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▽レス始

「これが私の生きる道!最終決戦前夜編2(ガンダムSEED)」

ヨシ (2006-03-22 01:38/2006-03-22 10:17)
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(早朝、クライン邸内)

俺がプラントに帰ってきてから3日が過ぎた。
自分ではどうにもならない大きな力の影響でクラ
イン邸に住む事になった俺は、もう抜け出そうと
いう気持ちすら無くしていた。
理由は簡単である。
物凄く居心地が良いのだ。
アカデミー入学以来、1人で全てを賄っていたの
だが、今は全部やってもらっているのだ。
食事は指定した時間に出てくるし、洗濯は何も言
わなくても全てやってもらえる。
休みの日に自分で洗濯したり、クリーニング屋に
行く必要が無いのだ。
家賃は当然タダだし、高熱費すら掛からない。
そして、車は結局貰ってしまった。
洗車やメンテは使用人がやってくれるし、バッテ
リーはいつも充電されているし、税金もこちらで
払うからと言われてしまった。
つまり、給料全部小遣い状態なのだ。

 「今更、引っ越すのも面倒くさいし、飽きられ
  て追い出された時の為に、金溜めておくか」

自分なりの言い訳を考えて、クライン邸での生活
を続けるのだったが、この日は大変な出来事が発
生してしまうのだった。


朝、目を覚ますと、隣りでラクスが静かな寝息を
立てていた。
俺は彼女を起こさないようにベッドを抜け出して
シャワーを浴びてから軍服に着替えて食堂に顔を
出した。

 「おはよう、婿殿」

 「おはようございます。お義父さん」

シーゲル閣下は早起きで、必ず俺より早く起きて
食堂で新聞を読んでいる。
それと、お義父さんと呼ぶ事が既に決まりになっ
てしまっていた。 

 「どうだね。新しい部隊の様子は?」

元議長であるシーゲル閣下は最終決戦に向けての
準備状況がかなり気になる様子だ。

 「人はようやく全員集まりました。モビルスー
  ツも今日で全機搬入されます。ですが、物資
  不足は相変わらずです」

 「やはりな・・・」

今、ザフト軍は設立以降、最大規模の戦力の編成
を行っている。
その規模は開戦時の決戦戦力の2.5倍に及ぶ。
当然、無理をしているので弊害があちこちに出て
いて、その最たるものが補給物資の不足となって
現れているのだ。
地球派遣軍は現在、補給のかなりの部分を同盟国
と中立国に依存しているので問題は無いが、プラ
ントから送り出さないといけない種類の物資は当
然存在しているし、月航路の輸送艦隊襲撃に就い
ている部隊には最優先で物資を回さなければなら
ない。
結果、一番割を食うのは我々のような本国にいる
編成途上の部隊となっている。

 「エターナル級の二・三番艦の最終艤装は終了
  したのですが、まだ最大加速テストすら行っ
  ていない有様で」 

新造艦なので様々なテストを行わなければいけな
いのだが、物資不足でそれすら儘ならないのだ。
訓練の内容は少し外に出て、モビルスーツを使っ
て訓練する程度だ。

 「物資ならオーブと日本から大量に購入したか
  ら、数日で補給状態は改善されると思う。輸
  送もアイマン隊が中心になって護衛している
  から失敗は無いだろう」

 「ミゲルが護衛しているなら、心配はありませ
  んね」

 「同期なんだろう?」

 「ええ、私よりも優秀な男ですよ」

さすがに、評議会議員なので情報が早くて助かっ
てしまう。 

 「おはようございます。お父様、ヨシヒロ」

丁度、話の区切りが良いところで起きてきたラク
スが挨拶をしてきた。

 「おはよう」

 「おはよう、ラクス」

ラクスが食堂に姿を現すと、使用人達が朝食の準
備を始める。
箸が置かれたので、今日は和食のようだ。
何でも、シーゲル閣下が一度料理人を呼んで調理
させたら気に入ったとかで、3日に一回は和食が
出てくるのだ。
そして、これもクライン邸を離れられない理由に
なっている。

 「あれ?何故に4人分?」

テーブルには4人分の食事の用意がされている。

 「今日はお客様が来られますの」

 「へーっ、そうなんだ。で、誰なの?」

 「以前、お話したマルキオ様ですわ」

あの胡散臭い宗教家か。

 「婿殿は宗教は嫌いなのかね?」

 「嫌いではありませんよ。宗教と宗教活動は別
  物って考えているだけです」

シーゲル閣下の話によると、連合内部の穏健派政
治家や財界関係者との仲介の労を取ってくれてい
る人物らしいのだが、一介の宗教家にどうしてそ
んな事が出来るのか?
謎が深まるばかりだ。 

 「要注意人物だな」

 「おや、お若いのに用心深い方ですね」

執事の案内で1人の中年男性が入ってきた。
彼がマルキオ導師であるらしいのだが、彼は目が
見えないようで、執事に手を引かれながら自分の
席に座っていた。

 「目がお見えにならないのに、私の歳がわかる
  のですか?」

 「ごらんの通り、目が不自由ですので、声を聞
  けばその方の特徴が大体わかります」

やはり、油断ならない男だ。
問題は彼が何を考えていて、何をしたいのかだが
・・・。

 「マルキオ様、ようこそおいで下さいました。
  お食事の用意が出来ていますのでご一緒にい
  かがですか?」

シーゲル閣下がマルキオ導師を食事に誘う。

 「それはありがたい。丁度、お腹が空いていま
  したので」

使用人達が食事を運んできた。
メニューはご飯と味噌汁と煮魚とほうれん草のお
ひたしだった。
どうも、マルキオ導師が来る事が事前にわかって
いたらしく、盲目の導師でも身がほぐしやすいよ
うに煮魚にメニューが変更されたようだ。
シーゲル閣下は箸に慣れていないので、フォーク
とナイフを使い、オーブで和食ばかり食べていた
ラクスは箸を器用に使っている。
そして、肝心の導師は日本人と変わらないくらい
に、上手に箸を使っていた。

 「箸の使い方が上手ですね」

 「日本にも懇意にしている方が多数いまして。
  実は、石原総理からあなたの事は聞いていた
  のです」

俺の事を知っていたのか。

 「実はあなたにお会いするのが本日最大の目的
  だったのですよ」

 「私は一般家庭出の血生臭い軍人です。平和を
  願う偉大な宗教家であるあなたが、わざわざ
  会いに来るような男ではありませんよ」 

 「私もそれほど偉大な宗教家というわけでは無
  いのですが」

 「マルキオ導師って宗教家なんですよね。何教
  を信仰しているのですか?」

俺は一番疑問に思っていた事を質問する。
みんなは宗教家だと言っているが、彼が何教の活
動をしているのかを知らないのだ。

 「プロテスタント系の一宗派を信仰しています
  」

 「キリスト教ですか」

 「ここ100年ほどで勢力を伸ばしている規律
  の緩い新興宗教のようなものです」

マルキオ導師の話によると、この宗派はキリスト
教の一派でありながら、プロテスタント教会から
無視されているような宗派であるらしい。
厳しい教義も無く、土着の文化や習慣も大切にし
て禁止したりしていないので、欧州やアメリカ大
陸以外の地域で信者を多数獲得して大きな勢力を
誇っているらしいのだ。
そして、導師は組織の運営を弟子や同僚に任せ、
自分はオーブ近くの島で孤児院を経営しながら、
世界中を飛び回っているらしい。
彼は宗派の象徴扱いで、比較的自由に動けるよう
だ。

 「それで、世界各地を外交官のように飛びまわ
  れるのですか。キリスト教の一種だから大西
  洋連邦やユーラシア連合の政治家や財界人と
  もコンタクトを取り易いし、東アジア共和国
  には多数のキリスト教信者がいますしね」

 「最近、規律の緩い我々の宗派に鞍替えをする
  欧米人が増えているのですよ。その他の地域
  も同様です」

 「未だに進化論を学校で教えるなとか、中絶反
  対だとか騒いでますしね」

 「よくお分かりで」

 「それで、私に何の用事ですか?」

 「カザマさんはSEEDについて、私とは違う
  見解をお持ちだとか」

 「マルキオ導師は英雄が持っているものだとい
  う考えなんですよね」

 「ええ、そうです」

 「私の考えは持っていると便利かな?くらいで
  、絶対条件ではないような気がします」

 「どうしてそうお考えで?」

 「歴史の書物を見ると、英雄と呼ばれている人
  はピンチを迎えた時に、それを見事に乗り越
  えたという記述が多いではありませんか。多
  分、そのピンチを乗り越える時にSEEDが
  発動していたと私は思うのです。ですが、S
  EEDが無くてもピンチを乗り越えた人もい
  るでしょうし、逆にSEEDが発動しても駄
  目だった人もいると思います。だから、あれ 
  ば便利な能力であると思うのですが、絶対で
  は無いというのが私の考えです」

発動後のアスランとシンとカガリから状況を聞く
と、周りの状況が即時に理解できて、敵の行動が
完全に把握出来るみたいなので、多分軍人向けの
スキルなのだろう。
昔の軍人が政治家を兼ねていた時代には便利な能
力だったであろうと思われる。
戦闘に敗北して逃走する時には便利だと思うし、
少数で多数の敵を撃破した戦いではSEEDが発
動されていたのかも知れない。

