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「幻想砕きの剣 8-11(DUEL SAVIOR)」

時守 暦 (2006-04-12 23:10/2006-04-12 23:13)
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『未亜のハーレム』チーム 2日目・昼


「天辺見たぜー!」


 何だかハイテンションな未亜。
 空気が薄くなったせいで、脳に充分な酸素が行き渡ってないのだろうか?

 それはともかく、未亜の言葉通り、彼女達は山の頂上に居た。
 全員多少息苦しそうだが、高山病になる心配はないようだ。


「ン〜〜……っはぁ…空気が美味しいわね…」


「“破滅”の事なんて、忘れちゃいそうよね〜♪」


「…ネクロノミコン、ご苦労様」


 眼下に雲を見下ろし、リコ達は休憩中である。
 あまりに連続して召喚を繰り返すと、感覚器官に少々影響が出る可能性が高いからだ。
 このまま行けば夕方までには目的地に辿り着ける、とダリアのお墨付きも出ている。

 少々冷たく、爽やかな風が吹き抜ける。
 汗で湿った皮膚が冷えて、それがまた心地よい。
 タオルで軽く汗を拭い、リリィは大きく伸びをした。


「はぁ…山登りが趣味っていう人の気持ちが解る気がするわぁ…。
 何だかイヤな事とか全部吹き飛んでいきそう…」


 この状況で吹き飛んでも困るが、ストレスは一気に解消されてしまったようだ。
 気力が復活し始めている。
 大自然の中で魔力も精神も活性化し、リリィのみならず未亜もリコもダリアもパワーアップを遂げていた。
 偉大なり大自然。


「この際だし、もうちょっと休憩していきませんか?」


「いいですね、マスター」


 暢気な未亜の意見に、ダリアもリリィも反論しない。
 上を見上げれば、雲一つない…雲の上にいるのだから当然といえば当然…蒼天。
 燦々と照りつける日差しは強すぎず弱すぎず、適度な温もりをもたらしてくれる。
 未亜の煩悩すらも退ける、どこか神聖な空気が満ちていた。


「ヒマラヤ山脈の頂上とかって、こんな感じなのかなぁ」


「そうねぇ…私の世界でも、“破滅”に荒らされない霊峰ファラニレッムっていう山があったけど、多分こんな感じよねぇ…」


 リリィと未亜が並んで座り、ずっと遠くを見る。
 周囲を見回せば、雲の下に続く山脈と、雲の切れ目から見える地上、そして遥か彼方で雲の白と空の蒼が交じり合う地平線ならぬ雲平線。


「月明かりの下で見れば、きっともっと綺麗でしょうね♪
 星もきっとよーく見えるわ…。
 お酒があればもっと最高よ」


「月光の雲海、ですか……。
 ご主人様と一緒に見られたら…」


 新婚旅行に行く事になったら希望してみよう、とリコは心中で呟いた。

 これから“破滅”と戦いに行くのだとは思えない程にリラックスしている未亜達。
 とはいえ、何時までもこうしている訳にもいかない。
 せめて目的地までの距離は聞いておかないと。


「ダリア先生、結局目的地はどの辺りなんですか?」


「もう直ぐソコよん。
 実を言うとね、入り口は雲がかかる高さにしか作られてないのよ〜。
 だから正確な位置は私も知らないの。
 ちょっと時間をかけて探さなきゃ…」


「雲で入り口を隠しているのですか…。
 極秘作戦とは聞いていましたが」


「何があるかはお楽しみよん♪」


 リコにウィンクをするダリア。
 はぐらかされたような気分になったが、どのみち目的地はもう直ぐだ。
 雲の中と言えども、探知する術が無い訳ではない。
 透視能力を持った魔物も呼べない事は無いし、魔力の流れを見たりすれば何とか探し当てる事ができるだろう。


「でも、そういう事なら早い所見つけ出さないと…」


「そうだね。
 夜になるまで探しても見つからなかった、じゃ話にならないもの。
 寝袋もないし火種も持ってないし、凍えて死んじゃうかも」


 イヤな想像だが、可能性は大きい。
 ただでさえ標高が高くて気温が低いのに、月が天に昇った頃にはどうなるのか。
 いざとなったらその辺に召喚器の一撃で穴を開け、その中で一晩過さなければならないかもしれない。
 それはまぁいいとしても、その場合にはまず間違いなく未亜が暴走する。
 「人肌で温めあおう」なんて言って、それこそハーレムの王のように他の3人を好き勝手に弄びかねない。
 幸いな事に、未亜はその展開に気付いていなかった。
 まぁ、気付いたとしてもやはり寒いのはイヤだっただろうけど。


「それじゃ、そろそろ出発する?
 ソーラーパワーも新鮮な空気もタップリ補充したし」


「そうねぇん、あんまり長くここに居ると、魔物達に嗅ぎ付けられてもおかしくないわねぇ。
 それに、2時ごろから多少は暑くなりそうだし…」


「決まりですね。
 では、出発っと」


「ですが、ここからは逆召喚は使えませんよ。
 雲の手前に送るくらいならいいですが、視界が不明瞭な状態で空間を歪めるような術は危険です」 


 そうは言っても、視界が利かない状態で山肌をうろつき回るのも充分危険だ。
 どうにかして視界を確保しなければならない。


「雲を吹き飛ばす…のは無理よね」


「規模が大きすぎるわ。
 自分の足元だけでも見えていればいいんだけど…」


 実際の所は雲というより、濃い霧のような感じだろうか。


「リコ、透視能力を持ってる魔物は?」


「あの子は海洋生物です。
 呼べない事はありませんが、まず間違いなく死にます。
 …ここはやはり、地道に探していくしかないのではないでしょうか。
 …瘴気ガスに突っ込んでいくようで気が引けますが」


 ダリア達は眼下を見下ろす。
 雲に覆われた山肌は、ずっと向こうまで広がっている。


「……気力が盛り下がってきたわねー」


「…だから、引率がどうしてそういう事を…」


 ダリアだからだ。
 その一言で全ての説明はつく。


「そもそも、目的地への侵入経路だか入場口だかは、どれくらいの大きさなんです?
 人間3人がなんとか入れる程度の大きさだったら見つけるのは限りなく不可能に近いと思うのですが」


「う〜ん、もっと大きい筈よ…。
 色々と資材を運び込まなきゃいけないと思うから」


「資材…?
 何かを作ってるんですか?」


「さぁ?
 私もチラっと聞いた程度だし」


 …聞けば聞くほど面倒だ。
 いっそ魔物と戦っていた方が、シンプルで気が楽だったかもしれない。


「そもそも、なんかこう、迎えの人とか居ないんですか?
 この雲の中から探し出せ、なんて無茶以外の何者でもないでしょう」


「…あら、そう言えば」


 ダリアは懐から、なにやら手紙を取り出した。
 察するに、クレアからの命令書だろう。
 内容に興味があったリリィだが、何とか自重した。


「………お迎えの人は、ちゃんと用意してるそうよ」


「何処に!?」


「…………山の麓の森の湧き泉に」


「…じゃあ、ここまで来たのって無駄?」


 珍しいと言えば珍しい、ダリアの大ポカ。
 昼行灯としての演技を続けていた時も、彼女は何気にきっちり仕事をこなしていた。
 本気モード…諜報員としてのダリアはかなり有能で、こう言った命令を把握せずにミスをしてしまった事など一度もない。
 それでも日常的にこの手のミスをやっていそうだと感じるのは、やはり彼女のイメージのせいだろうか。

 救世主候補生達は無言で召喚器を構えた。
 流石にダリアも密かに冷や汗を垂らし、なんとか事態を打開しようとする。
 間違えたお蔭でこんなに澄んだ空気が吸えた、などと言っても火に油を注ぐだけだろう。
 上手い言い訳も考え付かず、この場はとにかく話題を変えるべきだ、とダリアは判断した。
 強引に話題を変えても着いてこないだろうが、そこは諜報員の真骨頂である。
 巧みな話術を駆使するべし。


「む、無駄なんかじゃないわよ?
 だっていきなり山の上に登っちゃったら、高山病になっちゃうし、空気が薄くてまともに動けないじゃない。
 だから体を馴らす意味もあって…」


「だからって、態々こんな天辺まで登ってくる事もないでしょう」


「ああん、リコちゃんどーしてそんなにクールなの!?
 そこはそれ、単なる勢いというか…
 それに入り口が雲の中にあるのは変らないんだから、どっち道登らなきゃいけなかったのよぉ」


 …どこが巧みな話術だろーか。
 墓穴を掘りまくっている。
 掘りすぎてあっちこっちに落とし穴状態だ。


「だ、大丈夫よぉ〜。
 ここからでもお迎えの人とは連絡が取れるから。
 その人に入り口の位置を教えてもらうわ」


 ならさっさとやれ、と無言の催促が飛んでくる。
 とにもかくにも、これで上手く連絡が取れなければその場でアウトだ。
 ダリアはこれ以上ないほど真剣に念話を試みた。

 迎えに来る男とは面識がある。
 …というか、ぶっちゃけた話、ダリアの部下である。
 直接の命令権はないが、一応彼も諜報員だ。
 ダリアは単独でのスニーキングミッションを得意とし、諜報員全体の動きは副官に任せている。
 今回迎えに来るはずだった男は、副官直属の諜報員。
 その彼が目的地に居るという事は、これはかなり重要な事態である。


(解ってはいたけど、彼を王宮の常務から離してこっちに当てる…。
 冗談抜きでこの計画に賭けてるみたいですわね、クレア様は…)


 そんな任務でアホなミスをしたという後悔はさておいて、ダリアは集中して迎えの男を捜す。
 流石に山頂から麓の気配を探るのは限りなく難しいのだが、今は違う。
 この山は魔力的にはニュートラルに近く、ノイズが殆ど混じらないのだ。
 空気が澄み切っている理由の一つでもある。

 伝導率が普通の空間よりも素晴らしく高いので、雲の上に位置する山頂からでも麓の気配を探れない事はないのである。
 とは言っても、砂浜に落した鍵を探すよーなモンだが…。


(ええと、森はこの方向にあったわよね…。
 山を覆うように生茂ってるけど、迎えなんだからそんなに深くまでは行かない筈。
 さらに湧き泉の場所で待っている…つまり、近くに水の属性を帯びた魔力があるのね。
 山の麓も何だか魔力がニュートラルだから、水の気配はすぐに解るはず…)


 半分以上あてずっぽうだが、暫く探すと幸運にも発見できた。
 この時ばかりは、ダリアは神に感謝したらしい。


(……君、聞こえる?
 聞こえてたら返事をして。
 今ちょっと人生の危機なのよ〜)


(……?
 ダリア様ですか?
 ダリア様の人生の危機は、その性格が出来上がる切欠になった出来事でしょう?
 今更どんなピンチだというのですか?)


