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「これが私の生きる道!最終決戦編2 (ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-11 22:58/2006-04-12 19:56)
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(9月22日正午、月〜プラント本国戦線)

 「ちっ!ササキ大尉が空間認識能力者だったと
  はな・・・」

完全に本性を現したササキ大尉と俺は一騎討ちを
開始したが、彼の操る12基のドラグーンに翻弄
されて押され気味であった。

 「何がコーディネーターだ!何がトップエース
  だ!そんなものファントムの前では無力だな
  !」

 「ほざけ!この二重人格者が!」

俺は12基のドラグーンの動きと攻撃位置を瞬時
に予想しながら、回避を続けるが、回避するのが
精一杯であった。

 「お前さえいなくなれば!」

 「その無駄な怨念を俺に向けるなよ!このバカ
  が!ええい、一か八かだ!」

絶対に避けられると思ったのだが、距離を稼ごう
と思いシールド裏の手榴弾を「108ストライク
」に投げつける。

 「ふん!そんなもの!」

ササキ大尉が後ろに下がった瞬間に「パンドラの
箱」を数発発射した。

 「ミサイルか!」

 「ブレイク!」

「108ストライク」の前で「パンドラの箱」が
炸裂してビーム粒子をばら撒くが、ササキ大尉は
シールドで防いでしまう。

 「以前の俺じゃあ無いんだよ!そんな手を喰ら
  うか!」

 「今だ!」

ササキ大尉の余裕あり気な口調を無視して、自機
の操作に気を取られて動きが多少緩慢になったド
ラグーン(連合ではファントムというらしいが)
をビームガトリング砲で破壊していった。

 「なっ!」

 「口数が多過ぎだよ。ササキちゃん」

 「ほざけ!」

半分に減ったドラグーンを再び俺に差し向けるが
、数が減った分いくらかの余裕が出来たので、ビ
ームガトリング砲を「108ストライク」に撃ち
続けた。

 「何で当たら無いんだよ!」

 「君にはフラガ少佐ほどの技量と経験が無いん
  だよ。ドラグーンの動きが読み易い。12基
  は辛いけど、6基ならそれほど苦にならない
  。フラガ少佐なら脅威だけどね」

 「ふざけんな!もう、俺はフラガ少佐よりも上
  だー!」

逆上したササキ大尉のドラグーンをビームガトリ
ング砲で始末しながら距離を近づけると、「10
8ストライク」のシールドの後ろから何かが飛び
出してきた。

 「何だ!?」

瞬時に回避をするが、ビームガトリング砲の先端
を切り落とされてしまう。

 「あれは、ブリッツのトリケロス!」

 「改良バージョンだ!量子通信装置のおかげで
  自由自在にお前を追い掛けるのさ」

アニメですぐにやられてしまう悪の幹部のように
饒舌な口調で説明しながらトリケロスを俺に向け
てくる。
良く見ると、ワイヤーでシールドと繋がっていて
前と左右からビームの刃が出ていた。

 「元を断つ!」

使えなくなったビームガトリング砲を捨てから、
闘牛の牛を避ける様にトリケロスをかわして、ビ
ームサーベルでワイヤーを切断しようとするが・
・・。

 「何!切れない!」

 「ふん、アンチビーム粒子をコーティング済み
  だ。切れるものか!」

同じ場所を何回も斬る事は不可能に近いので、切
断を諦めて距離を取りながら、予備のビームライ
フルで攻撃を続けると、ササキ大尉はトリケロス
と「108ストライク」を巧みに連動させながら
攻撃してくる。
全てのドラグーンを破壊した今がチャンスなのだ
が・・・。

 「困ったな、あのトリケロスをどうしようかな
  ?」 

 「ここで死ねば考えずに済むぞ!」

再び放たれたトリケロスが俺に迫ってくるが、ビ
ーム兵器主体の俺の装備ではこいつを破壊する事
が出来ない。

 「こいつは俺の言う通りに向きを変えて飛んで
  いくんだよ。覚悟するんだな」

 「向きを変える?そうか!」

俺は再び、トリケロスを直前でかわしながらビー
ムサーベルを抜く。

 「無駄だよ!」

 「そうかな?」

俺はトリケロス後部の小型スラスターにビームサ
ーブルを突き刺した。
すると、トリケロスの推進剤タンクが爆発を起こ
して、トリケロスは木っ端微塵に吹き飛んだ。

 「口数が多過ぎて墓穴を掘ったな」

 「ちくしょう!」

 「死ね!」

武器をほとんど喪失してしまった「108ストラ
イク」に止めを刺そうと突撃を掛けると、ササキ
大尉は逃亡を謀った。

 「逃げられると思うのか?」

 「甘いなカザマ!俺は絶対に生き残る!」

ササキ大尉の逃亡先では、「ソードカラミティー
」が部隊の指揮を執っていて、ササキ大尉はその
機体に接近して無線を入れる。
どうやら、指揮官機で核動力機らしい。

 「レナ少佐殿、私は機体の損傷が激しいので、
  後ろから付いてくるカザマはお任せしますよ
  。では」

 「ちっ、ササキ大尉の奴!」

レナ少佐は綺麗な顔を歪めながら、俺の正面に立
ち塞がってから対艦刀を抜いた。

 「誰かは知らないけど、どいてくれないかな?
  」

 「私の名はレナ・メイリア少佐だ。ササキ大尉
  には腸が煮えくり返りそうだが、君を通せば
  被害が大きくなる。いざ、尋常に勝負!」

 「俺はヨシヒロ・カザマだ。残念ながら手加減
  は無しだ!(乱れ桜)」

俺も対艦刀を抜いてから斬り結び合っていく。

 「ふっ、残念だったなカザマ!俺は一旦引かせ
  てもらうぞ」

 「後でぶん殴ってやるから覚悟しな!」

 「ぶん殴りに帰って来れるといいですな。レナ
  少佐」

 「お前、やっぱり最低な奴だな」

 「褒め言葉として受け取っておきましょう」

俺とレナ少佐の様子を見に戻ってきたササキ大尉
の悪態にお返しをしながら、一騎討ちを続けてい
くが、レナ少佐はかなりの腕前でなかなか勝負が
付かない。
そして、周りの戦況はこう着状態に陥っていた。
フラガ少佐はクルーゼ司令との戦いでドラグーン
を喪失して引き揚げていったが、クルーゼ司令も
補給の為に、ヴェサリウスに帰艦していた。
例の核動力機のレイダーはイザークと一騎討ちを
続けていて、カラミティーはキラのフリーダムと
砲撃戦を再開している。
最後に、アスラン達は例の三機種を集中的に落と
していたが、数が多いのでなかなか数を減らせず
にいた。

 「この膠着状態を打破するには!レナ少佐、覚
  悟!」

俺は対艦刀を構えてから再び斬りかかった。

 「ふん、バカの一つ覚え・・・」

 「喰らえ!」

俺は腕に装着していたシールドを「ソードカラミ
ティー」に投げつける。

 「これも、想定済みだ!」

レナ少佐が飛んできたシールドを対艦刀で弾き飛
ばそうとした瞬間、裏に装着されていた起爆装置
を解除した手榴弾が炸裂する。

 「何!」

レナ少佐が咄嗟に閉じた目を開けると、全ての探
知装置が完全に使用不能になっていて、コックピ
ット内は暗闇に包まれていた。

 「あんな原始的な武器にやられるとは!」

レナ少佐が視界を確保する為に、コックピットハ
ッチを開けると同時に、「ジン検廚対艦刀で「
ソードカラミティー」の手足を切り落とす。

 「脱出するしかないのか!」

レナ少佐はNジャマーキャンセラーを切ってから
「ソードカラミティー」を脱出したようだが、俺
は彼女の脱出をわざと見逃してしまう。
核動力機を完全に破壊して核爆発でも起こされた
ら厄介だという理由が第一であったが、どうも俺
には女性が殺せないという弱点が存在しているよ
うだ。
ヘリオポリスでのラミアス大佐、硫黄島でのステ
ラ、そして今回のレナ少佐でそれを確信してしま
った。

 「ええい、封建的と言われようがやっぱり討て
  ない」

俺は半分熔けかかったシールドを拾ってから、パ
イロットが脱出した、胴体のみの「ソードカラミ
ティー」に射撃を加えて撃破した。  
Nジャマーキャンセラーを切ったモビルスーツの
爆発は通常のモビルスーツとさほど変わらないよ
うだ。 
今回はパイロットにNジャマーキャンセラーを切
る余裕があったから大丈夫だったものの、いきな
り撃破したらどうなるのだろう?
やはり、数キロ範囲が吹き飛ぶのだろうか?
その前にNジャマーキャンセラーが壊れて大丈夫
なのだろうか?
技術者は安全装置は完璧ですと言っていたが、そ
この所がいまいち不明だ。  

 「核動力機も面倒くさいな。多分、戦後は生産
  と配備が禁止になるだろうな」

そんな事を考えていると、少し離れた残骸の影か
らレナ少佐らしき人物が出てきて両手を挙げた。

 「あなたね。機体を完全破壊してしまったんだ
  から、責任を取って捕虜にしなさいよ。私は
  窒息死なんて御免よ」

 「はいはい、わかりましたよ。手の上に・・・
  」

 「嫌よ!コックピットに入れなさい」

 「武器を持っていて機体を取られる可能性があ
  るから駄目」

 「銃なんて持っていないわよ。捨ててしまった
  もの。早く乗せなさい」

 「命を取らないで失敗だったかな・・・」

 「聞こえてるわよ!」

 「はいはい」

俺がコックピットハッチを開けると、レナ少佐が
いきなり中に入ってきて俺の膝の上に座る。

 「いきなり驚くだろうが!」

 「マリューに聞いた通りね。女性には甘いんだ
  から」

 「後ろにいろ!あんたのお味方を殺さなければ
  いけないのだから」

 「大丈夫よ。ササキ大尉が撤退した時点でほら
  」

いきなり、遠くで多数の信号弾が上がって、敵モ
ビルスーツ隊が撤退していく。

 「どうしてだ?」

 「バカね。普通の人が数時間もモビルスーツで
  戦闘をしたら疲れて当然だし、モビルスーツ
  ってのは動かしている時間よりも整備してい
  る時間の方が多いくらいの兵器でしょ」