 「政治家にはあまり必要の無いスキルですね。
  それに、現代の戦争は政治家が交渉して終わ
  らせるもですので。我々軍人は政治家の命令
  で戦うだけですから」

 「戦争を終わらせるには英雄の出現が必要だと
  思われますが」

 「マルキオ導師はやはり宗教家ですね。救世主
  伝説を信じているのですから。神が遣わして
  くれると思っているのですか?」

 「現に、アスラン・ザラ、カガリ・ユラ・アス
  ハ、シン・アスカの3人にSEEDの発動が
  確認されています。彼らが世界を救うとは考
  えませんか?」

 「全く思いません。アスランは軍人としては優
  秀な男ですが、政治家としては未知数ですし
  、カガリはどちらもまだ未知数です。シンは
  モビルスーツパイロットしては才能があると
  思いますが、それ以外の能力は全く未知数で
  す。つまり、世界の行く末を16歳の少年・
  少女と13歳のガキに任せるのは危険だとい
  う事です。世界の心配は大人がして下さい」

 「そうですか。実はもう1人SEEDを持つ可
  能性がある方がいます。彼ならあるいは・・
  ・」

 「誰です?それは」

 「オーブ軍のキラ・ヤマトニ佐です」

えっ、あいつSEEDを発動出来るの?
俺、絶対にモビルスーツの操縦では勝てないわ。

 「キラですか?」

 「彼の才能を持ってすれば、世界が救われるか
  もしれません。何しろ、彼は世界でただ1人
  のスーパーコーディネーターなのですから」

 「スーパーコーディネーター?」

 「ええ、彼は3年前にバイオハザードを起こし
  たメンデルで・・・」

 「ちょっと待って下さい」

俺は軍本部のカザマ隊司令部に電話を掛けて、コ
ーウェルに出勤が遅れる事を話して任務の代行を
頼んだ。
マルキオ導師の話をちゃんと聞かなければと思っ
たのだ。

 「すいません。お話の続きをお願いします」

それから、一時間ほどに渡ってメンデルの話をし
て貰った。
キラとカガリの出生の秘密とそこで行われていた
様々な研究の話。
そして、一番驚いたのはクルーゼ司令とフラガ少
佐の秘密の関係を聞かされた事だった。

 「キラが人工子宮で生み出された、唯一の成功
  体のコーディネーターで、カガリちゃんは調
  整を受けていないヒビキ博士の娘だったのか 
  。そして、それをウズミ様は知っていた。更
  に、クルーゼ司令がフラガ少佐の父親である
  アル・ダ・フラガのクローンだって?しかも
  、テロメアが短いから長生きできない?」

一般庶民の俺には想像も出来ない闇が、世界には
多くあるようだった。

 「その割りには、クルーゼ司令は明るいな」

彼がフラガ少佐に拘る理由はわかったが、自分の
生まれを呪わなかったのだろうか?
嫁の尻に敷かれて、それどころでは無いのだろう
か?

 「彼を大きく変えたのは、研究者である彼の妻
  の影響が大ですね。旧姓ミサオ・オオツキ。
  父親は遺伝子工学の専門家でメンデルで働い
  ていました。彼女も研究者としては優秀で同
  じく、メンデルで働いていたのですが、数年
  前、メンデルのバイオハザードから奇跡的に
  生き残ってプラントへ逃げ延びたようです。
  そこで、クルーゼ司令と再会してそのまま結
  婚したようですが」

 「バイオハザードですか。そういえば、当時ニ
  ュースでやっていましたね」

 「表面上はそういう事になっています。ブルー
  コスモス強行派のテロを隠す為に、バイオハ
  ザードに見せかけたのが真相ですが」

 「アズラエルの指示ですか?」

 「そうです」

 「理由はコーディネーター関係の研究をしてい
  たから?」

 「それもありますが、事実は多少違います。実
  はメンデルの研究にアズラエルは親子で投資
  していたのですよ。つまりは証拠隠しです」

アズラエル理事がブルーコスモスに急接近する為
の、踏み絵にされたというのが真相のようだ。 

 「企業家ですからね。金儲けの為に投資をして
  も不思議は無いでしょう。証拠隠しにテロを
  行うのは異常ですが」

主義よりも金儲けが大切だろうからな。

 「ウズミ様も出資していました。遺伝病関連の
  研究に支援したかったとの事で」

 「ウズミ様はコーディネーターを認めているの
  ですから不思議な事ではありませんね」  

 「昔のメンデルは金の成る木だと思われていた
  のです。そして、その利益を得る為に、多く
  の研究資金が投下されました。中でも最大の
  出資者はアズラエル理事の父親とアル・ダ・
  フラガの2人でした。当時、対立関係にあっ  
  た2人は競うように資金を投入して研究成果
  を奪いあいました。更に、自分以外の人間が
  信じられないアル・ダ・フラガは自分の後継
  者をクローンで作る事を決意して、それをヒ
  ビキ博士に依頼して・・・」

 「その成果がクルーゼ司令だと」

 「失敗作と言われていましたがね。実は、彼は
  多少コーディネートされていますから」

ヒビキ博士は親切でやったみたいなのだが、アル
・ダ・フラガ氏には失敗作扱いされたようだ。

 「そうですよね。コーディネートされていなけ
  れば、ザフト軍でエースになれませんよね」

ナチュラルがコーディネーター用のOSを動かせ
る可能性はかなり低いからな。

 「それで、クルーゼ司令はSEEDを持ってい
  るのですか?」

 「彼は多分持っていないでしょう。フラガ少佐
  も持っていないようですから」  

遺伝要素があるのか?SEEDは。

 「2人の関係は当事者同士の問題だからこれで
  終わりにして、マルキオ導師はキラをどうし
  たいのですか?」

 「随分と淡白な方ですね。2人の事が気になり
  ませんか?」

 「別に気になりません。親のアル・ダ・フラガ
  はバカ野郎みたいですが、子に罪が及ぶわけ
  でも無いので」

フラガ少佐とクルーゼ司令に何が出来るというん
だ?
1人は女たらしで、もう1人は小遣い確保に必死
で何かを企む暇も無さそうだし。

 「スーパーコーディネーターでSEEDを持つ
  キラ・ヤマト。彼こそ世界を救う英雄に相応
  しい人物です」

 「ですから、あなたは彼を利用して何をしたい
  のですか?」

 「利用だなんて。私は世界を救う英雄の手助け
  がしたいだけなのです」

俺はようやくこの人の本性が理解できた。
彼はやっぱり宗教家なのだ。
神が遣わした英雄を手助けして、世界を平和に導
き、その傍らに立つ事を目標に生きてきたのだろ
う。
差別・貧困・戦争など、世界は平和とは程遠くて
、彼にとって優しいものでは無かった。
救いを宗教に求めたが、それでも完全な平和は訪
れず、世界は未だ混沌の中にある。
そして、彼は最後の救いを英雄に求めたものと思
われる。
神が遣わす、奇跡の英雄。
既存の政治家・官僚・軍人・企業家では無い、無
から生まれたSEEDという奇跡の力を持つ人物

彼にとって、英雄イコール神でそれを手助けする
事が自分の使命だと思っている節があるようだ。
だから、彼は英雄の補佐が出来るように世界中の
政治家や財界人と懇意にしているし、スキャンダ
ルや金銭的な醜聞に穢れないように、辺鄙な島で
孤児院を経営して、世俗から離れた生活を送って
いるのだろう。
彼は世界が混乱すると、必ず出てくる英雄待望論
を純粋に信じているのだ。

 「キラが英雄ですか。多分、本人は望んでいま
  せんよ」

 「運命が彼を導くと思われます。その時は全力
  で彼を助けるまでです」

 「運命ですか。頑張って、何十年も待っていて
  くださいね」

多少、皮肉っぽい口調になってしまったが、俺は
マルキオ導師という人物があまり好きではないよ
うだ。
かなりの影響力を持っていながら、それを本格的
に使わないで、英雄の出現を待ち続けている上に
、キラを自分の眼鏡に適う人物と考えて引き込も
うとしているようだ。
自分は宗教家で世俗的な欲が無く、英雄を献身的
に支える。
彼は無意識に自分を高みに置いて、一段高い所か
ら世界の平和を祈っているようだ。
悪意が無いだけに、非常に性質が悪い。

 「何十年ですか?それほど待たなくても、数年
  もすれば彼は動き出すと思いますが」

 「あなたの下らない予測に興味はありませんね
  」

俺の発言でシーゲル閣下とラクスに緊張が走る。

 「何故、下らないとお考えです?」

 「数年後、せっかく静かになり始めた世界をキ
  ラに破壊させるつもりですか?」

キラが優秀な仲間を率いて、世界を統一して新し
い平和な世界を作る。
率いるメンバーにはアスラン、カガリ、シンが入
っているのだろう。
今更、三国志の世界でもあるまし、100億人以
上の様々な人間が住んでいるこの世界を完全に1
つに纏めて、全員を幸福にするなんてナンセンス
だ。

 「プラントと同盟国が進めている構想は新たな
  勢力の台頭を生み、世界は幾つかの勢力の草
  刈場になってしまいますから」

マルキオ導師の発言に衝撃を受けてしまう。
普通、シーゲル閣下の前で話すような事ではない

本音に属するものだからだ。
それとも、彼はマルキオ導師の共犯者なのだろう
か?