(ひ、ひどいわ〜。
 って、それはともかく…ちょっと間違えて、山頂まで登ってきちゃったのよ)


 迎えに来た男は、ダリアの声に応えて念輪を送ってきた。
 この手の念話で話しかけられる事に馴れているのか、慌てた様子は聊かも見られない。
 軽口まで返す余裕である……8割本気だったよーだが。


(山頂まで?
 ちょっとの間違いで済む距離ですか…)


(地図を開けば両手で足りる距離じゃないの〜)


(リアルじゃ人間が1000人くらい居ても届かない距離ですよ!
 …まぁ、好都合ですね。
 実を言うと、入り口は頂上付近にあるんです)


(え、ホント?
 ご都合主義万歳ね〜♪
 でも、命令には…)


(念には念を入れて、との事です。
 …実を言うと、クレア様が『ダリアは有能で良い家臣だが、昼行灯の演技が上手すぎてなんか色々と不安だ』と仰いまして。
 そこで、命令書には偽の入り口を書いたんです。
 資材の搬入口が雲の中にあるのは本当ですが)


(そうなの?
 まぁ、よくある事だけどね)


 よくある事なのである。
 万が一敵に捕まったりした時のために、囮の情報を持っておくのは諜報員には常識と言えば常識である。
 ダリア自身もよく使う手だし、自分が知らず知らずの間に囮にされている事もある。
 部下をそういった役割に出した事もある。

 文句を言える義理ではない。


(ま、このくらいでグダグダ言ってちゃ、この業界ではやっていけないわね〜)


(…ホントに、どうしてこの人優秀なのかなぁ…。
 確かに、その辺を自分で分析して最適な行動を取るのが優秀と呼ばれる最低条件ですけど…。
 と、とにかくです。
 その辺りに、一箇所だけ魔力の流れがおかしい岩があるはずです。
 そこの岩の下に入り口が隠されています。
 私は今から別ルートで戻るので、先に行ってください。
 見つからないなら、こちらから迎えに行きますので)


(りょうか〜い♪)


 ダリアの声は弾んでいる。
 山頂まで登ったのが無駄足ではなかったので、未亜達に集中攻撃される心配が減ったのだろう。
 その代わり少々信頼を損なったような気がするが。


「連絡ついたわよ〜ん。
 実は、この辺に入り口があるんですって〜」


「……ホントにぃ?」


 懐疑的な未亜。
 無理もあるまい。
 このご都合主義的展開に、ダリア自身も『いやぁそれはナイでしょう』と内心では思っていたりする。


「…まぁ、態々山を降りる必要が無かったのはいい事だけど…。
 それで、その入り口って何処にあるんです?」


 やっぱりちょっと視線が冷たいリリィ。
 チクチクと刺さる視線に耐えながらも、ダリアは周囲を見回した。


「この辺りに、魔力の流れがおかしい岩があって、その下が入り口なんですって。
 でも、この辺の岩って言ってもねぇ…」


 周囲を見回すダリア。
 結構岩が多い。


「魔力の流れ…。
 マスターは見えませんか?」


「う〜ん、さっきちょっとだけ感じたんだけど…。
 でも、魔力の流れはともかくおかしい所っていうのは全然解らないよ。
 どんなのが普通でどんなのがおかしいのか、基準がサパーリ」


「あらぁ、それじゃ丁度いい訓練になるわね♪
 未亜ちゃん、私が教えてあげるから一緒に探しましょ?
 リリィちゃんとリコちゃんは、個別にそれぞれ探索ね」


「はいはい…」


 とにもかくにも、入り口を探し出さないと話にならない。
 ダリアのミスはこの際水に流して、未亜達はそれぞれ入り口を探し始めた。
 リコとリリィは一見すると散歩しているだけに見えるが、実際は神経を尖らせて周囲一帯をサーチし続けている。

 一方未亜とダリアはというと、こちらは一つの岩の前から中々動かなかった。


「……と、こんな風に魔力が流れてるんだけど…見えるかしら?」


「う〜ん……そう言われるとそんな気もしてきますけど…」


「あらら…やっぱり急には無理なのかしらねぇ?」


 ダリアは岩を流れている魔力の流れを指で辿って、未亜が魔力を感知する手助けをしていた。
 しかし、やはり無機物の中を流れる魔力を感知するのは難しいらしい。
 先程は、未亜自身が移動する魔力の流れの中に居たから解ったのだろう。
 とはいえ、丁度いい機会といえば機会である。
 この際だから、未亜に魔力の感知方法を身につけさせようと、教師根性なぞ発揮するダリアだった。

 暫く続けたが、結果は芳しくない。
 実の所、未亜は『見えないモノを見る力』よりも『感じ取り操作する力』の方が発達しているのだ。
 リコとの契約により赤の力を使えるようになって以来、本人が意識するしないに関わらず、魔力ともまた違った力に触れてきた。
 感覚のチャンネルがそちらの力…赤の力に限定されていて、魔力の波動を感知するチャンネルに切り替える方法を知らないのである。
 強く大きい魔力の流れは体で感じられても、弱く小さい魔力の流れを視る事は出来ない。


「…こっち系の才能、ないんでしょうか?」


「さぁ…こういうのって、生まれ育った世界の環境にも結構影響されるからねぇ…。
 未亜ちゃんの世界は、魔法とか無かったんだっけ?」


「ええ、少なくとも私は知りません。
 ……なんかこう、視界にフィルターがかかってる感じなんですよ…」


「フィルターねぇ…。
 何を通すか自分で決められれば、魔力の流れも見えるようになるんだけど」


「……それって、でもアレじゃないですか?
 霊力とかそーいうのだけ通すように設定したら、その辺をふよふよ彷徨っている方々とか自爆…もとい自縛しておられる方々とか」


「見えるわね」


「げっ」


 顔を歪め、慌てて目を通常モードに切り替える未亜。
 ダリアはそれを見て笑った。


「大丈夫よ〜、オバケを見るには、フィルターの設定をモンの凄く細かくしないといけないらしいから。
 ま、実際には“理論上は見得る筈”ってだけで、実際に見えた人は居ないのよ。
 あ、ここで言うオバケっていうのは、高密度化してモンスター化してるオバケじゃなくて、密度が薄くて自意識も持てない…そうね、魂の残り滓みたいな物ね。
 見たって主張する人は、普段から霊感が強い人ばっかりらしいし」


「そ、そうなんですか…」


 それを聞いて一応安心したのか、しかしそれでも恐る恐る周囲を見回す未亜。
 やはりおかしなモノは見えない。
 ふぅ、と未亜は溜息をつき、天を仰いで眉と眉の間を軽く摘んだ。


「あら、目が疲れちゃったかしら?」


「はい…ずーっと目玉を全開にしてましたし…。
 あうぅ、目薬が欲しい…」


「オヤツについてたレモン汁ならあるわよ?」


「自分に使ってなさい。
 目に挿すだけじゃなくて、それこそ鼻とか浣腸用とか、あと膣に流し込むと刺激的かもしれませんよ」


 ぞんざいな口調でダリアの軽口を切り捨てる未亜。
 が、その動きがピタっと止まった。
 ダリアもイヤな予感を感じ、ちょっと動きを止める。


 …しばらくして、未亜がボソっと呟いた。


「……楽しいかも」


「イヤイヤイヤイヤ、未亜ちゃんダメよ!
 自分に対してやるなら止めないけど、未亜ちゃん絶対に他の誰かにやる気でしょ!?」


「当然です。
 …そうだ、賭けをしませんか?
 今から30分以内に、私が入り口を見つけたら私の勝ち。
 見つけなかったらダリア先生の負け。
 そして敗者は勝者の言う事を、何でも一つ聞かなければならない。
 当然受けてくれますよね、ギャンブラーダリア先生?」


 そう言われると、ダリアの賭博師としての魂が疼いてくる。
 が。


「いいわね…なんて、言うと思った!?
 未亜ちゃん、それをOKしたらこの辺の岩を丸ごと吹き飛ばしてでも入り口を見つけ出す気でしょ!
 大体、その条件だとどっちにしろ私の負けじゃない!」


