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▽レス始

「これが私の生きる道!最終決戦前夜編3(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-26 00:24/2006-03-26 17:48)
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(8月下旬、月プトレマイオス基地近くの野外演
 習場)

ここは、プトレマイオス基地近くにある、臨時で
作られた演習場であり、プラントからの偵察を避
けるようにして、新型モビルスーツの稼動実験が
毎日行われていた。

 「ふう、やっとNジャマーキャンセラーが安定
  した動きをするようになったな。初めはいつ
  止まるのか、ヒヤヒヤものだったけどな」

 「そうですね。でも、これだけの高性能機なら
  カザマに遅れをとる事は無いでしょうね」

ドミニオンで月に上がったフラガ少佐とササキ大
尉は稼動実験と運用を任された核動力機の性能に
満足していた。

 「プラントは核動力機をかなり前から完成させ
  ていたんだから、油断は禁物だぜ。彼に核動
  力機が回される可能性はかなり高いからな」

 「確かに、奴に普通の手段で勝つ事は難しいで
  すが、このファントムがあれば勝利は確実で
  しょう」

 「世の中に絶対なんて事は無い。モーガン大佐
  ですら戦死してしまったのだから」

彼は戦死してるので、二階級特進していた。

 「はあ、そんなものですか?」

フラガ少佐はササキ大尉と一緒にいる事が多くな
ったが、どうしても彼が好きになれなかった。
仕事なので割り切っているし、ササキ大尉自身は
自分を慕ってくれているのだが、嫌いな犬種の犬
にじゃれ付かれているみたいで、ストレスが溜ま
ってしまうのだ。

 「108ダガー。良い機体ですよね」

 「まあな、プラントから技術を盗んで開発した
  らしいけど」

2人が動かしている新型モビルスーツは通称10
8ダガーと呼ばれている機体で、生産数はわずか
2機のみ。
核動力搭載機でフェイズシフト装甲を装備してい
る上に、ファントムと呼ばれている新兵器を搭載
して、ストライクの最終発展型に位置づけられて
いる機体であった。

 「何がファントムだ。プラントで開発したドラ
  グーンシステムを盗用しているだけじゃない
  か」

 「予想外の位置から攻撃を受けてしまうから、
  ファントムの名前は相応しいと思いますが。
  」

ファントムとドラグーンは全く同じものである。
プラントは技術開発で不足していたマンパワーを
同盟国との共同開発で補っていた為に、情報の流
失を完全に防ぎきる事が出来なかったのだ。
その為、ドラグーンシステムは名前だけ変えられ
て大西洋連邦でも採用されている。

 「ササキ大尉がモーガン大佐ほどではないにし
  ろ、空間認識能力者で助かったというのが本
  音だな」

108ダガーは外見はストライクに酷似している
が、背中のパックは機動性能アップの為の、強化
パックとファントム12基を装備する台座を兼ね
ていた。
残りの武装はエールストライクとほぼ同じだが、
ササキ大尉は追加装備で15mの対艦刀を背中に
装着していて、フラガ少佐は有線型の小型ガンバ
レルをシールドの裏に装備していた。
いわゆる、隠し武器である。

 「カザマを倒してプラントを降伏させた後、日
  本を講和の席につかせてから、軍国主義者石
  原首相を戦争裁判で裁き、新しい民主主義政
  権を樹立させます。そうすれば、私は救国の
  英雄として称えられるでしょう」

 「また始まったよ・・・」

月に上がった直後に、ササキ大尉はアズラエル理
事に呼び出されて、おかしな事を吹き込まれたら
しい。
アズラエル理事は戦後、日本を太平洋戦争直後の
ような経済的植民地にするつもりらしく、その傀
儡の首相をササキ大尉にするつもりのようだ。
戦争中活躍した日系人の若きエースが祖国の民主
主義の危機を救うべく、日本に帰化をして選挙に
出馬して、当選後、後継首相に任命された26歳
の若き首相が民主主義的な改革を行う。
これが、表のシナリオになっているようで、実際
は、財閥や大企業から一定の割合の株を格安で大
西洋連邦の企業に放出させて日本の首根っこを掴
むつもりらしい。
そして、その株の大部分を買うのがアズラエル財
団の持ち株会社で、日本は大西洋連邦とアズラエ
ルの紐つきになる予定なのだ。

 「そして、オーブも独裁者ウズミから解放され
  て、自由選挙で選ばれた政治家が民主主義で
  国を治めるのです。つまり、私達は軍国主義
  者と専制君主を倒して世界を平和に導く正義
  の味方なんですよ」

フラガ少佐は再び頭が痛くなってきた。
彼は非常におめでたい頭脳をしているらしく、ア
ズラエル理事が実質的に支配しているブルーコス
モスが民主主義とやらを踏みにじっている点に気
が付かないらしい。
白人で大財閥の当主だった父の遺産で何不自由な
く暮らしていた自分とは異なり、アジア系のササ
キ大尉は苦労のし過ぎで人格が多少歪んでしまっ
たらしい。
彼は日本人的で礼儀正しい真面目な表の顔と、付
き合いが長くなった人にだけ見せる、自分勝手で
冷酷な顔の両方を持ち合わせているのだ。

 「こんな男に狙われているカザマが不幸なのか
  な?」

 「フラガ少佐、何か仰いましたか?」

 「いいや。ただ、レナ少佐はモビルスーツの調
  整を終わらせたのかなって?」

 「ああ、少佐殿ですか。大丈夫だと思いますよ
  。教官までやっていた方ですから」

そして、もう1つの問題点がレナ少佐とササキ大
尉の不仲であった。
2人は開戦前からの知り合いで、レナ少佐が上官
だった時期もあったらしい。
そして、その当時から奇妙な二面性を見せるササ
キ大尉をレナ少佐が嫌い、女性の癖に自分より評
価されていて、その上自分を嫌っているレナ少佐
をササキ大尉も嫌っているようなのだ。

 「彼女の乗機も核動力機だからさ。新型っての
  は色々不都合が付きまとうものだろう?」

 「ええ、まあ」

ササキ大尉は適当に返事をする。
彼女の話題は聞きたくないようだが、レナ少佐も
ドミニオン所属のパイロットなのだ。
普通に会話くらいしてもらわないと困ってしまう

 「フラガ少佐、無駄よ。彼は私が嫌いなんだか
  ら」

突然、レナ少佐から無線が入ってきた。
彼女もここでモビルスーツの最終調整を始めたよ
うだ。

 「よくおわかりで、少佐殿」

 「彼は上官の前では良い子ちゃんだけど、他人
  の目が無いとこんな調子なのよ。性格歪んで
  いるわよね」

 「大きなお世話ですよ」

 「わかったから諍いは無しで頼むよ。それで、
  新型の調子はどう?」

 「新型って言っても、核動力になっただけでデ
  ュエルダガーに変わりは無いわよ」

 「新しい武器の方は?」

 「正直、未知数ね」

ザフト軍と同盟国軍がフェイズシフト装甲を装備
した量産機を導入した事により、ミサイルの価値
が半減してしまった事実を受けて、レナ少佐のモ
ビルスーツには新しい武器が搭載されていた。
通称「パンドラの箱」と呼ばれているもので、見
た目はミサイルと変わりが無いが、爆発と同時に
四方八方にビーム粒子を撒き散らすという迷惑こ
の上ない兵器であった。
敵の完全破壊は難しいが、損傷を与えて止めを刺
し易くするのが目的で、普通のミサイル発射管や
ポッドに装填出来る為、一部の艦艇やモビルスー
ツに配備が始まっているのだが、練度の低い兵に
使わせると、同士討ちや自爆する可能性もあるも
のなので、レナ少佐は余り信用していないようだ

 「昔は良かったわね。ジンやディンなんてミサ
  イルで面白いくらいに倒せたのだから」

 「戦争なんてそんなものさ。盾が進化すると矛
  がそれを追い抜き、次はその逆が行われる。
  それの繰り返しなのさ」

 「核動力機か。恐ろしいものを配備してくれた
  わね」

連合は核動力機を30機ほど配備していた。
一部のエースやモビルスーツ隊の指揮官に渡して
、指揮系統の長時間の維持と稼働時間の延長を狙
っているのだ。

 「それほどの価値があるものなのかな?結局、
  核動力機の整備スペースの改修で出撃が遅れ
  ているんだから。ザフト軍の用意が終わって
  いないうちに攻めた方が・・・」

 「フラガ少佐は新人パイロット達のお粗末な現
  状を知らないからね。今、出撃させたら殆ど
  のパイロットが帰ってこないと思うわよ」

 「そんなに酷いの?」

 「ええ、連合軍は世界中からパイロット候補生
  を集めてそれなりの練度に一度仕上げたんだ
  けど、旧南アメリカ合衆国出身のパイロット
  は反連合組織に多数が脱走したわ。その中に
  はあの(切り裂きエド)も入っていて、彼は
  南米のジャングルでプラントから援助された
  (サタン)に乗って毎日昔の仲間を倒し続け
  ているみたいよ。その他にも、プラント同盟
  国出身者のパイロットにごっそりと抜けられ
  た上に、地球上では敗戦続きでパイロットの
  練度は最低な状態なの。これで、月艦隊が負
  けたら本当に講和を考えないといけないわね
  。今の訓練生なんて数はいるけど適正なんて
  考慮してないから、訓練でも死傷者多数で頭
  が痛くなってくるわ。逆に、敵はこちらが訓
  練して一人前にしたパイロットを仲間に引き
  入れてしまって、今までモビルスーツが配備
  されていなかったアフリカ共同体とイスラム
  連合にもモビルスーツが確認されたそうよ」