 「納得だ」

 「カザマ司令!ご無事ですか?」

センプウの一個小隊が俺に近づいてきて安否を聞
いてくる。
どうやら、俺は戦っている内に主戦場から大分外
れた地点に流されていたらしい。

 「大丈夫だ。捕虜を一人取ったからこの機体を
  奪取したら、(ジン検砲瓦鳩發鼠遒察

 「そんな事はしないわよ。無駄死にしたくない
  もの」 

 「帰るぞ!」

9月22日の午後一時、第三派までモビルスーツ
隊を繰り出した所で、連合軍が一旦艦隊を射程距
離外に後退させて戦闘がストップした。
どうも、アズラエル理事が仕切り直しを提案した
らしい。
軍人としては素人である彼が何を考えているのか
はわからないが、こちらとしてはラッキーであっ
たと言えよう。


(午後一時半、アークエンジェル格納庫)

 「両手を上げて、ゆっくりと出るんだ」

アークエンジェルに着艦した俺は外に警備隊を配
置させてから、レナ少佐に外に出るように指示を
出した。

 「ちゃんと士官としての待遇をお願いね」

 「尋問している暇も無いから、独房で飯でも食
  べていて貰う。艦内の食事だから高級レスト
  ランの味というわけにはいかない」

 「マリューは高級レストランで私は艦内食か。
  不公平よね」

 「状況がまるで違うだろうが!」

 「わかってるわよ。戦争が終わってからでいい
  わ」

 「ラクスに怒られるから駄目」

 「ラクス・・・。ああ、ササキ大尉がご執着の
  ピンクのお姫様ね」

 「今日明日で俺が殺すから、執着も出来なくな
  る。しかし、彼は随分お変わりになっていた
  な」

 「違うわ。あれが本来の彼なの。私は多少の付
  き合いがあってね。言っておくけど、友達で
  はないわよ」

 「それは、さっきのでわかる」

 「だから、遠慮なく殺してしまってもいいわよ
  。生きていると味方が迷惑だし、個人的にも
  頭にきているから。あっ、これはオフレコで
  お願い」

 「仰せのままに。では、VIPルームへどうぞ
  」

レナ少佐を独房に閉じ込めてから、ブリッジに上
がってタリアさんと状況の確認を始めた。

 「敵は我々の最初の奇策でイニシアブチを取ら
  れてしまったから、もう一度攻撃をかけ直す
  みたいね。後方から援軍も届いているみたい
  だし」

 「援軍ですか。今までの苦労が台無しですね」

 「本来はプトレマイオス基地を守備する予定だ
  った第三艦隊を回してきているようね。その
  配属先は・・・」

 「俺達の正面ですか?」

 「正解!」

 「うひゃー、最悪」

本来、留守番だった第三艦隊は出港直後に気が変
わったアズラエル理事の指示で援軍として呼ばれ
たようであった。
どうせ、プトレマイオス基地を空にしてもザフト
には占領や攻撃の為の戦力を回す余裕は無いし、
戦力として数えられていなかった補充率20〜3
0%の第一・第二艦隊が存在しているので、万が
一の時もこれで守りきれると判断したようである

 「このままでは次の攻撃で俺達は全滅ですよ」

 「だから、中央艦隊と右翼艦隊は援軍を回して
  くれるそうよ。向こうは多少優勢だったよう
  だから」

 「でも、数が減るから再び、膠着状態ですね。
  アズラエルの高笑いが聞こえてきそうだ」

 「ヴェサリウスから通信が入ってきています」

 「回してくれ」

アビーちゃんの報告を受けた俺は直ぐに回線を開
くように命令を出す。
Nジャマーの影響でノイズが酷く、声もたまに途
切れるが距離が近いので一応通信可能であった。

 「損害率の報告が上がってきているが、我々の
  艦隊だけ酷いものだ。艦艇は平均9%の損害
  でさほど変わらないが、モビルスーツ隊の損
  害が31%で最悪の状況だ。他の二艦隊は1
  2%程度だから酷さがわかるというものだ」

 「連合の被害予測はどうなのですか?」

 「艦艇は平均19%、モビルスーツ隊は平均で
  24%だそうだ。俺達とぶつかっている部隊
  は45%ほどだとの予測が出ているが」

最後にMA部隊の事だが、いくらビーム砲に装備
を変えたり、多少機動性を上げても遅れた兵器で
ある事に変わりは無く、両軍共に70%近い損害
を受けて、既に戦力として機能していなかった。


 「ところで、カザマ君。(乱れ桜)を捕虜にし
  たらしいな」

 「尋問でもしてみますか?心臓に毛が生えた女
  ですよ。美人ですけど」

 「戦闘が終了してから情報部にでも任せる。気
  が強い女はミサオだけで十分だ」

 「本当はもう一人の空間認識能力者を討ち取る
  予定だったのですか。多少、トラブルがあり
  まして・・・」

 「ユリカ君とエミ君が苦戦していた男だろう?
  だが、(乱れ桜)の方が指揮官としては優秀
  なのだから、結果としては上々だと私は思う
  が」

 「次は確実に討ち取りますよ」

 「そうか。では、補給と修理を急がせてくれ」

 「了解です」

俺とクルーゼ司令は会話を終了させてから回線を
切った。

 「敵は何時間後に来ますかね?」

 「さあ、敵に主導権を握られてしまったから・
  ・・」

次の戦闘が俺達の運命を決める可能性が高いと思
うと、緊張せずにいられなかった。


(同時刻、ドオニオン艦内)

 「何ですって!レナ少佐がMIA?]

ブリッジに上がってきたフラガ少佐とレナ少佐の
部下達からの報告を聞いて、ラミアス大佐は驚き
の声を上げる。

 「ササキ大尉を追いかけてきた(黒い死神)搭
  乗の黒いジンらしきモビルスーツと交戦状態
  に入った後、戦場を外れてしまい。その後、
  十分ほどでシグナルをロストしました」

 「あなたは黙って見ていたの?直属の上官なん
  でしょ!」

ラミアス大佐は思わず、レナ少佐の副隊長格の中
尉を怒鳴りつけてしまう。

 「下手に多くの機体で攻撃をかけると乱戦にな
  って、かえって(黒い死神)を有利にしてし
  まうと言われたので、自分はモビルスーツ隊
  の指揮に専念しました」

 「そう・・・。怒鳴りつけてすまなかったわね
  」

 「いえ・・・」

ラミアス大佐は感情的になった事を中尉に謝る。

 「それで、原因を作ったササキ大尉は何処にい
  るの?」

 「あいつなら、ジブリールの所に行っているよ
  」

ラミアス大佐の問いにフラガ少佐が答える。

 「彼にそんな権限があったのかしら?」

 「既にあいつは好き勝手にやっているからな。
  文句を言っても自分はアズラエル理事のお気
  に入りだから何をしても良いと思っているら
  しくて、聞く耳を持たないんだよ」

最初はフラガ少佐に師事していたササキ大尉であ
ったが、もう彼の言う事すら聞かないらしい。 

 「レナ少佐から聞いているだろう?始めは礼儀
  正しくて真面目な男だと思ったんだけど、暫
  らくすると、二重人格者のように激変するん
  だよ。そんな男だから、余り顔を合わせない
  将官クラスの人間には評判が良いんだが、毎
  日顔を合わせるパイロット仲間の評判は最悪
  だ」

 「プリンス准将、いかが取り計らいます?」

ラミアス大佐は所属母艦に帰って来ない上に、上
官の命令を聞かない部下への対応を指揮官に任せ
る事にする。

 「彼は元々イレギュラーでここへ来た男ですし
  、モビルスーツ隊の指揮を上手く執れるわけ
  でも無いのですから放置しましょう。ジブリ
  ール司令官が上手くやってくれますよ」 

 「それが一番良さそうかな」

 「そうかしらね」

プリンス准将が珍しくまともな事を言うので、フ
ラガ少佐とラミアス大佐は賛同する。
プリンス准将としては、自分の言う事を聞かない
一大尉には興味が無いようだった。 

 「彼の事は放っておきましょう。さあ、修理と
  補給を急いでください(幸いにして我々の損
  害はゼロ艦隊を下回っている。ジブリールと
  一緒に死にやがれ!)」

プリンス准将はアズラエルと穏健派のどちらが勝
つにしても、ジブリールと彼に媚を売りに行った
ササキ大尉の戦死も願うようになっていたのだっ
た。


(同時刻、「ピースメーカー供彜脇癲

ササキ大尉は武器を失った「108ストライク」
の補給と整備を格納庫にいた整備兵に任せると、
ブリッジへ上がった。

 「おや?ササキ大尉、どうしたのかね?」

自分の部隊に所属はしていないが、顔見知りであ
る青年士官にジブリールは声をかけた。

 「ジブリール司令官、実はお願いがあるのです
  が」

 「何かね?」

 「オルガとクロトが使っているアレを自分にも
  少し回してもらいたいのですが」

 「君がかね?」

 「このままではカザマに勝てません。例の薬を
  使うと、一時的でも能力が上がると聞きまし
  たが」

 「確かに上がるが、安全面等で問題がある。禁
  断症状がかなりあるしな」

 「一度だけです。一度でカザマを葬ればいいの
  ですから」

 「そこまで言うのなら融通しよう。頑張ってく
  れよ」

ササキ大尉はジブリールから薬を貰うと、ドミニ
オンに帰っていった。
ファントムの補給が「ピースメーカー供廚任鷲
可能だった事を思い出したからである。

 「今度こそケリをつける!殺してやるからな。
  カザマ!」

ササキ大尉は一人「108ストライク」のコック
ピット内で叫ぶのであった。

 「まあ、失敗しても一パイロットが死ぬだけだ
  。誰も損はするまい」

ジブリールは一人ブリッジ内でつぶやくのであっ
た。


(同日午後二時、樺太南端ユーラシア連合駐屯軍
 防御陣地内仮設司令部)

