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▽レス始

「これが私の生きる道!最終決戦前夜編5(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-04-02 01:48/2006-04-02 15:43)
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(9月10日午前中、プラント周辺訓練宙域)

 「素直に表敬訪問の形を取ればいいのに、何で
  初対面で演習をしなきゃ行けないんだよ!」 

俺達は「アークエンジェル」と「エターナル」級
三隻で小規模の戦隊を作って、自衛隊の新鋭艦二
隻からなる先遣艦隊との演習を行う事になってい
た。
これは、お互いの戦力を計算して、これ位なら互
角に戦えるだろうと判断されてのものであった。

 「新造戦艦二隻で搭載モビルスーツ48機+a
  だろう?向こうは全部宇宙用のセンプウだか
  ら、楽勝かもな」

 「イザーク、油断するとやられてしまうぞ」

アークエンジェルのブリッジから無線でイザーク
に釘を刺した。

 「モビルスーツ隊はともかく、新造戦艦のスペ
  ックは尋常ではないからな。艦船同士の撃ち
  合いは現時点では不許可だ」

 「それで、どうしますか?」

アスランが「フューチャー」のブリッジから俺に
聞いてくる。

 「アスラン、イザーク、ニコル、ラスティー、
  シホ、ディアッカ。別働隊を組んで戦艦を落
  とせ!レイを連れて行くのを忘れるなよ!」

 「「「了解!」」」

 「これで(ゴンドワナ)は落とせたし、艦自体
  は(やまと)級の方が小さいからな。大丈夫
  だと思うが」

 「敵艦反応増大!熱量がアークエンジェルの二
  倍を超えています!更に、敵艦からモビルス
  ーツ隊らしき反応の離脱を確認!我々に向か
  ってきています!」

 「ちっ、向こうは目が良いな。アスラン達を出
  せ!」

索敵担当のバート・ハイムから敵艦発見の報告が
入り、俺は別働隊の発進を命令する。

 「俺も出るぞ!コーウェル、付いて来い!」

 「おう!」

俺は「ジン検廚如▲魁璽ΕД襪魯献礇好謄スで
出撃して、艦前方で防衛戦を張る。
敵艦からは推定で40機のモビルスーツ隊がこち
らを攻撃しようと向かって来ているので、こちら
はアスラン達を除いた30機ほどで迎え撃つ事に
した。

 「コーウェル、指揮を任せるぞ!」

 「お前ね。最近、手を抜いてないか?」

 「じゃあ、お前が突っ込めば」

 「任せろ!」

コーウェルは直属の小隊を引き連れて突っ込んで
行った。 

 「あいつ、やっぱりこの前の見合いで何かあっ
  たな・・・」

コーウェルは先日見合いをしたのだが、翌日の彼
の機嫌は最悪で、ここ数日不機嫌な状態が続いて
いたのだ。
いったい彼に何があったのだろう・・・。

 「うわー、コーウェルの奴元気だなー」

 「カザマ司令、我々はどうしたら・・・」

 「教えた通り、二機でペアを組んで相棒を見失
  うなよ。敵は無理に落とさなくて良い、艦の
  防衛が最優先だ。アスラン達が旗艦を沈めれ
  ば、撤退するんだから」

 「「「了解!」」」

コーウェルが敵モビルスーツ隊と交戦を始め、俺
達も戦闘を開始するが、敵パイロット達は思った
よりも技量が高かった。 
どうやら、熟練者を回してきたようだ。

 「うちのヒヨっ子では互角に戦うのが精一杯か
  。数も三分の二しかいないしな」

前にいたセンプウをガトリング砲で片付けながら
、戦況を判断すると、お互いに決定打を出せない
で、こう着状態が始まってしまった。
数で劣る我々は長期戦になると、不利になる可能
性が高い。

 「おーい!コーウェル!」

俺がコーウエルを無線で呼び出すと、彼は一機の
不思議なモビルスーツと戦っていた。

 「あれ、何処かで見たような・・・」

 「カザマ、歩が悪い。俺は指揮に専念するから
  相手を頼む」

 「核動力機に乗ったお前が何で?」

 「これ、核動力機みたい・・・」

連合でも、ザフトでも採用されている装備だ、日
本が開発していても不思議はない。

 「(ジンプウ)だよな。これ・・・」

 「当たりだ。これは、核動力機の(ジンプウ改
  )と呼ばれる機体だ」

 「石原一尉か!」

 「三佐だよ、出世したんだ。お前ほどじゃない
  けどな。しかし、古臭い機体に乗ってるな」

 「俺の(ジン検砲鬚个にするな!それに、乗
  っている俺の腕がスペシャルだから、ジンプ
  ウのGを恐れた石原三佐には負けないよ」

 「残念だったな。この(ジンプウ改)は対G面
  で大きな改良を施してあるのさ」

 「俺が乗ってた時にその改良を施してくれ!」

 「お前の尊い犠牲は無駄にならなかったと言う
  事だ。」

 「そんなポンコツ不採用にしてやる!」

「ジンプウ改」にビームガトリング砲をシャワー
の様に撃ち続けると、石原三佐も背中のビーム砲
とレールガンを撃ち返してきた。
だが、俺のビームは核動力で無限に近い稼働時間
を確保した光波シールドによって弾き返され、石
原三佐の攻撃もロックオンが掛かった瞬間に機体
を動かして回避していた。

 「へっ、どうせ途中で止めるオンボロNジャマ
  ーキャンセラーの癖に!」 

 「プラントの技術が世界一だと思うなよ!」

 「最終兵器だ!これを食らえ!」

俺はミサイルパックを開放して「パンドラの箱」
を斉射した。
無論、このミサイルは訓練用なので、小さい爆発
と同時にペンキが飛び散るだけのものなのだが・
・・。

 「どうだ!穴だらけだろう!」

 「このバカタレが!」

突然、コーウェルから無線が入ってきた。

 「いきなり全弾ぶっ放すな!味方が3機も巻き
  込まれたぞ!」

 「本当?」

 「ちくしょう!こちらは10機以上やられちま
  った!」

石原三佐の独り言が無線に入ってきた。
これも、同じ系統の機材を使っている弊害の一つ
だろう。
そしてこの時、俺は幾つかのミスを犯していた。
第一に、パンドラの箱を斉射した経験が無かった
ので、有効範囲を小さく見積もっていた事。
第二に、フェイズシフト装甲完備のセンプウは何
処の国の機体もダークグリーンの自衛隊色で敵味
方の区別が付きにくい上、今日は敵という事にな
っているので、敵味方識別装置が入っているにも
関わらず、目視だけで「パンドラの箱」を斉射し
てしまった事だ。

 「うーん、防衛には不向きな武器だな。敵の大
  部隊が密集している時に攻撃すれば、効果絶
  大なんだろうけど」

 「呑気に論評している場合か!」

「ジンプウ改」がビームナギナタで斬りかかって
きたので、対艦刀を抜いて応戦する。

 「コーウェル!指揮官を抑えているから、敵を
  押し返せ!」

 「任せとけ!」

30機ほどに減った敵のセンプウ部隊を味方が少
しづつ押し返し始める。

 「残念だったな!石原三佐、これで(やまと)
  が沈めば終わりだぜ」

 「甘いのはお前たちだ!(やまと)はそう簡単
  に沈まない様になっているんだよ」

こちらの戦況はコーウェル率いる二十五機ほどの
味方モビルスーツ隊と敵の三十機ほどのセンプウ
隊の戦闘がこう着状態に陥り、俺は予想外の強敵
に戸惑って時間を浪費する事態に陥っていた。
後は、アスラン達に期待するのみであった。


(同時刻、別働隊視点)

 「何なんだ!この異常な防御火器の数は!」

敵艦隊攻撃の為に、別働隊を組んで出撃したアス
ラン達は、思いもよらない苦戦に陥っていた。

 「それに、あの新型モビルスーツは・・・(シ
  ップウ)か!」

 「おおっ、アスラン達の機体は核動力機か!み
  んな、真面目に戦ったら死ぬぞ!適当にあし
  らえ!」

「シップウ」のパイロットはアスランとその搭乗
モビルスーツを知っているようだ。

 「「「了解!」」」

艦隊防衛に残っていた八機のセンプウと一機の「
シップウ」らしき新型モビルスーツがアスラン達
を翻弄し始めた。
始めは敵モビルスーツ隊のこの動きを「船の防御
が疎かになっているぞ」とバカにしていたのだが
、味方モビルスーツ隊が待避した後の(やまと)
と(むさし)は信じられないくらいの数の機銃、
ビーム機銃、ミサイル、単装・連装ビーム砲、小
型のリニアレールガンを発射し始めた。
無論、これらの火器はすべて演習用の模擬弾と可
視光線なのだが、そのあまりの数に恐怖を感じず
にはいられなかった。

 「だめだ、損害多数。やられてしまった」

 「僕もです」

艦船攻撃の先手を切るイザークの「リベレーショ
ン」とニコルの「リジェネレイト改」は機体全体
にビーム機銃を食い、戦死判定を出されてしまっ
た。 

 「予想を遥かに超える不沈艦というわけですね
  」

 「俺が落とす!シホ付いて来い!」

ラスティーがシホを連れて艦底部から攻撃を開始
するが、艦底部からビーム機銃が多数迫り出して
きて、連続的に攻撃をしてくる。

 「俺もやられてしまった!」

 「私は損傷多数で離脱します」

新型戦艦が相手とはいえ、四機の核動力機が撃破
されてしまい、アスランは動揺してしまう。

 「アスラン、助けてくれよ!」

 「どうしたんだ!」

アスランが「シップウ」と一騎討ちをしている間
に八機のセンプウが損傷したシホに止めを刺して
、ディアッカとレイに襲い掛かっていた。
どうやら、敵のパイロット達はエース級の腕前の
ようだ。