 「それでいいのではないですか?私は大きな戦
  乱が数十年起こらなければ、御の字だと思い
  ますよ。歴史上、数十年間も大きな戦争が起
  こらなかった時代は、貴重で尊いものなので
  すから。数十年後、もし世界が混乱したら、
  その時代の政治家が解決すればいいのです」

 「世界はそうやって戦争と一時の安寧を繰り返
  してきました。ですが、それでは駄目なので
  す。その連鎖を断ち切る為に、キラ達SEE
  Dを持つものが必要なのですよ」

 「そんな聖書に出てくる楽園じゃあるまいし、
  全員が幸福な世界なんて不可能ですよ。あく
  までも努力目標で、まずは自分の周りからで
  しょう」

 「あなたはザフトの軍人だから、それでいいの
  かも知れませんが、キラ・ヤマトには世界を
  救って貰わなければ」

あくまでも、キラが救世主だと言い張るマルキオ
導師に腹が立ってきた。

 「そんなあんたの勝手な都合でキラを変な事に
  巻き込むな!あいつは俺の義弟になるかも知
  れない奴なんだ!キラに手を出すなら俺にも
  覚悟があるぞ!」

 「覚悟ですか。ぜひお聞きしたいものです」

盲目の温和な宗教家が初めて見せる冷静な表情だ

 「例えばなのですが、ある宗教家がプラントか
  ら地球へシャトルで帰る時に、近くでザフト
  のモビルスーツ隊が演習をしていました。そ
  の時、ある一機の黒いモビルスーツが訓練用
  のビームライフルでシャトルを的にして射撃
  訓練を行っていたのですが、何故かライフル
  が本物に摩り替わっていて、宗教家は神の下
  に召されてしまうのです」

俺が冷静に導師の暗殺をほのめかすと、シーゲル
閣下とラクスに驚愕の表情が走るが、マルキオ導
師は顔色1つ変えない。
その事から見ても、彼はかなりの曲者だ。
悪意は無いようだが、独善的な部分が多すぎる。

 「1つお聞きしたいのですが、そんな事をして
  その黒いモビルスーツのパイロットは罰を受
  けないのですか?」

 「彼は、オーブのIDカードを持っています。
  オーブへ逃亡して別人として生きていくでし
  ょう。彼はずる賢いのです」

キラは確かに、生まれは特殊だし能力は優れてい
る。
だが、本人は事情を知らないし、レイナの話によ
ると以前は引っ込み思案で、今の様に積極的に動
くようになったのは最近の事であるらしい。
そんな彼が救世主になどならないであろう。
彼は、その能力でほんの少し人よりお金を稼いで
幸せに暮らしていけばいいのだ。
以前に、ブルーコスモス系の軍人が特殊部隊を使
って拉致を試みた事があるようだが、今はウズミ
様の庇護で安全に暮らしているようだし、ウズミ
様が亡くなってもカガリが後を継いで弟を守って
いくだろう。
いくら、スーパーコーディネーターと言えども、
数十年で死ぬし、もしレイナと結婚して子供が生
まれても、子供達はただのハーフコーディネータ
ーであり、世界を救う英雄には程遠い存在となる
だろう。
つまり、その程度の事なのだ。
マルキオ導師は色々、事情に詳しい男のようだが
、物の本質が見えていないようである。

 「あなたは出演したくない役者を強引に舞台に
  上げようとしているのです。その役者の家族
  としては、強引な演出家を演劇の世界から退
  場させるだけですよ」

 「婿殿、その発言は危険だよ。導師には連合内
  の政治家との仲介の労を取ってもらっている
  のだから。彼はプラントにとっても重要な人
  物なのだ」

シーゲル閣下が俺を止めに入ったが、俺は以前か
ら疑問に思っていた事を質問する。

 「どうして導師なのですか?バチカンに仲介の
  労を取って貰った事はないのですか?」

世界の歴史を紐解くと必ず裏で暗躍しているバチ
カン市国のローマ法王とその取り巻きの枢密卿達

彼らの方がプロテスタントの新興宗派の象徴より
も大物との仲介をしてくれるはずだ。

 「彼らはブルーコスモスと繋がりのある連中が
  多い。信用できない」

 「大丈夫ですよ。お義父さんはあの国が何年存
  在しているか知っていますか?彼らは多数の
  情報を世界中の信者や牧師から集めています
  し、有力政治家や財界人に多数の信者を抱え
  ています。彼らはそれを駆使して何百年も影
  響力を保ったまま生きてきました。彼らの中
  にはアズラエル理事のやり方に反発を覚えて
  いる者も少なくないでしょう。そういう人物
  と接触して仲介の労を取って貰えばいいので
  す。カソリックの連中にもちゃんと解かって
  いる人は存在しますから」

連中も一枚岩では無いし、一環境団体に拘るはず
が無いのだ。
それに、アズラエルの暴走は世界を混乱に巻き込
む要素の1つになっている。
条件さえ揃えばいつでも切り捨てるだろう。
彼らは生き残りのプロだからだ。

 「欲深い坊主達に支払う対価を考えると、頭が
  痛いな」

 「彼らは代価なんか求めませんよ。自分達の仲
  介で戦争が終わった。その事実が彼らの存在
  感を確立して更に歴史を刻んでいくのです。
  金なんて寄付でいくらでも集まってくるので
  すから」   

 「そうか、大変魅力的な提言だな。カナーバ議
  長に相談してみるか」

 「やってみて損は無いと思います」

プラントの住民には宗教観が薄い人が多い。
遺伝子をいじって人を作り出す事自体が神を冒涜
する行為と思われているのだから、当たり前なの
だろう。
どうも、プラントの政治家は宗教勢力との交渉を
余りした事が無いようなのだ。
マルキオ導師は唯一の例外であるらしいが、彼は
余り宗教色を出さない人物のようだから。

 「では、私はこれで。マルキオ導師も頑張らな
  いと影響力が無くなってしまいますよ」

俺は屋敷を出て出勤する為に、車に乗り込もうと
するとラクスが俺を引き止めた。

 「ヨシヒロ!」

 「どうしたの?ラクス」

 「あの、マルキオ様は・・・」

 「俺は決して奴を認めないし、馴れ合う気も無
  い。彼は所詮、傍観者なんだよ。アズラエル
  に取り入って、現代の新ローマ教皇でも目指
  しているならまだ可愛げがあるんだけどね」 

 「マルキオ様は戦争で親を亡くした孤児を引き
  取って育てていて、決して悪意のある方では
  ありません」

 「宗教家なんだから、奉仕活動をするのは当た
  り前なの。有益な宣伝活動なんだし。それに
  、無人島で10人ほどの子供を預かっている
  だけでしょ。大規模にやると、英雄殿に手を
  貸せないからだと思うよ」

 「では、私はどうすればいいのですか?」

 「そんな事知らないよ。自分の交友関係には自
  分で責任を持ってくれよ。第一、政治家では
  無いラクスは宗教家の彼とだけ付き合ってい
  ればいいのだから。とにかく!キラ達を利用
  する事を考えている以上、俺は奴の接近を許
  さないし、ラクスがそれに手を貸すのなら、
  俺にも考えがある」

今日の件で、俺は今までラクスに感じていた疑問
を無視できなくなっていた。
彼女は政治家では無いが、歌手としてプラントに
絶大な支持を得ているし、同盟国や敵国の将兵に
まで人気があって、その影響力が日々増している

そんな彼女が英雄待望論を持つマルキオと結び付
いて何をしようとしているのか?
俺は手駒に1つなのではないのか?
父親であるシーゲル閣下まで利用しているのでは
ないのか? 
心の奥底から不信感と疑問が沸いてくる。

 「なあ、ラクス。俺って君の便利な手駒の1つ
  なのかい?」

マルキオの件で気が立っていたのだろう。
一番口にしてはいけない事を言ってしまう。

 「そんな!ただ私は・・・」

俺は車を降りてクライン邸の外に向かって走り出
した。
大変心地よい3日間だったが、今はここにいたく
なかったのだ。
クライン邸を飛び出した俺はレンタカーを拾って
軍本部に到着した
その内、荷物を引き取りに行かなければなるまい

大変気の重い作業になるだろうが。

 「シンとステラの推薦が取り消されないように
  運動しないとな。これだけは譲れないな」

司令室でお茶を飲みながら独り言をつぶやく。
手には書類があるのだが、何が書いてあるのかが
わからないのだ。
俺は相当動揺しているようだ。

 「遅かったな。何をしてたんだ?」

コーウェルに事情を話すわけにはいかなかったの
で、適当に書類にサインをしてから、新型機の「
ジン掘廚鯆汗阿靴董同じく新型機を受領したア
スラン達と模擬戦を開始した。
新型モビルスーツの性能を見極めなければならな
いからだが、俺は絶不調で誰と戦っても惨敗して
しまう。
自分で何をやっているのかが解からないのだ。

 「どうしたんですか?ヨシさん」

 「具合でも悪いんですか?」

アスランとニコルに心配されてしまうが、簡単に
話せる事情では無いし、キラの親友であるアスラ
ンには絶対に話せない内容だ。
軽い気持ちで聞いた話が心に重く圧し掛かってく
る。 
結局、俺は適当なところで切り上げて機体を降り
てしまい、恒例のガイやホー1尉との対決も止め
てしまう。
今日の俺には絶対に勝てないからだ。 
アークエンジェル艦内の個室で再び、書類を無気
力に眺めながら外を見ると、全パイロット達がモ
ビルスーツで訓練を行っていた。
アスラン達は新型機の装備のテストを行い、それ
にクルーゼ司令が乱入してくる。
彼は10基以上のドラグーンを巧みに操って、ア
スラン達を翻弄していた。
暫らくすると、キラ達オーブ組も乱入してきて訓
練は更に賑やかなものになっていた。

 「クルーゼ司令はどうしてあんなに元気なのか
  な?」

マルキオ導師がどうしてあんなに事情に詳しいの
かはわからないが、彼はあのヘビーな話題をラク
ス達にすら、初めて話したようで2人もかなり動
揺していたようだ。

 「墓場にまで持っていくには重過ぎる話題だよ
  な」

夕方、今日の仕事が終わり、俺はロビーで缶コー
ヒーを飲みながらボーっとしていた。
結局、補給状態の改善が進むまではプラント周辺
をうろついて訓練するしかないからだ。
当然、仕事が早く終わってしまう。
早く、本格的な訓練に出たい気持ちだった。
どうせ、住む場所も無くなってしまったのだし。