「チッ、命令を読み違えるほどお間抜けさんなのに、どうしてこういう時だけ…」


「自分のオンナとしての尊厳とかが賭かってれば、そりゃ敏感にもなるでしょ!」


 ご尤も。
 未亜も本気ではなかったのか(OKしたら冗談抜きで本気になったが)、目を休ませてからまた入り口を探し始めた。


 10分経過。


「あったわよー!」


「リリィさん?
 どこですか?」


「こっちよこっち…」


 リリィの声が上がる。
 未亜もダリアもリコも調査を中断して、リリィの声が聞こえてきた辺りに急ぐ。

 リリィは特筆すべき事もない岩の前でしゃがみこみ、地面を調べている。
 どうやら幻術結界が張ってあるらしい。
 岩の中の魔力の流れがおかしいというのは、この結界を張るための仕掛けが働いているからなのだろう。


「ここの辺りに結界の仕掛けがあるんだけど…未亜、解る?」


 リリィに一点を指差され、未亜は目を細めて岩を睨みつける。
 ウロウロとうろつきまわって位置を変え、様々な角度と距離から魔力の流れを見極めようとする。


「…ん〜、やっぱり解らないよ…。
 ここに結界の根元がある……!?」


 何気なく岩に触れる未亜。
 次の瞬間、未亜は熱した鉄に触れた時のように慌てて手を離して飛びのいた。
 丁度真後ろに居たリコに激突し、リコが尻餅をつく。


「いたた…マスター、どうかされましたか?」


「あ、リコちゃんゴメン…。
 その、あのね、今何か岩の中で動いたような…」


「…モンスターじゃないわよ?」


 ダリアは岩に触れてみたが、特に異常は感じられない。
 勿論岩の中にでっかいミミズが居るとかいうオチでもない。
 ついでに言うと、中で動作している機械の振動が伝わったのでもない。
 そもそも機械は使ってない。


「…?
 ひょっとして…未亜、もう一度触ってみてくれない」


「うん…」


 未亜は恐る恐る、先ほど触れたのと同じ場所に手を伸ばした。
 触れる直前で少し手が彷徨ったが、意を決して掌を岩に押し付けた。


「…どう?」


「………岩の中で、何かが流れてるみたいな感触がするよ。
 まるで血管みたい…。
 ええと、こっち向き…かな?
 それで、ここら辺でこうなって…」


 未亜は今度は両手をつけて、岩の中を流れる何かの道筋を辿っていく。
 ダリアはそれを見て、未亜が何を感じているのかピンと閃いた。
 リリィとリコも理解したろう。


「未亜ちゃん、それが魔力の流れよ!」


「え、これが?」


「そうよ。
 なんでかは解らないけど、未亜ちゃんは魔力の流れを『視る』事は出来なくても『感じる』事が出来るのね。
 勿論視た方が効率はいいんだけど、これはこれでレアな能力よ〜?
 リリィちゃんにだってできないんだから」


「そうなの?」


「…体質的にね。
 そういうのって、先天的に力の流れに敏感な性質か、さもなくば自分の内側にある種の力を持ってないと出来ないのよ。
 魔力とは違う、別の力を。
 未亜は…どっちかしらね?」


 恐らく後者だ。
 リコと契約した事によって宿った赤の力だろう。


「でも、視えた方がいいんですよね?」


「出来るに越した事はないけどー、こっちにも利点はあるのよ〜。
 視覚に頼ってちゃ簡単に騙されちゃうけど、感触で理解するのは、慣れればフェイントとかを一切無効化できるの。
 聴頸って知ってるかしら?」


 中国拳法の技術である。
 相手の体に触れ、その部分から相手の体の動きを読み取る事により、フェイントのみならず攻撃の動作を見切る。
 達人の域に達すると、空気の揺れや割れる音で察知できるという。

 それと同じで、体に触れた一部分の魔力から全体の魔力の流れを予測し、その動きを感じ取る。
 これで攻撃のタイミングをバッチリ感知できるのだ。
 まぁ、そこまで行くのには気が遠くなるほどの訓練と実践を積まねばならないが。


「意外な所でパワーアップですね、マスター」


「ふぅん…これがそうなんだ…」


 未亜は岩をぺたぺた触って、魔力を感じ取っている。

 リリィは未亜を岩から引き剥がした。


「はいはい、それじゃそろそろ中に入るわよ。
 ダリア先生、この幻術は解いちゃっていいのかしら?」


「いいわよ〜。
 でも中に入ったら、また結界を起動させなきゃいけないからよろしくね?」


「はいはい」


 リリィは呪文を唱え、魔力を練り上げた。
 口の中でモゴモゴと呟くと、それに呼応したかのように一瞬周囲の景色が歪む。


「あ、岩の中の感触が消えた…」


 また岩に触っていた未亜が、驚いたように呟く。
 ちょっと残念そうに岩から離れ、リリィの側に立つ。


「…よし、解除完了」


「…扉、ですね」


「実も蓋もないほどにねぇ〜」


 未亜が触っていたのよりも少し離れた所に、扉があった。
 岩にデン、と『何か文句でもありますかコノヤロウ』とでも言わんばかりに、ドでかい扉が鎮座している。
 しかも何を考えているのか、『この扉を潜る者、一切の物欲を捨てよ。っつーか何か差し入れ持って来い』などと書かれていたり。


「…まだお菓子残ってますよね」


「殆どリコちゃんが食べちゃったけどね」


「ご馳走様でした」


「……とにかく行くわよ」


 何となく脱力しながら、リリィは扉を開いて入って行った。
 扉の中は意外に明るい。
 中で灯が灯されているようだ。


「この先に行けばいいのね?」


「その筈よ〜。
 それじゃ、私が一番先に行くから」


 教師として、万が一の際は危険の矢面に立つべきだと考えているのか、それとも単に一番乗りになりたいかけか。
 ダリアの場合は、実に微妙である。
 まぁ、特に反対する理由もないので、未亜達はダリアの後をついていく。
 勿論幻術を再起動させ、扉を隠してからだ。


「…でも、この先で何をすればいいんでしょうね?」


「さぁ…極秘って事しか教えられてないからね…。
 でも、ダリア先生が言ってたように資材を運び込んでいたのだとしたら…何かを造ってるって事になるわね。
 単純に考えれば、その護衛…かしら?」


「恐らく。
 …しかし、そうなると外に出られない日が続きそうですね…」


 暫く引きこもり生活か、と未亜は肩を落した。
 最悪、太陽の光には暫く触れられないと思った方がいいだろう。

 そこにダリアが慰めるように口を挟んだ。


「大丈夫よ〜、そんなに長い時間じゃない筈だから」


「何でですか?」


「だって、もう殆ど完成してるはずだもの。
 チーム編成を見ると、全員遠距離攻撃が専門じゃない?
 造ってる間も護衛をしなくちゃいけないなら、前衛のメンバーも混ぜるはずよ。
 文字通り山の中で作ってるんだから、あんまり派手な攻撃は出来ないしね…落盤しちゃうし。
 それが無いって事は、きっとリリィちゃん達の出番は護衛対象が完成して、移動する時になるわね。
 遠距離攻撃で、護衛対象に近付かせずに敵をやっつけるのか、さもなくば…護衛対象の特性として、近接攻撃が出来ない物を造っているか…よ」


「…なるほど。
 考えてみれば、完成が遠いのに私達が派遣されるというのは考えにくいです。
 救世主クラスは人数こそ少ないですが、強力な戦力だという事は変わりありません。
 有効に活用するなら、極力長い間前線で戦わせたいというのが本音でしょう。
 しかし、私達は直接この秘密工場に派遣された。
 とりもなおさず、完成まであと少し、という事です」


 加えれば、救世主クラスという重要なコマをこちらに回すという事は、『ここに何かあります』と宣伝しているようなモノである。
 一応隠密行動はしているが、何せ彼女達は目立つ。
 “破滅”の側にいる人間に情報が渡る可能性は否定できない。

 おおー、とリコに感心の目が向けられる。
 そしてダリアにはヘンな物を見る目が向けられる。


「…リコちゃんには素直に感心するのに、どうして私にはそんな目が〜!?」


「いや、だって…ねぇ?」


「普段が普段だものね…」


「今日だって迎えの人の事を見落としていたし…」


「ひど〜!」


 ダリアは涙を流しながら、1人だけ先に突っ走って行ってしまった。
 その後姿を見て、未亜達は仕方ないなぁ、とボヤきながら小走りで追う。


「ねぇ、今のウソ泣きだと思う?」


「ダリア先生だしねぇ…。
 目薬くらい常備しててもおかしくないよね。
 でも、結構真に迫ってたような…」


「……恐らくマジ泣きです」


「え、なんで?」


 リコは黙って何かを差し出した。
 小さなケースが掌の上に乗っている。
 ダリアが落して行ったらしい。
 目薬だろうか?