 「すまん、(シップウ)のパイロットが意外に
  凄腕でそちらに行くのが難しいんだ」

腕は確実にアスランの方が上だが、敵はそれを知
っていて時間稼ぎだけをしているらしく、勝負が
なかなか付かないのだ。

 「(シップウ)のパイロットは俺達を知ってい
  るのか。誰なんだろう?」

 「こらー!オーブで共に命を掛けて戦った戦友
  を忘れるな!」

 「ああ、相羽二尉ですか」

 「一尉だ。それよりも、ディアッカ達は大丈夫
  なのかな?」

 「すいません。やられてしまいました」

レイのミーティア改は機動力の低さが仇となって
センプウ三機を道連れに撃破されてしまった。 

 「俺も大ピンチだ!」

センプウ五機の連携攻撃を受けてディアッカも動
きが取れないようだ。

 「ディアッカ!一時撤退だ!」

 「それ、賛成!」

体制を立て直す為に、二機の核動力機は母艦へと
引き返して行ったのだった。


(10分後、アークエンジェル近辺)

 「何!生き残りは二機だけだと!」

自分の艦隊までたどり着いたアスランとディアッ
カはコーウェルに現状を報告をした。
どうも、カザマ司令官は敵指揮官機との交戦で忙
しいらしい。 
期待を掛けて送り出した別働隊は敵艦を落とすど
ころか、逆に敵に落とされてしまったようだ。

 「とにかく、恐ろしい数の防御火器で近づく事
  すら困難です」

 「それに、オーブで使っていた(シップウ)ら
  しきモビルスーツがいました」

アスランとディアッカが続けて報告する。

 「そして、それは今カザマが戦っている(ジン
  プウ改)と同じく、核動力機である可能性が
  高いと?」 

 「「はい」」

 「だってさ、どうする?カザマ司令官殿」

 「策はある」

 「ほう、どんな策だ?」

話を無線から聞いていた石原三佐が聞いてきた。

 「アスラン、ディアッカ!三機で石原機をタコ
  殴りだ!」

 「「おー!」」

いくら核動力機でも、同じ核動力機三機に同時に
掛かられては、勝つ事は不可能だったようだ。

 「ずるいぞ!」

 「悪いね、石原三佐。でも、戦争に卑怯もクソ
  も無いんだよね。さて、指揮官機がいなくな
  った敵モビルスーツ隊を殲滅するぞ!」

核動力機四機を含む、20機以上のモビルスーツ
隊に追撃されて,敵センプウ隊は大きな損害を出
して撤退していった。

 「とりあえず勝ちましたけど、敵戦艦は二隻共
  健在ですし、モビルスーツ隊ももう一機核動
  力機がありますよ。どうしますか?」

 「アスラン、まだわからないのか?」

 「ええっ?」

 「まあ、いい。アークエンジェルは後方へ。エ
  ターナル級三隻で敵艦を翻弄するぞ。スピー
  ドでかき回すんだ。絶対に射程距離に入らな
  い事。アーサーさん、そこの所を頼みますよ
  」

 「えっ、私ですか?大丈夫です。任せて下さい
  」

一番艦長として経験の浅いアーサーさんに確認を
取っておいた。

 「コーウェル、引き続きモビルスーツ隊の指揮
  を頼むぞ」

 「了解」

 「ディアッカ、相羽一尉のお相手を頼むぞ」

 「了解です」

 「アスランは何機か連れて敵艦に攻撃する振り
  を続けろ。リフレクターがあるんだから、先
  頭に立って味方を守ってやれよ。とにかく、
  弾やビーム用の重金属を消耗させるんだ。一
  発でも多く。俺も攻撃に加わるから」

 「ああ、そういう事ですか。でも、ヨシさんは
  大丈夫ですか?」

アスランは攻撃の意図がわかったようだ。

 「あれを含んだ艦隊をこの戦力で倒すのは不可
  能だが、今はあの二艦だけだから何とかなり
  そうだ。それに、俺なら大丈夫さ」 

イザーク達は敵艦の防御力を見誤って倒されてし
まったが、俺は状況を聞いているので問題は無い
だろう。

 「では、行くぞ!」

 「「「おー!」」」


簡単な打ち合わせが終了してから10分ほどで敵
艦の接近が告げられた。
俺は高速のエターナル級三隻にけん制攻撃を命じ
てから、モビルスーツ各機を所定の行動に付かせ
た。
コーウェルはモビルスーツ隊の指揮を継続し、デ
ィアッカは「シップウ」との一騎討ちに入り、ア
スランは三機のセンプウを率いて「やまと」へ、
俺は同じく三機のセンプウを率いて「むさし」へ
の攻撃を開始する。 

 「やっぱりな。敵のパイロットは熟練者揃いだ
  が、新造艦の乗組員はまだ艦に慣れていない
  な」

 「そうなのですか?」

俺に付いてきたセンプウのパイロットが聞いてく
る。

 「確かに、恐ろしい火力だが、俺達はまだ有効
  射程距離に入っていないんだ。これでは、た
  だの弾の無駄使いになってしまう。弾の節約
  も考えないで撃ちまくっているという事は向
  こうはまだ訓練不足という事だな」

 「そうなんですか・・・。うわっ!」

有効射程距離外でも火力が凄まじく、単装ビーム
砲のまぐれ当たりを喰らったセンプウが一機撃墜
された。

 「ギリギリの所で踏ん張って敵に撃たせ続けろ
  。時間を稼げば稼ぐほど俺たちの有利になる
  ぞ。それにな、開戦当初の連合軍人の精密な
  射撃の方が俺にとっては脅威だったよ。当時
  はフェイズシフト装甲なんて代物は無かった
  からな」

開戦時はNジャマーの影響下とはいえ、装甲が薄
いジンで連合軍の艦隊に突撃をかけていたのだ。
初期のレーダーや無線が使いにくい状況を補う為
に、連合軍艦船の一部の射手は現場の判断でレー
ダー射撃の不備を目視や赤外線探知に頼って精密
な射撃を続け、それなりの成果を上げていた。
多分、その時の優秀な兵士は大半が戦死している
か捕虜になっているだろうが、連合も対策を講じ
ているだろうから、開戦時のような鴨ねぎのよう
な状況はありえないと考えられる。

 「次は機関部を狙っているかのように動くんだ
  !」

「むさし」の機関部に突撃をかける振りをすると
、シャワーのようにビームと機銃弾が飛んでくる

 「駄目です。やられました」

また一機のセンプウが撃墜されてしまった。
後、数ヶ月俺が鍛えればまぐれ以外で命中するな
んて事はありえないのだが、まだ練度がいまいち
のようだ。

 「次は艦橋に強襲をかける振りだ!」

高速でコースを変えて艦橋に真上から突撃をかけ
る振りをするが、最後の一機のセンプウが撃墜さ
れてしまう。

 「駄目だ!比較的技量が高い連中を選んでもこ
  の結果だ。艦船の攻撃はグリアノス隊長にお
  願いするしかないな」

対モビルスーツ戦ではそこそこ戦えるようになっ
たのだが、その他の事にはまだ手が回らないよう
だ。

 「まあ、訓練課程を終了したばかりの連中だか
  ら、俺やアスラン達と同じように戦えってい
  う方が酷なんだけどさ」

俺達は日頃はおバカな事ばかりやっている愚連隊
のイメージが先行しているが、実際は過酷な最前
線にばかり回されているのだ。
性格は?だが腕は一流、これが俺達のキャッチフ
レーズになっていた。

 「アスランはどうなっている?」

アスランは「ジャッジメント」のリフレクターで
部下の損失を防いでいるようで、撃墜されたセン
プウは一機だけであった。
我が部下ながら恐ろしい技量である。

 「うん、大分射撃密度が落ちてきたな」

前日見せて貰ったスペック書の通り、「やまと」
級は搭載火器や艦内環境の維持を専門の核融合炉
で補っているので連続して恐ろしい数の射撃が可
能になっていたが、訓練不足の兵が遠慮なく撃ち
まくっていた為に、弾薬が底を尽き始めたようだ
った。
多分、予備倉庫等にはあるのだろうが、運び出す
時間に弱冠の誤差があるようだ。
そして、戦闘開始から二時間余り、敵はあせり始
めていると思われる。

 「ディアッカ!」

 「何ですか?」

 「チェンジだ!俺みたいにやれ!」

 「了解です」

遠・中距離専用の「フリーダム供廚燃米戦能力
が高い「シップウ」を見事に抑えてくれたディア
ッカに感謝しつつ、俺とディアッカは攻撃目標を
交換した。
俺は「シップウ」と一騎討ちを開始し、ディアッ
カは全ての火器を「むさし」に向けて撃ち始める

 「一尉に昇進したんだって?」

 「昇進祝いに倒されてくれよ!」

 「嫌だ。俺のトラウマになった機体を持ってく
  る奴の仲間なんて、俺に倒されてしまえ!」

 「それって、石原三佐の事?」

 「他に該当者なんていないだろうが!」

俺は今まで使っていなかったビームガトリング砲
を「シップウ」に向けて撃ち始める。

 「その武器は反則だー!」

相羽一尉は「シップウ」をMA体型に変形させて
逃走を図るが、俺は例の熱手榴弾を力一杯投げつ
けた。

 「喰らえ!」

「シップウ」の近くで炸裂した訓練用の手榴弾は
閃光を放ち、相羽一尉の視界を数秒奪った。

 「おかしな物を投げるな!何?メイン・サブカ
  メラ損傷、各種探知機器が全部破損だとーー
  ー!」 

 「ちっ、有効範囲が狭すぎて使い難い武器だな
  」

冷静に「シップウ」に止めを刺しながら論評をす
る。

 「これで、核動力機は終了か?」

周りの様子を見ると、コーウェルは敵モビルスー
ツ隊を見事に抑えていたし、アスランとディアッ
カは「やまと」と「むさし」の弾薬を更に消耗さ
せていた。

 「後、少しか・・・」

 「(フューチャー)の機関部にリニアレールガ
  ンが直撃しました。損害程度は中破と判定」

 「アーサーさん!」

 「ごめんね。ごめんね」

 「後で、タリアさんに説教されますよ。そうで
  なくても、レイの事で機嫌が悪いんだから」

アーサー艦長がダメージコントロールを指示して
いる間に、更に数発のビーム砲とリニアレールガ
ンが命中したと判定されて「フューチャー」は爆
沈と判定される。

 「・・・・・・」

 「俺、庇えませんよ」

 「そんな、助けてくれるとうれ・・・」

俺はタリアさんの怒りの巻き添えは嫌なので、す
ぐに無線の周波数を変えた。

 「そろそろ、限界だと思うんだけど」

いくら最新鋭艦でも、護衛艦も無く二隻だけなの
だ。
火器の射手に疲れは出ているだろうし、あれだけ
派手に撃ち続けていれば、弾切れもありえそうな
ものだ。

 「コーウェル!様子はどうだ?」

 「指揮官の戦死で流れが変わった。敵は数を減
  らしつつあるぞ」

石原三佐、相羽一尉の戦死で敵モビルスーツ隊は
動揺して、味方に撃破され始めていた。
精神的なショックで戦力の均衡が崩れ始めたのだ

 「アスラン、ディアッカ!艦橋を狙って指揮系
  統を破壊しろ!」

 「「了解!」」

弾切れが本格的になって、射撃がますます緩慢に
なってきた二艦に止めを刺すように命令した。
まだ、主砲のビーム砲とリニアレールガンに余裕
はあるようだが、こちらの艦隊は速度差で有効射
程距離ギリギリで敵を翻弄しているし、モビルス
ーツを主砲で落とすのはかなり無理な事であった