 「カザマ君、元気が無いな。ラクス嬢と喧嘩で
  もしたのかな?」

 「クルーゼ司令!声が大きい!」

まだ周りに職員がいるのに、平気で秘密を声に出
しながら、クルーゼ司令が声を掛けてきた。

 「新居に帰らないのかね」

クルーゼ司令はこちらの事情を心得ているようだ
が、俺は全然不思議に思わない。 

 「色々、ありましてね。飯食ったら、司令室で
  寝ようかと思いまして」

 「では、決まりだな。我が家で夕食を食べるが
  いいさ」

 「えっ?」

俺はクルーゼ司令に引きずられるようにして、彼
の自宅に連れていかれた。
そこで、クルーゼ司令の嫁さんに風呂を勧められ
て、着替えまで借りてしまう。 

 「お風呂まで貸して貰ってすいません。日本式
  の湯船ってオーブの実家以来ですよ」

 「私の好みなのよ。おかげで出費がかさんだけ 
  ど、ローンを払うのはラウだから関係無いし
  」

クルーゼ司令がまだ風呂に入っていて良かった。

 「家の母さんみたいな事を言いますね」

 「カザマ君のお母さんって専業主婦?」

 「ええ、結婚する前は大学で親父の助手をして
  いたようですが」

 「私も似たようなものね。研究なんて面倒臭く
  てね。憧れの専業主婦生活を満喫しているわ
  けよ」

その後、クルーゼ司令が風呂から上がってきたの
で夕食を一緒に食べたのだが、メニューは和食で
とても美味しかった。
食後、お茶を飲みながら3人で話をする。

 「カザマ君、マルキオ導師がシーゲル閣下の屋
  敷を訪問したようだが、それが今日の不調の
  原因かね?」

 「よくご存知で。色々ダークな内容の話を聞か
  された上に、下らない世迷言を聞かされて腹
  が立ったんですよ」

 「ほう、私の出生の秘密でも聞いたのかね?」

 「・・・どうしてそれを?」

いきなり核心を突かれてしまって動揺を隠せない

 「彼は宗教家ではあるのだが、色々と裏世界の
  事情にも詳しくてな」

 「クルーゼ司令も色々詳しいですね」

 「ああ、君が考えつかないような情報網をいく
  つも持っているのさ」

 「世界征服でも狙ってます?」

 「世界滅亡を企んでいる」

 「それは、凄い事を考えていましたね」

多少驚いたのだが、あのクルーゼ司令なので話半
分に聞いておく。

 「ミサオ、軽くスルーされてしまったぞ」

 「現実味に欠ける話だからね。私も初めて聞か
  された時、笑ったじゃない」

 「えっ、本当に考えていたんですか?」

まあ、あの出生なら考えるかもしれないが、今ま
で誰も成し遂げた事の無い偉業だしな。

 「延期しただけだよ。子供が生まれて大きくな
  らないと実行部隊が集まらないからな」

 「実行部隊って何人必要かわかってます?」

 「子供が孫を生み。孫が同士を集めればそれな
  りの人数が集まるだろう。勿論、軍人になっ
  ていて出世している事が条件だが」

 「先の長い話ですね」

 「予定では、50年ほどで人類は滅亡するはず
  だ」

 「また伸びたわね」

 「ミサオさん、伸びたって?」

 「昔は丁度今頃には滅ぶって言ってたのよ。そ
  れが、10年後、20年後、30年後ってど
  んどん伸びていって今では50年後」

 「50年後ですか?クルーゼ司令って生きてい
  られます?」

老化が早くて長生きできないというのがマルキオ
導師の話だったからな。

 「それがわからないよのね」

 「わからないんですか?」

 「老化が早いのは、アル・ダ・フラガの遺伝子
  をコピーしているからテロメアが短いのよ。
  それはわかる?」

 「一応、赤服を着ていましたからね。座学は良
  かったですよ」

 「それで、私はテロメアを修復する酵素を開発
  して定期的に注射しているのよ。元々これは
  ある老化が異常に早く進む遺伝病の特効薬と
  して開発が進められていたもので、私は体中
  の細胞にこの酵素が行き渡るように改良した
  だけなんだけど、これで早期の老化は防げた
  はずよ」

 「でも、50年は辛くありません?」

 「定期的にラウの身体年齢を測定しているんだ
  けど、結果は30代後半ってところね。遺伝
  子提供者のアル・ダ・フラガは年齢よりも若
  々しい人物だったようね。まあ、運が良けれ
  ば後50年は生きられるかもね」

 「計算が合わなく無いですか?アラ・ダ・フラ
  ガが30代後半で遺伝子を提供したとして、
  クルーゼ司令の年齢が加算されるから肉体年
  齢は60歳を超えているはずです」

 「この酵素はあくまでも、テロメアが実年齢の
  長さに近づくように補修するだけなの。これ
を多用しても若返ったり、寿命が延びたりし
  ないのよ。そういう目的でメンデルでも研究
  されていたんだけど良好な結果が出なくてね
  。寿命はまだ神の領域って事かしら。だから
  、ラウも30代後半を過ぎれば、いくらこの
  酵素を注射してもテロメアは縮んでいく。で
  も、注射をしないと老化が異常に早まって死
  んでしまう。ラウのテロメアが30代後半か
  ら長くならないのは、その遺伝情報が始めか
  ら失われているから。こればかりは私でもど
  うにもならないわ」

 「俺の出生の秘密を上回る、ヘビーな人生を送
  っているんですね」

 「確かに、昔は自分の生まれを呪っていたが、
  今は日々の生活に追われてそれどころでは無
  いのだ。戦場でムウを追いかけていればスト
  レスも発散できるしな」

 「そんな理由で追い回されるフラガ少佐が不幸
  ですね・・・」

 「向こうは事情を知らないのだから仕方がある
  まい。教えてやる義理も無いしな」

フラガ少佐、世界滅亡を防ぐ為に、一生追いかけ
られていて下さい。 

 「しかし、君の不調はそれだけが理由ではある
  まい」

 「今更、隠しても意味が無いから話ますよ」

俺はラクスに疑問と不信感を感じた件を話す。

 「なるほどな。君はクライン派が2つある事を
  知っているかね?」

 「2つですか?」

 「1つはシーゲル閣下のグル−プでこれにはカ
  ナーバ議長やギルバートも所属している。そ
  して、もう1つはラクス嬢のグループだ。こ
  れにはバルトフェルト司令やヒルダ・ハーケ
  ンなどの中堅どころの軍人や若手官僚や政治
  家が多数所属しているのだ。今のところ、両
  者は共闘関係にあり、対立はしていない」

 「2つのグループの差って何ですか?」

 「シーゲル閣下の現実路線とラクス嬢の理想路
  線の差というところかな。マルキオ導師の扱
  いもシーゲル閣下は連合の穏健派政治家との
  仲介者として丁重に扱っているだけだが、ラ
  クス嬢は彼の思想に多少共鳴している節があ
  るようだ」

 「そして、俺はその理想を実現する為の便利な
  駒って事ですか・・・」

こんなに暗い感情を抱いたのは何年振りだろう。

 「さあ?それはどうかしら?」

 「どういう事です?ミサオさん」

 「だって、利用するだけならカザマ君を追いか
  けて地球各地を転々としたり、オーブ軍に志
  願なんてしないわよ。コンサートツアーだっ
  てあなたに付いて行く口実にしか聞こえない
  わ」

 「他に用事があってそのついでじゃ無いですか
  ?」

今の俺には彼女が信じられないのだ。

 「うーん、重症ねこの子。ラウ、どうしようか
  ?」

 「カザマ君、明日は休みたまえ。君の部隊の面
  倒はコーウェルに見させるから」

 「いや、でも俺は・・・」

 「君はアスラン達とオーブ組を纏める立場にい
  るのだよ。その上、その他の同盟国艦隊との
  連携も考慮する立場にいるのだ。今のままで
  は使い物にならないし、幸いにして補給の目
  途が立って艦隊演習が始まるのは3日後の予 
  定だから、それまでに立ち直ってくれたまえ
  。それまでは軍本部に近寄る事を禁止にする
  」

 「はあ、そうさせて貰います・・・」

ミサオさんが泊まっていけと言うので、遠慮する
事無く泊まっていく事にする。
将来子供部屋にする予定だという空き部屋に布団
を敷いてもらい、早めに床に入って眠る事にした

正直、休めと言われたのが嬉しかった。
このままでは、何をしても駄目だとわかっていた
からだ。

 「ねえ、カザマ君大丈夫かしら?」

 「彼はまだ若いからな。色々悩む事もあるさ」

 「ラウ、30歳前なのにジジ臭いわね」

 「君は私より年上で、もうすぐ30歳になるで
  はないか」

 「今度歳の事言ったら小遣い減額ね」

 「すいません」

俺の落ち込み振りとは反対にこの漫才夫婦は相変
わらずの様だった。


(同時刻、ザラ邸内)

アスラン・ザラはここ3日間、最高の幸せを味わ
っていた。
自分の父親にはカガリの事を認めて貰っていたし
、彼女は傭兵部隊の隊長としてオーブから派遣さ
れて来たので毎日顔を合わせる事が出来る。
そして、彼女は一応宿舎に指定されたホテルには
帰らずに毎日ザラ邸で食事をして泊まっていくの
だ。
ここの所、ザラ国防委員長は仕事が忙しくて帰宅
しないので、2人っきりの甘い夜を過ごせている