「この目薬が何?」


 リコは無言で未亜にケースを渡した。
 そのケースを見て、未亜は思わず目を半眼にする。


「……レモン汁…」


 どうやら泣き真似に使う目薬と間違えて、レモン汁を目に垂らしてしまったらしい。
 これは効く。
 ダリアと言えど、そりゃマジ泣きもするだろう。


「「「……南無ー」」」


 とりあえず手を合わせて冥福を祈る3人だった。


「いったぁ〜〜〜〜いのぉ〜!」


 大河・セルチーム 2日目・昼


「さて…とりあえずユカ・タケウチを探さないとな…」


「……眠い」


 目的の街に到着し、周囲を見回す大河。
 ピンピンしている大河とは対照的に、セルはやけに眠そうだ。


「…普通に馬で来ても2時間程度あれば充分なのに…。
 大河、お前自分で走った方が速かったんじゃないのか?」


「うぅ、反論出来ん…。
 何であんなに嫌われてんのかなぁ、俺…」


 アレが馬並みだからか?
 馬の方からライバル心を抱いて、乗られるのを良しとしなかったとか。
 とにかく、大河は何だか馬から嫌われていたのだった。
 大河の指示した通りに走ろうとせず、あっちへこっちへ迷走しまくる。
 セルはそれを連れ戻しに行き、馬を宥めて何とか予定のルートへ戻る。
 これを繰り返した結果、到着は正午前になってしまったのである。


「しかも、途中でなんか神殿を発見するし…」


「神殿って…大河が妙に興味を示してたあの建物か?
 アレって神殿なのかよ?」


「多分な。
 俺もちょっと聞いた事があるだけで確信は無いけど…」


 大河の乗った馬が何度目か暴走して森に入って行った際、そこで半ば土に埋もれた遺跡を発見したのである。
 好奇心が疼いたが、2人には任務がある。
 やけにその遺跡を気にかける大河を引き摺って、セルはこの街まで進んできた。


「ひょっとして、あの野郎が馬に何かしてたのか?
 そうだとすれば、馬が妙に落ち着かなかったのも解るし…」


「あ?」


「いや、何でもない。
 それよりセル、早い所行こうぜ。
 あんまり遅いとドム将軍にどやされる」


「おおっと、ソイツは勘弁!」


 馬を引いて二人は街の中心に向かう。
 そこにユカ・タケウチの屋敷があり、そこで2人を待っている筈だ。
 …ただ、ドムが『バイトがなければの話だが』と付け加えていたが…2人にはその意味が解らなかった。

 セルは周囲をキョロキョロ見回し、美人の女の子が居ないかチェックしている。
 アルディアという本命ができ、あまつさえロリに関して開き直ってしまっても、この辺は身に染み付いた習慣である。
 大河も同じように、視線だけで周囲をチェックしている。


「可愛い娘は多いけど…やっぱりナンパしようって気にはならないなぁ…。
 やっぱり俺って…」


「ま、そう落ち込むな…俺も道連れみたいなもんだから…。
 …俺がナンパしないのは、やっぱり目が肥えてるからかな…」


「だろうなぁ…全員揃って可愛い娘ばっかりなんだからなぁ…。
 ……前ほどじゃないが、やっぱ羨ましいぞテメェ」


 やや白い目で大河を睨みつけるセル。
 しかし以前に比べて迫力半減である。
 人は愛する人が出来た時には強くも弱くもなるというが、これもその一例だろうか。

 2人は結構人目を引いている。
 ここはあまり大きな街ではないし、人の出入りもそれ程多くない。
 名前を顔が一致する事はなくても、大体の顔ぶれは覚えているのだろう。
 その中に唐突に紛れ込んできた異物…しかも馬を引いた…に、興味と警戒心を発揮させているらしい。


「おっ、いい匂い…そこのレストランからか?」


「ああ、肉が焼ける香ばしいニオイが…。
 いかん、腹減ってきた。
 印を貰ったら、戻る前にちょっと食っていこうぜ」


「いいねぇ」


 見かけたレストランやデートに使えそうな施設にチェックを入れながら、2人はユカ・タケウチの屋敷に向かって進む。
 程なくして到着した二人は、馬をその辺に繋いで門番に取次ぎを頼む。
 胡散臭いと言わんばかりの目で見られたが、無理もない。
 慌てず怒らず落ち着いて、ドムから貰った書類を見せる。


「…確認しました。
 アポも取ってありますね。
 失礼しました、どうぞお入りください」


「どうも」


「ご苦労様です」


 門番に一礼して、2人は屋敷の中に入る。
 屋敷と言っても、アルディアの家よりも少し小さい程度だ。
 ユカ・タケウチの家柄は、家の外見なんぞに拘るタチではないらしい。
 そんな事に使う金があったら福利施設の一つでも作れ、という事らしい。

 応接間に通された二人は、ユカ・タケウチから全権を委任されているらしき代理人に面会した。


「……確かに、盟約通りの書類です。
 不備も不審な点もございません。
 いいでしょう、アザリン様に全権を一時的に預けます」


「お話がスムーズに進んで幸いです…。
 では、印を?」


「はい…と言いたい所なのですが、一つ問題があるのです」


 そら来た、と大河は思った。
 何だかんだと言っても、こんな大事がそう簡単に進むはずが無い。
 権力的には何も持っていない使者…しかも大河達は正式な軍人ですらない…を相手にゴネて、何らかの条件を押し付け、今後の突破口にするつもりだろう。
 が、大河とて幾多の交渉や腹の探りあいを経験している。
 来るなら来やがれ、と気を引き締めた。

 が。


「実を申しますと…調印に使う判子は、タケウチ様がお持ちになっているのですが…。
 タケウチ様はいらっしゃらないのです」


「居ない?
 というと…どこかへ出張しているんですか?」


「いえ、違います。
 …まぁ、単刀直入に言いまして…城下で仕事をしておられるのです」


 大河とセルは顔を見合わせた。
 何が不都合だというのか?


「仕事というと、やはり領主としての…」


「いえ、違います。
 ……ウェイトレスのバイトです」


「「ウェイトレス!!」」

ギュピーン!


 2人の目の色が変った…効果音付で。
 そう、ユカ・タケウチと言えば圧倒的な武力とコスチューム…ウェイトレス!
 その姿で戦う彼女に、一体どれ程の漢が幻惑され萌え転げたことか。

 代理人はそういうリアクションに馴れているのか達観しているのか、それとも追及すると話が拗れると確信しているのか、構わずに話を進める。


「タケウチ様は、お父上…前領主がお亡くなりになられるまで、一般市民とのコミュニケーションを学ぶという名目で、城下でアルバイトに精を出しておられました。
 それはまぁ良いのですが、何分仕事熱心が過ぎる節がありまして…。
 それにウェイトレスの仕事が余程性に合っているらしく、お父上の跡を継いでも時々抜け出されてはアルバイトをしておられるのです」


「お忍びでですか?」


「いえ、領民の皆様も生暖かい目で見守っておられます。
 お蔭でタケウチ様は領民に溶け込み、信頼されているので結構な事なのですが…。
 その分我々に仕事が回ってきますし…それはまぁ、タケウチ様の政治能力を考えると願ったり適ったりでもあります。
 問題は、仕事熱心が過ぎるという一点に尽きるのです」


 代理人は身を乗り出し、声のトーンを少し落した。
 大河とセルも、思わず話しに引き込まれる。


「先ほども申しましたように、タケウチ様はウェイトレスが天職かと思われる程に性に合っておられます。
 そのせいか、お仕事中は完全に1人のウェイトレスになりきってしまうのです」


「…それは、ひょっとして…」


「はい。
 その間はご自分が領主であるという事も、ヘタをすると“破滅”が迫ってきているという事すらも忘却している可能性が…。
 勿論、お持ちになっている筈の印も、給料とかを受け取るのに必要な判子程度の物だとしか認識されていないでしょう。
 判子には違いありませんが、ただのウェイトレスであるタケウチ様に『約束通りにここに印を押してくれ』などと言った所で、単なる詐欺師だと思われかねません。
 ……平和だった仕事場…レストランに、唐突に現れた詐欺師…。
 最悪の場合は、タケウチ様の拳が牙を剥く事に…」


 代理人の顔が青い。
 どうやら似たような事が何度かあったらしい。

 大河とセルの顔も青い。
 セルとしては、はっきり言ってユカ・タケウチの猛攻を凌ぐ自信なぞ無いし、大河としてもかなりキツイ。
 周囲を省みずに戦闘・殲滅するならまだしも、街中で召喚器を振り回す訳にも行かない。


「そんな訳で、まずはタケウチ様をウェイトレスから領主に戻すのが先決だと思われます…」


「…な、何かコツとかないのでしょうか…」


「こちらが聞きとうございます……」


「…頭イテー」


 ドムが夜中に出発させた理由がよく解った。
 ユカ・タケウチがバイトに入る前に印を取り、そのまま帰還させるつもりだったのだろう。
 大河と馬のお蔭で、とんだ番狂わせである。


「とにかく会ってみない事には…。
 一体どこで?」


 代理人が口にしたのは、大河達が途中でチェックを入れていたレストランだった。


「ま、腹も丁度減ってたし…」


「とにかく食ってみますか」


 胃薬なぞ飲んでいる代理人に見送られ、大河達はレストランに向かった。
 結構な繁盛を見せており、注文した料理が持ってこられるのには少々時間がかかりそうだ。
 その間、大河とセルはユカ・タケウチを観察する事にした。

 とにもかくにも、レストランに到着。
 中に入る。


「いらっしゃいませ!
 お2人様ですか?」


「はい」


「こちらの席へどうぞ」


 この辺のやり取りは、どこに行っても大して変わりない。
 目はユカ・タケウチを探しつつ、大河とセルは窓際の席に座った。

 周囲を見回し、セルは溜息をついた。


「……ふぅ、助かったぜ」


「何がだ?」


「ここの客を見てみろよ。
 大体が親子連れとかだろ。
 恋人同士で埋まってるレストランに野郎2人で来てみろ、どうなるか予想がつくだろ」


「…うぇ」


 想像したのか、露骨にイヤな顔をする。
 考えすぎだと言い切れないのがまたイヤだ。
 アレな関係に見られなくても、その虚しさは…。


「と、とにかくだ…ユカ・タケウチを見つけない事には始まらないな…」


「注文を取りに来てくれると嬉しかったんだが…」


 生憎と名前も知らない女の子だった。
 別に可愛くないという訳でもなかったが、大筋には大して関係ない。


「しっかし、領主の娘ともあろう人が、何だってウェイトレスなんぞやってんだろうな…?
 金に不自由してるとも思えないが…」


「さぁ…やっぱり庶民の生活を知るためじゃないのか?
 あ、でもそならメイド…もといハウスキーパーの方が適任か」


「でもああいうのって結構難しいらしいぞ?
 特に高齢者が居る家は。
 力加減に関しては…まぁ、格闘やってるんならそこそこ身に付いてるとは思うけど」


「むしろ力が強すぎる可能性も高いな。
 なにせ“武神”だもんなぁ…。
 体だってメチャクチャ鍛えこんでるに決まってる。
 …それでも筋肉が付きすぎずに、あんなにスレンダーなんだから…。
 アレだな、本当の達人は無駄な筋肉を一切付けないってのと同じだろうな」