 「よーし!グゥレイト!」

「フリーダム供廚料缶臉銅佑如屬爐気掘廚隆篭
は完全に破壊されたと判定されて、「むさし」の
射撃が更に少なくなった所を、ディアッカが後方
の機関部にありったけのレールガンを撃ち込んで
止めを刺した。

 「やっぱり、(むさし)が先に沈むのだな」

 「でも、(やまと)も時間の問題ですよ」

 「全員、徹底的にしごいてやるから覚悟しろよ
  !」

「むさし」のブリッジで艦長の松山一佐が激を飛
ばしていた。

 「(やまと)も弾切れか」

アスランが(やまと)艦橋に腹部のビーム砲を撃
ち込むと同時に、ディアッカが同じように機関部
に止めを刺して演習は終了したものと思われたの
だが・・・。

 「えーい、真田のジジイが調整に手間取らなけ
  れば!」

 「カザマ司令官を討つわよ!」

撃沈判定を受けた(やまと)の格納庫から二機の
モビルスーツが発進して高速でアスラン達の横を
すり抜けていった。

 「何だあれ?」

 「さあ?」

アスランとディアッカは多少の疑問を感じながら
も、既に勝負は終了していて、全モビルスーツ隊
は戦闘行為を終わらせているので余り気に留める
事をしなかった。

 「何とか勝てたな。損害は大きいけど」

訓練不足の新造艦二隻と勝負して、エターナル級
一隻撃沈、一隻中破、アークエンジェル小破、核
動力機四機損失、モビルスーツ隊残存16機はか
なり酷い損害であると言えた。
アスラン達の攻撃を成功させる為に、艦艇を囮に
したら、損害が増えてしまったのだ。
では、そんな事をしなければ良いと言われるかも
しれないが、囮が無かったらアスラン達の攻撃は
成功しなかったであろう。
この艦が訓練を積んで、艦隊を組んだらアークエ
ンジェルが霞むくらいの恐ろしい敵になるものと
思われた。

 「まあ、今の所は味方だし、勝ちは勝ちだ。さ
  て、帰ろうかな・・・」

 「待てーーーーーー!」

 「カザマ司令!覚悟!」

いきなり無線に2人の若い女の声が入ってきた。

 「核動力機実験部隊テストパイロット立花ユリ
  カ三尉参上!」

 「同じく、立花エミ三尉参上です」

 「何?君達、今まで参加してなかったじゃん!
  」

 「それは、真田のジジイが調整に手間取ったか
  らだ。私的に不参加はありえないからお前を
  討つ!」

 「カザマ司令、覚悟して下さいね」

 「ちょっと、待って!」

俺の意思は無視されて、二機のモビルスーツから
攻撃を受けるが、冷静にかわしながら敵モビルス
ーツの性能を見極め始めた。
どうやら、両機ともセンプウの改良機であるよう
だが、パイロットに合わせて設定をいじっている
らしく、立花ユリカという女の機体は胴体部は赤
で手足や頭は若草色だった。
武装はビームライフルと通常型のシールドの他に
、肩にレールキャノンらしき物を装備していて、
腰にゲイツの装備武器であるエクステンションア
レスターが見えた。
そして、もう一機の機体は胴体部分が黒で手足と
顔は黄色が主体になっていた。
武装はビームライフルと通常型のシールドの他に
、俺が持っている対艦刀と同じ物を背中に装着し
て腰にビーム砲を装備しているようだ。
勿論、両機ともイーゲルシュテルンとビームサー
ベルは標準的に装備していると思われる。 

 「赤緑と黒黄色か。色の趣味が悪いよな」

 「仕方が無いでしょ!自分に一番合った設定に
  変更したら、この色になってしまったんだか
  ら!」 

立花ユリカ嬢が無線で怒鳴りつけてくる。

 「フェイズシフト装甲の屈折率の魔力か・・・
  」

以前、アサギのBストライクの設定を変更したら
、胴体部分が青に手足と頭が水色になってしまっ
て、「ブルーストライク」を略して「Bストライ
ク」に意味が変わってしまって、俺は密かに涙し
たものだった。

 「二対一って卑怯じゃない?」

 「私達は二人で一人!それに、戦場に卑怯もく
  そも無い!」

 「わー、正論だ。君達姉妹?」

 「従姉妹同士よ!」

 「さあ、馴れ合いは終了よ!覚悟しなさい!」

 「すいませんね。倒されてください」

異なるテンションを持つ二人組に攻撃を受けるが
、この二人かなりの腕前で息が合っている。
唯一の救いは実戦経験が無いらしい事だが、高性
能の核動力機なので、俺は苦戦していた。

 「ちくしょう!なまじ無駄な武装が付いていな
  いから強い!」

ユリカ嬢の射撃をかわすと、回避予定地点にエミ
がビームライフルを撃ち込んでくる。
エミ嬢とビームサーベルで切り結んでいると、突
然エミ嬢が前方から待避して、同時にユリカ嬢が
放ったエクステンションアレスターが俺に向かっ
てくる。
彼女達は二機で連携を保って俺を追い込んでいっ
た。
正直、恐ろしい腕前だ。

 「お嬢さん達はコーディネーターか!」

 「正解!苗字で思い出さない?」

 「確か、副官房長官が立花エリカ・・・」

 「立花エリカは姉でーす!」

 「私は従姉妹です」

ユリカ嬢はエリカさんの妹でエミ嬢は従姉妹であ
るようだ。

 「お姉さんと違ってじゃじゃ馬のようだな」

 「むかつく!年下の癖に生意気!」

 「その意見に賛成です」

 「えっ、いくつなの?」

 「二人共二十歳で、もう少しで二十一歳になる
  のよ!」

 「それは、誕生日プレゼントを遠まわしに期待
  している?」

 「うがーーー!自意識過剰!ホモの癖に生意気
  !」

 「待て!聞き捨てならないぞ!どういう事だ!
  」

 「週刊誌で見たわよ。年下の少年と夜中にデー
  トしてた癖に」

カガリと遊びに出かけた様子を撮られたあの一件
か・・・。

 「ホモになんか負けないわよ!」

 「ふざけんな!絶対に倒す!」

 「私達のコンビネーションは崩れないわよ」

 「気合いで倒す!」

それから十分ほど戦いを続けたが、双方ともに決
定打が出なかった。
俺は二人の攻撃パターンを解析して回避に専念し
たが、反撃に出るまでに状況が進まず、向こうは
攻撃を繰り返せば繰り返すほど綺麗に回避される
ようになって、疲労が溜まってきたようだ。

 「二対一なら石原三佐にも勝てる私達が・・・
  」

 「俺は石原三佐の師匠なんだよ」

 「私達の王子様である石原三佐をホモの道に引
  きずり込むな!」

 「許し難い暴挙です!」

 「だから!ホモから離れろ!」

 「ホモじゃないか!」

 「あれは女の子なの!」

 「あんな女の子は存在しません」

 「ああ、どう言ったら信じて貰えるか・・・」

既に、周りの宙域では演習が終了して、ほぼ全員
の目が俺達に向けられていた。
この衆人監視の中でホモ扱いされては堪らない。
俺自身の名誉の為に、撤回させなければ。

 「ええい、実力でわからせるのみだ・・・」

 「待て!カザマ。助っ人に来たぞ!」

高速で接近してくるモビルスーツの反応が二機入
ってきた。

 「カガリちゃん!(暁)なのか?」

 「そうだ!おいそこの女二人!よくも男扱いし
  てくれたな!」

 「「あれは、カガリ姫の(暁)!」」

 「あの、カガリの乱入を許して下さいね」

カガリに付いてきたキラがフリーダムでコメツキ
バッタのように謝っている光景はシュールであっ
た。

 「私達はカガリ様を男扱いした覚えはありませ
  んが・・・」

 「ユリカとか言ったな!あの写真は私だ!」

 「「ええーーー!」」

 「カザマ、一人譲れ!しばき倒す!」

 「譲るけど、結構強いよ」

 「私は負けない!」

その一言でカガリの様子が急に変わった。
例のSEEDを発動させたようだ。
こんな事ばかりに能力を使ってもいいのかとも思
うのだが、彼女には譲れない一線があるようだ。

 「あーん、ビームがこっちに返ってくる」

SEEDが発動している上に、ビームが全て反射
させられてしまうので、ユリカ嬢は絶対絶命の危
機に追い込まれていった。

 「ユリカ!」

 「人の心配をしている場合か?」

 「卑怯です!」

 「戦争に卑怯は無いんでしょ?」

 「えーい!一か八かです」

エミ嬢は対艦刀を抜いて斬りかかってきたが、動
揺した彼女の目の前に熱手榴弾を投げつけた。

 「えっ、センサー類が全部おしゃか?」

 「そういう事!」

俺がビームサーベルをコックピットに突き刺した
瞬間に、カガリがユリカ機のコックピットをビー
ムライフルで撃ち抜いて、勝負は終了したのであ
った。


演習が無事に終了した後、「やまと」と「むさし
」は特別に空けられた大型ドッグに入港して、整
備と補修に入っていた。
艦の外側はザフトの整備兵や工員が修理していた
が、艦内は自分達で整備しているらしい。
機密の塊なので、常識的な事なのだが。