今朝の極東艦隊の壊滅とウラジオストック港の完
全破壊で樺太駐屯軍司令部には悲壮感が漂ってい
た。
援軍も来ず、逃げる事も出来ずに撃破されるのを
待つしか無かったからだ。

 「何が死守命令だ!増援ぐらい送ってからぬか
  しやがれ!」

樺太駐屯軍参謀長が机を叩きながら激怒する。

 「まあまあ、モロコフ君。あまり怒ると血圧が
  上がるぞ。適当にやれるだけやってから降伏
  すればいいと考えれば楽ではないか」

のんびりとした口調で司令官のチェルネンコ中将
がモロコフ参謀長を制する。

 「それはそうですが、基地の防衛をあきらめて
  海岸沿いで防衛線なんて張って大丈夫ですか
  ?」

 「確かにオハの基地に立て篭もれば艦船からの
  援護は無いが、あんな枯れた油田の上の基地
  なんて無視されて、先に全島を占領されるに
  決まっている。市街地に陣取れば、インフラ
  の被害がバカになりないし、再建が冬までに
  終わらなければ日本に占領された方が支援を
  受けられてマシだなんて住民に言われてしま
  う。そうで無くてもこんなビラが撒かれてい
  るのだから」

事前に航空機で撒かれたチラシにはこう書かれて
いた。

 「住民の皆さんは簡単な手続きで日本国籍を取
  得できますし、帰国を望まれる方は財産の全
  額補償をいたします。ご自由にお選びくださ
  い。日本国政府」

ユーラシア連合構成国で貧しい国の部類に入って
いるロシア連邦の住民には日本国籍を取得して生
活したい人が多い為に、駐屯軍に期待している住
民はほとんどいなかった。
優しい住民達に早く降伏した方がいいよと助言さ
れている者もいたほどだ。 

 「それで、住民に迷惑をかけずに揚陸艦隊ごと
  撃破する方針に変えたのですか?ですが、大
  丈夫なのでしょうか?」

 「それについては、ジェーコフ少佐。説明を頼
  む」

 「作戦目標は一つ!上陸する敵軍を揚陸艦隊ご
  と撃破する。ただこれだけです。これで時間
  が大分稼げるので、次回の攻略作戦までに援
  軍を期待できるでしょう」

 「具体的にはどうするのだ?南の海岸沿いに戦
  力を集めているようだが」

 「切り札は幾つかあります。まず、380mm
  ビーム砲二門と多数のミサイルランチャーを
  装備した試作重モビルスーツ(イワン雷帝)
  が五機とハイペリオンの光波シールドを寒冷
  地用ストライクダガー全機に用意できました
  。その他にも移動式の陽電子砲やビーム砲、
  防御用の光波シールド発生器なども用意され
  ています」

 「動力源は大丈夫なのか?」

 「はい、実はウラジオストックから拝借してき
  たNジャマーキャンセラーの試作品がありま
  して、それと原子力潜水艦から降ろした原子
  炉を組み合わせて動力にしています。これで
  、敵の攻撃に耐えてから(イワン雷帝)の砲
  撃等で一掃します。寒冷地用ストライクダガ
  ーも防衛に専念させれば、数の不利も多少は
  縮められるでしょうし」

 「拝借って・・・。盗んできた物じゃあ・・・
  」

 「ウラジオストックの倉庫は今朝の攻撃で壊滅
  しました。既に破壊されたと認定された物を
  我々が使っても問題にはなりませんよ」

 「そうか、頑張ってくれよ」

 「お任せください」

ジェーコフ少佐は指揮を執るために前線へと出掛
けていってしまった。

 「多少、横紙破りだが優秀だ。彼に任せて天命
  を待つのみだな」

 「そうですね・・・」

仮設司令部で二人の老軍人は運命に身を任せるの
みであった。


 


(5分後、南海岸際最前線陣地地下司令部)

 「みんな、用意はいいか?」

チェルネンコ中将に全面委任を受けたジェーコフ
少佐は若い士官達に準備の有無を問いかけた。

 「(イワン雷帝)の配置完了です。モビルスー
  ツ隊も所定の位置に配置完了」

 「ビーム砲、陽電子砲、ミサイルランチャー、
  その他火器と戦車隊等も配置完了です」

 「光波シールド防御帯の準備完了」

 「原子炉とNジャマーキャンセラーの準備完了
  です」

 「ふん、窮鼠猫を噛むだ。ヤパーナ共め覚悟し
  ろよ!」

 「偵察部隊から報告です。敵艦隊が接近中。後
  、十分ほどで支援攻撃に入るとの事です」

 「全員、所定の位置へ。さあ、始めるぞ!」

索敵担当の士官からの報告で全員が所定の位置に
つき防衛に入った。
果たして、樺太は日本に占領されてしまうのか?
見事に守りきる事に成功するのか?
それは、まだ誰にもわからなかった。


(二十分後、山口機動防衛艦隊旗艦「あかぎ」艦
 内)

 「今日は早朝から機動艦隊の殲滅、敵拠点の破
  壊と忙しく働いてきたのに今度は味方の上陸
  支援か。忙しくて結構だが、手当ては微々た
  るものなんだよな」

 「パイロットの方が超過勤務でしょう」

 「樺太には三十機ほどのモビルスーツしか配備
  されていなかったよな。楽に終わるといいの
  だが」

 「何かあるかも知れませんよ」

 「水際で防衛するなんて無謀だよな。何かある
  と考えた方が無難か」

 「第一次支援隊発進です」

 「あーあ、指揮系統が違うから特別陸戦隊には
  忠告くらいしか出来ないんだよな」

 「無駄な犠牲が出ない事を祈るしかありません
  ね」

後方の航空護衛艦群から108機のモビルスーツ
隊が発進していった。


(十分後、揚陸艦隊旗艦「ふらの」艦内)

全護衛艦群から大量のミサイルと砲弾が撃ち込ま
れたが、効果のほどはいまいち不明であった。

 「うーん、どれぐらい破壊出来たかな?」

 「半数はいけたと思いますが・・・」

特別陸戦隊司令官の太田海将補は参謀長の石和一
佐と艦船からの砲撃の効果について話し合ってい
た。 

 「機動部隊を後方に下げすぎましたかね。支援
  モビルスーツ隊がなかなか到着しません」

 「補給が必要だったから仕方が無いよな。過密
  スケジュールなんだよ」

 「短時間で占領出来ないと意味がありませんか
  らな」

連合・プラント間で停戦になれば戦闘行為が禁止
になってしまうので早く占領しなければならない
し、世界規模で決戦が始まった今でなければ対応
戦力を多数回されてしまうので、今の短いチャン
スを生かすしかないのだ。

 「支援モビルスーツ隊到着です」

 「よーし、上陸開始!」

各揚陸艦艇から上陸用舟艇が発進して、護衛艦艇
から支援の砲撃やミサイル攻撃が続行される。
上陸用舟艇が海岸に乗り上げようとした瞬間、敵
の陣地から多数のビーム砲や陽電子砲やミサイル
が多数放たれ、上空のモビルスーツや上陸舟艇、
海上の艦船に命中する。

 「ちっ!敵さん、亀のように引っ込んでやがっ
  たな。だが、どうやっって攻撃を防いだんだ
  ?」

 「何かのシールド兵器ですかね?」

 「支援モビルスーツ隊はどう言っている?」

 「我、攻撃を再開するも光波防御帯に阻まれて
  攻撃不能」

上空にいたセンプウ隊は18機も落とされてしま
ったらしいが、敵の秘密の一端を掴んだようだ。 

 「敵も撃て無いんだ。上陸を再開させろ!」

 「護衛艦(さぎり)(しらゆき)(ゆきくも)
  が沈没。その他にも損害多数です!」

 「えらく太いビーム砲があったよな。あんな、
  デカブツどうやって運び込んだ?」

太田海将補は敵の攻撃が止まったので石和一佐と
のんきに話し始めた。
特別陸戦隊は海兵隊のような部隊なので、肝の据
わった士官が多いのだ。

 「とにかく、上陸作戦を続行だ!敵は光波シー
  ルドの展開時には攻撃は出来ない。上陸した
  部隊はばらけさせて攻撃に当たる可能性を低
  くしろ!」

 「うーん、時間稼ぎですね」

 「無視して進めば後ろから攻撃するか」

 「どうします?」

 「どうもこうも倒すしかあるまい。山口海将に
  連絡だ」

樺太攻略艦隊は思いもしなかった苦戦に陥ってい
た。


(十分後、南海岸最前線陣地地下司令部)