「ん〜、それもあるけど、ボクだって女の子なんだし。
 可愛いとか美人とか言われたいよ」


「そりゃそーだ。
 俺も筋肉ムキムキなのにはちょっと憧れるが、やっぱ見ていて暑苦しいのは拭えないからな」


「傭兵科なんてソッチ系の連中がウヨウヨしてんぞ。
 だから不快指数上昇の原因なんて言われるんだろうな」


「でも、純粋に強くなって生き残るための筋肉ならボクは平気かな。
 なんて言うか、機能美?
 そんなのが感じられるし」


「いやいや、そんなの実物を見た事が無いヤツだから言えるんだって。
 狭っ苦しいタコ部屋に、マッチョが3人も4人も詰め込まれて見ろよ。
 幼児を入れたらトラウマになるぜ」


「幼児を入れるなって…アルディアちゃんとか入れたら泣くぞ」


「いや、アルディアさんはソッチ系にはあんまり抵抗が無いみたいでな。
 ソッチ系に限らず、ビジュアルには一切頓着しないタチなんだよ。
 何せ精神構造が無闇に幼いからな。
 『フンッ!』とか『ハァッ』とか『俺を…見てくれ〜!』とか、そういうノリにも拒否感が無いらしい」


「…すっごくいい娘なんだとは思うけど…それってスレスレだね…」


「ああ、スレスレだ…………あん?」


 セルと大河は会話を止めて、ぐるりと首を回す。
 何時の間にか、大河の隣に少女が座っている。

 ポニーテールで、結構巨乳。
 目はお人好しな性格が滲み出ていて、どことなく押しに弱そうな雰囲気である。
 そしてそのウェイトレス姿。


「……ユカ…タケウチ?」


「ユカでいいよ」


「ほ、ホンモノだぁ!?」


 思わず大声を出して、セルは立ち上がろうとする。
 が、次の瞬間には喉元に軽い衝撃…と言っても触れられた程度だが…が走り、大きな声を出したかと思ったのに出たのは普通の音量の声だった。
 立ち上がりそうだった足も、テーブルの下で足払いを受けたらしく、ストンと椅子に尻を落す。
 これだけでも、彼女の力量がよく解る。

 ユカはニッコリ笑った。


「ゴメンね、盗み聞きしたみたいで…」


「い、いえ!
 噂に名高いユカ・タケウチさんに出会えて光栄であります!
 あ、ワタクシ、セルビウム・ボルトといいます!
 セルとお呼びください!」


「だから、大きな声を出しちゃ他のお客さんに迷惑だってば。
 セル君…ね。
 そ、それで……キミは…?」


 どことなく聞き辛そうに、ユカは大河に目を向けた。
 問われた大河も驚きから立ち直り、体をずらしてユカに正面から向き合う。


「世にも名高い、アヴァター初の男性救世主候補にして真の救世主に最も近い男・ダンディー当真大河とは俺の事だ。
 大河でいいぜ。
 …ところで、仕事はいいのか?」


「えっ…?
 あ、ああ、いいのいいの。
 元々今日はバイトの日じゃないし、ここに居た方が落ち着くから来てただけだし。
 …仕事してるんだと思われて、注文される事はあったけど」


 じゃあウェイトレスの衣装を脱いだらいいだろうに。
 いくらトレードマークだからと言っても、私服になってはいけない訳ではなかろうに。

 セルもその辺の疑問を抱いたのか、何とか緊張を緩和させてユカに尋ねた。


「そもそも、仕事じゃないならどうしてウェイトレス姿なんです?
 俺も大河もヒジョーに嬉しいですが…。
 それに、聞いた話によるとウェイトレスの仕事をしてると没頭して他の事を忘れてしまうと…。

 っつーか大河、お前のドコがダンディーなんだ?
 救世主に近いっつーのは、まぁいいが」


 ダンディーどころかトラブルメーカーだろう。
 真の救世主に最も近い、というのはある意味では外れていないが。

 ユカはキョトンとした顔をする。


「…これ、私服だよ?」


「…どっからどう見ても、このレストランの制服だぞ」


「ううん、これって特注品なんだ。
 具体的に言うと、戦闘用なんだよ」


「「戦闘用!?」」


 全く同じにしか見えないが、なにやら拘りがありそうだ。
 そもそもなんでそんなの着てるんだ。


「うん。
 この後、ちょっとホワイトカーパスまで行かなきゃいけないんだ。
 仕事用の服じゃないから、ウェイトレスのお仕事をしてても我を忘れずに……。
 って、違うんだよ!
 別に仕事に熱中すると、領主の仕事も忘れちゃう低容量頭なんて言われてないんだよ!?
 いやホントに!
 今までお客さんの注文も一度も間違えた事ないしさ!」


「その基準もどうかと思うが…。
 あ、あー…とにかく、話を変えるぞ。

 ユカ・タケウチ殿、アザリン様からのお話は通っていますか?」


 何だか妙にアタフタと慌てているユカを落ち着かせ、大河は話を変える。
 言われたユカはまたキョトンとした。


「確かに通ってるけど…キミ達は…?」


「言ったでしょう、救世主候補生だって。
 それともこっちは話が通ってませんでしたか?
 領主としての全権を預ける証印を貰いに来た使者です。
 …そして、今後チームを組む事になります」


「…………え?
 え、えええええええええぇぇぇぇぇぇ!?
 き、キミ達が!?」


「……何か不都合が?」


「な、ない!
 ないよ、そんなのドコにも無い!」


 お客さんの迷惑も考えず、絶叫するユカ。
 これまたやっぱり慌てて首を振る彼女に、店中の視線は釘付けだ。
 元が有名人だから、何事かと視線が張り付いて離れない。


「ちょ、ちょっと待って!
 それじゃあこれから…」


「印を押してもらったら、最前線…ドム将軍の居られる駐留地に向かう予定です」


「「「「「「「「「
   何いいいいいいぃぃぃぃぃ!?
                」」」」」」」」」」


「うおぅ!?」


 聞き耳を立てていた客達が、立ち上がって大河達を睨みつけている。
 あ、この展開は何度か身に覚えがあるなー、と大河とセルは遠い目をする。
 話がややこしくなりそうだ。

 代表らしき1人の男が大河とセルの前に突っ走ってくる。


「き、貴様ら!
 我らのアイドル、タケウチ様を最前線に連れて行くというのか!?」


「ま、まぁそれが命令ですし、今こうしている間にも“破滅”が…」


「そんな事はどうでもいい!
 いや、貴様らの言う事も解る。
 何だかんだ言った所で、ホワイトカーパスの暁にしてタケウチ様のご友人、アザリン様の危機だ。
 タケウチ様とて黙っている事もできまい。
 タケウチ様が戦いに赴かれる事は、我ら領民一同、涙を飲んで見送らねばならぬ。
 ぐううぅぅぅ、戦う力のないこの身が恨めしい…!」


 漢泣きに泣いている男達を見て、セルは戸惑った表情でユカを見る。
 ユカ本人もやっぱり戸惑っていた。
 領民に好かれている方だという自覚はあっても、こういう好かれ方だとは思ってもみなかったらしい。


「そ、それでは…何が問題で?」


「決まっているだろう!
 タケウチ様が戦うお姿を、この目で! この幻影石で! この心で!
 激写できない事だあああぁぁぁぁぁぁ!」


「…マジ泣きだよ、この人…」


 呆然として呟くユカだが、その隣で何故かセルが一筋の涙を流しつつ腕を組んで頷いている。
 …彼の場合は、激写どころか肩を並べて戦う事になるのだが。


「戦場に駆けつけてでもそのお姿をこの目に刻み込みたいのは山々だが、足手纏いになる事は明白…。
 気にせず戦ってくれと申し上げても、そのお優しい性格故に我々を捨て置く事など出来ぬでしょう。
 止める事も、お供する事もできぬこの弱さが弱さがッ!
 せめて…せめてご無事でぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

「頑張ってきてくれ!」
「どうか、どうかご無事で!」
「人類の底力、見せ付けてやってください!」
「毎日鶴を折って、無事を祈っています!」
「ユカおねーちゃん、どっか行くのー?」
「タマオはこっちで抑えておくよー」
「あああぁぁ、センパイー、私も連れて行ってー!」
「やめなさい! 足手纏いにしかなれない事くらい解るでしょうが!」


「う、うん…ありがとう…。
 が、頑張ってくるよ!
 だから…だから皆も、無事でいてね!」

「「「「「「「
  ウオオオオオオォォォォォォ!!!!!
                」」」」」」


 涙でレストランの床が8割くらい濡れる程に涙を流しまくる男達。
 男達のみならず、その場に居合わせた客達からもユカに声援が飛ぶ。
 彼女の人望の厚さを感じさせる一幕だった。

 大河とセルはこっそり席を立ち、ユカに合図して先にレストランを出た。
 勿論代金はユカの分まで払っている。
 この辺は男の甲斐性というか、盛り上がりに水を差さないためである。