 「(サタン)なんて機体がザフトにあったっけ
  ?」

 「大西洋連邦での呼び名よ。向こうでは(セン
  プウ)と呼ばれているわ」

教官をしていたレナ少佐は連合軍の状況に危機感
を抱いているようだ。
確かに、大西洋連邦は技術力も生産力もトップク
ラスで人口も多く、兵器も補給も多数用意出来る
し、兵士も訓練マニュアルが揃っているので、比
較的短時間で前線に出せる状態だ。
だが、プラントは大西洋連邦の弱みを巧みに突い
て、こちらの強みが発揮出来ないように誘導して
いる。
政府もブルーコスモス強行派が主導権を握ってい
るとはいえ、今も反ブルーコスモス派との抗争は
続いていて決して一枚岩とは言えない状態だ。
その弊害が穏健派の支持者潰しとザフト地球駐留
軍の戦力の弱体化を兼ねた日本とオーブへの出兵
に繋がっていて、必要以上に戦力の消耗に拍車を
かけていた。

 「今の月艦隊のパイロット達がまともに仕上が
  るのが9月下旬で、決戦はそれからね。近代
  戦は兵を育てるのに時間が掛かるのよ。漫画
  に出てくる短時間で凄腕になるパイロットな
  んて奇跡のような存在なのよ。プラントでは
  3ヶ月でパイロットに仕上げるコースがある
  みたいだけど、ナチュラルの私達は最低でも
  半年は必要なわけ。おわかりいただけたかし
  ら?」

 「やる気が無いからですよ。気合いさえあれば
  、訓練期間が短いくらい・・・」

 「戦前からMAパイロットをしていたあなたと
  、始めて訓練に入る新人を比べる事自体がお
  かしいのよ。カミカゼを命令した日本の軍人
  みたいな事を言わないで!」

ササキ大尉は奇妙な精神論をぶち上げようとした
が、レナ少佐に反論されて大人しくなってしまっ
た。

 「そろそろ、機体を整備しないとな。取り扱い
  はくれぐれも慎重にだろ?」

3人は訓練を切り上げて、機体を整備に回す事に
する。
未だに不安定さを抱えるNジャマーキャンセラー
への対抗策はこまめに整備する事しかないのだ。
今までに爆発事故は起こっていないが、これから
も無いとは断言出来ないので、そこのところは運
用で乗り切るしかないのだ。

 「これなら、オルガやクロトがいるゼロ艦隊の
  方がマシかもな」

フラガ少佐は独り言を言うが、ジブリール中将待
遇が指揮をする100名の仮面を付けた男達がパ
イロットをしている艦隊に本気で転勤したがる人
はいないだろう。
オルガとクロトは核動力機のカラミィティーとレ
イダーに搭乗していて、仮面軍団が「パンドラの
箱」を装備した正式量産機のカラミティー、レイ
ダー、フォビトゥンに乗っているのだ。
レナ少佐が一度訓練を見学した事があるそうだが
、一言も発しないで機械のように動き、命令され
れば特攻も辞さない彼らに恐怖を抱いたらしい。
さすがに、オルガとクロトも不気味だと言ってい
たようだ。

 「でも、俺達も連中の仲間扱いなんだよね」

月に上がってからの自分達は忠実なアズラエル派
と見られているらしく、陰口を叩かれるかゴマを
摺られるかのどちらかであったのだ。
多分、昇進したラミアス大佐とバジルール少佐の
苦悩は自分達を超えるであろう。
今までは恩師として、部下として良好な関係を築
いてきたハルバートン中将にまで避けられている
事実は彼女を苦しめているに違いないのだ。

 「俺は出来る事をやるだけだ。ラミアス大佐は
  防御が固いけどね」

 「マリューはあなたが亡くなった婚約者と同じ
  パイロットである事が理由で臆病になってい
  るの。柄じゃないんだから強気で押していき
  なさいよ。彼女、待っているわよ」

 「レナ少佐は誰かが口説いてくれないのかい?
  」

 「周りの連中はお呼びでないし、ちょっといい
  なと思うと、大抵前線送りにされて戦死して
  しまうの。私って不幸な女ね」

 「レナ少佐は美人さんだからいい人が見つかる
  さ」

 「ありがとう。でも、私を口説いてはだめよ」

 「しないって」

2人は楽しく話しながらドミニオンの格納庫に着
艦した。
後ろからササキ大尉も付いて来たが、彼はその手
の話が嫌いなので会話には加わらないのだ。
今日は、核動力機専用の整備設備の設置が終了し
たので、使い勝手の確認作業が行われるのだ。
ドミニオンの搭載機は核動力機が3機と通常動力
のデュエルダガーが6機とバスターダガーが3機
の計12機で構成されている。
艦長はラミアス大佐で指揮官であるプリンス准将
は第八艦隊の直衛艦隊指揮官という名称が与えら
れてはいるものの、実際には監視が目的のドミニ
オンをハルバートン中将が嫌った為に、揮下の艦
艇も与えられずに単艦で放置されているのだ。
つまり、一艦で勝手にやっていろという事なので
ある。
この話を聞いて、プリンス准将が激怒すると思わ
れたのだが、意外とすんなりと受け入れて毎日ど
こかに出掛けていた。
周りの軍人達は「どうせ、アズラエルのご機嫌取
りで忙しいのだろう」と噂していたが。

 「上司元気で留守がいいか。第八艦隊は精鋭だ
  し、俺達の訓練も順調だ。勝ち負けはともか
  く生き残る可能性は高いだろうから、それで
  良しとしておくか」

フラガ少佐は愛しのラミアス大佐に報告をする為
に、ブリッジへと上がっていくのだった。


(同時刻、プトレマイオス基地某会議室)

この会議室は以前、アズラエル理事とサザーラン
ド准将が秘密の会合を開いた部屋であったが、今
日は更に2人の人物を加えて第二回の秘密の会合
が開かれていた。

 「と言うわけでして、ハルバートン中将は反抗
  的ではありますが、軍の命令に逆らうほどの
  度胸は無いと考えます。このまま先鋒で使い
  潰せばいいのです」

 「そうですか。細かい報告ありがとうございま
  す。サザーランド准将は何か反論はあります
  か?」

プリンス准将の報告を聞いたアズラエルはサザー
ランド准将に意見を求める。

 「いえ、特には。ハルバートンは智将と言われ
  る男ですから能力面に問題はありませんし」

 「戦力の準備とパイロット達の練度の上昇は順
  調ですか?」

アズラエルは次の質問をする。

 「第八艦隊と第七艦隊は早期に再建された為に
  、練度は高いのですが、後から再建された第
  六艦隊と第五艦隊はまだ時間がかかりますね
  。留守番の第三艦隊もまだ70%の数しか揃
  っていませんし」

 「それで、後一ヶ月もかかるのですか。でも、
  それだけあるなら更に戦備を増やせませんか
  ?」

 「無理です。正面装備の数ばかり増やして、補
  助戦力の方を疎かにすると、プラントにたど
  り着く前に漂流する羽目になってしまいます
  」

 「それで、4個艦隊編成でモビルスーツ隊14
  00機とMA隊400機なら健闘した方です
  かね」

正面戦力が4割と考えても連合の物量は恐ろしい
ほどに膨れ上がっていた。

 「プラントは3個艦隊を編成中でモビルスーツ
  隊850〜900機でMA隊が200機ほど
  ですから。しかも、同盟国の艦隊と傭兵部隊
  込みで正面戦力に6割を割くなどかなり無理
  をしています。これを打ち破ればプラントは 
  終わりです」

冷徹な参謀肌のサザーランド准将の報告にアズラ
エルは満足そうに頷いた。

 「やはり、物量差で我々の勝利は固いですね。
  これで、長かった戦争も終わりです。戦後は
  復興の仕事が山ほどありますよ。宇宙開発も
  進むでしょうし、人類の発展はこれからです
  」

結局、プラントもアズラエルも目指しているもの
は同じものなのだ。
ただ、アズラエルの未来にはコーディネーターは
存在していなくて、自分が支配者になろうとして
いるのに対して、プラントは横並びで事を進めて
自分達を埋没させようと考えていた。
自分達を守る為に、多少の力は必要だが目立ち過
ぎて疎まれたり、差別の対象にされるのは二度と
御免というのがプラント上層部の考えになってい
た。

 「ジブリール君、ゼロ艦隊の方はどうですか?
  」

 「練度の上昇と作戦行動パターンの選定など、
  全て順調です」

 「そうですか。それはいいのですが、オーブで
  の独断行動はいけませんでしたね。あれは本
  当なら厳罰ものです。ホムラ代表なら柔軟な
  考えが出来るので心配ありませんでしたが、
  頑固者のウズミが我々と妥協すると思います
  か?あの強力なオーブ軍を倒すのは結構手間
  なんですよ。その経費を考えて欲しかったで
  すね」

 「申し訳ありません」

ジブリールは頭を下げていたが、顔の表情は屈辱
で引きつっていた。
力の関係でアズラエルに従っているが、本当は人
に頭を下げるのが大嫌いな男なので、悔しくて仕
方が無いのだ。

 「(ふん、頭1つ下げられないのか。バカな癖
   に傲慢な男だな)」

プリンス准将は心の中でジブリールをせせら笑っ
ていた。
自分は頭を下げる事くらいなんでもないので、彼
が幼稚なガキに見えたのだ。

 「(しかし、どちらが勝つのか予想不能だな。
   情報はラミアスとハルバートンの名前で送
   っておくか。アズラエルにバレたら2人に
   罪を擦り付ければいいのだし)」

最近、穏健派の軍人との接触が盛んになっていて
、プリンスはゼロ艦隊の情報を流していた。
これが公になれば、禁止されているクローンを大
量に作り、兵器に転用していたアズラエルの権威
は失墜するだろう。
他にも、邪魔になったので事故に見せかけて殺害
した政治家や軍人の情報も握っているが、これは
まだ隠し玉として取っておいていた。
どちらに転んでも自分が生き残れるように、片方
への過剰な肩入れは危険だからだ。

 「(しかし、叩けば埃の出る男だな。言ってる
   事は意外とまともだが、手段を選らばな過
   ぎだ。マキャベリズムを地で行く男だから
   サザーランド准将も付いていってるのかな
   ?)」

 「私は最終決戦時に総旗艦(ワシントン)にサ
  ザーランド准将と共に乗り込みますので、よ
  ろしくお願いしますね」

突然のアズラエルの発言に全員が驚きの表情をす
る。

 「アズラエル理事、前線では何があるかわかり
  ませんから、戦闘は我々に任せて月基地で待
  機していて下さい。あなたに万が一の事があ
  ると連合軍が崩壊してしまいます」 