光波シールドで防御して隙をついて多数の火器で
攻撃する。
単純な戦法ではあるし、シールド展開中は攻撃不
能ではあるが、時間稼ぎには最適な方法であった

光波シールドのエネルギー源もNジャマーキャン
セラーを付けた原子炉からいくらでも取れるので
、ほぼ無限といっても過言ではなかった。

 「とりあえず、上手くいったな」

ジェーコフ少佐が安堵の声を漏らした。

 「敵が我々を無視して進軍したら攻撃を再開す
  る。見事な足止めと時間稼ぎの策ですね」

 「まあな。だが、(イワン雷帝)の巨大ビーム
  砲の威力は凄いな。敵の護衛艦が一撃で沈ん
  だし、モビルスーツを三機も貫いていったし
  な」

 「あれは、ザフトのザウートを参考に開発され
  た機体です。全長26メートル、重量158
  トン。380mmの巨大ビーム砲を両肩に装
  備して、ミサイルランチャーを背中に、レー
  ルガンを腰に装備しています。その他には防
  御用の光波シールド発生装置を二基両腕に装
  備しています」

 「スペックは凄いのだが、どうして正式採用さ
  れなかったんだ?」

 「両肩のビーム砲を支える為に重量を重くした
  ら、極端に機動性が落ちまして戦車以下にな
  ってしまったんです。それでも、要塞防衛用
  に採用して貰おうと努力はしたのですが、結
  局駄目でこの五機で打ち止めです」

新型モビルスーツ担当のサハノフ中尉が事情を説
明をする。 

 「確かに、移動には手間がかかったよな」

 「その代りの大火力です」

 「敵の二次攻撃隊接近中です!」

二人で話している途中で索敵担当士官から報告が
入った。

 「敵機動部隊からか?」

 「はい、数は推定で80機以上です」

 「何が、敵機動部隊のモビルスーツ隊を半数以
  上は落としただ!極東艦隊の連中は数も数え
  られないのか?」

敵の機動艦隊には230機以上のモビルスーツが
搭載されているが、第一次、第二次攻撃隊で18
0機以上を繰り出して直衛もついていると考える
と、極東艦隊のモビルスーツ隊は30機ほどしか
落としていない可能性が高い。

 「数がいても光波シールドは破れませんよ」

 「それもそうか」

ジェーコフ少佐の機嫌が直り、地下司令部の全員
が安堵しかけた時に新たな報告が入った。

 「奴等、何かをしようとしていますよ」

 「何だ?」

センプウの部隊が光波防御帯の側で何かをしよう
としているが、それが何なのか理解出来なかった


(同時刻、センプウ隊指揮官視点)

 「これが、必勝の策ねえ。俺達爆発しないかな
  ?」

第一次支援隊を指揮している友永一尉が心配そう
に部下に尋ねる。

 「強力な盾を破壊するには強力な武器が必要で
  、その武器の材料が盾と同じだったという事
  ですよ」

 「このままだと手詰まりだったから、動きがあ
  るのはいい事だと思うんだけど」

 「では、いきましょう」

残存する160機ほどのセンプウ隊は三機一組に
なって持っていた40メートルほどの長い金属棒
を持ち上げる。

 「よーし、光波シールドのスイッチを入れろ!
  」

 「了解!」

棒の端についているセンプウの光波シールドを展
開させてから光波防御帯に突き入れる。
すると、光波シールド同士が干渉を起こしてまば
ゆい光を放った。

 「これで突き破れると思うか?」

 「さあ、向こうは質の良い電源をお持ちのよう
  ですから。センプウの光波シールドの小型バ
  ッテリーではどうなる事やら」

 「あちゃー、機体の外の温度が78度だってさ
  。ここ樺太だよな」

突き入れられた50本ほどの光波シールド付きの
金属棒で防御陣地の光波防御帯が眩い光を放って
いたが、30秒ほどするといきなり光波防御帯が
消えてしまった。

 「あれ?消えたな。では、攻撃開始だ!」

 「「「了解!」」」

友永一尉は信じられないというような表情をしな
がら攻撃の指示を出すと、センプウ隊は金属棒を
捨ててから上空に飛び上がった。

 「何か知らないけど、ツイているみたいだから
  さっさと終わらせるぞ!」

センプウ隊は光波防御帯が消滅して動揺している
敵防衛隊に一斉に攻撃を開始した。


(同時刻、ジェーコフ少佐視点)

 「光波シールド同士の干渉を利用して、打ち消
  そうとしているのか。作戦としてなかなかだ
  が、我々には無限の電源があるかなら」

余裕の表情で敵を評価していたジェーコフ少佐で
あったが、突然光波防御帯が消えてしまう。

 「えっ!どうしてだ?」

 「大変です。Nジャマーキャンセラーが故障し
  ました!」

 「何で、今壊れるんだ!?」

 「所詮、第一号の試作品だったという事です」

 「お前は担当者だろうが!」

 「あんなボロを長時間使えば壊れるに決まって
  いるでしょうが!試験だの供給電力の安定化
  だので使いっぱなしの上に、悪路を移動させ
  るから・・・」

 「直ぐに修理しろ!」

 「半日は掛かりますよ!」

 「この役立たずが!」

 「ヘボ責任者が!」

光波防御帯担当のマイルズ中尉とジェーコフ少佐
が口汚く罵り合っている内に、サハノフ中尉が報
告に入ってきた。

 「(イワン雷帝)が全滅しました」

 「何!」

確かに、強大な火力を持ち防御力も優れたモビル
スーツであったが、機動力の低さが致命的で、後
ろに周り込まれて次々に止めを刺されてしまった
らしい。
本当はストライクダガー隊が防御する予定だった
のだが、敵の数が多過ぎて不可能であったようだ

 「うーん、これは駄目だな」

外の様子を見ると、火力が大きいビーム砲や陽電
子砲は即座に破壊され、(イワン雷帝)も撃破さ
れ動かなくなっていて、残り十機ほどにまで減っ
たストライクダガー隊が三倍の数のセンプウ隊に
追い回されていた。
もはや完全に策は尽きたようである。

 「せめて、完璧なNジャマーキャンセラーが用
  意出来ていればな」

 「最後の一兵まで戦いますか?」

 「バーカ!降伏するに決まっているだろう」

 「死守命令に違反しますよ」

 「俺の家族はここに住んでいるんだ。俺は日本
  国籍を取って自衛隊に入る!」

 「変わり身早いですね・・・」

 「同じ命を張る仕事なのに待遇が違いすぎだ!
  」

結局、仮設地下司令部に白旗が上がって戦闘は終
了した。
この最大の戦力を持つジェーコフ少佐の部隊が降
伏した事により、駐留軍司令官のチェルネンコ中
将も降伏して樺太での戦闘はあっけなく終了した
のであった。


(9月22日夕方6時、機動防衛艦隊旗艦「あか
 ぎ」艦内)

 「予想よりも被害が出たな。艦船六隻、上陸用
  舟艇八隻、モビルスーツ37機で死者が13
  00名を超えるか・・・」

無論、これは樺太占領作戦のみの被害である。

 「無茶な手を使ってきましたからね」

 「作戦が成功したから良いものの、機動護衛艦
  隊は三ヶ月は使えないぞ。パイロットの補充
  と訓練、艦船の修理、書類仕事が山積みだ」

 「それと、輸送艦隊から拝借した金属棒ですか
  ?あれの弁償をしないといけません」

 「光波シールド同士の干渉でボロボロというか
  グニャグニャなんだろう?」

 「建築資材としては使い物になりません」

 「建築資材ね・・・」

 「国土交通省の予算で建築される(樺太ふれあ
  い記念館)建物の鉄骨だったそうで・・・。
  何でも耐寒仕様の特別製で楠木重工の特注品
  だとか」

この時代になっても地方に多額の予算を使って箱
物を作る役人は減っていなかった。
樺太は比較的未開の地と思われている場所なので
予算が下りやすいと思われたらしい。
まだ、正式に日本に編入されていないのに、精力
的に動く役人にあきれてしまう。 

 「必死こいて占領した場所でいきなり箱物行政
  かよ!それに、特製の鉄骨だあ?予算が余っ
  ているのか?」

 「地元住民は無料で使用でき、テニスコートと
  ゴルフ練習場の他に野球場、多目的体育館、
  地熱を利用した温水プール、それと温泉も引
  くそうです。ああ、公園もありますね」

柳本一佐が国土交通省の役人から貰ったパンフレ
ットを見ながら説明する。
そのパンフレットには「新しい仲間と仲良くしよ
う」「樺太のみなさん日本へようこそ」などの幼
稚なフレーズが日本語とロシア語で書かれていた

そして、裏面には建設作業員の募集と施設の管理
職員の募集広告が書かれていた。
つまりは、占領政策の一環でもあるらしい。 

 「占領地なんだから、もっとこうねえ・・・」

 「ですが、樺太の産業の8割が日本資本ですよ
  。防衛の主戦力の運用を一少佐に一任してい
  る事自体、防衛を諦めている証拠です。それ
  に、我々への住民の抵抗運動よりも駐屯軍の
  連中の横暴が酷かったそうなので、彼らがリ
  ンチを喰らう可能性の方を心配した方が良さ
  そうですよ」

 「貧しい中央アジア出身の連中には樺太は天国
  に見えたのでしょうな」

100年ほど前から樺太には日本資本が大量に進
出していて、町の様子はそれほど日本と変わりが
無かったので、樺太駐屯軍として派遣された貧し
い兵士が窃盗や強盗などを繰り返し、一部の不良
士官が護衛料を企業や店主に要求するようになっ
ていたので、駐屯軍の評判は最悪であった。
日本が樺太を占領する理由の一つに樺太に資金を
投下している大企業からの要請というものもあっ
たのだ。

 「オハ基地の接収はどうなっているんだ?」

 「無事に終了したそうです。大したトラブルも
  ありませでした」

 「そうか。では、軍政は佐藤海将に任せて帰る
  ぞ!」

 「了解です」

こうして、自衛隊の長い1日は終わろうとしてい
た。


(9月22日午後3時、大西洋連邦首都ワシント
 ンホワイトハウス内)  

