと思いますが」

 「髪なんて真っ白だし、もうモビルスーツにも
  乗れないからね。去年のキラみたいな事にな
  ったら大変だ」

去年、オーブ軍退役技術元帥のキラが「近頃の若
いパイロットはなっていない。見本を見せてやる
!」と意気込んでモビルスーツに搭乗したら、ギ
ックリ腰になって入院する羽目になった事件があ
ったのだ。
さすがの、スーパーコーディネーターも歳には勝
てなかったらしい。
この件を聞いたアスランとカガリは「もう歳なん
だから無理するなよ!」とキラを見舞った病院で
説教をしたようで、レイナが「心配かけてすいま
せん」と代わりに謝っていたようだ。 

 「この件を聞いたイザークがビビッてモビルス
  ーツに乗らなくなったんだよな。あいつ、プ
  ラント最高評議会議長を引退してからは毎日
  レジャー用のモビルスーツで遊んでいたのに
  」

この時代のモビルスーツは大きさ用途などによっ
て様々なものが開発されていて、以前のままの軍
事用の他に資源開発用、宇宙空間内の作業用、重
力下での工事用、レジャー用、スポーツ用などが
多数開発されて毎年のように新モデルが発売され
ていた。

 「アスランは遂にツルッパゲだったし、カガリ
  ちゃんも以前のような勢いが無くなった。他
  のみんなもそうだ。半世紀はやっぱり長い年
  月なんだよね」

 「クルーゼ司令も去年逝ってしまいましたしね
  」

クルーゼ司令は生まれのハンデを物ともせず、七
十八歳まで元気に生きていたが、去年ポックリと
逝ってしまった。 

 「クルーゼ司令か。ザフトの最高責任者にまで
  出世したのに、司令って呼び方が一番しっく
  り来るね。ミサオさん寂しそうだったな。何
  だかんだ言っても仲が良かったからね」

 「グリアノス隊長もガックリ来てましたね」

 「喧嘩友達がいなくなったからね」

そんな話をしながら、みんなの近況を思い出して
いた。
キラは結局、オーブ軍に技術将校としてレイナと
一緒に就職した。
レイナは子供が出来てからすぐに辞めてしまった
が、キラはオーブ軍でただ一人技術元帥号を授与
されてから退役して、現在ではたまに軍の視察に
行くのが日課になっている。
尚、カガリとの関係は完全に秘密にされていたの
で、キラはアスハ家に入る事は無くヤマト姓のま
まであった。
実は後日、生まれの秘密などを両親から聞いたら
しいのだが、本人は「今更ね」というような事を
言ったらしい。

アスランはカガリと結婚してオーブ軍の最高司令
官として長年やっていたが、今では代表首長を辞
任したカガリと共に悠々自適の生活を送っている

今のオーブの首長はウナト様の孫が就任していて
、予想通りにユウナのバカはスルーされていた。
これからは、アスハ家・サハク家・セイラン家で
順番で代表首長を回していくようだ。

イザークは暫らくザフトに所属していたが、母親
の地盤を引き継いで評議会選挙に出馬して政治家
に転身した。
政治家としての彼は国防委員長などを歴任してか
ら最終的には議長にまで上り詰めた。
現在では、完全に引退してフレイと遊び回ってい
るようだが、親友であるディアッカに言わせると
「昔はクソ真面目だったから、今遊んでいるんで
すよ」との事である。

ディアッカは実はイザークよりも早く政治家に転
身していて、イザークの前の最高評議会議長は彼
だったのだ。
そして、今は俺が創めたある仕事を手伝ってくれ
ている。

ニコルは希望通りに音楽家として成功を収め、現
在でも世界中を周っている。
妻であるカナは技術者の道をきっぱりと諦めて、
マネージャーとしてニコルを支えていた。

ラスティーは親父さんの会社を世界有数の財閥に
育て上げ、妻のシホは医者として成功を収めた。
現在では二人共引退して子供達に後事を託して、
イザーク達と毎日遊び回っているようだ。

残りの人達もホー三佐とハワード一尉は中将にま
で出世してから退役して年金生活を送っていて、
アサギはハワード一尉と結婚して子供が出来た後
に退役して専業主婦になってしまった。