プリンス准将が心の底から心配そうに言うと、サ
ザーランド准将とジブリール顔のが僅かに歪んだ

 「(ごますり野郎が!)」

 「(無能者は黙っていろ!)」

2人は心の叫びを上げる。

 「心配してくれるのは嬉しいのですが、私は一
  番にプラントへ乗り込まなければいけないの
  で仕方が無いのですよ。表向きの交渉はハル
  外務長官を同行させてやらせるのですが、裏
  の仕事は他人に任せられないですからね」

 「ハル外務長官ですか?あの老いぼれが役に立
  ちますか?」

サザーランド准将が一番の懸念を口にする。

 「彼のお仕事は降伏書類に判子を押させるだけ
  ですから。条件等はアルスター外務次官に予
  め作って貰っているのですよ」

 「アルスター外務次官ですか?彼はいまいち信
  用出来ないのですが」

 「彼は職業外交官です。どちらの勢力とも接触
  しますが、自国の利益を忘れるような男では
  ありませんよ。今は利用できる男です。戦後
  は保障できませんが」

 「そこまで仰るなら」

 「では、今日の会合はこれで終了です。みなさ
  ん頑張ってくださいね」

アズラエル理事の閉会宣言で全員が会議室を出た
が、アズラエルだけが残って独り言をつぶやいて
いた。

 「サザーランドは切れ過ぎですね。戦後は切り
  捨てますか。ジブリールは野心も隠せないほ
  どの無能な男ですから、飼い殺しで十分です
  ね。プリンスは無能なのか?隠している部分
  があるのかまだよくわかりませんね。まあ、
  保留でいいでしょう」

アズラエルは利用できるか?自分の害になら
ないか?でしか人を計る事が出来ない男だった。


(同時刻、プラント周辺宙域)

今まで物資不足で本格的な訓練が出来なかった俺
達にもようやく補給が行き渡るようになり、3日
前から全艦で訓練に出発していた。

 「コーウェル、残存は何機だ?」

 「核動力機の他は俺とセンプウが48機だ」

左翼のクルーゼ司令の艦隊は三つの分艦隊に分か
れていて、俺は「アークエンジェル」を旗艦にエ
ターナル級3隻とローラシア級8隻の合計12隻
の艦艇とオーブ組のイズモ級3隻を指揮下に治め
る第三分艦隊の司令官という扱いになっているの
だが、第一分艦隊の司令を兼任するクルーゼ司令
が何故か「エターナル」を旗艦に指名してしまっ
たのだ。
「ヴェサリウス」では核動力機の運用が困難であ
るというのが最大の理由らしいのだが、「第一分
艦隊の所属艦と第三分艦隊の旗艦が重なってしま
うから止めてください」とお願いしたら、「しま
った!そうだった」というクルーゼ司令のつぶや
きが聞こえてしまったのは悲しかった。
結局、「ヴェサリウス」の格納庫に特別な整備場
所を作ってもらう為に、俺が上層部に嘆願書を出
してそれが認められたので、今回の訓練の終了後
に「ヴェサリウス」が工事に入る予定になってい
た。
クルーゼ司令にはラクスの件でお世話になったの
でお礼も兼ねていたのだ。
その件が決定した後にラスティーとディアッカに
物凄く感謝されてしまったのだが、これはおまけ
に属する話であろう。
そんなわけで、今はクルーゼ司令のプロヴィデン
スは「エターナル」の格納庫で整備されているが
、クルーゼ司令自身は「ヴェサリウス」で指揮を
執っていた。
こうして、左翼艦隊の戦力の9割が集合して日々
訓練に励んでいたのだが、今日は臨時で中央艦隊
との模擬演習が組まれ、就役間もない新造艦の群
れと新人指揮官と新人パイロットで構成された我
々の分艦隊は「ゴンドワナ」所属のモビ
ルスーツ隊に襲撃を受けて艦艇とモビルスーツ隊
の半数が撃破されて大混乱に陥っていた。

 「ハイネもヒルダさんもグリアノス隊長も大人
  気ないよな。俺達新人をここまでボコボコに
  しちゃってさ」

中央艦隊に配属された巨大空母「ゴンドワナ」に
所属しているモビルスーツ隊にはザフト軍最強の
メンバーが集められていた。
モビルスーツ隊の隊長は「戦うゴリラ」ことグリ
アノス隊長が務め、その脇をハイネとヒルダさん
が固めていたのだ。
クルーゼ司令はヴェサリウスで中央に位置する第
一分艦隊の指揮を執っていて、こちらは敵の中央
の部隊を壊滅に追い込んでいたし、右翼の第二分
艦隊も敵分艦隊を相手に優勢を保っていた。
そして、一番の貧乏くじを引いたのが俺達だった

中央に配置されているであろうと予想した「ゴン
ドワナ」が左翼に配置されていて、モビルスーツ
隊の強襲を受けた俺達のモビルスーツ隊はわずか
一時間で半数にまで減らされてしまったのだ。
俺達の艦隊に所属されているパイロット達は新人
が多く、開戦以来の撃墜王しか所属していない「
ゴンドワナ」のモビルスーツ隊と戦って半数が残
っている事が奇跡とも言えた。

 「(ジン掘砲鷲霑が貧弱だよな。ところで、
  オーブ艦隊はどうなっている?」

 「三艦共撃沈寸前だよ。キラも頑張っているけ
  ど敵の攻撃は完全に防げないからな」

ジャスティスの通常動力機に乗っているコーウェ
ルが隣で報告をしてくれているが、状況は芳しく
ないようだ。

 「アスラン達を別働隊として、敵艦隊旗艦の撃
  沈に向かわせたのは失敗だったかな?」

 「ああ、失敗だ。反省しろよ司令官殿」

 「モビルスーツ隊が壊滅状態だぞ。しっかりし
  ろよ。モビルスーツ隊総隊長殿」

俺とコーウェルで憎まれ口を叩き合っていると、
「アークエンジェル」からアビーちゃんの声で報
告が入った。

 「(フューチャー)が撃沈されました」

 「アーサー艦長は後で反省文提出だな」

 「ひどいよ、カザマ君!」

向こうにも声が聞こえていたようで、アーサーさ
んから悲鳴のような声が聞こえてきたが、それど
ころではないので無視する事にした。

 「駄目だな。被害を抑える為にフォーメーショ
  ンを組んでいるけど、全部読まれてしまって
  いる」

敵は全機がベテランなので、防御中心の陣形をと
り、艦も中央に集めて被害を抑えているのだが、
敵はその動きを上回っていて、被害は拡大する一
方だった。

 「残存は(アークエンジェル)、(エターナル
  )、(クサナギ)、(イザナミ)、ローラシ
  ア級3隻のみです」

 「壊滅ですね。タリアさん」

 「このままだと全滅ね」

 「敵の最強部隊を引き付けた状態でまだ全滅し
  ていないからこれは勝ちと言えるのでは?」

 「そんなわけないでしょ」

ついに残存モビルスーツ隊が30機を切ってしま
い、俺達の全滅も時間の問題と思われたその時、
アビーちゃんから連絡が入った。

 「別働隊が(ゴンドワナ)を撃沈しました。そ
  の他にも多数の艦艇に損害を与えて帰還中で
  す」

 「よし、成功だ!」

 「でも、俺達は大苦戦中だ」

 「敵に大音量で教えてやりな。アビーちゃん」

 「了解です」

アビーちゃんは敵に無線に自分達の艦が撃沈され
た事を連絡し始めた。
俺の予想通りなら、戦意を無くして撤退するはず
だったのだが・・・。

 「よくも(ゴンドワナ)を、敵を全滅させろ!
  」

 「「「おー!」」」

敵の攻撃が更に激しさを増していく。

 「全艦撤退!モビルスーツ隊は殿を務めろ」

 「了解!」

 「ふざけやがって!普通は撤退するだろう」

 「クルーゼ司令が残りの敵艦隊に多大な損害を
  与えたから、敵は撤退中らしい。彼らは俺達
  を攻撃する事で敵の追撃を防ごうとしている
  のさ。クルーゼ司令は俺達を救援しなければ
  いけないからな」

 「でも、それってクルーゼ司令が俺達の救援に
  来る事が前提の作戦だよな」

 「バカ!来るに決まっているだろう」

コーウェルは救援を信じていたが、俺は嫌な予感
がした。

 「とにかく、俺達が前線に立って敵の攻撃を防
  ぐ。いいな?コーウェル」

 「了解だ」

俺達は最前線に立って敵を攻撃し始めた。
ゲイツやセンプウをビームライフルで撃ち倒して
、ビームサーベルで切り刻む。
「ジン掘廚狼‘粟、パワー共に今までに乗った
どのモビルスーツよりも高性能機だった。
さすがに、核動力機は一味違う。

 「久しぶりだな、カザマ。一勝負しようぜ」

 「グリアノス隊長ですか。お久しぶりですが、
  遠慮させていただきます」

 「お前を討てば指揮官戦死で戦果を稼げるんだ
  。母艦が沈んでしまった以上、お前には戦死
  してもらう」

 「俺もお前を討つからな」

 「ハイネか、忙しいから後にして。お金は借り
  てないから用事は無いはずだ」

 「バーカ!2対1だ。覚悟しな」

俺はジャスティス通常動力版に乗ったハイネとグ
リアノス隊長に追い回されるが、2人共凄腕なの
で、少しでも気を抜いたら即戦死だ。

 「コーウェル!生きてるか?」

 「ヒルダさん達はキラが引き受けてくれた。俺
  は撤収の指揮を執るぞ」

 「頼むな」

2人の鋭い攻撃が俺を追い詰めていく。
通常動力の機体だったら既に戦死していたはずだ
が、「ジン掘廚龍力なパワーが俺を守ってくれ
ていた。

 「2人共しつこいよ」

 「演習は俺達の負けだからな。せめて、お前を
  討つ!」

 「そんな熱血はお前に似合わない!」

 「カザマ、腕を上げたようだが、俺からは逃れ
  られんぞ」

 「おっさんに迫られても嬉しくないです」

コーウェルはモビルスーツ隊を殿にして艦隊を撤
退させていたが、乗艦を落とされた「ゴンドワナ
」のモビルスーツ隊追撃を受けて、数をどんどん
減らしていった。
オーブ組のキラはジャスティスに乗ったヒルダさ
んと彼女が指揮する部隊のモビルスーツ隊に翻弄
されていつもの実力が発揮できておらず、「イザ
ナミ」も撃沈され、唯一残った「クサナギ」を守
るモビルスーツ隊もわずかに8機のみ、アサギ・
マユラは何とか生き残っているが、ハワード一尉
とホー一尉は既に戦死と判定されていた。