 「始めまして。(やまと)艦長の長谷川一佐で
  す」

 「同じく、(むさし)艦長の松山一佐です」

「やまと」のブリッジを表敬訪問した俺たちを二
人の艦長が出迎えてくれる。

 「分艦隊司令のカザマです」

 「硫黄島での武勇は聞いているよ」

 「墜落しましたけどね」

 「あれは、仕方が無いだろう。栗林陸将は優秀
  な人なのだが、新兵器が大好きでな。あのよ
  うな無茶をたまにするんだ」

 「核動力機として復活していましたが・・・」

 「あれは、真田さんがG緩和装置を開発して、
  操作を多少簡単にする事に成功したので、急
  遽、核動力搭載が決まったんだよ」

G緩和装置と言っても、目に見えるような装置で
は無くて、コックピット周りの改装やシートや専
用のパイロットスーツの開発、OSの改良などの
総合的な改良を纏めて装置と呼んでいるだけのよ
うだ。 

 「そうですか。センプウらしき核動力機も二機
  あったようですが」

 「あの二人については、お詫びのしようがない
  」

 「部下なんだから、呼びつけて叱ればいいじゃ
  ないですか」

 「彼女達が立花副官房長官の妹と従姉妹だから
  、制服組のバカ共が気を使いまくっているん
  だ」

 「そうですか。私は遠慮なく訓練でしごいてや
  りますけどね」

 「それは頼もしいな。石原三佐はモビルスーツ
  隊の指揮と訓練で忙しいからな。あの二人を
  どうしようかと悩んでいたんだ」

あの二人のお嬢さん達は自衛隊で十人もいない女
性パイロットでコーディネーターという境遇が使
い難い人材だと思われているらしい。
更に、立花副官房長官の親族である事で、前線に
出すのはいかがなものかと言う上層部の判断が、
真田軍事技術委員長兼技術一佐の下で試作機のテ
ストパイッロットして遇されている理由でもある
ようだ。

 「どうしようかって、石原三佐の直衛機にすれ
  ばいいじゃないですか」

 「あの二人はテストパイロットで我々の指揮下
  に入っていないんだよ。二人の上官の真田一
  佐もオブザーバー扱いだし。それに、石原三
  佐が嫌だとさ」

確かに、俺でも嫌だ。

 「そんな、無茶な」

 「核動力機を一機でも多くというプラント上層
  部の応援要請でね。四機しかない核動力機を
  全機回したわけだ。君は知っていると思うが
  、日本は未だに核アレルギーだから、この四
  機のモビルスーツは秘密中の秘密ってわけな
  のさ」

コロニーを防衛する艦隊の動力源は核融合炉搭載
で、Nジャマーが投下される前には原子力発電が
一番のエネルギー源だったにも関わらず、日本は
未だに核武装は良く無いと言う意見がかなりの割
合をを占めていた。

 「それで、あのお嬢様方をうちで預かれと?」

 「真田一佐込みでだ。(やまと)には核動力機
  を整備するスペースが二機分しか無いのだ。
  整備に手間取ったお陰で、今日の騒ぎが発生
  したわけだし・・・」 

 「俺は遠慮なく使い潰しますよ。はっきり言っ
  て余裕がありませんから」 

 「それで、かまわない。とにかく、他所へ行っ
  てくれれば・・・。責任も私が取るから・・
  ・」

 「何かありました?」

 「あの娘達は四十歳過ぎの男を全員ジジイと呼
  ぶんだ。即席士官だから大きな期待はしてい
  なかったが。私は一応一佐なのに・・・」

長谷川一佐には大きなトラウマがあるようだ。
可哀想だから詳しく聞けないが・・・。

 「はははは、そうですか・・・。格納庫へ石原
  三佐に会いに行きます」

 「くれぐれも二人を頼むよ!」

 「はい・・・」

多少、安請け合いをしてしまって事に後悔しなが
ら格納庫に降りると、石原三佐と相羽一尉が例の
二人と話していた。

 「おーい、石原三佐!」

 「おー、カザマ司令官殿か」

 「柄にも無い事言わないの」

 「一応、出世したみたいだから、司令官と呼ん
  であげたのさ」

 「そいつはどうも。相羽一尉も元気だった?」

 「目がチカチカするがな・・・」

 「本物は高熱でセンサーを焼くからパイロット
  の目はどうなるんだろう?」

 「答えになっていない・・・」

相羽一尉はオーブではかなり謙った口の聞き方を
していたのだが、ようやく、砕けた口調になって
くれたようだ。

 「核動力機が四機に新造戦艦が二隻か。気前い
  いじゃん。自衛隊は」

 「お前等と訓練を積めば練度が上がるだろうと
  いう上層部の判断だ。本当はもう少し早く来
  たかったんだが、艦の最終偽装と基本的な航
  行訓練に時間がかかってな。そこをお前に見
  透かされて、今日は最悪のデビューを飾った
  わけだが」

 「訓練を積めば現時点では最強の戦艦になると
  思うけど。それに、みんな期待しているんで
  しょ?(やまと)が艦名だから」 

 「まあな。こいつは東アジア共和国の運営負担
  金をかなりつぎ込んで、無理に無理を重ねて
  建造したからな。連合でも噂にはなっている
  だろうが、詳しいスペックを知っている者は
  まだ少ない」

日本が東アジア共和国に一番始めに取った抵抗は
必要以上に搾取されていた運営負担金の停止であ
った。
石原首相以前の政治家は媚中派と呼ばれる連中が
多く、東アジア共和国高官からキックバックを受
けていた者がいたほどで、日本からの負担金は政
治家と官僚を肥え太らせるだけとの批判が大きか
ったのだ。
どうも、石原首相はこの負担金を元手に二隻の新
型戦艦を建造したようだ。

 「計画自体はかなり前からあってな。そうでな
  きゃ戦時にこんな贅沢な艦ありえない」

 「だろうね」

 「今、日本で建造されている艦艇は小型の護衛
  艦や高速輸送艦ばかりで、戦闘艦はプラント
  から格安で買い取った連合の鹵獲艦を改装し
  て使っているからな」

 「相変わらず、一点豪華主義なんだね。日本の
  軍隊って」

 「おいおい、日本に軍隊は存在しないんだぜ。
  憲法にもそう書いてあるんだ」

 「そうだったな」

俺達の会話をアスラン達とカガリは不思議そうな
表情で聞いていた。
独自にモビルスーツを開発して、最強の戦艦まで
建造した日本に軍隊は存在しないと言っている事
に疑問を感じているのだろう。
後で聞かれたら事情を教えてあげよう。

 「それで、核動力機なんだけど・・・」

 「それについては私から説明させて貰おう」

五十歳前後の漫画に出てきそうな博士っぽい人が
登場する。

 「軍事技術委員長兼技術一佐の真田です」

 「私は・・・」

 「君の父上とは何度か会った事があるから知っ
  ているよ」

 「そうですか・・・」

 「この(ジンプウ改)は一号機の墜落事故で廃
  棄される予定だった予備部品を元に組み立て
  られて、G緩和装置の設置と操作の簡素化を
  行った一種の改良機に当たる機体です。試作
  機で惜しくないとの理由から核動力が急遽積
  み込まれたわけですが、思ったよりも使い勝
  手の良い機体に仕上がりました」

 「お前の尊い犠牲が、俺の新しい愛機を生んだ 
  のさ」

 「ふーん。で、(シップウ)は?」

今更、何も言うまい・・・。

 「あれは、アスカ三尉が乗っていた機体を改良
  して核動力を積んだだけのものです。集めた
  データのお陰で(ハヤテ)の開発は順調なの
  で、同じく惜しくは無いと判断されまして」

 「俺は高性能機に乗れるからラッキーだけど」

相羽一尉は嬉しそうに言う。

 「んで、二機の核動力のセンプウは?」

 「二人はセンプウの派生機と追加武装の試験を
  していましたので、比較的、まともな中・近
  距離戦の二機を選んで核動力を積みました」

 「機体はまともでも、パイロットが・・・」

 「こらー!何て言い方なの。このホモ司令官が
  !」

 「だから、ホモじゃないのに・・・」

立花ユリカ三尉に再びホモ扱いされてしまう。

 「こいつがホモなんてありえないぞ」

 「そうでよね」

 「私はわかっていました」

 「早っ!」

石原三佐が俺のホモ説を否定すると、わずか数秒
で二人は自説を引っ込めてしまった。 

 「愛されてるじゃん。石原三佐」

 「勘弁して欲しい。俺にはマユラがいるから・
  ・・」

石原三佐は俺に小声で苦悩を語った。
どうやら、一方的に二人に迫られているようだ。

 「では、改めて紹介するよ。テストパイロット
  の・・・」

石原三佐が本当に仕方が無さそうに紹介を始める

 「立花ユリカ三尉です」

身長は155cmほどだろうか、二十歳なのに幼
児体型で中学生にしか見えないが、口の悪さは天
下一品だ。

 「立花エミ三尉です」

165cmと女性にしては大柄で、肩まで伸びた
黒い髪と縁の無い眼鏡が特徴のスタイルの良い女
性だった。
特に、胸はラミアス中佐を超えている可能性が高
い。
日頃の口調は丁寧なのだが、俺の勘がこいつも性
質が悪いと告げていた。

 「「よろしく!」」

 「分艦隊司令のカザマだ」

 「「カザマ君、よろしく(ね)」」

司令官の俺が君呼ばわり・・・。
二人にとって、俺の存在は限りなく軽いものらし
い・・・。

 「君はまだ良い方だよ。私なんてジジイと呼ば
  れているんだから。まだ、孫なんていないの
  に・・・」

真田一佐の顔は苦悩に満ちていた。

 「でも、エミ三尉のセンプウは武装が少なくな
  い?」

 「ここでドラグーンを積む予定になっていまし
  て」

 「えっ!彼女、空間認識能力者なの?」

 「はい、そうです」

真田一佐が嬉しそうに答える。
多分、彼が見つけた彼女の唯一の美点なのだろう

彼の日頃の苦労が忍ばれる。

 「(クサナギ)艦内でヤマト二佐のフリ−ダム
  に(暁)から取り外していたドラグーンを搭
  載する事が決まりまして、一緒に(センプウ
  E)もやってしまおうと」