「うーむ…予想はしてたが、ここまで領民に好かれているとはなぁ…」


「方向は違うけど、アザリン様にも匹敵しそうな勢いの人望だったな…」


 こっちにはハァハァする人種が多く混じっていそうだが。
 2人はユカの屋敷に向かう。
 とにもかくにも、印を貰って馬を連れてこなければならない。


「はぁ…また馬に乗るのか…」


「あれだけ訓練された馬なんだから、暴走する筈が無いんだけどなぁ…。
 お前の乗馬が下手とかいう以前に、近付いただけで落ち着き無くしてたし」


「…まぁ、アイツ一応ヘビだったみたいだしな。
 本人も馬刺しが好物だって言ってたし」


「ん? なんか言ったか?」


「いや、何でもない。
 …いざとなったら…ユカに乗せてもらうしかないかなぁ…」


「羨ましいが…それはそれで男の沽券に関わる気がするな」


 白馬の王女様?
 しかも剣じゃなくて拳で戦う…。
 馬上でも拳ってリーチが足りるかな?
 氣弾ばかり使っていたら、あっという間にバテると思うのだが。


「ちょっと、待ってよ〜!」


「ん? あれ、もう感動の旅立ちは終わり?」


「全く…本当に先に行っちゃうなんて…」


「いや、放っておくと何時までも終わりそうになかったし…」


 ユカが追いついてきた。
 息一つ切らしていない辺りは、流石といった所だろうか。


「とにかく…印だね?
 はい、コレだよ。
 とにかく押しちゃうから、書を出して」


「こんな屋外でやらんでも…。
 まぁいいか。
 ほい」


「帯…もとい判子をギュッとね…。
 あちゃ、ちょっと失敗しちゃった…。
 まぁいいか」


 結構アバウトだ。
 印は貰ったが、どっちにしろユカは屋敷に戻らなければならない。
 出発するのにも、色々と準備が必要だろう。


「ねぇ、2人とも、私とスリーマンセルを組むって事だけど…。
 戦いにどれくらい自信ががあるの?」


「俺は…単なる傭兵ですから、個人戦闘じゃ2人には勝てませんね。
 代わりに体の頑丈さに自信がありますが。
 役割としては、2人のフォローと、引き際の見極めッスかね」


「これでも救世主クラスでは戦闘力はトップだったんでな。
 大抵の魔物にゃ負けはしないぜ」


「ふぅん、そっか……。
 ところで……戦う女の子って、どう思う?」


「どう…って?」


 唐突な質問に、彼女の意図が読めない。
 ユカはどこか慌てた口調で付け加えた。


「ほら、野蛮とは言わないまでも、お転婆だとか…。
 女の子だったらおしとやかに、とかそういう事を言われて育ったんじゃない?
 お父様も似たような事を言ってた時期があったから、男の人ってそういう考えなのかなー、と思って…」


 セルと大河は顔を見合わせる。
 この状況で悪いコメントを出せるような性格ではない。
 まぁ、2人とも戦う女の子は…。


「「むしろ萌えますな」」


「萌え…?
 えーと、結構好き…って事なのかな?」


「「断じて結構どころぢゃない!!」」


「うひゃっ!?」


 躍動する肉体。
 大きければ揺れる胸。
 スカートならば見えそうで見えない秘境。
 チラリとシャツから覗くオヘソ。
 うっすらと汗が滲む首筋。
 そして一点の油断もなく敵を睨みつける、その表情!
 戦いの最中に破られた服、そして柔肌を隠して恥じらいつつもなお戦わんとするその心!

 多少マニアックな点があるが、2人とも戦う女の子は大好きである。
 戦う事によって傷つくのはいただけないが、女性が戦う事事態には嫌悪感は抱かない。


「よ、よく解らないけど、そっか、好きなのか……うん」


 ユカ、2人には見えない角度でガッツポーズ。
 …何故彼女がそんな事をしているのか、もうとっくにお分かりでしょうが、ノーコメントを頂きたい。
 アッサリ言われてしまうとラブコメも萌えも出来なくなりそうなので…。


「よぉ〜っし!
 カッコいいところ見せるぞー!」


 ファイトォ!と気合を入れて、ユカは二人に先んじて駆け出した。


 その30分後。


「…ホントだ…。
 大河君が近寄っただけで、馬が落ち着きをなくしてる…」


「だろ?
 馬に嫌われる顔してんのかな…」


「どっちかというと、これは猛獣に狙われたような落ち着きの無さだぞ…。
 大河から獣のニオイでもしてんじゃないのか?」


 すっかり準備を整え、ホワイトカーパスに戻る事にした大河達。
 しかし歩いていくには少々時間がかかりすぎる。
 ならば馬で行くしかないのだが、ドムに指定されたルートは馬車が通れる道ではない。
 が、大河は何故か馬に嫌われている。
 とてもではないが、馬による移動は出来そうにない。
 また暴走されて、突っ込んで行った先が魔物の大群なんて事になったら目も当てられない。


「しっかし、どうしたモンかな。
 今までにも何頭か平気な馬は居たんだが…肝が据わってる馬って居ない?」


「この領地には居ないよ…。
 王宮の御者が飼ってる、『光速へ迫る3頭』なら平気かもしれないけど…」


 …大河達が初の遠征時に乗った、あの馬車の3頭である。
 そりゃあんな猛スピードで走り続けるのだから、イヤでも肝が据わるというモノだろう。


「あ、そうだ!
 確かアザリンの所に、何代か前の領主が貰い受けた馬の子孫が居たはずだよ。
 その子ならひょっとして…」


「馬の子孫…ですか?」


「うん。
 何でも、何処かの貴族だか王族だかが代々受け継いできた馬の血筋で、なんだかとっても賢くて強くて…とにかく規格外の馬なんだって。
 だけど誰にも懐かなくて、乗り手が居ないんだって…。
 アザリンも乗せてもらえないって言ってたし…あれ?
 乗るに乗れない、だったかな?
 …でも、差し当たってここには居ないし…」


 大河は後でドムに聞いてみようと思った。
 何だかよく解らないが、馬に乗れる可能性があるならやってみるべきである。


「で、とにかくどうします?
 ランニング…させますか?」


「いくら召喚器があるからってそりゃねーよ…」


 半分マジなセルを牽制する大河。
 その隣で、ユカは何やら物凄く真剣な顔をして考え込んでいた。
 気のせいか、ちょっと顔が赤い。

 暫くすると、意を決したのか顔を上げた。


「あ、あの…大河君…」


「へ?」


「あ、あのさ…時間もない事だし…。
 乗せて…あげようか?
 二人乗りくらいなら、何とかこの子も走れるし…」


「…え、で、でもそれって」


「い、いいから!
 とにかく早く行こう!」


 ユカは大河を急かして、街の門で待っているように告げた。
 そのまま屋敷から物凄い勢いで放り出す。

 放り出された大河は、一体何がどーなってんだと思いつつも指示に従った。


 暫く待っていると、大河とセルが乗ってきた馬をそれぞれ引き連れて、ユカとセルがやって来た。


「待たせたな、大河」


「あんまり待ってないけどな…。
 で、ユカ、どうやって2人乗りするんだ?」


「そ、それは…」


 顔を赤くするユカ。
 セルはさっさと馬の背に乗っている。
 これ以上遅れて、ドムの不興を買うのは勘弁、という事なのだろう。

 ユカは黙って馬に乗り、その体を前にずらす。
 相変わらずウェイトレス姿なので、フトモモとか下着とかが見えそうで見えないギリギリの位置である。
 それを我慢して、ユカは俯いて言った。


「う、後ろに乗って…。
 その、結構飛ばすと思うから、危ないでしょ?
 だからその、後ろから、ギュっと…」


 抱きしめて。
 大河としてもユカのような可愛い女の子とスキンシップが取れるなら願ったり適ったりだが、本当に大丈夫だろうか?
 何だか知らないが、ユカは物凄く平常心を失っている。


(もしや俺に気が…!?
 いやいや、しかし初対面を果たしてからまだ1時間程度しか経ってないぞ。
 いくらなんでも、それは自意識過剰だろ)


 まぁ、確かにそうである。
 彼女は異性との接触に馴れてないだけだ、未亜達のように遊び半分でセクハラ紛いの事をしちゃダメだ、とブツブツ繰り返して勝手に動きそうになる体を抑える。
 流石に馬で走っている最中に胸を揉んで、挙句馬上から叩き落されたらエライ事になる。
 ヨコッチ並みの不死身さを誇る大河でも、痛いものは痛い。

 それに彼女に悪印象を与えるのは、出来る限り避けたい。
 これからチームを組んで戦うのだ。
 偽りの仮面を付けて好印象を与えても真のチームワークは出来ないだろうが、初っ端から悪印象を与えるのとは話が別である。
 最初の印象が悪ければ、仲良くしよう、呼吸を合わせようという気にすらなれないかもしれない。


