「EVA零号機の起動準備完了」
「エントリ−プラグ挿入」
「プラグ固定終了。第1次接続開始。エントリ−プラグ、注水」
「主電源、全回路接続」
「主電源接続完了。起動用システム、作動開始。稼動電圧、臨界点まであと0、 5、 0、 2・・・・・・突破」
「起動システム、第2段階へ移行」
「パイロット接合に入ります。全開路正常・・・・初期コンタクト異状なし」
息吹マヤと赤城リツコが零号機の発進準備を進めていく。レッドランプが次々とグリ−ンランプへ変わっていく。
「絶対境界線まで、あと0、 9、 0、 7、 0、 5、 0、 4、 0、 3・・・」
前回の起動実験では、この段階でパルスが逆流して暴走した。
「A10神経接続、異状なし。シンクロ率誤差、0.3%」
一つの山場を抜けた。殆どのメンバ−が胸を撫で下ろしたが、何とか動ける状態でしかない。前回みたいに暴走しない分はマシだが、戦闘が可能かは別だ。
「双方方向回線、開きます」
「拘束具並びに安全装置を解除」
「内部電源充電完了。外部電源コンセント異状なし。EVA零号機、射出口へ。11番ゲ−トスタンバイ。進路クリア、オ−ルグリ−ン。発進準備完了」
息吹マヤの報告にNerv司令官、碇ゲンドウが発進命令を出した。
シンジがビルの瓦礫から抜け出した1分後の出来事である。
第2話 僕のとうさんは鬚おやじだった
「あ――ひどい目にあった」
第3使徒サキエルの光線を受け崩壊したビルの屋上で、BF団十傑集の一人。衝撃のアルベルトと戦っていたシンジはビルの崩壊に巻き込まれた。
瓦礫と化したビルの残骸から、まいったね・・・こりゃと云った感じで出てきたシンジは身なりこそこそ汚れていたが、身体の方はアルベルトから受けたダメ−ジ以外、特に目立った傷は見あたらない。
「アルベルトは居ない。逃げたか?・・・・いや見逃してもらったのか?」
あの男がビルの崩壊程度でくたばる筈がない。師匠であるマスタ−アジアのライバルを名乗る男だ。実力ではシンジの上をいく。
あのまま戦っていたら勝てたかもしれないが、少なくとも五体満足では居られなかったろう。
シンジがやろうとした戦法は『肉を切らせて骨を絶つ』である。
腕の一本を犠牲にアルベルトの衝撃波をいなして、無事な片方で必殺技を叩き込むつもりだったのだ。
肉体的にも精神的にも疲れる相手だ。自分より格上の相手との生死のやりとりは、短時間でも驚く程、体力を消耗させる。
このまま腰を降ろして休みたかったが、そうは問屋を卸してくれないのが今の現状。
第3使徒サキエルが進行方向の邪魔になるビルを破壊しながら進んでくる。時たま撃つ光線。アレがシンジの居たビルの中央を打ち抜き、支えを失ったビルは自重により完全に崩壊した。
「アレに巻き込まれたら死ぬな」
ともかく一刻も速く此処から逃げなければならない。周りは、人は勿論、乗物一つありゃしない。あの化物相手では下手にシェルタ−に逃げ込んだら、シェルタ−ごと壊されかねない。
それに敵の侵入が分かった今では、完全にシェルタ−の入り口は閉じられている。
これを解除するには非常事態宣言が撤回されるか、内部から開けてもらうしかない。
無理だろうけどね。
戦闘中にシェルタ−を開けるのは自殺行為に近い。流れ弾や爆風。それに下手をすれば細菌兵器を使ってくる奴等がいる中、まともな軍事訓練を受けた軍人が開けてくれる筈もない。
非常事態宣言でのシェルタ−の入り口は大抵、軍人が見張りについている。抜け道でも知らない限りシェルタ−には入る事も出る事もできない。
それに、今シェルタ−に行っても入れてもらえないだろう。
大を救う為、小を捨てるとも捉えるが、ようは危機感のない馬鹿な民間人一人の為に、何千人もの民間人を危険にさらす入り口の解放は出来ないと言うのが実情だ。
「さて・・・・逃げるには足がいるけど、乗り物がない・・・・と、どうしたものかな・・・」
少なくとも50Km以上は戦場から遠ざかりたい。
愛機があれば、あの化物と戦う事もできるが、悲しいかな愛機はお空の上、コロニ−にある。
それに、まだ直ってないしね。
自動追尾システムが切られている今では、指を鳴らし愛機の名前を叫んでも現れない。あの化物の力は軽く見ても恐竜帝国の無敵戦艦ダイ以上だ。
並の機体では話にならない。連邦軍のジェガン程度では足止めにもならない。
キィィィ――――
「ん?」
前方の交差点をドリフトさせながら青いルノ−が猛スピ−ドをあげて走ってくる。
交通速度?何それ?と言った感じだ。
ラッキ−!