マユラは石原三佐と結婚後、専業主婦生活を満喫
していたが、十数年後に石原三佐が政治家を引退
した父親の後を継いで選挙に出馬した為に、政治
家の妻として忙しく働くようになり、後に石原三
佐が首相にまで上り詰めたので、ファーストレデ
ィーと呼ばれる身分にまで出世していた。

 「私は普通の主婦がいいの!」

これがマユラの正直な感想であったが・・・。
今では二人共引退してしまって各地の温泉めぐり
をしているらしい。

相羽一尉も実は政界に進出して国防大臣(防衛省
から国防省に改名されたため)にまでなっていた
が、既に鬼籍に入っていた。

(悪魔の姉妹)は楠木重工を継ぎ、現在でも名誉
会長・名誉副会長として会社に睨みを効かせてい
た。
念願の結婚も出来て会社の経営も子供や孫が立派
にやっているのだから引退すればいいのに、暇だ
からという理由で毎日出社しているらしい。
この微妙な嫌がらせ加減がいかにも彼女達らしい
と思うのは俺だけなのだろうか?

 「正直、いつ誰が先に逝っても不思議ではない
  からね。会社はヨシヒサに完全に任せていて
  俺はタッチしていなし、今の仕事もダコスタ
  君とバルトフェルト君に任せてあるから、俺
  の仕事はもう無いんだよね。だから、こうし
  て自伝なんぞを書いてみているんだよ」

 「そんな悲しい事を言わないでくださいな」

 「いやさ、思い残す事もないからこれからは更
  に遊び周ろうかと思って。石原三佐とマユラ
  に温泉に招待されたからさ。アスランとカガ
  リちゃんも行くみたいだし、そうなればキラ
  やホー三佐達も行くだろうしね。ああ、イザ
  ークやディアッカも誘うか。シンも先月、最
  高評議会議長を辞めたから暇だろうしね。遊
  び回れるって最高だね」

シンはザフト軍最高司令官に上り詰めた後、政界
に進出してつい先月まで議長職に就いていた。
一番おバカなシンが一番スマートに出世したのだ

レイがザフトを除隊後、ミーアちゃんとミュージ
シャンとして活躍した事を考慮すると、「普通は
逆だろう!」と言いたくなるような人生の不思議
であった。

 「えーと、ラスティーとシホは今何処にいるの
  かな?」

そんな事を考えていると、三人の男性が俺を訪ね
てきた。
一人はディアッカで後の二人は四十歳前後と二十
五歳前後くらいの男性達であった。

 「カザマ名誉会長、カザマ杯の授与式がもう少
  しで始まりますので会場に移動しましょう」

 「俺、欠席でいいわ」

 「駄目です。この賞は名誉会長自らお渡しする
  のが決まりです」

 「俺、体調が・・・」

 「健康そうですね」

 「つれないなダコスタ君」

四十歳前後の男性はあのダコスタ副司令の末っ子
である。
彼はアフリカでナチュラルの女性と結婚して現地
に骨を埋めたのだが、沢山いる子供達は世界中に
散って各分野で活躍していて、彼にも俺の秘書的
な役割をして貰っている。

 「ヨシヒロ、我侭を言ってはいけませんよ。こ
  れが終れば暫らく暇なのですから」

 「わかりましたよ。それじゃあ、行きますか。
  ディアッカは温泉の話聞いた?」

 「ええ、連絡が来ましたよ。みんな行くそうで
  す。暇ですからね」

 「暇なのが一番だって」

 「ですよね」

 「いえ!忙しい方がいいですよ」

二十五歳前後くらいの男性が俺達の意見に反論す
る。
彼は、バルトフェルト司令の孫に当たる人物で、
お祖母さんは当然アイシャさんだ。

 「君も歳を取ればわかるさ。さあ、いこうか」

 「はい、ミゲルさんとハイネさんが激怒しなが
  ら待ってますよ」

 「あいつらジジイになったら、気が短くなった
  な」

俺はシン達を一人前に鍛え上げてからザフトを除
隊して作業用モビルスーツの製造と販売を行う会
社を立ち上げた。
軍事用としては軍縮機運で左前だったこの商売だ
が、宇宙の過酷な環境で作業を行うのに重宝しそ
うなこの機械に将来性を期待した俺は旧式になっ
て民間に放出されたジンなどを改良して販売する
ところから始めて、三十年ほどで作業用のモビル
スーツを自前で開発して販売するまでに会社を成
長させていた。
更に、十年ほど前に会社を息子に譲り渡して引退
していた俺は、偶然、孤児院や慈善事業の資金集
めに困っていたマルキオ導師と再会した。
以前に喧嘩別れになった過去はあったが、今では
奉仕活動に全てを賭けている彼の手伝いをしよう
と決意してその資金集めに手を貸す事にしたのだ