 「2人が戦死したら、計算が成り立たないだろ
  うが!後で、腕立て伏せ500回!これは司 
  令官命令だ!」

2人は無謀にもハイネとグリアノス隊長に一騎討
ちを挑んで返り討ちにされたのだ。
チームワークを崩した罪は重い。

 「ホー一尉がいくら凄腕でも、ジャスティスに
  乗ったグリアノス隊長に勝てるわけ無いでし
  ょうが!」

 「マックもカザマ司令と互角に戦えるハイネさ
  んに挑むなんて無謀過ぎ!」

2人はマユラとアサギに怒られていた。

 「なあ、本当にクルーゼ司令は救援に来るのか
  ?」

2人の攻撃を必死にかわしながら、コーウェルに
確認を取るが。

 「戦術のセオリーでは来るハズなんだけど・・
  ・」

コーウェルの自信がどんどん小さくなっていく。

 「ラウに常識を求めてもね・・・」

デュランダル外交委員長を通じて友達付き合いの
あるタリア艦長のつぶやきが無線に入ってくる。

 「あっ、タリアさん!その一言はまずい!」

無線の声を聞いてしまった揮下の部隊に動揺が走
った。

 「大変だ!救援は来ないぞ!」

 「このままでは全滅だ!」

 「早く逃げ出すぞ!」

演習を真剣にやってくれているのは良い事だが、
部隊は混乱して統率が取れなくなってしまった。

 「タリアさん、副司令なんだから言葉に気をつ
  けて!」

 「ごめんなさい。つい、本音が」

 「本音って・・・」

 「カザマ、覚悟!」

一瞬の隙を突かれてしまって、「ジン掘廚魯哀
アノス隊長に撃墜されてしまった。

 「あーあ、死んじゃった」

 「司令が戦死するなよ!」

コーウェルが戦死した俺に文句を言うが、俺はも
う口出し出来ないのだ。

 「指揮を副司令のタリア・グラディスが引き継 
  ぎます。全艦撤収。コーウェル総隊長は援護
  をお願い」

 「了解!」

その後、何とか撤収に成功したが、アスラン達別
働隊と合流した頃には、残存艦艇は「アークエン
ジェル」と「クサナギ」と「エターナル」のみで
残存モビルスーツはわずか18機という有様だっ
た。 
全体的にはクルーゼ司令の左翼艦隊が大勝利を収
めた演習だったのだが、俺達の分艦隊は壊滅して
しまったのであった。


模擬戦終了後、俺達は模擬戦の反省会を行うべく
、「ゴンドワナ」に到着していた。
メンバーは俺とコ−ウェルとタリア艦長とカガリ
ちゃんで、他にクルーゼ司令とオキタ副司令と第
二分艦隊の司令官も一緒だった。

 「クルーゼ司令、救援無しなんて酷いですよ。
  おかげで全滅に近い状態でしたよ」

 「それは、君が強力な核動力機で別働隊などを
  組むからだろう。普通に防御していればここ
  までの惨敗は無かったと思うが」

 「無理です。(ゴンドワナ)のモビルスーツ隊
  のパイロット達はウチと違って精鋭揃いです
  よ。数機の高性能機なんて時間稼ぎくらいに
  しか役に立ちませんって。指揮するグリアノ
  ス隊長も人間じゃないんですよ。ゴリラがモ
  ビルスーツに乗ってるんですよ。人間の俺で
  は勝てませんって」

 「力説しているところを悪いんだが、後ろにい
  るぞ」

コーウェルの指摘で後ろを見ると、グリアノス隊
長とハイネの姿が見える。

 「グリアノス隊長、お久しぶりです」

 「誰がゴリラだ!誰が!」

 「ハイネが言ってました」

 「さらりと嘘をつくな!」

 「でも、2人共宇宙に上がってしまって大丈夫
  ?」

 「俺達だけだ。部隊の基幹要員は全員残留だか
  らな。最終決戦時の助っ人だとさ。新型モビ
  ルスーツが貰えるってのも受け入れた大きな
  理由だけどな」

 「相変わらず新型機が大好きなんですね」

最終決戦に向けて、多少の人事異動が進んでいる
ようだった。
ちなみに、ハイネの話によるとミゲルは右翼艦隊
に配属されて、ジローはその下でモビルスーツ隊
を統率しているらしい。

 「では、こちらへどうぞ」

従兵の誘導でブリッジへ上がると、そこは「アー
クエンジェル」の何十倍もの広さで、多数の艦橋
要員が計器とにらみ合っていて、中央の巨大な地
図の上の駒を総司令部の参謀や指揮官が動かしな
がら、先ほどの作戦の検討をしていた。 

 「クルーゼ司令、それと他の諸君もご苦労」

ザフト軍艦隊総司令兼中央艦隊司令官のユウキ総
司令が俺達に労いの言葉をかけながら挨拶をして
きた。

 「わかっていたつもりなんだが、やられてしま
  ったな」

 「鼎戦を仕掛けて失敗したようですね」

 「ああ、先読みしすぎた」

 「どういう事だ?」

クルーゼ司令とユウキ司令の言葉のやりとりを聞
いていたカガリが俺に質問してきた。

 「中央艦隊も左翼艦隊も三つの分艦隊に分かれ
  ている。これは理解できるよね?」 

 「ああ」

 「だから、分艦隊同士の戦いが三つ起こるわけ
  だ。ユウキ司令は自分の艦隊を勝たせる為に
  、自分の艦隊で一番強い分艦隊を俺達の二番
  目に強い艦隊と戦わせ、二番目に強い艦隊を
  俺達の三番目に強い艦隊にぶつけ、一番弱い
  艦隊を敵の一番強い艦隊にぶつける作戦を取
  ったんだよ」

 「そうすると、どうなるんだ?」

 「ユウキ司令の艦隊は一番強い艦隊と二番目に
  強い艦隊が生き残り、こちらは一番強い艦隊
  しか残らない。後は二艦隊で一艦隊を撃破す
  れば簡単に勝てるわけだ」

 「でも、上手くいかなかったよな」

 「クルーゼ司令が上手くやったさ。俺達は一番
  弱い艦隊だからね」

いくら核動力機が数機配備されていても、新人パ
イロットと新造艦ばかりの俺達はヒヨッ子部隊な
のだ。
それに、俺はさっきは文句を言っていたが、司令
官としてはクルーゼ司令の作戦を絶賛していた。
それは、もし俺が司令官でも同じ事をしたはずだ
からだ。
更に、俺がやった別働隊の派遣は将棋で言うなら
、桂馬と香車を突撃させて金や銀を取ったような
もので、邪道と言われても反論出来ないものだっ
た。 

 「だが、今回は鼎戦は採用されない。敵に抜か
  れて万が一にも核攻撃でも示唆されたらプラ
  ントは壊滅の危機を迎えるからな。阻止戦を
  張ってそこから敵を奥に侵入させないのが最
  重要課題だ」

 「訓練としては最適でしたね。うちのヒヨッ子
  達も現実を理解できたでしょうし」

俺はユウキ総司令に意見を述べる。
現に、俺の分艦隊のパイロット達はほとんどが新
人なのだ。

 「問題の核動力機はどんなものだね?」

 「機体の性能と特性の関係で、一般機と連携し 
  て戦うのが難しいです。特別攻撃隊を編成し
  て大戦果を上げたまでは良かったのですが、
  本体は壊滅状態でして・・・」

 「何故、クルーゼ司令は援軍を出さなかったの
  かね?」

 「追撃で忙しかったようですよ」

 「クルーゼ司令・・・」

 「(ヴェサリウス)にプロヴィデンスが搭載さ
  れていたら、追撃などオキタ副司令とアデス
  艦長に任せて援護に向かったのですが、生憎
  とプロヴィデンスは(エターナル)の格納庫
  でしたから」

 「モビルスーツで援軍に行くのでは無くて、戦
  力を少々差し向けてくれれば・・・。いや、
  (ヴェサリウス)の格納庫の工事はすぐに行
  うから・・・」

優秀な事は間違いないのだが、かなり変人のクル
ーゼ司令にはユウキ総司令も困ってしまっている
ようだ。

 「(ジン掘砲覆里任垢、火力が低いのと、信
  用性に欠けるTフェイズシフト装甲なのが気
  になりますね」

 「あれは元々通常動力機だった機体に無理やり
  核動力を載せているからな。Tフェイズシフ
  ト装甲はバッテリー機の頃の名残なんだよ」

 「後、ミサイルが全然役に立たないと思います
  。連合もフェイズシフト装甲機を多数配備中
  ですからね。目くらまし程度の効果しかあり
  ませんよ」

 「困った話だな。君の事だから指揮に使う程度
  なのだろうけど、簡単に撃破されてしまった
  ら艦隊が混乱してしまうしな」

 「後日、軍事工廠で使える武装を探す事にしま
  す」

 「そうだな。向こうには連絡を入れておくよ」

その後、演習の総括を行ってから、艦内の食堂で
ハイネやグリアノス隊長と話をするが、こちらの
参加者は俺とタリアさんだけで、残りの連中は帰
ってしまったのだ。
仕事が忙しいというのが表面上の理由になってい
るが、実はクルーゼ司令が嫁さん以外で唯一苦手
にしているのがグリアノス隊長らしい。
詳しい理由は聞いた事が無いのでよくわからない
が。