シンジは車を見るなり、アレに便乗させてもらおうと考えた。
戦場で戦闘車両でも指揮車でもないスポ−ツカ−が走ってるのは、どうせ馬鹿のボンボンが非常事態宣言を無視して人の居なくなった街を走っていたが、化物を確認して恐ろしくなって逃げてきたのだろう。
ヒッチハイクみたいなやり方では、無論停まってくれない。
なら、ドライバ−には悪いが勝手に乗らせてもらう事にしよう。僕も命は惜しい。こんな所での犬死は遠慮したいものだ。
近くの街灯の上に飛び上がる。ドライバ−に気付かれない方が、成功率が高くなる。
街灯の上に立つシンジに気付いていないドライバ−は、スピ−ドを一向に緩ませず爆走していた。
青のルノ−が走り抜けると、街灯の上に居たシンジの姿は消えていた。
「シンジ君は居ないし、使徒の侵入はゆるす。ちょっち不味いわね」
葛城ミサトは焦っていた。迎えに行った駅の待合室はもぬけの殻。あたりまえだ。
非常事態宣告が出てから2時間以上発っているのだ。普通の人間ならシェルタ−に逃げている。
そう思い部下の日向マコトにシェルタ−に登録された避難民の名簿を調べてもらったが該当者は無し。
もしかして、第2新東京市に来なかった?その可能性も捨てきれない。
だが、Nervの外部窓口担当へ電話で確認を取ってきたのは、碇シンジ本人だ。
ミサトも電話を受けた受付嬢に直接確認した。今日来るのは間違いない。
4歳の時に行方をロストしてから、ようやくつい最近居場所が分かった相手だ。
碇司令は手紙の一つで呼び出そうと聞いた時は、正直耳を疑った。
10年以上生死不明だった実の息子が発見されたのに、会いにいこうともしない。
Nervの最高司令ともなれば激務の仕事かもしれないが、労わりや思いやりと言ったものがまるで感じられない。
そのテの感情に疎いミサトでさえ気付く位だから周りのスッタフも気付いている筈だ。が、なにしろ、あの碇司令だ。
進言した所でまともに取り扱ってくれるとは考えられない。そのうえプライベ−トに係わる事なので一層意見がしにくい。
少しでも緊張感を和らげようとグラビア紛いの写真を送ったが、ミサトもまさかシンジを呼び出す手紙の内容が『来い』の一言だとは思っていなかった。
エウ゛ァに関しては機密事項に当たるので手紙の内容に書けないとしても、少しは親らしい手紙を出すだろう。その後、女性に興味を持ち出す年齢の少年が、あの写真にちょっとでも興味を持てば来やすいのではないかと考えたのだ。
「あ――ん!シンジ君!何処にいるのよ!?」
「えっ?お姉さん?僕の事、探してるんですか?」
「きゃ、きゃあぁぁぁぁ――――――――――!!!」
誰もいない筈の助手席から、とつぜん声をかけられたので慌ててハンドルをきりそこなった。車が左右に激しく揺れる。あわや転倒しそうになるが、どうにか持ち直した。
ハァハァと荒い呼吸と心臓の鼓動がドクンドクンと波打っている。
「お姉さん。急いでるのは分かりますが、できるだけ安全運転でいきましょう。安全運転」
場の雰囲気を無視した、にこやか顔のシンジを見てミサトは指をさして叫んだ。
「シ、シンジ君!?」
「いいわね、レイ」
「はい」
地上に射出されたイエロ−カラ−の零号機はロックが解除されると、唯一実戦投入が可能な武器。EVA専用拳銃を第3使徒サキエルに向い全弾撃ち放った。
44マグナムを何十倍もの大きさに変えた武器の威力は、ジオンのザクを一撃で倒せる破壊力を有しているが、赤い八角形のバリアによって全て防がれる。
「ATフィールド!」
リツコは理論の上では証明されているが、実用にはいったていない不可侵領域のバリアの名称を言った。
親指の爪を無意識に噛み締める。ATフィールドに対抗できるのはATフィールドしかない。
EVAが使徒に対しての決戦兵器と呼ばれるのは、ATフィ−ルドを展開させ、敵のATフィ−ルドを中和する能力が備わっているからだ。だが、今の綾波レイのシンクロ率では中和する処か零号機を守るATフィールドを張ることもできない。