夕方に通いのお手伝いさんが食事の支度だけして
帰ってしまうので、本当に2人っきりになれてし
まうのだ。
今日も、夕食を食べながらワインを飲んで会話を
楽しんでいた。
ザラ委員長が「どうせ飲まないから好きな奴をワ
インセラーから出して飲め」と言っていたので、
適当に選んで飲んでいる。
こうして、本人達は気が付いていないが、1本で
アスランの月給の数ヶ月分のワインが毎日1本づ
つ無くなっている。

 「恐ろしいほど平穏で幸せな日々だな」

 「私は2人っきりになれて嬉しい」

 「イザークとニコルとディアッカに恨めしそう
  に文句を言われるけどな」

 「女々しいな3人共」

 「ディアッカはモテない男の僻みだが、イザー
  クとニコルは彼女がオーブ本国で寂しいだろ
  うからな」

 「あの2人は傭兵には出来ないからな」

 「キラは寂しくないのかな?その手の愚痴を聞
  いた事が無い」

アスランは一番の疑問をカガリに聞いてみる。

 「あいつは忙しいから」

 「忙しい?」

 「毎日飲みに連れ回されているんだよ。ハワー
  ド一尉とホー1尉に。あいつを連れて行くと
  、飲み屋の女性にモテるんだそうな」

 「あいつ、まだ16歳だよな」

自分の事を棚に上げてキラの歳を気にしてみるが

 「私達もこうしてワインを飲んでいるんだから
  お互い様だろう?」

 「プラントでは俺達は成人の扱いだが、キラは
  オーブの人間だからな。でも、レイナにそん
  な店に出入りしている事がバレたら事だぞ。
  ハワード一尉だってアサギに怒られないのか
  ?」

 「だから、私は秘密を保つのが大変なんだ。チ
  ームワークの為に、キラ達の女遊びに目を瞑
  る。隊長って大変だな」

 「いや、キラにそんな甲斐性無いから。どうせ
  、顔を赤くして酒を飲んでいるだけだ」

再び、自分の事を棚に上げて酷いことを言う。

 「アスランもそれほど変わらないだろうが。私
  以外の女性と付き合った事あるのか?」

 「残念ながら無い。ラクスとは付き合うとかそ
  ういう関係では無かったからな」

 「なら、キラと一緒じゃないか」

 「俺はあいつほど甲斐性無しじゃない。アカデ
  ミー生の頃にはヨシさんに連れられてそれな
  りに遊んでいたし」

 「お前な、そんな事を自慢げに彼女に話すなよ
  。まあ、過去の事は怒らないけどさ」

 「といっても、飲みに来ていた女性を誘って一
  緒に楽しく飲むくらいなんだけど。そこから
  先はヨシさんの領分でさ。俺達は子供だった
  から全く歯が立たなかった」

アスランがカザマ隊長の暴露話を始めてしまう。
今日は多少、酒が入り過ぎているようだ。

 「あいつ、そんな事をしてたのか。でも、そん
  なにモテそうなタイプには見えないんだけど
  。背は高いけど、顔は並より少し上程度だし
  、別に金持ちでも無いからな」

 「彼は俺達を飲みに連れて行っても、必ず周り
  に目を向けていて、綺麗な女性がいると速攻
  で声を掛けるんだよ。そして、一時間も話し
  ていると、もうお持ち帰りコースだ。俺達の
  飲み代を払ってさっさと女性を連れて帰って 
  しまう。まさに神業だ。ディアッカなんか本
  当に尊敬していたし」

アルコールの魔力で暴露話が続いていった。

 「不真面目な男だな」

 「でも、次の日はちゃんと訓練を行うんだよ。
  二日酔いなんて絶対にしないし。でも、八月
  に入ってからはナンパをしなくなって、普通
  に飲んで帰るだけになったんだ。思えば、あ
  の頃からラクスと付き合い始めていたのかな
  ?」

 「かなって、お前、婚約者を取られたんだぞ。
  悔しくはないのか?」

 「確かに、ラクスは可愛いけど、14歳でいき
  なり婚約者と言われても実感が沸かなかった
  し。今となっては、カガリがいるから問題は
  無いからな」

 「アスランっ!お前、よくそんな恥ずかしい事
  を」

アスランの言葉にカガリは顔を赤くしてしまう。

 「本当さ。俺はカガリと出会えて本当に良かっ
  た」

 「私もだ」

雰囲気が良くなり、キスをしようとしたその時・
・・。 

 「アスランは幸せで良かったですわね」

 「らっ、ラクスさん!」

 「ラクス!どうしてここに?」

いつの間にか2人の横にラクスが立っていた。
しかも、その表情は今にも泣き出しそうで、その
周りに怒りでは無く、悲しみの黒いオーラが漂っ
ていた。

 「ラクス、どうやって入って来たんだ?」

2人っきりなのでカギを掛けてあるし、警備セン
サーも万全なはずなのに・・・。

 「そんな事はどうでもいいのです。ヨシヒロを
  知りませんか?屋敷に帰って来ないのです。
  私、心配で心配で」

 「いや、どうでも良いって、それは無いと思う
  んだけど・・・」

ザラ家の防犯設備に不備があるのなら教えて貰い
たかったのだが、いつもニコニコしているラクス
がこの世の終わりのような顔をしているので何も
言えなかった。

 「そんな、いい歳の男が1日くらい帰ってこな
  くても大丈夫だって」

カガリは慰めるつもりで言ったらしいのだが、こ
の一言は致命的だった。

 「ヨシヒロは私を捨てて過去の女に走ったんだ
  。アスランと一緒に飲み屋で口説いた変な女
  に・・・。ふえーーーーーーーーーーん!」

 「一緒に口説いたなんて人聞きの悪い」

アスランは初めて見た号泣するラクスに戸惑いな
がらも、自分を弁護する。

 「おい!重要なのはそこじゃないだろ!理由を
  聞き出せよ。理由を!」

 「ラクス、事情を話して下さい。ヨシさんが理
  由も無く出て行くはずが無いでしょう」

アスランはカガリにせっつかれたので理由を聞い
てみる。

 「実は・・・・・・」

 「待てよ、ラクス。これを飲むと楽に話せるぞ
  」

カガリはグラスに入ったワインをラクスに差し出
した。

 「バカ!まずいぞ。酒なんか飲ませて!」

 「大丈夫だって。ちゃんと事情を話して貰わな
  いと対策が立てられないんだから、口の滑り
  を良くする事が重要なんだ」

アスランが苦言を呈するが、カガリには逆らえな
いので黙認する事にする。

 「いただきます」

ラクスは一気にワインを飲み干すと、顔を真っ赤
にしながらお代わりを要求した。


 「おお、じゃんじゃん飲みな」

カガリがグラスにワインを注ぐと次々に飲み干し
ていった。
結局、ラクスはボトル一本を1人で開けてしまう

 「あーあ。こんなに飲ませちゃって」

 「さあ、ラクス。話してみな」

 「えーと、れすね。あれは朝の事れした・・・
  」

ラクスは呂律が回らない状態で朝にあった出来事
を全て話してしまう。

 「なあ、マルキオ導師って何者なんだ?」

 「あまり表に出ない人物だが、宗教家で顔の広
  い人物だ。お父様とも懇意にしている」

話の輪郭は理解出来たのだが、ラクスは酔ってい
てもメンデル関係の話はしなかったので、多少事
情の整理に時間が掛かった。

 「つまり、俺とカガリとシンにはSEEDとい
  う特殊能力があって、キラもその能力を持っ
  ている可能性が高いと。そして、それをマル
  キオ導師は英雄の証拠であると思い込んでい
  て、俺達を下らない英雄戦争に巻き込もうと
  していると誤解したヨシさんにボロカスに論
  破されてしまい、彼をかばったら君も同類で
  俺を便利な駒扱いしているのかと言われてし
  まって、出勤したまま、未だにヨシさんは戻
  って来ないと。そういう事なんだな?ラクス
  」

 「はい、そうれす」

 「難しい話だな。ヨシさんはマルキオ導師を信
  用ならない人物だと思っている。だから、俺
  達を英雄に担ぎ上げようとしている導師に暗
  殺をほのめかすほどなのだろう?」

 「れすから、それは誤解なのれす。導師は未来
  を予言しただけなのれす。SEEDを持つ者
  は必ず世界の表舞台にれて、世界を統べる立
  場の人間になると。キラも必ず数年後には台
  頭してくるはずらと。らから、それを否定し
  たヨシヒロに彼の邪魔をしてはいけないと釘
  を刺したら、キラを利用する気かと激怒して
  しらって」

 「あのさ、ラクス。それじゃあ、ヨシヒロが可
  哀想だよ。あいつは仕事だから仕方が無いと
  か、給料の為だとか適当な事を言っているけ
  ど、この戦争を終わらせる為に、必死に働い
  ているんだ。前回のオーブ戦の時だって家族
  を守る為、部下を1人でも多く生き残らせる
  為、オーブが焼かれない為に命を掛けていた
  。マルキオ導師やラクスから見れば、小さな
  働きで野蛮な戦闘行為かも知れないが、あい
  つは軍人として出来る事を必死にやっている
  んだよ。そうすれば、政治家が話し合いを進
  めて必ず戦争を終わらせてくれると信じて。 
  それを、横からSEEDを持っている人が英
  雄で世界を救ってくれるなんて話をしたら怒
  って当然だろう。部外者が何抜かしてやがる
  って思って当然さ。それに、SEEDってあ
  の戦闘が有利になる現象の事だろ。あんな能
  力があったって16歳の私達や13歳のシン
  に世界なんて救えないさ。私達は出来る事を
  やっているだけだ」