 「シンガポールや台湾は大丈夫なんですか?」

 「東アジアの負けっぷりは歴史に残るほどのも
  ので、ありゃあ、戦後の分裂は避けられない
  だろうな。噂じゃあ内部分裂を抑えるのが精
  一杯でプラントと裏取引をして戦闘を回避し
  ているらしい」

 「俺達はシンガポール戦以来、戦闘をしていな
  んだよ」

ハイネの話によると、最近はスクランブル出動す
ら無い状態で、台湾軍パイロットの訓練が一番の
大仕事になっているらしい。

 「アジアは分裂してしまうのか」

 「日本と台湾を中心にした極東連合とインドを
  中心にした西アジア連合という名称の共同体
  と東アジア共和国の3つに分裂するらしいわ
  。極東連合はプラント寄りで、西アジア連合
  は地球連合寄りみたいね」

タリアさんはデュランダル外交委員長から仕入れ
た情報を教えてくれた。

 「世界情勢は複雑怪奇ですね」

 「日本が独自の作戦を行うという噂もあるんだ
  よ」

 「独自の作戦ですか?」

 「樺太を占領するらしい」

 「ユーラシア連合を敵に回すんですか?」

 「今更だろう、交戦国なんだから。それに、ユ
  ーラシア連合の主戦力は大西洋と月に集中し
  ているからな。チャンスとも言えるわけだ」

 「逆襲をかけようにも大西洋艦隊はジブラルタ
  ル攻略とアフリカ開放作戦で消耗するだろう 
  し、月の艦隊も我々に倒されて消耗するだろ
  うしな。それを見越しての作戦だろう」 

ユーラシア連合は地球連合内で第二位の国力を持
つ国家連合なのだが、この戦争ではいまいち存在
感を示せていなかった。
元々大西洋連邦と仲が悪く、独自の行動を取った
結果が戦力の無駄な損失を招いていたのだ。
イスラム連合との小競り合いや、過剰に梃入れし
ていたアフリカ大陸で多数の人員と装備の喪失と
マダガスカル島の陥落。
そして、幾度と無く行われた地中海の覇権をかけ
た決戦での敗北で地中海艦隊を全滅させられ、ジ
ブラルタル開放作戦も過去に何度か行っていたが
、結果は全て失敗している。  
宇宙でもアルテミス要塞が完全破壊されてしまい
、今では艦隊寄港地を月に間借りしている状態な
のだ。
最終決戦時には艦隊を出してくると思われるが、
利用だけされて美味しいところは大西洋連邦に持
っていかれるだろうと噂されているようだ。

 「良くも悪くも、カリスマのある指導者がいな
  いとこんなものですかね」

 「プラントのカナーバ議長は意外といい女だし
  、日本の石原総理は力強い政治家だ。連合の
  アズラエル理事も有能ではあるからな」

 「いい女か。ハイネらしいな」

 「あの人結婚してなかったかしら?」

 「それは関係ないんですよ。多少歳は食ってい
  るが、いい女の為に戦う。男としては最高の
  シチュエーションです」

 「そうなの・・・」

ハイネの力説に、タリアさんはどうにも判断つき
かねるという返事をしていた。

 「俺は家族の為に戦っているんだ。カザマとハ
  イネは独身だからわからないだろうが、世の
  中で一番大変な戦争は家族を養っていく事な
  んだぞ」

 「えっ、グリアノス隊長って結婚できたんです
  か?」

俺がそう言った瞬間に頭に拳骨が落ちた。

 「痛いですよ」

 「当たり前だ!これをよく見やがれ!」

そう言ってグリアノス隊長は一枚の写真を見せて
くれたのだが、そこには物凄い美人の女性と生ま
れたばかりの赤ん坊が写っていた。

 「嘘!めちゃめちゃ美人じゃん。どこで誘拐し
  たんですか?」

再び頭に拳骨が落ちた。

 「これ以上やられたらバカになりますって」

 「既にバカだろうが!」

 「あら、かわいい赤ちゃん」

 「やっぱり、タリア副司令は赤ん坊に意識が行
  くんですね」

 「そりゃあね。私も母親だから」

俺は完全に無視されてタリアさんとグリアノス隊
長の家族談義が始まってしまった。

 「俺は恋人すらいないからな。カザマはどうな
  んだ?」

 「一応いるよ。でも、意外だな。お前モテるだ
  ろうが」

 「プラントに一年以上帰ってないからな。赴任
  先の女は色々面倒だから」

 「そうか」

 「実は3日後に帰港したら、同期で飲み会をや
  る予定なんだよ。メンバーは俺とミゲルとコ
  ーウェルとスズキだけだけどさ。その時に彼
  女を紹介してくれよ。ミゲルは恋人が出来た
  らしいから紹介してくれるらしいし、スズキ
  も婚約者を連れてくるそうだから」

最近、俺つながりでジローとコーウェルが加わっ
て5人組が誕生していたのだが、ハイネはいつの
間に連絡を取っていたのだろうか?
人懐っこくて、男にも女にも人気がある不思議な
魅力を持つ男なのだ。

 「俺は参加するけど、彼女は予定を聞かないと
  わからないな。色々忙しいみたいだから」

数日前の喧嘩が終わってから、俺は特にラクスと
の関係を隠す事をしなくなっていたのだ。
恋人がいるかと聞かれれば素直にいると答えてい
たし、名前を聞かれたらラクス・クラインだと答
えていたのだ。
始めはみんな俺の軽いジョークだと思っていたよ
うだが、アスランがカガリと仲良くしているとい
う事実が伝わってくるに従って、事実だと認めて
くれたらしい。
そして、何故かこの噂は部隊外に広がっていかな
かった。
不思議に思ったので、アーサーさんに理由を聞い
てみたら、この噂を部隊外に広げてザラ国防委員
長の耳に入れると、南米に左遷されるという微妙
にリアルな噂も一緒に流れているからとの事であ
った。

 「誰なのかは当日のお楽しみって事で」

 「そんなに驚く女なのか?」

 「ある意味、衝撃的だろうな」

タリアさんとグリアノス隊長の話も終わり、俺達
も話を切り上げて「アークエンジェル」に戻って
行った。
それから、3日間訓練と演習を繰り返した俺達は
プラントへ帰還する事にする。
新造艦のエターナル級2隻と「ゴンドワナ」は不
具合を念入りに調べないといけないからだ。
新造艦は色々手間が掛かるものなのだ。


 「さーて、明日は本格的にメンテに入ってしま
  うからお休みですね」

 「そうね、私は子供達が待っているから、家に
  帰るわよ。それと、明日はカザマ君にプレゼ
  ントして貰ったバックを持って出掛けようか
  しら」

 「バック如きで3000アースダラーですもの
  ね。タリアさん鬼ですよ

 「ギルバートがケチなのよ」

 「それは違うと思います・・・」

結局、タリアさんが以前所望していたバッグは3
000アースダラーという超高値のバックで、俺
の財布は思いっきり薄くなっていた。

 「タリア義母さん、帰りましょう」

ラスティーの部隊で、量子通信技術を応用した武
器を多数搭載している改良型ミーティアを動かし
ているレイ・デュランダルが仕事の終わったタリ
アさんを迎えに来たのだ。

 「ええ、帰りましょうか。子供達も待っている 
  からね」

 「タリアさんはお母さんしてるんですね」

 「そうよ、長男のレイはいい男でしょ」

 「ちくしょう!美男子は敵だ!」

 「あなたもモテるでしょう」

 「色々豆に動かないと駄目なんですよ。レイは
  黙っていてもモテるから羨ましい」

 「別にそれほどモテませんが」

そう言っているレイのスポーツバックには多数の
女性から送られたプレゼントが入っていた。
彼は女性兵士から絶大な支持を受けていて、ファ
ン倶楽部まで作られているのだ。

 「レイ、その内ディアッカに暗殺されるぞ。あ
  いつはモテないから」

レイのミーティアはディアッカの「フリーダム
」と合体して強力な火力を展開する事が多い為に
、相棒と言えるような関係にあるのだが、レイば
かりが女性にモテたらディアッカの機嫌も悪くな
りそうなものだ。 

 「ディアッカさんは尊敬すべき上官ですよ。そ
  んな事はしないと思いますが」

 「それならいいけどね」

レイに手を出すと、逆にディアッカが女性陣に殺
されそうだけど・・・。
その後、タリアさんとレイは帰宅の途につき、俺
はハイネ達との待ち合わせ場所に移動した。
途中でラクスに連絡を入れると、出席するとの事
だった。
ハイネの驚く顔が楽しみだ。
待ち合わせ場所の喫茶店に入ると、ハイネとミゲ
ルが既に待っていた。

 「ミゲル、久しぶりだな」

 「お互いに悪運が強いみたいだな」

 「お前の恋人って誰?」

 「カザマの良く知ってる娘だぜ」

 「誰だろう?」

その時、1人の女性が入ってくるが・・・。

 「ミゲル、お待たせ」

 「どうせ、まだ半分も来ていないさ」

 「あれ?アビーちゃんがいる」

世間って狭いよな。

 「カザマさん、私がミゲル・アイマンの彼女で
  す。よろしく」

 「意外だったわ。いつ知り合ったんだよ」

ミゲルは宇宙でアビーちゃんは俺達と地球巡りを
していたのだ。多分、半年以上会っていないはず
だ。

 「遠距離恋愛ってやつです」

 「ひどいな。秘密にしてるなんて」

 「カザマさんも秘密にしていたじゃないですか
  」

 「俺は仕方がないでしょうが」

 「確かにそうですけどね」

俺達の会話の内容にミゲルとハイネが首をひねっ
ていたが、すぐにコーウェルとジローが入ってき
たので、全員の意識がそこに行ってしまう。

 「これで全員か?」

 「カザマの彼女がまだだな」

ジローが婚約者を連れてきていて、紹介も終了し
たのでミゲルが場所の移動を提案したが、ハイネ
がそれを止める。

 「そういえばさ、さっき外でラクス様を見たん 
  だよ。ラッキーだったよな」

 「ええ、私も見たわよ」

ジローは婚約者と2人でラクスの目撃談を話した

ちなみに、ジローの婚約者はナターシャさんとい
う絵に書いたようなロシア美人であった事を伝え
ておく。

 「ラクス様なら、アスランに会いに行ったんだ
  ろ」

 「羨ましいな。アスランの奴」

ミゲルとハイネは事情を知らないので、まだラク
スがアスランの婚約者だと思っているのだが、ア
ビーちゃんは事情を知っているので、俺に「まだ
、話していないのですか?」という表情をしてい
た。