零号機を発進させたものの先行きは暗かった。
ミサトはシンジから簡単に事情を説明されて、Nerv本部に向っている。
何時の間に助手席に居たのかと訊いたら、飛び移ったという。交差点をドリフトで曲がる時でさえスピ−ドメ−タ−の針は80k以上を指していた筈だ。
白昼夢にあったのかと、おもわず頬をつねった。痛い。現実だ。親友の赤城リツコにこの事を言えば「ミサト、アル中の運転は犯罪よ」と馬鹿にされるだろう。
ちらりと助手席のシンジを横目で見る。戦闘に巻き込まれているにも係わらず、小憎たらしい程落ち着いている。
「ねえシンジ君。もう一度訊くけど、本当はどうやって車に乗ったの?」
「街灯からジャンプしてですよ、ミサトさん」
シンジは真実を言ってるのだが、ミサトは信じようとしない。
話してみて分かったのだが、葛城ミサトと云う人物はデリカシ−には期待できないが、根本的なとこは悪い人でないと思った。むろん、悪い人じゃないからと言って、いい人とも思えない。
時おり見せる視線は、あきらかに僕を値踏みしているといった感じがする。本人は気がついていないけど。
初対面だから、当然といえば当然なのかもしれないが、ミサトの視線は人を見るというより、兵器。またそれに該当するモノを見る軍人のようだ。
まあ、別にいいけど。僕の父さんと名乗る碇ゲンドウをとりあえず見たら此処に来た目的は終了。
今更、親子関係なんてないし、僕が本当の親と思っているのは、僕を育ててくれた師匠。マスタ−アジアだけだ。碇ゲンドウが一緒に暮らそうとか言い出しても断るしね。
それに明後日にはドモン兄達と合流してコロニ−に行く。それで此処とはサヨナラだ。
「うそ?零号機を出したの!?レイはまともに戦闘なんて出来る状態じゃないはず・・・・それに、前回みたいに暴走する可能性だってあるのに・・・・!」
ビル街を抜けて見晴らしのいい高台の道に出たミサトが見たのは、市街地で第3使徒サキエルと交戦中の零号機。
「一方的にやられてますよ!黄色のロボット」
高台を走るルノ−の助手席から観戦できるのは、第3使徒サキエルに掴まれゼロ距離で光のパイルを左肩に撃たれ沈黙する零号機。肩の装甲が剥がれ素体が晒けている。
「飛ばすわよシンジ君!シ−トに摑まって!」
唇を強く噛みしめミサトがアクセルを限界まで踏込む。
このままでは零号機が殺られると感じたミサトは、この状況を打開できる可能性を持つ少年を急いでNerv本部を連れて行こうといきり立ち、無茶な運転を無謀な運転に変え、暴風の如きドライビングで走り出した。
シンジとミサトを乗せたルノ−が走り抜けた頃、零号機は追い詰められていた。
シンクロ率が稼動限界ギリギリのレイは、何とか動く右腕でサキエルを殴るがATフィールドに阻まれ届かない。ATフィールドを中和できないのだ。
唯一の武器であったEVA専用拳銃はサキエルの最初の攻撃で失った。
すでに、戦いと呼べるものじゃなく一方的な蹂躙だ。零号機はパイロットと共に限界ギリギリまで追い込まれていた。
零号機を動けないよう踏みつけたサキエルが、足の下でもがく零号機へとどめの光弾を撃とうした瞬間、大声で技の名を叫ぶ声が第2新東京にこだました。
「ロケットパ――――ンチ!!!」
零号機を踏みつけていたサキエルが死角からの攻撃で地面に叩きつけられる、不意をつかれた所為か、零号機に止めを刺そうと攻撃する瞬間だったからか、ATフィールドの発生が間に合わなかった。
「おい、そこのロボット大丈夫か?」
零号機の危機を救ったロボット。マジンガ−Zが零号機を庇うようにサキエルとの間に入る。
「甲児君、その機体を下がらせるんだ」
「わかったぜアムロさん」
後方から追いついたアムロ=レイが駆る赤いリック・ディアスがサキエルにクレイバズ−カを撃ち込む。