 「(センプウE)?」

 「エミのEだそうです。命名時に強引に押し切 
  られまして。上層部にはエクステンションの
  Eだと言っておけと・・・」

 「参考までにもう一機は?」

 「(センプウY)です。意味はユリカのYから
  で、上層部にはユースフルのYだと言ってお
  けと・・・」

 「ユースフルには若々しいという意味もありま
  したっけ?」

ホテルじゃあるまいし、ユースフルは強引だろう

 「かなり強引な命名なので、苦情が来まして私
  の胃袋は胃潰瘍寸前です。研究費の増額を条
  件に他所で腫れ物扱いされていた二人を引き
  取ってから一ヶ月、私の苦悩の日々はいつ終
  わるのでしょうか?」

昔の日本のコーディネーターは大人しくしている
者が大半だったのだが、彼女達は大分はじけた存
在らしい。
姉である立花副官房長官と同じく、オーブのカレ
ッジを卒業して、海外で親族が経営している会社
の手伝いをしていたのだが、急にモビルスーツに
乗ってみたいと言い出して、姉のコネで自衛隊に
入隊したようである。
だが、硫黄島決戦では石原総理が立花副官房長官
に気を使って参戦させず、オーブ派遣部隊にも志
願したらしいのだが、それも却下されて新兵の訓
練や新型機のテストを続けていたようだ。

 「そのせいで、彼女達はプラントで傭兵になっ
  て戦うと騒ぎ出してしまいまして。もし、そ
  んな事になれば立花副官房長官の立場が悪く
  なってしまうので、今回は新型機のテストパ
  イロットとしての派遣と相成りました」

 「まどろっこしい話ですね」

 「立花副官房長官が勝手にやらせておけば良い
  って言っているのですから、好きにやらせれ
  ばいいのでしょうけど」

 「あの人らしいですね」

俺は官邸とパーティー会場で二回しか会った事し
かないが、モデルの様な容姿でサバサバした性格
の人だったと記憶していた。

 「ねえ、カザマ君。私達の母艦は何処?石原三
  佐に匹敵する、良い男がいる艦にしてよね」

 「石原三佐ほどの男はそういないわよ。比較的
  、まともな男がいる艦にしてくださいね」

 「・・・・・・」

俺は呆れつつも、横でキラとカガリとアスラン達
と楽しそうに話している石原三佐を見つけて駆け
寄った。

 「やっぱ、いらない。返す」

 「無理だ!核動力機の整備スペースが確保出来
  ない」

 「そんなの三日もあれば・・・」

 「訓練期間が短いから、三日でも惜しい。エタ
  ーナル級なら収容できるだろう?」

 「謀ったな!石原三佐」

 「人聞きが悪いな。俺も上からの命令で動いて
  いるんだ。それに、あの二人が近くにいると
  、マユラにあらぬ誤解を持たれてしまうから
  嫌なんだ」

 「ちくしょう!自分の都合を優先しやがって」

 「ねえ、カザマ君。私のモビルスーツはどの艦
  に搭載予定なの?」

 「司令官なんだから、キビキビした方がいいと
  思います」

口調は丁寧だが、エミ三尉の言葉は大分厳しいも
のがある。

 「(エターナル)に搭載してくれ。それと、担
  当の上司を紹介するから」

俺はあの男に押し付ける事にした。
女好きだし、意外と部下の面倒見が良いので、多
分大丈夫だと思う、というか思いたい・・・。 


(10分後、エターナルブリッジ)

 「というわけだ。ディアッカ、二人の面倒を頼
  むな」

先程の騒ぎの張本人を部下に回すと言われたラス
ティーは、ディアッカに押し付ける事を0.1秒
で決断する。

 「女の子二人が俺の部下に・・・。我が世の春
  ですか?人生の大転換期ですか?オー!グゥ
  レイト!」

悲しい事にディアッカは無線状態が悪かった為に
、先程の騒ぎを聞いていなかったらしい。
Nジャマー影響下での悲劇の一つであると言えよ
う。   

 「何?このガングロ男!バカは御免なのに・・
  ・」

 「しかも、カザマ君よりお子様だなんて、悲し
  過ぎます」

 「あの・・・。俺、上官・・・」

美女二人で大喜びのディアッカだったが、何か様
子が違う事に気が付き抗議したのだが、軽く無視
される。

 「レイ君といい、ラスティー君といい素材は良
  いんだけど、後五年は待たないと」

 「あの。俺、隊長なんですけど・・・。君は無
  いと思いますが・・・」

ラスティーの小さな声を聞くような二人では無い

 「「仕方が無い。我慢してあげ(ます)るか」
  」

疫病神を押し付けられたラスティー隊の苦悩は始
まったばかりだった。 


(午後、軍港基地内食堂)

 「石原三佐め!覚えていろよ!あんな性悪女達
  を押し付けやがって」

乱暴に書類に判子を押しながら俺は独り言をつぶ
やいた。 

 「自分だって、ラスティーとディアッカに押し
  付けたじゃないですか」

 「アスラン、正論言って楽しいか?何ならアス
  ランの所に所属を変えても・・・」

 「そんな事をしたら、アーサー艦長の胃に穴が
  開きますよ」

今日の件でタリアさんに説教されていたのを思い
出した。 

 「タリアさんもそんなに怒らなくてもいいと思
  うんだけど」

 「レイが相変わらずだから・・・」

ここの所、レイが二つの弁当箱を見つめながら苦
悩する姿が毎日目撃されていて、半ばこの食堂の
名物になっていたのだ。

 「ミーアちゃんに恋愛感情は無いんだけどね。
  本人は相棒の健康管理くらいにしか思ってい
  ないと思うよ。曲書いて貰ってなんぼだから
  」

 「だから、母親としては余計腹が立つんでしょ
  うね」

 「しかし、レイの胃袋は丈夫になったよな。あ
  れ全部食べて腹壊さないし、太らないし」

 「その代わり、他の女性からのプレゼントは一
  切食べられなくなったそうですよ」

レイは女性兵に人気があるので、お菓子やらデザ
ートやらを大量に貰っているのだが、あの弁当を
食べた後には食べられないだろう。 

 「どうせ、ディアッカとラスティーが食べるん
  だろ」

 「いいえ、今日の分は早速、ユリカ三尉とエミ
  三尉に食べられてしまいました」

後ろから声が聞こえてきた。

 「レイか?」

 「はい」

いきなり現れたレイの説明を聞くと、おやつの時
間に「レイ君はどうせ食べられないでしょ」と二
人に言われて、全てのプレゼントを取られてしま
ったらしい。

 「ジャイアンみたいな女達だな」

 「あの、カザマ司令。地球出身のコーディネー
  ターというのは、皆あんなに図太いんですか
  ?」 

 「レイ、それは大きな誤解だ。あれは特殊な例
  に過ぎない」

俺自身の名誉の為に、そこの所は強く否定してお
く。

 「それで、レイから見て、あの二人をどう思う
  ?」

 「性格はともかく、腕は私より遥かに上です」

 「それは、認める。二人掛かりとはいえ、俺を
  追い込んだからな。しかも、エミ三尉は空間
  認識能力者ときたもんだ」

 「今日、(クサナギ)でドラグーンを搭載しま
  して、稼動実験にも成功したようですよ」

ついさっき、「クサナギ」艦内でキラの「フリー
ダム」とエミ三尉の「センプウE」にドラグーン
が移植され、稼動実験にも見事に成功して明日か
らは訓練に入るらしい。

 「キラの奴、可哀想に。あの二人と一緒に訓練
  か。俺はゴメンだぜ」

 「あの、私も一緒に訓練しないといけないので
  すが・・・」

 「頑張ってくれとしか言えない」

 「頑張ります・・・」

その後、定時の時間が来てレイは自宅に帰って行
ったが、その時、レイの背中が少し小さく見えた
のは気のせいだと思いたかった。


 「今日は疲れたな。」

 「石原三佐と再会出来たのはいいが、あの性悪
  女達は勘弁して欲しい」

 「こらー!本人を目の前にして性悪って言うな
  !」

 「それは、あなたの間違いです。訂正して下さ
  い」

仕事が終わってから、石原三佐と相羽一尉の歓迎
会を「蓬莱」で開いたのだが、何故かあの二人に
も情報が伝わってしまって、石原三佐の両脇を二
人が占拠した状態になっていた。
もうすぐ、マユラを含むオーブ組が合流するので
、石原三佐の命運はここで終了するかもしれない

 「あのな、俺には彼女がいるから、アタックす
  るなら他の奴にしてくれないか。そうだ、相
  羽一尉なんてどうだ?」

石原三佐の言葉に、相羽一尉が心底嫌そうな顔を
する。
ユリカ三尉は童顔ながらも見かけは相当可愛いし
、エミ三尉は知的な眼鏡美人でスタイルは抜群な
のに、あの男だらけの「やまと」艦内で誰にも口
説かれなかったのだ。
何かがあると思う他は無い。

 「相羽はいまいちだから嫌!」

 「私の好みのタイプとはかけ離れています」

二人の御免なさい宣言で相羽一尉の顔が喜びに満
ち出した。

 「普通、がっくり来ないか?」

 「見た目は最高なんだけど、心には悪魔が住ん
  でいるんだ。始めは真田一佐は(両手に花で
  いいな)とか言われてたけど、今では同情の
  目で見られている」

相羽一尉がこっそりと俺達に事情を教えてくれた

 「カザマ司令はどうなんだ?結構良い線行って
  ると思うけど。後、アスラン隊長達とかさ」

オーブ戦で一緒だった他の自衛隊士官が二人に余
計な事を質問する。

 「うーん、カザマ君は普通よね」

 「普通です」

 「一番性質の悪い回答だ・・・」

心に大きなダメージを喰らった。

 「ホモって噂が流れていたから、興味持てなか
  ったし。これから検討するわ」

 「検討します」

 「せんでいい!」

こいつらと付き合うくらいならホモになった方が
マシだ!