だが、ただ寄付金を集めるだけでは駄目だと感じ
た俺にある一つのアイデアが浮かんだ。
近年モビルスーツを使って様々なスポーツやレー
ス競技などが行われていて、それが世界中に放映
されて人気を博していたので、俺は軍人時代に飽
きるほど行っていた模擬戦を競技にして観客を集
めるアイデアを出したのだ。
古いコロニーを買い取って地上、森、山、砂漠、
平野、水中、市街地など多数の決戦場を作り出し
、コロニーの外にも様々な条件の宇宙用の決戦場
を製作してそこで各選手にルールに則ってチュー
ンをしたモビルスーツで戦闘をさせ、勝者に賞金
を出した。
そして、その放映権をテレビ局に売り、戦闘結果
をギャンブルにしてその利益を慈善事業に寄付し
たのだ。

始めはかなり批判をされたが、経営状況をなるべ
く透明にして不正をさせないように努力した結果
、その功績が認められて新国際連合から非営利団
体としての承認を得る事に成功したのであった。

実は戦闘能力の高いパイロットをプロ選手として
監視出来る上に、犯罪に走る事を多少は防げると
思われたのが承認を得た理由でもあるようだ。
その他にも新国連職員の天下り先としての役目も
期待されたのだろうが。
こうして、俺はこの団体を当時、議長を辞めて暇
そうだったディアッカと二人で大きくして、ダコ
スタ君とバルトフェルト君を後継者として育て上
げて、今ではほとんどの仕事を彼らに任せていた
のだ。
だが、先日俺の名前を冠した競技会の優勝者に賞
金とメダルを授与する仕事が残っていた。

 「優勝者は誰だっけ?」

 「イザークの孫ですよ」

 「クソ真面目なイザークの家から出た唯一の変
  り種か。あいつ激怒しそうだけどな」

 「それが、あいつ孫には甘くて積極的に応援し
  ているんですよ。今日の授与式にも参加する
  そうです」

 「そうなんだ。可愛い元部下の孫の為だ。さて
  、行きますか。ラクス、大体書き終えたから
  仕舞っておいてくれないか?」

 「はい、わかりました」

 「何を書いていたんです?」

 「自伝」

 「あなたのはある意味面白そうですね」

 「死後にでも出版してくれ。印税は寄付って方
  向で。俺ってカッコイイな」

 「はいはい、行きますよ」

 「最近、冷たいぞ。ディアッカ!これが終った
  ら温泉だからな」

 「はいはい」


ヨシヒロ・カザマは十五年後、85歳の生涯を終
え、その三年後に妻のラクスもひっそりと後を追
うように亡くなった。
例の自伝は彼の死後に出版され、そこそこ売れて
その印税は慈善事業団体に寄付された。
その後の人類は太陽系惑星の詳しい探査を開始し
て火星・金星・木星圏・土星圏に移住が始まり更
なる発展を始め、最終的には太陽系外に進出する
だろうと思われる。
この結果をあの世のラウ・ル・クルーゼがどう思
っているのかは誰にもわからなかった。


         あとがき

とりあえず、種編終わりです。
今まで読んでくれた奇特な方々に感謝します。
これからは、外伝と運命でのユニウスセブン落下
事件くらいは書きたいですね。
本当は書かないと言っていたのですが、シン達が
世界の秩序を守る為に、即時対応部隊に任命され
て世界中でブルーコスモス残党やただのテロリス
ト、海賊などと戦うお話にしようかと思っていま
す。
なので、大した敵も出てこないのですし、中心は
シン争奪戦になるかも知れません。
外伝は教官としてシン達と接するカザマの話が中
心になると思います。
次回の更新は・・・、アイデアを思いついたらで
す。

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