マジンガ−Zが零号機を後方まで下がらせるまで、サキエルの注意を引くつもりだ。
起き上がったサキエルが光弾を放つ。
「見える!」
リック・ディアスに狙いを構え撃つより速く、アムロはフットスロットを強く踏み込みジャンプする。
ブ−ストレバ−を最大にし空中で姿勢を保ちながらサキエルに残りバス−カ全弾を撃ち込んだ。
サキエルの前方に壁のようにATフィールドがあらわれる。
最初のバズ−カ弾がATフィールドに当たり爆発する。続けて残りのバズ−カ弾も全弾命中したが、サキエル本体には傷一つダメ−ジを与えられない。
「Iフィールド?いやIフィ−ルドとは違う」
アムロの攻撃でもATフィールドの前に歯がたたない。
サキエルを守っているバリアは、アムロが今まで見た事のないような強力な防御力を持っている。
躱したとはいえ、サキエルの光弾は一発でリック・ディアスを破壊できる威力があった。
一発でも直撃すれば終わりだ。
アムロは一年戦争時代に幾度も体験した緊迫感を感じていた。
「今頃、連邦軍の援軍か・・・・」
「どこの部隊だ?」
ゲンドウと冬月はメインモニタ−内で使徒と戦っているモビルス−ツを調べさせる。
オペレ−タ−がすぐに照合作業にはいる。
連邦軍極東支部所属、第13独立外部部隊『ロンド・ベル』。
一年戦争の英雄アムロ=レイを筆頭にエ−スクラスのMSパイロットが幾人も存在し、連邦軍の獣戦機隊をはじめ『マジンガ−Z』、『ゲッタ−ロボ』、『コンバトラ−V』、『ライディ−ン』、『ジャイアント・ロボ』等と数多くのスーパ−ロボットとパイロットが協力者として参加している。
ロ−ムフェラ財団の私設部隊OZのゼクス=マ−キスに言わせれば、たかが一部隊でありながら戦局を引っくり返す力を持っている危険な連中の集まりである。
後方に下がった零号機の回収をNervに任せた甲児が、前線に復帰する。サキエルの周りには数体の機体が休む間を与えず攻撃を繰り返していた。
クワトロ=バジ−ナ大尉の百式とアムロのリック・ディアスが左右から揺さぶりをかける。
ホバ−リングで滑るように動く機体に、サキエルは何発も光弾を放つが当たらない。
サキエルが左側から攻撃をしかける百式の方に身体を向けた隙に、正面に居るジャイアント・ロボの腹部や胸に仕込まれたギッミクが開く。
「ロボ!全砲門発射だ!」
ジャイアント・ロボの操者。草間大作が命令する。ジャイアント・ロボから雨あられとミサイルが発射された。
「離れろシャア!」
「私はクワトロだ!アムロ!」
百式が旋回してビルの影に隠れる。百式を追うサキエルにミサイルの雨が襲う。
サキエルを中心に爆発が広がる。市街地戦を考慮して狙いを絞ったが、爆発に巻き込まれたビルが崩れ倒れる。
「そんなぁ。ジャイアント・ロボの攻撃が効かないなんて・・・・・・」
爆発が収まった中心に無傷のサキエルが立っている。サキエルに有効な攻撃を与えれたのは不意をついたマジンガ−Zだけだ。それからはATフィールドを絶えず展開している。
サキエルの右腕が光る。光のパイルが肩の付け根に当たり、重量1500トンもあるジャイアント・ロボを大きく揺るがせる。
「なんて奴だ。ジャイアント・ロボはマジンガ−より装甲が厚いんだぞ」
もう一撃もらえばジャイアント・ロボの装甲は破られる。
「このままじゃ、ジリ貧だ。竜馬さん。アレをやろう」
ゲッタ−トマホ−クを投げた竜馬に甲児は合体攻撃でサキエルを攻撃しようと無線で伝える。ATフィールドに攻めあぐんでいた竜馬も甲児の提案を受け入れた。
「マジンパワ−全開!これでも喰らえ、ブレストファイヤ−!」
「ゲッタ−炉出力最大。ゲッタ−ウイング固定完了。こいつでトドメだ、ゲッタ−ビィィィィィムゥ―――!」
マジンガ−Zのブレストファイヤ−とゲッタ−1のゲッタ−ビ−ムが同時に標的を狙う合体攻撃ツインビ−ム。今のロンド・ベル隊で最大の攻撃力を誇っている。