 「そうだな。俺達に世界を救えなんて荷が重い
  話だ。そりゃあ、何十年かすればオーブやプ
  ラントに責任を持つ立場になるかもしれない
  が、世界を統べる英雄ってのはちょっと勘弁
  して欲しい。俺達はそういう家の生まれだか
  ら多少の覚悟が出来ているのだろうけど、キ
  ラとシンなんて一般家庭の生まれだからな。
  絶対に覚悟なんてしていないぞ」

ラクスはカガリとアスランに諭されてしまって大
人しくなってしまう。 

 「なあ、ラクス。君は何を考えているんだ?ヨ
  シさんを自分の理想を叶える為の手駒にして
  いるだけなのか?君が俺達の寄港先を追い掛
  けてきたのは何か目的があっての事だったの
  か?俺達はヨシさんを信頼しているし、彼を
  兄の様に思っている。それは、カガリやイザ
  ーク達も同じだと思う。だから、彼を自分の
  手駒にすれば、俺達もセットで付いてくると
  考えて接近した事が気付かれてしまったから
  、出て行かれたのではないのか?」 

アスランも以前から考えていた疑問を口にしてし
まう。
昔は天然でほんわかした笑顔にしか目が行ってな
かったが、プラントの歌姫として絶大な支持を集
めているラクスがタイミング良く地球の重要な場
所に現れてその支持を拡大させていったのだ。
しかも、シーゲル元議長の娘とはいえ、プラント
と地球各国に太いパイプを持つマルキオ導師とも
懇意にしていて、政治家でも無い彼女が大きな力
を持っている事に疑念を抱いてしまう。
彼の事は父親であるザラ委員長から聞いた事があ
るが、よっぽどの大物政治家でないとその存在す
ら知らないような人物で簡単に16歳の小娘が知
り合えるような人ではないらしいのだ。

 「オーブ戦の時もいきなりベテランの凄腕パイ
  ロット達を派遣してきただろう。後で聞いた
  ら、元の部隊が簡単に手放すような人達では
  無いと聞いたが・・・」

カガリも思い出したように語る。

 「それに、アフリカ戦線でデュエルとバスター
  をバルトフェルト司令に回して貰った事もお
  かしかった。Gは高性能で引く手数多だった
  モビルスーツだ。普通は応援部隊に気前よく
  くれる物では無いし、よく考えてみれば、バ
  ルトフェルト隊長はクライン派だったよな」

アスランはもう1つの疑惑を口にする。

 「ラクス、ヨシさんに近づくのはもう止めた方
  がいい。これ以上、彼を利用するのは可哀想
  だ」

 「違う!私にそんなつもりは無い!」

いきなり大声を上げたラクスにアスランは驚いて
しまった。
いつも穏やかな口調の彼女がこんなに大きな声を
上げたのを初めて聞いたからだ。

 「私はヨシヒロが好きだから!死んで欲しくな
  いから色々手を回したの!ずるいと言われよ
  うと、権力を乱用していると言われようと、
  彼が元気で帰ってきてくればそれでいいの!
  彼に付いて回ったのも、少しでも一緒にいた
  かったから。ただ、それだけなの。マルキオ
  様の件はコンサートツアーを開催する時にお
  世話になったから食事にお誘いしたのだけれ
  ど。それをヨシヒロに誤解されてしまって」

アスランは驚きを隠せなかった。
あのラクスがここまでエゴを出して、日頃の口調
まで変えるとは・・・。 

 「ラクス、そんなにカザマが好きなのか?」

 「私は普通の歌手になりたかったのですが、そ
  れはお父様の娘としては絶対に無理な事でし
  た。どう活動しても政治的な事に利用されて
  しまうのからです。そんな時、ある映像で偶
  然彼を見ました。あまり、軍人っぽく無くて
  、澄んだ目をしている彼を。それでいて、パ
  イロットとしては超一流の彼に興味を持った
  ので、会ってみたくなってアスランの教官に
  とお願いをして、後日、屋敷にも連れてきて
  貰いました。当日の彼は私が綺麗だと言って
  花束をくれて、普通の1人の女性として見て
  くれたのです。それに、純粋に私の歌が好き
  だと。付き合い始めてからも、私が間違った
  事を言うと必ず優しく諭してくれるのです。
  他の人は誰も私に反論なんてしなかったのに
  」

 「長いノロケを聞かされたな」

 「でも、カザマは誤解したまま何処かに隠れて
  いるんだろ?」 

ラクスの長い話に疲れてしまったのか、カガリが
混乱を助長する一言を言ってしまった。

 「そうなのです。私は彼に謝らなければいけな
  いのです。その為にも、一刻も早くヨシヒロ
  の居場所を探らなければ」

 「こんな夜遅くにか?明日にした方が・・・」

 「駄目です。早く彼を探さないと、アスランと
  口説いた昔の女にさらわれる可能性があるか
  らです」

 「また、事実無根な事を・・・」

 「では、まずは関係先を周りましょう。アスラ
  ン、行きますよ」

 「えっ、俺?」

いきなり自分が指名されて驚いてしまう。

 「他に誰がいるのですか?」

 「カガリ、助けて・・・」

 「私は明日早いから寝させて貰う」

アスランは最後の救いを断たれてしまった。

 「では、行きますよ」

 「助けてくれーーー!」

 「せっかく真剣な話をしていたのに、長くは持
  たないんだな」

結局、アスランは俺が立ち回りそうな場所に全て
付き合わされて、翌日は寝不足だったらしい。 
これは、後日カガリから聞いたのだが。


翌日、アスランが眠い目を擦ってザラ隊司令室に
入室すると、イザーク達が怒りの表情で待ち構え
ていた。

 「おい、アスラン!昨日の騒ぎの弁解をして貰
  うからな!」


(昨晩、ジュール邸内)
イザークは突然、ラクスとアスランに押しかけら
れた所為で、母親であるエザリア議員と大騒動に
なってしまったのだ。

 「イザーク!何故、ラクスさんがカザマ隊長と
  付き合っている事を、母である私にまで隠す
  のですか?私は悲しくて仕方がありません」

 「いえ、これは複雑な事情がありまして・・・
  」

 「イザークは私が要らなくなったんだ。フレイ
  さんがいるから必要ないんだ・・・。女手1 
  つで大切に育ててきたのに・・・」

 「母上、落ち着いて下さい。ちくしょう!アス
  ラン!覚えていろよ!」


 「おい!聞いてるのか。アスラン!昨晩は朝方
  まで弁解する羽目になったんだぞ!侘びの言
  葉一つ無いのか?」

 「アスラン、酷いですよ。僕の家も大混乱でし
  たよ」


(昨晩、アマルフィー邸内)

 「なあ、どういう事なんだ?ニコル説明してく
  れ!」

 「ニコル、両親に隠し事をするなんて、母さん
  悲しくなってくるわ」

 「やっぱり、優しいお前に軍人なんて無理だっ
  たんだな。私が評議員だから無理していたん
  だろ。そのストレスで私達に隠し事なんて・
  ・・」

 「ニコル、あの優しいニコルに戻って!」


 「僕も両親を宥めるのに何時間かかったか。せ
  めて、一言謝ってくださいよ」

 「アスラン!男の仁義を踏みにじりやがって!
  」


(昨晩、マッケンジー邸内)

 「ラスティーよ。人間隠し事の1つくらい誰に
  でもあるから、それは問うまい。だが、浮気
  を隠し通せないなんて、男として感心出来な
  いぞ!」

 「ラスティー!何が男同士で飲んでいたよ。女
  引っ掛けて遊んでいたんだって?一体、どこ
  の女と遊んでいたのよ。白状しなさい!」

 「ラスティー、シホを泣かせて可哀想だと思わ
  ないの?母さん、同じ女として許せないわ!
  それと、あなた!浮気を隠していたって本当
  ?」

 「いや、それは言葉の綾で・・・。ラスティー
  !覚えていろよ!」

マッケンジー委員長は怒りを一番立場の弱い息子
に向ける。


 「昨日はシホが食事に来ていたから、親父、母
  さんと3人に囲まれて針の筵だったんだ。お
  前、ラクス様に余計な事を話しやがって!」

昨日の過去の悪事を全部聞かれていて、それを酔
っ払ったラクスが全部話してしまったのだ。

 「アスラン、俺も家族の信頼を失ってしまった
  んだぞ!どうしてくれる」

ディアッカも同様の被害に遭っていた。

 「アスラン、昨日は酷いよ。カガリから僕達の
  居場所を聞きつけて襲撃するなんて。ラクス
  には汚物を見るような目で見られてしまうし
  、レイナに報告されてしまったから、今朝彼
  女からウイルス入りの激怒メールが送られて
  来て大変なんだから、誰かに僕の安全を保障
  して欲しいよ。しかも、その後、アサギに話
  してしまったようで、ハワード一尉が大ピン
  チなんだよ。絶対に後で復讐にやってくるよ
  」

昨晩、キラ達が飲んでいる飲み屋にラクスが乱入
して、両手に花だったキラの様子をレイナにメー
ルで報告してしまったらしい。
ようやく、飲み屋の女性に慣れて楽しんでいたキ
ラは恐怖のどん底に叩き落されたのだ。 