今日、このホワイトハウス内の会議室では極秘の
会談が行われていた。
参加者は大西洋連邦のケネディー大統領とアルス
ター外務次官、その他地球連合参加国の外務大臣
クラスの政治家達とバチカン市国の枢密卿が数人
、オーブのウナト・エマ・セイラン、スカンジナ
ビア王国の外交担当者日本の東郷外相、赤道連合
・大洋州連合・アフリカ共同体・イスラム連合・
マダガスカル共和国の外務大臣やプラントのデュ
ランダル外交委員長など参加者だけを見ても層々
たるメンバーであった。

 「まさか、アズラエル理事もここで講和の話し
  合いをしているとは思わないだろうな」

ケネディー大統領がいたずらっ子のような笑みを
浮かながらテーブルの上のコーヒーを飲む。

 「戦争中でも政治家は話し合いをしなければい
  けないのに、彼は中立国潰しを容認しました
  からな。会合場所の確保が困難で暫らく話が
  途切れてしまいました」

 「ウナト殿はジブリールの後始末が大変でした
  からな。何を焦ったのかは知らないが、一国
  の代表を軽々しく抹殺しないで欲しいものだ
  」

東郷外相の言葉に全員が頷いた。

 「時間が勿体無いので話し合いを始めよう。ま
  ず、大西洋連邦はプラントの独立を認めるつ
  もりでいる」

 「ほう、いきなり認めていただけるとは思いま
  せんでしたな」

デュランダル外交委員長は意外そうな顔をする。

 「実際の話、これを認めないと何の話し合いも
  始まらない」 

 「確かに始まりませんな」

 「それと、次の件だが・・・」

各国の政治家達は現実的な決着を求めて話し合い
を始めた。
各国ともに様々な思惑があるのだが、戦争を終わ
らせないと、国家が破産してしまうという気持ち
だけは同じであった。
そして、戦争を終わらせる為に、ブルーコスモス
強行派の排除とアズラエル理事の逮捕さえも辞さ
ないという点は確定事項であった。
だが、これはアズラエル理事が完全勝利を収めれ
ば吹き飛んでしまう条件であり、ブルーコスモス
強行派はまだ政府内や軍部に多数いるので、慎重
に事を進めなければならなかった。

 「報告します。補給と修理を終わらせた連合艦
  隊とザフト艦隊は再び戦闘を再開しました」

ケネディー大統領の秘書官の報告で室内は騒然と
してしまう。

 「我々が騒いでも仕方がないでしょう。早く停
  戦の条件をまとめてなるべく早く戦闘を中止
  させないといけません。どこかの誰かのよう
  に勝つ方を見極めてなどいると、大勢の若者
  を死に追いやってしまいます」 

デュランダル外交委員長は地球連合側の政治家を
暗に批判した。

 「そうだな。なるべく早く条件をまとめよう」

ケネディー大統領はデュランダル外交委員長との
話し合いを始め、各国の代表も細かい懸案を当事
国の代表と話始めた。
この話し合いが無事に終了すれば、戦闘を止めら
れる。
やっと、ここまで来たのだ。
早く終わらせてくれ。
この会議を仲介したアルスター外務次官は祈らず
にいられなかった。


(同日午後三時、月〜プラント間「ワシントン」
 艦内)

アズラエル理事はワシントンで秘密の会合が行わ
れている事は把握していたが、肝心の場所が掴め
ていなかった。
まさか、ホワイトハウスだとは思いもしなかった
のだ。
もし、条件がまとまって大統領から停戦命令が出
たら、建前としては従わなければならないのだが
、自分は多分戦いを止める事はしないであろう。

 「というわけで、一気に敵艦隊を粉砕してプラ
  ントに城下の誓いをさせなければなりません
  。これからは損害を考慮しないで数で一気に
  押していきます。距離を詰めて素早く敵を倒
  して下さい」

アズラエル理事の心の奥底で広がり始めた焦りが
この艦隊決戦の結果を悲劇に変えようとしていた


(同時刻、アークエンジェル艦内)

アークエンジェルのブリッジで細かなミーティン
グをしていた俺に、敵艦隊が動き出したと報告が
入ったのは午後三時丁度であった。

 「それで、モビルスーツ隊はどうなっている?
  」

 「今、発進中のようですが、数は・・・、多い
  ですね。全力出撃かも知れません」

索敵担当のバート・ハイムの声は上ずっていた。

 「今、総旗艦(ゴンドワナ)から連絡が入りま
  した。全モビルスーツ隊出撃。敵は短時間で
  ケリをつける可能性があり。出し惜しみはす
  るなとの事です」

管制官のアビーがユウキ総司令の命令を報告する

 「だそうだ。全機出撃!コーウェル!お前も出
  番だぞ」

 「直衛にしたお前が悪いんだろう」

 「そうとも言う」

 「アホ!ほらっ、とっとと行くぞ」

格納庫に降りた俺達が「ジン検廚肇献礇好謄ス
を出撃させると後ろから部下のセンプウ部隊が付
いてくる。
全力出撃なので、今艦隊に残っているのはカガリ
の護衛の為に残っているガイの「暁」と彼に指揮
を任せた十二機のセンプウ部隊のみだ。
そして自衛隊を中心とした同盟国艦隊も二十機ほ
どの直衛機を除いて全力出撃をしていた。

 「たくさん出過ぎだ。戦場が狭くなるぞ」

 「一番損害が出るタイプの戦い方だ。敵さん何
  を焦っているんだ?」

まさか、アズラエル理事が停戦命令が出る前にケ
リをつけようとしているとは思わないので、不思
議に思いながらも編隊を組んで敵モビルスーツ隊
へ向かっていった。

 「ようし、敵の編隊だ。(パンドラの箱)もこ 
  れで在庫切れだ。行くぞ!」

お互いに(パンドラの箱)数百発ずつ発射してか
ら戦闘に入った。
やはり、連合側が三十機ほどの、ザフトも二十機
ほどの損害を受けてから乱戦状態に陥る。

 「とにかく、一機でも多く落とせ!」

 「「「了解!」」」

俺は部下に大まかな指示を出してから、近くにい
たデュエルダガーにビームガトリング砲を浴びせ
て撃破した後、その部下である二機のストライク
ダガーを一緒に撃破した。

 「いきなり三機!でもキリがない」

 「そうだな。お前を殺さないとキリが無い」

 「ササキ大尉かよ・・・」

 「今度こそ死ねい!」

「108ストライク」がファントムを飛ばしてき
た。
多分、これがササキ大尉との最後の戦いになるで
あろう。
俺とササキ大尉、どちらが勝つのか?
それは誰にもわからなかった。


(キラ視点)

 「えーい!落ちろ!」

キラは追加装備したドラグーンを飛ばして敵モビ
ルスーツを次々と落としていった。

 「うーん、6基しか装備していないからいまい
  ちだな」

 「キラ君、わがままよ。私達が地道に敵を落と
  しているのに」

 「そうそう。ビームライフルだけで大変なんだ
  から」

キラの両脇に位置しているアサギとマユラが文句
を言いながら、ストライクダガーを次々に落とし
ていく。
連合の宇宙軍のストライクダガーは胴体部にフェ
イズシフト装甲を採用しているのだが、最近ビー
ム兵器が主体になっているので、あまり役に立っ
ていないのかも知れない。

 「おっ、あの強い奴を発見!今度こそケリをつ
  ける!」

オルガのカラミティーがキラのフリーダムを発見
して攻撃を仕掛けてくる。

 「いい加減にしろ!」

オルガのしつこさにキレてしまったキラは砲撃を
開始して両者の一騎討ちが始まった。
カラミティー、フリーダム共に砲撃戦を繰り広げ
ながら高速で移動していた。

 「キラ君、速いわね」

 「目で追うのが精一杯」

 「ねえ、アサギ。どうしてキラ君はドラグーン
  を使わないの?」

 「さあ?」

 「キラ君!」

 「何です?」

マユラが呼びかけると、いつもと違って冷静な声
でキラが返事をする。
どうも、何時もと様子が違うようだ。

 「ドラグーンを使いなさいよ」

 「ああ、そうでした」

キラは六基のドラグーンを操りながら砲撃を続行
してカラミティーを追い詰めていった。

 「何でこんなに強いんだ?普通はファントムを
  使うと本体の操作が甘くなるはずでは・・・
  」

 「(頭の奥で何かが割れたような気がしたな。
  頭がすっきりとする)」

キラは更に攻撃の手を早めていき、ついにドラグ
ーンが両肩のビーム砲を削ぎ落とした。

 「何でこんなに・・・」

 「えーい!」

更に両腕を削ぎ落とし、両足が砲撃で削ぎ落とさ
れた。

 「なっ、何で・・・」

 「これで、最後だ!」

二基のドラグーンが同時にコックピットにビーム
を撃ち込んだ。

 「なっ、俺が何でーーーーー!」

ビーム砲の熱でオルガが焼かれたのと同時にカラ
ミティーが爆発した。

 「ふー、良かった。倒せて」

 「こらーーー!」

 「ヤマト二佐!あれは核動力機だったんだから
  気を付けて倒してよ。私達が子供が産めなく
  なったらどうするのよ!」

 「そんな・・・。折角倒したのに。褒め言葉の
  一つくらい・・・」

核動力機の取り扱いと敵対した時の為に、マニュ
アルらしきものが作られて配布されたのだが、撃
破する時には細心の注意を払いましょうとか、撃
破されたらNジャマーキャンセラーを切ってから
脱出しましょうとか、気休め程度の事しか書かれ
ていなかった。