 「アスランはどうなんだ?」

まだ、多少アスランに対抗意識を持っているイザ
ークが自分の評価と比べようと聞いてきた。

 「良い男だけど、優柔不断そう」

 「私はもう少し逞しい方の方が・・・。ガキは
  嫌です」

 「そんな・・・。ガキって・・・」

二十歳の彼女達にとっては、アスラン達は子供に
見えるのかも知れない。

 「イザークは?」

お返しでアスランが質問する。

 「オカッパ頭が嫌。ありえない」

 「私の胸ばかり見るんですよ。いやらしいです
  」 

 「見とらんわ!」

フレイは胸が大きいからな・・・。

 「ディアッカは?」

 「「ありえ(ない)ません!」」

完全否定されたディアッカは隅でいじけている。

 「ニコルは?」

 「五年後に会いましょう」

 「同じく」

さすがは全てにおいて無難な男、ニコル・アマル
フィー。

 「ラスティーは?」

 「玉の輿ってのもありよね」

 「それはそれで良さそうですね」

 「ちょっと!ふざけないでよ!」

ラスティーの隣りで泡盛をコップで飲んでいたシ
ホが激怒する。
初めて見たが、彼女に酒を飲ませるのは止めた方
が良いみたいだ。

 「人の婚約者を取るんじゃないわよ!」

 「シホさん、落ち着いてね」

ラスティーが自分の事を放って止めに入るが、シ
ホは更に酒を飲み干しながら、口撃を続けた。

 「大体、偉そうに選り好みしているけど、誰に
  も相手にされていない癖に、この幼児体型の
  Aカップが!」

 「なっ、言ってはならない事を!」

珍しく、ユリカ三尉が衝撃を受ける。

 「そっちも大きけりゃ良いってもんじゃないの
  よ!このホルスタインが!」

 「ホルスタインって・・・」

エミ三尉も衝撃を受けていた。
酒でリミッターが外れたシホの口撃は容赦が無い
ようだ。
本日の標的でない事に感謝しなければ・・・。

 「みんな、お待たせ」

周りの雰囲気が最悪になりかけた時、キラ達が合
流してきた。

 「ヨシユキ、久しぶりって。えっ、誰?この女
  達!」

マユラの久しぶりに恋人と会えた喜びは一瞬で消
滅する。

 「いや・・・、あのね・・・」

 「石原三佐、このブス誰?」

 「石原三佐とは釣り合いませんわ」

 「あなた達、ヨシユキの何なのよ!」

 「「恋人でーす!」」

 「ヨシユキのバカーーーー!」

マユラは泣きながら店を駆け出して行った。

 「待ってくれー!マユラー!」

石原三佐がマユラを負いかけて出て行ってしまう

 「あーあ、今日の主賓なのに・・・」

 「そういう問題じゃ無いんだけど」

キラの的外れな意見に俺は突っ込みを入れてしま
う。

 「お前達、いくらなんでも酷すぎだぞ!」

 「本当に付き合ってたんだ。諦めるしかないの
  かな?」

 「これで、駄目になればチャンス到来です」

カガリが二人を叱ったのだが、当の本人たちは気
にも留めていないようだ。

 「最悪な女達だ・・・」

 「俺も普段は客を批判しないんだが、あんた達
  は酷すぎだ・・・」

さすがのおやっさんも驚きを隠せないでいる。

 「皆さん、どうなされたのですか?」

用事があって遅れて来たラクスが到着した。
この歓迎会はオーブ戦時の慰労会も兼ねているの
で、オーブ軍に志願していたラクスも参加してい
るのだ。

 「わあ、ラクス・クラインだ!本物だ!」

 「凄いですね」

さすがの二人もラクスの登場に驚いたようだ。

 「あら、新しいお仲間の方ですか?」

 「一応そうだけど、仲間と認めたくない俺もい
  る」

ラクスに今日の出来事を説明してあげる。

 「ラクス様、どうしてカザマ君と一緒にいるん
  ですか?ラクス様はアスラン君の婚約者なん
  でしょう?」

 「昔はそうでしたが、今では私はヨシヒロの婚
  約者です」

ユリカ三尉の疑問にラクスが笑顔で答えている。

 「アスラン君は振られたんですか?」

 「そんな・・・振られたって・・・」

エミ三尉のストレートな物言いにアスランは落ち
込んでしまった。

 「アスランには私がいるだろう?」

 「カガリ・・・」

 「わあ、カガリ様とアスラン君が付き合ってる
  の?」

 「そうだよ。お前達は五月蝿いな!」

 「わーん、カガリ様が怒鳴ったー!」

 「す、すまない」

カガリはユリカ三尉が泣いたと思って謝ったのだ
が、俺の角度からは彼女の顔が見え、しかも、涙
なんか流していなかったのだ。

 「うわー、まだ若いのに婚約者を寝取ったり、
  変えたりして爛れてる」

 「セレブって凄いんですね。カザマ君は一般人
  ですけど」

 「恐ろしい悪女達だ・・・」

ラクスやカガリに暴言を吐いて表情一つ変えない
で、想像以上の悪女達かもしれない。
俺は彼女達の派遣を決めた連中を呪わずにはいら
れなかった・・・。


(同時刻、日本国首相官邸)

 「うーん、最近忙しすぎるような気がする」

眠い目を擦りながら、石原首相がソファーで背伸
びをした。

 「お疲れですか?でも、仕事は山積みですよ」

副官房長官の立花エリカが目薬を持ってきて首相
に手渡した。 

 「樺太攻略作戦の根回しは抜かり無く終了しま
  したけど、統一朝鮮国が独自に対馬占領を企
  んでいるとは思いませんでした」

 「樺太は大西洋連邦の穏健派から譲歩を引き出
  す事に成功した。元々、ユーラシア連合とは
  仲が悪いからな。向こうの領土の損失など知
  った事では無いそうだ。これは東郷外務大臣 
  の言葉だが」

東郷外務大臣は樺太攻略の際に、太平洋艦隊が出
撃しない事をアルスター外務次官との会合で確認
していたのだ。
講和条件時に有効な切り札になる太平洋艦隊をユ
ーラシア連合の為に、磨り減らすのは御免被りた
いらしい。
それに、プラントが敗北すれば樺太攻略作戦自体
が無意味になるので、放って置いたと言っておけ
ば、アズラエル理事への言い訳にもなるという事
だそうだ。
地球連合とは言っても、条件さえ揃えばユーラシ
ア連合や東アジア共和国など簡単に切り捨てるつ
もりなのだ。
実際のところ、ユーラシア連合も東アジア共和国
も独自に動いていて、何かがあれば大西洋連邦を
切り捨てるだろう。
国家の付き合いとは、古来からこんなものであっ
た。   

 「まさか、ユーラシア連合がジョシュア防衛用
  の戦力を引き抜くとは思わなかった。元々、
  極東艦隊は貧弱だから脅威では無いが、この
  件が無ければ樺太攻略は無理だったからな」

 「ジブラルタル奪還とアフリカ開放は彼らの悲
  願ですからね。ジョシュアに置いた戦力は死
  兵だと思っていたようですし、戦力を引き抜
  いた後のヨーロッパ各地やロシア連邦の各共
  和国の治安維持に使うようですよ」

プラントと同盟国の分離工作で火薬庫になってい
る場所が幾つかあるが、今一番揉めているのは東
アジア共和国構成国の中国とユーラシア連合構成
国のロシア連邦共和国であった。
中国はチベット・ウイグル・モンゴルなどで分離
独立の動きが活発になっていて、プラント・日本
・台湾が独立派に武器を回していた。
そして、ロシア連邦共和国はイスラム教徒を多数
抱える中央アジアのいくつかの構成国とイスラム
連合が手を組んで、ユーラシア連合からの離脱と
イスラム連合への加入を求めて、内戦と国境沿い
の小競り合いが続いていた。
ユーラシア連合は懲罰と問題の解決を求めてイス
ラム連合に兵を出したが、頑強な抵抗に遭った上
に、最近では援助されたモビルスーツ部隊に襲撃
されて大きな損害を出し膠着状態に陥っていたの
で、無駄に物資を消耗しているとアズラエル理事
などから避難されていたのだ。 
そして、中国東北部「旧満州」とシベリアでも分
離独立工作が行われていた。

 「多分、プラントと連合の停戦時には間に合う
  まいが、東アジア共和国とユーラシア連合と
  の小競り合いを黙認して貰えば、シベリア・
  中国東北部・日本・台湾・シンガポールで極
  東連合はスタートを切れるだろう。後に、チ
  ベット・ウイグル・モンゴルにも加盟して貰
  えばそれなりの勢力になれるだろうし、新し
  い国際組織でも発言権を確保出来るはずだ」

 「その構想には賛成ですが、問題は統一朝鮮の
  対馬攻略作戦です。もし、成功させてしまう
  と次は九州・四国・中国地方と欲をかくよう
  になる可能性が高いです」

 「東アジア共和国とは極秘裏に停戦状態を維持
  する事が決められていなかったか?」

 「極秘裏にと言うのがミソです。表面上は交戦
  国なので、普通に戦端を開いたに過ぎません
  。どうやら、中国の意向に逆らって勝手にや
  っているようです」

 「相変わらずの自分勝手さだな。あきれて物が
  言えん」

 「戦力ですが、中国よりも技術力は上なので、
  モビルスーツの性能と配備数はあなどれない
  ものがあります。大半はストライクダガーの
  改良機ですが、独自に開発した新型も一定の
  割合で配備されているようです」

 「うーん、戦力不足かな?」

 「山本防衛大臣と連絡を取られてはいかがです
  か?」

 「そうするか・・・」


約三十分後、ドアがノックされて山本防衛大臣が
入室してきた。

 「首相、用事か?」

 「多少は敬えよ」

 「公式の場では従順な大臣ではないか」

 「無駄話は止めよう。朝鮮の問題だ」

 「あれは、極東艦隊と連動して動くんだよ。ロ
  シア連邦共和国軍高官が朝鮮軍高官と接触し
  た事実が確認されている。外務省は掴み損な
  っていたようだが」

 「明日、東郷外相に注意しないといけないな。
  日本の外務省職員はお坊ちゃまばかりで、使
  えなくて困ってしまう」

 「それは、そっちでやってくれ。つまり、ユー
  ラシア連合は樺太攻略作戦を掴んでいるんだ
  よ。そこで、攻略阻止の為に、自意識過大な
  朝鮮軍を使っているというわけだ」

 「対策を聞こうか」

 「別に作戦案に修正は無い。山口海将の機動護
  衛艦隊が極東艦隊とウラジオストックを強襲
  した後、太田海将補の特別陸戦隊が樺太を占
  領する予定だ。朝鮮海軍の艦隊はザフト台湾
  駐留モビルスーツ隊と魏大将指揮の台湾艦隊
  で共同して撃破する予定だ。潜水艦隊の水中
  用モビルスーツ部隊も出撃させるから、半分
  以上は壊滅させられると思う」