重なった二つのエネルギ−が絡みあい破壊力を増して、サキエルのATフィ−ルドを貫いた。赤い盾を破ったエネルギ−はそのまま進み、サキエルの左上半身を食い千切るように破壊した。
「やったぜ」
「待て、様子が変だぞ!」
「な、何ィ!?」
倒したはずの使徒が再生していく。甲児が「ば、化け物め・・・!」と唸る。
アムロが再生するサキエルにビ−ムピストルを撃ち込むが赤い壁が、ビ−ムを阻む。
マジンガ−Zとゲッタ−ロボも先程の攻撃でエネルギ−が底を尽きかけているので、再びツインビ−ムで攻撃する事もできない。
「ブライト艦長、特務機関ネルフの碇司令から通信がはいってます」
「特務機関ネルフ?」
ブリッジで使徒の能力に、どう対処するか考えているブライトが回線を開いた。
モニタ−画面に両手を組んだ男が現れ、要求だけを言う。
「我々は使徒迎撃を目的とする、連邦政府直属の特務機関Nervだ。ロンド・ベルはすみやかに退却しろ」
「使徒迎撃のために・・・?あの化け物は、使徒とは何なのですか?」
「それに答える必要はない。お前達では使徒を倒すことは出来ない。早急に立ち去れ」
一方的にゲンドウが言ったあと、回線が切られた。
納得はいかない。
だが、最大の攻撃で完全に倒せなかった以上。一度引いて体勢を立ち直らせなければならない。決定打を欠ける戦況にブライトは後退するよう出撃中のパイロットに命令した。
目標は未だ変化なし。現在、迎撃システム稼働率7.5%、連邦軍部隊はロンド・ベル隊を除いて全て撤収している。
零号機回収完了。パイロットは重症、内臓の損害大とメイン・オペレ−タの報告は冬月に溜息を吐かせるモノばかりだった。
「そして零号機は起動不能、どうするつもりだ、碇?」
「時間は充分に稼いだ。初号機を起動させる」
「初号機をか?もうパイロットはいないぞ」
「問題ない。たった今、もう一人の予備が届いた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」(実の息子を予備扱いか。ユイ君が聞いたら悲しむだろうな)
「冬月、後は頼む」
冬月の内心を知ったとしても、とるべき行動をかえないだろう。ゲンドウはエレベ−タに乗って下へと降りていく。
「10年ぶりの対面か・・・・・・」
「副指令、目標が再び行動を開始しました」
かつての教え子の忘れ形見に持つ感傷の気分も、日向マコトの報告で払われる。
「よし・・・・・初号機出撃に備え、総員第1種戦闘配置を維持。対地迎撃戦、用意」
発令所に居るメインオペレ−タの3人を初めとした、数十人は居るスッタフ達が急いで各自自分の作業に取りかかった。
「ごめんね、まだNerv内部に慣れてなくて・・・・確か、この辺りだったんだけど・・・」
ミサトに連れられてきたシンジは、ジオ・フロントに入りNerv本部へと辿りついたが、ミサトの案内で迷っていた。
「さっき通りましたよ、ここ」
「・・・・・・・・・・・・」
3度、同じ通路をグルグル回るミサトに、シンジは呆れたように言った。ミサトは口元が引き攣るが、相手は子供だと気持ちを落ち着かせる。
「何やってたの、葛城一尉?」
「あ、あら・・・リツコ」
通路の角を曲がったら、金髪に水着姿の女性が白衣をかけて立っている。迷子ではぐれ、探していた友達に見つけってもらったような罰の悪い口調でミサトは大学時代からの親友の名前を呼んだ。
「・・・・あきれた。また迷ったのね。私達は人手もなければ、時間もないのよ」
「ご、ごめん」
「例の男の子ね?」
親友の謝罪に痛い頭を抑えながら、リツコはシンジを見た。
「そう。マルドゥックの報告書によるサ−ドチルドレン」
「私はE計画担当博士。赤木リツコ。よろしくね」
「はい・・・・・・・・」
マルドゥック?サ−ドチルドレン?どうやら僕の事らしいが、何の略称だ?