 「まあ、もう少しでわかる事だから」

喫茶店のドアが開いて最後の待ち人が到着して、
俺達に挨拶をする。

 「お待たせして申し訳ありません。ヨシヒロの
  婚約者のラクス・クラインと申します。よろ
  しくお願いします」

 「嘘・・・」

 「へっ?」

 「俺は最近知ったが、秘密を漏らすと南米行き
  という噂だったからな」

 「私も知っていました」

 「驚いたな」

ミゲル、ハイネ、コーウェル、アビー、ジローが
それぞれに感想を述べる。
夜7時、ほとんど客のいない喫茶店にプラントで
一番有名な歌手が現れたのだ。
その衝撃は大きさは想像を超えるのだろう。
事情を知らなかった人は・・・。

 「みんな揃ったし、早く飯食いに行こうぜ」

 「私もお腹が空いてしまいましたわ」

俺とラクスは至って普通に食事を催促したのだっ
た。


 「ハイネ!よりにもよってここかよ!ラクス様
  がいるんだぞ!」

 「いるのを知ってたら別の場所にしたさ」

ミゲルがハイネに文句を言っているこの場所は、
「蓬莱」という昔なつかしの居酒屋という形態を
取っているお店である。
このお店は日本人の店主が5年前から経営してい
て、アカデミー時代に俺が偶然見つけて週一で通
っていたのだが、いつの間にかハイネやミゲルも
通うようになっていた。
色々な料理が出て、酒を飲めて値段もそこそこな
ので重宝していたのだ。
ここの店主は若い頃は世界中を放浪していたとい
う良く聞くような人生経験をもつ人で、ナチュラ
ルでありながらプラントに移住してお店を開いた
という変り種な人でもあった。

 「久しぶりに来て、ここかよは無いだろうが!
  」

50代の店主がミゲルとハイネを怒鳴りつけてい
る。

 「いや、あのね。色々事情があってね」

 「とにかく、奥の座敷を空けてあるから早よ行
  けや!」

 「おやっさん、元気してた?」

 「おお、カザマか。久しぶりだな。しかし、軍
  人ってのは因果な商売だよな」

 「まあね。今日は婚約者を連れてきたんだよ」

 「ラクス・クラインと申します」

 「へえ、可愛い娘だな。上手くやったじゃない
  か」

 「おやっさん、それだけかよ。普通、驚かない
  か?」

 「ミゲル、客には平等に接するものなんだよ。
  別に評議会の議長が来ようが、大西洋連邦の
  大統領が来ようが、俺の態度は全く変わらな
  いさ」

口ではそう言える人は多いのだが、実際に出来る
人はここの店主くらいしか見たことが無い。

 「ここに立ってると目立つから奥に入りな」

おやっさんの言葉で奥の座敷に入った俺達は酒を
頼んでから、料理を待つことにする。

 「俺は一度だけここに来た事があるんだよ」

 「俺も何回かはあるよ」

 「私は月に一度は来てる」

コーウェル、ジロー、ナターシャさんはこのお店
を知っていたようだ。

 「ジローは同じ日本人だからわかるけど、ナタ
  ーシャさんは何故に?」

 「私の父親は日本人だから」

 「納得だ」

世界で国家の統合が進んでも、その国の文化や習
慣まで統合されたわけでは無いので、外国に出て
も同じ出身国同士で結婚する事は非常に多かった

やはり、長年一緒に暮らすのに食習慣が同じだっ
たりすると争いも起こらなくて便利なようだ。
暫らく話していると突き出しと酒が運ばれて来て
、料理も次々に運ばれてきた。 

 「それじゃあ、乾杯しますか。今日再会出来た
  事を祝して」

 「「「乾杯!」」」

俺達はビールを飲みながら料理を食べ始める。
女性陣は甘めのカクテルやサワーを飲んでいるよ
うだ。

 「しかし、不思議だよな。どうしてプラントに
  刺身があるんだろう?」

 「カレッジで魚の養殖を研究している連中がこ
  この常連だから、試作品を安く分けて貰って
  いるんだ」

おやっさんがビールグラスを片手に俺達の会話に
加わってきた。
どうも、ラクスに気を使ってくれたらしくてお店
を貸切状態にしてくれたのだ。

 「おやっさん、悪いね」

 「最近忙しかったからいいんだよ。プラントが
  日本と同盟なんか組みやがるから、日本人の
  客が増えて大変だったんだ」

 「日本式の居酒屋なんてプラントに一軒だけだ
  からね」

 「おかげで他の客が寄り付かない。最近、1人
  で飲みに来る軍人が多くて辛気くさいし」

 「一応客なんだから辛気くさいは言い過ぎじゃ
  ない?」

 「酒は楽しく飲む。これが俺の信念だ。お前達
  は大丈夫なようだが」

横を見ると、ミゲルがハイネとコーウェルがジロ
ーと楽しそうに話していたし、女性陣も3人で楽
しく話しているようだ。

 「今日は貸切だからゆっくりして行けや。ご飯
  もデザートも出してやるから」

そう言うと、おやっさんは調理場に戻っていった

 「ラクス、日本食は大丈夫だったよな・・・」

美味しそうに刺身を食べているので大丈夫のよう
だ。

 「日本の方は色々な物を食べるのですね」

 「まあね、初めて会った頃のハイネとミゲルな
  んて、ハンバーガーばっかり食べてて異常だ
  と思ったしな」

 「悪かったな。お前が貧乏な癖にグルメを気取
  るからだ」

ハイネが俺に文句を言っている。

 「任官直後は軍艦の飯が不味くて痩せたほどだ
  からな」

 「普通は高カロリーだから太るんだけどな」

開戦前から暫らく小隊を組んでいたジローは食べ
物の好き嫌いが無いので、食べ過ぎて太ってしま
ったくらいだった。

 「私は色々作ってあげてるでしょう?日本料理
  も洋食もロシア料理も」

 「ナターシャは料理が上手だからな」

 「姉さん女房は金のわらじを履いて探せってか
  」

ナターシャさんは21歳でこの中で一番の年上だ

 「金のわらじ?」

 「日本のことわざさ。簡単に言うと金属製の靴
  を履いて探し回れって事」

どうせ、わらじなんてミゲルは知らないだろうか
らな。

 「それよりも、私料理が苦手なんですよ。ナタ
  ーシャさん、教えて下さい」

アビーちゃんがナターシャさん懇願している。

 「私もレパートリーが少なくて・・・」

そういえば、ラクスの料理はシチューが多いよう
な・・・。

 「その内、教えてあげるから」

 「帰りに、この店の料理のレシピを教えてやる
  よ」

追加の料理をテーブルに置きながらおやっさんが
助けを出してくれた。

 「「ありがとうございます」」

 「カザマは食べる物にだけは五月蝿いからな」

 「そうですわね」

 「そうかな?」

 「そんなぬるい話題はどうでもいいんだ!お前
  、何時から俺達を謀っていたんだ?」

ハイネが一番気になっているであろう事を聞いて
きた。

 「えーとね・・・」

俺はこれまでの経緯を説明する。

 「台湾コンサートでの俺の純情を返せ!」

 「それは無理でしょう」

ハイネの抗議を軽くスルーした。

 「でも、アスランは怒らないのか?」

 「アスランはカガリちゃんと仲良くやってるか
  ら」

 「カガリちゃん?」

 「オーブのお姫様だよ」

ミゲルの疑問に答えてあげる。

 「お姫様か。俺も見てみたいな」

 「幻想を抱きすぎるとガッカリするぞ」

ジローはお姫様という単語に過剰な期待を抱いて
いるようだが、現実を知っているコーウェルが釘
を刺す。

 「ブスなのか?」

 「いや、まだ16歳だけど将来は美人になると 
  思うよ。スタイルも良いし。だけどね、ちょ
  っと性格が男っぽいかな?」

 「男っぽいのか・・・」

 「モビルスーツに乗って、俺達と訓練をするよ
  うなお姫様なのさ」

 「アビー、俺に黙っているなんて傷ついたぞ」

 「私が知ったのも、コーウェルさんと同じ時期
  だもの。それに、話すと南米に左遷って噂は
  さっき聞いたでしょ」

ミゲルはアビーちゃんが黙っていた事を抗議した
のだが、知ったときは訓練中の軍艦の中で連絡も
取れないのだから仕方が無いと思う。

 「そんなわけで、俺は隠さなくなったから、そ
  ろそろザラ委員長が怒鳴り込んでくるかも知
  れないな」

 「明日には大騒ぎになっているだろうよ。事実
  を知ってる連中がみんな下艦しているんだか
  ら」

コーウェルは明日が心配のようだ。

 「お前、やっと同期の出世頭になったのにもう
  左遷かな?」

 「さあね?」

 「カザマさんって出世頭なんですか?」

ナターシャさんが質問してきた。

 「そうだよ。カザマは艦隊司令官で俺とスズキ
  は役職名は違うけど隊長クラスの権限を持っ
  ている。ハイネは少し特殊で(ゴンドワナ)
  の全モビルスーツ隊を指揮しているグリアノ
  ス隊長の補佐だから、副司令クラスの権限を
  持っているし、コーウェルはカザマの艦隊の
  モビルスーツ部隊の指揮を全て任されている
  から、同じく副司令扱いだな」