 「艦隊戦力は樺太にほとんど出払っていて、朝
  鮮軍艦隊をどの部隊が撃破するんだ?」

 「北九州に航空機隊とモビルスーツ隊を集めて
  いる。おかげで、硫黄島は空っぽだけどな」

山本防衛大臣は戦力の大半を樺太攻略艦隊と北九
州に集めてしまったらしい。もし、無防備な部分
を突かれたらお終いだろう 

 「おいおい、大丈夫なのか?オーブのホムラ前
  代表の最後を知らないわけではあるまい?」

 「首都防衛の戦力は動かしていないさ。それに
  、硫黄島の洞窟基地には陸自が立て篭もって
  いるんだ。一週間は落ちないし、もしもの時
  は二〜三日で援軍を回せるから大丈夫だ。偵
  察衛星の情報ではパールハーバーは静かなも
  のだしな」

 「ここの所、静かだったのに、後二週間ほどで
  世界規模での大決戦が行われるな。樺太・対
  馬・ジブラルタル・北アフリカ・宇宙で溜め
  込んだ戦力の大盤振る舞いだ」

 「お前のご先祖様の予言通りだろう?(世界最
  終戦争論)って奴だな。一神教を背景にした
  覇権国家群の地球連合と多様な宗教と文化を
  容認する国家群との決戦というわけだ」

 「ご先祖様もコーディネーターの出現や機械の
  巨人が戦争の主戦力になるなんて想像出来な
  かっただろうな」

 「アニメだよな」

 「ああ、アニメだ」

それから、三十分ほど細かい打ち合わせをしてか
ら、山本防衛大臣が退室しようとすると、立花副
官房長官に呼び止められた。   

 「あの、私の妹と従姉妹の事なんですが、騒ぎ
  を起こしていないのでしょうか?」 

 「ユリカ君とエミ君の事かね?」

 「真田委員長に大分迷惑をかけているとか・・
  ・」

 「私の息子にもな」

石原総理は息子の石原三佐から、恋人がいると言
っているにも関わらず、毎日のように迫られて大
変だというメールを受け取っていた。

 「ああ、やっぱり・・・」

 「立花君、あの二人は前から迷惑の掛けっ放し
  だから、今更誰も驚かないさ」

常日頃から報告が上がってきていた山本大臣は笑
いながら立花副官房長官を慰める。 

 「山本大臣!それ、慰めになってません!」

 「石原三佐と長谷川艦長はカザマ君に預けて責
  任は自分で取ると言ってたから、大丈夫だと
  思うよ」

 「息子の喜ぶ顔が目に浮かぶな。戦争がひと段
  落したら紹介したい女性がいると言っていた
  し、石原家は安泰で結構だ」

 「うちの息子はまだ学生だからな。まあ、後数
  年もすれば連れてくるかな?」

 「そんな事を言っている場合じゃありません!
  カザマ君に預けたですって!彼の部下はプラ
  ント評議会のご子息ばかりですよ。国際問題
  になったらどうするんですか!?」

立花副官房長官は自分の妹と従姉妹を1ミリも信
用していなかった。

 「大丈夫だって、ただちょっと口が悪くて性格
  が歪んでいるだけだから」

 「文彦。お前、さらりと酷い事を言うな」

 「軍人は嘘をつかん!たまにつく時もあるけど
  」

 「昔は軍人の嘘を軍略と言ったそうだな」

 「おおっ!さすがは、石原莞爾中将の子孫なだ
  けはある!」

 「傍流だけどな」

 「そんな事はどうでもいいんです!私はあの二
  人が心配で夜も寝られません!」

 「この前、国会で審議中に居眠りをしていたじ
  ゃないか。あれは、嫁入り前の娘にあるまじ
  き寝顔だよな」

 「よだれ垂れてたしな」

二人に過去の恥ずかしい話を暴露されてしまう。

 「それは関係ないでしょうが!そもそも、何で
  あの先遣隊に入れてしまったんですか!?」

 「君がエコ贔屓しないで前線に回せって言うし
  、本人達も希望していたから、これで良かっ
  たんだろう?何か不満でもあるのかい?」

 「外国に派遣しないで下さい。自衛隊の恥にな
  ります」

 「仕方が無いだろう。何処の部隊でも引取りを
  拒否されたんだから。(悪魔の姉妹)は必要
  ないそうだ」

 「(悪魔の姉妹)って・・・」

実戦経験もないのに、既に渾名までつけられてい
る事に立花副官房長官はショックを隠し切れなか
った。

 「腕は良いんだから活躍してくれるさ」

 「カザマ君、ごめんなさい・・・」

立花副官房長官には謝る事しか出来なかった。


(三日後、プラント周辺宙域)

本日も恒例になっている集団演習が行われていた
が、今日のクルーゼ司令の様子はいつもと違って
いた。

 「ははは、ユリカ君、エミ君。今日の敵は手強
  いぞ!」 

 「任せてよ。クルーゼ司令」

 「私も準備完了です」

俺は悩みに悩んだ末、二人をクルーゼ司令の直衛
機に任命した。 
俺達がババを引かない方法を考慮した結果であり
、毒を持って毒を制すという作戦の一番の適格者
であったからだ。
こうして、昨日から二人をクルーゼ司令に預けて
いるのだが、結果は予想よりも良好であった。
変人同士、気が合うのかもしれない・・・。

 「今日はクルーゼ司令が相手か!」

今日は中央艦隊との模擬戦で、例のごとく俺達を
「ゴンドワナ」隊にぶつけようとしたらしいのだ
が、ユウキ総司令は二度も同じ手に引っかからな
いで、クルーゼ司令自らが戦う羽目になっていた

 「ふっ、グリアノス隊長か。ドラグーンの餌食
  にしてあげようではないか」

 「聞きなさい!自衛隊にこの人ありと言われた
  立花ユリカ三尉が相手になってやるわ。ゴリ
  ラ隊長、覚悟しなさい!」

 「それを言ったのは誰だーーーー!?」

 「カザマ君ですわ。ちなみに、私は立花エミ三
  尉です」

俺のいない所で、最悪な事になっているようだ。

 「「覚悟!逝け、ドラグーンよ!」」

クルーゼ司令とエミ三尉が放ったドラグーンはグ
リアノス隊長を危機に追いやっていた。

 「ちっ!口は悪いが、空間認識者が一人いるの
  か」

合計24機のドラグーンが飛び回り、ベテランパ
イロット達が次々に落とされていく。

 「歩が悪いな。ヒルダ!ハイネ!助けろ」

 「了解!」

 「珍しいね。苦戦するなんて!」

ハイネがユリカ三尉とヒルダさんがエミ三尉と戦
闘を開始する。

 「強い!ハイネ君かしら?ヒルダのおばさんか
  しら?」

 「待てい!誰がおばさんだ!」

 「カザマ君がそう言ってたわ。腕の良いおばさ
  んだから注意しろって!」

 「あいつ、後で殺す!」

どうも、俺の忠告が捻じ曲がって伝えられている
ようだ。 
ベテランの凄腕パイロットがいると教えたのに。

 「勝てそうなのに、ちょこまかと逃げやがって
  !」

クルーゼ司令とエミ三尉がドラグーンを飛ばして
、ユリカ三尉が止めを刺したり援護をするという
フォーメーションが一番効率の良い状態である上
に、実戦経験が無く訓練期間が少ない二人ではハ
イネに勝つ事は難しいと思われたが、ユリカ三尉
はクルーゼ司令から防御と逃げに徹するように言
われていて、ハイネはなかなか倒せないでいた。

 「ハイネ君の思惑通りには行かないよ!」

 「ハイネ君って・・・」

 「カザマ君、ハイネ君、ミゲル君。みんな年下
  の可愛いぼうや達」

 「カザマの奴、苦労したんだろうな・・・」

付き合いの長いハイネには親友の苦労がよくわか
るようだ。 

 「クルーゼ!子供が生まれるらしいな。まあ、
  俺の息子の方が可愛いと思うが」

 「ふっ、笑止千万!ゴリラの息子はゴリラにし
  か過ぎん!」

 「カザマ共々ぶっ殺す!」

 「ミサオの話では娘らしいから、きっと私に似
  て美人なのだろうな」

 「仮面ブスが生まれるのか?」

 「ドラグーンの餌食にしてやる!」

ザフトの双璧と謳われるパイロット達ははくだら
ない理由で一騎討ちを行っていた。
クルーゼ司令はドラグーンを巧みに操って鋭い攻
撃を繰り返し、グリアノス隊長はその攻撃を素早
く回避しながら、プロヴィデンスを攻撃する。
正直、誰にも入り込めない人外魔境の世界であっ
た。

 「あのー、クルーゼ司令。真面目にやって欲し
  いんですけど・・・」

新たな厄介の種を二つも押し付けられたアデス艦
長の苦悩の日々は始まったばかりであった。


(同時刻、訓練宙域)

 「よーし、これで四機目だ!でも、これは駄目
  だな」

今日の演習ではクルーゼ司令が前回のような勝利
を目指して俺達を中央に配置したのだが、予想は
見事に外れてクルーゼ司令は最強部隊と、俺達も
二番目に強い部隊を当てられて、戦況はこう着状
態に陥っていた。
アスラン達を別働隊で送り出したのだが、向こう
はベテランパイロットの部隊を中心にした多数の
モビルスーツ隊を護衛に残していて、完全に足止
めされてしまったらしい。
二匹目の泥鰌はそう簡単にいないようだ。

 「コーウェル、どうだ?様子は」

 「消耗戦になってしまったな」

 「アスラン達は突破出来ないのかな?」

 「凄腕の連中を全員残してやがるから無理だろ
  う。うちのヒヨっ子相手には普通のパイロッ
  トで十分だからな」

俺達は最前列で敵を迎撃しているが、たかだか二
機の核動力機では戦況を膠着させるので精一杯だ
った。
頼みの「パンドラの箱」も対策を練られてしまっ
て、むやみに撃てない状態で、この乱戦状態で撃
てば味方もやられてしまうだろう。