「そ、それじゃあちょっと失礼して…」


「う、うん…」


 大河の接近に落ち着かない馬も、ユカが手綱を取っている為か暴走する様子は無い。
 ユカの後ろに上がって、彼女の脇から両手を回し、腹の前で組む。


「そんな風にしてちゃ、かえって危ないよ…。
 その、もっと、ぎゅっと…」


「お、おう…」


 ユカの要望通り、ギュッと抱きしめる。
 ビクン、とユカの体が跳ねたが、大河は敢えて無視した。

 大河の鼻先が、ユカの首筋に当たっている。
 鼻息がうなじにかかり、ヘンな気分になりそうなユカは、とにかく早く走ってこの感覚を振るい落とそうと決めた。


「それじゃ、セル君!
 そろそろ行くよ!」


「へーい…。
 うう、砂糖を吐きすぎて血糖値が…。
 と、とにかく先導しまーす」


 吐いた砂糖で高さ30センチくらいの山を作っていたセルは、ユカの声に正気に戻って馬を走らせる。
 一拍遅れて、ユカと大河が続いた。


 そのまま走る事30分ほど。
 幸いにして、ユカが手綱を取る馬が暴走する事は無かった。
 平常心を失っていても、そのくらいの芸当はできるらしい。

 セルが馬のスピードを落した。
 それに呼応して、ユカもスピードを落す。
 …平常心平常心平常心、となにやらエンドレスで呟いているようだが。


「どうした、セル?」


「いや…そろそろ魔物達の襲撃がある頃のはずだ。
 いや、襲撃じゃなくて警戒網を潜り抜けた魔物が何体か。
 …ユカさん、気配とか感じられませんか?」


「え? あ、ちょっと待って…」


 ユカは深呼吸をして心を落ち着けて、目を閉じる。
 セルと大河は、雰囲気が変った彼女に少し圧倒された。
 これが“武神”の力の一端か。


「……もう少し向こうに、何かが動いてる感じがするよ。
 生き物…じゃない気がする…」


「と言うと…スケルトンとかゴーレムとかか?」


「多分、その辺りだと思う…。
 ……セル君、どうする?」


 ユカは個人戦闘ではそれこそ救世主クラス並みの力を持っているが、集団戦闘のノウハウはサッパリである。
 大河も似たようなものだし、この辺の判断はセルに一任してある。
 結構責任重大である。


「…馬はここに繋いで、奇襲をかけましょう。
 元々危険なルートを通って帰って来い、と言われたのはその経過で互いの力量を確かめるのが目的です。
 それでなくても、この辺に兵士は居ない…。
 放っておくわけにもいきません」


「だな。
 それじゃ、一丁初陣といきますか」


「うんっ!」


 大河とユカは馬から飛び降り、それぞれ武器を取り出した。
 トレイターは剣状態だと光を反射するので、ナックル形態にしてある。
 ユカは懐から取り出したグローブを装着し、ガツンと両の拳を打ち合わせた。
 ちょっと火花が散ったのを、セルが恐ろしげに眺めていた。


「さて…とにかく行ってみるか。
 前衛は俺とユカ、セルは…一応サポートに回ってくれ」


「やれやれ…。
 ま、このメンバーじゃ仕方ないか。
 …しかし…見事に前衛役ばっかりだな」


 確かに。
 接近戦を得意とするメンバーばかりが集まってる。
 はっきり言ってバランスが悪い。


「攻撃一辺倒だね…。
 突破力は強いと思うけど、反面防御がね…」


「いや、そうでもないぞ?
 セルはヒトの限界をブッ千切ってるくらいに頑丈だし、俺も召喚器の恩恵がある。
 多少の怪我はどうって事ないな…。
 問題は…ユカだが」


「心配してくれるの?
 でも大丈夫だよ。
 一応、気功術で治癒は出来るから。
 …自分にしかかけられないけど」


 意外に器用だ。
 と言うか、彼女の技のベースは空手ではなかったか?
 …まぁ、極太レーザーみたいな気功弾を使っている時点でその手の質問は無意味だ。
 スト2の極貧放浪主人公だって、流派は一応空手だし。
 それでも文句を言えば、こう言い返されるだろう。
 『まだまだこの世界…浅いな』と。


「ふん、それなら問答無用で攻撃あるのみ、だな。
 グダグダ考える暇があったら、目の前の敵を片っ端から殴り倒せって事だ」


「解りやすくていいね」


「…撤退のタイミングを一任されている身としては、そういうワケにもいかんのだが…」


 小声で会話しながら、大河達は木々の陰を通って突き進む。
 大河とセルは小さな音を立てているが、ユカの足音は全く無い。
 足音だけでなく、木々を揺らす音さえも。
 メチャクチャな技量である。
 しかもただ進んでいるだけではなくて、ユカは捕捉した気配との距離を常に確かめているのだ。
 どういう修行を繰り返してきたのか、大河は多少興味が沸いた。


「止まって…。
 そろそろ忍び足で行くよ。
 そこの大きな岩の陰から、こっそり覗き見る」


 ユカに指示された通り、大河とセルは岩の陰にひっつく。
 そっと顔を出してみると、そこには大きな岩の塊が居た。
 他にもワラワラと。


「…どうだ?」


「……ゴーレムの上位種らしき、青いゴーレムみたいなのが2体。
 あと魔法使いと獣人がワラワラ。
 …………この気配だと…姿が見えないガーゴイルは居ないな」


 大河もユカほどではないが、気配を探る術は習得している。
 セルもだが、彼の場合は気配を探るというよりも危険を直感的に察知する、と言った方が適切だ。
 発動確立はあまり高くないが…。


「…青いゴーレム…?
 それ、ひょっとして普通のゴーレムとは形が違うんじゃない?」


「ああ、腹の辺りがでっぷりしてて、ゴーレムと違って何処と無く動作が機械っぽいような…」


「あっちゃ……それ、フロストガーディアンだよ…。
 ゴーレムなんかよりもずっと頑丈で、おまけに遠距離攻撃用の大砲みたいな武器を内蔵してるんだって。
 しかもブースターで空を飛ぶ」


「…微妙にロマンを感じるな」


「何で?
 …一体だけなら大丈夫だけど、他に魔物が居るんじゃ厄介だね。
 魔物達の相手をして足止めを喰らった瞬間に、大砲を叩き込まれるってのが一番厄介なパターンなんだ」


 そう言いつつも、ユカの目はそれほど事態を悲観していない。
 このくらいなら、切り抜ける自信があるのだろう。
 そしてそれは大河も同じである。


「となると、選択肢は2つだな。
 1つ目、一瞬も動きを止めずに、ヒット&ウェイを繰り返す。
 2つ目、奇襲をかけてフロストガーディアンとやらをいの一番に撃破する」


「2つ目…と行きたいところだが…。
 2人とも、あのデカブツを一気に吹き飛ばす自信は」


 ユカは無言で右手を突き出し、親指を上に向けた。
 大河は少し考えて、トレイターを纏わせている右手を見た。


「…ああ、多分俺も何とかなる。
 で、セルは他の魔物達の霍乱役、と」


 これも結構キツイ役割である。
 何せ数が違う。


「逃げ回るだけなら何とかなるぜ。
 …それじゃ、一丁仕掛けるか」


「うん。
 大河君、あっちのフロストガーディアンをお願い」


「了解した」


 三人は息を揃え、1、2の、3で一気に飛び出す!
 魔物達に振り向く暇も構える暇も与えず、ユカは一気に標的に接近する。


「行くよっ!
 究極・気吼弾ー!」


 影さえ見せずに接近したユカは、至近距離から凄まじい気弾をフロストガーディアンに叩き込む。
 この技は気の消費量がやたらと大きくて、使ったら一瞬動けなくなるのが欠点だが、その破壊力の大きさは折り紙付だ。
 注ぎこむ気の量が多ければ多いほどに破壊力が増し、また硬直時間も長くなる。
 今回は3割程度の力で放ったので、硬直はそれこそ一瞬で済んだ。

 しかし、その3割の力の直撃を受けたフロストガーディアンの胸部には、ドでかい風穴が開いていた。
 凄まじい威力である。


「トドメっ!
 せえりゃあっ!」


 そのまま飛び上がり、ユカは右足を思いっきり振り回す。
 ガギョッ、という音と共に、フロストガーディアンの首から上がもげて飛んだ。


「次っ、大河君!」


 標的を完全に仕留めたと判断したユカは、同じくフロストガーディアンに向かった大河に加勢しようとする。
 まだ飛び出して3秒も経っていないので、囮役のセルに加勢に行く必要はない。

 大河は流石にユカよりもスピードは落ちるものの、丁度フロストガーディアンをリーチに収めた所だった。


(…さて…実験台になってもらうぜッ!)


 心の中で一言呟いて、大河はトレイターに意識を集中する。
 今までとは違う集中の仕方で、全く違う力を引き出す。
 この使い方は、ホワイトカーパスに来る途中で思いついたものだ。
 ぶっつけ本番なので些か不安だが、上手く行かなかったとしても、この程度の相手ならどうとでも出来る。

 大河はトレイターを剣に変え、両手で握り締めた。


「ゥウオオオオオオォォォォォラアアアァァァァ……!?」


 気合…というか奇声を上げながら、大河は駆け抜けながらトレイターを横薙ぎに振り払う。
 流石にこの一撃で相手を叩き潰せるとは思っておらず、バランスを崩させて一気に仕留める算段だった。
 が、何故かトレイターからは何の手応えも伝わってこない。


(避けられた!?)


 内心で舌打ちしつつ振り返る。
 しかし、そこには自分が思っていたのとは全く違ったオブジェが直立していた。

 フロストガーディアン。
 これが立っているのは、まぁ予想通りだ。
 しかし、かの魔物は何故に片脚しか無いのか?
 何故に半身が消し飛んでいるのか?
 まるで大質量の砲丸にでも直撃されたかのように、その構成部品を粉々に砕かれているのは何故だ?