俺は分艦隊司令なので、一応司令官クラスの権限
を有し、その下で艦隊副司令のタリアさんと総隊
長という名称でモビルスーツ部隊を統率するコー
ウェルがナンバー3として副司令扱いになってい
たのだ。
そして、ハイネは巨大空母「ゴンドワナ」と同じ
分艦隊に所属するモビルスーツ隊150機以上を
指揮するグリアノス隊長の下で副隊長を務めてい
るので、上層部はハイネを副司令格で遇していた
のだ。
最後に、ミゲルは右翼の分艦隊のモビルスーツ隊
80機あまりを指揮する隊長に就任していたのだ
が、この部隊は上層部に「ゴンドワナ」ほどの重
要度は無いと判断されている為に、ミゲルは隊長
扱いのままだった。
その癖、ミゲルの下に就いているジローは半数の
40機ほどを指揮しているので隊長扱いになって
いたりと、おかしな人事制度が未だにまかり通っ
ていた。

 「どういうわけか、俺達の同期の赤服は戦死率
  が高くてな。生き残りではカザマがトップに
  なってしまったのさ」

 「まあ、そうなのですか」

ラクスは湯豆腐を美味しそうに食べながら俺に聞
いてくる。 

 「あっ、俺?俺は卒業時は5位だったけど、上
  はみんな死んだんだっけ?」

 「主席のダリルと三位のリュウは開戦時に戦死
  しただろうが。二位のワイドバーンはジブラ
  ルタルで(乱れ桜)に倒されたし、四位のア
  ーノルドは負傷して後方勤務に回されたはず
  だ。ほら、これでお前がトップだ」

 「へえ、ワイドバーンは(乱れ桜)に倒された
  のか。噂だと美人らしいけどな。オーブでは
  ディアッカにおばさん扱いされてキレてたけ
  ど」

 「お前、何にも知らないのな」

 「ミゲルは何処から情報を集めてくるんだよ」

 「ザフトの戦死公報見ろよ」

 「今度からそうする」

 「このバカが赤服を着てるんだからな」

 「勉強を教えてやった恩を忘れやがって」

 「お前が恐ろしいほどの世間知らずだったのを
  、俺達が直してやっただろう」

 「それで、ハイネさんとコーウェルさんとミゲ
  ルって何位卒業だったの?」

 「ハイネが6位でコーウェルが7位で俺はギリ
  ギリ10位だよ」

アビーちゃんの問いにミゲルが答えている。

 「俺は緑服だから関係ないな」

 「でも、出世はしているのよね」

 「ジローは指揮が上手いからな」

卒業時18位だったジローだが、指揮と部下の教
育の上手さで赤服と変わらない出世速度を維持し
ていた。 

 「おっ、新しい料理がきたな」

今までに大量に出された料理はほとんど無くなっ
ていた。
全員見かけよりも食う人間ばかりなので、このく
らいでは足りなかったのだ。

 「今日はラーメンを作ったんだけど」

おやっさんが人数分の丼を持ってきた。

 「塩味のラーメンか」

 「塩トンコツって奴だ。イスラム教徒とユダヤ
  教徒はいないだろう?」

 「いないいない」

 「いいな。何でも作れて」

アビーちゃんが羨ましがっていた。

 「この商売は料理が色々作れないと成り立たな
  いのさ」

 「おやっさんは世界中を放浪していたから何で
  も作れるんだろ?」

 「金が無くなると、料理屋でバイトしてたから
  な。他所の国の料理とか作ると意外と好評だ
  ったりしてな」

 「それで、最後はプラントで開業か」

 「コーディネーターってのは効率第一で食生活
  が貧しい奴が多いんだよ。だから、隙間産業
  だと思ってな」

 「それは否定できないな。俺は日本から来たか
  ら余計にそれを感じる」

 「食料が自給出来なかったという理由もあるの
  ですが」

ラクスは外人なのに上手に麺を啜っていた。
実は麺を啜る事が出来ない外人はとても多いのだ

 「人間は一度贅沢をすると、それを忘れられな
  くなる。ここの常連の研究員どもはマグロを 
  養殖するとか、黒毛和牛を育てるとか研究が
  おかしな方向に行ってるみたいだぜ」

 「何を食わせたんだよ?」

 「別に、寿司を握ってステーキを食わせてやっ
  ただけだ」

材料を安価に手に入れる為に、手段を選ばないよ
うだ。

  「最後はデザートだ」

おやっさんは手作りのあんみつを持ってきてくれ
た。

 「おやっさん、俺達だけの時はこんな物出なか
  ったじゃないか」

 「野郎に作ってもつまらない」

 「常連に気を使えよ」

 「新規客に気を使ってリピーターを増やしてい
  るんだ」

俺とミゲルの抗議は軽くかわされてしまった。
ただの若い女好きである事は明白なのだが。


 「ご馳走様。また来るわ」

 「「「ご馳走様でした」」」

 「おやっさん、店潰すなよ」

 「抜かせ!大丈夫だわい」

時間は午後11時を過ぎ、俺達はお腹も一杯にな
ったのでお暇する事にする。
ハイネが余計な事を言っているようだが、後は普
通に挨拶をして店を出た。

 「色々な料理が出て面白いお店でしたね」

 「俺はカザマに教えて貰ったんですよ」

 「俺もです」

 「調子いいよなこいつらは。でも、何か聞きた
  い事は無いのか?お前らほとんど聞いて来な
  いし」

 「お前がラクス様にどんな事をしているのかな
  んて聞きたくもない」

 「俺も」

 「お前がアビーちゃんにしている事だ」

 「カザマさん、それセクハラですよ」 

俺達は街中でくだらない会話を続けていたのだが
。 

 「確か、明日は定例評議会だから大騒ぎになる
  ぞ。シーゲル元議長とザラ国防委員長の激突
  があるだろうな」

唯一冷静なコーウェルの指摘で全員の表情が凍り
付いた。

 「さて、そろそろ帰ろうかな。みんなは明日は
  休みなのか?」

 「俺は明後日が休みだ」

 「俺はアビーに合わせて休みを取った」

 「俺も明後日なんだよな」

ハイネ、ミゲル、ジローが続けて答える。
まあ、全員一緒の休みなんてありえないけど。

 「コーウェルは?」

 「俺は見合いをさせられるんだ!」

 「ご愁傷さま」

 「遺伝子合致者が見つかったそうな。相性は最
  高だからと言われて強制的に参加させられる
  羽目になった」

 「別に、嫌なら結婚しなければいいんだから、
  楽しみにして行って来いよ」

 「ハイネは気楽でいいよな。お前に譲ってやる
  よ」

 「俺は自分で探すからいいさ」

コーウェルの家は代々財務系の官僚を多数輩出し
ている名家でプラントに上がった後もその伝統は
続いているらしいのだが、奴は何を狂ったのか軍
人に志願してしまい、家族に早く辞めて帰って来
いといわれ続けているようだ。
当の本人は戦争が終われば、軍人を辞めて官僚を
目指すつもりのようだが、奴は1人息子なので家
族が心配しているのだろう。 

 「絶世の美女かもしれないぞ」

 「司令官殿は気楽でいいよな」

 「司令官が暗かったら困るだろうが」

 「それはそうだけど。まあ、楽しみにするって
  事で」

俺達は解散してそれぞれ帰宅の途についた。
俺とラクスは絶妙のタイミングで迎えにきた車に
乗って帰宅する。

 「とても楽しかったです」

 「そう?俺の何時もの行動範囲内だけど」

 「アスランでは決して行けませんでしたから」

 「俺なんて高級レストランとかに憧れはあるん
  だけど、いざ行くとくつろげなくてな」

 「そうなのですか?」

 「味が良いのはわかるんだけど。雰囲気がね」

そのまま帰宅した俺達は翌日の休みもを2人っき
りで過ごしたのだった。
昨日のコーウェルの情報通りシーゲル閣下は評議
会に出席する為に、朝から出掛けていたのだが、
夜になって帰宅したシーゲル閣下は特に何も語ら
ず、例の問題がどうなったのかは誰にもわからな
かった。


(9月1日、プラント定例評議会)

この日の定例評議会は大した問題や言い争いも無
く、普通に進んでいた。

 「戦力は予定より10%増しで用意出来たし、
  練度も順調に上がっている。後は戦うのみだ
  な。地球派遣軍もアフリカはバルトフェルト
  司令が守りきるだろうし、ジブラルタルも敗
  北する事はあるまい。敵の目的は戦力の釘付
  けだろうからな」

 「日本が独自の作戦を行うようですが、太平洋
  艦隊が動き出しませんか?」

エザリア議員が懸念を口にした。

 「あの戦力はおいそれとは磨り減らせないのだ
  。艦隊を喪失して、パールハーバーを攻撃さ
  れたら、大西洋連邦は太平洋を失ってしまう
  からな。奴らはパールハーバーの悲劇の再来
  を恐れているだろうしな」

 「しかし、日本の力が増大し過ぎませんか?」

エルスマン議員は別の問題を口にした。

 「君はマージャンと言うゲームを知っているか
  ね?」

 「中国のゲームですよね」

 「そうだ。四人で行うゲームだ」

 「それが、何か?」

 「勝つ為には駆け引きが必要なのだ。自分だけ
  が勝っていると思われると、負けている三人
  全員から標的にされてしまう。だが、2人が
  有利になっていたら、負けている2人はどう
  思う?」

 「負けている二人は勝っている二人を標的にす
  るでしょうが、目標が分散する可能性が高い
  ・・・」

 「そういう事だ。我々だけが恨まれる必要は無
  いのだよ」

 「さすがですね。ザラ委員長閣下は」

 「次は講和時の外交ルートの設置状況について
  、デュランダル外交委員長から説明をお願い
  します」

 「外交ルートは多数設置しました。スカンジナ
  ビア王国ルートとバチカンルート、オーブル
  ート、東アジア共和国と日本からもルートを
  開いています。後は、マルキオ導師にも協力
  して貰っています」

カナーバ議長から促されて、デュランダル外交委
員長が説明をした。

 「東アジア共和国と日本が協力しているのです
  か?」

エザリア議員が不思議そうな顔をしている。

 「日本は主要企業の経営者が大西洋連邦の穏健
  派の官僚と連絡を取っています。仲介はアル
  スター外務次官が行っているようです」

 「彼は本当に大西洋連邦の政治家なのですか?
  」

 「彼は誰よりも愛国者ですよ。このルートが講
  和の役に立てば、大西洋連邦の企業が日本企
  業経由でプラント同盟国との直接貿易を再開
  できます。これは大西洋連邦にとっては大き
  な利益になります」