 「大体、戦闘中にそんなに気を使えないよ」

 「安全装置は一応働いたみたいね」

ザフト製の核動力機は核爆発を防ぐ為に、安全装
置が積んであって、限界以上の衝撃を受けると停
止するようになっているのだが、本当に作動する
のか不安があったのだ。

 「でも、あれは敵の機体だから、安全装置があ
  るって保障はないんだよね?」

 「まあ、無いわよね」

 「向こうも事故とかを予想していれば、普通は
  積んであるわよ。多分・・・」

これ以上気にすると戦いに支障をきたすのでキラ
達は小隊を組んで戦闘に戻っていった。
キラ・ヤマト16歳、女性を引き連れて戦う事に
すっかり慣れたようであった。


(ホー三佐、ハワード一尉視点)

ホー三佐とハワード一尉はオーブ軍のパイロット
達を率いてゼロ艦隊のモビルスーツ隊と戦ってい
た。

 「てーい!」

ホー三佐はレイダーの鉄球をクローン兵のカラミ
ティーの顔面に叩きつけてから連装ビーム砲で止
めを刺した。 

 「よーし!」

 「なあ、ホー三佐殿」

 「何だよ?ハワード一尉」

 「笑って良い?」

 「何でだよ!」

 「そのレイダーの角・・・」

実はホー三佐はオーブ戦時から乗り続けていたレ
イダーを別の機体に乗り換えるように言われてい
たのだが、それを断り続けていたのだ。
連合には多数のレイダーとその改造機が配備され
ていたので、見分けるのが面倒くさいと言われて
いたからだ。
そこで、ホー三佐はレイダーに独自の改造を施し
、変形の邪魔にならないように顔に角を付け足し
たり、肩の形状を変えたりしていたのだ。
整備兵達は「乗り換えて貰った方が手間が掛から
ない」と嘆いていたらしいが。

 「角が6本のレイダーってどうなんだろう?肩
  も尖がっているし」

ハワード一尉は乗機のストライクで指揮官機らし
きバスターダガーをビームライフルで撃ち落とし
ながら、ホー三佐に聞いてみる。

 「あのな。俺の独自性を出しつつ、変形の邪魔
  にならないように改造するのは苦労したんだ
  よ」

 「でも、遠くから見るとそれほど変わりが無い
  」

 「格段の違いがあるんだよ」

隙ありだと思って攻撃を仕掛けてきたストライク
ダガーの小隊を二人で一気に撃破した。

 「まあ、いいけどさ」

 「お前ね。俺、一応上官」

 「でしたね。ホー三佐殿」

それなりに真面目にやるようにはなったが、ホー
三佐はやはりホー三佐であった。


(アスラン、ニコル視点)

アスランとニコルは艦隊の攻撃に赴きたかったの
だが、敵のモビルスーツ隊の数が多過ぎて足止め
を喰らっていた。

 「レイダー、カラミティー、フォビドゥン。数
  は多いし、パイロットはコンピューターのよ
  うに強いし」

 「リジェネレイト改の大型スキュラも持ち腐れ
  ですね」

ニコルがMAに変形してスキュラを放つと、レイ
ダー一機とストライクダガーが二機爆散した。 

 「強い奴発見!死んで貰うよ」

 「ちっ!ヨシさんがよく相手しているレイダー
  か!」

二人の前にクロトが乗ったレイダーが現れた。

 「核動力機が二機もあるねえ。楽しみだなー」

 「勝手に楽しんでいろ!ニコル、ここは任せろ
  !俺はこいつを討つ!」

 「わかりました。アスラン気をつけて」

ニコルは他の敵を撃ちに行った。
いくら強敵でも二機で倒すほどザフトに余裕は無
いからだ。

 「バカだね。二機で倒せばいいのに」

 「時間が無い。討たせて貰うぞ!」

アスランの頭の奥で何かが弾けてから戦闘に移行
する。

 「何!動きが変わったか?」

レイダーが鉄球を放つが、ジャッジメントはそれ
を余裕でかわしてからシールドの裏のビームナイ
フを投げつけた。

 「ちいっ!」

レイダーはそれをかわすが、ジャッジメントは腹
部のビーム砲を回避予定位置に放った。

 「やるね!」

だが、それすらもレイダーは避けてしまう。

 「今だ!」

ジャッジメントはビームサーベルを抜いて正面か
ら突撃をかけた。

 「バーカ!正面過ぎだよ!」

レイダーが口からビーム砲を放つと、アスランは
ジャッジメントのリフレクターを正面に展開しな
がら急接近した。

 「しまった!」

ジャッジメントはリフレクターをレイダー顔面の
ビーム発射口に押し付けると、逃げ道の無くなっ
たビームがレイダーの顔を破壊した。

 「ちっ、メインカメラ損傷って!あばよ」

レイダーはMA体型に変形してから逃亡を謀ろう
とする。

 「逃がすか!」

ジャッジメントがビームナイフを数本投げつける
とレイダーのスラスターに突き刺さりスピードが
急に落ちた。

 「そんな、バカな・・・」

 「これで、終わりだ!」

ジャッジメントが腹部から撃ったビーム砲がレイ
ダーを直撃した。

 「ぼっ僕はね・・・。簡単には死なない・・・
  」

レイダーは核爆発する事無く普通に爆散した。

 「ふう、大丈夫だとは言われてもヒヤヒヤもの
  だ」

アスランは安堵の表情を浮かべながら、他の敵を
探しに行った。


(三十分後、カザマ視点)

ササキ大尉との一騎討ちを始めた俺だったが、何
故かササキ大尉が強くなっていて苦戦を強いられ
ていた。
今の全体的な戦況は連合軍艦隊の急接近により、
近距離で多数の艦が撃ち合っている状態で先の戦
闘に比べて多数の損害を短時間で生み出していた

モビルスーツ隊の戦闘も広範囲に散開してしまっ
てあぶれたモビルスーツがお互いの敵艦艇に攻撃
を開始して完全に混戦状態に陥ってしまっていた

 「正直、やばい状態だな・・・」

 「人の心配より自分の心配をするんだな」

 「ええい!」

ファントムの攻撃と「108ストライク」の攻撃
を同時にかわしながら、手榴弾を周りに投げつけ
た。

 「二度も同じ手を喰らうか!」

「108ストライク」は余裕でかわしたつもりの
ようだが、本当の目的は「108ストライク」で
は無く、ファントムであった。

 「あれ?動かない・・・」

十二機のファントムの内、半数ほどが動かなくな
ったようだ。 

 「ちくしょう!だが・・・」

ササキ大尉はシールドの裏から予備のファントム
を放出して攻撃を再開した。

 「トリケロスの改良型は使わないのか?」

 「あれはもう装備していない。ドラグーンの方
  が役に立つからな」

 「お前が使っていればどちらでも同じだろう」

 「カザマ!殺してやる!」

俺達の一騎討ちはなかなか終わる気配が無かった


(同時刻、ゼロ艦隊旗艦「ピースメーカ供彜脇
 )

ゼロ艦隊は第三艦隊と合流しながらザフト左翼艦
隊に急接近していた。

 「いよいよ、温存していた(トールハンマー)
  を発射する時がきたな。ザフトの連中とそれ
  に味方する愚か者共め。後悔するがよい」

 「ジブリール司令、(トールハンマー)発射準
  備完了です」

 「そうか。目標はザフト左翼艦隊アスハ隊旗艦
  (クサナギ)だ!」

 「目標(クサナギ)」

イアン艦長の復唱でエネルギーが充填されてから
「トールハンマー」なる巨大ビーム砲は発射され
た。

 「砲身が持たなくて10発しか撃てないからな
  。大切にタイミングを計って撃たなければな
  」

ジブリールは一人つぶやくのであった。


(同時刻、ヴェサリウス艦内)

 「アデス艦長、どうも状況的に不味いぞ」

 「そうだな。目標は前方のドレイク級護衛艦」

ヴェサリウスが発射した主砲が前方の護衛艦を貫
いて爆発した。
あれでは、もう助からないだろう。

 「敵はバカか!こんなに接近してきやがって。
  」

 「フレッチャー級の駆逐艦隊が接近中だ。ラコ
  ーニ隊に対応させろ!」

 「俺も艦長をやりたいな」

 「俺の仕事を取るなよ」

そんな話をしていた時、巨大なビーム砲が左側を
突き抜けていった。

 「何だ?あれは!」

ビーム砲が通った後に複数の艦船とモビルスーツ
が爆発する。 

 「被害はどの艦隊だ!」

 「(クサナギ)を狙ったものだと思われます」

 「被害はどうなっているんだ!」

 「(クサナギ)には命中しませんでした。です
  が、隣りの(イザナミ)に直撃して艦は轟沈
  しました。その他に二隻のローラシア級も巻
  き込まれています」

担当士官からの報告でヴェサリウス艦内に衝撃が
走る。

 「あの化物を止めないと被害が広がるな」

 「あれだけ巨大なビーム砲だ。チャージに時間
  がかかるだろうから、誰かに沈めるように伝
  えるんだ!」

 「オキタ副司令、無理だよ。我々の艦隊のモビ
  ルスーツ隊の損害率が四割を超えたし、艦隊
  の被害も三割に達している。これでは・・・
  」

 「クルーゼ司令とは連絡が取れるか?」

 「無理だ。通信が届かん」

 「わかった、俺は指揮権を預かっている身だ。
  副司令権限で命令を出す!全艦突撃!」

 「おい、オキタ副司令!」

 「あれを放置していたら俺達は全滅だぞ!全艦
  突撃だ!責任は俺が取る!」

 「了解・・・」

クルーゼ司令は艦隊の指揮をオキタ艦長に一任し
ていたのだ。
別に彼の指示に従う事は命令違反ではないし、あ
れをどうにかしなければいけない事は確かなのだ

 「アデス艦長、敵砲艦への攻撃命令は打電し続
  けろ。誰かが聞いていて倒してくれるかも知
  れない」

 「了解」

 「全艦隊列を整えて突撃だ!」

左翼方面の戦局は最終局面を迎えつつあった。


(同時刻、アークエンジェル艦内)