 「なあ、俺はただ付き合わされただけで、悪い
  のはラクスだろう?」

 「あんなに酒を飲ませて、過去の話を暴露した
  だろうが!」

 「公的には婚約者なんだから、責任を持って欲
  しいよ」

アスランの言い訳も、激怒しているラスティーと
キラには通用しなかった。 

 「結局、ラクス様の暴走を止められるヨシさん
  は見つからないという事なんだな?」

 「今日も、クルーゼ司令の特別任務を受けてこ
  こにはいません。コーウェルさんが代理で仕
  事をしています」

ディアッカの質問にニコルが答える。

 「胡散臭いマルキオとか言う坊主の所為でこち
  らは大混乱だ。奴は何処にいるんだ?」

 「昨日の夜に地球へ降りたようです。多分、二
  度と会えないと思いますよ」

イザークの疑問をニコルが答えている。

 「どうしてだ?」

 「それはだな。カナーバ議長とギルバートがバ
  チカンの枢密卿数人とコンタクトを取る事に
  成功したからだ。彼らが仲介をしてくれるな
  ら、怪しげな新興宗派の有力者と連絡を取る
  必要は無いからな。実際のところ、彼らが仲
  介してくれそうな政治家は今までとは比べ物
  にならないくらい大物らしい」  

いきなりクルーゼ司令が乱入してきた。

 「クルーゼ司令!どうしてここへ?」

 「カザマ君は特殊な任務に就いていてね。君達
  にも詳細は話せない。さあ、訓練を開始する
  ぞ!」

結局、その日はクルーゼ司令に邪魔をされて、事
態の解決を図ることが出来なかった。


(同時刻、クライン邸)

今日の早朝にアスランが酔っ払ったラクスを連れ
て帰ってきたので、今はベッドに寝かせていた。
今日は、二日酔いで動く事は出来ないだろう。
ラクスには昨日の出来事が相当ショックだったよ
うだ。

 「前線で仲間と命を張っている婿殿は、マルキ
  オ殿の他力本願で無責任な発言に腹が立った
  のだろうな」

ラクスは彼の理想に多少共感していたようだが、
自分ほど歳を取ると、彼の言うような英雄など信
じられなくなってしまうものだ。
多少、乱暴な言葉使いだが、婿殿の意見は正しか
ったのだ。
中途半端で無責任な力を集結されてもそれは、テ
ロ以外の何物でもないからだ。   

 「しかも、プラントの政治家が誰も気が付かな
  かった事を、彼だけが気が付いていたのだか
  らな」

今朝、カナーバ議長とギルバート外交委員長にバ
チカンとの接触を提案したら、「さすがは、シー
ゲル閣下。的確な提案感謝します」と言われてし
まったのだ。
19歳の軍人が気が付いている事を評議会の議員
が気が付かなかったのだ。
恥ずかしい事この上無い。
やはり、長い間外国で暮らしていた男は一味違う
ようだ。
自分達はプラントに長年閉じこもっていたのでい
まいち外交が苦手のようなのだ。
今のところ、同盟国との交渉は上手くいっている
が、敵国との接触が上手くいっていないのを戦争
の所為にしている部分があり、これを改善しなけ
ればいけないだろう。
最終決戦後に外交交渉でしくじったら、ジリ貧に
なって敗戦してしまうのに、未だに有力な外交ル
ートが開けていないのだ。
マルキオ導師に紹介された政治家は小粒で決めた
事を実行出来ないようであった。
その点、オーブにはウナト・エマ・セイランがい
るので外交交渉では圧倒的に優勢である。
羨ましい限りだ。

 「婿殿は戻って来ないのかな。惜しい男なんだ
  が・・・。後は、ラクスの女としての力量次
  第か」

そこまで考えたところで、ラクスは車に乗って家
を出たようだ。

 「居場所を見つけたのかな?頑張ってくれよ、
  ラクス。我が家の将来の為にも」

ラクスを乗せた車は屋敷を出ていったのだった。


今朝、クルーゼ司令の家を出た俺は私服に着替え
てから、ホーク課長の家に向かっていた。
クルーゼ司令のものと思われるGパンとTシャツ
を借りて家を出る。
昨日、シン達が心配で連絡を取ったら、丁度休み
が重なったので、是非遊びに来て下さいと誘われ
たのだ。
どうやら、シーゲル閣下はシン達の推薦を取り消
していないようだったので安心してしまった。
俺は、お土産を買ってから、教えてもらった道順
で目的地に向かう。
クルーゼ司令の家から徒歩10分ほどの、閑静と
した住宅街にかなり大きな家が見えてきた。

 「さすがに、優秀な技術者は高給取りだな。家
  がでかいわ」

一晩経って、多少気持ちの整理がついた俺は玄関
のチャイムを鳴らす
すると、ドアが開いてメイリンが出迎えてくれた

 「わあ、ヨシヒロさん。お久しぶりです」

 「メイリンも元気そうでなにより。それでさ、
  シンはバカやってない?俺はそれだけが心配
  で・・・」

 「大丈夫ですよ。大食いなのは相変わらずだけ
  ど」

俺は家に上がらせて貰い、リビングにいたホーク
課長と奥さんに挨拶をした。

 「始めまして。ヨシヒロ・カザマと申します。
  シンとステラがお世話になっています」

 「家は賑やかで楽しいから大歓迎だ」

 「そうね。シン君、気持ち良いくらい食べてく
  れるし」

やはり、あのバカが・・・。

 「あっ、カザマさん、お元気ですか?」

 「ヨシヒロだ。わーい」

 「ヨシヒロさん、お久しぶりです」

シン、ステラ、ルナマリアが二階から降りてきた
ようだ。

 「みんな元気そうだな」

 「はい、元気ですよ」

 「お前は殺しても死なないだろうが」

 「そんな事はありませんよ。俺って繊細で」

 「はいはい。1人で言ってなさい」

 「ルナの方が殺しても死なない癖に」

 「何ですって!」

 「2人共ストップ!」

この2人は喧嘩するほど仲が良いって奴か?

 「ヨシヒロ、お昼ご飯作ってあげるから楽しみ
  にしてね」

 「ステラが作ってくれるのか。楽しみだな」

 「私も作りますよ」

 「メイリンもか。ますます楽しみだ」

 「そして、大本命の私も作りまーす!」

 「ルナは前の約束を守ってくれるのか」

ルナマリアの宣誓と共に、シン達とホーク夫妻に
緊張が漂う。 

 「あれ?みんなどうしたの?」

 「何でもないですよ。カザマさん」

 「ええ、何でもありません」

明らかに、何かを隠しているようなのだが、それ
が何なのかわからない。

 「3人で作るから一人一品でいきましょう」

 「そうね。私はサラダを作るから、おかずの方
  はお願いね。くれぐれも食べられる物を作る
  事!」

奥さんの口調に危機感を感じてしまう。
誰か非常に下手な人が混じっているらしい。
予想は簡単なのだが・・・。

 「シン、ステラは料理が上手だったから問題な
  いよな。2人の内、どっちなんだ?」

テーブルに座って料理の完成を待っている間にシ
ンに聞いてみる事にする。

 「メイリンは毎日食事の支度を手伝っているか
  ら、腕は確かです」

 「ルナなのか問題なのは・・・」

 「俺は思い出したくありません」

 「ホーク課長はどう思います?」

 「ステラは料理が上手だな。いいお嫁さんにな
  るだろう。メイリンも全く同意見だ。ルナは
  ・・・」

突然、ホーク課長の話が止まったので、キッチン
を見ると、ルナマリアは包丁を持って修羅の表情
をしていた。
これ以上の発言は危険なのだろう。

 「さあ、召し上がれ」

3人の作った料理が完成してテーブルに並べられ
た。
後は食するのみである。

 「では、いただきます」

今日の主食はご飯であった。
シンの両親が申し訳ないと思ったらしく、恐ろし
いほどの量をホーク家に送ってきたらしい。
俺にとっては嬉しい誤算だ。

 「まずは、ロールキャベツか。これは誰が作っ
  たんだ?」

 「ステラが作った」

その返事に安心したのか、全員が箸をつける。

 「美味しいな、ステラ」

 「美味しい」

 「同感だ」

全員の評価は好評だった。

 「次は、煮魚か。俺の好きな料理だ」

 「はい、私が作りました」

メイリンが手をあげる。

 「じゃあ、安パイだな」

シンの一言で全員が箸をつける。

 「美味しいな。味も丁度いいし、生臭くもなし
  」

 「母さんが作るのと変わらないくらい美味しい
  」

シンもべた褒めしている。

 「ありがとう。シン、ヨシヒロさん」

そして、最大の難関が訪れた。
これを上手く突破しなければ明日は無い。

 「サラダが美味しいですね。奥さん」

 「あら、ありがとう。カザマ君」

 「ちょっと、待った!私の自信作を食べてくだ
  さいよ」

 「カザマさん、ルナが指名してますよ」

シンの奴!後でぶっ殺す!