 「東アジア共和国が仲介に入る理由がわかりま
  せんが」

 「今大戦で一番の負け組みが東アジア共和国で
  す。講和を結んでも大西洋連邦の土台は揺る
  ぎもしませんが、このままでは、東アジア共
  和国は分裂と内乱で大国から転落するでしょ
  う。ですが、上手く講和を纏められれば凋落
  を少しは抑えられます」

 「必死だからこそ当てになると?」

 「そうです」

 「なるほど、よくわかりました」

エザリア議員とデュランダル外交委員長の応答が
終了する。

 「マルキオ導師は何をしてくれるのだね?」

以前のやりとりで、マルキオ導師を信頼出来なく
なっていたシーゲル元議長が彼の役割の説明を求
めた。

 「彼には各種慈善団体や人権団体、ボランティ
  ア団体、左翼系の弁護士団体、マスコミ関係
  者を動かして貰っています。大西洋連邦では
  現在情報統制が厳しいので、そこを突けばか
  なりの成果が期待できるでしょう」

 「ストレートパンチにはならないが、ボディー
  ブローの様に後から効いてくると?」

 「そういう事です」

シーゲル元議長は納得したようだ。

 「後は何かありますか?」

 「私から1つあります」

 「アマルフィー技術委員長どうぞ」

 「例の核動力機の件ですが、通常型のジャステ
  ィスとフリーダム、ドレッドノート、プロヴ
  ィデンス一号機を核動力機に再換装します。
  更に、搭載艦の専用整備スペースの整備も2
  日ほどで完了します。これで、核動力機の配
  備数は18機まで増えました。連合の核動力
  機の半分ですが、性能はこちらが上ですので
  心配は無いと思います」

 「結局は封印した兵器を使う羽目になりました
  か。人類とは罪深い生き物ですね」

 「罪深くても、生きていかないといけませんか
  ら」

アマルフィー委員長の報告も終了してカナーバ議
長は会議の閉会を宣言したのだが、何故か誰も席
を立たなかった。  

 「シーゲル、最近ラクス嬢は元気かな?(アス
  ランがプラントに帰ってから一度も会ってい
  ないからな。勘付かれる可能性が高いな)ア
  スランはザラ家の仕事が忙しくてな」

 「ああ、元気なようだな。(まずいな。気付か
  れたのか?)ラクスも歌手の仕事が忙しくて
  な」

 「お互いに大変だよな」

 「ああ、大変だな」

2人の白々しい会話を聞いていた他の議員は真相
を話したくて仕方が無いのだが、自分が一番初め
に教えるのは御免だと思っているので、状況を見
守ってるだけだった。

 「彼らは何を言いたいのですか?」

唯一真相を知らないカナーバ議長は隣りにいるデ
ュランダル外交委員長に真意を問い質した。

 「実はですね・・・」

デュランダル委員長は事情を細かく説明する。

 「そんな下らない事でおどおどしてるのですか
  ?」

 「そんな、下らないって・・・」

 「エザリア議員、別に誰と誰がくっ付こうと関
  係ないじゃありませんか」

 「そうは思いますが・・・」

 「マッケンジー委員長、別に誰かが損をするわ
  けでは無いでしょが」

 「そう言えばそうだな」

 「オーブとの関係強化に繋がるわけだからかえ
  って良いのかもしれない」

アマルフィー委員長も賛同の意見を述べる。

 「別にザラ委員長にバレたって問題は無いでし
  ょうが」

 「それは確かにそうだ」

 「では、エルスマン議員、仲介をお願いします
  」

 「えっ、私がかね?」

 「議長命令です。では、私達は帰りますので」

 「よりにもよって私?」

エルスマン議員を置いて全議員が帰ってしまった
ので、仕方なく仲裁に入る事にした。
どう足掻いても議長命令には逆らえないからだ。

 「あの、シーゲル元議長・・・」

 「何かね?」

 「あの、全てばれてますが」

 「何がかね?」

シーゲル元議長は表面上は笑っているが、「お前
、余計な事を話すなよ」と顔が語っていた。

 「あの、ザラ委員長」

 「何かね?」

 「全部ばれてます」

 「何がかね?」

ザラ委員長も「余計な事を言うなよ」という顔を
していた。
ディアッカを通じて、アスランとカガリの仲を知
っていると思われたらしい。

 「私って何なんだろう?」

 「さあ、用事が無いなら帰りたまえ」

 「私達は友情を深めるのに忙しいのだよ」

結局、エルスマン議員は仲介に失敗してカナーバ
議長にヘタレ扱いされてしまい、カナーバ議長が
2人を呼んで話す事になってしまったのだ。
そして、プラント評議員達とその息子達を悩ませ
たこの話題はザラ委員長が「何だ、じゃあ何の問
題も無いんだな」と発言した事であっけない終結
をみたのであった。

 「私の苦労って何なんでしょう?」

 「エルスマン議員、あなたは度胸がないから議
  長になれないんです」

カナーバ議長にズバリと言われてしまってエルス
マン議員は落ち込んでしまった。

 「私の場合、余りにも早く知りすぎてしまって
  」

 「デュランダル委員長、後で大切なお話があり
  ます」

デュランダル委員長の顔が青くなった。

 「私は色々と考えた結果・・・」

 「シーゲル閣下!あなたが素直に話せば済む問
  題だったのですよ!」

 「私に罪は無いぞ」

 「ザラ委員長はアスランの事を隠したでしょう
  が!罪は同等です!」

結局、全議員が呼び出されて説教されたのだった
。 

 「何で彼女が議長に選ばれたのかが、今日わか
  った気がする・・・」

これは、何故か一緒に呼び出されて説教されたア
マルフィー委員長の心の声であった。


9月2日、俺は軍事工廠で新装備の選定を行って
いたが、状況は芳しく無かった。
仕方が無いのでサボリで付いてきたアスラン達に
意見を求めた。

 「ろくな武器が無いよな」

 「贅沢言うなよ」

付いてきたコーウェルが文句を言っているが、自
分はまともな機体に乗っているのだから、それは
無いと思う。

 「全員の意見を求める」

 「ジャスティスのリフターを・・・」

 「却下だ。俺には必要ない」

アスランの意見を却下した。

 「フリーダムの背中の武装を移植すれば・・・
  」

ディアッカの意見もいまいちだった。

 「ミラージュコロイド発生装置を」

 「ニコル、真面目に考えているか?」

 「ドラグーンを装備しましょう」

 「無理だって、使えない」

 「訓練すれば・・・」

イザークが無理を言い始めたので却下した。

 「背中のビームガトリング砲は気持ち良いです
  よ」

 「二番煎じってのもな」

 「そんな理由で却下ですか・・・」

ラスティーの意見もぱっとしない。

 「俺は変な試作品は嫌いなんだよ」

 「わがままですよ。ヨシヒロさん」

 「シホ、命に関わる問題だからわがまま言わせ
  て」

はっきり言って、見た目はジンなのでごっちゃり
と武器を搭載するとおかしく見えてしまい、これ
が余計に判断を迷わせてしまうのだ。

 「モビルスーツはシンプルが一番なのに」

 「これはどうですか?」

工廠の若い技師が指差した方向にただの左腕とシ
ールドが見える。

 「これは?」

 「新型量産機の試作武装の1つです。四連装ビ
  ームガトリング砲とシールドを組み合わせて
  みました。冷却装置は腕に内臓しているので
  、左腕込みになっています。例の手榴弾も装
  備可能ですよ」

 「重そうだね」

 「ガトリング砲のみ、切り離しは可能です」

 「良さそうじゃないか」

 「お勧めですよ」

 「じゃあ、決まりだ。それで、後1つ何か無い
  か?」

 「実は、敵の武器なんですけど・・・」

 「あるのか」

 「背中のミサイルパックをそのまま使う事が出
  来る、新型ミサイルがあります」

 「ミサイルかよ。役に立つのか?」

 「連合では(パンドラの箱)と呼ばれてまして
  、爆発と同時にビーム粒子をばら撒く迷惑な
  兵器です」

 「使い方が難しいという事か」

 「ええ、あんまり近くで爆発させると自分の機
  体に穴が開きます」

 「連合ってバカ?」

 「上手く使えば効果は絶大ですよ」

 「俺が使って勝算はあるのかよ?」

 「ザフトならではの新装備。起爆スイッチに量
  子通信システムを利用しています」

 「俺に使えるか?」

 「大丈夫ですよ。ミサイルの起爆スイッチを入
  れるだけですから。操作をするわけではあり
  ませんし」

 「よし、決めた。(アークエンジェル)に届け
  て頂戴ね」

 「毎度あり!」

ノリの良い兄ちゃんとの会話を済ませた俺は直ぐ
にアークエンジェルに戻った。
結局、追加でアサギからBストライクの予備の対
艦刀を貰ったので、俺的には大満足だったのだ。

 「新装備を加えたお前を(ジン検砲噺討椶Α
  」

 「そのまんまですね」

 「ネーミングセンス悪っ!」

ニコルとコーウェルの毒舌に少し傷つきながらも
俺の新しい相棒の整備は進んでいったのだった。
果たして、これから俺達はどうなってしまうのか

それは誰にもわからなかった。


        あとがき

さっき、カートゥンネットワークで運命の最終話
をやっていましたが、意味がよくわからねえ。
終わり方が中途半端だし・・・。
何か年末に特番をやったらしいのですが、これは
再放送されないのでしょうか?
レンタル版の最終巻には入っていませんでしたね

こすい商売だと思います。
明日はZの劇場版を見に行きます。
私は古いガンダムファンでもありますので。
追伸、噂のグリアノス隊長をまた使用してしまい
ました。
今更別人を出すのもおかしいし・・・。
サイトの方も拝見しましたが、私の方は鼻糞みた
いな話なので許してくださいとしか言えません。
文章量と話数が半端じゃねえな。
私には絶対にできない偉大さですね。
次回更新は不明です。では。

  

 

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