此処が一番安全で、お父さんも居るからとミサトが言うので付いてきたが、どうにも空気が胡散臭くなってきた。
「これまた父親そっくりなのよ。可愛げのない所とかね」
えらい言われようだ。せめてそう言う事は本人の居ない所で言え。
「それより、碇司令は何故零号機を出撃させたの?結果が、ああなるのは見えてたじゃない」
「・・・あれは時間稼ぎだったのよ。あなたと彼がここに来るまでのね」
あの時、零号機が出なければミサト達が本部に着く前に、サキエルが本部まで到達したかもしれない可能性は否定できない。
「使徒の様子は?」
「連邦軍の部隊が一度撃退に成功したわ。けれど、表層面にダメ−ジを与えただけで、依然進攻中よ」
「使徒とまともに戦える部隊が連合軍にいたの?例のSDFならともかく・・・・信じられないわね」
マジンガ−Zが登場する前に、地下エレベ−タ入り口に到着したミサトは知らないのだ。
「ええ、その部隊は特機・・・・俗に言うス−パ−ロボットの混成チ−ムだったわ。それにSRX計画の機体もいたようだし」
後方から攻撃していたグルンガスト弐式の事だ。パイロットのクスハ=ミズハはまだ実戦慣れしていない為、後方支援を担当していた。
「なるほど、SRX計画か。あそこの機体なら、使徒と張り合うことぐらい出来るかもね」
「噂だと、使徒やEVAを倒せるぐらいの力を持った人型機動兵器を開発しているそうだけど・・・・・どうかしらね」
リツコは自分が優秀な科学者であると自負しているが、南アタリア島のEOT特別審議会で出会えた各研究所の博士達やDC東京支部の総裁シュウ=シラカワより、絶対的に優れている訳でもないと理解していた。
諜報員によればシュウ=シラカワは、対異性人戦闘用機動兵器グランゾンと云う強力な機体を開発したとの情報も入ってきている。
「ま、お手並み拝見ってトコか。で、初号機はどうなの?」
作戦部長のミサトにはリツコ以上に各機関の戦力情報が伝わっているが、実際は未知数で分からない方が多い。
「B型装備のまま、現在冷却中」
「それ、ホントに動くの?まだ一度も動いたことないでしょ」
「起動確立は0・000000001%。(オーナイン)システムとはよく言ったものだわ
「それって・・・動かないってこと?」
「あら失礼ね。0%ではなくってよ」
ミサトの疑問にリツコはシレっと答えた。
シンジを忘れているのかミサトとリツコは歩きながら使徒への対策を話し合っている。
(・・・・話からすると地上で、あの化物にやられていたのが黄色のロボットが零号機なんだろう。なら初号機とは黄色のロボットの同型機か近いものだろう。それにサ−ドチルドレン。3番目の子供・・・?どうやら嫌な予感が当たりそうだ・・・・・・)
二人の会話から出る言葉に自分なりの解釈を加える。自分が呼び出された意味にうすうす勘付いていたが、ここまで来ると最後まで見たいと興味を惹いているのも確かだ。
それに、この場所までの道順は記憶している。
逃げようとして、前を歩く二人が障害となったとしても、ミサトの方はそこそこ訓練を積んでいるようだがシンジの敵じゃない。懐にしまわれた銃を使った所で結果は変わらない。
リツコの方は素人まるだし。片手どころか指先一つでカタがつく。
ミサトとリツコは、後から着いてくる少年が、想像している以上に危険な存在と気付かずケイジまで案内した。
「着いたわよ、シンジ君」
「 !! 顔・・・?巨大ロボット?」
赤い液体のプ−ルに浸かっている初号機を見て、シンジは自分の予感が当たったのを知った。
「人の造りだした究極の人型決戦兵器汎用人造人間エウ゛ァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏に行われた。我々人類最後の切り札よ」
リツコは自身満々に言うが、シンジはとても是が人類最後の切り札と思えない。
地上での戦闘でサキエルにやられる零号機を見ているうえ、一年前デビルガンダムと云う悪夢を具現化したような奴を見てきたのだ。