 「いちいち細かい事は言わないわよ!近づいて
  くる敵艦は攻撃しなさい!ローエングリンは
  大型艦のみを砲撃、残りは任意でお願い。チ
  ェン!目標の算定は任せるわよ」

 「了解!」

オキタ副司令から突撃命令を受けたタリア分艦隊
副司令兼艦長は、オーブの残り二隻の戦艦と自衛
隊が主力の同盟国艦隊と隊列を整えてから全速で
突撃を敢行した。

 「無茶ですよ。タリア副司令!」

 「アーサー!これは命令なのよ!どのみちあの 
  化物ビーム砲を何とかしないと大変な事にな
  るわ」

エターナル級二番艦(フューチャー)艦長のアー
サー・トラインが悲鳴のような声を上げて抗議を
するが、タリア艦長に怒鳴り返されてしまった。

 「わかりました!近づいた敵は全部撃ち落とせ
  !」

半ばやけくそ気味にアーサー艦長が指示を出して
いく。

 「チェン、我々が接近するまでに後何発くらい
  撃たれそう?」

 「専門家としての予想ですが二〜三発くらいか
  と・・・」

 「モビルスーツ隊の一部は敵艦隊の攻撃に入っ
  ているんでしょう?」

 「巨大なビーム砲を装備した砲艦はゼロ艦隊な
  る特務艦隊の旗艦らしく、護衛が多くてなか
  なか近づけないそうです」

接近するたびに、少しずつ詳しい情報が管制官の
アビーに入るのだが、誰もが目前の敵で手一杯で
どうにもならないようだ。

 「クルーゼ司令は何をやっているの?」

 「(エンデュミオンの鷹)との勝負がつかない
  らしく・・・」

 「アスラン達は?」

 「敵のモビルスーツ隊に阻まれています」

 「カザマ君は?」

 「ドラグーン装備の敵機と戦い続けているそう
  です」

 「コーウェル総隊長は?」

 「彼が指揮をとらないとルーキー達が全滅して
  しまいます」

普段、あまり目立たない副長と状況の確認をして
いた時に、再びビーム砲が脇をすり抜けていった

 「ふう、私達が標的じゃなかったわね」

 「自衛隊の艦隊に直撃!(イセ)が轟沈。護衛
  艦四隻も巻き込まれたようです」

アビーから直ぐに報告が上がった。

 「タリア艦長、敵艦に接近するまでに後一撃で
  すか・・・」

 「副長、宝くじみたいなものよ。運が良ければ
  当たるわよ」

 「運が良ければですか?」

 「何もわからないまま死ねるでしょ」

 「・・・・・・」

初めて実戦を経験する副長はタリア艦長の考えに
ついていく事が出来なかった。


(同時刻、ゼロ艦隊旗艦「ピースメーカー供彜
 内)

 「ふふふ、なかなか大したものではないか。敵
  の戦艦が面白いように沈んでいくわ」

ジブリールは次々に上がってくる戦果に機嫌を良
くしていた。

 「ですが、敵艦隊が高速で突撃中です。目標は
  我々かと」

 「モビルスーツ隊と護衛の艦隊で阻止しろ!」

 「やってはいますが、このビーム砲の特性上、
  前面がガラ空きですので」

 「モビルスーツ隊なら発射時に直ぐに待避でき
  るだろう?」

 「ゼロ艦隊のクローン兵は残存二十一機のみで
  すし、残りのモビルスーツ隊も損害が七割を
  超えています。第八艦隊ですら損害は五割に
  近いそうで・・・」

 「何で我々にだけそんなに損害が出るんだ?お
  かしいだろうが!」

 「我々は集中して狙われているようです」

 「ええい、敵艦隊の旗艦を落とせば問題は解決
  する!目標はヴェサリウスだ」

 「角度の関係上、味方艦を巻き込んでしまいま
  すから無理です!」

 「うるさい!命令だ、撃て!戦争に犠牲はつき
  ものだ!」

そう言うと、ジブリール司令官は火器担当の士官
を押しのけてから「トールハンマー」を操作して
スイッチを押した。

 「死ね!宇宙の化物共め!」

巨大なビーム砲がヴェサリウスに向けて発射され
た。


(同時刻、「ヴェサリウス」艦内)

 「うん?」

 「どうしたんだ?オキタ副司令」

 「回避だ!」

 「えっ?」

 「緊急回避だ!どちらでもいいから避けろ!」

それは船乗りとしてのオキタ副司令の勘だったの
だろう。
総舵手から舵を奪ったオキタ副司令が緊急回避を
行った瞬間、巨大なビーム砲がヴェサリウスの左
舷を抉りながら突き抜けていった。
直撃は避けたが、左舷の機関部が爆発して艦内を
大地震のような衝撃が襲い、全乗組員が投げ出さ
れる。

 「うーん・・・。生きているか」

暫らくして目を覚ましたアデス艦長は自力で起き
上がるが額を切ったらしく、出血が止まらないで
いた。

 「オキタ副司令、大丈夫か?」

ブリッジ内を見渡すと、緊急用の薄暗い照明の下
で多数のブリッジ要員が骨折や怪我を負ってうめ
き声を上げていた。

 「おーい、アデス艦長・・・」

か細い声を頼りに周りを探すとオキタ艦長が床に
倒れていた。

 「大丈夫か?」

 「大丈夫と言いたいが・・・。ぐふっ」

オキタ艦長は口から大量の血を吐いた。

 「飛ばされた時に腹部を強く計器か何かにぶつ
  けてな。肋骨が折れて内臓に刺さったらしい
  ・・・」

 「すぐに軍医が呼ぶから!」

 「俺はいいから若い連中を連れて退艦しろ・・
  ・。この船はもう駄目だ・・・。機関部の連
  中を早く待避させるんだ。お前は艦長なんだ
  から早く総員退艦命令を出せ・・・」

アデス艦長は総員退艦命令を出しながら、オキタ
副司令がこの船に残るつもりである事を察して、
自分も残る決意をする。

 「なあ、アデス。あそこの席に俺を座らせてく
  れ・・・」

 「火器管制席にですか?」

 「爆沈するまでに一発くらい撃てそうだ。距離
  はギリギリだが、あの砲艦に当たる可能性が
  ゼロではないからな・・・。俺は・・・砲撃
  の成績が・・・優秀だったんだよ」

 「わかりました」

アデス艦長は周りにいた士官と協力して静かにオ
キタ副司令を火器管制席に座らせた。 

 「ありが・・・とうよ」

 「いえ・・・。後輩として当然の事をしたまで
  です。オキタ先輩」

 「先輩は・・・やめろって言った・・・だろう
  が・・・」

 「そうでしたね。いえ、そうだったな。オキタ
  副司令」

 「総員退艦準備整いました」

 「ご苦労!俺ものこ」

 「待て!」

オキタ艦長が重傷人とは思えないような大声を上
げる。

 「アデス副司令代行・・・、無事な戦艦に移っ
  て・・・艦隊の指揮を継承しろ・・・。これ
  は事前の・・・取り決めであり、命令だ・・
  ・。拒否は許さない」

 「ですが・・・」

 「お前、家族がいるだろうが・・・。俺はもう
  一人だから・・・。それに・・・、これでは
  助かるまい・・・。だから・・・、大好きな
  戦艦に・・・残らせてくれよ・・・」

 「先輩!」

 「お前には・・・重要な仕事が残っている・・
  ・クルーゼのバカの面倒を見続ける事・・・
  。カザマのバカとその部下のガキ共の面倒を
  見続ける事・・・だ。俺の・・・お守りの仕
  事は・・・これで終了だ・・・」

 「わかりました。オキタ副司令の武勲をお祈り
  します」

 「ありがとうよ・・・。さらばだ・・・、アデ
  ス」

火器管制席で主砲の照準を始めたオキタ副司令の
背中を見ながら、アデス艦長は涙を流しながら敬
礼をして艦を退艦した。

 「ふう・・・。アデスの奴、わがまま・・・言
  いやがって・・・。しかし、長かったな・・
  ・。これで、ようやく・・・家族の元に帰れ
  るんだ・・・」

オキタ艦長は自分の人生を振り返りながら主砲の
照準を合わせていた。
コーディネーター差別を避けるようにしてプラン
トへ上がり、アカデミーを卒業してから民間用の
輸送船の艦長を経てザフトに入隊して、宇宙用艦
船一筋でやってきた。
プラントで知り合った妻と結婚して子供も生まれ
幸せの絶頂だったが、連合にユニウスセブンへの
核攻撃で研究員として働いていた妻とそこで生活
していた子供を失ってしまい、それからの自分は
一隻でも多くの連合軍艦艇を葬る事を目標に艦長
一筋でやってきた。
ザフトでの生活は楽しい仲間とも出会えてそれな
りに楽しかったのだが、やはり、家族の事は忘れ
られなかったのだ。

 「これで・・・、良かったのかもな・・・。連
  合との停戦は・・・正しいとは思うのだが・
  ・・、俺の感情が許せないかも・・・知れな
  いからな・・・。理性が感情に負けて・・・
  おかしな事をして・・・カザマ達と敵対する
  事だけは・・・避けないとな・・・」