 「こりゃあ、引き分けだな」

 「だな」

 「中央はどうなっているんだ?」

 「クルーゼ司令がグリアノス隊長とガチンコで
  やっているんだろうな」

 「クルーゼ司令と言えば、あの(悪魔の姉妹) 
  を文句も言わずに引き取ってくれたな」

 「(悪魔の姉妹)か。味方に付けられる渾名じ
  ゃないよな」

 「でも、意外と上手くやっているから安心した
  よ」

 「苦労しているのはアデス艦長だけらしいぞ」

腕は良いが、性格に難のある二人をクルーゼ司令
に預けてから、俺達の部隊と自衛隊先遣艦隊に平
和が訪れた。
始めは、向こうで騒ぎを起こさないか心配したが
、何故かオキタ副司令やクルーゼ司令と相性が良
いようで、大きな騒動は伝わってこなかった。

 「ラスティーとディアッカが喜んでいたから、
  それだけでも良しとしますか」

 「だな」

それから、一時間ほど戦闘が続いたのだが、戦況
に大きな変化は無く、双方3割ほどの戦力を喪失
して引き分けという判定が出たのだった。

 「カガリちゃん、今日はキラがいないからオー
  ブ組の動きがいまいちだね」

 「しょうがないだろ。(やまと)と(むさし)
  の訓練に急遽借り出されているんだから」

 「律儀だね。彼も」

キラは石原三佐に頼まれて、量子通信兵器の対応
訓練に協力していたのだ。
本当は俺達と共同訓練をすればいいのだが、まだ
そこまでの準備が出来ていないとの事だった。

 「まあ、引き分けだからいいか」

 「そうだな。帰るか」

「ジン検廚鬟◆璽エンジェルに着艦させようと
した時、急速に接近してくるモビルスーツを二機
発見した。 

 「こらー!カザマ!誰がゴリラだーーー!」

 「おばさんとはどういう事だ!」

 「えっ、どういう事?」

二機のモビルスーツはジャスティスでパイロット
はグリアノス隊長とヒルダさんで、物凄く怒って
いるようだ。

 「小娘が言ってたぞ!お前が俺を日頃ゴリラと
  呼んでいる事を!」

 「言ってない。言ってない」

 「まだ二十歳代の私がおばさんだと!いくらク
  ライン派でも譲れない一線があるんだ!」

 「誤解ですって!」

どうも、俺が諸悪の根源にされているようだ。

 「あの性悪女達の言う事を聞いちゃだめですよ
  」

 「「そんな!私達正直に言っただけなのに・・
  ・」」

 「ほら見ろ!泣いてまで嘘をつくと思うか?」

 「女を泣かせるんじゃないよ!」

二人の泣き声が無線に入ってくるが、絶対に嘘泣
きだと俺は確信した。

 「とにかく、俺が揉んでやるよ。アカデミー以
  来だな訓練なんて」

 「私も付き合ってあげるよ。覚悟しな!」

 「遠慮します」

 「お前に断る権利なんて無いんだよ」

 「ラクス様に免じて、半殺しで許してやるよ」

 「おーい、コーウェル。一緒にどうだ?」

 「俺、仕事があるから・・・」

コーウェルは直ぐにいなくなってしまう。
優秀な赤服なので、引き際を心得ているようだ。

 「「覚悟はいいか?」」

 「ちくしょう!あの性悪女共がーーー!」

それから、数時間俺は無実の罪で二人に極限まで
しごかれたのだった。


(同時刻、ヴェサリウス艦内)

 「クルーゼ司令、カザマ君が一生懸命に訓練を
  していますよ」

 「懸命に頑張る男の方って素敵ですわ」

ヴェサリウスのブリッジで悪の張本人が的外れな
事を言っていた。

 「うん、頑張り過ぎは良くないのだがな」

クルーゼ司令の回答もかなり的外れだった。
もしかしたら、わざと言っているのかもしれない
。 

 「若いから大丈夫ですわ」

 「おい、オキタ副司令。あの三人は本気であん
  な事を言っているのか?」

 「いちいち気にするから胃をやられるんだぞ。
  俺を見習えよ」

後ろでアデス艦長とオキタ副司令が後ろで会話し
ているのだが、クルーゼ司令と「悪魔の姉妹」は
気にもしていない。

 「私は思うのだが、あの二人は連合が開発した
  秘密兵器のように思えてならない」

 「ははは、アデス艦長にしては上出来のジョー
  クだな。カザマは苦労しているようだが、全
  体的な戦力は上がっているんだからそれはあ
  るまい」

 「どうして自衛隊の連中は手放したんだろうな
  ?」

 「あの性格だからだろう。カザマに処遇を任さ
  れたのは、あいつの部隊の評価に因るところ
  が大きいな」

 「カザマの艦隊は・・・」

 「「性格はともかく、腕は一流の連中が多い!
  」」

 「カザマは常識人なんだがな」

 「あいつは、変人に好かれる傾向がある」

 「違いない」

本当はアデス艦長もそうなのだが、オキタ艦長は
それは言わない事にした。
それを指摘してアデス艦長の胃が悪くなったら可
哀想だからだ。
彼は自分ほど丈夫ではないのだから。


ついに決戦予定日まで10日を切った。
偵察部隊からは、艦艇の発進準備が進んでいると
の報告も入り始めている。
果たして、決戦の結果はどうなるのか。
生き残る事が出来るのか。
それは、誰にもわからなかった。


         (おまけ)

 「ジロー、遂に完成したぞ。整備兵に差し入れ
  なんかをして、気を使った甲斐があったとい
  うものだ」

 「決戦まで近いんだから、無理を言うのを止め
  て欲しかったけどな。素直にジャスティスに
  乗ればいいんだよ」

 「それは俺のポリシーに反する。見ろ!ブリッ
  ツの武装とミラージュコロイドを移植した、
  俺専用のブリッツジャスティスを!」

 「そのまんまじゃないか」

 「バカだな。ジャスティスブリッツじゃ語呂が
  悪いだろ」

 「どっちでもいいよ。それより、武装がゼロの
  ブリッツが勿体無いよ。どうすんだよ!?」

 「適当に武装を施して使えばいいさ。元々性能
  は悪くないし、フェイズシフト装甲も装備し
  ているんだ」

 「お前が無茶な改造を指示するからだろうが」

 「さあて、この機体で大活躍だ!」

 「俺って、他人の尻拭いばっか・・・」

万年ナンバー2のジローの苦悩が晴れる事は無か
った。

 


        (おまけ2)

 「カガリちゃん、最近ガイを見てないんだけど
  、クビにした?」

 「お前な、ライバルに酷い事を言うな」

 「だって、暫らく見てないよ。イベントも不参
  加だったし」

 「あいつは、別口で仕事をしているんだよ。私
  の護衛なんてプラントでは必要ないからな」

 「確かに、プラント本国でカガリちゃんに何か
  があったら、カナーバ議長とザラ国防委員長
  の責任問題になっちゃうからね」

 「そんなわけで、今奴が何をしているのかはわ
  からない。どうせ、最終決戦時には合流する
  から」

 「ガッディム!訓練もしてない足手まといなん
  ていらない!」 

 「誰が足手まといだ!」

 「あれ?ガイがいる」

 「一仕事終えて戻ってみれば、カザマは相変わ
  らずバカだし」

 「神出鬼没のロリコン傭兵に言われたくないわ 
  !」

 「だから!風花は仲間の子供なんだ!」

 「父親はお前だろ。認知してやれよ。養育費出
  してやれよ。お父さんって呼ばせてやれよ」

 「違うっての!」

俺達の会話を聞いていた整備兵や基地の女性職員
がガイを「無責任な男ね。最低!」という目で見
つめる。

 「もう許さん。俺のブルーフレームの餌食にし
  てくれる!」

 「望むところだ。(ジン検砲琶屬蠧い舛澄」

 「俺はお前が無為に時を過ごしている間、実戦 
  で勘を養っていたんだ。訓練オンリーのお前
  に負けてたまるか!」

 「実戦ったってどうせ、しょぼい海賊かなんか
  だろ。歴戦のエースとの演習を潜り抜けた俺
  の敵では無いわ!」

 「「ほえずらかかせてやる!」」

俺達は愛機に乗って外で模擬戦を始めた。

 「あーあ、また始まったよ」

 「これを見ると、ガイが帰ってきた実感が沸く
  な」

主要メンバーが集まって来て、楽しそうに話始め
た。

 「そう言えば、明日はカザマの親父さんが来る
  事を言うのを忘れたな」

 「何をしに来るの?」

 「最終決戦時に戦場で集めたデータを解析する
  する為に、プラント入りするそうだ。後、レ
  イナとカナが秘書待遇で一緒に来るってさ。
  誰かさん達は覚悟した方がいいぞ。休学して
  までここに来るんだから」

 「別に、僕はレイナなんて怖く無いよ・・・」

 「僕もです・・・」

と言いつつも、キラとニコルの足元は震えていた

 「ははは。それは、ご愁傷様だな」

唯一、難を逃れたイザークが高笑いをする。

 「明日はアルスター外務次官も来るんだぞ。彼
  は直ぐに帰国してしまうが 、フレイはレイ
  ナ達と同じく、暫らく休学してプラントに滞
  在するそうだ。よほど、お前達の行動に腹を
  立てたんだろうな」

 「そんな、バカなーーーー!」

 「イザーク、君も仲間だね」

 「仲良くしましょうよ」

 「俺はアフリカにでも転任する。今すぐここを
  出る!」

 「無理に決まっているでしょ。イザーク、あな
  たは隊長なのよ」

 「シホ、お前に譲るから」

 「無茶言わないでよ」

 「ここにいたら、確実に殺されるから、嫌だー
  !」

 「落ち着いてよ、イザーク。今日は対策を立て
  ようよ」

 「僕達は一蓮托生ですよ」

 「そうなのか?」

 「僕達は同じ境遇の仲間じゃない」

 「ニコル、キラ。ありがとう」

 「じゃあ、(蓬莱)で対策を立てましょう」

 「そうだな。早く策を立てないと」

 「行きましょう」

三人は素早く帰って行った。

 「この際、何をしても無駄だろうな」

 「ラスティー、少なくとも対策を立ててる間は
  恐怖から逃れられる」

 「ディアッカは彼女がいないから気楽でいいよ
  な」

 「ラスティー、殴るぞ」

その夜、キラ達は作戦会議を開いたのだが、何一
つ良い策が出ないで絶望に打ちひしがれていたの
だった。


        


          あとがき

次は多分、最終決戦に入れると思います。
多分ですけど・・・。

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