 大河が唖然としている目の前で、フロストガーディアンがグラリと揺れる。
 力なく、バランスを崩してフロストガーディアンはその体を横たえた。
 地面に倒れたショックで、その体がバラバラに砕け散る。


「ウソ……あんな細い剣の一撃で、フロストガーディアンが消し飛んじゃった…」


 ユカの呆然とした呟きが耳に入る。
 つまり、大河の牽制目的の一撃がフロストガーディアンの体の半分を消し飛ばしたのか。
 その腕に反動すら一切伝える事無く。


(…マジかよ…。
 これ程とは予想してなかったぞ…。
 思いっきり威力を抑えて斬ったのに)


 一瞬棒立ちになるが、次の瞬間には戦闘中だという事を思い出す。
 すぐに周囲の敵を切り払い、セルの元へ急いだ。
 大河が軽く剣を振り回しただけで、魔物達はその体を飛び散らせて霧散する。
 体の構成部品の殆どが消し飛び、残るのは血だけ。
 どこか現実味の無いその光景は、大河本人も脅威に感じるに充分だった。

 ユカもすぐにセルの元に向かう。


「セル君、一気に殲滅するよ!」


「りょ、了解です!
 大河、そっちは任せるぞ!」


「応よ!」


 ユカはセルと合流し、その圧倒的なスピードとパワーで片っ端から魔物を葬っている。
 セルもユカほどではないとは言え、意外と効率よく戦っている…あくまでルーキーにしては、だが。

 大河はというと先ほど書いたように効率云々の問題ではない。
 ただ剣を当てるだけで、その魔物の死が決定する。
 それほどのパワーを振り回しているにも拘らず、疲弊した様子は全く無い。


 程なくして、警戒網を潜り抜けてきた魔物達は全滅した。



どうも、やっとこさV.G.リバースとリバース’をやってみた時守です。
意外と最近のヤツだったんですね?
とは言っても、本編とはかけ離れているようですが…他に入手できそうにないですし。

なお、『ユカのキャラが全く違う!』とのご意見については、一応辻褄あわせ(言い訳)を考えているので。


それと…一部の方々、申し訳ない!
手加減する、誘い受けと言いながら、つい3分前まで未亜のSモードを全開で書いてました!
しかも、多分過去で最大級のヤツを。
酒も入っているせいか、異常に指というか筆が進みます。
トラウマが増える事になりそうですが、よろしければ今後もご愛読いただきたい!


志村ケンのバカ殿様を見て笑っていた時守でした。
それではレス返しです!


1.カミヤ様
手紙の謎が解かってスッキリされたでしょうか?
脳内サプリよりは簡単だったと思いますw

無道の今後は…一応シリアスキャラに戻すつもりです。
末路はどうなるか解かりませんが。


2.くろがね様
パトスに正直なようで何よりですw
戦うメイドさんは、生身でも自動人形でも大好きです。

あの吸血鬼と一緒にされたら、ベリオが怒りますよ?
…でも、ブラパピとは微妙に性格が被ってるような。


3.根無し草様
いやぁ、単にシリアスキャラを書くのが苦手なだけなんですけどね。
無道のような悪党タイプは、書いてる内に何故かブレーキがかかってしまって…。

ツボに入ると、つまらない事でも笑いが止まりませんよね。
何度か死ぬかと思った事も…。

無道が登場時に笑っていた理由はお察しの通りです。
ケルビムがS…従兄弟はあのキャラで正解です。
なるほど、そりゃSだわ。


4.文駆様
シリアスキャラをボケキャラに落すのがミョーに楽しくてw
最初にダウニーを落としたあたりで味を占めてしまいました。

笑い死にさせる敵討ち…笑って死ねる人生とは言いますが、そんな笑いはイヤだなぁ…。

シェザルは…一応プロットと扱いも決定しているのですが、ちょっと弱い気がするので色々と推敲中です。


5.ふぇるー様
何度か考えてみましたが、誘い受けはマジでムズイっす。
未亜にやらせるより、大河を女性化させてやった方が簡単かも…。

原作と照らし合わせながら読むと、よりギャップを実感できます…とかw
大人クレア様を見られたのは、本当に行幸でしたね…。
今後濡れ場付きのデュエルセイバーを出すなら、是非ともロリ&アダルトの2種類を用意してほしいものです。

リリィの人気の秘密は、ツンデレだけではなくそういう健気さもあったのでしょうねぇ…。


6.悠真様
いやいや、まだまだ砕き足りませんよ。
最大の標的は…破滅思考のダウニーでしょうか。

うーん、セルもコンプレックスはあると思いますが…彼が“破滅”に走る理由があるとすれば、確実に愛が最大の要因でしょう。
人としての戦い…ですか。
これは考えるべきテーマですね…。


7.アレス=アンバー様
無道は一度、徹底的に壊してやりたかったキャラなのでw
コメディ主体の幻想砕きに出すのだから、原作のように容赦なく悪党のままでは居られません。

そーですね、ロベリアもギャグキャラ一直線です。
色々と洒落にならない展開も考えていますが、形はどうあれ幸せになってもらう予定です。

あの本を見せたら…笑わずに凍結するか、笑ってしまった自己嫌悪で自殺に走るか…でしょう。

ブラパピには、召喚器は使えないと思っています。
理由は幾つかありますが…機会があったら。
それとも、あのムチとか銅像が召喚器なのかも?


8.柘榴様
手加減するとは言いましたが、中々加減が効きませぬ。
…ロベリアにSをやらせると違和感無いかなぁ…。

無道はどんな死に方をしても文句は言えないでしょうが、流石にこの死に方は文句も言いたくなりますw


9.カシス・ユウ・シンクレア様
文字通りギャグで倒すというのは、ある意味珍しいかもしれませんね。
マクロスでは歌で敵を撃退するというのがありましたが、影響を受けたかも…。

多分、アヴァター自体がシリアスオンリーを許さない世界になってるんでしょうw
セルとアルディアは絶対に幸せにします。
オリキャラを主要人物として出したんだから、不幸にするのは勘弁です。

ユカは信頼云々以前に、単純なだけって気も…。


10.くろこげ様
ある意味では、道を間違えたのではなく踏み込んだって気もしますw
むぅ、確かにこのままでは“破滅”はまだ弱い…。
かくなる上は、何時ぞやレスで書いた女装魔物の大群を…。


11.なまけもの様
ご指摘ありがとうございます<m(__)m>
シェザルのナルシストはもう決定事項です。
…いや、この際だからストリーキングが趣味の露出狂にしてしまおーか…?

言われて見ると、無道はダウニーを直視できませんね…。
少なくとも片手の指では足りないくらい死に掛けているでしょう。


12.アルカンシェル様
直球すぎて「笑う」から予測できなかったでしょうか?
それを狙ってたんですけどもw

“破滅”の軍とて、アヴァターの一員です。
ならば…ヘンタイだらけになるのも道理と言えば道理でしょうw


13.神〔SIN〕様
時守は無道はあまり好きではないので、今後の出番は少なくなりそうです。
シェザルの出番は、当分先…そもそも無道を出したの自体、予定外と言えば予定外です。
ロベリア?
むぅ…元々子供っぽいと言うか、駄々っ子のような一面を持っているキャラだと思いますので…その辺をちょっと弄ってみようかと。

力関係ですか…考えてみると、色々とややこしいです…。
時守的には、『ある程度実力差が開くと、数の差がアドバンテージではなくなる』と解釈しています。
仮にも召喚器持ちの救世主候補達と渡り合うのですから、超絶的な力量を持っているのは疑い様がありません。
人間としては最強クラスの実力者に、精鋭とは言え一般兵士が相手をするのは辛いものがあるでしょう。

それと…ウチの大河君と互角にやりあうライバルを出すと、一歩間違えると収集が付かなくなります…。
オリジナル召喚器を出す予定はありますので、どうぞお楽しみにw


14.K・K様
オギャンオス!

流石に最前線まで行っていつも通りにやれる二人じゃありません。
まぁ、放っておけばすぐ慣れるでしょうけど。

同人少女のモノマネですか…その手があったか。
セルはむしろ時守が恨みたいです。

アレですか、トムとジェリーみたいに物凄い逃げ足を発揮して山の上まで駆け上がる…とか。

ベリオの影が薄くなるのは仕方ないッス。
でも新属性追加で一発逆転を…。

ロベリアさんには色々と苦労してもらいます。
彼女を待ち受ける結末は、結構な反発を喰らいそうなのですが…。

では、オギャンバイ!


15.舞ーエンジェル様
ホモ…そっちも追加しようかな…。
正直、シェザルのボケはあまり思い浮かばないのですが…何とか捻り出して見ます。

原作からずーっとやってますよ。
これ以上出たら買うべきか迷ってます。
最近はアナザーセンチュリーズエピドードでゴッドガンダムを使いこなせないかと苦心する日々です。
デンドロビウムの弾数無限はちょっと反則くさいですが…。

プリズムアーク…知りませんでしたが…ちょっと興味が沸いたので見物に行ってきます。

確かに時守的にも、あの2人はセットなのですが…ネタが無いのですよ。
一応出すシチュエーションは考えてあるのですが…かなり遠いです。

無道との繋がり?
…多分お仕事の最中に踏み潰した程度です。
それで忙しかったから仕留め損ねたと。


16.nao様
テンポが悪いですか…ごもっともです。
セルとか大河にも当然空き時間はあって、その辺を他のグループのシーンで補おうとしたのですが…。
失敗だったようですね。
現に、何話か先を書いている今も、そこで死ぬほど苦労しています。
むぅ、やっぱり一話毎に分ければよかったか…。
今度、エクセルでも使って表でも作ってみます。

無道がどーでもいい…確かにどうでもいいですなw
カエデとベリオとブラックパピヨンは次になります。


17.なな月様
うむ、ボクッ娘はいいですね。
入手したV.G.リバースをやってみたのですが、かなりツボに嵌りました。

どうでもいいですが、無道の立ち絵って文字通り顎が外れてませんか?
なんかあの顔の形に違和感を覚えるのですが。
無道が感情豊かと言うより、他が無感情すぎる気がします。

ロベリアはルビナスには色々と苦労させられてますよ。
シリアスからコメディまで。

ってか、メカ進藤!?
ど、ドリルの群れだあああぁぁぁぁ!

ACEはAnother Century's Episodeです。

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