口からあふれ出てくる血を拭くこともしないで照
準を合わせ終わってから、軍服のポケットから一
枚の写真を取り出してそれに話し掛けた。

 「ユウコ、リュウイチ・・・。あと少しで・・
  ・行く・・・からな・・・」

オキタ副司令が発射ボタンを押して最後の主砲が
放たれたのと同時にヴェサリウスは大爆発を起こ
して沈んでいった。


(同時刻、「ピースメーカー供彜脇癲

 「ふはははは!クルーゼの旗艦が沈んだぞ!ざ
  まあないな」   

「トールハンマー」を左舷に喰らったヴェサリウ
スが小規模の爆発を繰り返しながら、最後を迎え
ようとしていた時にジブリール司令は大笑いをし
ていた。

 「ですが、味方の駆逐艦を二隻も巻き込みまし
  た」

 「イアン艦長、一将成って万骨枯るだ。気にす
  る事はない」

 「(それに、敵の船乗りに対する礼儀すらない
  のだな)」

イアン艦長はジブリール司令に対する嫌悪感を隠
しながら艦の操舵を続けている。

 「ジブリール司令、敵艦隊が殺到してきます!
  」

索敵担当士官から衝撃の報告が入ってきた。

 「どうしてだ!」

 「次席指揮官の指示か、旗艦を沈めた我々を許
  さないという事でしょうな」

イアン艦長はジブリール司令の狼狽振りに、自分
の危機でもある事を忘れて笑いそうになりながら
事情を説明した。
アデス艦長は新旗艦である「パルテノン」にまだ
乗船出来ていなかったが、オキタ副司令の薫陶を
受けた若い艦長達が「ピースメーカー供廚里澆
狙って砲戦を仕掛けてきたのだ。

 「早く、撃ち返せ!」

 「再チャージに五分かかります」

 「逃げるんだ!」

 「今、後ろを向いたら滅多打ちですよ。回避で 
  時間を稼ぎます」

 「駄目だ!護衛艦艇を前に出せ!」

 「護衛艦艇ですか・・・」

命令通りに護衛艦隊を前に出すが、集中砲撃とモ
ビルスーツ隊の攻撃で次々に沈んでいく。

 「ええい、第三艦隊はどうした!」

 「指揮官のフェンダー中将が戦死して、指揮系
  統が混乱しています。戦闘機体型のMAに沈
  められたとかで・・・」

補充戦力としてジブリールが優先指揮権を持って
いた第三艦隊は指揮官戦死の混乱と練度不足を露
呈して、第八艦隊とゼロ艦隊との連携を崩してお
荷物状態に陥っていた。

 「とにかく、時間を稼ぐんだ!」

だが、状況は最悪であった。
今、左翼艦隊で指揮系統を維持しているのは第八
艦隊だけであり、彼らは自分達の防御で精一杯で
あった。

 「敵艦のビーム砲が接近、直撃コースです」

 「何だと!」

この時、爆発寸前のヴェサリウスからビーム砲が
発射されて「ピースメーカ供廚膨招發靴拭

 「被害は?」

 「エネルギー伝導管をやられました。(トール
  ハンマー)発射不能です」 

火器管制担当の士官から絶望的な報告が入る。
オキタ副司令の執念の一撃がこの艦の命を奪って
しまったのだ。

 「では、私は他の艦に移って指揮を継続するか
  な。イアン艦長、君も付いてきたまえ」

ジブリール司令は自分だけで逃げる事に気が引け
たのか、イアン艦長を連れて艦を脱出しようとす
る。

 「自分は艦に責任を持つ立場ですのでご自分だ
  けでどうぞ」

イアン艦長は自身の職責と半分諦めの境地から艦
に残る事をジブリール司令に宣言した。
もう、ジブリールと一緒にいたくないらしい。

 「そうか、では私は・・・」

二人が話していた間にも多数のビーム砲が「ピー
スメーカ供廚膨招發靴涜山欧鯊腓くしていった

 「機関部に命中、艦の速度が30%低下」

 「左舷に直撃、付近の防御火器を根こそぎやら
  れました」 

 「私は脱出して他の艦で指揮を執るからな」

 「敵モビルスーツが二機、急速接近中」

ジブリール司令が逃げ出そうとした時、艦橋の正
面に二機のセンプウが現れた。

 「よくも、私達の船をーーー!」

 「オキタ副司令の仇ですわ!」

二機のセンプウはドラグーンとエクステンション
アレスターを同時に発射する。

 「そんな!こんなところでーーー!」

ドラグーンのビームがジブリール以下の艦橋要員
を殺傷して、エクステンションアレスターがブリ
ッジ内を完全に破壊した後、多数のビーム砲が「
ピースメーカー供廚魎咾い謄璽躊和盍艦は爆散
したのであった。


(同時刻、第八艦隊旗艦「メラネオス」艦内)

ゼロ艦隊旗艦「ピースメーカ供廚侶眥世肇献屮
ール司令の戦死。
そして、第三艦隊司令官戦死と艦隊の指揮系統の
混乱で左翼艦隊は崩壊の危機を迎えていた。

 「第三艦隊には副司令がいただろう?」

 「サップス准将なら、その直後に(オクラホマ
  )と一緒に沈みました」

 「向こうも大損害のはずなのに・・・」

 「指揮官が生きているのが大きいです。ヴェサ
  リウ撃沈以降も旗艦を移して指揮を継続して
  います。逆にこちらは艦隊もモビルスーツ隊
  も指揮官が一番に狙われてバラバラで戦って
  いる部隊が増えてきています」

 「とにかく、残存艦艇に集合命令を出せ!この
  まま戦っていたら全滅だぞ」

 「ハルバートン中将、その任務は私にお任せ下
  さい」

突然、ノイズ混じりの音声がブリッジの正面モニ
ターから映像と一緒に流れてくる。

 「プリンス准将かね?」

 「はい、ドミニオンでゼロ艦隊と第三艦隊の残
  存艦艇の指揮系統を回復させて戦況の建て直
  しを図ります。ドミニオンには適任だと思い
  ますが」

 「何を考えている?」

 「生き残る事ですよ」

 「そうか、任せよう」

 「お任せ下さい」

映像が切れた後、ドミニオンは任務の為に第八艦
隊から離れていく。

 「何を考えていると思う?」

 「さあ?今の時点ではなんとも・・・」


 「(ジブリールの奴死にやがったな。これはチ
  ャンスだ!どちらが勝つにしても戦力を集め
  ておいた方が良い。具体的な事はラミアス大
  佐とバジルール少佐にやらせておけば良いの
  だ。俺は絶対に生き残るんだ!)」

ジブリールが戦死して艦隊が崩壊の危機を迎えて
いても、プリンス准将の暗躍は終わりそうになか
った。


(同時刻、カザマ視点)

ササキ大尉と一騎討ちを続けている間に戦況は劇
的な変化を遂げていた。
敵艦隊の大攻勢、ヴェサリウスの被弾・撃沈、オ
キタ副司令の戦死とその後の反撃によるジブリー
ルの戦死と指揮下のゼロ艦隊と援軍に入っていた
第三艦隊の崩壊、その崩壊した艦隊に追撃をかけ
る味方とそれを阻止に入った第八艦隊との間で始
まった新たな死闘で新たに増え続ける味方の損害
で周りには多数の残骸が浮かんでいた。
本当はササキ大尉を放って戦況の把握をしたいの
だが、彼は俺を見逃してくれないようだ。

 「カザマ!指揮官が部下を放っておいていいの
  か?」

 「だから、早く死んでくれよ!ササキ大尉!」

 「嫌だね。ジブリールのバカも薬中のオルガと
  クロトも死んだようだから、俺はお前を殺し
  たらドミニオンに帰るのさ!」

 「ああ、そうかい!」

ビームガトリング砲で丁度6基目のファントムを
破壊した所で、ビームガトリング砲にビームの直
撃を喰らったので緊急排除をしてシールドで防御
する。
理由はわかないが、ササキ大尉が以上に強くなっ
ていて直撃はまだ喰らっていないが、多数のファ
ントムのビームが装甲を掠って「ジン検廚聾た
目がボロボロであった。

 「追い詰められているな。カザマ、いい気味だ
  !」

 「趣味悪いよな、女にモテないぞ!」

 「ふん、俺が地位と権力を掴めばいくらでも女
  は寄ってくるさ!」

 「あっ、そう」

会話は余裕そのものであったが、俺自身は危機的
状況を迎えていた。

 「死ねい!」

 「しまった!」

ファントムのビームが「ジン検廚留βを破壊し
たので、俺は急いでOSを微調整してバランスを
保ちながら、予備のビームライフルで7基目のフ
ァントムを撃ち落した。

 「後、5基か・・・」

 「全部落とされる前にお前のモビルスーツが達
  磨になっているさ」

 「それは、やってみないとわからないだろうが
  !」

更に一基を撃ち落すと同時に左足が吹き飛び、追
い詰められていく。

 「カザマ!ざまあないな。後少しで戦死だな!
  」

ササキ大尉の勝ち誇ったような声を聞きながら俺
はこの危機をどう乗り越えるのか考えて懸命に考
えていた。
他の艦隊がどうなっているのかはわからないが、
左翼艦隊の戦闘は終焉を迎えつつあり、我々の戦
闘結果が全体の勝敗を決する可能性があった。今
の所は我々の優位に傾いているが、お互いに被害
を多数受けていて簡単に戦況が傾く可能性を秘め
ていた。
果たして、俺は生き残れるのか?
みんなは無事なのか?
それはまだわからなかった。


         あとがき

光波シールドをぶつけて干渉させる話は科学的検
証は一切無しなので、突っ込まないで下さい。
後、核動力機を普通に撃墜するとどうなるのかが
いまいちわからなかったので、安全装置が付いて
いるという設定にしました。
アスランが最後にジャスティスを自爆させた時の
事は特別の状況でしたし。
次回はこれでひとまず終れるのか?
終れないのか?はわかりません。

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