デビルガンダム事件は歴史の表側に出ず、一般人に知られる事なく終わったが下手をすればコロニ−一個と融合したデビルガンダムが地球に落ちたかもしれなかった。
一年戦争時代にジオンが落としたコロニ−落としとは訳が違う。
ドモン達、シャッフル同盟とシンジ。あと少数の協力者によってデビルガンダムを倒せたが、下手をすれば地球は今頃DG細胞で全土を侵されていた。
「何故?これを僕に見せるのですか?」
「それは、貴方のお父さんの仕事だからよ」
「これが、父さんの仕事?」
「そうだ」
声を追って上を見上げた。強化ガラス越しに趣味の悪い赤いサングラスをしている鬚面の男がシンジを見下ろしている。
目だけが下を向いているので、見下されている不快感を感じる。少なくとも初対面の人間にする対応ではない。
シンジが鬚男に感じた、第一印象は『礼儀知らず』だ。
「誰です?あの人」
わざとらしい演出に、呆れ気味のミサトへシンジは鬚男が誰なのか聞いた。
「え?シ、シンジ君。貴方のお父さんよ?」
「うそ?」
ミサトの言葉に信じられないモノを見たように聞き返した。
「本当よ」
「冗談でしょ?ドッキリじゃないんですか?カメラは何処です?」
きょろきょろと、ドッキリと大きく書かれたプラカ−ドを探す。
「シンジ君。現実よ。受け止めなさい」
ミサトの言葉に、拒絶と絶望が混じったシンジの叫びがケイジに響いた。
「うそだ!うそだ!うそだ!うそだ!うそだ!あんなの父さんだなんて嘘だ!僕の期待を裏切ったな!せめてカッコイイ父さんと想像する僕の期待を裏切ったな!!!
ミサトさん。あの鬚が僕の親に見えますか?どう見ても似てませんよ!
他人の空似とか、そんな問題以前の話ですよ!!!
どう見ても、あの鬚男ヤクザ以上に悪人面じゃないですか?別に、顔で悪人か判断する訳じゃないですが、品性は顔に出ます。断言してもいいです!そんな人を親と認めろと?ミサトさん・・・・・・酷い・・・・酷すぎます・・・・あんまりじゃないですか・・・・」
「「「「「「「「「「「「「「「確かに」」」」」」」」」」」」」」」
何気に酷く失礼な発言をしているシンジだが、様子を見ていた整備達の同意を得られた。
優秀な組織管理能力と冷徹な行動をとることをNerv職員に知らしめている男だが、だからといって人望を得られている訳では無い。日頃の行いは大切だ。
「チェンジを要求します!チェ―――ンジ!!」
父親と認知する気は全くなくても、そこは微妙な子供心。
想像していた父親像と、かけ離れた鬚男に対し叫ばずにはいられない。
凶報を聞く事は幾度もあったが、今回はきわめつけだと嘆く少年の父親は、今にもこめかみが切れそうだった。
あとがき
久々にス−パ−ロボット大戦64をプレイした。
衝撃のアルベルト。サイズSSで技量140。
ガッツ展開中のリュウセイ以上に当たらない。ありとあらゆる攻撃を躱しまくる。
アムロの命中率が10%を下回った時、このオッサン。ニュ−タイプを凌駕したなと思った。
レス返しです。
ミアウ様>
ゲスト的に出す予定です。
樹海様>
ジオン軍の毒ガス使用についてのご指摘、参考になりました。
マスタ−アジアに関しては説得イベント終了で生きています。おいしい場面で登場させたいもんです。
ミサトは、まぁ・・・・可もなく不可もなく。といった感じで扱うと思います。
イスピン様>
リュウトとラミアを出せるかどうか分かりませんが、謎の食通さんは出します。64主人公機アシュクリ−フをパ−ソナルカラ−に塗りたくって「今こそ駆け抜ける時!」とか叫んで。
02様>
申し訳ないですが、基本的にス−パ−ロボット大戦シリ−ズに登場したキャラクタ−で行く予定です。例外がある場合もありますが・・・・
マナは、もう一人だす赤毛の幼馴染と張り合ってもらいます。
meo様>
手紙に同封されていたカ−ドの裏にNerv外部窓口の電話番号が記入さていたと、言うことで。
七位様>
出だしで似たような作品があるかもしれませんが、今後の展開を長い目で見てください
ル−様>
展開的にはシンジ君視点でのス−パ−ロボット大戦になると思います。