 「では、いただこうかな」

ルナマリアの作った料理を覗き込むとシチューら
しき液体が見えるのだが、色が紫色だ。
俺の戦場を生き残ってきた勘が、こいつはやばい
と警告している。

 「色が紫なんだけど、紫芋でも入っているの?
  」

 「いえ、自然にその色になりました」

普通、ありえない事態だ。

 「あの、ホーク課長。一緒に食べませんか?」

横を見ると、ステラとメイリンの料理を平らげて
お腹一杯そうなホーク課長が見えた。
さすがに、引き際を心得ているようだ。

 「シンはどうだ?」

横を見ると、丼飯をお代わりしているシンが見え
た。
シンはご飯で腹を埋める気のようだ。

 「私はお腹一杯で」

 「私も」

 「ステラも」

奥さんとメイリン、ステラも離脱するようだ。
ここで、俺が食べないと確実に悪人扱いになって
しまう。
横を見ると、すがるような目で俺を見ているルナ
マリアが見える。
ここで引くわけにはいかない。

 「では、いただきます」

紫色の汁をスプーンですくって口に入れると、酸
味と苦味と甘味と塩辛さが同居している、まるで
今日の世界情勢のような味がする。
はっきり言って死ぬほど不味い。

 「うーんと、個性的な味かな」

言葉を選んでみるが、これくらいしか出てこない

 「あの、美味しいですか?」

 「一味足りない感じかな」

 「何が足りないと思います?」

 「塩味かな?」

そう答えた瞬間、俺のシチュー皿に塩が大量に投
入された。
周りの人達は「余計な一言を・・・」という顔を
していた。

 「これで、大丈夫かな」

俺は覚悟を決めて全部食べきった。


 「腹がおかしいし、のどが渇いた」

夕方、ホーク課長の家を辞して帰り道を歩いてい
たが、あのシチューが強烈で未だにダメージから

していなかった。
午後は、普通に話しをしたが、シンとステラはそ
ろそろ寮に入るようだが、ルナマリアとメイリン
は自宅が近いので、寮には入れないらしい。

 「今日もクルーゼ司令に泊めて貰うしかないか
  」

今日はいい気分転換になったと自分でも思う。
ラクスへの疑惑は晴れないが、俺にはまだ沢山の
友達や家族がいる。
俺は彼らの為に、戦っていけば良い。
ただ、それだけの事なのだ。
それに、シン達の成長を見届けてから地球に戻る
という選択肢もある。
オーブで雇ってくれるようだから、生活にも困ら
ないだろう。
俺は何処でも生きていけるんだ。
そう考えたら気分が軽くなってきた。

 「しかし、酷く喉が渇いた。飲み物でも買うか
  」

俺はお店を探していると、後ろからペットボトル
のお茶が差し出された。

 「ラクス・・・・・・・」

 「ヨシヒロ・・・・・・」

予想よりも大分早い再会の時間だった・・・。


夕方、日が暮れかけている公園のベンチに2人で
座って、俺はラクスから貰ったお茶を飲んでいた

俺は何かを話しかけようとするのだが、何を話し
て良いのかわからなくて、ラクスも下を向いたま
ま俯いている状態だった。

 「あのさ、俺は一般庶民出でSEEDなんて持
  っていないし、君の考えている世界平和の実
  現なんて不可能だよ。俺は自分の周りの人の
  幸せを守るのが精一杯なんだよ。それすら完
  全に出来ていなくて沢山の同僚が死んでいっ
  たんだ。キラ達も同じだよ。いくらSEED
  があっても救えない人がいるし、絶対に生き
  残れる保障なんてない。だから俺はマルキオ
  が許せなかったんだ。自分は一歩引いたとこ
  ろにいて勝手に英雄に期待して、それが彼ら
  の人生だ運命だと勝手に決め付けているマル
  キオに・・・」

 「・・・・・・」

 「俺が君にお願いしたい事はシン達のアカデミ
  ー推薦を取り消さないで欲しいという事だけ
  だ。彼らが一人前になれば、俺はプラントを
  出るからさ。それまで我慢してくれないか?
  」

俺は伝えたかった事を言い終えたので、ベンチを
立ち上がる。

 「お茶ありがとうね。ルナマリアの奴とんでも
  ない料理を作ってさ、高血圧になりそうだっ
  たよ。じゃあ、荷物は後日取りにいくから」

俺がクルーゼ司令の家に帰ろうとすると、ラクス
に手を掴まれた。

 「行かないで・・・」

 「えっ?」

 「行かないでください!」

いきなりラクスに抱きつかれてしまった。

 「いや、でも俺は・・・」

 「私はあなたがいればそれでいい!」

俺に抱きついているラクスがとてもか弱く小さく
見えた。
今にも折れてしまいそうにだ。 

 「俺だって聖人君子じゃないんだ。勘弁してく
  れないか?これ以上君の事を嫌いになりたく
  ないんだよ。俺は君が何を考えているのかわ
  からないし」

俺は彼女の駒にはなれない。

 「私は世界が平和になればいいと思っている。
  でも、そこにあなたがいないのはもっと嫌!
  」

 「なあ、俺は君に何をしてあげればいいんだ?
  モビルスーツで両軍に割って入って平和を訴
  えればいいのかい?キラを旗頭にして世界を
  征服して新しい王国を作って完全平和を達成
  すればいいのかい?それで君は女王でマルキ
  オは法王で・・・」

 「違う!違う!違う!私はそんな事は望んでい
  ない!私の考えている事は所詮理想でしかな
  くて、絶対に叶うはずが無い事くらいあなた
  に言われてからは理解している。私はただ、
  少しでもあなたの助けになりたかった。死ん
  で欲しくなかった。少しでも一緒にいたかっ
  た。ただ、それだけ。マルキオ様にはコンサ
  ートツアーの時にお世話になったからお礼を
  言いたかっただけなのに、あなたが彼を責め
  立てるから・・・」

ラクスはそれだけ言うと俺の胸にすがり付いて泣
き出してしまった。
その姿は本当に儚く、ただの16歳の女の子でし
かなかった。
どうやら、俺は多少卑屈になっていたのかも知れ
ない。
評議会元議長の娘でプラント一の歌手としてでは
無く、普通の女の子として彼女を見る事が出来な
くなっていたようだ。
俺はマルキオに腹が立っていただけでは無くて、
自分にも腹が立っていたのだ。

 「俺に出来る事は君と一緒にいる事だけだよ。
  それでいいの?」

 「はい!」

ラクスの顔に笑顔が浮かんだ。

 「でも、マルキオ導師はキラをどうするつもり
  なんだろう?それだけが気がかりだな。レイ
  ナが関係する事だし。それと、アスランとシ
  ンもだ。おかしな事になったら、ステラとカ
  ガリちゃんが可哀想だしな」

 「マルキオ様は彼らが自分で動き出さなければ
  、何もしないと思います。彼はあくまでも運
  命論者なのです」

 「そうか、キラ達が下らない野心を持ったら、
  俺が止めればいいのか」

多分、そうなる可能性はほとんど無いだろう。

 「わかった。もう何も言わない。腹減ったから
  帰ろう」

 「はい!」

俺とラクスが暗くなり始めた公園を出ようとする
と、入口に2人の男女が立っていた。 

 「ラウ、聞いてた?若いっていいわよね。初々
  しいわ。あの2人」

 「三十路になると、ババ臭い発言が増えて大変
  だな」

 「小遣い本気で減らすわよ!」

 「すいません。心から反省しています」

8月下旬で、温度が暑めに調整されているからな
のか、ミサオさんは浴衣姿で、クルーゼ司令は甚
平を着ていた。
金髪で仮面を付けた男の甚平姿は非常にシュール
だった。

 「あの、どうしてここへ?」

 「帰ってこないから様子を見にね」

 「覗きというのが本音だ」

 「ラウは黙ってなさい!」

 「はい・・・」  

家庭ではクルーゼ司令の地位は緑服程度であるら
しい。

 「仲直り出来て良かったじゃないの。はい、こ
  れ軍服。早くお家に帰りなさい」

ミサオさんに軍服が入った紙袋を渡される。

 「色々お世話になりまして」

 「何か悩みがあったら、いつでも来なさいな」

 「ありがとうございます」

俺はラクスと手を繋ぎながら公園を出て、待機し
ていたクライン家の車で帰って行ったのだった。
屋敷に着いてから、俺はシーゲル閣下に謝ったの
だが、特に気にも留めていない様子で謝る必要も
無いと言われてしまった。
気の短い若造の俺と違って、落ち着きのある大人
は違うなと感心してしまう。
食事を終えた後、部屋でくつろいでいると、ラク
スが入ってきて、俺に質問をしてきた。 

 「昨日ある方からお聞きしたのですが、アカデ
  ミーで教官をなさっていた時に、酒場で女性
  を口説きまくっていたと言う噂を聞きまして
  」

急に背中に冷や汗が走る。
俺の過去の行動がバレている。

 「付き合う前の過去の話を詮索するつもりは無
  いのですが、気分は良くないので、これから
  はしないで下さいね」

 「はい・・・。あの誰からその話を?」

 「昨日、アスランがワインを飲みながらカガリ
  様にお話していましたわ」

 「なるほど、そうか・・・」

俺はアスランへの報復を決意した。


(翌日午後、訓練宙域)

 「ラスティー、ディアッカ、イザーク、ニコル
  、キラ、ハワード一尉、ホー1尉、四方八方
  から撃ちまくれ。これは、(ジャッジメント
  )のリフレクタービットの試験なんだ。遠慮
  なんていらないからな」

 「「「了解!」」」

 「あの、ヨシさん。いくら訓練でもこれは・・
  ・」

 「アスランの機体は防御力が命だ。これくらい
  余裕で弾けよ」

 「そんな、全方位からなんて。キラとディアッ
  カはフリーダムだから砲撃数が多いし

訓練用の模擬弾と可視光線でも命中すれば、セン
サーアラームが五月蝿いのだ。

 「俺も調子が戻ったから(ジン掘砲猟汗阿鯔
  格的にやらないといけないし」

 「ああ、せっかくヨシさんの調子が戻ったのに
  、俺が不幸に追いやられている」

 「アスラン、余計な一言は身を滅ぼすんだ。覚
  えが無いとは言わせないぞ」

 「・・・・・・・」

その後、数時間にわたってアスランはしごかれた
が、これくらいではSEEDは発動しないようだ

大変残念である。
時は8月下旬、最終決戦の時期はまだ確定していな
いが、俺達は最後決戦の準備に余念がなかった。
果たしてこれからどうなるのかは、誰にもわから
なかった。


         あとがき

後、5話くらいかな?
前夜が残り2話で決戦が3話で外伝なんて書いたり
して。
シンのアカデミーの話とか。
任官前後の話とか。
予定は未定ですけど。
次回の更新も未定です。

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